How to Open a Trustee Bank Account  受託銀行口座を開く方法

https://www.sapling.com/5793869/open-trustee-bank-account

By Melvin Richardson Updated  March 29, 2017

メルビン・リチャードソン 更新  2017年3月29日

There are many different types of trustee accounts. As a trustee you have authority over the bank account and only you can make withdrawals. You can be a trustee for a minor child or for someone that the state has determined needs a trustee.

トラスティアカウントにはさまざまな種類があります。受託者として、あなたは銀行口座に対する権限を持ち、あなただけが引き出しを行うことができます。あなたは未成年の子供、または州が管財人を必要と決定した誰かの管財人になることができます。

Many things are considered when you open a trustee account, such as state laws. A trust document should be prepared by an attorney. This document appoints the trustee and describes the duties and requirements.

州法など、管財人の口座を開設する際には、多くのことが考慮されます。文書は弁護士が作成する必要があります。この文書は受託者を任命し、義務と要件を説明しています。

Step 1

ステップ1

Go to the bank of your choice. Speak to a relationship banker or a sales associate. Tell her you want to open a trustee account. Tell her who will be on the account and what that person’s status is.

選択した銀行に行きます。リレーションシップバンカーまたは販売員に相談してください。受託者口座を開設することを彼女に伝えます。アカウントに誰が入るのか、その人のステータスは何かを彼女に伝えます。

Provide correct identification. You will need either a driver’s license, state identification, passport or military identification. An opening deposit of $25 to $100 will be needed to open the account, depending on the bank’s policy.

運転免許証、州の身分証明書、パスポートまたは軍の身分証明書が必要です。銀行のポリシーに応じて、口座を開くには$ 25から$ 100のオープニングデポジットが必要です。

Step 2

ステップ2

Determine the type of trustee account. If you are opening a trustee account for a minor you will need the minor’s Social Security number. You will be able to open a savings account. There is no need to have the child with you. Only you can withdraw from the account. The account will read as follows, “John Smith (your name), trustee for Michael Smith (child’s name).

トラスティアカウントの種類を決定します。未成年者の受託者口座を開設する場合は、未成年者の社会保障番号が必要です。普通預金口座を開設することができます。子供を連れて行く必要はありません。あなただけが口座から引き出すことができます。アカウントは次のようになります、「あなたの名前、子供の名前の受託者」。

If you are the trustee of an account for an adult, take that person with you. He will need his identification. Take the trust document or certification issued by the court appointing you as trustee. The account will read, “John Smith” (your name), trustee for Joe Smith. Some trustee accounts require a tax Identification number, which the trustee has to apply for.

大人のアカウントの管理者である場合は、その人を連れて行ってください。彼の身分証明書が必要になります。受託者としてあなたを指名する裁判所によって発行された信託文書または証明書を取ります。アカウントには、受託者である あなたの名前が表示されます。一部の受託者口座には、受託者が申請しなければならない納税者番号が必要です。

Step 3

ステップ3

Turn all of your paperwork over to the bank representative. She will open the account and provide you with all of the details. Sign all of the appropriate documents. The relationship banker will make copies of the paperwork you provided and return your original documents.

すべての書類を銀行の担当者に引き渡してください。彼女が口座を開き、すべてを提供します。あなたはすべての文書に署名します。リレーションシップバンカーは、提供された書類のコピーを作成し、元の文書を返却します。

 Make sure you get copies of the paperwork that you signed and put them with your other paperwork and documentation. Verify with the relationship banker how often you will receive your statements.

署名した書類のコピーを手に入れ、他の書類や書類と一緒に置いてください。リレーションシップバンカーに、ステートメントを受け取る頻度を確認します。

Warning

警告

Don’t prepare the trust documents on your own without an attorney. There could be technical aspects you don’t understand.

弁護士なしで自分で文書を準備しないでください。理解できない技術的な側面があるかもしれません。

Your attorney will know the exact type of trustee you need and the state requirements involved.

あなたの弁護士はあなたが必要とする正確な種類の受託者と関係する州の要件を知っています。

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署名は必要なんですよね。最近、アメリカに住んでいる日本人が、なんでも署名、署名でそれはそれで押印とは違う面倒くささがあるとおっしゃっていたのを思い出しました。

以前、アメリカの信託証書に関する仕事を受けて、文書を見せてもらったのですが、確かに署名がありました。

どこにも弁護士の名前はなかったので、あくまでもアドバイス、書類作成に携わっているのかなと思いました。

信託終了に伴い、受託者が帰属権利者として 残余財産を取得する場合の登記

令和 2 年 9 月 1 日民事信託推進センターテーマ別実務研究会「民事信託登記」 ~信託終了に伴い、受託者が帰属権利者として 残余財産を取得する場合の登記についての考察 

東京司法書士会実務研修(研究?)会と東京法務局は、定期的に照会・回答や意見交換を行っていると教えてもらいました。沖縄県でもあるのですが、東京法務局だと、法務省民事局と直接繋がりやすい、通達になりやすいとかあるんだろうか?などと考えていました。

参考文献等 

横山 横山亘著「信託に関する登記(第二版)」(テイハン 2013) 

藤原 藤原勇喜著「信託登記の理論と実務(第三版)」(民事法研究会 2014)

実務研究会 信託登記実務研究会編著「第三版 信託登記の実務」(日本加除出版 2016)

 寺本 寺本昌広著「逐条解説 新しい信託法」(商事法務 2007) 

条解 道垣内弘人編著「条解信託法」(弘文堂 2017) 

登記記録例 不動産登記記録例の改正について (平成 28 年 6 月 8 日法務省民二第 386 号民事局長通達)

【事例1】東京法務局と協議された不統一な登記事務取扱事例 

1.甲・乙共有名義の建物につき、甲持分について次の信託の登記 委託者 甲 受託者 乙(甲の子) 受益者 甲 信託の終了事由 甲の死亡 帰属権利者 乙 

2.甲の死亡により信託が終了 

3.以下のとおり登記申請(事前相談済み) 登記の目的 受託者乙持分全部移転及び信託登記抹消 登記の原因 平成30年●月●日 信託財産引継 (信託登記抹消の原因 信託財産引継) 権利者兼義務者 乙 登録免許税 登録免許税法7条2項を適用し、1000 分の 4 

4.登記官より次の指摘 A.同一人への所有権移転登記はできないため、登記の目的は『受託者の固有財産とな った旨の登記』となる。 B.登録免許税につき、『受託者の固有財産となった旨の登記』には登録免許税法第7条 第2項の適用がないので、登録免許税の税率は 1000 分の 20 となる。 

5.次のとおり登記完了 a.登記の目的は「受託者の固有財産となった旨の登記」に補正した。 b.登録免許税は、登録免許税法7条2項を適用し、税率は 1000 分の 4 とした。

[協議内容] 

1.登記の目的について(㋑または㋺いずれによるべきか。)

 ㋑ 「信託財産引継」を原因として『受託者の固有財産となった旨の登記』として申請 する。 

㋺ 「信託財産引継」を原因として『所有権移転』登記として申請する。 

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ロが相応しいと思いました。信託設定の際の登記の目的が所有権移転だからです。

2.登記申請人について(㋩または㋥いずれの者によるべきか。)

 ㋩ 上記㋑㋺のいずれの方法による場合でも、登記申請人は「登記権利者 兼 義務者 乙」 である。 

㋥ 上記㋑の方法による場合は、不動産登記法第104条の2第2項を根拠として、受 益者甲の死亡を基因として信託が終了する場合にはその受益者甲の相続人全員が登 記義務者となる。 

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ハだと考えました。

ニの「受益者甲の相続人全員が登記義務者となる。」という場合は、第2受益者、第3受益者、第4受益者と、残余財産の帰属権利者(残余財産の受益者)を特定できない場合に限られると思います。信託契約書やその変更証明書で手当ては可能だと思います。

(参考:日本司法書士会連合会編「条解不動産登記法」P633~P635)

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3.登録免許税について 上記㋑の方法による場合でも、登録免許税法7条2項の要件を充たす場合は、その税率 は 4/1000 であるか。

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登録免許税法7条2項の要件の1つは、委託者の相続人なので、イ、ロの登記の目的、登記原因及びその日付に縛られないと考えます。

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 4.登記記録及び登記識別情報の通知の有無について

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登記識別情報通知書に関しては、通知がないと後続登記に影響が出て、厳しいんじゃないかなと感じました。

