法制審議会家族法制部会 第4回会議議事録を読もうの会

詳細
法制審議会家族法制部会 第4回会議議事録が公開されました。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00073.html

http://www.moj.go.jp/content/001353853.pdf

■読み解きのパネラー:古賀礼子(弁護士)、松村直人(子育て改革のための共同親権プロジェクト 発起人)+ご希望される方、是非!

弁護士古賀礼子 明日 9月8日ウェビナー

https://note.com/kogareiko/n/nd9bf33acaa4c

■日時:2021年9月8日 (水)

引き続き、本議事録を読み込もうの会を実施したいと思います。
弁護士の古賀礼子さんと、子育て改革のための共同親権プロジェクト発起人の松村が読み込み、気になるところを確認する流れを考えていますが、プロジェクトにご賛同頂いた方で是非、読み解きの議論に参加したい方は、ご連絡ください。

■料金:無料
■参加可能な方:以下のいずれかの方で上限495名までご参加いただけます
・プロジェクト賛同者※プロジェクト賛同は↓からお願いします。
https://joint-custody.org/
・法制審議会家族法制部会の議論が気になる方

第1回  離婚及びこれに関連する制度の見直しについて
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00058.html

第2回 参考人ヒアリング
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00063.html

第3回 養育費及び面会交流に関する論点の検討
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00068.html

加工

第3 議 題

第4 議 事  (次のとおり)

議        事
○大村部会長 予定した時刻になりましたので,法制審議会家族法制部会の第4回会議を開会いたします。
  本日は御多忙の中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
  本日も前回と同様,ウェブ会議の方法を併用した開催となりますが,引き続きよろしくお願い申し上げます。
  前回からの変更点として,外務省の西森首席事務官が新たに関係官となられるということで,御出席されているので,お名前と所属の自己紹介をお願いしたいと思います。
  西森関係官,よろしくお願いいたします。
○西森関係官 外務省領事局ハーグ条約室で首席事務官をしております西森と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○大村部会長 どうぞよろしくお願いいたします。
  続きまして,本日の会議の配布資料の確認を,事務当局からお願いします。
○藤田幹事 事務局です。本日もよろしくお願いいたします。
  まず,お手元の資料について御確認頂きたいと思います。
  三つの資料を御用意しています。まず,意見交換用の参考資料として,これまでのヒアリング実施状況を一覧にしたもの,次に,家族法制部会の進め方に関する事務局たたき台一案ということで,後ほど御議論いただく,部会の今後の進め方に関する意見交換のために用意したもの,それから,部会資料3を前回と同じく配布しております。
  このうち,初めの2つにつきましては,いずれも本日皆様に御議論いただくためのお手元の参考として用意したものになりますが,こちらは,ホームページ等での掲載はせず,非公表としたいと存じますので,取扱いには御留意下さい。
  また,原田委員から文献を資料として御提出頂いておりますので,こちらについても配布させていただいております。
  資料の説明は以上ですが,追加で,本日の議事に当たり,発言に際してのお願い事を一つ申し上げます。

  本日の会議でもウェブ参加の方がおられますから,御発言される際には,まずお名前をおっしゃってから御発言いただけるよう,改めてお願いいたします。
○大村部会長 それでは,本日の審議に入らせていただきたいと存じます。
  前回,これまでに実施した参考人ヒアリングを踏まえて,委員,幹事の間で意見交換をしたらいかがかという御意見を複数頂きましたので,本日はまず,参考人ヒアリングを踏まえた意見交換を行わせていただきたいと考えております。
  それに続きまして,やはり前回,今後の議論の進め方につきましても,御意見を頂いたところでございます。そこで,事務当局の方から,今後の進め方のたたき台の案を配布してもらっておりますので,ヒアリングを踏まえた意見交換をいたしました後に,このメモを参考にしつつ,今後の検討の進め方についても,併せて意見交換の機会を設けたいと考えております。
  最後に,残った時間で前回検討していただきました部会資料3,これは大部分が積み残しとなっておりますので,この積み残し部分についての意見交換を行わせていただきたいと考えております。途中で2回ぐらい休憩を入れる形で進めさせていただきたいと思っております。
  そこで,まず,前回,前々回の2回のヒアリングを踏まえた意見交換ということで,テーマや取り上げる順序などについて特に限定はいたしませんので,自由に御発言を頂ければと思っております。

○武田委員 前回,前々回のヒアリングを踏まえてということで,この2回にわたるヒアリングに関して,お子さんのお立場,同居親,別居親のお立場,あと支援の立場にある様々なお立場の方からヒアリングができたこと,非常によかったと思います。ご尽力いただきました事務当局の皆様,参考人の皆様にまずは御礼を申し上げたいと思います。
  まずは感想を述べさせていただいて,今後ヒアリングをどうするかというところを,簡単に意見を述べさせていただければと思います。
  お子さんの当事者からの話で,やはり私といたしましては,離婚前の親教育という必要性を改めて痛感したというのが,まず感じた点でございます。あと,DV被害者の同居親の方からお話を受けてということですけれども,やはり離婚後に限らず,婚姻中から困難に陥っている父母への支援の必要性ということを,改めてこちらも痛感いたしました。別居親のお母さんの感想といたしましては,同意なき連れ去りから始まって,監護の継続性というところから,現状の家裁の親権,監護権の決定基準,あとお子さんの意思の捉え方に関して実情をお話しいただき,家庭裁判所の現行実務の問題が明らかになったように感じました。
  支援者の皆さんからのヒアリングでは,ここ数年で,やはり我が国の中での価値観の進展が見られたなと感じております。委員,幹事の先生方には御存じない方もいらっしゃると思いますけれども,2016年,17年にかけて,国会で共同養育支援法という超党派の議員による議員立法を進める動きがございました。この法案は,簡単に申し上げると,家族法研究会でもテーマに挙がっておりました離婚前共同養育計画を議員立法で法制化しようという法案であって,私ども親子ネットも推進の立場として議論に参画させていただいておりました。当時,思い起こせば五,六年前ですかね,先だってお越しになっていただきました泉市長も取り組み始めてまだ間もない頃,政府が注目し始めた頃だったように記憶しております。しばはしさんや小泉さんの活動に至ってはまだ始まっていなかったと思います。ここ五,六年くらいで,法改正なくとも離婚後も双方の親が子の養育に関わるということを少しでも支援する志のある方が,多様な取組をしていただいていると,こんなふうに感じております。こういった取組を参考にしながら制度化していくために,委員・幹事の先生方と有用な議論が進められればよいなと思ったのが,まず感想でございます。
  今後に関してということについて,2点ほど述べさせていただきます。配布されている資料の中に,海外法制に関するヒアリングというものがございました。これはちょっと,どんな方をイメージされているのかというのは,まだ分かりませんけれども,比較法の学者の先生なんかが呼ばれるのかなとも思っております。ただ,私といたしましては,こういった法制面の海外の実態に加えて,諸外国がなぜ共同養育や非同居親との人的な関係,つまり面会交流ですね,こういったものを大事なものと考えているのかと,こういった考え方の背景を,一度きちんと聞いてみて理解を深めたいと思っております。今更私が話すまでもなく,1990年代,諸外国は子どもの権利条約を批准以降,共同養育,共同監護へとかじを切ってきたと認識しております。こういった諸外国の国民意識を語れる方から話を聞いてみたいと感じております。個人的には,2回目の資料で配布されました参考資料2-7ですね,昨年7月,EU議会で日本における子の連れ去りに関する決議が圧倒的多数で採択されましたが,そういったEUの関係者,具体的には,例えば,EU大使館でありますとかEU諸国の大使館関係者からヒアリングはできないかということを提案させていただきたいと思います。
  また,ヒアリングについていろいろな意見あろうかと思いますが,ヒアリングはヒアリングとして,継続的に必要に応じて取り入れるということでよいかと思っております。順次議論を進めつつ,必要に応じてヒアリングを組み込んでいくという方法がよいのではないかと,個人的には感じております。
  ちょっと長くなりましたが,以上でございます。

