民事信託に関する問い

・受益者代理人と後見監督人の性質の違いはあるか?

受益者代理人は、受益者の代わりに受益者の権利をを行使します(信託法139条、140条)。信託監督人は、受益者とは独立した機関として受益者に認められている権利を行使します(信託法92条、132条、133条)。

関連

・受益者代理人の定めを設置しなければいけないことは流布されたのか?

 一時期、そのような記載がある書籍や勧める研修もありましたが、設置しなければならない、というような流布はなく、実務も専門家、案件それぞれの個別具体的な事情により設置したりしなかったりしていたのではないかというのが私の感覚です。

関連

・受益者代理人が就任すると、受益者の権限が制限されるのか?

 信託法139条4項で、原則として信託法92条に記載がある権利と信託行為において定めた権利を除いて、その権利を行使することができない、として受益者の権限を制限しています。ただし、信託行為に定めることで受益者の権限の制限を緩めたり、受益者代理人の権限を制限したりすることが出来ます。

・信託監督人に加えて、または信託監督人に代えて受益者代理人の設置を検討する場合とはどのような場合か?

 受益者代理人の設置が必須になる場合として、どのような場面が考えられるでしょうか。信託監督人という言葉に当事者が違和感を覚えてためらう場合、直ぐに成年後見制度を利用することを当事者が躊躇する場合、受益者の性格や年齢など、考えられることはありますが、必須とまではいえないなと感じます。

・会計法上の計算期間と税法上の計算期間の違いとはどのようなものか?

会計法上の計算期間・・・会社法431条、会社計算規則3条、法人税法22条4項。

税法上の計算期間・・・所得税法13条、所得税基本通達13-2。

 信託行為によって4月1日から3月末日までの計算期間としても、税法上は1月1日から12月末日となる。

・武田昌輔「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/03/25/ronsou.pdf

税法において明確な別段の定めのあるものについては、税法固有の目的から収益、損益について明確にされているので立法論の問題は別として、この公正処理基準の効力は及ばない。もっとも、別段の定めにおいても種々の会計的処理を定めているので、その処理について明確でない点は、この公正処理基準に従って計算すべきものと解される。

・法定調書とはどのようなものか?

所得税法227条、242条、信託受益権の譲渡の対価の支払調書(同合計表)、信託の計算書(同合計表)(所得税法227条)、信託に関する受益者別(委託者別)調書(同合計表)(相続税法59条3項)など。

・損益通算の規定とは何か?

規定を読んでいると、組合を参考にして信託に関しても定められているのかなと感じます。

国税庁タックスアンサー「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm

改正税法のすべて 平成19年版112~P115

租税特別措置法41条の4の2、同法施行令26の6の2、同法施行規則18条の24

・信託銀行で信託口口座を作成する場合に、士業が関わる意味は何か?

 信託銀行は信託のプロ、信託銀行から学ぶことは多い、と民事信託に関わった頃からあらゆる書籍、研修で言及され続けています。なのに、なぜ信託銀行で民事信託の信託口口座を作成する際に士業が関わる必要があるのでしょうか。信託銀行で全て支援を行えば良いのかなと思います。信託銀行としては、全て信託行為の設定から終了まで支援して報酬をいただくことも考えているようです(実際に実施している信託銀行もあるのかもしれません。)ただし、現在は第三者委託の受託者(信託法35条)としての業務を主に行っているようです。責任の重さと報酬額の釣り合い、紛争性の大きさ、未確定な部分の多さなど、規模が大きい企業だからこそ、色々と考慮することがあるんだなと感じました。

・信託監督人の適任は税理士か?

 私は税理士が適任だと思います。会社法における会計参与(会社法374条~)のような感じでしょうか。信託財産に不動産がある場合、不動産登記申請時に司法書士から信託監督人の氏名か名称の記録を求められる可能性が高いと思います。おそらく住所や事務所の所在地は抵抗があるのではないでしょうか。会社の場合は、1つの会社に対して、1回履歴事項全部証明書に記録されますが、信託監督人の場合は、信託財産である不動産全てに記録されることが違いなのかなと思います。税理士にとって、どのようなメリットがあるのかが私には分からないので、今のところ税理士さんに信託監督人への就任をお願いしたことはありません。

・認知症の疑いはないか、受託者主導ではないか?