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 5.共有名義と単独所有の相違点について 上記1~4について、本件のように甲乙の共有名義である場合と甲単独所有の不動産で ある場合とで違いはあるか。 

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違いがあるとちょっと困るかなと感じました。

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[東京法務局の回答] 

信託登記については、先例等がいまだ少ない状況であり、本事例と同種の事例について も、現在法務省民事局に照会中であり取扱いが確立していないことから、現時点での回答 は差し控えたい。

 [検討] ※[事例1]において、甲単独所有だった場合を考える。

 1.登記の目的について 本登記の目的について、次のいずれの目的にするべきか法務局によって見解が異なる。

 ㋐ 所有権移転及び信託登記抹消

 ㋑ 受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記抹消 

➢ 報告事例①(山﨑芳乃司法書士「登記情報 686 号 43 頁」) 信託条項どおりに解釈すれば、受託者が帰属権利者となったのですから『信託財産引 継』が登記原因とも考えられます。私が事前相談した法務局では、同一人物であっても、 立場が異なるので、『所有権移転』とし、権利者兼義務者として実質単独申請となりまし た。 

➢ 報告事例② ある法務局からは、登記記録例に「信託財産引継」を原因とする受託者の固有財産と なった旨の登記記録例がないため、「信託財産引継」を原因とする場合には、登記の目的 を所有権移転として申請しなければ受理できないとの回答を得たとも聞き及んでいる。 

➢ 「自己信託」について 委託者自身が受託者となり、委託者が自己の有する一定の財産の管理・処分を自ら(受 託者として)すべき旨の意思表示を書面等によりする方法である(信託法3③)。そのた め、当該信託の対象となる権利は、自己信託がされても、受託者(同一人)の属するも のである点は変わらず、権利の移転は伴わないが、受託者の固有財産から信託財産に属 することとなる点で、権利の「変更」に該当し、当該権利が信託財産となった旨の権利 の変更の登記をすることとされた(平成 19 年 9 月 28 日法務省民二第 2048 号民事局長 通達第二5(1))。 

➢ 寺本 380 頁 信託財産は受託者の所有に属するものであり、信託財産と固有財産との区別は、こ の点を踏まえた上で信託財産に関する対内的・対外的法律関係を規律するために設け られている区別であるにすぎない。

2.登記の原因(登記の原因となる事実又は法律行為をいう)について 本登記の原因について、次のいずれの原因となるのか法務局によって見解が異なる。

 ㋐ 委付

 ㋑ 信託財産引継 ➢ 旧信託法22Ⅰ 受託者ハ何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハス信託財産ヲ固有財産ト為シ又ハ之ニ付権利ヲ 取得スルコトヲ得ス但シ已ムコトヲ得サル事由アル場合ニ於テ裁判所ノ許可ヲ受ケ信託 財産ヲ固有財産ト為スハ此ノ限ニ在ラス

 ➢ 「委付」について(登記研究 624 号 126 頁) 「委付」とは,自己の所有物又は権利を相手方に交付し,自己と相手方との間の法律関 係を消滅させるとの意味であり,昭和 50 年法律第 94 号による改正前の商法 691 条1項に おいて,船舶所有者は海産を債権者に「委付」して責任を免れることができることを規定 していたことから,受託者の固有財産とした場合にも,「委付」という登記原因が用いられ るようになった 。

 ➢ 「委付」の3つの説(横山 584-587 頁)

 第1説 受託者が権限に基づき、信託財産に属する財産を売却する場合で、その売却 が困難なときに、委託者が受託者から融資を受ける見返りとして、金銭債務の 返済に代えて、委託者の一方的な意思表示で受託者の固有財産とすることによ って、委託者が免責されるものとして、あらかじめ当事者間でその旨の契約を 締結しておく必要があり(委付条項)、裁判所の許可を要件として認めされる特 殊な事例(旧信託法22Ⅰただし書)

 第2説 委付条項がない場合であっても、受託者が支出した費用等の支払いを信託財 産で行ったときや、委託者が受託者に報酬を支払うべき場合に、委託者が支払 いをできず、信託財産そのものを与えること

 第3説 信託財産が、受託者の固有財産となるすべての場合

 本事例の検討:各説の固有の財産となった旨の登記及び信託抹消の原因

 第1説 年月日信託財産引継 ⇐横山氏※

 第2説 年月日信託財産引継

 第3説 年月日委付 ⇐登記記録例 No.564

 ※ 委付とは、本来、委付条項に基づき委付行為を行った場合に用いられるべき用語 であり(第1説)、それ以外の原因により信託財産が受託者に帰属するのであれば、 『信託財産の処分』、『信託財産の引継』等の原因を用いることが相当である。

【事例2】 委託者 甲 受託者 乙(甲の子) 受益者 甲 信託の終了事由 甲の死亡 残余財産の帰属 ①A土地は丙(甲の子)に ②B土地は乙(甲の子)に帰属させる

 ①登記申請(帰属権利者≠受託者) A土地につき、甲の死亡を基因として信託が終了し、丙に帰属された場合

 登記の目的 所有権移転及び信託登記抹消

 登記の原因 所有権移転 年月日信託財産引継 

信託登記抹消 信託財産引継

 ②登記申請(帰属権利者=受託者)

 B土地につき、甲の死亡を基因として信託が終了し、乙に帰属された場合 

登記の目的 受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記抹消

登記の原因 変更の登記 年月日信託財産引継(委付?) 

信託登記抹消 信託財産引継 (委付?)

 3.登記原因の日付(登記原因である法律行為又はその他の法律事実の発生した日)につ いて

 信託の終了事由が生じたことによる残余財産の帰属主体への権利移転時期については、 学説上争いがあるが、新法では、この点については特段の規定を設けず、解釈に委ねるこ ととしている(寺本 380 頁注1)。

 ㋐ 対象財産の特定 信託終了日 ㋑ 対象財産の特定+清算受託者の意思表示(受託者の行為) 信託財産の引継日 ⇐横山氏、

藤原氏 ➢ 信託法177条 信託が終了した時以後の受託者(以下「清算受託者」という。)は、次に掲げる職務 を行う。 ① 現務の結了 ② 信託財産に属する債権の取立て及び信託債権に係る債務の弁済 ③ 受益債権(残余財産の給付を内容とするものを除く。)に係る債務の弁済 ④ 残余財産の給付  ➢ 信託法181条 清算受託者は、第 177 条第2号及び第3号の債務を弁済した後でなければ、信託財 産に属する財産を次条第2項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。 ただし、当該債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場 合は、この限りでない。

 ➢ 裁判例 ①知的財産高等裁判所平成 24 年 2 月 14 日判決 信託の解除の事例だが、信託終了事由が発生したので(信託財産は著作権)、その時 点で当然に権利が帰属権利者に移転し、受託者の信託財産管理の権限も消滅すると判 断した。

 ②名古屋高等裁判所金沢支部平成 21 年 7 月 22 日判決 残余財産の帰属すべき者に対して帰属すべき残余財産が特定されれば、その時点で 即時に、残余財産の帰属すべき者に対して権利移転が生じるものと判示した。

 ➢ 福田修平司法書士「≪土地の調査で知っておきたい≫不動産登記簿(登記事項証明書) 等の読み方のキホン」税務QA2020 年6月号 36 頁 信託終了原因が発生した日

 ➢ 条解 802 頁 いずれの立場にあっても、所有権等の権利移転が生じるには目的財産の特定が必要 である。そして、残余財産は、信託債権等(に係る債務)の弁済の後でなければ具体 的な内容が確定しないのが原則であり、たとえ信託行為において特定の財産が指定さ れていても、清算段階においてその売却が必要となることもあるため、181 条の要件を 勘案し残余財産として給付すべき財産として具体的に特定することが必要であると考 えられる。その特定においては、清算受託者の行為が必要と考えられ、それは、対外 的な意思表示である必要はなく、内部的な処理で足りると解される。 

➢ 横山 564 頁 信託の終了事由の発生日と、信託財産の引継日及び信託の終了日は、別の法律行為 に基づくものであり、これらが同一日行われるとは限らない。 

➢ 藤原 513 頁、横山 564 頁 所有権の移転及び信託の抹消においては、信託の終了事由及びその年月日、信託財 産の引継ぎ年月日及び帰属権利者等が信託行為において指定されたものであるときは その旨を記載した書面(報告形式の登記原因証明情報)を提出する必要がある。 