○大村部会長 ありがとうございます。感想と,それから今後の進め方についても御意見を頂いたと理解しております。
  ウェブの方で,大石委員,小粥委員から手が挙がっておりますので,大石委員,小粥委員の順番でお願いいたします。


○大石委員 千葉大学の大石です。
  これまでの当事者の方や専門家の方のヒアリングによって,多くを学ばせていただきました。ありがとうございます。
  その過程で,離婚のダメージを最小限に抑えて,子どもの健全な発達を確保することの重要性,特にどのようにして子どもの意見を聴取し,葛藤を抱える両親と調整しながら子どもに寄り添っていくかが非常に重要な問題であると,私自身,認識を新たにいたしました次第です。
  つきましては,発達心理学の第一人者でおられる菅原ますみ委員がこちらの部会にはいらっしゃいますので,父母の離婚やその後の養育が子どもに与える影響に関して,国内外の研究に基づく心理学の御知見を報告いただけましたら大変有り難いなと,私自身,専門は経済学ですので,分野外ということもあり,そういった知識を委員間で共有したいと考えてあります。御検討いただけましたら,大変有り難いと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。感想と,それから今後のヒアリングについて,具体的なお名前を挙げての御提案がありました。御提案につきましては,また後で進め方との関係でお諮りさせていただきたいと思います。
  続きまして小粥委員からお願いいたします。

○小粥委員 小粥でございます。
  私からは,まず,これまでのヒアリング,調査結果の開示等,事務局を中心に御尽力を賜りまして,また,ヒアリングに応じてくださった皆様に大変感謝しておりますし,大変勉強させていただいたということを,まず申し上げたいと思います。
  その上で,今後のことについて申し上げると,抽象的な形で申し上げざるを得ませんけれども,やはりこの法制審議会の部会のミッションというものを再確認する必要があるのではないかと考えます。つまり,これは,法務大臣が法制審議会に諮問して,法制審議会の総会がこの部会を立ち上げて,最終的には法務大臣に対する答申という形で,基本的には民事法制の改正という形でどのようなことをするのか,ということを考えなければならないと。そうしますと,即物的な言い方になってしまいますけれども,民法のどこをどう変えるのか,あるいは家事事件手続法のどこをどう変えるのか,あるいは民事執行法のどこをどう変えるのかというような形で,結論をしかるべき時期までに得るということが必要だろうと考えます。改めて申し上げるまでもないことかもしれませんが,このような形で部会を立ち上げているということは,離婚に伴う子の養育の問題について,一歩,二歩前進する千載一遇のチャンスなんだろうと思うのです。ですので,この機会を生かして,何とか前向きに一歩でも二歩でも前進するような成果を,この部会のミッションの範囲内で実現するという,そこに少しフォーカスしていくということが必要ではないかと考えます。
  現時点では,このような抽象的な言い方にとどめさせていただきますけれども,追って具体的なことを,また補足する機会があればと存じます。
○大村部会長 ありがとうございます。主として今後の進め方について,この部会の果たす役割との関係で御指摘を頂いたと受け止めました。
  そのほかに,御発言いかがでございましょうか。


○柿本委員 柿本でございます。これまでヒアリングに御参加していただきました当事者や専門家の方々に感謝いたします。現状や実態を知ることができ,大変多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
  私からはコメントが4点でございます。只今,小粥委員より部会のミッションについての御意見を頂いたところでございますが,民事法制以外の公的支援に関わるところも問題がたくさんあぶりだされてきたように,思いました。本論から外れてしまっているかもしれませんが,第2回会議のときのA参考人「お金がないと子どもは育ちません」という言葉は,養育費の重要性として強く,私の心に残っております。また第3回会議,野沢先生の資料4ページの離婚後の養育費や面会交流の実施状況というところで,養育費も面会交流も,離婚後三,四年たつとほとんどのケースで途絶えるという説明がありました。継続性を維持するための法整備が必要ではないかと,考えたところでございます。
  3点目は,浅井さんと光本さんからの,子どものための第三者機関のカウンセリングの充実を,というところは,非常に重要ではないかなと感じております。お子様が調査官による調査のときに「黙る,忘れちゃった」というようなことが起きたという話をお聞きしまして,調査官の養成機関の充実ですとかトレーニング方法の研究などが非常に重要になってくるのではないかと考えました。
  4点目ですが,面会交流支援事業をなさっている団体の方たちは,非常に一生懸命活動されているということを知りましたが,相談料などが高額な場合も多いようですので,金銭的に余裕のない方たちも受けられるような,そういう仕組みができたらいいのではないかというところなどが私が感じたコメントでございます。


○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングを聞いていただいて,民事法制以外の問題がかなりあるのではないかという感想を抱かれたと承りました。
  最後に本論から外れるかもしれないけれどもという留保の上での御指摘もありましたが,先ほど御指摘のあった,本部会でやるべきこと,できることとの関係で考える必要があろうかと思いますけれども,貴重な御指摘として伺いました。
  石綿幹事,大山委員からお手が挙がっているようですので,その順番でお願いいたします。


○石綿幹事 石綿でございます。
  まずは,ヒアリングでお話くださった皆様,また,それをアレンジしてくださった事務局の皆様,どうもありがとうございました。
  ヒアリングを通じて,感じたことを二つ述べさせていただければと思います。
 まず,子どもの視点を伺えたことは大変参考になったと考えております。人によってそれぞれではありますが,何らかの形で離婚後も別居親との交流,別居親の関与を求める視点というのが感じられましたので,事務局から既に提示された面会交流,養育費の課題に加えて,離婚後の父母の子どもの養育の在り方について検討してみるというのは,子どもの利益,子どもの意思の尊重という点からも意味があるのではないかと思いました。
  ヒアリングを通じてもう1点感じたのは,光本参考人だったと思いますが,離婚が増えるということは再婚が増えるということだという御指摘がありまして,それとの関係でも,連れ子養子の問題など未成年養子縁組等についての検討をすることも必要ではないかと思ったところです。
  今後の議論の進め方ですが,ヒアリングを通じて,民事法制以外のことについても対応する必要があることは様々あるのではないかということは私自身も感じておりまして,先ほど柿本委員がおっしゃったというところにも共感をいたしますが,それと同時に,小粥委員が御指摘なさったように,ここは法制審であって,主に民事法制の在り方について検討する場だと理解しております。ですから,これからは,民法をはじめとした民事法の具体的な議論に入っていければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からも感想と今後の進め方についての御意見を頂きました。これまで出ていない項目でいうと,再婚の場合も考える必要があるのではないかといった御指摘も頂きました。


