宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)について

宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155210315&Mode=0

令和3年○月 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課

i

1 目 次

2 1.本ガイドライン制定の趣旨・背景 ……………………………….. 1

3 (1)本ガイドライン制定の背景 ………………………………….. 1

4 ① 不動産取引におけるいわゆる心理的瑕疵の取扱い ………………… 1

5 ② 不動産取引における心理的瑕疵に係る課題 ……………………… 1

6 ③ ガイドライン制定の必要性 ………………………………….. 2

7 (2)本ガイドラインの位置づけ ………………………………….. 2

8 ① 宅地建物取引業者の責務の判断基準としての位置づけ …………….. 2

9 ② 民事上の責任の位置づけ ……………………………………. 3

10 2.本ガイドラインの適用範囲 …………………………………….. 3

11 (1)対象とする事案 …………………………………………… 3

12 (2)対象とする不動産の範囲 ……………………………………. 3

13 3.告げるべき事案について ………………………………………. 4

14 (1)他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合  4

15 (2)自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合 …………….. 5

16 4.調査について ……………………………………………….. 5

17 (1)調査の対象・方法 …………………………………………. 5

18 (2)調査に当たっての留意事項 ………………………………….. 6

19 5.告知について ……………………………………………….. 7

20 (1)賃貸借契約について ……………………………………….. 7

21 ① 告げるべき内容 …………………………………………… 7

22 ② 告げるべき範囲 …………………………………………… 7

23 (2)売買契約について …………………………………………. 8

24 ① 告げるべき内容 …………………………………………… 8

25 ② 告げるべき範囲 …………………………………………… 8

26 (3)留意事項………………………………………………… 8

27 6.結び ………………………………………………………. 9

28

1

1 1.本ガイドライン制定の趣旨・背景

2 (1)本ガイドライン制定の背景

3 ① 不動産取引におけるいわゆる心理的瑕疵の取扱い

4 不動産取引においては、取引の対象となる不動産にまつわる嫌悪すべき歴史的

5 背景1がある場合に、いわゆる心理的瑕疵があるといわれ、とりわけ住宅として用

6 いられる不動産において、過去に他殺、自死、事故死など、人の死が発生した場

7 合、当該不動産が心理的瑕疵を有するか問題となる。

8 こうした事案は、買主・借主にとって不動産取引において契約を締結するか否

9 かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があることから、売主・貸主は、把握して

10 いる事実について、取引の相手方である買主・借主に対して告知する必要があり、

11 過去の判例に照らせば、取引目的、事案の内容、事案発生からの時間の経過、近

12 隣住民の周知の程度等を考慮して、信義則上、これを取引の相手方に告知すべき

13 義務の有無が判断されている。

14 また、売主である宅地建物取引業者や、媒介又は代理を行う宅地建物取引業者

15 は、宅地建物取引業法上、取引条件に関する事項であって、宅地建物取引業者の

16 相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものについて、故意に事実を告

17 げず、又は不実のことを告げる行為が禁じられており、こうした事案の存在が宅

18 地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、

19 宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法上、当該事案の存在について事実を告げ

20 る必要がある。

21 ② 不動産取引における心理的瑕疵に係る課題

22 不動産取引における心理的瑕疵については、買主や借主の個々人の内心に関わ

23 る事項であり、他殺、自死、事故死などの人の死に関する事案をどの程度嫌悪し、

24 それが取引の判断にどの程度の影響を与えるかについては、当事者ごとに異なる

25 ものである。しかし、どの程度の心理的瑕疵を当該不動産取引において許容する