 4.登記義務者について 不動産に関する権利が信託財産に属する財産から固有財産に属する財産となった場合に おける権利の変更の登記については、「受託者」を登記権利者とし、「受益者」を登記義務 者とするとされている(不登法 104 の2Ⅱ前段)。本登記の登記義務者については次の二通 りの考え方がある。 なお、信託の登記の抹消そのものは、受託者単独申請である(不登法 104Ⅱ)。 ㋐ 受益者甲の相続人全員 ㋑ 帰属権利者 乙

 ➢ 報告事例③(谷口毅司法書士 当センタ-令和元年度実務入門講座「補足資料」5頁) 帰属権利者等と清算受託者が同一人なので、登記権利者と登記義務者が同一として手 続を進めてよいと私見では考えているが、不動産登記法第 104 条の2第2項を根拠に、 受益者(受益者の死亡を基因として信託が終了する場合にはその相続人全員)を登記義 務者とする法務局も存在する。

 ➢ 売主死亡の場合の売買登記の登記義務者 売買登記未了のまま売主が死亡した後、買主が売主の共同相続人と共に所有権移転登記 を申請するには、売主の共同相続人全員が登記義務者となるべきである(昭和 27 年 8 月 23 日民事甲第 74 号民事局長回答)。 ➢ 受益者としての権利権能 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなされ(信託法 183Ⅵ)、受益者としての権 利・権能を有する。

 Cf. 自己信託の方法によってされる信託の登記の申請に当たっては、申請人が申請権限を 有する者であること(登記名義人であること)を担保するため、登記識別情報を提供し なければならない(不登令 8Ⅰ⑧)。 登記の目的 登記識別情報の提供 (不登法 22) 登記識別情報の通知 (不登法 21) 自己信託 〇 (不登令 8Ⅰ⑧) 〇 所有権移転 (権利者兼義務者 甲) 〇 〇 受託者の固有財産 となった旨の登記 × (不登法 102 の 2Ⅱ後段) × 8 

5.登録免許税について 不動産に関する権利が信託財産に属する財産から固有財産に属する財産となった場合の 登録免許税は次のいずれとなるのか。 ㋐ 変更の登記 不動産1個につき 1,000 円(登録免許税法別表第 1,1,(14)) ㋑ 所有権移転の登記(登録免許税法7条2項は適用外) 不動産の価額の 1000 分の 20(登録免許税法別表第 1,1,(2)ハ) ㋒ 所有権移転の登記 登録免許税法7条2項の要件を充たす場合 不動産の価額の 1000 分の4(登録免許税法別表第 1,1,(2)イ)

 ➢ 昭和 41 年 12 月 13 日民事甲第 3513 民事局長電報回答 ここにいわゆる所有権の変更の登記とは、受託者名義になされた信託による所有権移転 の登記を、委付を原因とする通常の所有権移転の登記に変更する登記である。すなわち、 本件の事例では、委付によって委託者の潜在的所有権が受託者に移転し、信託による所有 権の移転が通常の所有権の移転に変更することによって信託が終了することになるのであ るから、このような所有権の変更の登記をすべきものとされているのであって、その実質 は不動産登記法第 56 条第1項の規定による権利の変更の登記ではなく、所有権移転の登記 である。しかもその所有権の移転は、委付によって委託者がまぬがれた債務と対価関係に たつのであり、無償名義による移転ではない。したがって、登録税法第2条第1項第3号 の規定を適用し、不動産価格の千分の 50(現在の 20)の税率による登録税を徴収すべきも とされたのである。

 ➢ 登録免許税法7条2項 信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合(要件1)であつて、かつ、当該信託の 効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合(要件2) において、当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(当該委託者 が合併により消滅した場合にあつては、当該合併後存続する法人又は当該合併により設立 された法人)であるとき(要件3)は、当該信託による財産権の移転の登記又は登録を相 続(当該受益者が当該存続する法人又は当該設立された法人である場合にあつては、合併) による財産権の移転の登記又は登録とみなして、この法律の規定を適用する。 

Cf. 事例2 ➢ 平成 30 年 12 月 18 日名古屋国税局審理課長回答「信託の終了に伴い、受託者兼残余財 産帰属権利者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第 7 条第 2 項の適用関係 について」 

登記記録及び登記識別情報の通知について 受託者の固有の財産となった旨の登記における受託者が 1 人の場合においては、信託法 等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(平成 19 年 9 月 28 日法務省民二第 2048 号民事局長通達)の第3登記の記録例 22 において「原因 年月日委付、所有者 何市何町 何番地 乙某」と記録されることとなっているが、登記記録例 No.564 においては、「所有 者 何市何町何番地 乙某」の記録がない。 なお、受託者が複数の場合には、前記平成 19 年通達の記録例 23 及び登記記録例 No.565 ともに、「共有者住所氏名 持分」を記載することとなる。

 ➢ 平成 19 年 9 月 28 日法務省民二第 2048 号民事局長通達の第3登記の記録例 22 ➢ 登記記録例 No.564 (注1)所有者名は記録すべきと考える(実務研究会 436 頁(注4))。

➢ 平成 30 年 12 月 18 日民二第 759 号民事局民事第二課長回答 複数の委託者のうちの一部の者を受託者とする信託の登記については、自己信託(信 託法第3条第3号)には直ちに該当せず、信託契約(同条第1号)によるものとして、 共有者全員持分全部移転及び信託の登記の方法により登記をすることが相当である。 この「信託行為全体を一体とみなして判断すべきであり、信託行為の一部のみを切り 出して個別に判断することは相当ではない」との考えは、信託設定時のみならず、信託 終了後に帰属権利者等へ残余財産を引き継ぐ場合についても同様であると考えられる。 

2 受託者持分の特定について 乙は、順位3番で固有財産として持分9分の4[A]を、順位4番で信託財産として受 託者持分3分の1[B]を取得している。本件受託者持分移転の「登記の目的」について は次の3通りが考えられる。 ㋒ 乙持分一部(順位4番で登記した持分)移転 及び 4番信託登記抹消 (登記記録例 No.211 参照) ㋓ 受託者乙持分3分の1(順位4番で登記した持分)移転 及び 4番信託登記抹消 (登記記録例 No.553 参照) ㋔ 受託者乙持分全部移転 及び 4番信託登記抹消 上記㋓㋔の方が受託者持分の移転である旨がより明確ではあるが、「受託者の固有財産と なった旨の登記」等の権利の変更の登記等の登記の目的の記録例であるため、移転登記に おいては「受託者乙持分3分の1」「受託者乙持分全部移転」と記録することはできないと も思われる。

登記記録例によると、自己の固有財産である持分[A]と信託財産である受 託者持分[B]をあわせた 乙の持分の一部が移転する旨、つまり上記㋒のとおりに記載し て登記申請しなければならないと考えるが・・・ 

 ※上記のいずれも登録免許税法7条2項の要件を充たす場合は、その税率は 4/1000 

※統一見解が出ていないため、各法務局によって対応は異なる。

以下チャットです。

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信託不動産を売買契約後、決済前に委託者兼受益者が死亡した場合、受託者は清算受託者として登記義務を果たし、」決済できるとの考えた方でよろしいでしょうか?

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経験ないですが、売買契約していたら、決済できるんじゃと思います。

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私は、何故当初受益者の相続人全員が出てくるのか講義を聴いても分かりませんでした。

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受益者(帰属権利者)が登記義務者でも、信託を終了されることについて不利益ともいえるので、義務者であることに問題はないのかなと感じます。

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信託行為で、委託者の地位について定める、信託の終了日(所有権移転の日)を特定可能に設定する、残余財産の帰属権利者を信託終了の日に特定出来るようにしておけば、受益者の相続人全員、委託者の相続人全員という問題は、出てこないのではないかと思います。間違っているかもしれませんが。

電子商取引及び情報財取引等に関する準則 Ⅰ-1

司法書士以外の方から時々聞く言葉に、「法律で決められずに、先例や政令、通達などでやややこしくなっている。もっと明確に簡易にすべき(そうすれば誰でも出来るようになる)」があります。デジタル化の流れの中で、特に商業・法人登記については公開情報の範囲も広がってきていて、利用する方にとっては、選択肢が広がって良い事だと感じます。

 実際に利用者の中でも、情報は公開されていることを教えてると、自分でやってみる方と、公開されていることは知っているけれど専門家に任せたいと言われる方に分かれます。

 ただ、その流れとは逆に見えてしまうのですが、他の事業分野においても大枠は法律で決めておいて、細かいところは準則やガイドラインで決めていく、ということが多くなっていると感じます。良い悪いは分かりませんが、行政権が強くなっているのは事実だと感じます。理由としては、判例を待っていたらこの変化の速い時代に間に合わない、世界に後れを取る、などがあるのかもあしれません。