○大山委員 経団連の大山でございます。
  私もこれまでのヒアリングで,いろいろな角度から,それぞれの御専門のお立場の方や,当事者の方からのお話をお伺いできて,大変勉強になりました。ありがとうございました。
  その上で,いろいろお話を伺って,まさに今,先生方から既に御指摘いただいているとおり,法制審の場でありますので,民事法制の在り方や法改正につながるような検討を進め,最終的には法改正に収束するよう目指していくべきと感じております。その一方で,前回の明石市長のお話にもございましたように,例えば自治体でも熱心に取り組めば,いろいろなことができるということも感じており,法制度以外にも,様々な課題に対する事前の防止策や対応策を含め,自治体でできること,民間でできること,それぞれいろいろな役割があると思います。ただ,最終的には,どの論点につきましても,法制度の見直しにうまくつながっていくよう検討を進めていただければ有り難いと思っております。
  その上で,ヒアリングも必要に応じて是非行っていただければと思っております。特に前回も御指摘いただいており,また今後の進め方のたたき台にも記載いただいております海外法制に関するヒアリングについては,海外の民間のお立場の方というよりは,学者の方で,また,あまり細かいことではなく大きな法制度に関するご説明と,そういった制度が実際にどれぐらいどのように使われているかといったことを,私個人としては是非お伺いしたいと感じております。
  それから,今後の大まかな進め方につきましては,今回の法制審における検討事項は,多岐にわたる論点があると思いますので,事務局のたたき台の案にあるとおり,まずは一巡,いろいろな論点について総ざらいした上で,その後,二巡目という進め方であれば,その過程で議論を収束できる論点は明確にあると思います。その一方で,例えば,DVの問題をはじめ,個別事情によって様々な形があり,なかなか一つのケースに論点を絞り込めないものもあると思いますので,二巡目については,よりテーマを絞り込んで法制度につながるような論点に関する議論を,進めていただければ良いと感じております。
○大村部会長 ありがとうございます。全体としての進め方と,それから具体的な議論の手順について御発言を頂きました。
  海外法制のヒアリングについては,基本的な枠組みと,それから実態について聞きたいという御要望を頂いたと承りました。
  落合委員,赤石委員の順番でお願いいたします。

○落合委員 落合です。
  法制審ということで法制度が中心になるわけですけれども,私はやはり,第三者機関の方たちの頑張りとか,そのサポートの重要性ということが非常に印象に残りました。法を作っても,それをどのように実施可能にしていくかというようなことまでの提言というのは,法制審でどうなんでしょうかね。答申の中に含むべきものなのでしょうか。これまでの慣例はよく知りませんが,含まないと現実的ではないとむしろ思いました。
  フランスで調査をしたときに,第三者機関に予算がたっぷり付いているというのが印象的でした。公的な予算が付いている。明石市長もおっしゃっていましたけれども,やはり予算をきちんと付けて人を雇用するということが,サポートを充実させるということに直結するわけですよね。そこまでの提言が付けられると,本当に意味のあることになるなと思いました。
  それから,海外法制についてなんですけれども,タイの法制についてヒアリングさせていただく機会を別に頂きました。協議離婚がタイでは多いので,日本と比較可能だからです。おかげさまでいろいろな示唆がありました。日本よりもずっと早く,1930年代から,協議離婚だけれども,養育費についてですとか,そのほか親権もですかね,かなりかっちりと法的な枠組みが作られていたそうです。すなわち,日本より早くから,欧米からの批判に耐えるような協議離婚制度というのを作っていたということが分かりました。欧米の国と直接に比べると違いが際立つことが多いですけれども,結婚も離婚も割と自由な日本のような伝統を持つ社会が,欧米的な法と出会ってどのように工夫してきたかという辺りから,学べる点があるんではないかと思います。海外法といっても,そういう東南アジアの法などを見る機会があるのも,重要ではないかと思いました。
○大村部会長 ありがとうございました。委員,幹事からは,サポートのシステムが重要だという御指摘が相次いでおりますけれども,それについて,この答申の中にどのような形で書き込めるだろうかという御趣旨の御指摘を頂きました。
  それから,海外調査については,東南アジアの国も興味深いという御指摘を頂いたかと思います。
  赤石委員,それから原田委員という順番でお願いいたします。


○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。よろしくお願いします。
  ヒアリングの,まずちょっと振り返りをさせていただきますが,お子さんたちのお話を聞かせていただきまして,やはり第三者の大人の重要性というのがあり,法制度でどうそこをカバーできるのかというのは,私も課題として感じました。また,取決めというのが,子どもの生活にとっては非常に圧迫感があり,かえってなじまないものであるという御発言がありましたので,こういったことをどう生かすのか,今やはりちょっと部会資料3を見ていますと,取決めありきのようになっておりますが,ここをどうできるのかということがあります。
  私が感じているのは,面会交流と養育費というのを議論するときに,そもそも非監護親と子どもが面会交流することが,あらゆる場合に子の福祉に合致するのかどうかというエビデンスが果たしてあるのかどうかということを,いつも疑問に思ってしまいます。ですので,そういったところからやはり議論が行われるべきかなと思っています。
  これと関連しまして,葛藤状態にあって,夫婦の子が,これまでの家裁の原則面会交流実施という流れの中で,面会交流を嫌だと言っていても強制されてしまったといったお子さんの事例がなかったので,是非ヒアリングの中でやっていけたらいいなと思っております。私も紹介もしたいと思っております。
  続いて,DV被害者の事例のヒアリングなのですけれども,Bさん,要約で議事録が出ているかと思いますが,協議離婚事例なんですね。しかも,DV被害としては重いという認識になっていなく,保護命令も出ていない。こういうケースが,DV被害については危険性があるという認識は皆さん持たれたと思うんですけれども,では,この人たちをどうケアするのかといったときに,どこまでの範囲をケアするべきかというときに,こういった事例が落ちてしまう可能性があるということを,如実に表していたと思います。協議離婚後も,相談しても,あなたは軽いよねと言われていたが,しかし,協議離婚後に親が学校に電話して退学を迫ったという事例でございます。もしここに本当に共同養育のような親の権利を与えていたら,間違いなく子どもに非常に大きなダメージがあった。彼女は,今回の議事録に関しても,お子さんにはそこまで伝えないために必死にカバーして要約だけにしてほしいということをおっしゃっている。終わった後も,お子さんへの影響を考えていかなければいけない親と,してしまう親,もちろんしてしまう親の方のケアも必要だということが,とても如実に出てきていたと思います。
  それから,非監護親のヒアリングなんですが,お父さんの非監護親のヒアリングがなかったのですが,実際には一番多く,法制審が開かれる背景もそこにあったかと思いますので,是非お父さんの側からもお話を聞けたらいいのかなと思いました。
  あと,家裁のこれまでの2011年からの対応についての,やはり振り返りといったものが必要かと思っております。家裁の調査,子どもの調査ですね,調査官調査についても,浅井氏からやはり問題点が指摘されました。非常に短時間で環境も整備されていないところで,子どもの本心が聞けていなかったのではないかというようなお話があり,私もそういうことをよく聞いております。
  私が聞いたケースでは,幼稚園のお子さんが,家族の絵を描いてごらんって調査官に言われて,お母さんとお兄ちゃんと自分を描く,そうすると,お父さんはどこって言って,お父さんを紙の隅っこの方に描く。そうすると,調査官がそこに線を引いて,仲間外れっていけないことだよね,何々ちゃん,お友達いるの,お父さんを仲間外れにしているのは誰かなって言って,何とかしてお父さんと会うということを子どもに言わせようとする,こういった調査官調査があったとお母さんから報告を受けました。また,お兄ちゃんは本当に支配をされていたんだけれども,お兄ちゃんには,お父さんに会いたくないって言ったら,お父さん自殺してしまうかもしれないよ,それでもいいのとまで誘導しようとした,こういった暴力的な調査官調査が行われていたとお聞きしておりますので,やはり2011年からの家裁で起こったことというのは何なのかということが,まず明らかになってからでないと,その次の法制度の検討というのができない。もし子どもの意見を聴取するのであれば,中立な環境であり,人手を増員し,予算拡充で,何度でもお子さんの話が聞ける,こういった体制が,子どもの代理人制度などと一緒に,池田先生が御専門ですけれども,在るべきではないのかなというのは改めて思い,ちょっと法制度に行く前の振り返りというものが,余りにもないのかなというふうに思いました。
  今後の進め方なんですけれども,私は前回も,まずは,整理されているところでは養育費からお願いしますと申し上げたところです。その意見は変わらないです。そして,その上で,海外法制のことは,本当に欧米は1980年代から共同養育の流れをしてきて,今,反省点に立っているんですね。今日,原田委員が出した英国の報告書は,正にそれでございます。今までのイギリスの対応がDA,ドメスティックアビューズについて対応し切れてこなかったという反省点に基づいた報告書についての論文です。こういうことを考えますと,あるいは,アメリカで本当に子どもたちが性虐待を訴えたら,お母さんが親権を取れなくなってしまった,なぜならフレンドリーペアレントルールに反するから。そして,父親,その加害者の下で子どもたちは過ごさなければいけなかった,こういう子どもたちの叫びが出ています。これは,エンパワメント・センターの森田ゆりさんが報告していらっしゃいます。こういった反省点が出てきている欧米の在り方を,今,まねする必要があるのかという,そういう論点を是非組み込んでいただきたいと思います。そういう点で,海外法制については,そういう点がきちんと出されるべきではないかなと思います。
  もちろん,離婚後も仲のよい,ある程度コミュニケーションができる,そういうカップルのお子さんにとっては,交流はいいことになります。しかし,全ての方にとって良くはないんですね。ここのところを見極めていきたい,そして,それの介入が果たしてでき得るのか,日本の今の脆弱な子どもの保護の体制でということを考えて,法制度をすべきだと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。これまでのヒアリングについての様々な御感想と併せて,更なるヒアリングについての御要望もお出しいただきました。
  それから,家裁実務の話もございましたけれども,海外法制についてのヒアリングとの関係では,現在どのように考えられているのかという視点も取り込んでお話いただくように依頼してほしいという御要望を頂きました。
  今後の議論の仕方については,課題を取り上げる順序などについても御意見を承りましたけれども,これは後で,今後の進め方について御意見をいただく際に,改めて取り上げさせていただきたいと思います。
  では,原田委員,池田委員の順番でお願いします。