26 かということについて、契約当事者間で明文をもって合意することは、通常行わ

27 れているとは言えない。

28 このため、個々の不動産取引に際し、心理的瑕疵に該当する事案の存在が疑わ

29 れる場合において、それが買主や借主に対して告知すべき事案に該当するか否か

30 が明確でなく、告知の要否、告知の内容についての判断が困難なケースがある。

31 不動産取引の実務においては、取引の対象となる不動産において過去に人の死が

32 発生した場合に、取り扱う宅地建物取引業者によって対応が異なり、中には、人

33 の死に関する事案の全てを買主・借主に告げているようなケースもあり、心理的

34 瑕疵に係る対応の負担が過大であると指摘されることもある。

35 また、不動産取引に際し、買主・借主に対し、当該不動産において過去に生じ

36 た人の死に関する事案の全てを告げる対応を行うことによって、賃貸住宅の入居

1 の場面において、貸主が、入居者が亡くなった場合、亡くなった理由の如何を問

2 わずその事実を告知対象にしなければならないと思い、特に単身高齢者の入居を

3 敬遠する傾向があるとの指摘もある。

4 ③ ガイドライン制定の必要性

5 上記のような背景の下、不動産取引に際して、当該不動産において過去に人の

6 死が発生した場合における対応の判断に資するよう、一定の考え方を示すことが

7 求められている。

8 これを踏まえ、令和2年2月より、国土交通省において「不動産取引における

9 心理的瑕疵に関する検討会」(座長:中城康彦 明海大学不動産学部長)を開催し、

10 不動産において過去に人の死が生じた場合において、当該不動産の取引に際して

11 宅地建物取引業者がとるべき対応に関し、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法

12 上負うべき責務の解釈について、学識経験者による議論を行い、その結果を本ガ

13 イドラインとして取りまとめたものである。

14

15 (2)本ガイドラインの位置づけ

16 ① 宅地建物取引業者の責務の判断基準としての位置づけ

17 不動産取引に際し、当該不動産における心理的瑕疵の存在については、買主・

18 借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事案につ

19 いて、売主・貸主による告知が適切に行われることが重要である。

20 しかしながら、実際の取引においては、不動産取引の専門家である宅地建物取

21 引業者が売主となる、又は媒介3をするケースが多数であり、買主・借主は、契約

22 を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項について、宅地

23 建物取引業者を通じて告げられることが多数を占める。

24 宅地建物取引業者が自ら売主・貸主となる場合はもちろんのこと、宅地建物取

25 引業者が媒介を行う場合には、契約の成立に向けて総合的に調整を行う立場とし

26 て、不動産取引の実務において極めて大きな役割を果たしており、売主・貸主が

27 把握している情報が買主・借主に適切に告げられるかは、宅地建物取引業者によ

28 るところが大きい。

29 一方で、既に述べたとおり、不動産取引の実務においては、告知の要否、告知

30 の内容についての判断が困難なケースがあるため、取り扱う宅地建物取引業者に

31 よって対応が異なる状況があり、不動産の適正な取引や居住の安定の確保を図る

32 上での課題となっている。

33 このような点を踏まえ、本ガイドラインは、不動産において過去に人の死が生

34 じた場合において、当該不動産の取引に際して宅地建物取引業者がとるべき対応

35 に関し、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき責務の解釈について、

36 トラブルの未然防止の観点から、現時点において判例や取引実務に照らし、一般

37 的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものである。

3

1 不動産取引に際し、当該不動産において過去に人の死が生じた場合における対

2 応については、人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱いや、

3 隣接住戸や前面道路で生じた事案の取扱い、搬送先の病院で死亡した場合の取扱

4 いなど、一般的に妥当と整理できるだけの判例や不動産取引の実務の蓄積がない

5 ものも数多くあるが、これらについては本ガイドラインの対象とせず、今後の事

6 例の蓄積を踏まえ、適時にガイドラインへの採用を検討するものとする4。

7 過去に人の死が生じた不動産の取引に際し、宅地建物取引業者が本ガイドライ

8 ンで示した対応を行わなかった場合、そのことだけをもって直ちに宅地建物取引

9 業法違反となるものではないが、宅地建物取引業者の対応を巡ってトラブルとな