 まず、医師から認知症の診断をされたことで、直ぐに信託設定は不可能と判断するのは少し違うのかなと思います。親族とは日常生活、財産管理についてやり取りが支障なく出来る方がいらっしゃるからです。金融機関などから借入れがあり、第三者が関わっているかなどによっても変わりますが、直ぐに信託設定は不可能と決めつけることは委託者本人の意思を摘むことになるのではないかと思います。

 受託者主導、というのがどのようなことを指しているのか。委託者の子供のうちの一人が自分が全ての財産を引き継ぎたいために、委託者を引っ張って信託行為を半ば無理やり設定させる、ということなのでしょうか。このような傾向は遺言でも任意後見(判断能力喪失後から亡くなるまでの財産管理について)でもあるのではないでしょうか。民事信託だけの問題ではないと思います。

 受託者主導だから紛争性がある、信託行為として問題がある、という考え方も専門家からの見方になっているような気がします。結果論ですが、紛争になるときは委託者主導でもなります。専門家の仕事は、誰が主導しているのかに関係なく、信託行為の内容を法令に従った内容にすること、個々の案件に応じて信託行為の内容を考えること(例えば裁量型信託にせず他の親族の同意などを必要とする条項を設ける。)、紛争性があるとして、その発生を抑えるようなアドバイスをすること(例えば法定相続分に関しては保険加入を検討する。)、紛争が起こっても早期に解決出来るような仕組みを作ること(例えば、ADR機関の利用を予め信託行為で定める。)だと思います。

・信託法164条について、日本の信託法において、原則として、受託者の合意だけで信託を終了することは出来ないのが前提か?

 元々委託者の財産について、受託者に所有権を移転し、管理運用を任せるのが信託とすれば、委託者と受益者が、この仕組みが必要なくなったと合意した場合に終了出来ることは、前提であり妥当だと思います。

参考

道垣内弘人編「条解信託法」弘文堂P701~702

・多様な信託形態は遺言代用信託の増加とは相反するか?

 遺言代用信託契約での記載内容は多種多様であり、金融実務、公証実務によって画一的にならざるを得ない面があるのではないか、というのが現在の私の考えです。自己信託の設定や信託契約書の内容について、根拠なく駄目だと言われることが何件かあります。

・監視・監督は必須なのか?信託監督人の利用が少ないのは課題か?

 必須とは言えないのではないかと思います。また監視・監督の関与の強弱によるのではないかと思います。監視されるのは嫌だという方もいると思います。何かあれば直ぐ3日以内に報告書を提出して下さい、と内容証明郵便が送られてくるような監視・監督であれば、受託者としても困ると思います。月に一度、年に2回など定期的に書類を提出しながら世間話でも出来る監視・監督であれば、委託者兼受益者も安心できるのではないかと思います。

・遺留分を侵害している民事信託の設定は、金融機関から信託口口座の開設を拒まれることがあるのか。

 そもそもですが、遺留分を侵害しているかを知るためには、委託者の家族関係を知ることが必要となります。金融機関にそのような権限があるのでしょうか。誰か知っていたら教えてください。

・信託の効力発生時期を財産権の移転を条件にする方がよいのか?

 信託財産目録に記載された金銭を信託口口座に入金し、不動産登記を申請したときを信託の効力発生時期とする、という方法は良いなと感じました。

・本人の意思能力低下後に追加信託を行うことは、禁止されるべきか?

 信託行為に不動産であれば具体的記載、金銭であれば金額か上限が記載されていれば可能だと考えます。ただし、不動産登記法の構造上、本人の判断能力がない場合には、追加信託を行うことが出来ません。

・追加信託は公正証書を必須とするべきか?

 当初の信託行為に記載があるのであれば、委託者と受益者の合意があれば必須とする必要はないと思います。ただし、案件によります。また公証実務の電子化の進み具合にもよります。

・終了時の規定として、一般承継人の協議はどうか。

 残余財産の帰属権利者は一般承継人の協議による、という定めを設けると、信託期中の財産管理について疑義が出たりする可能性が多いのかなと感じます。私は受益者を第2次、第3次まで定めておいて、信託終了時の受益者を残余財産の帰属権利者とすることが多いです。

民事信託に関する問いかけ

・帳簿と財産状況開示資料(信託法37条)は違うのか?