○原田委員 弁護士の原田です。
  今,赤石委員がおっしゃったこととかなり重なるかもしれませんけれども,当事者のお話を聞いていて,子どもが蚊帳の外に置かれているということと,親の葛藤が高い間の面会というものの問題点というのは,これまた毎日の実務で感じていることと一致するなと思いました。
  離婚するか否かを決めるのは当事者,この場合は親ですから,少なくとも子どもに対しては,その年齢に応じた説明をする必要があるということ,それから,これに対して,面会交流は正しく子どもの利益のために行うものですから,当事者抜きには考えられないということだろうと思います。面会交流の場合,現状では,協議できる関係であれば,裁判所なんか使わなくても,ヒアリングのAさんのように,子どもの意思を反映した面会交流はできるのかなと思いますけれども,両親の対立が激しくて,したがって,最も子どもの意見を尊重すべき裁判手続において,子どもは初めて会う家裁調査官から意見を聞かれたり,しかも説得的な調査,赤石さんのおっしゃったような例までは直接聞いていませんが,やはりかなり説得的な調査が行われているということは,私もよく聞くところです。それから,子どもの手続代理人という制度がありますけれども,ほとんど利用されていないというのが実態だと思います。ですから,子どもの意思が反映される制度というものを考える必要があるのではないかと思います。
  しかも,養育費というのは,1回決めたら,それがそのまま続いても弊害は余り起こらないと思いますけれども,面会交流というのは,子どもの成長に合わせて形が変わってくるのではないかと思いますが,一度決めるとその後のフォローはないので,幼児期に決めた面会交流が中学や高校になってもそのまま行われて,変更しようと思っても,変更が決まるまではそのまましなくちゃいけないと,場合によっては,間接強制されてお金を払わなくちゃいけないというようなことになっている点が,やはり子どもにとってかなり負担になっているのではないかと思います。
  それから,親の葛藤の問題では,今回のヒアリングで,お子さんのヒアリングでも支援の方のヒアリングでも,親の葛藤が高い場合の面会が難しいというお話がありました。同時に,子どもには安定した養育環境を保障するということが必要で,養育者の安定,これは精神的にも経済的にも必要だと思います。したがって,制度を考える場合は,紛争が続くような制度は考えるべきではないと同時に,その両親の葛藤状態の緩和のためにどうするのかという検討も必要だと思います。この点,私は,支援の方にその点をどう考えられますかという質問をしたつもりだったんですけれども,明確なお答えが頂けなかったように思っております。
  家庭裁判所では,面会交流は子の利益を最も重視するとされていますけれども,子の利益に反する場合というのがとても狭く解されているように思っていて,高葛藤のまま調停ないし審判で決められて,支援機関に流れてくると。審判というのは,合意ができなくて調停から審判に移行するということですから,正しく高葛藤の状態が維持されている見本のような状態で,支援機関のところに流れてきているというのが現実だろうと思います。
  調停で合意される場合も,早く終わらせるためにやむなく合意したというケースもたくさんあります。考えていただきたいのは,北仲参考人が言われたような,DVの力関係の差ということで,本当に真の対等,平等な関係での合意が形成されているとはなかなか言えないのではないかということです。もめる理由というのは,やはり非監護親は面会したい,監護親の方はDVのために監護親自身が会うのが怖いとか,子どもが嫌がっているとか,子どもが気に入らないことがあるとどなられるのではないかと心配だとか,いろいろで,なかなか面会に積極的になれないというところがあるんですけれども,結局は,監護親が説得されて義務が課せられて,一旦合意すると義務化してしまうというところが問題で,途中で子どもが嫌だと言い出しても止められないです。
  それから,支援については,面会交流の実施がゴールということではなくて,そうすると,どうしても消極的な方は説得に陥りがちですので,子どもの利益ということをゴールにして,面会交流するかしないか,するとしたらどういう方法でするか,仮にしないとしても,一定期間後に見直しをするなどの,こういう制度の検討が必要なのではないかと思っています。
  それからもう一つ,この会は民事法の検討会でありますけれども,支援に関する制度や立法も両輪でやらないと,私としては,民事立法だけで支援制度ができないということでは,とても安心して提言ができないと考えています。ここで作るということではないにしても,各省庁の方もお見えですので,支援に関する制度又は立法にも,目に見える形で並行して話を進めていただきたいと。それに合わせて立法,あるいはその立法を実現するような支援というのが一緒に進んでいくということが,とても大事なのではないかと思っております。
  それから,ちょっとこれは余談ですけれども,前回養育費の法的性質について検討するのに,どんな意味があるのかという私の発言について,意味がないと取られたり,養育費も扶養料も同じだと言っていると取られたようですけれども,これは弁護士同士で議論したときに,違うからこそ,どちらか一方に固めてしまうと,いろいろな場面で問題が生じるというような議論があったということをお伝えしたかった,ちょっと先走った議論になってしまいましたが,そのような趣旨に御理解いただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。たくさんの御指摘を頂いたかと思いますけれども,民事法の外の問題との関係につきましては,既に出ているものと共通の方向の御指摘を頂いたと思います。
  そのほかに,高葛藤のケースにおける子どもの利益,子どもの意思をどう考えるかということ,一旦決めたことの変更ということが重要だという御指摘は,非常に興味深いものとして伺いました。
  具体的な問題についての御意見は,またそれぞれのところで頂戴したいと思います。