 ただし、登記手続きにおいては照会に対する回答という形を採っている場面も多くあり、実務で実際に困った箇所に適宜応答していくという、仕組みが一定部分あります。そういった意味では諮問機関や委員会で決める経済産業省の仕組みと、法務省の通達などでは意味合いが違ってくると感じます。

 この準則は全部はで400ページ近くあり、この中から自分の生活、事業に関する部分を読み取って理解できる方が多くいるとは私には分かりませんでした。結局専門家に依頼することになるのかなと感じることもあります。

 

https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200828001/20200828001.html

令和2年8月

経済産業省

はじめに

法令は、それが制定・改正された当時における技術を前提としている。このため、新たな技術の登場は、法令の規律が前提としていた紛争実態などの事実に変化をもたらす。この結果、技術の進歩に応じた柔軟な法令解釈が求められるとともに、こうした解釈では対応できない事項については新たな法令の構築が求められることとなる。

インターネットの登場は、電子商取引をはじめとした新たな経済行為を産み出している。ところが、民法をはじめとする現行法の大半はこうした新たな技術を前提とせずに制定されているため、電子商取引について、現行法がどのように適用されるのかその解釈が明確であるとは必ずしも言い難く、当事者が安心して電子商取引に参加できる法的な環境にあるとは言えない。本来であるならば、現行法の解釈に関して不明確な事項があれば、判例の積み重ねによって合理的なルールが自ずと明らかになるのであるが、当面、こうした司法による判例の

積み重ねが迅速に進むことにのみ期待することは難しい。

この準則は、電子商取引等に関する様々な法的問題点について、民法をはじめとする関係する法律がどのように適用されるのか、その解釈を示し、取引当事者の予見可能性を高め、取引の円滑化に資することを目的とするものである。もとより、個別具体的な事例において現行法がどのように適用されるのかを最終的に判断するのは裁判所であることは言うまでもないが、この準則が一つの法解釈の叩き台となることにより、新しいルール形成の一助になることを願っている。

また、この準則は、電子商取引等をめぐる様々な論点について、消費者団体、事業者団体や、総務省・法務省・消費者庁・文化庁など関係府省からのオブザーバーの方々の御助言を頂きながら、産業構造審議会 商務流通情報分科会 情報経済小委員会 IT 利活用ビジネスに関するルール整備ワーキンググループにおいて取りまとめいただいた提言を踏まえ、経済産業省が現行法の解釈についての一つの考え方を提示するものであり、今後電子商取引をめぐる法解釈の指針として機能することを期待する。

さらに、この準則は、電子商取引等をめぐる取引の実務、それに関する技術の動向、国際的なルールメイクの状況に応じて、柔軟に改正されるべき性格のものと考えている。また、基本的な考え方を示すとともに、具体的事例における考え方も示したいと考えている。そのために、実際に電子商取引等に関わっている事業者や消費者から、具体的な事例について、考え方を広く募りたい。この準則の中で幾つか具体例を挙げているが、これ以外にも更に適当なものがあれば、是非以下へ御提案いただきたい。