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

信託法(帳簿等の作成等、報告及び保存の義務)

第三十七条 受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

2 受託者は、毎年一回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

3 受託者は、前項の書類又は電磁的記録を作成したときは、その内容について受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)に報告しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 受託者は、第一項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、その作成の日から十年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときは、その日までの間。次項において同じ。)、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人。第六項ただし書において同じ。)に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

5 受託者は、信託財産に属する財産の処分に係る契約書その他の信託事務の処理に関する書類又は電磁的記録を作成し、又は取得した場合には、その作成又は取得の日から十年間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

6 受託者は、第二項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、信託の清算の結了の日までの間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、その作成の日から十年間を経過した後において、受益者に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

信託法施行規則

第八章 計算

第三十三条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定めるべき事項は、信託計算規則の定めるところによる。

一 法第三十七条第一項及び第二項

二 法第二百二十二条第二項、第三項及び第四項

三 法第二百二十五条

四 法第二百五十二条第一項

信託計算規則

(信託帳簿等の作成)

第四条 法第三十七条第一項の規定による信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録(以下この条及び次条において「信託帳簿」という。)の作成及び法第三十七条第二項の規定による同項の書類又は電磁的記録の作成については、この条に定めるところによる。

2 信託帳簿は、一の書面その他の資料として作成することを要せず、他の目的で作成された書類又は電磁的記録をもって信託帳簿とすることができる。

3 法第三十七条第二項に規定する法務省令で定める書類又は電磁的記録は、この条の規定により作成される財産状況開示資料とする。

4 財産状況開示資料は、信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の概況を明らかにするものでなければならない。

5 財産状況開示資料は、信託帳簿に基づいて作成しなければならない。

6 信託帳簿又は財産状況開示資料の作成に当たっては、信託行為の趣旨をしん酌しなければならない。

(会計帳簿等を作成すべき信託の特例)

第五条 前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する信託については、法第二百二十二条第二項の会計帳簿を受託者が作成すべき信託帳簿とし、同条第四項の規定により作成すべき書類又は電磁的記録を受託者が作成すべき財産状況開示資料とする。

一 当該信託の受益権(二以上の受益権がある場合にあっては、そのすべての受益権)について法第九十三条第一項ただし書の規定の適用がなく、かつ、当該受益権について譲渡の制限がないこと。

二 第三者の同意又は承諾を得ることなく信託財産に属する財産のうち主要なものの売却若しくは信託財産に属する財産の全部若しくは大部分の売却又はこれらに準ずる行為を行う権限を当該信託の受託者が信託行為によって有していること。

2 前条の規定にかかわらず、前項に規定する信託においては、信託帳簿及び財産状況開示資料の作成は、次章(第二十条及び第三節を除く。)の規定に従って行わなければならない。

以前受けた質問と回答を再掲します。この回答に関しての質問です。

・一般社団法人が解散した場合の、保留利益は社員や設立者に帰属しないので相続税の対象外になるとは?

相続税の関係については、最終的に税理士の判断を仰ぎます。一般社団法人が解散した後の残余財産の帰属先については、非営利型でない限り、解散後に清算法人の社員総会で定めることが出来ます。

・他の専門家に聞いたが、一般社団法人の設立は、法改正によって相続税対策にならないし、税理士が必要になり、かえって費用がかかるか?

 上の質問のうち、「法改正によって相続税対策にならないし」の部分は、一般社団法人が財産の所有者になった場合に関してです。信託の受託者になる場合とは関係がありません。「税理士が必要になり、かえって費用がかかるか」については、一般社団法人を設立するか、信託を設定するかと税理士が必要かとは関係がありません。税について安心して業務を行いたい場合は、専門家である税理士に依頼するのが良いと思います。反対に自分でやるという場合は、法人を設立しても信託を設定しても、税務署に聞いたり調べたりしながら自分でやれば良いと思います。

国税庁 No.4143 特定の一般社団法人等に対する課税

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4143.htm

・(受託者の信託事務)として、「信託不動産の売却代金を管理し、受益者の生活費、医療費及び介護費用等に充てるために支出すること」は可能か。

 上の記載だと、信託不動産の売却が前提となっています。私なら信託不動産の売却が確実な場合以外は、このような記載はしません。受託者の信託事務として、信託不動産の管理方法に売却することが出来る、信託金銭の管理方法に受益者の生活費、医療費及び介護費用と分けて書くと思います。