○池田委員 池田でございます。
  これまでたくさんの方々からヒアリングさせていただいて,大変勉強になりまして,どうもありがとうございました。
  その中で,私からは,主として父母の離婚を経験した子の立場からのお三方へのヒアリングに触発されて考えたことを,2点ばかり申し上げたいと思います。一つがそういった子どもへの直接の支援の必要性,二つ目が父母への支援の必要性,いずれも支援についてです。
  まず,子どもへの支援ですが,私の代理人としての活動を振り返りますと,裁判所の外で父母間で合意がスムーズに進んでいく,つまり,協議離婚へと流れていくようなケースですけれども,そういったところでは,どうしてもやはり合意を優先してしまうというような傾向があると思っています。例えば,お子さんをどちらが養育するかというところで争いがなければ,同居親がしっかりとした養育体制を取るだろうと信頼をしますし,心理的ケアも同居親が中心となってやってくださるだろうというふうな信頼をして,よほど気になるところがなければ,同居親の代理人であっても,直接子どもに会ったりということはあまりしないというところがあります。さすがに,養育費を定めないということはほとんどないですけれども,面会交流については,引き続き協議しましょうねというところでとどめておくということも,しばしばあります。弁護士が関わる場合でもそうですから,弁護士が付かないという場合には,やはりその傾向は一層強いのではないかなと思っています。
  しかし,ヒアリングで子どもの立場からのお話を伺いますと,やはり,いずれも協議離婚のケースだったと思いますけれども,お母さんと会いたいと思ったけれども言えなかったというお話とか,養育費が支払われていないことに対する不満を実は感じていたんだというお話ですとか,あとは,ヤングケアラーの役割を担わざるを得なかったというふうなお話もあったと思いますし,それから,何より父母の離婚に関する情報がほとんど与えられていないんだなということを,改めて認識したところでした。
  そういうことを考えますと,やはり一見スムーズに父母間で合意が進むような協議離婚でこそ,子どもへの直接の支援というのが必要なのではないかなと思っています。やはり子どもが一人で悩みを抱えて,お父さんとお母さんの離婚という事態に折り合いを付けられずにいるというような状態というのはできるだけ回避されるべきで,子どもの年齢とか発達状態とかに応じた,分かりやすい言葉で情報提供を受け,何か疑問や悩み事があれば相談できるという仕組みの必要があると思います。もちろん,親が一義的にはそういった役割を担うのでしょうけれども,あるいは親族が担うのでしょうけれども,親密な関係にあるからこそ相談しにくいというところもよく指摘されているところで,一定の相談支援の枠組みというのを用意しておいて,その枠組みに守られながら子どもが相談するという支援があればいいなと思っています。
  そういった支援をどのように制度化するか,先ほど来,民事法制との関わりという指摘がありましたが,そこについてもちょっと申し上げたいと思います。そういった支援というのは,基本的には福祉的な関わりだと思いますので,そういった機関が担うということになるんだろうと思います。この点,現状でもひとり親家庭の支援という枠組みで,親への支援というのはあると思うんですけれども,子どもへの直接の支援というのをきちんと組み込んだ形にしていくべきだろうと思います。そして,それを全国的なものとしていくためには,やはり支援の枠組みを定めた立法というのも必要になってくるかもしれないなと思います。おそらくそれは厚労省の所管になるのだろうと思います。ですので,せっかく厚労省にも御参加いただいていますので,そういった支援の現状ですとか今後の支援の在り方について,是非御検討いただければ有り難いと思います。
  他方,この部会で議論をすべき離婚法制においては,それらの支援との連携がスムーズにいくということを,おそらく注意しながら考えていくべきなんだろうと思います。例えばですけれども仮に,離婚のときに,親が子どもの意見や意向を年齢や成熟度において尊重しなければならないと,民事法制で定めるとすると,やはり親が第一義的に,とにかく真摯に子どもに向き合わないといけないということの動機付けになるだろうと思います。あるいは,協議離婚に関して,一定のガイダンスを受講するということにすれば,一定のそういった動機付けにもやはりなると思います。協議離婚時に定める事項について,子どもの意見や意向を適切に尊重した合意をしなければいけないと,仮に定めるとすれば,やはりそういったところの支援に流れて行き得るというところはあるので,そういったきっかけといいますか,連携の始まりになるような規定の仕方を,ここで議論するということではないかなと思っています。
  それから,あと,民間団体,支援団体がいろいろと役割を担うということになれば,その認証基準に子どもの意見や意向をきちんと尊重するような,そういう業務活動をしているということを含めることも,一つ方法になってくるかなと思います。
  以上が,子どもへの支援の話でしたけれども,手短に父母への支援というのを,最後に少しだけお話ししたいと思います。やはり子どもの養育に関する取決めというのは必要だと思います。極端な話,離婚時の取決めがなくて,養育費も払われず,養育支援もなされず,孤独の中,同居親が子どもをネグレクトして死に至らせてしまうというようなケースもやはり現実にありますので,こうしたことが起こらないように取決め支援をしっかりする必要があります。明石市はじめ自治体でやっているところもあると思います。ますます進めていくという必要があると思います。離婚法制においても,やはりそれを後押しするような連携の始まりとなるような仕組みというのを議論していく必要があるのかなと思っております。
  ちょっと長くなりましたが,以上です。
○大村部会長 ありがとうございました。子どもへの支援と,それから親への支援ということを分けて御感想,御意見を頂きました。
  議論の仕方についても御指摘を頂きまして,民事の立法をするときに,福祉的な支援との関係について,どういう考え方をするのかということに関しまして,親への動機付けとか,あるいは支援のつなぎの契機になるといった観点から規律をするということでつないでいけるのではないかという御指摘を頂きました。
  久保野幹事,それから戒能委員の順にお願いいたしたいと思います。


