相続等により取得した不動産の登記義務などについての民法の改正について

 相続等により取得した不動産の登記義務などについての民法の改正について

民法等の一部を改正する法律

可決成立日 令和3年4月21日

公布日    令和3年4月28日

官報掲載日 令和3年4月28日

施行日    原則として公布の日から2年以内

第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

・持分の過半数の共有者の所在が分からない場合の管理行為

 共有者の一部が不特定又は所在不明である場合に、裁判所においてそのことを確認し、かつ公告を実施するなどの手続を取った上で、管理人の選任を経ることなく、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、又はその持分の過半数の決定によって共有物の変更又は管理を可能とする仕組みを創設。

・共有者の一部の所在等が不明である場合の変更・処分行為について

 共有物分割訴訟には、共有者全員を当事者としなければならないなどの手続上の負担があることも踏まえまして、共有者の一部の所在等が不明である場合に、訴訟手続ではなく非訟手続の下で、共有者全員を当事者とすることなく、他の共有者が適正な代価を支払った上で所在等不明共有者の持分を取得したり譲渡したりすることができる仕組みを創設。

・所在不明な共有者、相続人の探索方法について

 一般論として、例えば共有者の所在を知ることができないと認められるときには、登記簿や住民票といった公的記録を調査し、その住所に当該共有者が居住しているのかを調査してその所在が不明であることを立証。共有者が死亡して相続が開始しているケースでは、相続人やその所在を確認するため、戸籍や相続人の住民票などの調査が必要となるほか、当該不動産の利用状況を確認したり、他に連絡を取ることができる相続人がいればその相続人に確認してみるなど。

・誰々ほか十六名のような不動産登記記録の表題部記載について

 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づいて対応することが可能・登記官において探索等を行ってもその共有者が不明なケースでは、裁判所が管理命令を発し、その選任した管理人がその共有持分の管理、処分を行うことができる。

 所有者等不明共有者の持分の取得、譲渡の制度も表題部所有者不明土地について適用することが可能。申立人が、表題部所有者不明土地の共有者が不明であることを立証し、裁判所が命ずる金銭を供託するなど所要の手続を取れば、管理人の選任を経ることなく持分の取得、譲渡をすることができる。

・登記名義人が五十年以上前に死亡している土地について、子供の兄弟が三人いることが分かっている、二人についてはやっと連絡が取れました、でも、残り一人についてはどうも外国で亡くなっているらしい、相続人がどれだけいるかも分からない。この土地を譲り受けたい、あるいは処分したいという場合

 制度を利用し、遺産分割を経ることなく、他の相続人が当該土地の持分を取得するなどして譲渡することも可能。

・ごみ屋敷への管理不全建物管理命の適用可能性について

 ごみ屋敷についても、他人の権利利益の侵害の状況等によっては管理不全建物管理命の要件を満たす場合はある。

・相続人申告登記がされた後に遺産分割があったケースについて

遺産分割成立の日から三年以内に遺産分割の内容を踏まえた登記申請をする義務を負う。

・遺言が作成されていた場合

 遺言により不動産を取得すると定められた者は、所有権を取得したことを知った日から三年以内にその旨の所有権の移転の登記の申請か、相続人申告登記の申出をする義務を負う。

・相続人申告登記の添付書面について

 申出をする相続人が、被相続人の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出。

・相続登記申請をするための登録免許税(現行は不動産の固定資産税評価額の0.4%)について

令和四年度税制改正において必要な措置を検討。

・住所等の変更登記に当たって、他の公的機関との情報連携について

自然人・・・所有権の登記名義人から、その氏名、住所のほか、生年月日等の情報を提供してもらい、これを検索キーとして法務局側で定期的に住基ネットに照会して情報の提供を受けることにより、住所等の変更の有無を確認。

法人・・・省内のシステム間連携による対応が可能。法人の住所等に変更が生じた場合には、不動産登記システム側からの定期的な照会を要さずに、商業・法人登記のシステムから不動産登記システムにその変更情報を通知することにより、住所等の変更があったことを把握。登記官が職権的に住所等の変更の登記を行うことになる。

・改正法の施行日前に相続の開始等があった場合

 原則として適用。施行日前に既に相続が開始した場合又は住所等の変更があった場合であっても、登記の申請に必要な期間を確保する観点から、少なくとも施行日から三年間又は二年間の猶予期間を置く。

 施行日前に相続が開始した遺産の分割について、長期間が経過している場合には、法定相続分等の割合により分割を行うことを可能とすべく、改正法を適用。施行日前に生じた相続について、改正後の規定を適用することとしつつ、少なくとも施行日から五年間は具体的相続分による遺産分割の請求を求めることができる。

・管理不全土地管理の制度について地方公共団体の長などを請求権者としなかった理由

 管理不全土地管理制度について権利利益を侵害されるなどの利害関係の有無に関係なく地方公共団体に申立て権を付与することは、現行の所有者不明土地特措法で定められた目的の範囲を超えており、その是非については、同法の趣旨、目的や、同法における管理不全土地対策の位置づけも踏まえ、国土管理の観点から、別途検討すべき課題と整理された。

・管理不全土地、管理不全建物管理命令の申立て権者である利害関係人について

例えば公共事業の実施者などの土地の利用、取得を希望する者。隣地に擁壁が設置されている場合、劣化して倒壊して、それによる土砂崩れが生ずるおそれがあるというようなケースで、そのことを主張するその隣地の所有者など。

 ごみ屋敷状態で、草が生えて獣が入って悪臭が漂うとか、具体的な意味での隣地に対する影響が出ていればこれに該当する可能性はあるが、町内会あるいは自治体も含めて申立て権を認めるかどうか、利害関係に含めるかどうかは、引き続き議論をして検討。

・相続登記申請と住所変更登記申請義務について、過料の制裁を科さない正当な理由がある場合

 相続が数次にわたって何度も発生して、相続人が数十人を超えるなど極めて多数に上る場合。戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するケース。遺言の有効性、遺産の範囲等が争われているケース。

 申請義務を行う相続人自身が病気で入院している場合。登記費用を負担する能力がないケースについては、その財産状況や具体的な生活環境にもより、正当な理由があるとされる場合もある。

・DV被害者等の住所等の情報に係る部分について

 課長通知に基づく実務運用として、既に本人以外の者に対しては閲覧を制限する措置が取られているが、今回法制化。

20211004追記 改正後不登法第76条の6関係

Q 改正後に所有権を取得した人は、全員が検索用情報を提供するか。

A 現在、登録のある人は全員提供している。法務局が住民基本台帳ネットワークシステムに照会する基準をどのように設けるのかの問題。住民基本台帳法別表第一(三十一) 

Q改正前に所有権を取得して検索用情報を提供していない人は過料の対象となるか。

A 施行日前に既に住所等の変更があった場合であっても、少なくとも施行日から三年間又は二年間の猶予期間を置く。

Q 住所変更登記申請義務について、過料の制裁を科さない正当な理由がある場合とは

A 申請義務を行う相続人自身が病気で入院している場合。登記費用を負担する能力がないケースについては、その財産状況や具体的な生活環境にもより、正当な理由があるとされる場合もある。

Q 他の公的機関との情報連携について(自然人の場合)

A 所有権の登記名義人から、その氏名、住所のほか、生年月日等の情報を提供してもらい、これを検索キーとして法務局側で定期的に住基ネットに照会して情報の提供を受けることにより、住所等の変更の有無を確認。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和3年3月24日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00720210324&spkNum=5&single

・登記官が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報を取得をして、これに基づいて不動産登記にその旨を符号によって表示する制度の情報源

 住民基本台帳、また固定資産課税台帳のほか、長期相続登記等未了土地や表題部所有者不明土地の解消事業、また登記所備付け地図作成事業など。

・所有者不明土地、所有者不明建物管理人が、裁判所の許可を得て土地、建物を売却等した場合の不服申し立てについて

 借地借家人等の利害関係者を含めて、不服を申し立てることができない。

・沖縄県の大戦によって不動産登記とか公図とか戸籍が全て焼失してしまっている場合。今まで、その焼失等によって生じた沖縄の所有者不明土地について、沖縄の復帰に伴う特別措置法に基づき沖縄県又は市町村が管理するという便宜的な対応をしている。この不動産について、相続人があることが明らかでないときは相続財産法人となるが、その近隣に居住する者は戸籍謄本を確認することができないので、それが相続財産法人となっているかどうかすら確認ができないが、所有者不明土地管理の制度を利用することについて

 利用可能。

・沖縄県にある不動産登記簿にについて、表題部の所有者欄に所有者名の記載がない空欄、又は不明地と記載されていて、便宜的に県とか市町村の名前が記載されている。本来の所有者は不明であるが、その管理を地方自治体が行えることが沖縄の特別措置法によって担保されている。管理をしている地方自治体が利害関係人に含まれ、申立てをすることができるのか。

 沖縄県又はその市町村が管理している不動産について、所有者が不特定又は所在不明なものであることから、個別の事案における裁判所の判断に委ねられる。裁判所が選任する管理人による管理の必要性が認められる場合には、所有者不明土地管理命令が発令されるケースもあり得る。

 沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律第六十二条に基づいて現に土地の管理を行っている地方公共団体が、利害関係人として所有者不明土地管理命令を請求することができるかについては、個別の事案ごとの判断による。事案によっては利害関係が認められるケースもあり得る。

・外国籍の方の遺族年金等の請求について

 請求者との婚姻や親子関係などを明らかにすることができる書類として、戸籍謄本又は抄本の提出。外国籍の方の場合は、戸籍に代えて、請求者等の属する国の公的機関の発行した出生証明書や婚姻証明書などを提出。

 請求者等の属する国の公的機関が発行した証明書で、いつから婚姻されていたかなどの必要な確認ができない場合は、外国人登録原票を提出するケースもある。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第8号 令和3年3月30日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00820210330&spkNum=3&single

・居住者がいる建物がごみ屋敷となった場合

 居住者が、発令後に管理不全建物管理人の管理を妨げる行為をすることが見込まれるときは、管理人を選任したとしても、結局、訴訟を起こさざるを得ず、実効的な管理をすることが困難となる可能性が高いことから、権利利益を侵害されている者としては、この管理不全建物管理命令を求めるよりも、訴訟を提起して物権的請求権等を行使することが適当である場合もある。

 建物がいわゆるごみ屋敷状態となった場合、その居住者が管理人による管理を妨げる行為をすることが見込まれているケースでは、利用することが難しい。

 建物所有者が建物をごみ屋敷状態としたまま遠方に移住しており、建物を放置し居住者もいない、は居住者がいても管理人の求めに応じて任意に退出することが見込まれるようなケースでは、この制度の利用が想定される。

・利害関係人があらかじめ費用や報酬に見込まれる予納金を支払った場合

 管理人はその予納金から費用や報酬を受け取ることになり利害関係人は、別途、最終的な費用の負担者である土地の所有者に対して求償することになると考えられる。

・相続開始後、遺言がなく遺産分割も直ぐには調わない場合の最初の登記について

 法務省としては、法定相続分での相続登記ではなく、より簡易な手続である相続人申告登記が利用されて相続登記の申請義務が履行されるようになることを想定。

・管理人による共有持分の処分、共有物の分割協議、持分の全部を取得

 裁判所の許可を得て、所在が明らかな共同相続人との間で可能。

・選任される管理人の要件について

 専門職という縛りはない。

・所有者不明建物管理人が自ら建物を取り壊すことについて

 基本的には許されない。建物の管理を続けるのが困難なケースにおいて、所有者の出現可能性や建物の所有者に生ずる不利益の程度などを考慮した上で、建必要かつ相当と認められる場合には、管理人が、裁判所の許可を得た上で、建物を取り壊すことも可能。

・遺言がある場合で、2つの不動産のうち1つの不動産について相続登記を申請した場合の3年以内の起算日

 相続人が遺言書を添付して特定の不動産についての登記の申請をした際に、遺言書が他の不動産の所有権についても当該申請人に移転する旨を内容とするものであった場合に登記官が通知したとき。

・相続登記等の申請期間の最初の日

 原則として、当事者の主観。

・相続登記等の申請期間について

 相続人申告登記の申出が可能。

 遺産分割がされたケースについては、遺産分割が相続開始に伴う登記申請義務の三年以内にされた場合には、登記の申請をすることになります。

 遺産分割が三年以内にされないケースは、相続人申告登記をすることで義務の履行。その後、遺産分割が現に調ったケースは、遺産分割の日から三年以内に登記の申請。

 遺言が作成されていた場合、遺言により不動産を取得する者は、所有権を取得したことを知った日から三年以内。

・隣の土地を所有している人、住んでいる人が不明な場合に立ち入る際の事前通知について

 立ち入る際に隣地の所有者等の所在が不明な場合、事前の通知は不要。立ち入って隣地を使用した後に所有者の所在が明らかになった場合、所在が明らかになった所有者に対して事後的に通知する必要がある。

第204回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和3年4月13日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00720210413&spkNum=4&single

・相続人申告登記の申出をした後、遺産分割が調わない場合

  遺産分割が調うまで、申告登記のままで可能。期間は問わない。

・数次相続がある場合の相続登記等の申請期間について

 相続開始時から十年を経過するまでに家庭裁判所に遺産分割の請求をしなかった場合には、原則として具体的相続分による遺産分割を求めることができない。遺産分割は法定相続分又は指定相続分によりする。

 数次相続のケースは、個々の相続ごとにこの十年の期間の経過が問題となり、その開始時から十年を経過した遺産の分割については、原則として具体的相続分による遺産分割を求めることはできなくなる。改正法の七十六条の二は、二次相続、三次相続の場合も含む。

 家庭裁判所は、相続開始時から十年を経過した後に遺産分割の申立てがされた場合には、特別受益や寄与分については考慮せずに法定相続分又は指定相続分によって遺産の分割をすることになる。

・申告登記をした相続人が亡くなった場合、この場合には二次相続人は申告登記できるか。

 可能。

第204回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和3年4月20日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00920210420&spkNum=4&single

・自己に相続があったことを知ったことについて

相続人において、相続が開始した事実を知らないケース、不動産の存在自体を知らないケース、具体的な土地の地番等までは把握していないなどといったケースは、この要件を満たすことはなく、相続登記の申請義務は生じない。

20210906追記 民法・不動産登記法部会資料 57

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (2)

https://www.moj.go.jp/content/001339375.pdf

所有不動産記録証明書(仮称)の代理交付請求について

 郵送による本人申請請求の場合・・・本人確認書類の写しを送付させた上で、対象不動産の登記に記録された本人の住所地(所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人による交付請求の場合にはその本人の住所証明書類の原本に記載された住所地)宛てに送付するなどして、請求者本人が確実にその書類を取得するように配慮することが考えられる。

 代理申請の場合・・・委任者の実印が押印された委任状及び印鑑登録証明書(例えば、3か月以内に取得したものに限定する。)の提供がある場合には、受任者宛ての送付を可能とするといった手法を併用することも考えられる。

・相続放棄で遡及的に持分を失った人も、持分を取得した人が登記申請を行うまでは申請義務は免れないか・・・免れる。
民法・不動産登記法部会資料 60民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (5)p2
https://www.moj.go.jp/content/001340118.pdf

民法 第209条(隣地の使用)

 同条第1項中「境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕する」を「次に掲げる目的の」に、「の使用を請求する」を「を使用する」に改め、同項ただし書中「隣人」を「住家については、その居住者」に改め、「その住家に」を削り、同項に次の各号を加える。

  1 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

  2 境界標の調査又は境界に関する測量

  3 第233条第3項の規定による枝の切取り

 第2項中「前項」を「第1項」に、「隣人」を「隣地の所有者又は隣地使用者」に改め、同項を同条第4項とし、同条第1項の次に次の2項を加える。

 2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 3 第1項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

 第213条の2(継続的給付を受けるための設備の設置権等)

 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第1項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

 2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 3 第1項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

 4 第1項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第209条第1項ただし書及び第2項から第4項までの規定を準用する。

 5 第1項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第209条第4項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。

 6 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

 7 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

 第213条の3

 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第5項の規定は、適用しない。

 2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)

 第1項中「隣地」を「土地の所有者は、隣地」に改め、同条第2項を同条第4項とし、同条第1項の次に次の2項を加える。

 2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

 3 第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

 1 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

 2 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 3 急迫の事情があるとき。

 第249条(共有物の使用)

 次の2項を加える。

 2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

 3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

 第251条(共有物の変更)

 中「変更」の下に「(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)」を加え、同条に次の1項を加える。

 2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

 第252条(共有物の管理)

 中「は、前条の場合を除き」を「(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は」に改め、同条ただし書を削り、同条に後段として次のように加える。

 共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

 2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

 1 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 2 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

 3 前2項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

 4 共有者は、前3項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

  1 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年

  2 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 5年

  3 建物の賃借権等 3年

  4 動産の賃借権等 6箇月

 5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

 第252条の2(共有物の管理者)

 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

 2 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

 3 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

 4 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 第258条(裁判による共有物の分割)

 同条第1項中「とき」の下に「、又は協議をすることができないとき」を加え、同条第2項中「の場合において、」を「に規定する方法により」に改め、「の現物」を削り、同項を同条第3項とし、同条第1項の次に次の1項を加える。

 2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。

 1 共有物の現物を分割する方法

 2 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

 4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

 第258条の2

 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

 2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

 3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第1項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

 第262条の2(所在等不明共有者の持分の取得)

 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が2人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

 2 前項の請求があった持分に係る不動産について第258条第1項の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。

 3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、第1項の裁判をすることができない。

 4 第1項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。

 5 前各項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

 第262条の3(所在等不明共有者の持分の譲渡)

 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

 2 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。

 3 第1項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。

 4 前3項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

 第264条(準共有)

 中「この節」の下に「(第262条の二及び第262条の3を除く。)」を加える。

 第264条(準共有)

 中「この節」の下に「(第262条の二及び第262条の3を除く。)」を加える。

 第264条の3(所有者不明土地管理人の権限)

 前条第4項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

 2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

 1 保存行為

 2 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 第264条の4(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い)

 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

 第264条の5(所有者不明土地管理人の義務)

 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

 2 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

 第264条の6(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)

 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

 2 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

 第264条の7(所有者不明土地管理人の報酬等)

 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

 2 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

 第264条の8(所有者不明建物管理命令)

 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第4項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

 2 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

 3 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

 4 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

 5 第264条の3から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。

 第264条の9(管理不全土地管理命令)

 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第3項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

 2 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

 3 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

 第264条の10(管理不全土地管理人の権限)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。

 2 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。

 1 保存行為

 2 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 3 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

 第264条の11(管理不全土地管理人の義務)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

 2 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

 第264条の12(管理不全土地管理人の解任及び辞任)

 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。

 2 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

 第264条の13(管理不全土地管理人の報酬等)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

 2 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。

 第264条の14(管理不全建物管理命令)

 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第3項に規定する管理不全建物管理人をいう。第4項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。

 2 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

 3 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

 4 第264条の10から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

 第392条(共同抵当における代価の配当)第1項中

 「按分する」を「按分する」に改める。

 第897条の2(相続財産の保存)

 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が1人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。

 2 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

 第898条(共同相続の効力)

 に次の1項を加える。

 2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

 第904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)

 前3条の規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

 1 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 2 相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 第907条(遺産の分割の協議又は審判等)

 の見出し中「審判等」を「審判」に改め、同条第1項中「次条」を「次条第1項」に改め、「場合」の下に「又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合」を加え、同条第3項を削る。

 第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

 に次の4項を加える。

 2 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 3 前項の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 4 前条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 5 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 第918条(相続人による管理)」

 同条第2項及び第3項を削る。

 第926条(限定承認者による管理)

 第2項中「、第650条第1項」を「並びに第650条第1項」に改め、「並びに第918条第2項及び第3項」を削る。

 第936条(相続人が数人ある場合の相続財産の管理人)

 (見出しを含む。)中「管理人」を「清算人」に改める。

 第940条(相続の放棄をした者による管理)

 第1項中「によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで」を「の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」に、「の管理を継続しなければ」を「を保存しなければ」に改め、同条第2項中「、第650条第1項」を「並びに第650条第1項」に改め、「並びに第918条第2項及び第3項」を削る。

 第952条(相続財産の管理人の選任)

 の見出し及び同条第1項中「管理人」を「清算人」に改め、同条第2項中「管理人」を「清算人」に、「これ」を「、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨」に改め、同項に後段として次のように加える。

   この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

 第953条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)

 第954条(見出しを含む。)及び第955条ただし書中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改める。

 第956条(相続財産の管理人の代理権の消滅)

 の見出し及び同条第1項中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改め、同条第2項中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に、「管理の」を「清算に係る」に改める。

 第957条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)

 第1項中「後2箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかった」を削り、「相続財産の管理人は、遅滞なく、すべて」を「相続財産の清算人は、全て」に、「一定の」を「2箇月以上の期間を定めて、その」に、「2箇月を下ることができない」を「同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない」に改める。

 第958条を削る。

 第958条の2(権利を主張する者がない場合)

 中「前条」を「第952条第2項」に、「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改め、同条を第958条とする。

 第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)

 第2項中「第958条」を「第952条第2項」に改め、同条を第958条の二とする。

二不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)(第二条関係)

改正案

現行

目第次四章(略)

第一節・第二節(略)

第三節(略)

第一款(略)

第二款 所有権に関する登記(第七十三条の二―第七十七条)

第三款~第八款(略)

(登記することができる権利等)

第三条(略)

一~九(略)

十採石権(採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)に規定する採石権をいう。第五十条、第七十条第二項及び第八十二条において同じ。)

(当事者の申請又は嘱託による登記)

第十六条(略)

2第二条第十四号、第五条、第六条第三項、第十条及びこの章(この条、第二十七条、第二十八条、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第四十一条、第四十三条から第四十六条まで、第五十一条第五項及び第六項、第五十三条第二項、第五十六条、第五十八条第一項及び第四項、第五十九条第一号、第三号から第六号まで及び第八号、第六十六条、第六十七条、第七十一条、第七十三条第一項第二号から第四号まで、第二項及び第三項、第七十六条から第七十六条の四まで、第七十六条の六、第七十八条から第八十六条まで、第八十八条、第九十条から第九十二条まで、第九十四条、第九十五条第一項、第九十六条、第九十七条、第九十八条第二項、第百一条、第百二条、第百六条、第百八条、第百十二条、第百十四条から第百十七条まで並びに第百十八条第二項、第五項及び第六項を除く。)の規定は、官庁又は公署の嘱託による登記の手続について準用する。

(申請の却下)

第二十五条(略)

一~六(略)

七申請情報の内容である登記義務者(第六十五条、第七十六条の五、第七十七条、第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)、第九十三条(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)又は第百十条前段の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。

八~十三(略)

(権利に関する登記の登記事項)

第五十九条権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。

一~五(略)

六 共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項ただし書(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)若しくは第九百八条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同条第一項の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定め又は同条第四項の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、その定め

七・八(略)

(判決による登記等)

第六十三条(略)

2(略)

3遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

(買戻しの特約に関する登記の抹消)

第六十九条の二買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

(除権決定による登記の抹消等)

第七十条登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができる。

2前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

3前二項の場合において、非訟事件手続法第百六条第一項に規定する除権決定があったときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第一項の登記の抹消を申請することができる。

4(略)

(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)

第七十条の二 登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第二項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から三十年を経過し、かつ、その法人の解散の日から三十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

第二款 所有権に関する登記

(所有権の登記の登記事項)

第七十三条の二 所有権の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの

二 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの

2 前項各号に掲げる登記事項についての登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

3前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

(相続人である旨の申出等)

第七十六条の三 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。

2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。 

3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。

4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

6 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(所有権の登記名義人についての符号の表示)

第七十六条の四 登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)

第七十六条の五 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

(職権による氏名等の変更の登記)

第七十六条の六 登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

(登記事項証明書の交付等)

第百十九条(略)

2~5(略)

6 登記官は、第一項及び第二項の規定にかかわらず、登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、法務省令で定めるところにより、第一項及び第二項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。

(所有不動産記録証明書の交付等)

第百十九条の二何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。

2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。

3 前二項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

4 前条第三項及び第四項の規定は、所有不動産記録証明書の手数料について準用する。

(地図の写しの交付等)

第百二十条(略)