<電子商取引及び情報財取引等に関する準則についての連絡先>

経済産業省商務情報政策局情報経済課

FAX 03-3501-6639

電子メール ecip-rule@meti.go.jp

略称一覧

本準則における略称の表記は、次のとおりである。

法律名

略称 正式名称

景品表示法 不当景品類及び不当表示防止法

個人情報保護法 個人情報の保護に関する法律

資金決済法 資金決済に関する法律

通則法 法の適用に関する通則法

電子契約法 電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律

特定商取引法 特定商取引に関する法律

特定電子メール法 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律

独占禁止法 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

不正アクセス禁止法 不正アクセス行為の禁止等に関する法律

プロバイダ責任制限法 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発

信者情報の開示に関する法律

預金者保護法 偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な

機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律

判例集

略称 正式名称・出版元

民録 『大審院民事判決録』司法省

民集 『最高裁判所民事判例集』最高裁判所判例調査会

刑集 『最高裁判所刑事判例集』最高裁判所判例調査会

高民 『高等裁判所民事判例集』最高裁判所判例調査会

下級民集 『下級裁判所民事裁判例集』最高裁判所事務総局民事局

無体例集 『無体財産権関係民事・行政裁判例集』法曹会

集民 『最高裁判所裁判集民事』最高裁判所事務総局

判時 『判例時報』法曹会

判タ 『判例タイムズ』判例タイムズ社

判自 『判例地方自治』ぎょうせい

金判 『金融・商事判例』経済法令研究会

新聞 『法律新聞』法律新聞社

目次

Ⅰ章 電子商取引に関する論点………………………………………………………1

Ⅰ-1 オンライン契約の申込みと承諾…………………………………….6

Ⅰ-1-1 契約の成立時期 …………………………………………….6

Ⅰ-1-2 消費者の操作ミスによる錯誤 …………………………………..12

Ⅰ-1-3 ワンクリック請求と契約の履行義務……………………………….17

Ⅰ-2 オンライン契約の内容 ………………………………………….23

Ⅰ-2-1 ウェブサイトの利用規約の定型約款該当性…………………………23

Ⅰ-2-1-1 利用規約の定型約款としての契約への組入れ…………………….23

Ⅰ-2-1-2 定型約款となる利用規約の開示 ………………………………30

Ⅰ-2-1-3 定型約款となる利用規約の契約締結後の変更…………………….32

Ⅰ-2-2 事業者間契約と定型約款……………………………………..35

Ⅰ-2-3 定型約款の規定が適用されない利用規約の契約への組入れと契約締結後の規

約変更…………………………………………………..38

Ⅰ-2-4 価格誤表示と表意者の法的責任………………………………..50

Ⅰ-2-5 契約中の個別条項の有効性 …………………………………..55

Ⅰ-2-6 自動継続条項と消費者契約法第10条等 ………………………….59

Ⅰ-3 なりすまし …………………………………………………..66

Ⅰ-3-1 なりすましによる意思表示のなりすまされた本人への効果帰属…………..66

Ⅰ-3-2 なりすましによるインターネット・バンキングの利用 ……………………71

Ⅰ-4 未成年者による意思表示………………………………………..75

Ⅰ-5 インターネット通販における返品 …………………………………..86

Ⅰ-6 インターネットショッピングモール運営者の責任………………………..91

Ⅰ-7 アプリマーケット運営事業者の責任…………………………………95

Ⅰ-8 プラットフォーム上のユーザー間取引………………………………100

Ⅰ-8-1 ユーザー間取引に関するプラットフォーム事業者の責任………………100

Ⅰ-8-2 取引当事者間の法的関係 ……………………………………105

Ⅰ-8-3 インターネット・オークション及びフリマサービスにおける売買契約の成立時期 109

Ⅰ-8-4 「ノークレーム・ノーリターン」特約の効力………………………….112

Ⅰ-8-5 売主に対する業規制………………………………………..114

Ⅰ-8-6 ユーザー間取引に関するプラットフォーム事業者に対する業規制 ……….119

Ⅰ-8-7 シェアリングエコノミーと兼業・副業に関する就業規則 ………………..122

Ⅰ-9 オンライン懸賞企画の取扱い ……………………………………128

Ⅰ-10 共同購入クーポンをめぐる法律問題について ……………………….132

Ⅰ-11 AI スピーカーを利用した電子商取引………………………………140

Ⅰ-11-1 AI スピーカーが音声を誤認識した場合 ………………………….142

Ⅰ-11-2 AI スピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合 ………………145

Ⅱ章 インターネット上の情報の掲示・利用等に関する論点 …………………. 147

Ⅱ-1 ソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任……………………….150

Ⅱ-2 他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点 ………………156

Ⅱ-3 P2Pファイル共有ソフトウェアの提供……………………………….165

Ⅱ-4 ウェブ上の広告………………………………………………171

Ⅱ-4-1 景品表示法による規制 ……………………………………..171

Ⅱ-4-2 特定商取引法による通信販売に係る広告規制 …………………….178

Ⅱ-5 ドメイン名の不正取得等………………………………………..182

Ⅱ-6 インターネット上への商品情報の掲示と商標権侵害 ……………………188

Ⅱ-7 ID・パスワード等のインターネット上での提供…………………………191

Ⅱ-8 インターネットと肖像権・パブリシティ権等……………………………195

Ⅱ-9 インターネットと著作権…………………………………………202

Ⅱ-9-1 インターネット上の著作物の利用 ………………………………202

Ⅱ-9-2 サムネイル画像と著作権 …………………………………….208

Ⅱ-9-3 著作物の写り込み…………………………………………215

Ⅱ-9-4 eラーニングにおける他人の著作物の利用 ……………………….221

Ⅲ章 情報財の取引等に関する論点……………………………………………. 225

Ⅲ-1 ライセンス契約の成立とユーザーの返品等の可否 …………………….229

Ⅲ-1-1 情報財が媒体を介して提供される場合………………………….229

Ⅲ-1-2 情報財がオンラインで提供される場合 ………………………….238

Ⅲ-1-3 重要事項不提供の効果 …………………………………….241

Ⅲ-2 当事者による契約締結行為が存在しないライセンス契約の成立 …………..244

Ⅲ-3 ライセンス契約中の不当条項 ……………………………………249

Ⅲ-4 ライセンス契約終了時におけるユーザーが負う義務の内容 ………………253

Ⅲ-5 ソフトウェアの契約不適合責任 …………………………………..256

Ⅲ-6 SaaS・ASPのためのSLA(Service Level Agreement)………………….262

Ⅲ-7 ソフトウェアの使用許諾が及ぶ人的範囲…………………………….266

Ⅲ-8 ユーザーの知的財産権譲受人への対抗 ……………………………275

Ⅲ-9 ソフトウェア特許権の行使と権利濫用 ………………………………281

Ⅲ-10 使用機能、使用期間等が制限されたソフトウェア(体験版ソフトウェア、期間制限ソフトウェア等)の制限の解除方法を提供した場合の責任……………………290

Ⅲ-11 データ集合の利用行為に関する法的取扱い………………………..300

Ⅲ-12 デジタルコンテンツ…………………………………………..307

Ⅲ-12-1 デジタルコンテンツのインターネットでの提供等における法律問題について 308

Ⅲ-12-2 デジタルコンテンツ利用契約終了後のデジタルコンテンツの利用 ……..311

Ⅲ-12-3 電子出版物の再配信を行う義務 ……………………………..318

Ⅲ-12-4 オンラインゲームにおけるゲーム内アイテムに関する権利関係 ……….322

Ⅲ-13 データ消失時の顧客に対する法的責任……………………………326

Ⅲ-14 ブロックチェーン技術を用いた価値移転……………………………329

Ⅳ章 国境を越えた取引等に関する論点 (国際裁判管轄及び適用される法規

に関して) ……………………………………………………………………………. 331

Ⅳ-1 日本の事業者と国外事業者の間の取引…………………………….334

Ⅳ-2 消費者と事業者の間の国境を越えた取引(特に消費者保護法規の適用)…….344

Ⅳ-2-1 日本の消費者が国外事業者と取引する場合……………………..344

Ⅳ-2-2 日本の事業者が国外消費者と取引する場合……………………..350

Ⅳ-3 日本の事業者の国外消費者に対する生産物責任……………………..353

Ⅳ-4 インターネット上の国境を越えた名誉・信用の毀損、プライバシー侵害 ………357

Ⅳ-5 インターネット上の国境を越えた著作権侵害 …………………………362

Ⅳ-6 国境を越えた商標権行使 ………………………………………365

Ⅳ-7 外国判決・外国仲裁判断の承認・執行 ……………………………..371

Ⅳ-8 国境を越えた取引に関する公法規制の適用範囲 ……………………..379

Ⅰ章 電子商取引に関する論点

(1)本章の目的

電子商取引は取引の一形態である以上、取引を規律する法令が当然に適用される。その一方で、インターネットその他のコンピュータ・ネットワークを利用して行われるという電子商取引の特性から、具体的場面において、法令がどのように適用されるかが必ずしも明確でない場合がある。

現在では、インターネットショッピングモールやオークションサイトを通じた有体物である商品の売買を目的とする取引に加え、電磁的なコンテンツ(ソーシャルゲーム、オンラインゲームなどと呼ばれるネット上でプレイされるゲームや、スマートフォン用アプリなど)の提供、販売等を目的としたオンラインで完結する取引も行われるようになっている。さらに、今後は、シェアリングエコノミー、マッチングサービスなどと呼ばれる新たなビジネスモデルの下での取引

が更に展開していくことも予想されている。そのようなビジネス形態の変容に伴い、それぞれの取引の成立から完了までのプロセスが対面取引と比較して複雑化してきたが、それに対する法令適用の考え方が不明瞭であるために取引当事者間に混乱や争いが生じることがあった。

このように、情報技術の発展を背景として電子商取引の態様が急速に進化し続ける中、電子商取引を行う健全な事業者の予見可能性を高め、紛争を回避するとともに、悪質事業者による被害からの消費者の救済をも視野に入れ、消費者相談の現場における適切な指針ともなるように、電子商取引をめぐる諸問題に検討を加えるのが本章である。本章の読者としては、電子商取引を行う事業者(ECサイト)・関連サービスを提供する事業者に加え、電子商取引から発生する消費者紛争の解決支援を行う相談員等も想定している。

(2)各論点の概要

「I-1 オンライン契約の申込みと承諾」では、コンピュータ・ネットワークを介しオンラインで行われる契約が、どの時点で成立するか、また、どのような場合に契約不成立若しくは無効、取消し可能となるかにつき、解説を行っている。

「I-1-1 契約の成立時期」は、電子商取引における契約の成立時期及び意思表示の到達時期を解説している。あわせて承諾通知の「到達」の意義を、具体例を示して明らかにする。

「I-1-2 消費者の操作ミスによる錯誤」は、クリックミスなどの消費者の操作ミスの法的取扱いの解説である。錯誤に関する民法第95条第1項第1号の適用を前提とした電子契約法第3条の規律の概要を説明しており、同条における事業者による「確認措置」の具体例と合わせ、確認措置を不要とする消費者の表明の有無の判断基準も示している。

「I-1-3 ワンクリック請求と契約の履行義務」は、全国の消費生活センター等に非常に多くの相談が寄せられていた「ワンクリック詐欺」と言われる架空請求に対する法的対応のあり方を解説するものである。消費者紛争の解決に資するように、契約不成立や無効・取消しといった様々な反論と、それらが認められるための判断基準を列挙している。

「I-1 オンライン契約の申込みと承諾」が主に契約の成立に関する論点であるのに対し、「I-2 オンライン契約の内容」は契約の内容に関わる問題を取り上げている。

「I-2-1 ウェブサイトの利用規約の定型約款該当性」では、民法第548条の2ないし民法第548条の4において定められている定型約款に関する規定が、ウェブサイトの利用規約にどのように適用されるのかにつき、解説を行っている。

「I-2-1-1 利用規約の定型約款としての契約への組入れ」は、民法第548条の2に基づいて定型約款の内容が契約の内容とみなされるための要件について説明する。

「I-2-1-2 定型約款となる利用規約の開示」は、民法第548条の3に基づいて、利用規約が定型約款となる場合に、定型約款準備者が相手方から利用規約の内容を開示するように請求された場合の規律を示す。

「I-2-1-3 定型約款となる利用規約の契約締結後の変更」は、民法第548条の4に基づいて、利用規約が定型約款となる場合に、利用規約を変更したとき変更後の利用規約の条項について個別に相手方と合意しなくとも契約の内容の変更が認められるための要件について解説する。

「I-2-2 事業者間契約と定型約款」は、定型約款についての民法の規定(民法第548条の2ないし民法第548条の4)が事業者間取引にも適用されることを確認するとともに、どのような場合に事業者間取引でも定型約款についての民法の規定が適用されるのかについて検討している。

「I-2-3 定型約款の規定が適用されない利用規約の契約への組入れと契約締結後の規約変更」は、ウェブサイト上の利用規約が定型約款とならない場合について、その利用規約が契約に組み入れられるための基準、及び契約に組み入れられた利用規約の変更と契約の内容の変更との関係について解説する。

「I-2-4 価格誤表示と表意者の法的責任」は、電子商取引サイトで事業者が誤って低い価格を表示した場合に、その表示した価格での販売義務の有無に関し、契約不成立や錯誤の主張可能性について、解説をする。

「I-2-5 契約中の個別条項の有効性」は、サイト利用規約が契約に組み入れられる場合であっても、規約中の個別条項が無効とされる場合について、消費者契約法の内容を中心に解説している。