○久保野幹事 久保野です。
  まず,ヒアリングにつきましては,取り分け当事者の方,また支援の方々の,文献などからは知ることのできないような事柄ですとか,あるいは思いの重さといいますか,ちょっと曖昧な言い方ですけれども,そのようなものに触れさせていただく機会を頂けたというのを,非常に有り難く思いました。
  意見は主に今後の方向性についてなんですけれども,冒頭の会のときに,民法を改正していく際に,子どもの利益といったことについて,正面から,児童虐待の対応といった狭い意味ではなく,子どものことを捉えた親権法の改正が実現していくことに期待を持つと言わせていただいたのですけれども,先ほど指摘が出ましたとおり,子どもの利益に限りませんけれども,千載一遇のチャンスという表現,もう一度何か胸に留めたいと思います。この機会は,そのような非常に大事な場だと思います。
  現行法につきましては,改めて言うまでもないかもしれませんけれども,親族の関係につきまして,当事者の協議ですとか合意に任されている点の多い,白地規定の多い特徴があると,かねて指摘されてきているところでありまして,親権法にしましても,766条にしましても,未成年養子につきましても,具体的基準が条文にはほとんど具体的には記されていないという現状ですので,正に今,議論になっていますような,両親が非常に高葛藤であるということをどう捉えるかですとか,DVの事案やDVという要素をどう考えていくのかですとか,子どもの意見や意向をどう考えるのかということについても,実は手掛かりがないという問題があります。この点については,家事事件手続法にはしっかり入りながら,民法の方では手当てがされていないといったようなこと等につきまして,具体的基準が示されていない民法を,変えるところがあれば少しでも変えていこうということが,積極的に進めていけたらという思いを強く持ちます。
  その上で,支援が大事ですとか,福祉との連携が大事ですとか,人材育成がまず必要ではないかといったことは,これはこれで本当にそうだと強く思うところでありますけれども,ヒアリングの中で泉市長さんが,第三者機関や行政の支援をあれほど独自に手厚くなさっていて,人材育成にも乗り出していらっしゃると伺って,不勉強で申し訳ないですけれども,感心して驚いたんですけれども,その泉市長さんが,裁判所にもっと頑張ってもらわないと困るのだというような趣旨のことをおっしゃったように思いまして,やはり法制度でやるべきことも残っているという,残っているという言い方は変ですけれども,印象を持ちました。
  ということが1点です。
  もう一つ,少し細かい点になるんですけれども,海外法制につきまして,難しい問題なので,海外法制が原則論のところだけではなく,細かいところにどう対処しているかということは知りたいとは思います。ただ,注目が高いテーマなので,これまで複数の国を取り上げての報告書やまとまったものが何回か出ていると思いますし,また,先ほど真似する必要があるのか疑問が存するという意味で,参考にするべき国々があるということにつきましても,今日提出されました資料も含めまして,詳しい形で比較的紹介されているようにも思いますので,文献で調査が付くところにつきましては,むしろそれらのものを,ほかの法制審議会などでも行われていますとおり,分かりやすく一覧性にするといったような形で共有することが大事なのではないかと思います。文書では分からない点について,もし聞くことができるといったものがあれば,それはそれで有益かとは思いますけれども,それも,もう少し日本の課題として,どの辺りが特にポイントかということが分かってからの方がふさわしいのではないかという気がしておりまして,海外法制のヒアリングを急ぐというのは,どちらかというと控えた方がいいのではないかという意見を持っております。
○大村部会長 ありがとうございます。大きく分けて2点だったかと思いますけれども,現行の民法の規定が,相対的に手薄になっていることに伴う問題があり,これについて対処すべきではないかということと,それから海外法制については,調査は必要であろうけれども,既に調査されているものがあるので,その先の調査についてはもう少し後でもいいのではないかという御指摘を頂いたかと思います。

○戒能委員 戒能と申します。
  3点,もう論点がいろいろ出ておりますので,簡単に申し上げます。
  一つは,ヒアリングで気付いた点というのは大変大きかったと思うんですが,その中で,養育費の位置付けということなんですね。養育費について,先ほど不満が出たというお話もありましたが,実は,その子どもさんの進学という問題に関わる,そして,その進学というのは就労と深く結び付いている,どういう人生を送るかということを,言わば10代の後半で決めていく,そこに,養育費の不払いとか取決めがないというようなことが,大変多くあるんではないか痛感させられました。
  そういう意味では,一つは,養育費という,これは先ほど来,この法制審のミッションの範囲に絞った議論をすべきだという意見と,やはり連携,関係している分野との総合的な検討が,どうしても必要となるという意見があったと思いますが,私は後者の方の,私的な責任だけではもう覆い切れないんではないかと,お二人ですね,男性の方と,それからAさんのお話を聞いていて,強く感じました。それが1点目です。
  ですから,確かに家族法制部会でありますけれども,そこで民法の改正に至るまでに,もう少し視野を広く見たいと思います。私が伺っていたところによりますと,この家族法制部会は,民法研究者だけではなく他領域の専門家も入って,総合的に議論するということに大きなメリットがあるんではないか,今までの家族法の考え方を打ち破っていくというようなことを,子どもをどうやって守るか,あるいは子どもの利益をどうやって実現していくかという,外国だと子ども法という範ちゅうになるかもしれませんが,そういうことを使命としていると,個人的には考えております。
  2番目ですが,支援機関のお話を聞いて,特にFPICと,それから明石市長のお話を聞いて,高葛藤の中でもDV事案が,数量的にどうかということは示されませんでしたが,対応が困難であると,支援が困難であると感じました。その背景には,余りにも公的な支援体制が貧弱であり,それを前提として議論しなければいけないと。その中でも,面会交流の問題になりますけれども,DV被害の継続であるという北仲さんの指摘とか,それから,何といっても母親に対する被害の影響と同時に子どもへの影響ですね,それをもっと,これは他領域の専門家の援助が必要かと思いますが,そこまで見ていかないと,本当に子どもの利益,子どもの安全ですよね,安全は守られないのではないかというのが2番目です。
  それから,3番目が海外法制,外国法制なんですが,これは,相当時間がたって,見直しの時期に入っている,今まで前提としてきた価値観とか考え方あるいは制度が見直しされているということに敏感でありたいと思っております。ですから,後からという考えもあるでしょうけれども,事務局の案のように,海外法制を見ておくことが,必要なのではないか。そのときにやはり,外国のことだけではないわけで,日本の課題とどうつながっているのか,関連しているのかという視点が大事だと思います。その意味では,日本の家裁の運用の観点からのヒアリングも必要ではないかなと感じております。
○大村部会長 ありがとうございます。ヒアリングについての個別の感想とともに,これからの議論の仕方についても御意見を頂きました。大きな議論の仕方につきましては,先ほどから御意見が出ているところでございますけれども,海外法制については,最近の状況を捉えるという意味で,少し早めにやった方がいいのではないかという御意見を頂きました。それから,日本の実務の状況についても,という御意見も頂きました。
  では,青竹幹事,棚村委員という順番でお願いいたします。


○青竹幹事 青竹と申します。
  ヒアリングは,非常に参考になり,勉強させていただきました。
  1点目は,子の立場で御報告された方のお話を伺って感じたことですけれども,やはり多様な家族がありますので,法制度を考えていくときに,一律に定めるというのではなくて,共同での父母の子との関わりということについても,必要な場合と不要な場合もあるでしょうし,逆に害になるケースもあるというのも認識されていることですので,硬直的な制度というのではなくて,やはり様々なケースに対応できる仕組みという方向を目指すべきではないかと感じました。
  2点目は,進め方に関わることですけれども,これもヒアリングで,お子様だったという立場でお話ししていただいた方は,面会交流と養育費について,両方重要な意味を持つように捉えられているということが分かったように思います。面会交流も,もちろんマイナスの意味も含めてなんですけれども,マイナスの意味も持ち得るということも含めて検討すべきですので,やはり養育費,面会交流,両方同じように重要なものだという捉え方で検討していってはどうかと考えております。
  それから,3点目に,先生方がおっしゃったことですが,海外の仕組みは参考になりますので検討すべきだと思うのですけれども,やはり一部の国でこういうふうになっているということで,すぐに結論に結び付けない方がいいのではないか,諸外国でとられている制度の仕組みの意味を慎重に検討すべきだと考えております。また,比較する対象の数も増やして,比較していった方がいいのではないかという印象を持ちました。
○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングを踏まえて,家族により様々な状況があるので,その多様な状況に対応できる立法が必要ではないかということと,養育費と面会交流それぞれに重要な課題があるという御認識,最後に海外法制については,それぞれの制度に慎重な評価が必要ではないかという御指摘を頂きました。
  次に,棚村委員,よろしくお願いします。