2(略)

3 第百十九条第三項から第五項までの規定は、地図等について準用する。

(登記簿の附属書類の写しの交付等)

第百二十一条(略)

2何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記簿の附属書類のうち前項の図面(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の閲覧を請求することができる。

3何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、登記簿の附属書類(第一項の図面を除き、電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。

4前項の規定にかかわらず、登記を申請した者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。

5(略)

(法務省令への委任)

第百二十二条この法律に定めるもののほか、登記簿、地図、建物所在図及び地図に準ずる図面並びに登記簿の附属書類(第百五十四条及び第百五十五条において「登記簿等」という。)公開に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(筆界特定の申請)

第百三十一条(略)

2~4(略)

5 第十八条の規定は、筆界特定の申請について準用する。この場合において、同条中「不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名又は名称、登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)」とあるのは「第百三十一条第三項各号に掲げる事項に係る情報(第二号、第百三十二条第一項第四号及び第百五十条において「筆界特定申請情報」という。)」と、「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と、同条第二号中「申請情報」とあるのは「筆界特定申請情報」と読み替えるものとする。

(筆界特定書等の写しの交付等)

第百四十九条 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、筆界特定手続記録のうち筆界特定書又は政令で定める図面の全部又は一部(以下この条及び第百五十四条において「筆界特定書等」という。)の写し(筆界特定書等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。

2・3(略)

第七章 雑則

(情報の提供の求め)

第百五十一条 登記官は、職権による登記をし、又は第十四条第一項の地図を作成するために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、その対象となる不動産の所有者等(所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)をいう。)に関する情報の提供を求めることができる。

(登記識別情報の安全確保)

第百五十二条(略)

2(略)

(行政手続法の適用除外)

第百五十三条(略)

(行政機関の保有する情報の公開に関する法律の適用除外)

第百五十四条(略)

(削る)

(秘密を漏らした罪)

第百五十九条 第百五十二条第二項の規定に違反して登記識別情報の作成又は管理に関する秘密を漏らした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

(虚偽の登記名義人確認情報を提供した罪)

第百六十条 第二十三条第四項第一号(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による情報の提供をする場合において、虚偽の情報を提供したときは、当該違反行為をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(検査の妨害等の罪)

第百六十二条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

一 第二十九条第二項(第十六条第二項において準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。

二 第二十九条第二項の規定による文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの提示をせず、若しくは虚偽の文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものを提示し、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。三 第百三十七条第五項の規定に違反して、同条第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げたとき。

(過料)

第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

2第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

三 非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号) (第三条関係)

目次

第三編(略)

第一章 共有に関する事件(第八十五条―第八十九条)

第二章土地等の管理に関する事件(第九十条―第九十二条)

第三章供託等に関する事件(第九十三条―第九十八条)

第一章共有に関する事件

第一章(共有物の管理に係る決定)

第八十五条 次に掲げる裁判に係る事件は、当該裁判に係る共有物又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十四条に規定する数人で所有権以外の財産権を有する場合における当該財産権(以下この条において単に「共有物」という。)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

一 民法 第二百五十一条第二項、第二百五十二条第二項第一号及び第二百五十二条の二第二項(これらの規定を同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)の規定による裁判

二 民法第二百五十二条第二項第二号(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定による裁判

2 前項第一号の裁判については、裁判所が次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、することができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。

一 当該共有物について前項第一号の裁判の申立てがあったこと。

二 裁判所が前項第一号の裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(民法第二百五十一条第二項(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する当該他の共有者、同法第二百五十二条第二項第一号(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する他の共有者又は同法第二百五十二条の二第二項(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する当該共有者をいう。第六項において同じ。)は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 前号の届出がないときは、前項第一号の裁判がされること。

3 第一項第二号の裁判については、裁判所が次に掲げる事項を当該他の共有者(民法第二百五十二条第二項第二号に規定する45当該他の共有者をいう。以下この項及び次項において同じ。)に通知し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、することができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。

一 当該共有物について第一項第二号の裁判の申立てがあったこと。

二 当該他の共有者は裁判所に対し一定の期間内に共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。

三 前号の期間内に当該他の共有者が裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、第一項第二号の裁判がされること。

4前項第二号の期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした当該他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る第一項第二号の裁判をすることができない。

5第一項各号の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

6第一項第一号の裁判は、当該他の共有者等に告知することを要しない。

(共有物分割の証書の保存者の指定)

第八十六条 民法第二百六十二条第三項の規定による証書の保存者の指定の事件は、共有物の分割がされた地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、前項の指定の裁判をするには、分割者(申立人を除く。)の陳述を聴かなければならない。

3 裁判所が前項の裁判をする場合における手続費用は、分割者の全員が等しい割合で負担する。

4 第二項の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(所在等不明共有者の持分の取得)

第八十七条 所在等不明共有者の持分の取得の裁判(民法第二百六十二条の二第一項(同条第五項において準用する場合を含む。次項第一号において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分の取得の裁判をいう。以下この条において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号、第三号及び第五号の期間が経過した後でなければ、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることができない。この場合において、第二号、第三号及び第五号の期間は、いずれも三箇月を下ってはならない。

一 所在等不明共有者(民法第二百六十二条の二第一項に規定する所在等不明共有者をいう。以下この条において同じ。)の持分について所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあったこと。

二 裁判所が所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 民法第二百六十二条の二第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の異議の届出は、一定の期間内にすべきこと。

四 前二号の届出がないときは、所在等不明共有者の持分の取得の裁判がされること。

五 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。

3 裁判所は、前項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、同項各号(第二号を除く。)の規定により公告した事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。

4 裁判所は、第二項第三号の異議の届出が同号の期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。

5 裁判所は、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。

6 裁判所は、前項の規定による決定をした後所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするまでの間に、事情の変更により同項の規定による決定で定めた額を不当と認めるに至ったときは、同項の規定により供託すべき金銭の額を変更しなければならない。

7 前二項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

8 裁判所は、申立人が第五項の規定による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。

9 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

10 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、所在等不明共有者に告知することを要しない。

11 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを受けた裁判所が第二項の規定による公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が同項第五号の期間が経過した後に所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、当該申立人以外の共有者による所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを却下しなければならない。

(所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与)

第八十八条 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判(民法第二百六十二条の三第一項(同条第四項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判をいう。第三項において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 前条第二項第一号、第二号及び第四号並びに第五項から第十項までの規定は、前項の事件について準用する。

3所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判の効力が生じた後二箇月以内にその裁判により付与された権限に基づく所在等不明共有者(民法第二百六十二条の三第一項に規定する所在等不明共有者をいう。)の持分の譲渡の効力が生じないときは、その裁判は、その効力を失う。ただし、この期間は、裁判所において伸長することができる。

(検察官の不関与)

第八十九条 第四十条の規定は、この章の規定による非訟事件の手続には、適用しない。

第二章 土地等の管理に関する事件

(所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令)

第九十条 民法第二編第三章第四節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、所有者不明土地管理命令(民法第二百六十四条の二第一項に規定する所有者不明土地管理命令をいう。以下この条において同じ。)をすることができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。 

一 所有者不明土地管理命令の申立てがその対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。

二 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 前号の届出がないときは、所有者不明土地管理命令がされること。

3 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。

4 裁判所は、民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の裁判又は同法第二百六十四条の七第一項の規定による費用若しくは報酬の額を定める裁判をする場合には、所有者不明土地管理人(同法第二百六十四条の二第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下この条において同じ。)の陳述を聴かなければならない。

5 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。

一 所有者不明土地管理命令の申立てを却下する裁判

二 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の申立てを却下する裁判

三 民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の申立てについての裁判

6 所有者不明土地管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記を嘱託しなければならない。

7 所有者不明土地管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

8 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者又はその共有持分を有する者のために、当該金銭を所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

9 裁判所は、所有者不明土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

10 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、所有者不明土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。

11 所有者不明土地等(民法第二百六十四条の三第一項に規定する所有者不明土地等をいう。以下この条において同じ。)の所有者(その共有持分を有する者を含む。以下この条において同じ。)が所有者不明土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。この場合において、所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者に帰属することが証明された財産を引き渡さなければならない。

12 所有者不明土地管理命令及びその変更の裁判は、所有者不明土地等の所有者に告知することを要しない。

13 所有者不明土地管理命令の取消しの裁判は、事件の記録上所有者不明土地等の所有者及びその所在が判明している場合に限り、その所有者に告知すれば足りる。

14 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることができる。

一 所有者不明土地管理命令利害関係人

二 民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の裁判利害関係人

三 民法第二百六十四条の七第一項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判所有者不明土地管理人

四 第九項から第十一項までの規定による変更又は取消しの裁判利害関係人

15 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

一 民法第二百六十四条の二第四項の規定による所有者不明土地管理人の選任の裁判

二 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の裁判

16 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の八第一項に規定する所有者不明建物管理命令及び同条第四項に規定する所有者不明建物管理人について準用する。

(管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令)

第九十一条 民法第二編第三章第五節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 民法第二百六十四条の十第二項又は第二百六十四条の十二第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。

3 裁判所は、次の各号に掲げる裁判をする場合には、当該各号に定める者の陳述を聴かなければならない。ただし、第一号に掲げる裁判をする場合において、その陳述を聴く手続を経ることにより当該裁判の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

一 管理不全土地管理命令(民法第二百六十四条の九第一項に規定する管理不全土地管理命令をいう。以下この条において同じ。)管理不全土地管理命令の対象となるべき土地の所有者

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の裁判管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の裁判管理不全土地管理人(同法第二百六十四条の九第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下この条において同じ。)

四 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による費用の額を定める裁判管理不全土地管理人

五 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による報酬の額を定める裁判管理不全土地管理人及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

4 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。

一 管理不全土地管理命令の申立てについての裁判

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の申立てについての裁判

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の申立てについての裁判

四 民法第二百六十四条の十二第二項の許可の申立てを却下する裁判

5 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

6 裁判所は、管理不全土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

7 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理不全土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地管理命令を取り消さなければならない。

8 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることができる。

一 管理不全土地管理命令利害関係人

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の裁判管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の裁判利害関係人

四 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による費用の額を定める裁判管理不全土地管理人

五 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による報酬の額を定める裁判管理不全土地管理人及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

六 前二項の規定による変更又は取消しの裁判利害関係人

9 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

一 民法第二百六十四条の九第三項の規定による管理不全土地管理人の選任の裁判

二 民法第二百六十四条の十二第二項の許可の裁判

10 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の十四第一項に規定する管理不全建物管理命令及び同条第三項に規定する管理不全建物管理人について準用する。

(削る)

供託等に関する事件(適用除外)

第九十二条 第四十条及び第五十七条第二項第二号の規定は、この章の規定による非訟事件の手続には、適用しない。

第三章 供託等に関する事件

四 家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)(第四条関係)

改正案

目次

第二編(略)

第二章(略)

第十二節 相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件(第百九十条)

第十二節の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件(第百九十条の二)

(相続に関する審判事件の管轄権)

第三条の十一(略)

2(略)

3 裁判所は、第一項に規定する場合のほか、推定相続人の廃除の審判又はその取消しの審判の確定前の遺産の管理に関する処分の審判事件(別表第一の八十八の項の事項についての審判事件をいう。第百八十九条第一項及び第二項において同じ。及び相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件(同表の九十九の項の事項についての審判事件をいう。以下同じ。)について、相続財産に属する財産が日本国内にあるときは、管轄権を有する。

4・5(略)

(家事審判の申立ての取下げ)

第八十二条(略)

2(略)

3 前項ただし書、第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合においては、家庭裁判所は、相手方に対し、申立ての取下げがあったことを通知しなければならない。ただし、申立ての取下げが家事審判の手続の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは、この限りでない。

4・5(略)

(家事審判の申立ての取下げの擬制)

第八十三条 家事審判の申立人(第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合にあっては、当事者双方)が、連続して二回、呼出しを受けた家事審判の手続の期日に出頭せず、又は呼出しを受けた家事審判の手続の期日において陳述をしないで退席をしたときは、家庭裁判所は、申立ての取下げがあったものとみなすことができる。

(管理人の改任等)

第百四十六条(略)

2家庭裁判所は、民法第二十五条第一項の規定により選任し、又は同法第二十六条の規定により改任した管理人及び前項の規定により改任した管理人(第四項及び第六項、次条並びに第百四十七条において「家庭裁判所が選任した管理人」という。)に対し、財産の状況の報告及び管理の計算を命ずることができる。同法第二十七条第二項の場合においては、不在者が置いた管理人に対しても、同様とする。

3(略)

4 家庭裁判所は、管理人(家庭裁判所が選任した管理人及び不在者が置いた管理人をいう。次項及び第百四十七条において同じ。)に対し、その提供した担保の増減、変更又は免除を命ずることができる。

5・6(略)

(供託等)

第百四十六条の二 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

2 家庭裁判所が選任した管理人は、前項の規定による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

(処分の取消し)

第百四十七条 家庭裁判所は、不在者が財産を管理することができるようになったとき、管理すべき財産がなくなったとき(家庭裁判所が選任した管理人が管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、不在者、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任その他の不在者の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。

第十二節の二

相続財産の保存に関する処分の審判事件

第百九十条の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

2 第百二十五条第一項から第六項まで、第百四十六条の二及び第百四十七条の規定は、相続財産の保存に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、第百二十五条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。

(申立ての取下げの制限)

第百九十九条(略)

2 第八十二条第二項の規定にかかわらず、遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

第二百一条 相続の承認及び放棄に関する審判事件(別表第一の九十の項から九十五の項までの事項についての審判事件をいう。)は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

2(略)

3 家庭裁判所(抗告裁判所が限定承認の申述を受理した場合にあっては、その裁判所)は、相続人が数人ある場合において、限定承認の申述を受理したときは、職権で、民法第九百三十六条第一項の規定により相続財産の清算人を選任しなければならない。

4~9(略)

(管轄)

第二百三条

次の各号に掲げる審判事件は、当該各号に定める家庭裁判所の管轄に属する。

一 相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件相続が開始した地を管轄する家庭裁判所

二 相続人の不存在の場合における鑑定人の選任の審判事件(別表第一の百の項の事項についての審判事件をいう。)相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件において相続財産の清算人の選任の審判をした家庭裁判所

三(略)

(特別縁故者に対する相続財産の分与の審判)

第二百四条 特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てについての審判は、民法第九百五十二条第二項の期間の満了後三月を経過した後にしなければならない。

2(略)

(意見の聴取)

第二百五条 家庭裁判所は、特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てについての審判をする場合には、民法第九百五十二条第一項の規定により選任し、又は第二百八条において準用する第百二十五条第一項の規定により改任した相続財産の清算人(次条及び第二百七条において単に「相続財産の清算人」という。)の意見を聴かなければならない。

(即時抗告)

第二百六条 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。

一 特別縁故者に対する相続財産の分与の審判申立人及び相続財産の清算人

二(略)

2 第二百四条第二項の規定により審判が併合してされたときは、申立人の一人又は相続財産の清算人がした即時抗告は、申立人の全員に対してその効力を生ずる。

(相続財産の換価を命ずる裁判)

第二百七条 第百九十四条第一項、第二項本文、第三項から第五項まで及び第七項の規定は、特別縁故者に対する相続財産の分与の審判事件について準用する。この場合において、同条第一項及び第七項中「相続人」とあり、並びに同条第二項中「相続人の意見を聴き、相続人」とあるのは「相続財産の清算人」と、同条第三項中「相続人」とあるのは「特別縁故者に対する相続財産の分与の申立人若しくは相続財産の清算人」と、同条第四項中「当事者」とあるのは「申立人」と、同条第五項中「相続人」とあるのは「特別縁故者に対する相続財産の分与の申立人及び相続財産の清算人」と読み替えるものとする。

(管理者の改任等に関する規定の準用)

第二百八条 第百二十五条の規定は、相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、同条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。

(家事調停の申立ての取下げ)

第二百七十三条 家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

2 前項の規定にかかわらず、遺産の分割の調停の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

3 第八十二条第三項及び第四項並びに民事訴訟法第二百六十一条第三項及び第二百六十二条第一項の規定は、家事調停の申立ての取下げについて準用する。この場合において、第八十二条第三項中「前項ただし書、第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項」とあるのは「第二百七十三条第二項」と、同法第二百六十一条第三項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは「家事調停の手続の期日」と読み替えるものとする。

別表第一(略)

事項

根拠となる法律の規定

(略)

相続財産の保存

八十九

相続財産の保存に関する処分

民法第八百九十七条の二第一項及び第二項

相続の承認及び放棄

九十

相続の承認又は放棄をすべき期間の伸長

民法第九百十五条第一項ただし書

(略)

九十四

限定承認を受理した場合における相続財産の清算人の選任

民法第九百三十六条第一項

(略)

九十九

相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分

民法第九百五十二条及び第九百五十三条

百一

特別縁故者に対する相続財産の分与

民法第九百五十八条の二第一項

(略)

別表第二(略)

事項

根拠となる法律の規定

(略)

十三

遺産の分割の禁止

民法第九百八条第四項及び第五項

(略)

(不動産登記法の準用)

第八条 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第七条から第十一条まで、第十三条、第十六条第一項、第十八条、第二十四条、第二十五条第一号から第九号まで及び第十二号、第六十七条第一項から第三項まで、第七十一条、第百十九条(第六項を除く。)、第百二十一条第三項から第五項まで、第百五十三条から第百五十六条まで、第百五十七条第一項から第三項まで、第五項及び第六項並びに第百五十八条の規定は、夫婦財産契約に関する登記について準用する。この場合において、同法第十八条中「政令」とあるのは、「法務省令」と読み替えるものとする。

附 則

  (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 第二条中不動産登記法第百三十一条第五項の改正規定及び附則第三十四条の規定 公布の日

 二 第二条中不動産登記法の目次の改正規定、同法第十六条第二項の改正規定、同法第四章第三節第二款中第七十四条の前に一条を加える改正規定、同法第七十六条の次に五条を加える改正規定(第七十六条の二及び第七十六条の三に係る部分に限る。)、同法第百十九条の改正規定及び同法第百六十四条の改正規定(同条に一項を加える部分を除く。)並びに附則第五条第四項から第六項まで、第六条、第二十二条及び第二十三条の規定 公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日

 三 第二条中不動産登記法第二十五条第七号の改正規定、同法第七十六条の次に五条を加える改正規定(第七十六条の四から第七十六条の六までに係る部分に限る。)、同法第百十九条の次に一条を加える改正規定、同法第百二十条第三項の改正規定及び同法第百六十四条の改正規定(同条に一項を加える部分に限る。)並びに附則第五条第七項の規定 公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日

 (相続財産の保存に必要な処分に関する経過措置)

第二条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に第一条の規定による改正前の民法(以下「旧民法」という。)第九百十八条第二項(旧民法第九百二十六条第二項(旧民法第九百三十六条第三項において準用する場合を含む。)及び第九百四十条第二項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分は、施行日以後は、第一条の規定による改正後の民法(以下「新民法」という。)第八百九十七条の二の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分とみなす。

2 施行日前に旧民法第九百十八条第二項の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分の請求(施行日前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、施行日以後は、新民法第八百九十七条の二の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分の請求とみなす。

 (遺産の分割に関する経過措置)

第三条 新民法第九百四条の三及び第九百八条第二項から第五項までの規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と、新民法第九百八条第二項ただし書、第三項ただし書、第四項ただし書及び第五項ただし書中「相続開始の時から十年」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時」とする。

 (相続財産の清算に関する経過措置)

第四条 施行日前に旧民法第九百三十六条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、施行日以後は、新民法第九百三十六条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

2 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、新民法第九百四十条第一項及び第九百五十三条から第九百五十六条までの規定の適用については、新民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

3 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定によりされた相続財産の管理人の選任の請求(施行日前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、施行日以後は、新民法第九百五十二条第一項の規定によりされた相続財産の清算人の選任の請求とみなす。

4 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における当該相続財産の管理人の選任の公告、相続債権者及び受遺者に対する請求の申出をすべき旨の公告及び催告、相続債権者及び受遺者に対する弁済並びにその弁済のための相続財産の換価、相続債権者及び受遺者の換価手続への参加、不当な弁済をした相続財産の管理人の責任、相続人の捜索の公告、公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者の権利並びに相続人としての権利を主張する者がない場合における相続人、相続債権者及び受遺者の権利については、なお従前の例による。

5 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における特別縁故者に対する相続財産の分与については、新民法第九百五十八条の二第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)

第五条 第二条の規定(附則第一条各号に掲げる改正規定を除く。)による改正後の不動産登記法(以下「新不動産登記法」という。)第六十三条第三項、第六十九条の二及び第七十条の二の規定は、施行日以後にされる登記の申請について適用する。

2 新不動産登記法第七十条第二項の規定は、施行日以後に申し立てられる公示催告の申立てに係る事件について適用する。

3 新不動産登記法第百二十一条第二項から第五項までの規定は、施行日以後にされる登記簿の附属書類の閲覧請求について適用し、施行日前にされた登記簿の附属書類の閲覧請求については、なお従前の例による。

4 第二条の規定(附則第一条第二号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下「第二号新不動産登記法」という。)第七十三条の二の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第二号施行日」という。)以後に登記の申請がされる所有権の登記の登記事項について適用する。

5 登記官は、第二号施行日において現に法人が所有権の登記名義人として記録されている不動産について、法務省令で定めるところにより、職権で、第二号新不動産登記法第七十三条の二第一項第一号に規定する登記事項に関する変更の登記をすることができる。

6 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、「知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。

7 第二条の規定(附則第一条第三号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下この項において「第三号新不動産登記法」という。)第七十六条の五の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があった場合についても、適用する。この場合において、第三号新不動産登記法第七十六条の五中「所有権の登記名義人の」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人となった者の」と、「あった日」とあるのは「あった日又は第三号施行日のいずれか遅い日」とする。

 (第三号施行日の前日までの間の読替え)

第六条 第二号施行日から第三号施行日の前日までの間における第二号新不動産登記法第十六条第二項の規定の適用については、同項中「第七十六条の四まで、第七十六条の六」とあるのは、「第七十六条の三まで」とする。

 (家事事件手続法の一部改正に伴う経過措置)

第七条 第四条の規定による改正後の家事事件手続法(以下この条において「新家事事件手続法」という。)第百九十九条第二項及び第二百七十三条第二項の規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新家事事件手続法第百九十九条第二項中「十年を経過した後」とあるのは「十年を経過した後(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から五年を経過した後)」と、新家事事件手続法第二百七十三条第二項中「十年を経過した後」とあるのは「十年を経過した後(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から五年を経過した後)」とする。

2 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における特別縁故者に対する相続財産の分与の審判については、新家事事件手続法第二百四条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

3 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、新家事事件手続法第二百五条から第二百八条までの規定の適用については、新民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

20220502追記

『登記研究』886号、887号、888号、889号、890号(株)テイハン

法務省民事局総務課長 村松秀樹、法務大臣官房参事官 大谷太、法務省民事局参事官脇村真治、東京地方検察庁検事 川畑憲司、法務省民事局付 芳賀朝哉、法務省民事局付 宮崎文康、東京地方裁判所判事 渡辺みどり、弁護士 小田智典、法務省民事局付 中丸隆之、法務省民事局付 福田宏晃「令和3年民法・不動産登記法等改正及び相続土地国庫帰属法の解説1~5」

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律について

公布日 令和3年4月28日

施行日 公布から2年以内

・承認申請窓口について

第204回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和3年3月24日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00720210324&spkNum=5&single

<相続土地国庫帰属法案に規定されている法務大臣の権限につきましては、全国に所在する法務局及び地方法務局の長にその一部を委任することとしております。したがいまして、承認の申請は法務局の窓口においてすることを想定しております。

・司法書士業務に該当するかについて

「民法等の一部を改正する法律案」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案」に対する附帯決議 (令和3年4月20日)

https://sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/204/f065_042001.pdf

<所有者不明土地等問題の地域性や土地等の種類に応じ、それぞれの実情を踏まえた解決に向けて、効率的な管理と申立人の負担の軽減を趣旨とする所有者不明土地等の新たな財産管理制度の諸施策を実施するに当たっては、司法書士や土地家屋調査士等の専門職者の積極的な活用を図るとともに、制度の趣旨及び請求が可能な利害関係人や利用ができる事例等について周知を図ること。