10 った場合には、行政庁における監督に当たって、本ガイドラインが考慮されるこ

11 ととなる。

12 ② 民事上の責任の位置づけ

13 個々の不動産取引において、心理的瑕疵の存在に関し紛争が生じた場合の民事

14 上の責任については、取引当事者からの依頼内容、締結される契約の内容等によ

15 って個別に判断されるべきものであり、宅地建物取引業者が本ガイドラインに基

16 づく対応を行った場合であっても、当該宅地建物取引業者が民事上の責任を回避

17 できるものではないことに留意する必要がある。

18 しかしながら、宅地建物取引業者が、一般的な基準として本ガイドラインを参

19 照し、適切に対応することを通じて、不動産取引に際し、当該不動産において過

20 去に生じた人の死に関する事案について、買主・借主が十分な情報を得た上で契

21 約できるようにすることにより、取引当事者間のトラブルの未然防止とともに、

22 取引に関与する宅地建物取引業者との間のトラブルの未然防止が期待される。

23 また、本ガイドラインは、宅地建物取引業者のみならず、取引当事者の判断に

24 おいても参考にされ、トラブルの未然防止につながることが期待される。

25

26 2.本ガイドラインの適用範囲

27 (1)対象とする事案

28 心理的瑕疵については、他殺、自死、事故死などの人の死に関する事案以外にも、

29 周辺環境や過去の使用用途等が該当することが考えられるが、特に人の死に関する

30 事案をめぐって、取引上の課題となるケースが多いことから、本ガイドラインにお

31 いては、取引の対象となる不動産において生じた人の死に関する事案を取り扱うこ

32 ととする。

33

34 (2)対象とする不動産の範囲

35 住宅として用いられる不動産(居住用不動産)とオフィス等として用いられる不

36 動産を比較した場合、居住用不動産は、人が継続的に生活する場(生活の本拠)と

4

1 して用いられるものであり、買主・借主は、居住の快適性、住み心地の良さなどを

2 期待して購入又は賃借し、入居するため、他殺、自死、事故死など、人の死に関す

3 る事案は、その取引の判断に影響を及ぼす度合いが高いと考えられることから、本

4 ガイドラインにおいては、居住用不動産を取り扱うこととする。

5 なお、隣接住戸や前面道路など、取引の対象となる不動産以外において発生した

6 事案については、本ガイドラインの対象外とするが、集合住宅の取引においては、

7 買主・借主が居住の用に供する専有部分・貸室に加え、買主・借主が日常生活にお

8 いて通常使用する必要があり、集合住宅内の当該箇所において事案が生じていた場

9 合において買主・借主の住み心地の良さに影響を与えると考えられる部分をも対象

10 に含むものとする。

11

12 3.告げるべき事案について

13 宅地建物取引業者は、媒介活動又は販売活動に伴う通常の情報収集等の業務の中で、

14 売主・貸主や管理業者から人の死に関する事案の存在を知らされた場合や、自らこれ

15 らの事案の存在を認識した場合(例えば、売主である宅地建物取引業者が物件を取得

16 する際に事案の存在を把握した場合等)には、当該事案の存在を買主・借主に告げる

17 必要があるかを判断しなければならない。宅地建物取引業者が業務の中で人の死に関

18 する事案を認識した場合において、その存在を買主・借主に告げるべき事案は、以下

19 のとおりとする。

20 なお、告げるべき内容及び範囲については、後記5.に示すとおりである。

21 (1)他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合

22 不動産取引に際し、当該不動産において、過去に他殺、自死、事故死が生じた場

23 合には、買主が売主に対して説明義務違反等を理由とする損害賠償責任を巡る多く

24 の紛争がみられる。

25 このため、前記2.(2)の対象となる不動産において、過去に他殺、自死、事故

26 死(後記(2)に該当するものを除く。)が生じた場合には、買主・借主が契約を締

27 結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、原

28 則として、これを告げるものとする。

29 なお、対象となる不動産において、過去に原因が明らかでない死が生じた場合(例

30 えば、事故死か自然死か明らかでない場合等)においても、買主・借主の判断に重

31 要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、原則として、これを告げる

32 ものとする。

33

5

1 (2)自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合

2 老衰、持病による病死など、いわゆる自然死については、そのような死が発生す

3 ることは当然に予想されるものであり、統計においても、自宅における死因割合の

4 うち、老衰や病死による死亡が9割8を占める一般的なものである。