○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  参考人のヒアリングについては,時間が限られていましたけれども,いろいろな立場の方から御意見を伺い,また御経験をお話しいただき,大変参考になりました。お礼を申し上げたいと思います。
  それから,法制度と支援との関わりについてですが,実は,私の方から最初に,法制と支援というのはセットで考えてほしいということを申し上げました。ただ,私自身がお話しした趣旨としては,法制審議会では,主として民事法制を議論する場ですので,ただ,支援を全く度外視して法制度を作っても,実効性も担保できないし,いいものはできないのではないかという意味で,是非支援も議論の中に入れてやるべきだということを申し上げました。その辺りをもう一回,きちっと確認をしていきたいと思います。理解していただいたと思うのですけれども,ここは法制度の在り方を議論するというのが主であって,ただ,支援というものを全く考えに入れないで考慮せずに作るとすれば,決していい法制度はできないということでお話ししたものです。
  それで,子どもの養育のあり方を見直すということが焦点になっていて,子どもの利益や子どもの権利を守ろうということでは,共通認識が皆さんにあると思いますから,是非,今後の進め方でもそのようにお願いしたいと考えております。前回も,私が言いましたように,民法は,明治民法典として当時の状況下では優れたものができたのですけれども,ただ,時代とか社会の変化に適応するためには,きちっと改めるところは改めざるを得ないということでも,異論はないと思われます。しかし,どの範囲の問題を取り上げるかということでいうと,子どもの養育に関係するのは,親権と監護の法制だけではなくて,未成年養子という,連れ子養子とか,再婚されて養子縁組をされるということもあるので,是非未成年普通養子についても議論するせっかくの機会ですから,すべきだろうと思います。
  それから,財産分与についても,婚姻費用の分担とか,それから財産分与というお金の面のことですけれども,養育費といろいろとリンクする経済状態の問題ですから,これも是非取り上げていただきたいと思います。どこにどんな順番でウエイトをかけてやるかということは別として,せっかくの家族法制を見直す千載一遇のチャンスですから,特に民法を中心とした基本法の見直しである以上,それも取り上げてほしいと考えています。
  海外法制とヒアリングの御希望が結構あったと思うのですけれども,私もアメリカを含めて,イギリスとかコモンウェルスの国々を中心に見ているのですが,本当に比較しようとなると,時間も労力も掛かるだけではなくて,短期間では実態にどこまで迫れるかはかなり難しいところがあります。ですから,もちろんエッセンスということで,先ほども出ていましたけれども,法制審議会で私も協力をしたりしてきたのは,一覧表みたいなのを作って,この項目についてはこういうふうになっているとか,こういう制度があるとか,条文とか書いていただいて,日本法の審議の参考にする。ただ,実際の運用とかそういうところまではよく分からないところもあるので,必要があれば,そういうことについて専門家からコメントを頂くとか,参考文献を付していただくということでよいのではないでしょうか。海外法制については,日本と全く同じように比較するとか実態を知るということは案外難しいところがあるので,日本の法制を作る上で,海外の法制をどの程度参考にできるだろうかという観点でやってほしいと思います。ですから,特別に海外法制についての時間を作るとか,調査の機会を作っていくということよりは,調査報告書や研究論文等の文献を示していただき,本当に必要最小限に限っていいのではないか。ヒアリングも大分聞かせていただいていますから,ヒアリングそれ自体に時間をかけるというよりは,今後の進め方にも関わるのですけれども,養育費,面会交流を含めて,やはり具体的な問題ごとに話を進めていってはと思います。
  それで,私も養育費から検討を始めるということに賛成です。逆に言うと,面会交流については法的には別のものではあるのですけれども,一定程度関連したりしますし,海外法制を調べているとよく分かると思いますけれども,別のものとしてスタートさせたところでも,面会交流をさせてもらえないから養育費を払わないという話が出てきたりして,どうしてもある程度は,別のものとしながらも関連付けてやっていくというところがあります。例えば,面会交流の時間とか共同養育で使った時間,そういうものを養育費の算定なんかで考慮するというところもあります。結局,両方がむしろ一体となって協力をしてうまくいったときは,ある意味では,子どもを応援する経済側面と精神的な側面という場合もあり得るし,逆に,ブレーキになって,むしろ問題をこじらせるということもありますので。その辺りは慎重にすればいいと思います。取りあえず具体的な問題から入っていくということが重要でして,養育費とか面会交流とか,現状がどうなっているのか,現行法の規定がどうなっているか,それにどういう課題があるかという,事務局で整理していただいたような方向で議論をしていただければと思っています。
  いずれにしても,ここでは,民事法制,家事法制,この改正につなげられるかどうかということである点は確認しておく必要があると思います。支援を全く度外視するとか,実情を無視するとか,海外の法制を全く考慮しないという意味ではなくて,ここの場ではその主たる目的に沿って,必要な範囲で参照させていただいたり,資料を用意していただいたり,議論の対象にしていくということで進めていただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。最初に民事法制と支援の諸方策の関係についての御意見を頂きました。具体的な方向性については,親権,監護,それから未成年養子,財産分与といった問題を,一つずつ順次検討に入るべきではないか,まず養育費と面会交流の問題から始めようという御提案を頂いたと承りました。
  また海外法制については,必要な限度でやるということでよいのではないか,なかなか取扱いに難しいところがあるのではないかといった御指摘も頂きました。
  まだ御発言があろうかと思いますけれども,ここで10分休憩させていただいて,さらにヒアリングに関する御意見,御感想を承った上で,次の話題である今後の進め方に入っていきたいと思います。

          (休     憩)

○大村部会長 それでは,再開させていただきます。
  先ほどから,ヒアリングを踏まえた皆様の御意見,御感想を頂いておりましたけれども,更に御発言があれば承りたいと思います。委員,幹事の御発言も頂きたいと思いますし,役所の方々,厚労省ですとか裁判所で何か御発言があれば,そちらもどうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

○佐野幹事 もう既に,次の議論をどういうふうにしていくかという話が入っているようですので,そちらについてちょっと希望を申し上げさせていただきます。
  まず,面会交流と養育費の話を途中までやっていたかと思うのですが,やはり私としては,議論をするのは別々の方が議論をしやすいなと感じております。やはり問題の性質が大分違うので,その方がすっきり議論ができるかなと思っております。
  それから,やはり海外法制の研究については,いろいろ議論があるところのように思いますけれども,私としては,是非,韓国の話も聞いてみたいと思っています。特にアジアで,非常に制度が進んでいるところですので,ベースの内容については文献等で頂いて,運用とかについてよく知っている方に聞かせていただくような形で,コンパクトでも結構ですので,具体的にどういった問題が生じているのか,そういった辺りを聞きたいとは思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。議論の進め方について,二つ御意見を頂いたかと思います。
  養育費と面会交流は一応分けて議論を,という御発言でしたけれども,これは,これを続けてやるという前提で,しかし分けてやりたいという御希望だと承りました。
  それから,海外法制については様々な御意見を頂いておりますけれども,韓国も含めてどうかということと,コンパクトに運用の実態などに焦点を当てて行うとよいという御指摘を頂きました。
  ほかに御意見いかがでしょうか。