・承認申請について、代理が出来るかどうかは分かりませんでした。法務局における遺言書の保管等に関する法律第4条第6項のように「自ら出頭して行わなければならない」の文言は、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律にはありません。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和3年3月24日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00720210324

・第1条の「知れない」とは、

一般的に単に公示送達の申立人がこれを知らないだけではなく、通常の調査方法を講じても判明しないという客観的なものであることを要する。

・電子申請や電子納付について

制度の開始当初はオンライン方式による申請を認めることとはしてない。

・相続の放棄をする人がいた場合についての負担金の額について

共同相続人が共同して土地を国庫に帰属させるケースにおきましては、それぞれの持分の割合で負担金を負担することも考えられ、共同相続人の中に相続の放棄をする者がいるときは、事案によっては一人当たりの負担額がより大きくなることがある

・生活保護との関係について

生活保護の申請に係る事務を担当している者などがこの相続土地の国庫帰属制度の内容を誤解したり、また、それによって不適切な対応が生じたりといった事態が生ずることはあってはならない。

・利用されるのか、について

令和二年に法務省が実施したニーズ調査では、土地を所有する世帯のうち、土地を手放して国庫に帰属させる制度の利用を希望する世帯の割合は約二〇%と推計。制審議会の民法・不動産登記法部会の中間試案における要件設定を前提として、利用希望世帯の約五%、土地を所有する世帯全体の約一%。帰属させることができない土地の数について、具体的な見込みを計算するのは困難。

・死因贈与によって土地を取得した場合について、

相続又は遺贈により土地を取得した者には当たりませんので、この相続土地国庫帰属制度における国庫帰属の承認申請権がなく、制度の対象外。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

・制度の意義

農地について、利用権を設定できる、あるいは農地中間管理機構を介して賃借権を設定できるといった制度の活用も視野に入れた制度。

 法務局の窓口に住民から問合せがあった際には、いきなり、土地を手放すということ、国庫へ帰属させるという前に、既存の仕組みを利用したり、その情報を市町村にも地元の自治体にも共有をしたり、何か活用策があれば自治体の方で寄附として受け入れ。

 いきなり国庫に権利を全部帰属させるというものではなく、国の負担が過大にならないように、国民にモラルハザードを起こさない限度において、最終的な手段としての国庫帰属制度。プロセスにおいて、国と地方自治体、そして省庁間で政策連携が図られる。その意味では、今回の制度というのは大きなチャンス。

・地方公共団体への寄付について

本制度の審査機関、法務局で、この国庫帰属の承認をする前に、その土地の所在する地方公共団体に対して当該土地の情報を通知し、当該団体が土地の取得を希望する場合には土地所有者と直接交渉して贈与契約を締結、寄附を可能とする方向で検討を進めている。

・廃屋について

それがいまだ建物としての状態を保っている場合には二条三項一号の建物の存ずる土地に該当することになり、屋根が崩落するなどして、もはや建物とは言えなくなっている場合には、通常は第五条第一項第二号の土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物が地上に存する土地に該当することになるものと考えられ、国庫帰属の要件を満たさないことになる。

・土壌汚染対策法に定める特定有害物質により汚染されている土地について

汚染が土地所有者の行為に起因するものであるか否かを問わず、国庫帰属の対象外。

第204回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和3年4月13日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00720210413&spkNum=4&single

・相続税の物納との違い

相続税の物納は、金銭による納付が困難な場合に、納税者に代わって国が財産を売却することによってそれを国家の収入とするもの。基本的にその財産を換価することが予定されている。これに対して相続土地国庫帰属制度は、土地の換価の可能性をその要件において考慮していない点で物納とは異なる。

・所有者以外の者による使用が予定されない農業用ため池について

決壊により周辺土地に損害を発生させないように、必要な措置を講ずる必要があるため、管理又は処分に過分の費用又は労力を要する土地として、相続土地国庫帰属法五条一項五号に基づき、政令で国庫帰属の対象外とすることを想定。

・果樹園の樹木について

個別の事案にもよるが、一般に、放置しておくと鳥や獣や病害虫の被害の発生要因となる。草刈り等の通常の管理に加えまして、定期的に果実を含めた枝の剪定や農薬の散布などの作業が必要になる。そのため、果樹園は基本的に通常の管理又は処分を阻害する樹木が存する土地に該当し、国庫帰属の対象外になることが想定されます。

第204回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和3年4月20日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00920210420&spkNum=4&single

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針

令和3年6月7日所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議

抜粋

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shoyushafumei/dai8/kettei1.pdf

・今後、改正法の円滑な施行に向けて、法務局の体制整備や不動産登記システムと住民基本台帳ネットワークシステム等との円滑な連携を可能とする実効性のあるシステム整備を進める。

・行政機関等に対して戸籍情報を電子的に提供する戸籍情報連携システムの整備を着実に進め、令和5年度中に運用を開始する。

・所有者不明農地のより円滑な利活用に向けて、民法の共有制度等の見直しを踏まえ、土地改良事業等における所有者不明農地の一層の利活用を図る措置を検討し、その結果に基づいて令和5年までに必要な措置を講ずる。

・共有私道ガイドラインの更なる周知と、民法の共有制度の見直しを踏まえた同ガイドラインの改訂を行う。

・土地売却に伴う分筆登記や地積更正登記等を円滑化し、土地利用を促進するため、隣地所有者が不明の場合などに対応する観点から、一定の要件の下で隣地所有者の立会いがなくとも法務局の調査に基づき筆界認定を行い、分筆登記等を可能とする仕組みを検討し、令和4年度中に導入する。

所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議(第8回)議事次第

日時:令和3年6月7日(月)

所有者不明土地等問題 対策推進の工程表

法律第二十五号(令三・四・二八)

◎相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/204/meisai/m204080204056.htm

目次

第一章 総則(第一条)

第二章 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続(第二条-第十一条)

第三章 国庫帰属地の管理(第十二条)

第四章 雑則(第十三条-第十六条)

第五章 罰則(第十七条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的とする。

第二章 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続

(承認申請)

第二条 土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。

2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。

3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。

一 建物の存する土地

二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる

土地

四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物

質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地

五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

(承認申請書等)

第三条 承認申請をする者(以下「承認申請者」という。)は、法務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した承認申請書及び法務省令で定める添付書類を法務大臣に提出しなければならない。

一 承認申請者の氏名又は名称及び住所

二 承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積

2 承認申請者は、法務省令で定めるところにより、物価の状況、承認申請に対する審査に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。

(承認申請の却下)

第四条 法務大臣は、次に掲げる場合には、承認申請を却下しなければならない。

一 承認申請が申請の権限を有しない者の申請によるとき。

二 承認申請が第二条第三項又は前条の規定に違反するとき。

三 承認申請者が、正当な理由がないのに、第六条の規定による調査に応じないとき。

2 法務大臣は、前項の規定により承認申請を却下したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、その旨を承認申請者に通知しなければならない。

(承認)

第五条 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。

一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

2 前項の承認は、土地の一筆ごとに行うものとする。

(事実の調査)

第六条 法務大臣は、承認申請に係る審査のため必要があると認めるときは、その職員に事実の調査をさせることができる。

2 前項の規定により事実の調査をする職員は、承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、承認申請者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他承認申請に係る審査のために必要な調査をすることができる。

3 法務大臣は、その職員が前項の規定により承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、その職員に、他人の土地に立ち入らせることができる。

4 法務大臣は、前項の規定によりその職員を他人の土地に立ち入らせるときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。

5 第三項の規定により宅地又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする職員は、その立入りの際、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。

6 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。

7 第三項の規定による立入りをする場合には、職員は、その身分を示す証明書を携帯し、

関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

8 国は、第三項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

(資料の提供要求等)

第七条 法務大臣は、前条第一項の事実の調査のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係のある公私の団体その他の関係者に対し、資料の提供、説明、事実の調査の援助その他必要な協力を求めることができる。

(承認に関する意見聴取)

第八条 法務大臣は、第五条第一項の承認をするときは、あらかじめ、当該承認に係る土地の管理について、財務大臣及び農林水産大臣の意見を聴くものとする。ただし、承認申請に係る土地が主に農用地(農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第一項に規定する農地又は採草放牧地をいう。以下同じ。)又は森林(森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第一項に規定する森林をいう。以下同じ。)として利用されている土地ではないと明らかに認められるときは、この限りでない。

(承認の通知等)

第九条 法務大臣は、第五条第一項の承認をし、又はしないこととしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨を承認申請者に通知しなければならない。

(負担金の納付)

第十条 承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。

2 法務大臣は、第五条第一項の承認をしたときは、前条の規定による承認の通知の際、法務省令で定めるところにより、併せて負担金の額を通知しなければならない。

3 承認申請者が前項に規定する負担金の額の通知を受けた日から三十日以内に、法務省令で定める手続に従い、負担金を納付しないときは、第五条第一項の承認は、その効力を失う。

(国庫帰属の時期)

第十一条 承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において、第五条第一項の承認に係る土地の所有権は、国庫に帰属する。

2 法務大臣は、第五条第一項の承認に係る土地の所有権が前項の規定により国庫に帰属したときは、直ちに、その旨を財務大臣(当該土地が主に農用地又は森林として利用されていると認められるときは、農林水産大臣)に通知しなければならない。

第三章 国庫帰属地の管理

(土地の管理の機関)

第十二条 前条第一項の規定により国庫に帰属した土地(以下「国庫帰属地」という。)のうち、主に農用地又は森林として利用されている土地(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第四条第二項に規定する国有財産の所管換がされたもの又は他の法令の規定により農林水産大臣が管理することとされているものを除く。)は、農林水産大臣が管理し、又は処分する。

2 前項の規定により農林水産大臣が管理する土地のうち主に農用地として利用されているものの管理及び処分については、農地法第四十五条、第四十六条第一項、第四十七条及び第四十九条の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「農林水産大臣、都道府県知事又は指定市町村の長」とあるのは「農林水産大臣」と、「この法律による買収その他の処分」とあるのは「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第十二条第二項において準用する第四十六条第一項の規定による売払い又は同法第十二条第二項において準用する第四十七条の規定による売払い、所管換若しくは所属替」と、同条第三項中「農林水産大臣、都道府県知事又は指定市町村の長」とあるのは「農林水産大臣」と、同条第五項中「国又は都道府県等」とあるのは「国」と、「場合には、政令で定めるところにより」とあるのは「場合には」と読み替えるものとする。

3 前項において準用する農地法第四十六条第一項又は第四十七条の規定による農用地の売払いを原因とする所有権の移転については、同法第三条第一項本文の規定は、適用しない。

4 第一項の規定により農林水産大臣が管理する土地のうち主に森林として利用されているものの管理及び処分については、国有林野の管理経営に関する法律(昭和二十六年法律第二百四十六号)第二章(第七条を除く。)の規定を準用する。

第四章 雑則

(承認の取消し等)

第十三条 法務大臣は、承認申請者が偽りその他不正の手段により第五条第一項の承認を受けたことが判明したときは、同項の承認を取り消すことができる。

2 法務大臣は、国庫帰属地について前項の規定による承認の取消しをするときは、あらかじめ、当該国庫帰属地を所管する各省各庁の長(当該土地が交換、売払い又は譲与(以下この項及び次項において「交換等」という。)により国有財産(国有財産法第二条第一項に規定する国有財産をいう。次項において同じ。)でなくなっているときは、当該交換等の処分をした各省各庁の長)の意見を聴くものとする。

3 法務大臣は、第一項の規定による承認の取消しをしようとする場合において、当該取消しに係る国庫帰属地(交換等により国有財産でなくなっている土地を含む。以下この項において同じ。)の所有権を取得した者又は当該国庫帰属地につき所有権以外の権利の設定を受けた者があるときは、これらの者の同意を得なければならない。

4 法務大臣は、第一項の規定により第五条第一項の承認を取り消したときは、法務省令で定めるところにより、その旨を同項の承認を受けた者に通知するものとする。

(損害賠償責任)

第十四条 第五条第一項の承認に係る土地について当該承認の時において第二条第三項各号又は第五条第一項各号のいずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じた場合において、当該承認を受けた者が当該事由を知りながら告げずに同項の承認を受けた者であるときは、その者は、国に対してその損害を賠償する責任を負うものとする。

(権限の委任)

第十五条 この法律に規定する法務大臣の権限は、法務省令で定めるところにより、その一部を法務局又は地方法務局の長に委任することができる。

2 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その全部又は一部を地方農政局長又は森林管理局長に委任することができる。

3 前項の規定により森林管理局長に委任された権限は、農林水産省令で定めるところにより、森林管理署長に委任することができる。

(政令への委任)

第十六条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な手続その他の事項については、政令で定める。

第五章 罰則

第十七条 第十二条第二項において読み替えて準用する農地法第四十九条第一項の規定による職員の調査、測量、除去又は移転を拒み、妨げ、又は忌避したときは、その違反行為をした者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の罰金刑を科する。

附 則

(施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(検討)

2 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

(法務・財務・農林水産・内閣総理大臣署名)

詳しいサイト

弁護士による『相続土地国庫帰属制度』解説専門サイト

荒井達也弁護士 

https://souzokutochi-kokkokizoku.com/

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html

目次

第1部 民法等の見直し ……………………………………………….. 1

第1 相隣関係 ……………………………………………………….. 1

隣地使用権 ……………………………………………………… 1

竹木の枝の切除等 ………………………………………………… 1

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権 ……………………. 1

第2 共有等 …………………………………………………………. 2

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等 ……………………….. 2

共有物の変更行為 ………………………………………………… 2

共有物の管理 ……………………………………………………. 3

共有物の管理者 ………………………………………………….. 3

変更・管理の決定の裁判の手続 ……………………………………… 4

裁判による共有物分割 …………………………………………….. 4

相続財産に属する共有物の分割の特則 ………………………………… 5

所在等不明共有者の持分の取得 ……………………………………… 5

所在等不明共有者の持分の譲渡 ……………………………………… 6

相続財産についての共有に関する規定の適用関係 ……………………… 7

第3 所有者不明土地管理命令等 ………………………………………… 7

1 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令 …………………… 7

(1) 所有者不明土地管理命令 ………………………………………… 7

(2) 所有者不明土地管理人の権限 …………………………………….. 8

(3) 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い ……………………………. 9

(4) 所有者不明土地管理人の義務 …………………………………….. 9

(5) 所有者不明土地管理人の解任及び辞任 ……………………………… 9

(6) 所有者不明土地管理人の報酬等 …………………………………… 9

(7) 所有者不明土地管理制度における供託等及び取消し …………………… 9

(8) 所有者不明建物管理命令 ……………………………………….. 10

2 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令 ……………………… 11

(1) 管理不全土地管理命令 …………………………………………. 11

(2) 管理不全土地管理人の権限 ……………………………………… 11

(3) 管理不全土地管理人の義務 ……………………………………… 12

(4) 管理不全土地管理人の解任及び辞任 ………………………………. 12

(5) 管理不全土地管理人の報酬等 ……………………………………. 12

(6) 管理不全土地管理制度における供託等及び取消し ……………………. 12

(7) 管理不全建物管理命令 …………………………………………. 12

第4 相続等 ………………………………………………………… 13

相続財産等の管理 ……………………………………………….. 13

(1) 相続財産の管理 ………………………………………………. 13

(2) 相続の放棄をした者による管理 ………………………………….. 13

(3) 不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消し……. 13

相続財産の清算 …………………………………………………. 14

(1) 相続財産の清算人への名称の変更 ………………………………… 14

(2) 民法第952条以下の清算手続の合理化 …………………………… 14

遺産分割に関する見直し ………………………………………….. 14

(1) 期間経過後の遺産の分割における相続分 …………………………… 14

(2) 遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げ ……………………….. 14

(3) 遺産の分割の禁止 …………………………………………….. 15

第2部 不動産登記法等の見直し ……………………………………….. 16

第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み. 16

1 相続登記等の申請の義務付け及び登記手続の簡略化 ……………………. 16

(1) 所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付け……… 16

(2) 相続登記等の申請義務違反の効果 ………………………………… 16

(3) 相続人申告登記(仮称)の創設 ………………………………….. 17

(4) 遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化 ……………………….. 17

(5) 法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化……….. 17

2 権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符号

の表示 …………………………………………………………. 18

第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み. 18

1 氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け ………………….. 18

2 登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み

………………………………………………………………… 18

第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所

の変更情報を取得するための仕組み ………………………………….. 18

第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化…………… 19

1 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化……….. 19

2 解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化 ………………… 19

第5 その他の見直し事項 …………………………………………….. 20

1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し …………………………… 20

2 外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策 …………….. 20

(1) 国内における連絡先となる者の登記 ………………………………. 20

(2) 外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し…………… 20

3 附属書類の閲覧制度の見直し ……………………………………… 20

4 所有不動産記録証明制度(仮称)の創設 …………………………….. 21

5 被害者保護のための住所情報の公開の見直し …………………………. 21

第3部 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設 ………………. 23

第4部 その他 ……………………………………………………… 26

第1部 民法等の見直し

第1 相隣関係

隣地使用権

民法第209条の規律を次のように改めるものとする。

① 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。

ア 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

イ 境界標の調査又は境界に関する測量

ウ 2③の規律による枝の切取り

② ①の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(③及び④において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

①の規律により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

④ ①の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 竹木の枝の切除等

民法第233条第1項の規律を次のように改めるものとする。

① 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

② ①の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

③ ①の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

ア 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

イ 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

ウ 急迫の事情があるとき。

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権について、次のような規律を設けるものとする。

① 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下①及び⑧において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

② ①の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(③において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

③ ①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

④ ①の規律による権利を有する者は、①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、前記1の①ただし書及び②から④までの規律を準用する。

⑤ ①の規律により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(④において準用する前記1の④に規律する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。

⑥ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

⑦ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

⑧ 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、⑤の規律は、適用しない。

⑨ ⑧の規律は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

第2 共有等

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

② 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

共有物の変更行為

民法第251条の規律を次のように改めるものとする。

① 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。②において同じ。)を加えることができない。

② 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

共有物の管理

民法第252条の規律を次のように改めるものとする。

① 共有物の管理に関する事項(共有物に2①に規律する変更を加えるものを除く。②において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

② 裁判所は、次に掲げるときは、ア又はイに規律する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

ア 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

イ 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

③ ①及び②の規律による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

④ 共有者は、①から③までの規律により、共有物に、次のアからエまでに掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(次のアからエまでにおいて「賃借権等」という。)であって、次のアからエまでに定める期間を超えないものを設定することができる。

ア 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年

イ 前号の賃借権等以外の土地の賃借権等 5年

ウ 建物の賃借権等 3年

エ 動産の賃借権等 6箇月

⑤ 各共有者は、①から④までの規律にかかわらず、保存行為をすることができる。

共有物の管理者

共有物の管理者について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有者は、3の規律により、共有物を管理する者(②から⑤までにおいて「共有物の管理者」という。)を選任し、又は解任することができる。

②共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。③において同じ。)を加えることができない。

③ 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

④ 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

⑤ ④の規律に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

変更・管理の決定の裁判の手続

変更・管理の決定の裁判の手続について、次のような規律を設けるものとする。

① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、2②、3②ア及び4③の規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。

イ 裁判所がこの裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(2②の当該他の共有者、3②アの他の共有者又は4③の当該共有者をいう。)は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ イの届出がないときは、裁判所がこの裁判をすること。

② 裁判所は、次に掲げる事項を3②イの他の共有者に通知し、かつ、イの期間が経過しなければ、3②イの規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。

イ 3②イの他の共有者は裁判所に対し一定の期間までに共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。

ウ イの期間内に3②イの他の共有者が共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、裁判所がこの裁判をすること。

③ ②イの期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る3②イの規律による裁判をすることができない。

(注)これらの裁判に係る事件は当該裁判に係る財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

裁判による共有物分割民法第258条の規律を次のように改めるものとする。

① 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

② 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。

ア 共有物の現物を分割する方法

イ 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

③ ②に規律する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

④ 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

相続財産に属する共有物の分割の特則

相続財産に属する共有物の分割の特則について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について6の規律による分割をすることができない。

② 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、①の規律にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分についての規律による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について6の規律による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

③ 相続人が②ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が6①の規律による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

所在等不明共有者の持分の取得

所在等不明共有者の持分の取得について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 要件等

① 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請

求により、その共有者に、当該他の共有者(以下「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が2人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

② ①の請求があった持分に係る不動産について6①の規律による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が①の請求を受けた裁判所に①の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

③ 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

④ 共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。

⑤ ①から④までの規律は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

(2) 手続等

① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イ、ウ及びオの期間が経過しなければ、(1)①の裁判をすることができない。この場合において、イ、ウ及びオの期間は、3箇月を下ってはならない。

ア 所在等不明共有者の持分について(1)①の裁判の申立てがあったこと。

イ 裁判所が(1)①の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ (1)②の異議の届出は、一定の期間までにすべきこと。

エ イ及びウの届出がないときは、裁判所が(1)①の裁判をすること。

オ (1)①の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が(1)①の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。

② 裁判所は、①の公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、①(イを除く。)の規律により公告すべき事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。

③ 裁判所は、①ウの異議の届出が①ウの期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。

④ 裁判所は、(1)①の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。この裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

⑤ 裁判所は、申立人が④の規律による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。

⑥ (1)①の裁判の申立てを受けた裁判所が①の公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が①オの期間が経過した後に(1)①の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、申立人以外の共有者による(1)①の裁判のその申立てを却下しなければならない。

(注)(1)①の裁判に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

所在等不明共有者の持分の譲渡

所在等不明共有者の持分の譲渡について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 要件等

① 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

② 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。

③ ①の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。

④ ①から③までの規律は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

(2) 手続等

① 8(2)①ア、イ及びエ、④及び⑤の規律は、(1)①の裁判に係る事件について準用する。

② 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判の効力が生じた後2箇月以内にその裁判により権限に基づく所在等不明共有者の持分の譲渡の効力が生じないときは、その裁判は、その効力を失う。ただし、この期間は、裁判所において伸長することができる。

(注)(1)①の裁判に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

相続財産についての共有に関する規定の適用関係

相続財産についての共有に関する規定の適用関係について、次のような規律を設けるものとする。

相続財産について共有に関する規定を適用するときは、民法第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

第3 所有者不明土地管理命令等

1 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 所有者不明土地管理命令

① 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(④の所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。

② 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発令された場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

③ 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発令された後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

④ 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

(注) 第3の1の規律による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとし、また、土地所有者のための手続保障に関し、次のような規律を設けるものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、所有者不明土地管理命令をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。

ア 所有者不明土地管理命令の申立てがその対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。

イ 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。

ウ 前号の届出がないときは、裁判所が所有者不明土地管理命令をすること。

(2) 所有者不明土地管理人の権限

① (1)④の規律により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

② 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することができない。

ア 保存行為

イ 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(注) 管理人の選任の公示に関し、次のような規律を設けるものとする。

① 所有者不明土地管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記の嘱託をしなければならない。

② 所有者不明土地管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

(3) 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い

所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

(注) 訴訟手続の中断・受継に関し、次のような規律を整備するものとする。

① 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴訟手続で当該所有者不明土地等の所有者を当事者とするものは、中断する。この場合においては、所有者不明土地管理人は、訴訟手続を受け継ぐことができる。

② 所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人を当事者とする所有者不明土地等に関する訴訟手続は、中断する。この場合においては、所有者不明土地等の所有者は、訴訟手続を受け継がなければならない。

(4) 所有者不明土地管理人の義務

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

② 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

(5) 所有者不明土地管理人の解任及び辞任

① 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

② 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

(6) 所有者不明土地管理人の報酬等

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

② 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

(7) 所有者不明土地管理制度における供託等及び取消し

① 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発令された場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

② 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、所有者不明土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。

③ 所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)が所有者不明土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。この場合において、所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者に帰属することが証明された財産を引き渡さなければならない。

(8) 所有者不明建物管理命令

① 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(④の所有者不明建物管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

② 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発令された場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物又は共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

③ 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発令された後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

④ 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

⑤ (2)から(7)までの規定は、所有者不明建物管理命令について準用する。

(注) 所有者不明建物管理命令に関する規律は、建物の区分所有等に関する法律における専有部分及び共用部分については、適用しないものとする。

2 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令について、次のような規律を設けるものとする。

(1) 管理不全土地管理命令

① 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(③の管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