・信託監督人・受益者代理人に、受託者の配偶者、子、兄弟姉妹が就任することに問題はないか。

 民法850条、任意後見契約に関する法律5条が根拠として考えられているようです。私は少し分かりませんでした。各信託ごとに構成出来るのか良いのかなと思います。士業の考え方に近すぎないかなというのが正直な感想です。信託監督人、受益者代理人という言葉は堅いので、士業など専門家が就任してもらうと安心出来る、という側面もあると思うのでそれは否定しません。ただ、多くの民事信託において、信託監督人が必要か、受益者代理人が必要かは少し考える必要があると思います。私は、信託監督人・受益者代理人を置くことが出来ることと、具体的な選任方法は信託行為に記載しますが、信託設定時にはほとんど置いていません。

民法

(後見監督人の欠格事由)

第八百五十条 後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

任意後見契約に関する法律

(任意後見監督人の欠格事由)

第五条 任意後見受任者又は任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない。

・受託者に法律上、会計上、税法上の義務を理解させるとは、どの程度のことをいうのか?

 民事信託を支援する専門家には、受託者に法律上、会計上、税法上の義務を理解させなければならない、と言われましたが、どの程度なのでしょうか。完全に理解することはおそらく専門家でも出来ません。少なくとも私はそのような専門家を知りません。

 受託者の義務について、どんな時に義務が発生するか、そのとき何処に、誰に頼めば良いのかの窓口になることが必要だと思います。そして、それは信託設定時に全て出来ることではなく、受託者としての事務をこなしながらじゃないと出来ないのではないかと思います。

「家族信託で出来ないこと」について

あるメールマガジンを少し加工しています。読みながら考えてみたいと思います。

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意外と間違いやすい。信託契約でできないことがあるので、今日は紹介していきます!

家族信託でできないこと

(1)親名義の預金は下ろせない

(2)親名義の不動産も動かせない

(3)老人ホーム入居の契約はできない

(1)親名義の預金は下ろせない

「えっ、どういうこと!?」「親の預貯金を使えるように家族信託したいのに・・」

と思われた方もいるかもしれません!しっかり説明しますね(^^)家族信託で「親のお金を使える」ようにできます!しかし、「親の名義の預金は下ろせません」。大切なことは、「信託契約だけではダメ!」ということです。例えば、家族信託契約書を持って銀行に行き、親名義の預金を下ろしたいと言っても、銀行員は対応できません。親名義の口座からお金を下ろせるのは、親だけだからです!そのため、家族信託契約を結んだお客様には契約後に信託用の子供名義の口座を開設いただきます。そして、信託したお金を移動させるのです。子供名義の口座なので、子供の裁量で下ろしたり、振り込んだりできるのです。親の口座から、信託用の口座にお金を移すのは普通の銀行振込になります!そのため注意すべきは、親がまだ契約能力がある間でないとお金を移すことができないのです。

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 「契約後に信託用の子供名義の口座を開設いただきます。」は、おそらく「委託者【親氏名】受託者【子供氏名】信託口」というような名義の口座か信託専用の子供名義の口座を指しているのだと思います(信託法34条)。

 「子供名義の口座なので、子供の裁量で下ろしたり、振り込んだりできるのです。」は、信託行為の内容によります(信託法26条、29条、30条など)。

 「親の口座から、信託用の口座にお金を移すのは普通の銀行振込になります!そのため注意すべきは、親がまだ契約能力がある間でないとお金を移すことができないのです。」。もし信託契約を締結した後、金融機関で信託用の口座を作る前に親の契約能力というものが無くなった場合、お金を移すことは出来ないのでしょうか。私は経験がないのですが、金融機関で事前に信託契約書の内容について調整していることを前提として、お金を移すことは債務の履行のように構成出来ないのかなと考えています。また0円で信託用の口座を開設出来る場合、自益信託の信託契約書に、受益者代理人の定めがあるときは資金の移動が出来ると思われます。