「I-2-6 自動更新条項と消費者契約法第10条等」は、オンライン販売において、利用規約中に自動継続条項が設けられている場合について、主として消費者契約法第10条との関係について検討している。

「I-3 なりすまし」は、非対面取引である電子商取引において特徴的に問題となる当事者のなりすましについての規律を解説するものである。

「I-3-1 なりすましによる意思表示のなりすまされた本人への効果帰属」では、電子商取引において、ID・パスワードの冒用や、クレジットカード情報の不正使用によって契約が締結された場合等に、冒用された本人に責任が生じるかという問題について表見代理法理を基礎として一般的な規律を解説している。

「I-3-2 なりすましによるインターネット・バンキングの利用」は、ID・パスワードの冒用が問題となるが、I-3-1とは異なり既に成立した預金契約に基づく「弁済」の有効性の問題であるため、別途、「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する」者に対する弁済(民法第478条)を基礎とした法的規律を明らかにしている。

「1-3-3 なりすましを生じた場合の認証機関の責任」は、電子署名法に基づく認証機間の認定制度に関連し、認証機間の本人確認が不十分であったことに起因するなりすましにより、第三者が損害を受けた場合の責任をテーマとしたものである。

「I-4 未成年者による意思表示」では、未成年者も電子商取引の当事者になり得る状況において、未成年者取消しに関する規律を整理している。オンラインゲーム等の利用による高額課金の問題が背景として意識されている。取消権制限事由については、処分を許された財産等について触れた上、判断の難しい「詐術」に関しては、年齢確認画面の設定も一要素としつつ、できるだけ詳細にその判断基準を示すことを意図した。

「I-5 インターネット通販における返品」は、特定商取引法第15条の3に基づく「法定返品権」を中心として、インターネット通販において返品が可能な場合について整理を行ったものである。

「I-6 インターネットショッピングモール運営者の責任」は、消費者がインターネットショッピングモールとモールへの出店事業者をモール運営者と誤認した場合等のモール運営者の責任範囲について整理している。

「I-7 アプリマーケット運営事業者の利用者に対する責任」では、主にアプリマーケット利用者との関係でアプリマーケット運営事業者に生じ得る法的責任を整理している。

「I-8 ユーザー間取引(インターネット・オークション、フリマサービス等)」は、プラットフォームを介して行われるユーザー間での取引に関する問題を取り扱っている。

「I-8-1 ユーザー間取引に関するプラットフォーム事業者の責任」は、電子的にユーザー間取引の場(ユーザー間取引プラットフォーム)を提供しているサービスの運営事業者(プラットフォーマー)に関し、利用者間の取引においてトラブルが発生した場合の法的責任を整理したものである。

「I-8-2 取引当事者間の法的関係」では、ユーザー間取引プラットフォームを利用した取引における売主と買主の間のトラブルについて、売主が買主に負う法的責任を中心として一般的な解説をしている。このような取引当事者間のトラブルに関連する問題として、「I-8-3 インターネット・オークション及びフリマサービスにおける売買契約の成立時期」では、インターネット・オークションにより商品が落札された場合に売買契約が法的にいつ成立したと考えられるのかという問題について、「I-7-4 「ノークレーム・ノーリターン」特約の効力」では、ユーザー間取引プラットフォームを利用した取引においてしばしば見られる「ノークレーム・ノーリターン」特約の有効性について、それぞれ具体的に解説をしている。

I-8-5 売主に対する業規制」では、ユーザー間取引プラットフォームを利用して取引を行おうとする売主が、特定商取引法、景品表示法、古物営業法の規制の対象となる場合を整理している。

I-8-6 ユーザー間取引に関するプラットフォーム事業者に対する業規制」では、ユーザー間取引プラットフォームの運営事業者が特定商取引法、古物営業法の規制の対象となる場合を整理している。

I-8-7 シェアリングエコノミーと兼業・就業に関する就業規則」では、シェアリングエコノミーサービスを通じて収入を得ることにつき、兼業禁止規定に関する就業規則との関係で留意すべき点を整理している。

I-9 オンライン懸賞企画の取扱い」は、インターネットのウェブサイト、SNS又はスマートフォン等のアプリ上で消費者に対する懸賞企画を行う場合の景品表示法上の取扱いについて解説したものである。

I-10 共同購入クーポンをめぐる法律問題」は、共同購入クーポン(一定時間内に一定数が揃えば購入者が大幅な割引率のクーポンを取得することができる手法)に関して、クーポンサイト運営事業者(共同購入クーポンのインフラを提供するサービス事業者)、加盟店(共同購入クーポンに記載のサービスを提供する店舗)、クーポン購入者(共同購入クーポンを購入する者)間の法律関係を分析するものである。

I-11 AIスピーカーを利用した電子商取引」では、AIスピーカー(スマートスピーカー)の提供元とAIクラウドのサービス事業者とが同一の場合における、AIスピーカーを利用した電子商取引に関する問題を取り扱っている。

I-11-1 AIスピーカーが音声を誤認識した場合」は、AIスピーカーが実際には発注がないのに発注があったと誤認識して発注処理をした場合、発注者にはどのような救済が与えられるかを解説したものである。

I-11-2 AIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合」は、発注者がAIスピーカーで音声発注をしようとして、うっかり言い間違えをしてしまったため、発注者の意図と異なる物品が発注された場合に、発注者にどのような救済が与えられるのかを解説したものである。

Ⅰ-1 オンライン契約の申込みと承諾最終改訂:令和2年8月

Ⅰ-1-1 契約の成立時期

【論点】

電子商取引において契約はどのような要件の下でいつ成立するのか。

電子商取引において意思表示が相手方に到達するのはいつか。

1.考え方

(1)契約の成立要件と成立時期

①契約の成立要件と成立時期

契約は、申込みと承諾の合致によって成立する。申込みに対して承諾がなされた時点で、契約は成立する。

一方当事者の表示・通知が「申込み」ではなく「申込みの誘引」に当たると解される場合、それに対する相手方の意思表示が申込みに当たると解されるため、その意思表示の時点では契約は成立しない。

②契約の成立時期についての利用規約上の条項の影響

当事者間で事前に会員登録等がなされている場合、その会員登録において同意された利用規約に通知・表示の意義(何が申込みや承諾に当たるのか)や契約の成立時期等の定めがあるときには、その定めに従っていつ契約が成立することになるのか解釈される。

当事者間で事前に会員登録等がされていない場合には、その通知・表示の意義や契約の成立時期が相手方に明示されている、あるいはその通知・表示の意義について利用規約等の規定に従うことについての黙示の合意が認定され得る等の事情がない限り、一般的基準(内容の特定性、相手方の重要性、履行の可能性等)に従って、何が申込みや承諾に当たるのか判断される。

(2)意思表示の到達時期

①電子メールで意思表示が行われる場合

申込み・承諾の通知の受信者が指定した又は通常使用するメールサーバー中のメールボックスに読み取り可能な状態で記録された時点である。

ⅰ)通知の受信者のメールサーバー中のメールボックスに記録された時点

(通知が到達したと解される例)

・通知が一旦メールボックスに記録された後にシステム障害等により消失した場合

(通知が到達しなかったと解される例)

・相手方のメールサーバーが故障していたために通知が記録されなかった場合

ⅱ)読み取り可能な状態で記録された時点

(通知が到達しなかったと解される例)

・送信された通知が文字化けにより解読できなかった場合

・添付ファイルによって通知がなされた場合に相手方が復号して見読できない場合(相手方が有していないアプリケーションソフトによって作成されたため、復号して見読できない場合など)

②端末等に意思表示が表示される場合

相手方の端末等の画面上に通知が表示された時点である。

2.説明

(1)電子商取引における契約の成立要件及び成立時期

①契約の成立要件と成立時期

民法上、契約の成立には、申込みと承諾の意思表示の合致が必要とされている。申込みとは、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示である(民法第522条)。承諾とは、契約を成立させることを目的として、特定の申込みに対してなされる意思表示である。申込みに対して承諾がなされた時点で、契約は成立する。

なお、「本メールは受信確認メールであり、承諾通知ではありません。在庫を確認の上、受注が可能な場合には改めて正式な承諾通知をお送りします。」といったように、契約の申込みへの承諾が別途なされることが明記されている場合などは、受信の事実を通知したにすぎず、そもそも承諾には該当しないと考えられる1。