② 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

③ 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

(注) 第3の2の規律による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定(裁判所は、管理不全土地管理命令等の一定の裁判をする場合には、その対象とされた土地の所有者の陳述を聴かなければならないが、裁判所が管理不全土地管理命令をする場合において、その陳述を聴く手続を経ることによりその申立ての目的を達することができない事情があるときはこの限りでない旨の規定や、これらの裁判に対する即時抗告の規定を含む。)を整備する。

(2) 管理不全土地管理人の権限

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。

② 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

ア 保存行為

イ 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

③ 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

(3) 管理不全土地管理人の義務

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

② 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

(4) 管理不全土地管理人の解任及び辞任

① 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。

② 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

(5) 管理不全土地管理人の報酬等

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

② 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。

(6) 管理不全土地管理制度における供託等及び取消し

① 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

② 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理不全土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地管理命令を取り消さなければならない。

(7) 管理不全建物管理命令

① 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(③の管理不全建物管理人をいう。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。

② 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

③ 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

④ (2)から(6)までの規定は、管理不全建物管理命令について準用する。

(注) 管理不全建物管理命令に関する規律は、建物の区分所有等に関する法律における専有部分及び共用部分については、適用しないものとする。

第4 相続等

相続財産等の管理

(1) 相続財産の管理

相続財産の管理について、次のような規律を設けるものとし、民法第918条第2項及び第3項並びに第926条第2項及び第940条第2項のうちこれらを準用する部分を削るものとする。

① 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき又は民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。

② 民法第27条から第29条までの規定は、①の規律により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

(2) 相続の放棄をした者による管理民法第940条第1項の規律を次のように改めるものとす。

相続の放棄をした者が、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は民法第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

(3) 不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消し不在者財産管理人による供託等に関し、次のような規律を設けるとともに、不在者の財産の管理に関する処分の取消しの規律を見直し、管理すべき財産の全部が供託されたときをその処分の取消事由とした上で、本文(1)①により選任される相続財産管理人についてもこれらの規律を準用するものとする。

① 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

② 家庭裁判所が選任した管理人は、①の規律による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

相続財産の清算

(1) 相続財産の清算人への名称の変更

民法第936条第1項及び第952条の「相続財産の管理人」の名称を「相続財産の清算人」に改める

(2) 民法第952条以下の清算手続の合理化

民法第952条第2項及び第957条第1項の規律をそれぞれ次のように改め、第958条を削るものとする。

① 民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

② ①の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、2箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、①の規律により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間が満了するまでに満了するものでなければならない。

遺産分割に関する見直し

(1) 期間経過後の遺産の分割における相続分

遺産の分割について、次のような規律を設けるものとする。

民法第903条から第904条の2までの規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の①及び②のいずれかに該当するときは、この限りでない。

① 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

② 相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

(2) 遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げ

遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げについて、次のような規律を設けるものとする。

遺産の分割の調停の申立て及び遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

(3) 遺産の分割の禁止

遺産の分割の禁止の定め及び遺産の分割の禁止の審判の規律を次のように改めるものとする。

① 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

② ①の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

③ 民法第907条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

④ 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて③の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

第2部 不動産登記法等の見直し

第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み

1 相続登記等の申請の義務付け及び登記手続の簡略化

(1) 所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付け

不動産の所有権の登記名義人が死亡し、相続等による所有権の移転が生じた場合における公法上の登記申請義務について、次のような規律を設けるものとする。

① 不動産の所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続(注1)により当該不動産の所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(注2)。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする(注3)。

② 前記①前段の規定による登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。後記(3)④において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(注4)。

③ 前記①及び②の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各規定による登記がされた場合には、適用しない。

(注1)ここでいう「相続・・・による」所有権の取得には、特定財産承継遺言による取得も含まれる。

(注2)遺産の分割がされた場合には、当該遺産の分割の結果を踏まえた相続登記の申請をすることで申請義務が履行されたこととなる。また、遺産の分割がされる前であっても、法定相続分での相続登記(民法第900条(法定相続分)及び第901条(代襲相続人の相続分)の規定により算定した相続分に応じてする相続による所有権の移転の登記をいう。以下同じ。)の申請をした場合にも、相続による所有権の移転の登記の申請義務が履行されたこととなる。さらに、後記(3)の相続人申告登記(仮称)の申出をした場合にも第1の1(1)①の申請義務を履行したものとみなすものとする(後記(3)②参照)。

(注3)相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記について、登記権利者(受遺者である相続人)が単独で申請することができる旨の規律を設けることについて、後記(4)参照。

(注4)後記(3)の相続人申告登記(仮称)の申出をした者が、その後の遺産の分割によって所有権を取得したときは、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(後記(3)④参照)。

(2) 相続登記等の申請義務違反の効果

相続登記等の登記申請義務違反の効果として、次のような規律を設けるものとする。

前記(1)又は後記(3)④の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する(注)。

(注)裁判所に対する過料事件の通知の手続等に関して法務省令等に所要の規定を設けるものとする。

(3) 相続人申告登記(仮称)の創設

死亡した所有権の登記名義人の相続人による申出を受けて登記官がする登記として、相続人申告登記(仮称)を創設し、次のような規律を設けるものとする(注1)。

① 前記(1)①の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる(注2)。

② 前記(1)①に規定する期間内に前記①の規定による申出をした者は、前記(1)①に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。

③ 登記官は、前記①の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる(注2)。

④ 前記①の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前記(1)①前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

⑤ 前記④の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同④の規定による登記がされた場合は、適用しない。

(注1)これは、相続を原因とする所有権の移転の登記ではなく、①の各事実についての報告的な登記として位置付けられるものである。

(注2)この場合においては、申出人は当該登記名義人の法定相続人であることを証する情報(その有する持分の割合を証する情報を含まない。)を提供しなければならないものとする。具体的には、単に申出人が法定相続人の一人であることが分かる限度での戸籍謄抄本を提供すれば足りる(例えば、配偶者については現在の戸籍謄本のみで足り、子については被相続人である親の氏名が記載されている子の現在の戸籍謄抄本のみで足りることを想定している。)。

(4) 遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化

相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記手続を簡略化するため、共同申請主義(不動産登記法第60条)の例外として、次のような規律を設けるものとする。

遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

(5) 法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化

法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続を簡略化するため、法定相続分での相続登記がされている場合において、次に掲げる登記をするときは、更正の登記によることができるものとした上で、登記権利者が単独で申請することができるものとし、これを不動産登記実務の運用により対応するものとする。

① 遺産の分割の協議又は審判若しくは調停による所有権の取得に関する登記

② 他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記

③ 特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記

④ 相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記

2 権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符号の表示

死亡情報を取得した登記所が相続の発生を不動産登記に反映させるための方策として、住民基本台帳制度の趣旨等に留意しつつ、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み

1 氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け

氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請に関し、次のような規律を設けるものとする。

① 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

② 前記①の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する(注)。

(注)裁判所に対する過料事件の通知の手続等に関して法務省令等に所要の規定を設けるものとする。

2 登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み

登記官が住民基本台帳ネットワークシステム又は商業・法人登記のシステムから所有権の登記名義人の氏名及び住所についての変更の情報を取得し、これを不動産登記に反映させるため、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。

ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み

相続の発生や氏名又は名称及び住所の変更を不動産登記に反映させるための方策を採る前提として、登記所が住民基本台帳ネットワークシステムから所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するため、次のような仕組みを設けるものとする。

① 自然人である所有権の登記名義人は、登記官に対し、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について、氏名及び住所の情報に加えて、生年月日等の情報(検索用情報)(注)を提供するものとする。この場合において、検索用情報は登記記録上に公示せず、登記所内部において保有するデータとして扱うものとする。

登記官は、氏名、住所及び検索用情報を検索キーとして、住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会を行うなどして自然人である登記名義人の死亡の事実や氏名又は名称及び住所の変更の事実を把握するものとする。

(注)上記の新たな仕組みに係る規定の施行後においては、新たに所有権の登記名義人となる者は、その登記申請の際に、検索用情報の提供を必ず行うものとする。当該規定の施行前に既に所有権の登記名義人となっている者については、その不動産の特定に必要な情報、自己が当該不動産の登記名義人であることを証する情報及び検索用情報の内容を証する情報とともに、検索用情報の提供を任意に行うことができるものとする。

第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化

1 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化

(1) 不動産登記法第70条第1項及び第2項に規定する公示催告及び除権決定の手続による単独での登記の抹消手続の特例として、次のような規律を設けるものとする。

不動産登記法第70条第1項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

(2) 買戻しの特約に関する登記の抹消手続の簡略化として、次のような規律を設けるものとする。

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

2 解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化

解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続を簡略化する方策として、次のような規律を設けるものとする。

登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前記1(1)に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、当該法人の解散の日から30年を経過したときは、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

第5 その他の見直し事項

1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し

所有権の登記の登記事項に関し、次のような規律を設けるものとする。

所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和38年法律第125号)第7条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるものを登記事項とする。

2 外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策

(1) 国内における連絡先となる者の登記

所有権の登記の登記事項に関し、次のような規律を設けるものとする。

所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるものを登記事項とする(注1)(注2)。

(注1)連絡先として第三者の氏名又は名称及び住所を登記する場合には、当該第三者の承諾があること、また、当該第三者は国内に住所を有するものであることを要件とする。

(注2)連絡先となる者の氏名又は名称及び住所等の登記事項に変更があった場合には、所有権の登記名義人のほか、連絡先として第三者が登記されている場合には当該第三者が単独で変更の登記の申請をすることができるものとする。

(2) 外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し

外国に住所を有する外国人(法人を含む。)が所有権の登記名義人となろうとする場合に必要となる住所証明情報については、次の①又は②のいずれかとするものとする。

① 外国政府等の発行した住所証明情報

② 住所を証明する公証人の作成に係る書面(外国政府等の発行した本人確認書類の写しが添付されたものに限る。)

3 附属書類の閲覧制度の見直し

登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面を除く。)の閲覧制度に関し、閲覧の可否の基準を合理化する観点等から、次のような規律を設けるものとする。

① 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面を除く。)(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。後記②において同じ。)の閲覧を請求することができる。

② 登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面及び前記①に規定する登記簿の附属書類を除く。)(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧につき正当な理由があると認められる者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、その全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。

4 所有不動産記録証明制度(仮称)の創設

相続人による相続登記の申請を促進する観点も踏まえ、自然人及び法人を対象とする所有不動産記録証明制度(仮称)として、次のような規律を設けるものとする。

① 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。後記②において同じ。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下「所有不動産記録証明書(仮称)」という。)の交付を請求することができる。

② 所有権の登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、当該所有権の登記名義人の所有不動産記録証明書(仮称)の交付を請求することができる。

③ ①及び②の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

④ 不動産登記法第119条第3項及び第4項の規定は、所有不動産記録証明書(仮称)の手数料について準用する。

  • (注1)ただし、現在の登記記録に記録されている所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所は過去の一定時点のものであり、必ずしもその情報が更新されているものではないことなどから、請求された登記名義人の氏名又は名称及び住所等の情報に基づいてシステム検索を行った結果を証明する所有不動産記録証明制度(仮称)は、飽くまでこれらの情報に一致したものを一覧的に証明するものであり、不動産の網羅性等に関しては技術的な限界があることが前提である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

何に使うのでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(注2)①及び②の規律は、代理人による交付請求も許容することを前提としている。

5 被害者保護のための住所情報の公開の見直し

不動産登記法第119条に基づく登記事項証明書の交付等に関し、次のような規律を設けるものとする。

登記官は、不動産登記法第119条第1項及び第2項の規定にかかわらず、登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、法務省令で定めるところにより、同条第1項及び第2項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。

第3部 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設

次のような規律を内容とする、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する制度(以下「本制度」という。)を創設するものとする。

1① 土地の所有者(相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。以下同じ。)によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上は一部を取得した者は承認を求めることができるで、下は共有の場合は全員が共同して行う時に限り、というのは。

・・・・・・・・・・・・・・・

② 土地が数人の共有に属する場合においては、①の法務大臣に対する承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合において、相続等以外の原因により当該土地の共有持分の全部を取得した共有者は、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して行うときに限り、①の規律にかかわらず、承認申請をすることができる。

2 1の承認申請をする者(以下「承認申請者」という。)は、承認申請に対する審査に要する実費の額を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。

3 法務大臣は、承認申請に係る土地が次のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。

① 建物の存する土地

② 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

③ 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地

土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地

境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

⑦ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

⑧ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

⑨ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

⑩ ①から⑨までに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

4 3の承認は、土地の一筆ごとにするものとする。

5① 法務大臣は、承認申請に係る審査をするため必要があると認めるときは、その職員に事実の調査をさせることができる。

② ①により事実の調査をする職員は、承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、承認申請者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他承認申請に係る審査のために必要な調査をすることができる。

③ 法務大臣は、①の事実の調査を行うため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係のある公私の団体その他の関係者に対し、資料の提供、説明、事実の調査の援助その他必要な協力を求めることができる。

④ 法務大臣は、その職員が②により承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、その職員に、他人の土地に立ち入らせることができる。

6 法務大臣は、次に掲げる場合には、承認申請を却下しなければならない。

① 承認申請が申請の権限を有しない者の申請によるとき

② 申請書の内容に不備があるとき

③ 承認申請者が2の手数料を納付しないとき

④ 承認申請者が、正当な理由がないのに、5の調査に応じないとき

7 承認申請者は、3の承認があったときは、承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を勘案して政令で定めるところにより算定した額(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。

8 承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において、3の承認に係る土地の所有権が国庫に帰属する。

9 3の承認に係る土地について当該承認の時において3のいずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じたときは、当該事由を知りながら告げずに3の承認を受けた者は、国に対してその損害を賠償する責任を負う。

① 法務大臣は、承認申請者が偽りその他不正の手段により3の承認を受けたことが判明したときは、3の承認を取り消すことができる。

② 法務大臣は、①の取消しをしようとするとき(承認申請に係る土地が8の規律により国庫に帰属している場合に限る。)は、8の規律により国庫に帰属した土地(以下「国庫帰属地」という。)を所管する各省各庁の長(当該土地が交換、売払い又は譲与により国有財産でなくなったときは、当該交換等が生じた時に当該土地を所管していた各省各庁の長)の意見を聴くものとする。

③ 法務大臣は、国庫帰属地が交換等により国有財産でなくなった場合又は国庫帰属地につき貸付け、信託又は権利の設定がされた場合において、①の取消しをしようとするときは、国庫帰属地の所有権を取得した者(転得者を含む。)及び国庫帰属地に係る所有権以外の権利を取得した者の同意を得なければならない。

11 本制度における法務大臣の権限は、法務省令で定めるところにより、その一部を法務局又は地方法務局の長に委任することができる。

(注1)民法に所有権の放棄に関する新たな規律は設けないこととする。

(注2)国は、3の承認がされた場合には、土地の所有権を所有者から承継取得する(承認申請者が無権利者であった場合には、承継の効果を生じない。)。

(注3)法務大臣は、3の承認をしようとするときは、あらかじめ、当該承認に係る土地の管理について、財務大臣及び農林水産大臣の意見を聴くものとする。ただし、主に農用地又は森林として利用されている土地ではないと明らかに認められる場合は、この限りではないものとする。

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固定資産評価証明の現況地目?

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(注4)5については、事前の通知など、立入りの手続に関する規律を設ける。

(注5)8につき、3の承認後に、承認申請者が負担金を一定期間内に納付しないときは、承認はその効力を失うものとする。

(注6)10 の取消しの規律は、法務大臣が、承認を取り消し、土地所有権の国庫への帰属(承継)を遡及的に無効とすることができることを前提にしている。

(注7)その他国庫に帰属した土地の管理に関する所要の規律を設ける。

第4部 その他

その他所要の規定を整備するものとする。

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20211004追記

Q指定相続分の登記があった後に遺産分割があった場合の登記申請義務・・・なし。

Q包括遺贈によって法定相続分と異なる遺産共有の登記がされた後に、遺産分割があった場合の登記申請義務・・・なし。

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00044.html

民法・不動産登記法部会資料 57

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (2)

P6~

4 相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割があった場合(本文④)について

(1) 第23回会議においては、法定相続分での相続登記がされた後に遺産分割があった場合における申請の義務付けの問題と同様に、再度の申請義務を課すことに消極的な意見も見られた。しかし、前記第1の1(1)(補足説明)2にも記載したとおり、相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割があった場合についても、当該遺産分割の結果を踏まえた相続登記の申請をすべき公法上の義務を課す必要があると考えられる。

 そこで、本文④では、このような場合についても、引き続き、当該遺産分割の結果を踏まえた相続登記の申請義務を課することとしているが、どうか。

(2) これに関連して、第23回会議においては、所有権の登記名義人について相続が開始された場合において、㋐遺産分割がされた後に相続人申告登記(仮称)がされたときは、当該遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が設けられていないから、その結果を不動産登記に反映しないまま放置することが許容されるのに対し、㋑相続人申告登記(仮称)がされた後に遺産分割がされたときは、当該遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が課されることとなり、バランスに欠けるのではないかとの指摘がされた。

 確かに、遺産分割が相続人申告登記(仮称)の前であるか後であるかで規律を大きく変えることは合理性に乏しいと考えられ、かつ、遺産分割がされた場合には、実際上、相続人中において権利者の集約が図られることも多いと考えられ、そのような結果を登記に反映させることができれば、その後の土地の管理・処分に当たって便宜であるといえることに照らすと、上記㋐の場合においても、当該遺産分割の結果を踏まえた登記の申請を義務付けることが相当であると考えられる。

 そのため、部会資料53の第1の1(3)②では、特段の限定を付さずに「前記(1)①の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。」としていたが、本文②では、「前記(1)①に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。」として、その文言を修正している。これにより、相続人申告登記(仮称)の申出をした者は、遺産分割により所有権を取得したときは、当該遺産分割が相続人申告登記(仮称)の前後いずれの時点でされたかにかかわらず、当該遺産分割の日から3年以内に、当該遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記を申請しなければならないことになる(この部分は前記第1の1(1)①で表現がされている。)。なお、相続開始の日から2年10か月後に遺産分割があったという事案において、相続開始から3年内に相続人申告登記(仮称)の申出をしたときは、相続開始の日から3年以内にすべき相続登記の申請義務を履行したこととなり、さらに、当該遺産分割の日から3年以内に改めて当該遺産分割の結果を踏まえた登記の申請をする義務を負うことになると考えられる。(注1)(注2)

(注1)なお、遺産分割がされた後に法定相続分での相続登記がされた場合については、①相続開始により法定相続分での相続登記の申請をすべき義務が生ずるとともに、②その後の遺産分割により当該遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記の申請をすべき義務が生ずることとなるため(この部分は前記第1の1(1)①で表現がされている。)、上記①の登記申請義務の履行として法定相続分での相続登記がされたとしても、これとは別に上記②の登記申請義務として遺産分割の結果を踏まえた所有権の移転の登記の申請をする義務が課されることとなるものと整理している。

 これにより、遺産分割がされた後に法定相続分での相続登記がされた場合と相続人申告登記(仮称)がされた場合のいずれにおいても、遺産分割の結果を踏まえた登記申請義務が課されることとなる。

(注2)このような問題は、特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈についても同様に生じ得るところであり、所有権の登記名義人が特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈を内容とする遺言をした場合において、当該所有権の登記名義人の相続人から相続人申告登記(仮称)の申出がされたときは、当該遺言の内容を踏まえた登記がされないまま放置されるおそれがあるとも考えられる。

 もっとも、遺言者は、いつでも遺言の撤回をすることができるとされていることや新たに有効な遺言が発見されることもあるため、ある遺言の内容を踏まえた登記をした後にこれを修正する登記が必要になることも想定される。また、相続人全員の合意があれば遺言の内容と異なる分割は可能であるし、そうでなくとも、遺贈についてはその放棄が可能であるから、いずれにしても遺言の内容と異なる分割が後に行われる可能性もある。そうすると、所有権の登記名義人の相続人に対し、相続人申告登記(仮称)の申出のみならず、更に当該遺言の内容を踏まえた登記の申請を義務付けることは、個別の事例によっては過剰な負担をもたらすおそれもあると考えられる。加えて、遺言がある場合には、遺言の内容を踏まえた登記の申請をすることなどにより権利関係を整理すればよいことから、遺産分割の場合のように相続人間の権利関係の集約の結果を登記に反映させておく実際上の必要性に乏しい面もあるものと考えられる。

 そこで、本部会資料においては、特定財産承継遺言や相続人に対する遺贈との関係では、従前と同様の規律を維持することとしている。

法制審議会担保法制部会   第1回会議 議事録

法制審議会担保法制部会   第1回会議 議事録

http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003008.html

部会資料1 担保法制の見直しにおける検討事項の例

http://www.moj.go.jp/content/001346936.pdf

参考資料1-1は動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会の報告書

http://www.moj.go.jp/content/001346939.pdf

参考資料1-2「中小企業が使いやすい譲渡担保制度の実現に向けた提案」

http://www.moj.go.jp/content/001346940.pdf

参考資料1-3 事業者を支える融資・ 再生実務のあり方に関する研究会論点整理

http://www.moj.go.jp/content/001346941.pdf

委員等提出資料1-1 メモ(金融庁)

http://www.moj.go.jp/content/001346943.pdf

第1 日 時  令和3年4月13日(火) 自 午後1時29分

                     至 午後4時33分

第2 場 所  法務省第一会議室

第3 議 題  1 部会長の選出等について

        2 担保法制の見直しについて

第4 議 事  (次のとおり)

議        事

○笹井幹事 それでは,予定した時刻まで少しございますけれども,既に皆様おそろいのようでございますので,法制審議会担保法制部会の第1回会議を開会いたします。

  本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

  私は,法務省民事局の笹井と申します。本日は,この部会の第1回会議ですので,後ほど部会長の選出をしていただきますが,それまでの間,私が議事の進行役を務めさせていただきます。

  最初に,資料について御確認いただきたいと思います。まず,部会資料1「担保法制の見直しについての検討事項の例」がございます。こちらにつきましては,後ほど審議の中で事務当局からご説明いたします。次に,参考資料がございます。参考資料1-1は動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会の報告書です。参考資料1-2「中小企業が使いやすい譲渡担保制度の実現に向けた提案」は,中小企業庁から御提供いただいたものです。参考資料1-3「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会論点整理」は,金融庁から御提供いただいたものです。このほか,委員等提出資料として,金融庁から御発言メモをいただいております。以上,御確認いただければと思います。

  次に,部会設置決定の報告でございます。まず,この部会で審議される諮問事項と部会の設置決定につきまして,簡単に御報告いたします。

  本年2月10日に開催されました法制審議会第189回会議におきまして,法務大臣から担保法制の見直しに関する諮問がされました。お手元の資料のうち,右肩に「諮問第百十四号」と記載されたものを御覧ください。

諮問事項はここに記載されておりますように,「動産や債権等を担保の目的として行う資金調達の利用の拡大など,不動産以外の財産を担保の目的とする取引の実情等に鑑み,その法律関係の明確化や安定性の確保等の観点から,担保に関する法制の見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものであります。この諮問を受けまして,法制審議会総会では,その日の会議において,専門の部会を設置して調査審議を行うのが適当であるとして,この担保法制部会を設置することを決定したものであります。まず,以上のことを御報告いたします。

  続きまして,審議に先立ちまして,本来であれば民事局長の小出から御挨拶申し上げるところですが,所用のため不在としておりますので,代わりまして担当の大臣官房審議官である堂薗委員より挨拶があります。

○堂薗委員 法務省で民事局担当の審議官をしております堂薗でございます。民事局長の小出が所用により不在にしておりますので,事務当局を代表いたしまして,私の方から一言御挨拶を申し上げます。

  皆様にはそれぞれ御多用の中,法制審議会担保法制部会の委員,幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。