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(2)親名義の不動産も動かせない

こちらも驚いたかもしれませんが、お金の場合とよく似ています!不動産も信託をしただけでは足りず、不動産の登記簿に信託した旨を載せる手続きをして、不動産の名義を子供に変更しないといけません!!不動産の登記簿を子供名義に変えるためにも親の契約能力が必要になります!そのため、信託契約だけしておいて後日に不動産の名義を変える場合に、注意が必要です。もしも、親の契約能力が無くなっていた場合には、成年後見制度を利用しないと不動産を動かすことができません。

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この部分に関しては、信託契約公正証書を作成する際に信託財産に属する財産となる不動産に関して登記申請の委任状にも一緒に署名押印しておけば、不動産登記申請自体は行うことが出来ます(不動産登記法17条)。ただし、印鑑証明書について3か月の有効期限があるので、その期間内の登記申請が必要です。

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(3)老人ホーム入居の契約はできない

家族信託契約をしていても、親に代わって老人ホームなどの入居契約をする権限は子供にはありません。家族信託契約は、信託された財産についての財産管理の契約になります!そのため、施設入居時に親の契約能力が無くなっていて、施設より後見人の利用を求められた場合、成年後見人の手続きをしないと入居契約は出来ません!!!そのため、信託契約と一緒に任意後見契約をして、子供が後見人なれるようにしておくことも合わせて提案をしています!

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 「施設入居時に親の契約能力が無くなっていて、施設より後見人の利用を求められた場合、成年後見人の手続きをしないと入居契約は出来ません。」の部分は契約能力というのがどのようなものか分からないのですが、その通りだと思います。

特例有限会社の取締役を変更する場合

 母が有限会社の取締役をしていました。会社の取締役は母1人です。事業は母が病気がちになってからしていません。母が亡くなりました。役所と有限会社との間で、土地に関する契約が残っていたため、長男が会社の株式を相続して取締役に就任する登記を行いました。役所との契約が終わった後、将来的に事業を行いたいという次男に取締役を変更することになりました。

法務省のホームページから様式を取り出す場合は、上の手順を取りました。

オンラインで登記申請書を提出する場合

https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/

受付番号票貼付欄

特例有限会社変更登記申請書

 1.会社法人等番号   3600-02-010614

・分からない場合

経済産業省     gBizINFOで検索して、左端の番号を抜いた12桁が会社法人等番号。

https://info.gbiz.go.jp/hojin/ichiran?hojinBango=9360002010614

   フリガナ        ナントカカントカ

 1.商 号         なんとかかんとか有限会社

 1.本 店        沖縄県那覇市那覇一丁目1番1号

 1.登記の事由    取締役の変更

 1.登記すべき事項  別紙のとおり

 1.登録免許税        金10,000円

登録免許税法別表第一カ

 1.添付書類

株主総会議事録                    1通

株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) 1通

辞任届                        1通

就任承諾書                      1通

印鑑証明書                      1通

 上記のとおり,登記の申請をします。      

       令和3年3月1日

                       沖縄県那覇市那覇一丁目1番1号

申請人 なんとかかんとか有限会社

             取締役 次男(     )会社印か商業電子証明書による署名

                 連絡先の電話番号 1100-1234

           那覇地方法務局  御中

  収入印紙貼付台紙

1万円  (登録免許税法別表一 カ)

臨時株主総会議事録

    令和3年2月15日当会社の本店において,臨時株主総会を開催した。

  株主の総数                          1名

 発行済株式の総数                     200株

   (自己株式の数 0株)

議決権を行使することができる株主の数            1名

議決権を行使することができる株主の議決権の数      200個

出席株主数(委任状による者を含む。)            1名

出席株主の議決権の数                   200個

出席取締役 【長男氏名】(議長兼議事録作成者)取締役候補者 【次男氏名】

 以上のとおり株主の出席があったので,定款の定めにより取締役【長男氏名】  は議長席につき,本臨時株主総会は適法に成立したので開会する旨を宣言し,直   ちに,議事に入った。

  議案   取締役の辞任に伴う取締役選任に関する件

 議長は取締役【長男氏名】から辞任の申出があったため,後任者の選任の必要がある旨を述べ,その選任方法を諮ったところ,出席株主中から議長の指名に一任したいとの発言があり,一同これを承認したので,議長は下記の者を後任者に指名し,この者につきその可否を諮ったところ,満場異議なくこれに賛成したので,下記のとおり就任することに可決確定した。