5 また、判例においても、自然死について、心理的瑕疵への該当を否定したもの9が

6 存在することから、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いものと考

7 えられ、2.(2)の対象となる不動産において過去に自然死が生じた場合には、原

8 則として、これを告げる必要はないものとする。

9 このほか、事故死に相当するものであっても、自宅の階段からの転落や、入浴中

10 の転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死につい

11 ては、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借

12 主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、自然死と同様

13 に、原則として、これを告げる必要はないものとする。

14 ただし、自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、取引の

15 対象となる不動産において、過去に人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置さ

16 れたこと等に伴い、室内外に臭気・害虫等が発生し、いわゆる特殊清掃等が行わ

17 れた場合においては、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及

18 ぼす可能性があるものと考えられるため、原則として、これを告げるものとする。

19

20 4.調査について

21 (1)調査の対象・方法

22 宅地建物取引業者は、販売活動・媒介活動に伴う通常の情報収集を行うべき業務

23 上の一般的な義務を負っている。ただし、前記3.に掲げる事案が生じたことを疑

24 わせる特段の事情がないのであれば、前記3.に掲げる事案が発生したか否かを自

25 発的に調査すべき義務までは宅地建物取引業法上は認められない。他方で、販売活

26 動・媒介活動に伴う通常の情報収集等の調査過程において、売主・貸主や管理業者

27 11から、過去に、前記3.に掲げる事案が発生したことを知らされた場合や自らこ

28 れらの事案が発生したことを認識した場合(例えば、売主である宅地建物取引業者

29 が物件を取得する際に事案の存在を把握した場合等)には、宅地建物取引業者は、

30 後記5.に示すところにより、買主・借主に対してこれを告げなければならない。

31 なお、媒介を行う宅地建物取引業者においては、売主・貸主に対して、告知書(物

32 件状況等報告書)その他の書面(以下「告知書等」という。)に過去に生じた事案に

33 ついての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義

6

1 務を果たしたものとする。この場合において、告知書等に記載されなかった事案の

2 存在が後日に判明しても、当該宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、前記3.

3 に掲げる事案に関する調査は適正になされたものとする。

4 調査の過程において、照会先の売主・貸主あるいは管理業者より、事案の有無及

5 び内容について、不明であると回答された場合、あるいは回答がなかった場合であ

6 っても、宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、照会を行った事実をもって調

7 査はなされたものと解する。

8 前述のとおり、取引の対象となる不動産における事案の有無に関し、宅地建物取

9 引業者は、原則として、売主・貸主・管理業者以外に自ら周辺住民に聞き込みを行

10 ったり、インターネットサイトを調査するなどの自発的な調査を行ったりする義務

11 はないと考えられる。仮に調査を行う場合であっても、近隣住民等の第三者に対す

12 る調査や、インターネットサイトや過去の報道等に掲載されている事項に係る調査

13 については、正確性の確認が難しいことや、遺族のプライバシーに対する配慮が必

14 要であることから、特に慎重な対応を要することに留意が必要である。

15

16 (2)調査に当たっての留意事項

17 媒介を行う宅地建物取引業者においては、売主・貸主から確認した事実関係を明

18 確にし、トラブルの未然防止を図るため、心理的瑕疵が疑われる事案の存在につい

19 ては、告知書等への記載を求めることにより照会を行うことが望ましい。

20 この際、媒介を行う宅地建物取引業者は、売主・貸主による告知書等への記載が

21 適切に行われるよう必要に応じて助言するとともに、売主・貸主に対し、事案の

22 存在について故意に告知しなかった場合等には、民事上の責任を問われる可能性が

23 ある旨をあらかじめ伝えることが望ましい。

24 また、告知書等により、売主・貸主からの告知がない場合であっても、前記3.