  従来,金銭の貸付け等による債務の担保としては,不動産や個人保証が多用されてきました。他方で,特に中小企業の中には,高い収益性がありながら不動産を有しないものもあることや,個人保証の問題,特に企業の債務を個人で保証した者が過大な責任を負う場合があることが問題視されたことなどを背景といたしまして,不動産や個人保証に過度に依存しない担保取引の必要性が指摘されているところでございます。このような担保取引につきましては,平成30年6月に閣議決定された骨太の方針2018において,「経営支援を強化するため,金融機関による担保・保証に依存しない融資の促進を通じて金融仲介機能を一層発揮させる」とされ,また,令和元年6月の未来投資戦略の成長戦略フォローアップにおきましても,「企業や金融機関からのニーズを踏まえて,動産担保に関する法的枠組みや登記制度の整備について,将来的な法改正も視野に入れて検討する」との取りまとめがされるなど,制度整備の必要性に言及されてございます。

  しかし,民法には担保設定者が所有する動産について,その占有を維持したままこれを担保の目的とすることを内容とする規定は設けられておりません。

そのため,在庫などの動産に担保を設定するための手法といたしましては,明文の規定のない譲渡担保などが用いられております。また,在庫や売掛債権等を担保の目的とするためには,複数の動産や債権を一体として担保の目的とする必要がありますが,設定者が将来取得するものを含む財産の集合体を目的とする担保の取扱いについても民法には規定がありません。

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譲渡担保、集合動産・集合債権譲渡担保に関する条文が民法に組み込まれるのかもしれません。

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 このため,動産や債権等を目的とする担保取引に関する法律関係は,専ら判例法理に委ねられてまいりました。判例は一定程度蓄積されておりますが,なおルールが不明確な場面も残されております。

  このように判例法理に委ねられてきた担保取引に関するルールについて,必要に応じて見直しをした上で明文の規定を設けるとともに,判例によって解決されていない問題について規律を設けることが,担保取引に関する法律関係の明確化,安定性の確保のために必要であると考えられるところでございます。

 そこで,法制審議会において,法律関係の明確化や安定性の確保等の観点から,動産を目的とする担保や債権を目的とする担保を中心として,担保法制の見直しに向けた検討をお願いしたく,今回の諮問がされたものでございます。

  私ども事務当局といたしましても,本部会における調査審議が充実したものとなりますよう努めてまいりますので,委員,幹事の皆様方におかれましては,明確かつ安定した担保法制の構築のために御協力を賜りますよう,何とぞよろしくお願い申し上げます。

○笹井幹事 ありがとうございました。

  それでは,続きまして,委員,幹事及び関係官の方々に自己紹介をお願いいたします。

 (委員等の自己紹介につき省略)

○笹井幹事 どうもありがとうございました。

  なお,本日は小出委員が御欠席,倉部委員は途中,中座されると伺っております。また,横山委員,岩井幹事,森山関係官においては途中で御退席予定と伺っております。

  この機会に,関係官につきまして補足して説明いたします。法制審議会議事規則によりますと,審議会がその調査審議に関係があると認めた者は会議に出席し,意見等を述べることができるとされております。この部会でも従前どおり,関係省庁に対して審議への参加を求めていこうと思っております。そのため,当省の事務当局のほか,最高裁判所事務総局民事局の森山局付に関係官として御参加いただいております。

  続きまして,部会長の選任を行っていただきます。法制審議会令によりますと,部会長は,当該部会に属する委員及び臨時委員の互選に基づき会長が指名することとされております。この部会は本日が第1回会議ですので,まず,部会長を互選していただく必要がございます。

  それでは,ただいまから部会長の互選をしていただきますが,自薦又は他薦の御意見などはございますでしょうか。

  それでは,井上聡委員から手が挙がっておりますので,井上聡委員から御発言をお願いできますでしょうか。

○井上委員 ありがとうございます。僭越ながら道垣内委員を部会長に推薦したいと思います。道垣内委員は,皆様御存じのとおり,民法について幅広く,かつ深い識見を持っておられます。複雑で多面的な視点を要する担保法の研究においても深い洞察に満ちた成果を数多く発表されておりまして,私自身も日頃より御指導いただいております。そのような次第ですので,道垣内委員には是非本部会での議論の中心となっていただきたく,部会長に推薦したいと存じます。

○笹井幹事 ありがとうございます。

  もう一方,山本和彦委員からも挙手がございますので,山本和彦委員からも御発言をお願いできますでしょうか。

○山本委員 私も井上委員と同じく,道垣内委員にお願いするのが適当ではないかと考えております。今回の問題は担保法制に関するかなり包括的な諮問事項であって,理論的にも実務的にも多々難しい問題を含むものだと思っております。その意味で,今,井上委員から御指摘がありました,担保法自体に対する道垣内委員の識見はもちろんのこと,広い視野から周到な目配りをして,困難な課題について議論を取りまとめていただけるという点で,やはり私も道垣内委員にお願いするのが適当であると考えている次第であります。

○笹井幹事 ありがとうございました。

  ただいま,井上委員,山本委員から,部会長として道垣内弘人委員を推薦するとの御発言がございましたが,ほかに御発言ございますでしょうか。

  よろしいでしょうか。ほかに御意見がないようでしたら,部会長には道垣内委員が互選されたということになろうかと思いますが,いかがでしょうか。

  ありがとうございます。

  異議なしという御意見がございました。ほかにも御意見ないようですので,部会長には道垣内弘人委員が互選されたものと認めます。

  その上で,本日は法制審議会の内田貴会長にも御出席いただいておりますが,内田会長におかれては,いかがでございましょうか。

○内田会長 法制審議会の会長をしております内田でございます。ただいま道垣内弘人委員が互選されましたけれども,担保法の分野における御業績等に照らしましても,私も道垣内弘人委員が適任であると思います。互選の結果に基づき,道垣内委員を部会長に指名したいと思います。

○笹井幹事 ありがとうございました。

  ただいま内田会長から道垣内弘人委員を部会長に指名していただき,これをもちまして道垣内委員が部会長に選任されました。

  道垣内委員におかれては,部会長席への御移動をお願いいたします。

○道垣内部会長 ただいま部会長に指名されました道垣内弘人と申します。井上さん,山本さんから御推薦いただいたのですが,そこにおける推薦の理由に必ずしも納得しているわけではありません。力は及ばないとは思いますけれども,議論を取りまとめるために,微力を尽くしたいと思います。

  先ほど堂薗さんからもお話がありましたように,担保法制の見直しの必要性が高まっているわけですけれども,他方でやはりいろいろなところ,倒産法制にせよ,民法の中にせよ,商法にせよ,いろいろなところに跳ね返りのあるテーマでございますので,かなり丁寧に検討していかなければいけないと思っております。皆さんの御知見をいただいて,何とか取りまとめができるようにしていきたいと思います。

  なお,私はこれまでも法制審議会の部会において委員とか幹事とかをさせていただいておりましたけれども,大体,中間に1回と要綱案が取りまとめられた段階で,昔の言葉でいうとコンパというのですが,懇親会をやっていたのですけれども,最近できないという状況になっております。ちなみに会費制でございますけれども。この取りまとめが終わる頃にはコロナも収束して,要綱案の取りまとめができましたときには心置きなく懇親会ができるという状況であればよいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

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コンパ、時代を感じます。

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  さて,法制審議会令というのがございまして,法制審議会令の6条5項というのがあります。そこでは,部会長に事故があるときには部会長代理が職務を代行するのですが,それをあらかじめ部会長が委員及び臨時委員のうちから指名しておくという仕組みになっております。今後,部会長であります私が会議に出席することがかなわないという場合に備えまして,私としてはこの6条5項に従いまして,部会長代理を指名させていただければと思います。沖野眞巳委員にお願いをするということで指名させていただきたいと思いますけれども,沖野委員におかれましては,お引き受けいただけますでしょうか。

○沖野委員 はい,ありがとうございます。微力でございますが,努めさせていただきます。くれぐれも事故のないようにお気を付けていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○道垣内部会長 それはお互いかもしれませんけれども。では,沖野委員に部会長代理を引き受けていただきましたが,そこで審議に入るわけなのですが,審議に入ります前に,当部会における議事録の作成方法のうち,発言者名の取扱いについてお諮りをしておきたいと思います。

  まず,現在の法制審議会部会における議事録の作成方法につきまして,事務当局から御説明いただきます。

○笹井幹事 法制審議会の部会の議事録における発言者名の取扱いにつきましては,かつては発言者名を明らかにしない形で逐語的な議事録を作成していた時期もありましたが,平成20年3月に開催された法制審議会の総会におきまして,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに,部会長において部会委員の意見を聴いた上で,発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという取扱いに改められております。

 御参考までに申し上げますと,この総会の決定後に設置されました民事法関係の部会では,いずれも発言者名を明らかにする議事録を作成するものとされております。したがいまして,この部会の議事録につきましても,発言者名を明らかにしたものとするかどうかを御検討いただく必要があるのではないかと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  それでは,笹井幹事からの御説明につきまして御質問,御意見がございましたらお願いいたします。

  特段,御意見はないと考えてよろしいでしょうか。といたしますと,部会長の私といたしましても,当部会における審議事項の内容等に鑑みて,発言者名を明らかにした議事録を作成するということにしたいと思いますが,いかがでございましょうか。

  よろしゅうございますでしょうか。では,そういうことで,当部会につきましては発言者名を明らかにした議事録を作成することとしたいと思います。

  それでは,本日の審議に入りたいと思います。

  本日はまず,皆様に今回の担保法制の見直しにつきまして,幅広いテーマになりますので,それぞれの問題意識やこの部会の進め方について自由に御発言をいただくフリートークをお願いしたいと思います。個々的な論点に関して,こう在るべきだというふうな話はこれからどんどん詰めていくわけですが,全体としての,こういうふうな形で進めていくべきである,こんなことを考えるべきである,あるいは,これから笹井幹事から部会資料1について御説明いただきますけれども,そこに書いてあること以外にこういうことも必要だとか,あるいは,こういうふうな方向が必要なのではないかとか,そういうふうなことにつきましていろいろな御意見をいただければと思います。

  そこに先立ちましてというか,前提といたしまして,事務当局から部会資料1に基づいて説明をしていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○笹井幹事 それでは,部会資料1につきましてご説明いたします。部会資料1を御覧ください。

  まず,第1,基本的な視点についてです。先ほど堂薗委員からの挨拶にもございましたように,これまで大きな役割を果たしてきた不動産担保や個人保証に過度に依存しないように,多様な資金調達手法を整備する必要があるということが指摘されておりまして,在庫などの動産や売掛債権などの債権が担保の目的として活用できるのではないかと言われてまいりました。

  しかし,民法には,設定者が所有する動産の占有を維持したまま,これを担保の目的とすることを予定した規定はなく,設定者が将来取得するものを含む複数の動産を一体として担保の目的とすることを予定した規定もございません。

 このため,実務では,所有者が引き続き占有する必要がある動産を担保とするためには,譲渡担保や所有権留保などのいわゆる非典型担保が用いられてきました。また,債権,さらにそれ以外の財産を担保とするための手法としても,実務上は譲渡担保が利用されてきたところです。これらの手法につきまして,現在は専ら判例によってルールが形成されておりますけれども,その射程がどこまで及ぶかが必ずしも明確でないことも多く,また,判例がルールを示していない論点も残されているという状況でございます。このため,法律関係の明確化,安定性の確保等の観点から,動産,債権を目的とする担保を中心として,担保に関する法制の見直しが必要であるという認識から,今回,諮問に至ったものでございまして,こういったことが今後の検討に当たっての基本的な視点になるのではないかと考えております。

  こういった問題意識に基づきまして,担保法制についてこれから御議論をお願いしていくわけでございますけれども,議論する必要があるのではないかと考えた具体的な論点を第2以下に記載しております。

  まず第2,総論―担保法制全体の構成ですけれども,これは第3以下とも少し異なっておりまして,個別の論点というよりは,担保法制全体をどのように構成していくのか,どのようにその全体を設計していくのかということに関わる点でございます。この担保法制全体をどのように構成していくかを考えるに当たりまして,幾つかのポイントがあるのではないかと考えまして,そのポイントを差し当たり三つ挙げたものでございます。

  一つ目は,どのような財産を目的とする担保制度を設けるかということでありまして,先ほど申し上げましたように,動産,債権が中心になってくると考えておりますけれども,それ以外の財産を取り込む必要があるのか,取り込むとして,どのような財産を対象としていくのかという,その対象の範囲の問題でございます。

  二つ目は,今申し上げました一つ目とも関係しますけれども,担保制度の種類や形式についてでございます。財産の種類などに着目して,例えば動産や債権といった財産の種類に着目して別々の担保制度を作るのか,あるいは,担保という機能を有する取引について広範に適用される統一的な適用範囲の広い担保制度を一つ作るのかといった問題ですとか,あるいは,少し違った視点ですけれども,抵当権や質権と並ぶ新しい担保物権を典型担保物権として作るのか,あるいは現行法の譲渡担保などの形式を残しまして,担保目的で財産権を移転する,あるいは留保する場合にこういう規定が適用されるというような形で規定を設けていくのか,そういった形式もあるかと思います。こういった二つの問題を取り上げてございます。

  三つ目は,対抗要件制度,それから登録制度の在り方でございます。先ほど二つ目のポイントについて御説明申し上げましたけれども,担保目的で財産権を移転する,あるいは留保する場合に適用される規定を設けた場合,所有権の移転についての対抗要件が必要になってくるわけですが,それに加えて,担保目的の取引であることを示す何らかの登記等の制度を設けるべきか,また,そういったものを設けた場合に,その登記・登録制度をどのような効力と結び付けるのかといった問題があろうかと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こういうものも考えられているようです。

ETH、Solidity、Remixを利用した譲渡担保プログラムの解説

https://github.com/gurunbox-contracts/contracts/tree/main/youtube

  ほかにも担保法制全体を検討するに当たって大きな視点があるかもしれませんので,そういったものがございましたら,後ほど御指摘いただければと思っております。

  続きまして,部会資料1の第3以下は,より個別具体的な論点を挙げたものでございます。今,部会長からもございましたように,それぞれの論点につきましては次回以降,もう少し詳しい資料を作成いたしまして,一つ一つ御議論いただければと思っておりますので,今回は簡潔な説明にとどめさせていただきたいと思っておりますけれども,大きく言いまして,担保の実体的な効力,それから,第三者への対抗やこれに関連して担保権が競合した場合の優劣関係の定め方,第3に,担保の実行方法,第4に,担保の倒産法上の扱い,その他といった,大きく言えば五つくらいの領域に分類できるのではないかと思っております。

  まず,第1の実体的な効力につきましては,例えば,目的物の使用収益権限がどちらにあるのかということですとか,物上代位の可否,物上代位を認める場合にどのような代替物に対して物上代位をすることができるのかということですとか,あるいは,いわゆる集合動産ですとか集合債権が担保の目的となった場合にどういった規律が妥当するのか,そういったものを予定した場合にどのような規律が必要になるのかといったところが,実体的な効力に関しては問題になるのかなと思っております。

  また,第2の対抗要件制度や担保権の優劣関係につきましては,現在の動産譲渡担保の対抗要件である引渡しのうち,特に占有改定につきましては公示性が乏しいという指摘がございまして,対抗要件制度を全体としてどのように設計していくのかということが問題になってこようかと思います。また,同一の財産権について,例えば同一の動産について,複数の担保権が競合するという場合が考えられるのではないか,これは同種の担保が競合するだけではなくて,先取特権,質権あるいは現在の譲渡担保などをいろいろな形で組み合せることが考えられるかと思いますが,複数の担保が同一の財産について設定されたといった場合に,競合した担保の優劣関係をどういう基準で判断していくのかということが問題になってこようかと思います。

  この点につきまして,現在は対抗要件の具備の先後によって優劣関係を決めるということになっているのだと思いますけれども,こういった対抗要件具備の先後によるという考え方を維持するのか,あるいは,第三者対抗要件とは区別された基準を設けて,それによると,第三者対抗と担保同士の優劣関係については別の考え方によって定めていくという考え方もあり得るところかと思っております。

  なお,資料では担保所有権という言葉を用いておりまして,これは講学上,特に確立した概念というわけではございませんけれども,現在の譲渡担保や所有権留保がされた場合に,担保の目的の範囲で債権者が取得したり留保したりといった所有権を指す言葉として用いました。これは,私どもも参加しておりました動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会の中で用いられている概念ですけれども,ここでは譲渡担保や所有権留保を包摂する概念として表現として便利であったために,使わせていただきました。ただ,事務当局として,立法に当たってこの概念を使うという方針が決まっているというわけではございません。

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所有権留保も含む担保所有権。

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  それから,冒頭に五つほど大きな領域があると申し上げましたけれども,三つ目の担保の実行についてでございます。実行につきましては,私的実行の可否,これに加えて,裁判所の手続を利用することの可否などが問題になってくるかと思いますが,そのほか,いわゆる後順位の譲渡担保などが許容される場合に,後順位の担保を有する債権者が実行することがそもそもできるのか,あるいは,実行できるとしてどのような要件で実行することができるのか,また,動産が目的となっている場合には,短期間に価値が大きく下落する場合があるというような特質もございますので,こういった特殊性を考慮して,引渡しなどの実効性を確保するための方法を設計する必要があるかといったところが問題になるかと思います。

  さらに,集合動産や集合債権といった財産の集合体が目的である場合に,その担保をどのように実行していくのかということも問題になってくるかと思います。

  第4の大きな領域として,担保の倒産手続における取扱いがございます。ここに属するものといたしましては,担保権実行手続中止命令に関する論点として,例えば,実行着手前に発令することができるのかといったことですとか,発令前の審尋が必要的であるのかというような問題,あるいは流動的な集合物,集合債権が目的である場合に,倒産手続後にその範囲内に加入してきた新たな動産や債権といったものに担保の効力が及ぶのかといった問題を検討する必要があるかと思います。

  最後に,その他ですけれども,問題となり得るものとして,預金担保,ファイナンス・リース,包括担保制度を掲げました。これらにつきましても,またおいおい詳細に御検討いただく機会を設けたいと思いますが,包括担保につきまして,後ほど金融庁からも御説明があるかと思いますけれども,どういった場面を想定しながら,どういった効果を期待することができるのか,また,その具体的な制度設計につきましては,他の特定の担保の扱いや他の取引との関係等,細かく制度設計をしていく必要があろうかと思いますので,そういった点につきまして今後,議論をお願いするということになろうかと思います。

  最後に,担保法制につきまして以上のような論点を一例として挙げさせていただきましたけれども,ほかに検討すべき事項がありましたら,今日の機会に御指摘いただければ,事務当局において検討させていただきまして,部会に資料として提出させていただくということになろうかと思います。

  簡単ですけれども,部会資料1につきましては以上でございます。

○道垣内部会長 どうもありがとうございました。

  これから御意見いただくわけですが,少しその前に一言だけお話をしておきたいと思います。1時半から5時半という形で時間が設定されておりますが,4時間連続して行うというふうな非人道的な行動をとるということは一般的にはありませんで,4時間ですので,やはり2時間見当で1回お休みを取るということにしたいと思います。そこで,3時半までをまず第1回のセッションとして考えたいと思うのですが,それは一応でありまして,3時15分からお休みに入っても,3時45分からお休みに入っても,それは適宜やります。ともかく,ずっと続くわけではないということだけは最初に申し上げておきたいと思います。

  そこで,ただいまの笹井幹事の御説明につきまして,御質問や御意見ないしは補足点等がございましたら,お伺いしたいと思います。どなたからでも,どの観点からでも結構でございますので,御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いします。

  金融庁からお手が挙がっているようですが,尾﨑さんですか。よろしくお願いします。

○尾﨑幹事 ありがとうございます。少々お時間をいただきまして,発言させていただきたいと思います。

  金融庁は,金融機能の発揮を通じて経済の成長に貢献することを仕事としています。この部会においては,特に事業者の成長のために融資実務がどう在るべきか,融資実務を形作る重要な要素である担保法制はどうあってほしいかという立場から発言させていただきたいと思います。金融庁ではこうした観点から,昨年末に事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会を設置し,論点整理を公表しています。お手元の参考資料1-3を御覧ください。

  本日はこの論点整理を踏まえつつ,3点,求められる融資実務,担保法制への提案,論点整理後にいただいた御意見について御紹介したいと思っております。お手元にあります「メモ(金融庁)」とあります1枚の紙を御覧いただけますでしょうか。

  まず,1番目の求められる融資実務というところですけれども,この融資実務はどう在るべきかという点から議論したいと考えています。以前より金融機関は不動産担保や経営者等の個人保証に依存し,事業者の事業そのものをよく理解していないのではないか,また,過去の財務データを重視し,事業の将来性を十分に評価していないのではないかという指摘がされてきました。その結果,担保が十分でなく過去の実績がない借手,例えばベンチャー企業や新規分野などに思い切って事業を拡大したい企業,経営の悪化した企業などに対してリスクマネーが行き渡らない,資金以外の支援が行われにくい,あるいは再生局面で再生支援の着手までに時間が掛かっている上に,貸手の利害が錯綜するため調整に更に手間取り,その間に事業価値が毀損してしまい,かえって再生が困難になることもあるといった課題が存在し,企業の生産性向上や経済の成長を必ずしも後押しできていないのではないかと言われています。

  こうした課題を克服するために求められるのは,事業者の事業の実態と将来性を深く理解し,事業の将来のために必要な資金を出すとともに,資金を出した後も事業が成功するよう継続的に支援を行う金融機関の職員です。そして,そうした融資や支援が可能となるノウハウ蓄積と体制整備を行う金融機関です。こうした取組を進める金融機関,そして金融機関の職員が増えれば,ベンチャーを含めた成長企業にリスクマネーが供与されやすくなります。事業価値の維持・向上という方向性で一致した債権者間の調整が容易になり,早期の再生が可能となります。その結果,我が国の企業の生産性の向上,経済の成長を後押しすることになります。

  次に,2の担保法制への提案を御覧ください。まず,※の注にありますように,金融機関においては近年,事業者の事業の実態や将来性を理解し,事業者のニーズに沿った支援を行うよう努力されています。事業性評価とか伴走型支援と呼ばれているものです。金融庁も,90年代の金融危機の時代などには厳格な資産査定や資本規制を通じた健全性確保に重点を置いていましたが,その後,検査マニュアルを廃止するなど,今申し上げたような金融機関の多様な創意工夫を後押しすることにも重点を置いています。金融庁としては,金融機関が事業の実態や将来性を理解し,事業者のニーズに沿った支援を行えるよう,環境の整備という方向性を更に追求していきたいと考えています。

  その上で,こうした取組を進めるためには制度的な裏付けも必要であると考えています。特に担保法制は融資実務を形作る重要なインセンティブであり,金融機関及び金融庁の取組が成功するか否かにも大きな影響を与えるものと考えています。現在の担保法制は,個別資産に対する担保を中心としていると理解しています。こうした法制の下,金融機関は融資の担保として個別の不動産を利用することが多いのが実情です。このほか,経営者の生活住居の担保や個人保証も使われています。不動産や個人資産は事業そのものとは独立した価値を持っているので,清算したときの債権の保全としての効果を期待しているわけです。そのため,清算したときにも貸し倒れないようにという観点から,融資の実行時から担保価値の範囲内の融資額かどうかといったことが重要視されてきたと理解しています。

  しかしながら,こうした側面が強く出すぎると,事業の価値を向上させるために必要な資金を出す,事業の価値を向上させるために資金以外の支援も行うという金融機関の動機が弱くなってしまいます。極論すれば,事業者が必要としているかどうかに関わらず,担保や保証の価値に見合った資金を出す,あるいは,事業者が苦しいときでも担保や保証で回収できるので,事業者を支援する必要はないということになりかねません。また,再生局面でも,場合によっては事業の継続よりも不動産抵当権を実行するインセンティブが働く可能性もあります。また,担保価値の範囲内の融資額かどうかが重要であれば,動産や債権を担保とする融資も,その資産の価値が乏しい場合には少額しか融資できないことになります。特に中小企業の場合には少額になりやすく,そうすると,評価のコストや手間の方が大きくなることから,活用も限定的になっていると言われています。