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1 東京地裁平成17年9月2日判決・判時1922号105頁は、インターネットショッピングモールでの商品の売買契約において、利用者からの購入申込みに対してモール運営事業者が返信した受注確認メールはモール運営事業者が送信したものであり、権限ある売主(出品者)が送信したものではないから権限あるものによる承諾がなされたと認めることはできない、と判断した。また、受注確認メールの趣旨について、買い手となる注文者の申込みが正確なものとして発信されたかをサイト開設者が注文者に確認するものであり、注文者の

申込みの意思表示の正確性を担保するものにほかならない、と指摘している。

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②「申込み」と「申込みの誘引」の違い

申込みは、契約を成立させることを目的とする確定的な意思表示であり、この申込みに対して相手方の承諾があれば契約が成立する。これに対して、相手方に申込みをさせようとする意思の通知は、申込みの誘引と呼ばれる。申込みの誘引に対して相手方が意思表示をしても、その相手方の意思表示は申込みとなるため、その相手方の意思表示の時点では契約は成立しない。

例えば商品の販売が行われているウェブサイトにおいて、当該ウェブサイト上にある注文ボタンをクリックすることにより商品を注文するという購入申込みシステムとなっている場合、当該ウェブサイトにおける商品・価格の掲載や注文ボタンの表示等が販売の「申込み」に当たると解されると、購入希望者による注文ボタンのクリックは「承諾」の意思表示となるので、そのボタンのクリックにより、承諾のデータが到達した時点で契約が成立する。これに対して当該商

品・価格の掲載や注文ボタンの表示が購入の「申込みの誘引」に当たると解されると、購入希望者による注文ボタンのクリックは購入の「申込み」の意思表示となるので、その申込みに対して売主が承諾の意思表示を行うまでは、契約は成立しない。

申込みと申込みの誘引は、一般的に、相手方が登場するまで契約するかどうかの決定を留保する必要性がどの程度あるのかによって区別される(留保する必要性が高ければ「申込みの誘引」に当たり、留保する必要性が低ければ「申込み」に当たると解される可能性が高い)。

具体的には、内容の特定性2、相手方の重要性3、履行の可能性4等の要素を考慮して、個別具体的に判断される。

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2 締結しようとする契約の主たる内容が特定されていない場合は、契約するかどうかの決定を留保する必要性は高く、特定されている場合は、留保する必要性は低い。

3 誰と契約するかが重要である場合は、契約するかどうかの決定を留保する必要性が高く、相手方の属性が契約締結において重要でない場合は、留保する必要性は低い。

4 物品の通信販売のように履行能力を超えて大量の注文が殺到する可能性がある場合は、契約するかどうかの決定を留保する必要性が高く、ライセンスのかかっていないデジタルコンテンツの場合は、履行能力を超えた注文を観念できないので決定を留保する必要性が低い。

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③サイト利用規約により契約の成立時期等が規定されている場合

電子商取引を行う場であるウェブサイトには、利用規約、利用条件、利用契約等の形で取引条件に関する記載されていることがある(以下「サイト利用規約」という。)。サイト利用規約には、契約の成立や効力に関して規定している場合がある。

例えば「商品を御注文いただいた場合、お客様からの御注文は、当サイトに対する商品購入についての契約の申込みとなります。御注文の受領確認と御注文内容を記載した『御注文の確認』メールが当サイトから送信されますが、お客様からの契約申込みに対する当サイトの承諾は、当サイトから商品が発送されたことをお知らせする『御注文の発送』メールがお客様に送信されたときに成立します。」などと利用規約に記載されている場合がある。このようなサイト利用規約上の条項が、ウェブサイトの利用者の注文を申込みと解するか承諾と解するか

の判断に影響を与えるか、という問題がある。

ⅰ)事前に利用規約への同意を含めた会員登録等がなされている場合

ウェブサイトで電子商取引を行う場合、売買契約等の個別の取引を行う前に、当該ウェブサイトを通じた取引について会員登録等を利用者が行うことがある。

この利用者による会員登録は、当該ウェブサイトを通じた(複数の)個別取引についてウェブサイト運営者と利用者を当事者として締結された基本契約としての性質を有していると考えられる5。個別取引における契約の成立や効力に関わる条項を含むサイト利用規約がこの基本契約に組み入れられる場合6、当該ウェブサイトを通じた個別取引に関してウェブサイト運営者が行う当該ウェブサイト上の表示、及びそれに対する利用者の注文の意味は、そのサイト利用規約

上の条項に従って解釈される。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

5 本準則Ⅰ-2-1-1「利用規約の定型約款としての契約への組入れ」参照。

6 本準則Ⅰ-2-1-1「利用規約の定型約款としての契約への組入れ」参照。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ⅱ)事前に会員登録等のサイト利用に関する明示的な合意がなされていない場合

事前にウェブサイト利用についての会員登録等がなされていない場合であっても、当該ウェブサイト上の表示において、その表示が申込みであるか否かが明示されている、あるいは契約の成立時期について明示されている等の場合には、当該ウェブサイト上の表示は、それに従って性質決定がされ得る。

また、利用者に対して、個別の取引を行う前の段階で、契約の成立時期等についてのサイト利用規約の条項が開示されている場合には、会員登録等が明示的になされていなくとも、その部分についての黙示の合意が認定される場合も考えられる。その場合には、ウェブサイト上の表示及びそれに対する利用者の注文の意味は、利用規約上の条項に従って解釈される。

他方、ウェブサイト上の表示の意味が明示されておらず、かつ契約の成立時期等についての黙示の合意も認定できない場合、当該ウェブサイト上の表示、及びそれに対する利用者の注文の意味は、前記②に示した一般的基準に従って、通常の意思表示の解釈の手法に基づいて解釈されることになる。

(2)意思表示の「到達」の意義

意思表示の到達の時期について民法には明文の規定はないが、意思表示の到達とは、相手方が意思表示を了知し得べき客観的状態を生じたことを意味すると解されている。すなわち、意思表示が相手方にとって了知可能な状態におかれたこと、換言すれば意思表示が相手方のいわゆる支配圏内におかれたことをいうと解される(最高裁昭和36年4月20日第一小法廷判決・民集15巻4号774頁、最高裁昭和43年12月17日第三小法廷判決・民集22巻13号2998頁)。

電子的な申込みや承諾の通知の到達時期については、相手方が通知に係る情報を記録した電磁的記録にアクセス可能となった時点をもって到達したものと解される。例えば電子メールにより通知が送信された場合は、通知に係る情報が受信者の使用に係る又は使用したメールサーバー中のメールボックスに読み取り可能な状態で記録された時点であると解される。具体的には、次のとおり整理されると考えられる。

①相手方が通知を受領するために使用する情報通信機器をメールアドレス等により指定していた場合や、指定してはいないがその種類の取引に関する通知の受領先として相手方が通常使用していると信じることが合理的である情報通信機器が存在する場合には、通知がその情報通信機器に記録されたとき、②①以外の場合には、宛先とした情報通信機器に記録されただけでは足りず、相手方がその情報通信機器から情報を引き出して(内容を了知する必要はない。)はじめて到達の効果が生じるものと解される。

なお、仮に申込者のメールサーバーが故障していたために通知が記録されなかった場合は、申込者がアクセスし得ない以上、通知は到達しなかったものと解するほかない。

他方、通知が一旦記録された後に何らかの事情で消失した場合であっても、記録された時点で通知は到達しているものと解される。

(3)「読み取り可能な状態」の意義

①送信された通知が文字化けにより解読できなかった場合(なお、解読できないか否かについては、単に文字化けがあることのみではなく、個別の事例に応じて総合的に判断されることとなる。

例えば文字コードの選択の設定を行えば復号が可能であるにもかかわらず、それを行わなかったために情報を復号することができない場合のように、当該取引で合理的に期待されている相手方のリテラシーが低いため、情報の復号ができない場合には、表意者(通知の送信者)に責任がなく、この要件は、相手方が通常期待されるリテラシーを有していることを前提として解釈されるべきであると考える。)や、②相手方が有していないアプリケーションソフト(例えばワープロソフトの最新バージョン等)によって作成されたファイルによって通知がなされたために復号して見読することができない場合には、相手方の責任において、その情報を見読するためのアプリケーションを入手しなければならないとすることは相当ではなく、原則として、相手方が復号して見読可能である方式により情報を送信する責任は表意者にあるものと考えられる。したがって、相手方が復号して見読することが不可能な場合には、原則として通知は不到達と解される。