25 に掲げる事案の存在を疑う事情があるときは、売主・貸主に確認して、買主・借主

26 に情報提供する必要がある。

27 なお、取引の対象となる不動産において過去に人の死が生じた事実について、媒

28 介を行う宅地建物取引業者は、契約後、引渡しまでに知った場合についても告知義

29 務があるとする判例があることに留意すべきである。

30 後日トラブルとなり、訴訟等に発展した場合でも証拠資料になり得るため、媒介

31 を行う宅地建物取引業者は、売主・貸主に対して告知書等への適切な記載を求め、

32 これを買主・借主に交付することが、トラブルの未然防止とトラブルの迅速な解決

33 のためにも有効であると考えられる。また、媒介を行う宅地建物取引業者が、買主・

34 借主から、「売主・貸主が宅地建物取引業者に告知した事案について、宅地建物取引

35 業者が買主・借主に告げなかった」等と指摘され、トラブルに発展することの未然

7

1 防止にも繋がるものと考えられる。

2

3 5.告知について

4 不動産取引の中でも、売買契約と賃貸借契約とでは、一般に、賃貸借契約に比べて

5 売買契約は取引金額やトラブルが生じた場合の損害が高額になり、買主が被る損害は

6 借主に比し多大なものとなりやすいなど、双方の契約に係る事情が異なる。双方の事

7 情に応じ、宅地建物取引業者が買主・借主に告げるべき内容・範囲は、以下のとおり

8 とする。

9 なお、以下で示す点については、前記4.の調査を通じて判明した点について実施

10 すれば足り、売主・貸主から不明であると回答された場合、あるいは無回答の場合に

11 は、その旨を告げれば足りるものとする。

12 (1)賃貸借契約について

13 ① 告げるべき内容

14 取引の対象となる不動産において、過去に、前記3.(1)に掲げる事案が発生

15 している場合には、これを認識している宅地建物取引業者が媒介を行う際には、

16 事案の発生時期、場所及び死因(不明である場合にはその旨)について、借主に

17 対してこれを告げるものとする。

18 ここでいう事案の発生時期、場所及び死因については、前記4.で示す調査に

19 おいて貸主・管理業者に照会した内容をそのまま告げるべきである。

20 ② 告げるべき範囲

21 事案が発生してから期間を経過している場合、いつまで事案の存在を告げるべ

22 きかについては、その事件性、周知性、社会に与えた影響等により変化するもの

23 と考えられるが、過去の判例においても、

24 ・ 住み心地の良さへの影響は自死等の後に第三者である別の賃借人が居住した

25 事実によって希薄化すると考えられるとされている事例(東京地裁平成 19.8.10

26 判決、東京地裁平成 25.7.3 判決)

27 ・ 賃貸住宅の貸室において自死が起きた後には、賃貸不可期間が1年、賃料に

28 影響が出る期間が2年あると判断されている事例(東京地裁平成19.8.10判決、

29 東京地裁平成 22.9.2 判決等)

30 等の事例があるほか、公的賃貸住宅においても、事案発生後の最初の入居者が退

31 去した後には、通常の住戸として募集する運用が長らく行われているところであ

32 る。

33 これらを踏まえ、前記3.(1)に掲げる事案が発生している場合には、特段の

34 事情がない限り、これを認識している宅地建物取引業者が媒介を行う際には、上

35 記①に掲げる事項について、事案の発生から概ね3年間は、借主に対してこれを

36 告げるものとする

8

1 なお、取引の対象となる不動産において、前記3.(2)に掲げる事案が発生し

2 ている場合には原則としてこれを告げる必要はないが、人が死亡し、長期間放置

3 されたこと等に伴い、特殊清掃等が行われた場合においては、これを認識してい

4 る宅地建物取引業者が媒介を行う際には、上記①に掲げる事項並びに発見時期及

5 び臭気・害虫等が発生した旨について、前記3.(1)と同様に、特段の事情がな

6 い限り、事案の発生から概ね3年間は、借主に対してこれを告げるものとする。

7

8 (2)売買契約について

9 ① 告げるべき内容

10 取引の対象となる不動産において、過去に、前記3.(1)に掲げる事案が発生

11 している場合には、これを認識している宅地建物取引業者は、事案の発生時期、

12 場所及び死因(不明である場合にはその旨)について、買主に対してこれを告げ

13 るものとする。

14 ここでいう事案の発生時期、場所及び死因については、前記4.で示す調査に

15 おいて売主・管理業者に照会した内容をそのまま告げるべきである。

16 ② 告げるべき範囲

17 売買契約の場合、事案の発生後、当該事案の存在を告げるべき範囲について、

18 一定の考え方を整理するうえで参照すべき判例や取引実務等が、現時点において

19 は十分に蓄積されていない。

20 このような状況を鑑み、当面の間、過去に前記3.(1)に掲げる事案が発生し

21 ている場合には、宅地建物取引業者は、上記①に掲げる事項について、前記4.