  このように,担保法制の在り方は融資の実務,考え方に大きな影響を与えます。そこで,事業を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会では,新たな選択肢として,事業そのものを担保とすることを可能とする担保権を提案し,この担保権をその目的を踏まえて事業成長担保権と呼んでいます。動産,債権のほか,契約上の地位,知的財産権,のれん等を含み,将来発生するものも含まれるものと考えています。事業が継続していれば,事業から将来生ずるキャッシュフロー全てを担保の目的とすることになり,冒頭で申し上げた,事業の実態と将来性を理解し事業の将来のために必要な資金を出すという金融本来の在り方と担保の在り方が一致し,金融機関に対して事業価値の向上という事業者と同じ方向を向いて支援をする強力なインセンティブを与えることになります。経営が困難に直面した場合も,不動産担保や個人保証の場合と比較して,金融機関には早期に支援を行い,事業価値を回復するインセンティブが強くなります。また,そうならないように日頃から事業者をしっかりと支援することにより,健全な経営が促され,経営難に陥りにくくなることが期待できます。

  担保法制というとデフォルトに陥った場面に目が向きがちですが,事業成長担保権の最大の意義は,デフォルトに陥らないような支援が行われることにあるともいえます。

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事業成長担保権。初めて聴きました。

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再生局面でも,事業者が事業全体に担保を設定すれば,個別の不動産,動産にばらばらに担保が設定された場合と比較して,事業者と債権者の利害が一致しやすく,また,事業価値が毀損する前に経営改善,事業再生を支援することが,事業者だけでなく担保権者にとっても利益になるため,早期の事業再生が促されると考えられます。

  このように,事業の将来性を評価して資金を出し,事業の成長のための支援を行う融資実務が実現すれば,デフォルトの可能性を抑えることができます。また,仮にデフォルトに至ったとしても,早めの支援を通じて事業をいかすことにより,貸倒れを抑えることも可能になります。そのため,金融機関が事業者の成長や再生のためにより積極的にリスクを取ることが可能となり,そのための目利き力を養うことも合理的になります。

  海外においてはこのような実務が見られます。ベンチャー企業が全資産を担保にリスクの高い融資を調達する例があります。中小企業融資では,全資産を担保に融資し,密度の濃いモニタリングを行い,経営が悪化すると素早く支援を行うようです。単純な比較はできませんが,担保法制について参考にすべき点があるように思います。海外だけでなく日本でも,内田会長の御論文ですとか,今般の中小企業庁における提案にも見られるように,議論も蓄積されております。日本の事業者,金融機関に十分な選択肢を確保するためにも,是非取り上げて御検討いただきたいと考えております。

  最後に,研究会の論点整理の公表後に有識者や実務家からいただいた御意見を幾つか紹介したいと思います。3.の論点整理公表後に有識者や実務家からいただいた御意見のところを御覧ください。

  前向きな御意見としては,事業者を中心に,まず,メインバンクが明確になるというものがありました。中小企業は安定的な資金供給等の支援を行うメインバンクを求めている,事業成長担保権により金融機関を順位付けすることでメインバンクが明確化できるとよい,金融機関の職員は一人で多くの事業者を担当しているが,事業成長担保権を設定することで,金融機関にとっても自社の優先順位が決まり,自社の実情を理解した対応がされるようになるとよい,また,経営者としての挑戦や再チャレンジの後押しが期待されるというものもありました。不動産等の資産を持たない事業者が融資を受けるためには,現在でも経営者保証を求められるところ,家族との生活を危うくさせるようなリスクまでは負えないという経営者は多い,事業成長担保権を通じて経営者保証の負担を負わずに融資を受けられるようになれば,起業や事業承継も前向きに考えやすくなるという御意見もありました。

  他方,再生実務家や金融機関の方を中心に,慎重な御意見もありました。その一つは,まだ見ぬ世界であり,時間が必要というものです。例えば,事業成長担保権を活用した融資実務は日本の金融機関にとってまだ見ぬもの,例えば業務分担や人事評価制度,人事ローテーションなどを含め,人材育成や組織体制の整備のために相応の時間が必要になる,といった御意見がありました。また,既存の制度・実務との整理が必要というものもありました。例えば,民法典ではなく,財団抵当法や企業担保法などの特別法によることを考えるべき,あるいは,活用したいと思う金融機関から使い始めて,顧客に金融機関を選んでいただくというのが望ましい,実務の混乱を避けるためにも不動産担保や経営者保証の融資といった現状の実務は否定すべきではない。こうした御意見がございました。

  金融庁といたしましても,頂戴した御意見も踏まえつつ検討が進められれば有り難いと考えております。

  最後に,事業成長担保権を立法するとなれば,実務上の運用を含め,乗り越えるべき点が多いことは理解しております。しかし,海外でできていて日本でできないということはないのではないかと考えています。当然ですが,担保法制だけで全てが解決できるわけではありません。しかし,海外の例を見ても,担保法制が重要なインセンティブの一つとして機能していることは確かです。また,現状の実務とはかなりの距離があることも理解しています。しかし,現状を維持すべきことは常に正しいわけではないとも考えています。10年,20年先を見据えて,是非この部会でも取り上げていただいて,前向きに御検討いただければと存じております。

  長くなりましたが,ありがとうございます。

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やっぱり担保というと金融機関と事業者の関係になるのですね。

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○道垣内部会長 どうもありがとうございました。非常に説得的なプレゼンテーションだと思います。今後どのような形でそのお話を位置付けていくのかということについては,皆さんの御意見を伺いながら整理をしていきたいと思います。

○尾﨑幹事 ありがとうございます。

○道垣内部会長 では,ほかに何か御意見はございませんでしょうか。

○鈴木委員 地方銀行協会の鈴木でございます。いきなり金融の実務の話になりましたので,せっかくですので発言させていただきます。

  私,先ほど申しましたけれども,銀行員生活の3分の2が営業の現場におりまして,融資実務に携わってまいりました。正しくアフターコロナにおいては,政府の支援策が順次終了することが想定されますので,今まで以上に金融機関が創意工夫とか目利き力を発揮しながら取引先を支える必要に迫られていると認識しております。私もABLなどの融資形態に時に触れてまいりましたけれども,やはり法律が定まっていないところもありまして,オーダーメードの契約書を多数作成する必要があるなど,決して使い勝手がよいものではなかったと認識しております。今回は現場の代表でございますので,私自身がより積極的に活用する気になるかとか,腹落ちできるかといったところを気にしながら臨んでいきたいと思っております。

  新たな枠組みとしての包括的な担保制度,包括担保については,取引先企業の事業成長について金融機関が利害を共にするというものでございますので,そういった枠組みと捉えております。やはりここ何十年,失われた時代ともいわれていますけれども,活力ある企業が次々と育つアメリカのような状況,そうなっていくためには一つの選択肢になるかもしれないと思っております。

  私ども地銀協は全国64行から,いわゆる第一地方銀行といわれているところになりますけれども,その中に融資部会というのがありまして,そこの21行で機動的に意見集約をしながらこの会に臨んでいきたいと思っております。包括担保については,どのような場面で活用が考えられるかといったところを意見集約しましたところ,ベンチャー企業とか事業承継,それから再生支援,そういった局面で活用できるのではないか,そういった声が多く上がりました。議論すべき点は非常に多いと考えておりますけれども,リレーションシップバンキングを担う地域金融機関においては想像以上に関心が高い,そういうテーマであることを御紹介しておきます。

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金融機関については、まずは自行が利益を出す、その後に事業者の中で成長する企業が出てきたら良い、という考え方についてブレないと思います。

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○道垣内部会長 ありがとうございました。

  ほかに御意見,御質問いただければと思います。

○大西委員 包括担保の話が出ましたので,少し発言させていただきます。

  私は元々弁護士時代に会社更生などの法的整理,その後,産業再生機構時代以降は私的整理の方でずっとやってまいりました。その中でやはり感じるのは,担保も明確になっているものと,不明確なものが結構あって,もちろん動産担保もそうですが,例えば代表的には,ここに書かれているファイナンスリースは,会社更生では更生担保権で扱いますが,私的整理では全くらち外となっています。金融機関の方が融資をする際には,予測可能性がある担保制度というのは非常に大事であり,今回の主題である譲渡担保も,これまでは判例の中で勉強してきたのですが,そこを明確化するというのは非常に意義が深いことかなと思っております。

  それから,もう一つ,包括担保の件で申し上げますと,やはりかつてのように製造業のように,いわゆる工場等の施設を持った産業が主流の時代ですと,従来の不動産担保というのがなじみやすかったと思うのですが,今主流となって増えているのはサービス業ですよ。しかもITとかそういう企業になりますと,不動産もないし,場合によっては動産もなく,権利若しくは事業ということが重要となり,企業によって何に価値があるかというのが多様化していると思います。そうすると,やはり担保制度もそれに合わせていろいろな選択肢が必要であり,その一つが事業の担保だと思うのです。そういうことが,ひいては金融機関も担保を付けて融資をしやすくなるし,例えば事業再生に至った企業であれば,そういう担保を入れることで,先ほどのお話もあるように,個人保証によらない融資が主流となり,経営者も安心して事業に専念できることになります。そういう意味で事業の担保というのは意義深いと思います。先ほど申し上げたように,どういう業種の企業が最近増えてきているのか,そして何に対して担保価値を見いだすべきなのかを踏まえて,担保制度を考えることが,本質的な考え方だと思います。私どもは実務家ではありますが,そのような考え方に即した議論がなされれば有り難いと思っております。

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IT企業はその分初期投資などが製造業などに比べて少額で済み、担保を付けるほどの借り入れを必要としない場合もあると思います。

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○道垣内部会長 どうもありがとうございます。

  ほかに,御自由に御発言いただければと思いますが。

○井上委員 ありがとうございます。今の御発言と重なるところがあるかもしれないのですけれども,3点ほど申し上げたいと思います。

  一つ目は,バランスを考える必要があるということです。担保権というのは設定者が持っている様々な財産,あるいはそこから生ずるキャッシュフローの一定の範囲を排他的・優先的に確保する権利だと思うのですけれども,それが今までは不動産に偏りすぎていたところ。今,大西委員がおっしゃったように事業が多様化する中で,より広いといいますか,在庫のような流動性のある動産ですとか売掛債権のようなもの,さらには事業そのものをつかまえることが必要になってくるという問題意識は,私もそのとおりだと思います。

  ただ,そういう形で,資金調達のために担保権者に対して排他的・優先的に提供できる範囲を広げていくという観点ばかりですと,それは,一般債権者,あるいは取引債権者に何が引当財産として残るかということの裏返しでもありますので,そういう意味では,事業再生フェーズになったときに何も残らないということでは,これまた困るというわけでして,その意味では,不動産から動産・債権に対象を広げていく,あるいは事業性のある資産に広げていくという発想とともに,むしろ何を残すのかという視点も併せて考える必要があり,そういう点で,冒頭申し上げたバランスというのが1点,申し上げたい点ということになります。

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  2点目は,担保というのは優れて実務的な道具ですので,そういう意味では融資実務をどうしていくかに関わる問題ですが,その際に制度としての簡易,迅速,廉価というのは非常に重要なポイントになると思います。ですので,取り分け,対抗要件制度ないし公示制度といった制度を議論する際,それ以外には実行段階もそうかもしれませんが,手続的に重くなりすぎないようにして,簡易であり,迅速であり,かつコストが安いということも,この担保法の改正が成功するためには非常に重要なポイントになるのではないかと思うので,議論のときに,そういったことを念頭に置くことも忘れてはいけないと思います。

  あと,もう1点申し上げたかったのが,大西委員が先ほどおっしゃった予測可能性でして,先ほど申し上げた,排他的・優先的に担保権者が確保できる範囲を広げるか,狭めるかという問題とともに,どう明確化するかという視点がないと,どちらからも萎縮してしまって無駄になってしまう部分が出てきてしまうと思います。ですから,設定者の財産,あるいはそこからのキャッシュフローのどこまでが担保権者のもので,どこまでが一般債権者,あるいは取引債権者,あるいは設定者自身に残されるべきかということについての予測可能性があること,フェーズが変わって事業再生あるいは倒産に至ったときも,担保権者がどこまで取れて,どこからは取れないことが分かるという明確さ,あるいは予測可能性も非常に重要だと思っております。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  それでは,何人かから更に手を挙げていただいておりますので,大澤さん,お願いいたします。

○大澤委員 大澤でございます。今の井上先生の1と3に対する補足になろうかと思いますが,私は実務においては倒産実務家の側面が強いものですから,事業成長というための包括担保というアイデアそのものについて大きな異論があるというわけではなくて,どちらかというと,やはりバランス,特に事業再生前に包括担保が設定されたものについて,破産は少し話が違うかもしれませんが,事業再生,民事再生,ADR,あるいは会社更生等で事業再生に至ったときに,担保権者がどこまで手を伸ばせるのかと。もちろん先ほどお話のあった,今回の担保法の中でも第6でしたか,その辺りで確か出てきていたと思いますけれども,固定化というような概念等も含めて種々議論がなされているところだと思っております。もちろん一般取引債権者,あるいは再生債務者そのものの再生という観点から,倒産法のフェーズにおいてどこまで制限されるべきなのか,きちんと線引きをしておかないと,都度,都度,倒産実務家としては交渉という話になってしまうと,予測可能性ももちろん担保できませんし,取引債権者等が被害を被るというようなことにもなりかねないとも思っておりますので,そういった倒産の場面における担保法制とのバランスというものについては,今後も議論を是非させていただきたいと思っております。

  簡単ではございますが,以上です。

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弁護士の先生は、最後の執行の部分。執行が出来ないと担保を設定する意味がなくなります。不動産担保が普及する要因でもあります。

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○道垣内部会長 ありがとうございます。

○本多委員 先ほど,井上委員,それから大澤委員からもバランスというお話がございましたが,これについて金融実務に照らして補足させていただければと存じます。間接金融を担っている銀行の立場において,ファイナンスを提供させていただく場面というのは貸付けの場面だけに限られなくて,例えば,保証やLCという信用補完を提供させていただく場面とか,デリバティブ等のリスクヘッジ商品等を提供させていただく場面においても,与信をさせていただくことになります。そういう与信者サイドにおける様々な金融商品間における,それから与信者同士の間における競争関係や,競争環境にも配慮して,バランスというものを考慮する必要があると考えています。一方で,受信者サイド,ファイナンスを受ける事業会社サイドにおいても,受信をする方法は金融機関からの借入れに限られるわけではなくて,社債の発行だったり,株式の発行だったり,商取引におけるファイナンス,それから,リース等を活用してファイナンスを得るということもあるわけでございまして,こうした様々なファイナンスの局面を想定しながら,ある一定のファイナンサーに対して強力な排他的な権利を与えた場合の影響について,全体のバランスを考慮しながら検討しなければならないと考えております。

  もう一つ,補足をさせていただきますと,特に事業会社の成長のライフサイクルを考えた場合に,当初,シードから発生し,それからだんだん大きくなっていくという過程において,アーリーステージにおけるファイナンスのための強力な担保権が必要になることがあるかもしれないのですが,成長の過程において,強力すぎる担保権があることによって資金調達をかえって害してしまうということにも配慮しないといけないことがあるかもしれません。その後,更に成長していって,健全なファイナンスに関する競争の中で,そういう強力な担保権が外れるということもシナリオとして想定されると思われるのですが,その後,今度は逆方向に衰退していくという状況が生じた場合に,また強力な担保権が必要になってくるということがあるかもしれません。その局面において,例えば複数の金融機関からファイナンスを得ていた場合,窮境にある会社に対するファイナンスが強力な担保権を付与された者によりロールアップされていく過程というものがどうやって生じるのかということも慎重に議論する必要がありそうなのかなと思っております。そうしたファイナンスにまつわる与信者,それから,受信者における実務面にも配慮しながら,強力な担保権が生まれるということの影響がどうなっていくのかということについては,慎重に考慮しなければならないと考えております。

  一方で,尾﨑幹事からも御指摘のありました,事業の実態や将来性を深く理解した上で事業者のニーズに沿ったファイナンスの支援ができるという命題自体はとても大切なことですし,金融機関として引き続き真剣に考えていかなければいけない課題であると思っています。それから,10年,20年の将来を見据えた,よりフォワードルッキングな担保法制というものを金融機関としてもしっかり考えていかないといけないというところは深く共感しておりますし,そういう方向感で議論に参画できればとも考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  ほかに御発言はございませんでしょうか。最初の回でございますので,なるべく多くの方にそれぞれのお考えないしは気になっているところ等のお話をしていただければと思うのですけれども,いかがでしょうか。

○山崎委員 私,改めて申しますけれども,中小企業の立場で参加させていただいて,多分この中で行くと,ほとんど数少ない借手,債務者になる可能性のある企業でございます。また,商工会議所からの推薦で今回,来ているのですけれども,商工会議所って全国で122万社の会員様がいて,そのうちの95%の116万の会員様が中小企業基本法の範囲に当たる,いわゆる中小企業でございます。大体,身近でそういう方々と話していると,現状でもある規模以上の企業でしたら現状の法制を使いながら,こういった譲渡担保のなどの技術を使いながら,いわゆる不動産担保以外の資金調達ができるかと思うのですけれども,全くそんなものにほとんど,ファクタリングとか商手割引ぐらいしか知らないのが大体,実情だと思います。

  それで,先ほど井上先生がおっしゃられたように,今度こういうものが動産担保等に,そういう法制が作られるとすると,やはり簡素で迅速で廉価というのは非常に大事だと思います。特に廉価というところが,先ほどのABLとかそういうものというのは割とコストが掛かるかと思いますので,いわゆる貸金が小さい,銀行さんから見てですね,そういうところにそれだけのコストを掛けられないので,その辺を法律で簡素,迅速,廉価というものを何とか担保していただけると有り難いと思います。

  簡単ですけれども,以上です。

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分かりやすさと実感が伴うもの、費用、大切だと思います。

  • 000万円以内。

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○道垣内部会長 ありがとうございます。

  ほかに御意見等はございませんでしょうか。

○伊見委員 日本司法書士会連合会の伊見でございます。まず,動産と債権担保に関しましては,皆様御発言いただいておりますとおり,特に不動産を保有しない企業にとって,本来有益な資金調達手段であるということではありますが,今一つその利用というのが十分になされていないと承知をしております。その要因の一つとしまして,動産譲渡担保におきましては隠れた占有改定の問題であったり,その他,法的効果が不明瞭である点など,制度上の課題があるということを認識しております。今般この部会におきましてこれらの課題が検討されるということは,とても有意義なことであると考えております。

  司法書士は日常的に,融資実行に際しまして担保の実務に関わっておりますし,融資後の途上与信におけます担保内容の変更であったり,担保の解除の局面においても役割を担っているところでございます。今回検討されます新しい制度が融資実務の中でスムーズに機能するものとなるよう,ひいては多くの企業にとって動産や債権の担保を活用した資金調達がこれまでのように特別なものではなく,資金調達を考える際の普通の選択肢の一つとなるように,実務の立場から議論に参加をしてまいりたいと考えているところでございます。

  一方で,このたびの担保法制に関する見直しの検討の範囲につきまして1点,申し上げたい部分がございまして,それは工場抵当や各種財団抵当,そして各種動産抵当の制度につきましても,一定の範囲で,できましたら今回の見直しの検討の範囲に含めていくべきではないかと考えている点でございます。

  その理由といたしましては,例えば設備等の個別動産を担保の設定をし,融資をしようとする場合に,当初から譲渡担保を用いるということを決め打ちをするということは必ずしも行われていなく,実際には譲渡担保や工場抵当,財団抵当,動産抵当制度といった様々な選択肢を想定し,これらのメリット,デメリットを比較した上で,最終的にどの手続を採用するかを判断するということが行われているかと思われます。したがって,個別動産についての非占有型の担保を議論するに当たりましては,譲渡担保や所有権留保だけではなく,先ほど申し上げたような隣接する制度についても,例えば競合した場合の法的効果やそれらの制度の制度自体の内容についても,可能な限り今回の議論の対象に含めていただきますと,動産債権譲渡の担保もより取り組みやすい環境につながっていくのではないかと考えているところでございます。

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個人的には、可能であれば一本化して欲しいと思います。

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○道垣内部会長 ありがとうございました。

  工場抵当の話が出ましたので,一言だけ申しますと,諮問第百十四号というものに基づいて本部会が行われるわけですが,この文章においても,不動産に関連することについては一切扱わないというふうになっているわけではないと思います。しかし,それでは抵当権等も全面的にこの部会で見直すのかといいますと,それは恐らく,一度にやるのには難しい,今回は動産や債権等を担保の目的として行うというところに重点を置いて審議をするということになろうかと思います。

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  ただ,伊見さんがおっしゃいましたように,例えば工場抵当になりますと,財団目録に記載されている動産の工場抵当権の効力の問題と,当該動産なら動産,ないしはのれんとかも含まれるわけですが,動産なら動産を1個担保に取ったときとの効力の衝突という問題について明確な基準を提示する必要があるというのはごもっともだろうと思いますので,一番小さく諮問を考えましても,そういったものは十分に議論していかなければならないのだろうと私自身は理解しているところでございます。

○松下委員 ありがとうございます。松下です。諮問にもありましたとおり,本部会の一つのポイントは,法律関係の明確化や安定性の確保ということかと思います。その意味では,ルールをなるべく明文化する,見える化するということを意識する必要があるというのは余り御異論のないところではないかと思います。そういう意味では,判例が固まっていて学説上も異論が少ないルールについては明文化していくということになるのだろうと思いますが,しばしば隣接する問題についてはまだ議論が固まっていないというようなこともあるわけです。その場合に,審議の結果,隣接する問題については明文の規定を設けないという結論になることもあろうかと思います。そのような場合には,その問題についてはまだブランクである,議論が固まっていないので明文の規定を設けないまま残してあるのだということを審議の過程で明らかにしていく必要があるのだろうと思います。

  逆から申し上げますと,隣接問題についてはまだ議論が固まっていないときに,ある問題について明文の規律を置くと,ブランクの部分では反対解釈をされるおそれがあるのではないかと,だとすれば固まった部分の明文化も断念しようと,そういうような思考経路はなるべく避けるべきではないかと考えているところです。

  以上でございます。ありがとうございました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  亀井さんから御発言もあるということでございますので,よろしくお願いします。

○亀井幹事 

  今日,お手元の資料にも,参考資料1-2ということで,中小企業庁においても取引法制研究会を開催してこの問題を取り扱ってまいりました。資金調達をする中小企業,ユーザーの立場から,この問題についてどういった制度が望ましいのかということを,学者や弁護士といった専門家の先生方,中小企業や金融の実務をよく御存じの方々の御意見をいただきながら,一つの制度提案をさせていただきました。先ほど金融庁から御紹介のありました研究会とほぼ同内容のものと理解をしておりまして,是非こういった意見も踏まえて,この審議に御活用していただけると有り難いと思っております。その上で,何点か申し上げたいと思います。

  まず一つは,何人かの委員,幹事の方がおっしゃっていましたけれども,各資産それぞれを個別に担保に取るという制度ではなく,資産というのは事業の中で動産が売掛債権になり,売掛債権が預金となるというように形を変えて動いていくものですから,事業全体を担保に取れるような新しい担保制度を是非御検討いただきたいと思います。

  もう一つは,インフラとしての問題です。実体法の整備だけでなく,担保法制を支えるインフラについても,それが登記制度なのか登録制度なのか,いろいろ制度の仕組み方はあると思いますけれども,是非ユーザー,特に中小企業の皆さんにとって低コストで使いやすい制度となるよう,議論する必要があると思います。他の制度との平仄を重視するような議論,例えば,不動産がこうなっているから,こちらの制度もこうしなければならないのだ,というような検討ではなく,ユーザーの立場から簡易迅速で使いやすいというような制度についても併せて検討する必要があると思います。他方で,中小企業は非常に法律の弱者でもございます。

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とは限らないと思います。

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そういう意味では,この担保制度が濫用的に運用されるのではないかといった御懸念もありますので,これはもしかすると,それぞれの所管省庁でガイドラインのようなものを作っていくということかもしれませんけれども,そういった検討も含めた制度の御検討をしていただきたいと思います。

  あと1点,本日の担保法制部会資料1についてコメントをさせていただきたいと思います。3ページですが,2,担保制度の種類の(1)と(2),特に(2)なのですけれども,私も資料がいわんとしている中身を十分理解しているわけではございませんが,担保目的取引規律型というものと,新しい担保を作る担保物権創設型という二つのオプションが提示された上で,現行実務との連続性などから,担保目的取引規律型の規定を設けることとしてはどうかという事務局からの御提案がされています。ここでこれから議論されるのは,既存の法律を前提とした解釈論ではなく,そもそもどういった制度がよいのかという立法の議論であり,検討の範囲を最初から狭めるということを意図するのであれば,それは少しもったいないのではないかと思います。新しい担保制度を作るということも含めて,是非いろいろな観点から検討を行っていくことが必要ではないかと思います。