取締役 【次男住所】【次男氏名】

なお,被選任者は,席上その就任を承諾した。

 議長は,以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ,閉会した。上記の決議を明確にするため,この議事録を作成し,議長及び出席取締役がこれに記名する。

 令和3年2月15日             なんとかかんとか有限会社臨時株主総会

  議事録作成者(議長) 【長男氏名】(    )会社印か商業電子証明書による署名 

 取締役  【次男氏名】(    )実印か電子署名 

 株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)

証 明 書

 次の対象に関する商業登記規則61条2項又は3項の株主は次のとおりであることを証明する。

 令和3年2月15日付け株主定時総会の全ての議案につき、総議決権数(当該議案につき、議決権を行使することができる全ての株主の有する議決権の数の合計をいう。以下同じ。)に対する株主の有する議決権(当該議案につき議決権を行使できるものに限る。以下同じ。)の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であって、次の①と②の人数のうち少ない方の人数の株主の氏名又は名称及び住所、当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあっては、その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権の数に係る当該割合は、次のとおりであることを証明します。

 氏名又は名称住所株式数  (株)議決権数議決権数
の割合
1 長男氏名長男住所 200 200 100パーセント 
2     
3    
 合計 200100.0%
総議決権数 200 

なんとかかんとか有限会社

取締役【次男氏名】(    )会社印か電子署名

辞任届の例

辞 任 届

  私は,このたび一身上の都合により,貴社の取締役を辞任いたしたく,お届けいたします。

 令和○年○月○日

              ○県○市○町○丁目○番○号【長男住所】

              長男氏名    ㊞ 実印か電子署名

なんとかかんとか有限会社御中

死亡届の例

死 亡 届

  取締役【長男氏名】は,令和○年○月○日死亡いたしましたので,お届けいたします。

  令和○年○月○日(死亡届を作成した日)

                 ○県○市○町○丁目○番○号【次男住所】

                       【次男氏名】    

なんとかかんとか有限会社 御中

 就任承諾書の例

就 任 承 諾 書

  私は,令和3年2月15日開催の貴社株主総会において,貴社の取締役に

 選任されたので,その就任を承諾します。

 令和○年○月○日(就任承諾をした日)

               ○県○市○町○丁目○番○号【次男住所】

           ○○ ○○【次男氏名】    ㊞実印か電子署名

なんとかかんとか有限会社 御中 

新保さゆり「株主名簿を整備しましょう!定款を見直しましょう!第1回株主名簿の記載事項とその変更手続」

 月報司法書士[1]の記事からです。株主名簿を整備しましょう、定款を見直しましょう、ということは、私が司法書士になった10年以上前から言われていました。司法書士の営業面からいっても、これをきっかけに法人との仕事を増やすことが出来る、というお話や研修もありました。ただ、私の場合ですが、こちらから株主名簿を整備しませんか?、定款を見直しませんか?とそれとなく言ったり小冊子を配って、実際に着手したことがありません。有償・無償を問わずです。

(2016年頃に作った小冊子です。)

 全て登記の依頼から始まって、定款が設立時のまま、平成18年施行の会社法改正前から代わっていない、株主名簿はない、株主は多分あの人とあの人と、という感じで作っていきます。そして登記完了後、定款と株主名簿(または社員名簿)を紙とデータで渡します。その後の登記や株主の変更の際、以前渡した物を持っていますか、と聴いて持っていますと答えてもらえる場合が半分くらい、という感覚です。

 会社設立は1日で完了、スピード感のある事業を、など定款や株主名簿に時間を割くのは正直なところ法人の利益になったりするわけではないので、お金がかかるし面倒くさいんだろうなと思います。私が法人の立場でも、そのように考えるかもしれません。

参考 内閣府マイナポータル「法人設立ワンストップサービスについて」

https://www.cao.go.jp/bangouseido/myna/index.html#houjinoss

 ただ、株主名簿については2016年から株式会社・投資法人・特定目的会社が登記申請を行う場合に株主リストという情報が必要となり、2018年から定款認証時に実質的支配者となるべき者の申告制度が始まりました。そのため株主名簿を作成する機会は少し増えたのかなとは思います。

日本公証人連合会「実質的支配者となるべき者の申告制度が2018年11月30日よりスタート」

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=324M50000001009_20190701_501M60000010015