22 の調査を通じて判明した範囲で、買主に対してこれを告げるものとする。

23 なお、取引の対象となる不動産において、前記3.(2)に掲げる事案が発生し

24 ている場合には原則としてこれを告げる必要はないが、人が死亡し、長期間放置

25 されたこと等に伴い特殊清掃等が行われた場合においては、これを認識している

26 宅地建物取引業者は、上記①に掲げる事項並びに発見時期及び臭気・害虫等が発

27 生した旨について、前記3.(1)の場合と同様に、前記4.の調査を通じて判明

28 した範囲で、買主に対してこれを告げるものとする。

29

30 (3)留意事項

31 上記(1)(2)が原則的な対応となるが、これにかかわらず、取引の対象となる

32 不動産における事案の存在に関し、買主・借主からの依頼に応じて追加的な調査を

33 行った場合や、その社会的影響の大きさから買主・借主において特別に把握してお

34 くべき事案があると認識した場合等には、宅地建物取引業者は、前記4.の調査を

35 通じて判明した点を告げる必要がある。この場合においても、調査先の売主・貸主

36 や管理業者から不明であると回答されたとき、あるいは無回答のときには、その旨

37 を告げれば足りるものとする。

9

1 なお、亡くなった方の遺族等、関係者のプライバシーに配慮する必要があること

2 から、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死亡原因、発見状況等を告げる必要

3 はない。

4 また、買主・借主に事案の存在を告げる際には、後日のトラブル防止の観点から、

5 書面の交付等によることが望ましい。

6

7 6.結び

8 前記のとおり、本ガイドラインは、近時の判例や取引実務等を考慮の上、不動産に

9 おいて過去に人の死が生じた場合における当該不動産の取引に際して宅地建物取引

10 業者が果たすべき責務について、トラブルの未然防止の観点から、現時点において妥

11 当と考えられる一般的な基準をとりまとめたものである。

12 一方、個々の不動産取引においては、買主・借主が納得して判断したうえで取引が

13 行われることが重要であり、宅地建物取引業者においては、トラブルの未然防止の観

14 点から、取引に当たって、買主・借主の意向を事前に十分把握し、いわゆる心理的瑕

15 疵の存在を重要視することを認識した場合には特に慎重に対応することが望ましい。

16 また、本ガイドラインは、あくまで宅地建物取引業者が果たすべき責務について整

17 理したものであるが、宅地建物取引業者のみならず、消費者、賃貸事業者等の取引当

18 事者の判断においても参考にされ、トラブルの未然防止につながることが期待される。

19 なお、本ガイドラインはあくまで、現時点で妥当と考えられる一般的な基準であり、

20 将来においては、本ガイドラインで示した基準が妥当しなくなる可能性も想定される。

21 本ガイドラインは、新たな判例や取引実務の変化を踏まえるとともに、社会情勢や

22 人々の意識の変化に応じて、適時に見直しを行うこととする。

1 横浜地判平成元年9月7日判時 1352 号 126 頁

2 高松高判平成 26 年6月 19 日判時 2236 号 101 頁、東京地判平成 22 年3月8日WJ、大阪高判平成 26 年9月18 日判時 2245 号 22 頁等

3 代理についても、本ガイドライン上、媒介に準じて取り扱うものとする。

4 現時点において、これらの不動産を取引する際には、取引当事者の意向を踏まえつつ、適切に対処する必要がある。

5 オフィス等として用いられる不動産において発生した事案については、それが契約締結の判断に与える影響が一様でないことから本ガイドラインの対象外としているものであり、これらの不動産の取引においては、取引当事者の意向を踏まえつつ、適切に対処する必要がある。