  以上です。ありがとうございます。

○道垣内部会長 ありがとうございました。本日の担保法制部会資料1におきましては,設けることとしてはどうかという形になっておりますけれども,真意として,新たな担保物権を創設するという形の全面的に新しい法制度ということが最初の段階で排除されているということはないと思います。今後の皆さん方の御議論次第であろうと考えております。

  ほかに何か御意見,御発言,ございませんでしょうか。

○冨高委員 まず総論として,企業継続,事業継続の観点で多様な資金調達手段を整備することは,結果的に労働者の雇用の安定につながるものと考えますが, 労働者保護の立場から,企業が倒産する際に労働債権の確保が図れるのかが課題になると考えております。現行でも資金繰りに行き詰まって倒産する場合は,既に動産,在庫等に担保権が設定されていれば,その支払が滞っていることも考えられます。賃金等の労働債権は,一般先取特権があるといえども債権確保がままならない場合もあり得ることですので,その後の労働者の生活に大きな影響を与えることから,民法においては労働債権が先取特権の対象になっているという趣旨が損なわれないような見直しが必要ではないか。先ほどから出ております包括的な担保制度についても,労働者保護の視点が必要ではないかと考えております。

  また,平成15年の改正で,民法第306条の一般先取特権については,2号の文言について,雇人の給与から,雇用関係と範囲を拡大した改正がされております。今後の話になりますが,昨年来,コロナ禍においてセーフティネットの脆弱性が明らかとなったフリーランス等の労働債権の確保も重要な課題だと考えております。

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ここは興味があります。

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○道垣内部会長 どうもありがとうございました。その話も正に,先取特権全般を今回扱えるかというと,それは分かりませんけれども,ある制度を作ることによって,例えば給与債権といいますか報酬,いろいろなフリーランスも含めた報酬債権というものの取り分というのが減るというときには,それでは,その保護のために何をしなければならないのかという問題は常に表裏の問題として存在していると思います。先取特権の話だから今回の話とは無関係であるということにはならないと私も思いますので,御自由に広い範囲で御議論いただければと思います。

  それでは,ほかの方,何かございますでしょうか。

○阪口幹事 阪口です。現在の集合動産などの担保がうまく使えない大きな要因の一つとして,実行段階,執行段階の問題があると私は理解しています。現在の実務ではなかなかそこがうまくいかないものだから,貸す段階でも安心して貸せない。したがって,執行段階,実行段階について,皆様からお話の出ている簡易,迅速,低廉に手続ができるような制度を,整備する,執行制度の整備というのは,大きな論点で,そこは十分検討したいと思っています。

  他方,先ほどからも出ているとおり,バランスのとれた制度というのが当然必要ですので,執行がもう一歩進んだ倒産という局面になると,少しまたステージが変わるというか,執行の延長だけでは多分済まないのだろうと思っています。この種の議論をするときに,執行局面と倒産局面を一元的に捉えるのか,少し角度を変えて考えるのかという議論が常に僕はあると思っていますけれども,今回の立法では,場合によれば,そこはもうある程度切り離した議論もあり得るのかなということです。例えばアメリカであれば,UCCは州法の問題であり,他方,倒産法は連邦法で規定されていて,全然別次元で物事を決めていると私は理解しています。我が国では執行と倒産を連続的に捉えているけれども,場合によれば少し切り離した議論も必要なのかなと,それがバランスのある結論につながるのではないのかとも思っています。

  バランスの延長でもう一つ申し上げると,包括担保については,非常に有用な,うまくいけば実用性の高い担保であると理解しておりますけれども,他方,弁護士はいろいろなところから相談を受ける立場です。先ほども出ていた労働者からも相談を受けたり,買う側からも相談を受けたり,そういう立場でもある。そのため,やはり危惧を覚える点もあるわけです。

従業員のモチベーションというものを考えたときに,仮に参考資料1-2,1-3の実行の段階で,さあ,従業員から見たときにどう見えるのか,活力のある企業になるのかということであったり,また,例えば担保権者が選任する管理者というのを考えたときに,それは取引先なりから信用してもらえるのかという,例えばそういう問題もあるのだろうと。つまり,今であれば裁判所が選んだ更生管財人が入れば,公正中立な人だろうと皆思って,一応物事は動いていくと思うのですけれども,担保権者が選んだ人なのかと見られる中で物事が動いていくということが,心理的な問題で,法律的な問題ではないのかも分かりませんけれども,どこまでうまくいくのかということも考えながらバランスある制度を作っていかなければいけないのかなと思っています。

○道垣内部会長 ありがとうございました。いや,正に心理的な問題も含めて制度設計をしていかなければならないと思いますので,貴重な御発言かと思います。

  ほかに,もちろん2回目の御発言であっても全然構いませんし,御発言いただいていない方でいらっしゃれば,お願いいたします。

○片山委員 片山でございます。貴重な時間をお与えいただいてありがとうございます。これまで実務家の委員の方々からの御発言が多かったですので,民法研究者の視点から,今回の部会資料1の第2の総論の担保法制全体の構成に関連してという部分について,3点ほど申し上げたいと思っています。

  まず第1は,集合動産という概念をどのように定義して規律していくかということであります。部会資料1では,個別動産と集合動産を対比して,集合動産については集合動産譲渡担保に関する判例法理,これを前提に,構成部分が変動する動産の集合体として,主として在庫担保を念頭に置いているということかと思います。しかし,この点は,先ほどから御意見が出ている事業担保権とか事業成長担保権,これは恐らく部会資料1ですと10ページの第9のその他,3の包括的な担保制度という位置付けになってしまうということになるのかもしれませんが,比較法的に見ますと,UCCとかUNCITRALだけではなく,大陸法系での立法例でも,そもそも民法における集合動産というのは,在庫のような流動資産だけではなく,事業資産や営業財産,知財とかのれんも含んだような,収益を生み出す固定資産の集合体も含めた広い概念として立法化を行うのが一般的のようであります。

  仮に今回の法改正の中で,集合動産概念を判例が用いるような集合物概念を前提として立法するということになりますと,今の判例法理を追認するというだけで,その域を出ない立法となってしまいますし,資金調達のニーズに十分に応えることができないという面もあるかと思います。また,諸外国の立法例と比較すると極端に矮小化した立法を行うことになってしまうのではないかという点も懸念されます。これは,もちろんその他の包括的な担保制度という形で議論をして立法化していくということであれば,それはそれで問題がないということなのかもしれませんが,むしろ一歩踏み込んで積極的に広義の集合動産概念を民法の中にビルトインしていくという選択肢も十分に検討に値するのではないかと考えている次第でございます。そういう意味で,集合動産という概念をどのように規律していくかということをお考えいただきたいというのが第1点です。

  それから,第2点は,動産担保と債権担保を区別して二元的に構成するということの意義でございます。この集合動産と集合債権を区別していくということに関しましては,近時の諸外国の担保法制の動向にも合致しているという印象を持っております。いわゆる帰納的なアプローチで担保を一元的に把握するという議論が随分行われてきましたけれども,近時はむしろ金融担保,すなわち債権とか有価証券を目的とするような担保につきましては,例えばコントロールのような概念で占有担保化構成をするなどして,公示とか実行といった点において,他の動産担保とか事業資産担保とは区別した二元的な取扱いを推進していく傾向が非常に強いと思っております。

  その点からは,今回の諮問にある動産や債権等の担保を目的として行う資金調達の利用の拡大という点からの担保法制の見直しとしましては,大別して2つの視点があって,一つは,不動産を除く事業資産の集合的な担保価値をいかに把握するかという点と,もう一つは,債権の担保化の新しいルールの設定を模索するという点とを分けて,二元的に考察していくということは賛成できる点かと思っています。

  そのことを前提とした上で,集合動産については在庫,いわゆる狭義の集合物に限定せずに,広く企業資産を担保化する,そういう制度設計をしていくということ,それから,債権担保につきましては,債権譲渡法制との関係で難しい点はあるかと思いますが,登記等の公示の緩和まで踏み込んだ議論ができればと期待しております。

  3番目ですが,所有権担保という概念です。これは先ほど事務局の方から,取りあえず便宜的に使っているという御説明であったわけですけれども,部会資料1の3ページの2の担保制度の種類のところで,担保目的取引規律型の規定を設けるという点ですけれども,帰納的アプローチに基づく動産非占有担保の規律については,諸外国の例を見ますと,やはり動産抵当であるとか,非占有動産質というような制限物権型の担保をデフォルトルールとして設定し,当事者の法的性質決定の如何を問わず,動産抵当とか非占有動産質を擬制する,そういう法制になっているのではないかと思われます。

  そこで,デフォルトルールとしまして所有権担保のカードをここで切ってしまうのは,確かに判例法理,担保実務との連続性ということで受け入れやすいという面はあるかとは思いますけれども,やや担保法制としては世界に例を見ない立法になってしまうのではないかとも思っております。

  他方,諸外国でも近時は債権担保や金融担保といった領域では,所有権移転型の担保,すなわち譲渡担保を脱法的な位置付けではなく,正面から排他的担保として認めていこうという傾向が看取されます。例えばフランスでは,新しい担保法改正草案の担保の定義の中で,優先権付与型の担保と排他権付与型の担保の二元的な把握を行うという提案がなされているところでございます。そういう意味では,動産一般については優先権付与型としつつ,他方,必要な場合に切り札としての所有権担保を用いていくというような制度設計を目指すことも一つの選択肢ではないかとは思っております。

  そういう意味で,所有権担保という概念をどういう場面でどう使っていくかということも慎重に御検討いただければと思っております。

  長くなりましたが,3点申し上げさせていただきました。よろしくお願いいたします。

○道垣内部会長 ありがとうございました。一つ一つについてコメントすべき立場にはないのですが,最初のお話は,どちらかといえば集合動産概念をビルトインするというよりは,事業財産という概念に変えた方がいいと,そういう感じの御発言だったように理解したのですが,そうではないですか。

○片山委員 事業という概念を持ち込むということも1つの方向性かと思いますけれども,必ずしも事業概念で把握できない固定資産の集合体もあるでしょうから,事業概念と集合動産概念とをどう結び付けていくかという点を御検討いただければということかと思います。

○道垣内部会長 すみません,ありがとうございました。

  ほかに御発言ございませんでしょうか。

○藤澤幹事 資料の第2の点について,3点ほどコメントさせていただきます。

  まず,担保の目的財産についてなのですけれども,これまでも先生方のお話にも出ていましたように,動産債権以外にも企業が保有する経済的価値を有する財産というのはいろいろあります。このうち既に物権化しているもの,特許権とか著作権とかそういったものについては,既存の登記制度などを一元化するかどうかといった議論はあるとは思うのですけれども,それを担保化できないという問題は生じていないと思うのです。

  これに対して,例えば契約上の地位,例えばライセンス契約におけるライセンシーの地位ですとか,ビッグデータのような不競法によって保護されている地位といったものは,どんなふうに担保化することができるのかといったこと,それから,実行をどのようにすればいいのかといったことが現時点でも不明確なのではないかと思います。もしこのことが実務上,不便を生じさせていたり,金融の可能性を狭めていたりするとすれば,こういったテーマについても検討の対象とする必要はないでしょうか。

  次に,二つ目のコメントなのですけれども,今,片山先生がコメントしていらした担保制度の種類のところについてです。資料では,担保目的取引規律型を採用するのはどうかという御提案がされていますけれども,今次の担保法改正の背景には,世界銀行によるDoing Businessのランキングにおいて,日本のGetting Creditの項目の評価が低くて,動産等の財産についてルールの明文化が要請されているということがあるようです。その評価の指標の中には,統一的なlegal frameworkがあるかという項目がありますが,担保目的取引規律型のルールを採った場合には,民法に動産質の制度もありますし,特別法上の自動車抵当,航空機抵当といった制度もありますし,それと並んで譲渡担保制度が明文化されることになり,改正によってこの指標をクリアすることができるのかといったことについて,少し問題意識を持っています。

  それから,3点目に,対抗要件制度・登録制度の在り方についてです。これまでの御議論を伺っていると,包括担保についての議論がすごく盛り上がっていましたが,例えばアメリカのUCC第9編を見れば,そこに「包括担保」という名前の付いた制度があるわけではありません。設定契約や登録に際して担保目的物の包括的な記載が許容されていることや,登録制度において広く優先順位を確保できる担保オプションが存在することによって,事実上の包括担保が可能になっている状態だと評価することができると思います。このような観点からすると,今次の立法に当たって,担保権設定契約や対抗要件における特定性の要件を緩和することはできるのかとか,緩和するべきなのかとか,そういったことを考える必要はないかなと思いました。

  以上です。ありがとうございました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。これも1点だけ申しますと,藤澤さんがおっしゃった2番目の話で,担保目的取引規律型の場合には,自動車抵当とかとの関係という話なのですが,それは恐らく担保物権創設型を採っても同じ話で,いずれにせよ,その整理をしないとごちゃごちゃになるよという御指摘かなと理解いたしました。

  本日はせっかくの最初の機会ですので,なるべく多くの方にお話をいただきたいと思います。少し休憩を置きますと,またむくむくとしゃべりたい事柄が湧き起こる方がいらっしゃるかもしれませんので,今,3時18分でございますけれども,これから15分ということで,3時35分まで一旦,休憩を置きまして,それから再開をして,更にいろいろなお話を伺えればと思いますが,それでよろしいですか。

  それでは,3時35分まで一旦休憩を致します。

          (休     憩)

○道垣内部会長 それでは,15時35分に再開をするということにしておりましたので,議論を再開したいと思います。

  もちろん今まで御発言された方でも結構でございますし,そうでない方ももちろん結構なのですが,今後の議論の在り方等々につきまして,御自由に御発言いただければと思います。

○青木(則)幹事 ありがとうございます。私は公示制度ないし対抗要件制度に関心を持っておりますけれども,特に,先ほど藤澤先生がおっしゃったような世界銀行の指標でありますとか,あるいはUNCITRALのような国際水準との関係をどう考えていくのかというのがなかなか難しい問題だなと思っております。

 判例にみられるルールを明文化すること自体がそういった国際水準へのアピールになることは確かだと思いますけれども,その中身が国内のニーズを満たすものであれば何でもいいのかというと,そういうわけにもいかないのではないか,国内のニーズと国際水準が必ずしも一致していないようなところもあるかと思いますので,それをどう考えていくのかが難しい問題になるのではないかと思っております。

 例えば,占有改定の方法による対抗要件の具備を引き続き認めるべきかというような論点がありますけれども,国内のニーズだけを考えると認めてもよいが,国際水準を考えるとできるだけ排除すべきではないかということになるのかと思います。ただ,従来,占有改定によって対抗要件を具備してきた最先順位の譲渡担保のようなものについては,公示制度を入れることによって担保権をほかの第三者との関係で弱めていくというような側面もございますので,それがどこまで認められるのかといったようなことが問題になるのかと思っております。

  また,もう1点ですが,先ほどから事業包括担保のニーズのような御指摘がありましたけれども,そのニーズを素直に取り入れられそうな制度としては,ネガティブプレッジのような制度も検討の余地があるのではないかと思います。ただ,これもネガティブプレッジを対抗要件を具備できるようなものにしていくというのは,恐らく国際水準に反するということになってしまうのだと思います。

 こういうような形で,幾つかニーズとのずれがあるようなところがあるかと思っておりますので,なお検討していきたいと思っております。

  以上でございます。ありがとうございます。

○道垣内部会長 ありがとうございました。ネガティブプレッジについて対抗要件を設けるというのが,という話は余りお分かりにならなかった方もいらっしゃると思いますので,私の方で少し付言をしますと,ネガティブプレッジというのはほかの担保を付けては駄目だよという約定のことですが,それについて,ほかの担保を付けては駄目だよという約定があるということを何らかの形で公示するというシステムというのは普通は考えにくくて,ネガティブプレッジ違反があったら,例えば弁済期が到来するだとか,そういう話になるだろうという話なのだろうと思います。もちろんネガティブプレッジ自体がある一定の物権を設定する効力を持つという議論もありますので,そうなると,そこで公示という話も出てくるのかもしれませんが,そういうふうな問題があるというお話かと思いますが,私の付言で正しいでしょうか。青木さんからもオーケーをいただきましたので,そういうことで。

  ほかに御意見いただければと思います。

○沖野委員 ありがとうございます。既にいろいろ御指摘のあった点について,共感するところも多いのですが,そういう点を繰り返すことはせずに,総論的な話について少し申し上げたいと思います。

  一つは,判例の扱いについてです。判例が確立している,また,これまで動産や債権を用いた実質的な担保には判例が非常に大きな役割を果たしてきたということがあります。ただ,一方で,たとえそれが確立しているところも,解釈論ゆえの制約の下で展開された議論であるということは十分念頭に置いた方がいいのではないかと考えているところです。集合物の概念などは,そういうものかと思います。ですので,立法論としてあるときには,判例から離れるということも十分考えられるところだと思っております。

  2点目としまして,登記制度についてです。今回の部会資料におきましては,対抗要件制度のところで言及されており,そもそも対抗要件制度あるいは公示や優先関係の決定基準の,その在り方自体も,言わば既存のものを当然の前提にせず,制度を考えていくことも十分あり得べしということなので,必ずしも書かれていないのですけれども,そういう新しいファイリングなどの可能性もあるところですが,現行法の制度を用いるときも,登記制度についてはかなり見直しの要望ですとか,理論的にも見直しの可能性というのがあるのではないかと考えているところです。

  ファイリング制度について言及しましたので,また対抗要件についても言及しましたので,あわせて申し上げますと,現在の担保の一般的な考え方というのは,対抗要件の具備の順序による優先関係の決定というのが基本であって,当然優先ですとか,さらにはその調整ということもあるかと思いますけれども,ただ,その原則というのをどこまで重視すべきかということについては,少し考える余地があるのではないかと思っております。対抗要件の具備方法による強弱というのがあり得てよいように思いますし,対抗要件と部分的に切り離して優先関係を決定していくという方策も十分考えられるべきではないかと思っているところです。これ自体は資料の3ページの3のところですとか,他のところでも書かれているところでありますけれども,その点を改めて申し上げておきたいと思います。

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時間の順序以外に優劣を付けられるのでしょうか。

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  最後は,立法の形式についてということですけれども,今回は担保法制の見直しということですので,どの立法というようなことではなく,担保に関する法制の見直しということですから,必ずしも民法に限られないのだろうと考えております。そのことは,何らかの制度を作っていくときに,必ず民法に置くということが想定されるわけではなく,逆に言うと,立法の形式自体は最後の出口のところなので,それに制約されることなく検討していくということなのだろうと理解しております。そのような理解でよろしいかというのを確認させていただければと思います。

○道垣内部会長 最後は質問になっていたのですが,その質問の内容が少し私は理解できなかったのですが。

○沖野委員 申し上げたかったのは,例えば,特定の包括的な担保制度というのは,むしろこれは特別法でやるべきではないかと,民法から見てということですが,そういった立法の形態というのはいろいろあるという前提でいろいろな制度を考えていくということなのかなと思っておりますけれども,そういう理解でよろしいかということです。

○道垣内部会長 本日の部会資料1を作られた方には,その作られた方の御意見があろうかと思いますけれども,例えば事業担保とかそういうものについて,特別法にするのか,あるいは特別法にするとしても,この部会で十分に議論するのか,中に埋め込むのか,そういったことは正に議論によって決めていけばよい問題だろうと思います。特別法にするということを前提としながら,さらにこういうものを特別法として作るべきだというふうな御意見を今後,議論の中で出していただくことは一切差し支えないのだろうと思いますし,また,民法の中にそういった制度を埋め込むべきだ,あるいは埋め込むべきでないという議論も当然に可能だろうと思っておりますが。それでよろしいでしょうか。何かそれについて,沖野さんの方で,こういう方向ではないかという御意見があるのならば,続けてお願いできればと思いますが。

○沖野委員 今おまとめいただいたような形でお願いできればと私自身は思っております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  ほかに御意見ございませんでしょうか。佐久間さん。お願いします。

○佐久間委員 2点発言をさせていただきます。

  1点は,包括担保というか,特に事業担保権,あるいは事業成長担保権ということに関連してです。それぞれの御提案は,なるほどもっともだなと思っておりまして,大きな基になるところは今回の担保法制の改革全体を通しても共通していて,結局のところ,融資がされるべきところにきちんと行き渡るようにしましょうねというところにあるのだろうと思っております。

  その観点で少し心配なところがございまして,例えば包括的な担保を誰かに取らせたということになりますと,それに見合った融資が十分にされないと全くもって意味がないということになるわけですね。そうだといたしますと,包括的な担保,どういう仕組み方でもいいのですけれども,それを仕組むときには,きちんと担保に見合う融資が,一旦されるだけではなくて,場合によっては,継続的にある程度はされていくというような措置を,法的なものなのかどうかは分かりませんけれども,きちんと講じておかないと,ひどい事態になるのではないか。誰かに包括的に担保を与えたために,個別の担保を別の者に与えることがなお可能であったとしても後順位でしかないとなると,包括的な担保によって融資が十分に受けられない場合,個別の担保を出したくても応じてくれる人もみつからず,包括的な担保の設定のためにかえって受けられる融資の総額が少なくなるというようなことが,場合によっては心配されるかなと。

  そういう観点からは,包括的な担保を,例えば特別法を作って,あるいは,今ある特別法を改正して設ける場合には,それに即して融資が十分にされるように,あるいは債務者が困った状態にならないようにする措置を付加することが必要ではないかと思っています。

  それに対して,先ほど少しどなたか,お二人ぐらいおっしゃったのだと思うのですが,民法の制度というか,一般的な制度として,広く担保を取ろうと思ったら取ることができて,その公示も,ファイリングでもいいのですけれども,何らかの形でできるというようにすることが考えられる。確かに考えられるとは思うのですけれども,そのようにしますと,それに見合う十分な融資が行われないというときには,過剰担保になるかもしれませんし,もう一つ心配なのが,公示はされている,調べてみれば実際には担保の範囲は限られているということになっていたとしても,見掛け上はものすごく広く担保が取られていて,制度の理解が非常に進んだ段階ではいいのかもしれませんが,そうでない段階では,個別の融資になかなか応じにくいという,見掛け上の過剰担保というと,いい言い方ではないのかもしれませんが,そういったことが起こり得ないのかな,そういうことが起こっては困るな,という心配を致しました。議論する際には,そういう点にも留意した方がいいのではないかと思ったのが1点です。

  もう1点は,それと少し関連するような関連しないようなことなのですが,Doing Businessの世界ランキングとの関係なのです。欧米では常識化していることが我が国では常識ではない,それはきっとそうなのだろうと思うのです。ただ,我が国においても,取引社会は当然のことながら進展してきたわけで,取引慣行という定着しているものがある。その中で融資をより多く引き出せるような法制はどういうものだろうかと考えたときに,必ずしもDoing Businessの世界ランキングを上げることにつながらないような方策の方が,我が国の実情に照らせば,いいのではないかということだってあり得ると思うのです。

  そのときに,これは質問になってしまうのかもしれませんが,どの程度世界ランキングを,ぶっちゃけた話,意識しておく必要があるのでしょうか。私は,個人的には,まあランキングの順位を上げることも大事だけれども,それよりは融資がきちんとできるようになった方が,とは思うのですけれども。でもまあ,そういうことではないのだということもあるかもしれませんので,2点目として,世界ランキングをどの程度意識した方がよろしいのかということを,笹井さんに答えてくれと言っても,答えにくいのかもしれませんけれども,取りあえず笹井さんぐらいしか答えてもらう人がいないので,可能であればお願いいたします。

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担保とビジネスランキングの関係が大きいとは思えません。

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○道垣内部会長 ありがとうございました。笹井さんに御指名がありましたが。

○笹井幹事 確かに答えにくい問題ではあるのですけれども,御承知のようにDoing Businessにつきましては,2030年までにG20で1位を目指すという政府目標が示されているところでございます。したがいまして,私どもといたしましては,行政府の一員としてこの政府目標も意識しながら取り組んでいくことになります。