第十三条の四 公証人は、会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には、嘱託人に、次の各号に掲げる事項を申告させるものとする。

一 法人の成立の時にその実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第四条第一項第四号に規定する者をいう。)となるべき者の氏名、住居及び生年月日

二 前号に規定する実質的支配者となるべき者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員(次項において「暴力団員」という。)又は国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十四号)第三条第一項の規定により公告されている者(現に同項に規定する名簿に記載されている者に限る。)若しくは同法第四条第一項の規定による指定を受けている者(次項において「国際テロリスト」という。)に該当するか否か

2 公証人は、前項の定款の認証を行う場合において、同項第一号に規定する実質的支配者となるべき者が、暴力団員又は国際テロリストに該当し、又は該当するおそれがあると認めるときは、嘱託人又は当該実質的支配者となるべき者に必要な説明をさせなければならない。

法務省「「株主リスト」が登記の添付書面となりました」

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html

商業登記規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339M50000010023

第六十一条 (添付書面)

1項 (略)

2 登記すべき事項につき次の各号に掲げる者全員の同意を要する場合には、申請書に、当該各号に定める事項を証する書面を添付しなければならない。

一 株主 株主全員の氏名又は名称及び住所並びに各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)及び議決権の数

二 種類株主 当該種類株主全員の氏名又は名称及び住所並びに当該種類株主のそれぞれが有する当該種類の株式の数及び当該種類の株式に係る議決権の数

3 登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には、申請書に、総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議(会社法第三百十九条第一項(同法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限る。以下この項において同じ。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であつて、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名又は名称及び住所、当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面を添付しなければならない。

一 十名

二 その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が三分の二に達するまでの人数

他に株券発行会社(会社法214条)の場合には、相続税の納税猶予の適用を受ける場合等、株券の担保提供が条件となっています(株券不発行会社の場合は、株式に税務署長が質権を設定することについて承諾した旨を記載した書類)。

国税庁「(問9)担保提供に関する書類等はいつまでに提出しなければならないのでしょうか。」

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/qa/qa_6/q09.htm

 株券不発行会社においては、株主名簿への記載・記録は第三者対抗要件(会社法130条)とされており、不動産登記と同じ位置付けを持つと考えると、自分たちで頑張って稼いだお金に関して名義変更などを疎かにしておくのは、少し怖い気もします。株主名簿は、株式会社の本店に備え置く必要があります(会社法121条、125条)。株主総会議事録を10年間ちゃんと保存している会社を初めて知ったことがありましたが、その会社も株主名簿は作成していませんでした。

 株主名簿の記載事項は法定されています(会社法121条、148条、154条の2、217条、)。いつかは株主名簿も株主情報、株主記録などと名称が変わるような気がします。株式所得日、1人の株主が複数回にわたり株式を所得している場合、株主が法人の場合などはそれぞれ記載の方法が解説されています。

 会社法132条により会社が株主名簿記載事項を株主名簿に記載・記録しなければならない場合でも、そのために株主から情報提供を受ける必要があるというのは、なるほど言われてみれば私が経験した実務では、全て情報提供を受ける形になっているなぁと思い、会社法はその辺を前提としているのだろうか、などと考えました。株主が印鑑を届け出るのは、私はやっていませんでした。株主総会で議決権を行使する場合、委任状を利用するとき(会社法310条)に押す印鑑と照合して本人かどうかを調べるためだそうです。そのようなやり方もあるのだなと思いました。株主に相続が起きた場合、株式譲渡があった場合、更新日の記載など意外と気付きにくいけれど、記録してあると後で助かる、という事柄はたしかにあります。気を付けないと。

 私自身は、定款附則を株主名簿にしておけば良いと考えています。保存・管理が難しいのではないかと考えるからです。ですが、株主リストなどを提出することを考えると難しいのかなとも思います。もしくは税務上毎年提出するような書類などと一体化出来ないか、少なくとも年に一回、定款と株主名簿(社員名簿)を見直す機会を作れないかなと思うところです。


[1] 2021.2№588 日本司法書士会連合会P64~

20221116追記

参考

登記研究896号(令和4年10月号)2022/10テイハン■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第103回)

         一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事

一般社団法人日本財産管理協会顧問

                  日本司法書士会連合会顧問 神﨑満治郎 

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