6 例えば、ベランダ等の専用使用が可能な部分のほか、共用の玄関・エレベーター・廊下・階段のうち、買主・借主が日常生活において通常使用すると考えられる部分が該当するものと考えられる。

7 また、地震等の大規模な災害により、対象となる不動産において人の死が生じたか明らかでないような場合には、その旨を告げれば足りるものとする。

8 人口動態統計(令和元年)における「自宅での死亡者数(188,191 人)」から、「傷病及び死亡の外因(16,174人)」を控除した死亡者数が占める割合。

9 東京地判平成 18 年 12 月6日WJほか。

10 自死や孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス(「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(令和 2 年 3 月 総務省行政評価局)))

11 管理業者から提供される情報の範囲については、管理業者と管理組合との間で締結された管理受託契約や、分譲マンションの管理規約等により定められている。

12 売買契約については、主要な不動産関係団体の提供する告知書(物件状況等報告書)において、既に、事件・事故・自死等の事案に係る項目が含まれている。

13 告知書(物件状況等報告書)においても、適切な記載例が分かりやすく示されていることが望ましい。

14 高松高判平成 26 年6月 19 日判時 2236 号 101 頁

15 本ガイドラインにおいては、他殺・自死・事故死の別を指すものとする。

16 例えば、(独)都市再生機構では、入居者が物件内等で死亡した住宅を特別募集住宅として募集している。(https://www.ur-net.go.jp/chintai/tokubetsu)

17 交換契約においても、本ガイドライン上、売買契約に準じた扱いとする。

民事信託・家族信託に関する疑問

・身元保証・身元引受について、成年後見制度で代替出来るか?

参考・(平成30年8月30日)(/老高発0830第1号/老振発0830第2号/)

(各都道府県介護保険主管部(局)長あて厚生労働省老健局高齢者支援課・振興課通知)「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc3682&dataType=1&pageNo=1

「平成30年3月の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議でも周知したところであるが、介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はなく、各施設の基準省令においても、正当な理由なくサービスの提供を拒否することはできないこととされており、入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない。介護保険施設に対する指導・監督権限を持つ都道府県等におかれては、管内の介護保険施設が、身元保証人等がいないことのみを理由に入所を拒むことや退所を求めるといった不適切な取扱を行うことのないよう、適切に指導・監督を行うようお願いする。」

 おそらくこの辺りのことをいっているのだと思います。身元保証、身元引受の中身は、主に緊急連絡先、生活支援、費用の支払い、死後事務、その他に分かれる。過去に、公益財団法人が預かり金を流用して破産した経緯がある(公益財団法人ライフ)。消費者被害の可能性があることから、身元保証、身元引受に関する事業者と契約を行う前に、地域包括支援センターと相談を行うこと。

 また、身元保証、身元引受を施設入所の条件とする根拠法令はないのだから、施設入所を拒否したりするような対応はやめるように、というようなことが記載されています。 おそらく、この通達に違反した場合は都道府県の担当から調査、指導などが入るのではないかと思います。罰則については探すことが出来ませんでした。身元保証、身元引受という言葉は使われなくなっても、形を替えて施設や病院にはそれぞれの都合があると思うので何かしら残っていくのではないかなと思います。

・成年後見人は、医療同意も事実上しているのか?

 成年後見人は、法令等では出来ないけれど、実態として医療行為に関する同意をしているのでしょうか。私は聴いたことがありませんでした。一度同意書にサインしましたが、「※ただし、成年後見人には医療行為に関する同意権はありません。」との文言を黙って書きました。そもそも医療行為に関して、本人以外の家族、成年後見人等が同意権を持っていると考えることが出来ません。家族に求めるのは後で医療ミスなどを問われないように、などという理由の方が大きいと思います。それならば、同意書ではなく説明書でよいのではないかと考えます。また本人に意思能力がない場合で、事前にエンディングノートなどに記載がないときの医療方針については、医療関係者を始め、家族、ケアマネジャーなど福祉関係者、成年後見人などの関係者で合意形成を図っていくのが望ましいのではないかと思います。