  ただ,この部会がどういう形で議論がおまとめになるのかというのは,それはこの部会における意思決定の問題ですので,そこはそれぞれの委員,幹事のお考えがあろうかと思います。例えば今,佐久間先生は世界ランキングを上げることにつながらないような結果の方が我が国の実情に照らせばよいこともあり得るとおっしゃいましたが,それはそれでもちろん一つの御見識であろうと思います。

  したがいまして,それぞれのお立場から担保法制の在り方について議論を尽くしていただきたい,その中でどういう形で取りまとめていくのかということにつきましては,部会での議論を見ながら,相談させていただきたいと思っているところでございます。

○道垣内部会長 よろしいでしょうか,差し当たっては。

  ほかに何か,最初の段階での御発言ございませんでしょうか。

○加藤幹事 加藤です。よろしくお願いします。私から3点コメントさせていただきます。

  1点目は,株式や投資信託受益権など,ペーパーレス化した有価証券の担保制度については改善の余地があるのかなという気がしています。これらの有価証券,元有価証券につきましては,社債株式等振替法に基づき,振替口座簿の記録によって権利関係が定まるとされているわけですけれども,実際にはそれほど多くの権利関係が振替口座簿によって定まっているわけではない気がいたします。ですから,仮に新しい担保制度を検討する際には,可能であれば,振替口座簿に記録できる情報を拡充して,担保権者間の優先劣後関係なども明確に定めることができるようにしてはどうかという気がしております。ただ,これは振替機関のシステムの更新の時期と合わないと改正できないという問題もあるのですけれども,検討はやはり,してはどうかと思っております。

  2点目は,部会資料1で,普通預金口座を目的とする担保について検討してはどうかということが御提案されていました。この点について,私は全く異存ありません。むしろ,普通預金口座を目的とする担保を検討するのであれば,証券口座を目的とする担保というものについても,つまり,証券口座に記録された有価証券を包括的に担保に取るということも検討に値するのではないかと思います。ただ,これも証券会社及び振替機関のシステム対応の問題はありますけれども,やはり重要な問題ではないかと思います。

  最後は,暗号資産のように法的性質が必ずしも明らかではない財産というものが今後,増えてくる可能性があります。そうしますと,こういったものを担保化できた方が,やはり資金調達の便宜というものには資する気がします。これも流動的な面がありますけれども,こういった,これまで法的性質が債権,物権というふうになかなか区切ることができないような財産というものが出てきているということも意識しながら,担保制度の検討などを進めていければよいのではないかと個人的には考えております。

  私からは以上です。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

○亀井幹事 2回目,申し訳ございません。

  今,佐久間先生の御指摘について,私のほうからも若干,コメントさせていただきたいと思います。

  聞こえますか。

○道垣内部会長 聞こえますよ。

○亀井幹事 ありがとうございます。今,佐久間先生の御指摘されたDoing Businessの点について,私から一言御発言させていただきたいと思います。特定の書物のランキングを上げる,下げるということはさて置いても,日本の事業環境を世界に比べても遜色ないものに高めていくという観点で,この制度を議論する必要があると思います。例えば,他の国ではできることが日本ではできない,ということのないように,また,他の国と比べても資金調達がしやすい事業環境の整備,そういった制度設計を是非お願いしたいと思います。そのときに諸外国でどういった取引ができているのかというのは当然,参考にすべきだろうと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。ただし,アメリカ以外も視野に入れて,世界というものを考えていくべきだし,いきたいと思います。

  ほかにございませんでしょうか。

○水津幹事 1点申し上げます。例えば,部会資料で挙げられている物上代位を例に取りますと,差押えや債権譲渡等との関係も明確にした方が望ましいのであれば,現行の民法304条の規定やこれを準用する規定を前提として,そのような明確化を最初から断念するのではなく,むしろ,この機会に現行の民法304条の規定やこれを準用する規定を併せて改めることを検討した方がよい気がいたします。このように,新たなルールを定める場合において必要があるときは,関連する現行の規定の見直しも含めて検討していただければと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。全てのことですね,新しい担保物権を創設するという話も含めて,余り最初から議論の幅を狭めるのではなくて,いろいろなことを考えながら全体をバランスよく作っていかなければならないということだろうと思います。

  ほかに御意見ございませんでしょうか。

○尾﨑幹事 すみません,まだ話しておられない方がおられますが,少し時間が空いたように思われましたので発言させていただきます。

  何点か,我々が申し上げた事業そのものを担保にする制度について,例えば,バランスをとった制度整備が必要ではないかといったような御意見がありました。金融庁の研究会でも,そのバランスをどうやってとるかということは非常に重要な問題だと議論されてきました。例えば,労働者の賃金債権や取引先との関係での商取引債権を優先させる必要があるのではないかといった御議論もありまして,それは結局のところ事業継続の観点から,そういったものを保護しないと望ましくないからだといったような御意見もありました。引き続き,この制度について議論する際には,バランスをとった制度整備というものを考えていきたいと考えています。

  それから,もう一つ,事業成長担保権を使う際の与信者間の競争についても言及がありましたし,さらに,事業成長担保を取ったときに,十分な融資がされない可能性がないのかといった御議論がありました。我々は,そもそも金融機関が事業を理解し支援をするような競争,そういったものを促すことが重要であると考えておりまして,結局のところ事業成長担保権の担保権者の地位をめぐっての競争がなされると,つまり,事業成長担保権を取っておきながら十分な融資を行わない金融機関があれば,その事業者の方は別の金融機関を選ぶことができるわけで,そのためのスイッチングコストなどを十分に低減しておくということが重要なのではないかといった議論を行ってきたところであります。適切な融資が供給されるような,競争が促されるような制度設計というものを検討することが重要であると考えています。

  いずれにしましても,まだ見ぬ制度でありまして,実務も共に立ち上がっていくべきものと考えておりますので,早期に具体的な制度について議論ができますと幸いでございます。10年,20年先の実務を見据えてお知恵をいただければと,是非この部会で議論していただければ有り難いと考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  ほかに,いかがでしょうか。御発言いただいていない方もいらっしゃいますが,特に発言をしなければならないというオブリゲーションがあるわけではございません。よろしいでしょうか。

  私これから少しお話をしますが,別段私が話をするというのを,これでもうやめるということと結び付いているわけではございませんので,私が話をしても,その後幾らでも続けていただいて結構なのですが,少し話の流れを整理しておきたいと思います。

 皆さんの御意見としては,最初,事業担保の話から出まして,金融庁の方のプレゼンテーションというのがあったわけですが,これはどちらかといえばモニタリングを中心として,企業価値を高め,倒産しないようにコントロールしていくために事業全体を押さえるという発想なのではないかと思います。それに対して,同じく事業担保とか,包括的に担保を取ると申しましても,実行を前提とする,実行の中には,ばらばらに売るということも含めた実行も念頭に置きながら発言をされた方もいらっしゃったと思います。

  そうなりますと,事業の担保化といっても,どういうふうな,これは金融庁のレポートに正に書いてあることですが,担保の機能というものの中のどれに着目した形の事業の担保というものを考えるのかということが若干まだ――それは片方に決め打ちをしなければならないわけではないのですけれども――分かれている状態にあるのかなと思います。

  その際には,しかし,いずれにせよ事業全体を担保に取るということになりますと,融資がきちんとされるようにしないと,全部を担保に取った上で貸してくれないということになっては困るという話があったのに対して,それ自体が金融機関の競争と位置付けるというふうな形で何とかできないかという話もあったかと思います。

  さらには,包括的に担保に取るという際に,集合動産というふうな,第一倉庫内にある在庫商品という形の概念だけではなくて,事業用の財産全体を,事業用とは限らないですが,一つの集合物というか,一つの包括的な何か財産体として担保化するというふうな,そういう概念設計といいますか,そういうふうな概念をより,彫琢していくということも必要なのではないかという話も出たかと思います。

  他方で,事業全体の担保化の話と別個に,やはり区分して担保化するということのメリット及び簡易性というのを強調する御意見もあったかと思います。そうなると,あるものについて非常に簡易で安価な方法によって担保設定というのができるということが制度設計として求められると,こういう御意見もあったかと思います。さらに両方に関係する問題として,取り分け事業全体の担保化かもしれませんが,倒産の局面で他の債権者等との関係をどういうふうに考えるのかという,倒産だけではありませんけれども,重要な問題として提起されていたかと思います。

  それはある種,いろいろな絡み合った一つの問題点なのですが,もう一つ,本日の部会資料1との関係では,新しい担保物権というものを創設する形で立法論というのを考えていくのか,それとも,現在の譲渡担保のように所有権の移転という形を取った取引が担保目的であるという際に,その内容を規律するという方法で考えていくのかという論点があり,本日は,その新たな担保物権,物権として新たな物権を創設するという形の立法というものを最初から排除すべきではないという見解が強かったかのように理解しております。

  ただ,これは大変微妙な問題がございまして,と申しますのは,現在,仮登記担保法というものについて,仮登記担保というのは物権を創設したものであると書いてある教科書が多いのですが,これは,少なくとも立法当時の議論ないしは法文上の文言とは反した議論なのですね。代物弁済予約とか売買予約をするときに,それが担保目的であったときに,その契約の効力は以下のようになりますというのが「仮登記担保契約に関する法律」でありまして,仮登記担保権という物権を創設したものではないというのが立法当時の議論だったわけなのですけれども,現在では仮登記担保権という物権があると見た方がいいという見解は結構強い。

  そうなると,仮に所有権移転の契約を規律するという法制度というのを作っても,新たな担保物権が創設されたのだというふうに議論されて運用されていくということは十分にあり得るわけであって,そう考えると,2つの見解が明確に対立するものかどうかは分かりません。ただ,そこと絡んでくるのが,先ほどの国際的に分かりやすい基準という問題で,クリアに新たな担保物権を作るのだと書いていた方が分かりやすくていいのではないかという問題はあろうかと思います。

  さらに,3番目のクラスターとして,クラスターというのは最近は特定の意味で使われますが,まとまりとして,振替証券とか,暗号資産とか,さらには普通預金口座を担保化するというのだったら,口座の担保化概念との関係で,証券振替の口座の担保化というふうなこともあり得るので,いろいろそこら辺の不安定といいますか,分かりにくいところもきちんと調整すべきではないかという意見もあったかと思います。

  もちろん今私が申し上げたのに尽きるわけではありませんで,工場抵当との関係とか,いろいろな御意見があったところですし,さらには動産と債権を目的物ごとに区別して考えるのか,それとも包括性を重んじるのかというふうな議論もあったところですが,大体そういうふうな話がされたのかなと私は理解をしたところであります。勝手な私のまとめかもしれませんけれども,それが正しいわけでもないと思いますし,何か更に御意見がありましたら,お聞かせいただければと思います。

○横山委員 まず,規定の仕方に関して,担保権の設定として規定するのか,それとも取引型でするのかという点については,海外に対してのみならず,国内的にも分かりやすいかどうかも考えるべきではないかと思いました。

  この点,細かいことかもしれませんが,用語法について,今回,留保所有権とか担保所有権という言い方がされています。所有権と表現しつつ実質は担保ですよねということであれば,譲渡担保または留保担保という言葉を用いてもよいのではないかと思います。

 また,内容に関しては,債権譲渡も含め,様々な財産権について適用が予定される担保が想定されているようですが,帰属移転型,帰属留保型の担保と構成すれば,あらゆる財について適用されることが可能ですので,動産と,債権を主眼としつつ,適用範囲をより広げることを念頭に検討するという視点もあってもいいのかなと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  ほかには何かございますでしょうか。阿部さん,お願いします。

○阿部幹事 すみません,私が思いましたのは,結局この担保法制に関する検討というのは,どういう金融の在り方が望ましいかという検討の表裏なのかなと思いました。例えば,今日の部会資料1の各論のところで,同一の不動産に複数の担保所有権を設定された場合の取扱いといった話もされていましたけれども,これは,いろいろな債権者が同一の債務者の同じ目的物を担保として,いろいろな人が少しずつ金融をする,そういう在り方を前提とするものだと思うのです。劣後担保権の効力も,設計次第ではそういうものを促進していくということにもなると思うのですけれども,これに対して,最後の方で扱われていた包括的な担保制度というのは,どちらかというと,そこに二重,三重にいろいろな金融機関が担保を設定して,少しずつ金融して,というものではなくて,一つの金融機関が包括的に担保を取ったら,その金融機関がその事業者の資金需要を全面的に面倒を見る,そういう金融の在り方というのを望ましいと,そういう前提があるのではないかなと思うのです。なので,そういう各種の担保制度が前提にしているというか,念頭に置いている金融の在り方を考えて,どういう金融の在り方が望ましいのかというところを視野に入れながら,この担保制度を設計していくということが必要なのかなと思いました。その先,どちらが望ましいと私が今考えているかというのは,必ずしも定見がないのですけれども,そういうところまで意識する必要はあるのかなと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。非常に重要なポイントだろうと思います。

  一言だけ,私の意見になってしまいますけれども,申しますと,UCCで包括性のある担保権が取れることになったからアメリカで包括的な担保制度が発展したということよりも,やはり鉄道金融とかにおいて,包括的にある一つの金融機関が全部を取るという融資慣行があって,その上にUCCが存在している,その後にUCCが存在しているのではないかと思うのです。担保法制度を何か仕組むことによって融資慣行というのを変えるというふうにもくろむのかというのは非常に難しい問題で,少なくとも他国が担保制度を変えたことによって融資慣行が変わったという因果関係にあるとは言い切れないのだろうと思います。もちろんそれがあってはいけないということではございませんし,そういう萌芽があるのだったらば,その萌芽を後押しするように担保制度を整えるというのはあるのかもしれませんが,そんな気もいたします。すみません,要らない話をしてしまいました。

  ほかに御発言,今日の段階では,これくらいでよろしいでしょうか。特にやめたいわけではないですよ。

○藤澤幹事 ありがとうございます。先ほどは第2の全体的な部分についてお話しさせていただいて,今の阿部先生の御発言,道垣内先生のお取りまとめも全体像に関わるところだったかと思うのですけれども,もう少し個別の部分についてコメントさせていただくということも可能でしょうか。

○道垣内部会長 もちろん御自由にお願いします。

○藤澤幹事 ありがとうございます。第3の個別動産を目的とする担保権の効力についてなのですけれども,ここでは主に設定者の使用収益権限と物上代位について挙げられているのですけれども,個別動産担保の担保権設定者が担保目的物を無権限で処分したという場合の処理について,項目を立てて検討する必要はないかというようなことを思いました。

  具体的には,無権限処分があった場合,第三者が目的物についての設定者留保権を承継取得すると考えるのか,それとも,そもそも何の権利も取得しないと考えるのか,この辺りについて意見の対立があったように記憶しておりますので,この点について検討の必要があるのではないかと思いました。

  それから,第5の集合動産のところについても同じように,担保権設定者による処分について関心を持っております。こちらには設定者が通常の営業の範囲内で個別動産を処分し得るというようなルールが提案されていますけれども,これは強行規定的なものと考えるべきなのでしょうか。集合動産に含まれる個別動産の処分に際して,例えば担保権者の許可を必要とするといった合意とか,処分の性質にかかわらず一定数量をキープすることを求める合意といったものも考えられますけれども,このような合意は有効なのかとか,このような合意に反して行われた処分は無権限処分ということになるのかとか,そういうようなことを考えていく必要があるのではないかと思いました。

  それと併せて,こういった合意との関係で,第三者をどのように保護するのかということが問題になります。第三者保護については民法192条の解釈で行くのか,それとも集合動産担保に関して192条の特則となるような第三者保護ルールを用意するのか,この辺りについて検討する必要があるのではないかと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。設定とか実行,倒産というふうな話を書きますと,真ん中のところといいますか,設定後,最終的な実行に至るまでの間の法律関係の検討が不十分になりがちになるので,そこを気を付けるべきであるということかなと思いました。ありがとうございました。

  ほかに何か,いかがでしょうか。

○尾﨑幹事 融資実務につきましては,我々も最初に申し上げたように,担保制度を設けると,実務があしたからころっと変わってしまうということではないのだろうと思っております。そんな単純なものではないし,また,強引に変えるようなやり方は弊害もあり望ましくないとも思います。一方で,今の融資実務が必ずしも全く改善の余地がないものであるとも思っていません。その改善のために,金融機関におかれても,金融庁においても,やはり事業者の事業の内容や将来性をよく見た上で成長資金を融資するという方向性,そういったものに今,取り組んでいるところであります。そうした中で,成長資金の融資に取り組む上で,制度上の後押しも必要だと考えております。制度というものは当然のことながら,慣行に対して一定の影響力,一定の動機付けを与えるものですので,いま日本に求められている融資実務を進める上で,制度もより望ましく,それをより後押しできるものになることが,成長資金の融資に取り組むため,日本の企業や経済の成長にも資するような環境を整備するためには必要ではないかと思う次第です。

○道垣内部会長 ありがとうございました。制度で変えるというのではなくて,変えることの足を引っ張らないように制度的な受皿を用意しておくと,そういう話かなとも思いました。

  ほかに何か今の段階で,ございますでしょうか。

○亀井幹事 今後の審議の進め方やスケジュールについてお聞かせください。この部会の取りまとめを行う時期について目処というものがあれば,教えていただきたいということと,審議の過程で,例えば金融機関の皆さんだとか事業者の皆さんのヒアリングだとか,そういうことを行う予定があるのかどうか,こういった点も教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○道垣内部会長 まず,取りまとめの時期のめどみたいなものにつきまして何かお考えがございましたら,笹井さんの方からお願いいたします。

○笹井幹事 取りまとめの時期でございますけれども,この点につきまして事務当局として何か特段の,いつまでを目標とするというような時期を定めているわけではございません。そこは飽くまで,議論が成熟したときに取りまとめを行うということでございます。

○道垣内部会長 はい。もう一つのヒアリングの問題につきましては,もちろん事務局がどのように考えるのかという問題もございますけれども,委員,幹事の皆様から,こういうふうなところの実務というものをここできちんと伺うべきだと,意見をこういう立場の方から伺うべきだということがございましたら,積極的に,事務局でも結構ですし,私でも結構ですので,言っていただければ,それを踏まえて準備をするなりしたいと思います。今の段階で,ヒアリングを一切しないということは普通考えられないかと思いますが,誰のヒアリングをする予定であるとかそういうことはなく,皆さんの御意見によって決まってくるものだと考えております。

○亀井幹事 ありがとうございます。

○道垣内部会長 なぜ中小企業庁との間では,ネット上,大きくタイムラグが生じるのでしょうね。それと,亀井さん,次回でいいけれども,スピーカーとの関係でハウリングするので,何とか調整してください。

○大西委員 フロンティア・マネジメント,大西です。2回目の発言をします。

  先ほど事業担保という話が幾つか出て,多少各論にも入るのですが,私がこの件で一つ重要だと思っているのは,担保設定をするときに,いろいろな資産に担保を付けて融資ができるという融資のしやすさという点と,最後の担保実行時にどのようにスムーズに実行を行うのかという論点です。私も再生の仕事においては,金融機関による強制執行や倒産に至る前の,私的整理というのが主流なのですが,そのときには,事業担保制度の導入が実はM&Aを促進する,こういう要素もあるかと思っているのです。そういう意味からすると,少し気になる論点というのが,この金融庁さんのレポートの27ページにもある,いわゆる会社法上の株主総会特別決議事項に当たるのか,当たらないのか,若しくは当たるとしてどの時点なのかという論点です。これがハードルが高くなると,実際はこういう制度ができてもなかなか会社によっては設定ができないようなことになるといけないので,本件をどこまで視野に入れて議論するのかは別として,少し論点としてあるのかなと思いました。

○道垣内部会長 事業財産が複数あったときに,その複数の塊であるという話だけではなくて,それが企業になるということになりますと,企業そのものの譲渡の話になってまいりますので,会社法との関係でいろいろな,また問題も生じてくるということだろうと思います。それをどういうふうに考えていくのかというのも,一応は考えていかなければならないと思います。なかなか難しい問題も多々ありますが。

  いかがでしょうか。

  次回からは個別具体的な,といいましても徐々にということでございますが,論点に入っていくわけですが,本日お話しになりたかったのに結局お話しにならなかったとか,あるいは,次回からの部会の資料と直接関係しない問題だけれども,将来の資料を作る際にこういう観点というのも重要であるとお考えになる点も,個々的にもいろいろ今後出てくるのではないかと思います。その際は御遠慮なく事務局なら事務局,私なら私に御連絡いただきましたら,今後の議論において反映をさせていただくというふうにしたいと思いますので,ジェネラルな御発言は今回にとどまるということにはならないと御理解いただければと思います。

  本日の御議論はこの辺りでよろしいでしょうか。

  それでは,次回の議事日程等につきまして,事務局から説明をしていただきます。

○笹井幹事 次回第2回は令和3年5月11日火曜日,午後1時30分から午後5時30分までを予定しております。

○道垣内部会長 これで今回の法制審議会担保法制部会の第1回会議を閉会にさせていただきます。

  本日,私,部会長に指名していただきまして,それ自体慣れていないというのと,慣れていても結構難しいのですよね,ウェブ上の挙手と会場の挙手を見ながらやるというのは結構難しくて,いろいろ皆さんに御迷惑をお掛けいたしましたけれども,だんだん慣れていきたいと思います。本日はそのような不手際な司会にもかかわらず,熱心な御審議をいただきましてありがとうございました。それでは次回,またよろしくお願いいたします。

-了-

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住宅ローンに伴う担保設定が出てこなかったのが少し残念です。

相続人イギリス籍の日本の不動産の相続とイギリスにある銀行預金

20210703渉外司法書士協会令和3年度・東京定例会中級編メモ

被相続人イギリス籍の日本の不動産の相続とイギリスにある銀行預金

不動産の相続

・相続関係図

・宣誓供述書(イギリスの公証人)

銀行預金

上の二つに加えて

・日本民法意見書

被相続人フランス籍の日本にある不動産の相続

・非訟事案判決の通知(夫婦財産制の変更書を認証)

・フランス公証人宛照会書

・フランス公証人の回答、証明書(翻訳に規制)

・遺産相続に関する宣誓供述書

被相続人日本籍のロシアに所在する遺産相続

・宣誓供述書

相続の準拠法

ロシアの相続法

弟による宣誓供述書の日本での認証

地方の公証人の認証についての宣誓供述書

ロシアはハーグ条約加盟国

被相続人が韓国籍で、朝鮮民事法令を適用する相続

・遺産分割協議書

・上申書(準拠法は日本)法の適用に関する通則36条、朝鮮民主主義人民共和国対外民事関係法45条1項但書き

・外国人登録原票のコピー

法の適用に関する通則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000078_20150801_000000000000000

(本国法)

第三十八条 当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。

2 当事者の本国法によるべき場合において、当事者が国籍を有しないときは、その常居所地法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)及び第三十二条の規定の適用については、この限りでない。

3 当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。

朝鮮民主主義人民共和国の対外民事関係法に関する若干の考察

木棚照一

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/96-5/kitana.htm

山北英仁『渉外不動産登記の法律と実務』日本加除出版、2014

P515~イギリス国籍の相続

『家庭裁判月報』29巻6(1977.6)千種秀夫の「イギリスにおける相続法の改正について」P157~P186

「・相続を証する書面

イギリスには、公証人がほとんどおらず、通常はSolicitorが認証業務をしている。

P206~海外の認証―イギリスのソリシター(Solicitor)の認証について

Legal Services Act 2007 Chapter29」

https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2007/29/contents

「 イ ソリシター(Solicitor)には、結局のところ認証権限があるのか

 1801年の公証人法(Public Notaries Act 1801(c.79))は、1990年の裁判所及び法的サービス法によって、ほとんどの条項が廃止されており、同法は機能していない状態である。そこで、ソリシター団体であるローソサエティを含めたすべての承認規律団体が指定法律業務としての宣誓執行業務ができることが法的サービス法(2007年)で確認されたことにより、ソリシターはもちろんのこと指定法律資格者団体の全ては認証業務ができることになることがわかった。 」

Births, deaths, marriages and care. 駐日英国大使館

https://www.gov.uk/browse/births-deaths-marriages

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