(4)端末等の画面に意思表示が表示される場合

インターネット通販等の場合、ウェブブラウザやアプリを通じて申込みがなされ、承諾もウェブブラウザやアプリ上の表示でなされることがある。例えばウェブサイト運営者によって端末等の画面上に商品の表示(申込みの誘因)がなされ、それに対して利用者が端末等の画面上の定型フォーマットに商品名、個数、申込者の住所・氏名等の必要事項を入力し、これを送信することにより申込みの意思表示が発信され、この申込通知がウェブサーバーに記録された後、申込者の端末等の画面に承諾した旨又は契約が成立した旨が自動的に表示されるシステムが利用される場合がある。

このように端末等の画面を通じて通知が発信された場合についても、前記(2)で示した意思表示の到達の意義及び電子メールの場合における通知の到達時期と同様の視点で考えるのが相当である。すなわち、端末等の画面上の通知が相手方に到達した時点とは、相手方が意思表示を了知し得べき客観的状態を生じた時点、すなわち読み取り可能な状態で申込者(受信者)の支配領域に入った時点と考えられる。前述の例においては、ウェブサーバーに申込データが記録された時点で申込みの効力が発生し、これに応答する承諾データが申込者側に到達の上、申込者の端末等の画面上に承諾通知が表示された時点で承諾の効力が発生、すなわち契約が成立したと解することになる。また、承諾通知が端末等の画面上に表示されていれば足り、申込者がそれを現認したか否かは承諾通知の到達の有無には影響しない。他方、通信障害等何らかのトラブルにより申込者の端末等の画面に承諾通知が表示されなかった場合は、原則として承諾通知は不到達と解される。

ちなみに、前記①に示したように、「お申込みありがとうございました。在庫を確認の上、受注が可能な場合には改めて正式な承諾通知をお送りします。」といったように、契約の申込みへの承諾通知が別途なされることが明記されている場合などは、受信の事実を通知したにすぎず、そもそも承諾には該当しないと考えられるので、注意が必要である。

なお、承諾通知が端末等の画面上に表示された後、契約成立を確認する旨の電子メールが別途送信される場合もあるが、この場合も契約の成立時期はあくまで承諾通知が表示された時点であり、後から電子メールが到達した時点ではない。他方、承諾通知が端末等の画面に表示されなかった場合、契約成立を確認する旨の電子メールが送信されていれば、それが到達した時点で契約は成立している。

最終改訂:令和2年8月

認知症の人の症状悪化と家族の介護負担増の実態

広島大学【研究成果】コロナウイルス感染症の拡大により、認知症の人の症状悪化と家族の介護負担増の実態が明らかに ~全国945施設・介護支援専門員751人のオンライン調査結果 ~

概要です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しては長期的な取組が必要であり、そのためにはマスクの着用など含めた新しい生活様式への移行が必要であるとされています。しかし、認知症の方は認知機能低下による情報やサービスへのアクセスの困難さ、環境変化への適応の困難さから新しい生活様式の実践が困難である可能性が考えられます。さらに、新型コロナウイルス感染拡大下においては、外出自粛や施設における面会制限などの感染予防のための取組により、身体機能の低下や行動心理症状の増悪などの悪影響が認知症者に生じていたと言われています。また、認知症の方が感染した場合には、認知症症状や行動心理症状などのため、隔離など必要な対応が困難であったとする意見も聞かれました。認知症者のほとんどが高齢であり新型コロナウイルス感染では重症化するリスクが高いにも関わらず、新型コロナウイルス感染症への備えに関して多くの面で課題があると考えられます。

広島大学大学院 医系科学研究科共生社会医学講座の石井 伸弥寄附講座教授は、一般社団法人 日本老年医学会、広島大学公衆衛生学講座と共同で高齢者医療・介護施設および介護支援専門員を対象としたオンラインによる質問票調査を行い、コロナウィルス感染症感染拡大下(おおよそ2020年2月~6月頃)の期間に高齢者医療・介護施設に入院もしくは入所中の認知症者や在宅で介護保険の居宅サービスを利用している認知症者や家族にどのような影響がみられたのか、またそれに対してどのような取組が行われたのか調べました。

入所系医療・介護施設945施設および介護支援専門員751名がオンライン調査票に回答しました。入所系医療・介護施設の32.5%に運営状況に大きな変化があったと回答しており、さらに、ほぼ全ての施設が入所者の日常的な活動に制限が生じたと回答しました。通所系や訪問系サービスに関しては、介護支援専門員の71.5%が介護サービス事業所の運営状況に大きな変化があったと回答しており、78.7%が認知症者が少なくとも一部のサービスが受けられなくなった、受けなくなったと回答しています。

医療・介護施設の38.5%、介護支援専門員の38.1%が認知症者に影響が生じたとしており、特に行動心理症状の出現・悪化、認知機能の低下、身体活動量の低下等の影響がみられたと回答しています。

介護保険サービスが受けられなくなった場合、家族が介護を行うことがあったと72.6%の介護支援専門員が回答しており、そのため家族が仕事を休んだり、介護負担のため精神的・身体的な負担が増したと回答しています。

今後、新型コロナウイルス感染症拡大下における認知症者の実情についてさらに深く調査するため、秋田大学高齢者医療先端研究センター等と共同で高齢者医療介護施設従業員や介護支援専門員を対象としたインタビュー調査を実施する予定です。

これらの調査結果は、認知症高齢者が感染拡大を予防する「新しい生活様式」を実践するため、どのような支援が適切か検討する基礎資料として活用されることが期待されます。

https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/59484

 先日の相談でもあったので、掲載しました。

夫は奥様に全部あげるという公正証書遺言を書いていました。夫は奥様より10歳以上年齢が上だったから、というのが理由ということです。

現在のコロナ禍で、奥様の認知症が進みました。コロナ禍以前からその兆候があったのかは分かりません。少なくとも日常生活には支障がなかったようです。車も運転していました。

「コロナ禍で、2か月位家から出なかったため、物忘れや転倒が多くなっている。もし、私が先に亡くなったとして大丈夫なのか?遺言を子供に渡すなどに書き換えた方が良いのか?」というような不安がありました。

任意後見契約は締結していません。

奥様の状態を聞いて、任意後見契約の締結が微妙な状態でありやるなら早めに締結した方が良いこと、任意後見契約が締結出来ない場合、法定後見人が就くことなどを説明しました。

遺言を書き換えるかは、任意後見契約が締結出来るか、公証人からの判断を待って考えても遅くはないことを説明しました。遺言は単独行為だからです。

民事信託については、相談者は興味があったようですが、今回は遺言と同様、任意後見契約が締結出来るのか、それからの話になるんじゃないかという説明をさせていただき、民事信託の仕組みの説明を簡単にしました。

奥様は、最近は家の近くを散歩していることを聴いて少し安心しました。2か月も家から出なかったら、やっぱり何らかの変化があって当然だよなぁと感じるとともに、難しい判断でもあるなと思いました。

横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(2)」

登記情報[1]の記事です。

委託者の変更登記(委託者が亡くなっている、又は解散していて協力が得られない場合で、受益者変更登記に遅れて登記申請するとき)について

私見です。

1・旧信託法の適用を受ける信託行為の場合(平成19年9月29日以前)

登記原因証明情報・・・信託行為を証する情報、信託の変更を行っていて登記事項であるが登記されていなければ、信託の変更を証する情報。

委託者の地位移転に関する条項が登記記録、信託行為を証する情報、信託の変更を証する情報になければ、新たに受託者と受益者で作成する。

現受益者の印鑑証明書の可否・・・委託者の地位移転に関する条項が登記記録、信託行為を証する情報、信託の変更を証する情報になければ、新たに受託者と受益者で作成する場合は必要。

対象の信託行為が、新信託法の適用を受けることを受託者と受益者が同意したことを証する情報は必要か・・・不要だと考えます。登記申請において添付情報として求められていることを確認することが出来なかったからです。

2・旧信託法の適用を受ける信託の登記が信託法の適用を受ける信託となった場合に、委託者の地位の変更の登記申請は義務か。

不動産登記法103条記載の通り、義務だと考えます。受託者または、受益者の単独申請となります。ただし、罰則規定を見つけることが出来なかったので、実体上の一致を求めない合理的な理由がある場合、税の軽減措置を受ける必要がない場合などは、強制は出来ないものと考えます。

登記原因証明情報、受益者の印鑑証明書添付の可否については、1、と同じ考えです。


[1] 705号 2020.8 きんざい P49~

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