・個人事務所が大規模事務所に対抗するためのシステムとは?2年半の開発期間と1000万の投資、カスタマイズ費用は、開発にかかった費用の何十分の一。

 個人事務所が大規模事務所に対抗するためのシステムとは、どのようなものでしょうか。構造を読む限り、1つの司法書士法人が作った顧客管理システムを、他の個人事務所が利用するもののようです。利用料についての記載はありませんが、無料ではないかもしれません。どの辺が「個人事務所が大規模事務所に対抗するためのシステム」なのか分かりませんでした。もし利用料を受け取っているなら、開発した司法書士法人にとっては、大規模事務所に対抗するためのシステムになっていると思います。司法書士などの士業相手のビジネスは、未払いというリスクがほとんどないこと、毎月安定した収入が入ることは経営上プラスの面が大きいと思います。

・「親の介護に親のお金が使えない!」「親が払いたくても払えない場合」はどんな時?離れて暮らす親が突然倒れた場合、軽い症状でしたら入院費や治療費を親が自分で支払うことが可能です。しかし、重い症状や、寝たきりになってしまった場合には自分で自分の費用を支払う事ができません。離れて暮らす親が、突然倒れ寝たきりになった知らせを聞けば、子供たちは親のもとに駆け付けると思います。しかしながら、ずっと側にいて介護ができるわけではありません。子供たちには家族もいますし、仕事もあります。介護をしながら親と一緒に暮らすことは難しく、『早急に介護施設を探さなければ』と考えます。そこで大問題にぶつかります!子供が銀行窓口に行ったら拒否をされるのです。たとえ子供でも親のお金を下ろすことはできません。介護施設入所には一時金を用意しなければならず、そして月々の支払いがかかります。まず一時金を用意することが一苦労です。もしも実家のタンスに500万円あれば、それを原資としてすぐに支払う事ができます。しかし、実際は銀行に預金していることが普通かと思います。子供である自分が銀行に行き、介護費用の為といい数百万円単位のお金をおろしたい旨、伝えます。しかし、銀行窓口に行っても基本的には難しいでしょう。「ご本人様をお連れ下さい」と。本人が寝たきりで意思表示も難しいと結局、銀行口座からお金を下ろすことは難しくなります。たとえ、実の子供であっても。。。

 以前、全銀協の代理についての記事があったような気がします。キャッシュカードで少しずつ下ろすか、振込みでも良いのかなと思います。ただ私の周りで、入所時に500万円の一時金が必要な介護施設や、そこに入るような人を知らないので何ともいえません。施設も少し待ってくれるような気がしますが。

・信託財産ごとの契約となるので、契約書が2枚になるケースもあります。父が元気なうちは、父と息子さん、娘さんが共同でアパート管理ができます。しかし、将来、父が判断能力を失う状態になった場合には、受託者である息子さん、娘さんが・入退去時の賃貸借契約・アパートの大規模修繕、建替え、売却を行うことも可能です。信託契約書の中に、将来相続が起こった場合に、どの物件を誰が相続するのか残余財産の帰属先を定めておくことができます。そのため、それぞれ引き継ぐ収益物件ごとに信託契約書を作成することで、物件を受託者として管理している息子さん、娘さんにそれぞれ財産を相続させることができ、生前で円満に、財産管理と遺産分割をまとめることができました。

「信託財産ごとの契約となる」、「契約書が2枚」、「どの物件を誰が相続するのか」、「それぞれ財産を相続させることができ、生前で円満に、財産管理と遺産分割をまとめることができました。」などの使い方が気になりますが、分かりやすさでしょうか。信託財産は財産、2枚は2通・2個・2つ、相続は権利移転・引継ぎ、「信託財産に関しては、」を入れる、遺産分割は使わない、と私ならなるところです。

・信託を発効するまでに、個人差がありますが、だいたい1か月半〜3ヵ月程度の時間がかかります。

 結構速いという印象です。私の場合、3か月から1年かかります。地域差があるのか、業務の進め方が違うのか、興味があります。

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