○藤田幹事 事務局でございます。
  先ほどから御指摘がある民事法と公的支援の関係について,関係省庁との状況を少し申し上げておいた方がよいかと思いまして,一言だけ失礼します。
  御指摘があるとおり,この家族法制部会は,諮問事項との関係で民事法制の検討が中心になるのでしょうが,事務局としては,これまでの議論で皆様から様々な御意見を頂いておりまして,それをできるだけ適切な形で受け止めたいと考えてございます。その中でも,離婚前後のDV被害の問題,さらには公的支援の問題については,特に多くの御意見を頂いておりますが,例えば,DV対策の問題であれば,DV法を所管する内閣府に幹事に入っていただいており,部会の場以外にも,離婚に関連したDV問題の対応で連携を図ろうとしているところですし,公的支援の関係では,特に養育費確保の公的支援がこれまでクローズアップされてきたこともあり,それらを中心に厚労省と実務的な連携の枠組みを設けて,公的支援策の検討をしてきたところであります。ですので,これら御指摘の点は,この部会とは別の形でも,同時並行で関係省庁等としっかり検討を進めて,方向や成果を出せるときにはしっかりこちらに報告・還元して,部会での議論と双方向でやるということを考えておりますし,それが重要であると認識しているところです。
○大村部会長 ありがとうございました。
  そのほかにはいかがでございましょうか。

○水野委員 水野でございます。
  特に今までの御意見と異なる意見を申し上げる自信はないのですけれども,発言をお許しください。ヒアリングでは本当に胸の痛むケースをたくさん伺いまして,改めて,つらい問題で,何とかしなければならない問題だと思いました。ただ,その胸の痛むようなケースは,監護親と非監護親どちら側の立場にもあるわけです。それは,今,事務局からのご発言にもありましたように,育児支援や暴力対策支援がものすごく貧弱だという問題,つまりいわば離婚後共同親権という窓のスタイルを議論しようにも,土台がものすごくぬかるんでいるので,そもそもまずきちんとした家が建っていないという,そういう問題を我々の社会が抱えているのだろうと思います。
  それで,進め方なのですけれども,外国法制のヒアリングという希望が出ましたが,私は外国法制の紹介は,非常に難しいことだと思っております。外国法制は,どこに光を当てるかによって随分イメージが変わってきます。その外国法制は,土台がどういう構造になっているのかということから,全体像を描ける紹介でないと危険で,一部分の紹介ですと,象の一部をなでて,極端な結論が出るということにもなりかねません。そして,日本法は西洋法制と比べますと協議離婚制度がある等,非常に特殊ですし,また,先ほど申し上げたような土台がぐずぐずであるという問題も抱えていますので,まず議論を進めるためには,ある程度論点を絞って進めた方がいいかと思います。
  先ほど小粥委員や久保野幹事から,まずは民事法制の改正という論点ではないかというご意見が出ました。確かに背景の問題を我々は自覚しながら進めなければいけませんけれども,ここでする議論は,やはり民事法制の改正という論点にある程度絞った方がいいように思います。
  ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。海外法制は,先ほども御指摘ありましたが,なかなか実情を知るというのは難しいところがあります。そういうことを考えつつ,やる必要があるということかと思います。
  それから,議論は論点を絞って,民事の法改正に結び付くような形で最終的にはやっていく必要があるのではないかという御指摘を頂いたと受け止めました。
  窪田委員,沖野委員の順番でお願いいたします。
○窪田委員 ヒアリングを踏まえての感想というよりは,専ら今後の進め方ということになってしまうのですが,それでもよろしいでしょうか。議論がそちらの方に移っているのかなと思ったので。
○大村部会長 そうですね。直近で頂いた意見の多くは,議論の進め方の方にシフトしていると思いますので,ここから先は,もちろん引き続きヒアリングの感想を述べていただいても結構ですが,議論の進め方についても御意見を頂くということで,議論の重心を移していきたいと思います。窪田委員,そういう前提で結構ですので,御発言をお願いします。

○窪田委員 もちろんヒアリングの感想についてもいろいろ申し上げるべきなんだろうと思いますが,議論の進め方ということで,今まで出ている論点について,重なることになるかと思いますが,発言させていただければと思います。
  3点ございます。
  一つは,もう先ほど事務局からもお話があったのですが,この法制審の役割と今回できることということは,やはり意識はしておくべきなのだろうと思います。最初に小粥委員から御発言がありましたが,小粥委員は,できないこと,管轄外のことについては議論するなという趣旨では全くなくて,飽くまでそれを踏まえた上で,でも,最後の目的は,民法なり民事法制の改正なのだということを,自覚的に捉えていくべきだったということなのだろうと思います。その周辺の問題が議論できないとその先に進めないというような枠を課してしまいますと,もうちょっと身動きが取れなくなるのではないかなと思いますので,その点が一つ。
  それから比較法,外国法の扱いなのですが,対照的な意見がすごく出ているのだろうと思いますが,これは,外国法を何のために扱うのかということにも関わるかと思います。もちろん,ここには,外国法制,外国の家族法制に詳しい方もおられれば,そうではない方もおられますし,また法律の専門ではないという方もおられる中で,ある程度一般的な外国法の知識を共有しておこうというものであれば,これを早めにやっておいたらよろしいと思いますし,棚村先生からお話があったような一覧性のものをまず作って,概略をお話しいただき,それを出発点にしてということでもよいのかと思います。
  ただ一方で,掘り下げた外国法の紹介というのは,実はものすごく難しいのだろうと思っています。今日,委員から資料で出していただいたもの,オーストラリアに関するものもそうなのですが,非常に立ち入った論文というのも従来から幾つもありますけれども,多くの場合には,やはり一定の,そこから解釈論を導くという性格がかなり強くなっておりますので,単純に外国法の状況,外国の状況を知ろうというのではないかと思います。もちろん議論していく上での参考となるものではあるのですが,それらを全部扱う,それをしないと先に進めないという前提を取らない方がいいだろうと思っております。必要に応じて論点ごとに外国法についてやや詳しく説明をしてもらうということでよいと思いますし,この場合も,私は基本的にはできるだけニュートラルなものをまず出発点とした上で,必要があれば更に立ち入った形でというのが良いと思っています。そういった形での外国法の位置付けの方がいいのではないかなと思っております。
  それから,3点目なのですが,養育費と面会交流の扱いということで,これは,意見の中でそれほど大きな対立があるわけでもないのかなとは思います。私自身も,養育費と面会交流の話,両方とも大事だろうとは思いますし,最終的にまとめる中で,両方ともについて判断を出すべきだと思いますが,セットであるということはあまり強調しない方がいいのかなと思っております。もちろん,養育費の議論をしていって,また面会交流の議論をしていって,最終的に両者の関係として一定の関わりがあるそうだということは出てくるかもしれないですが,それをその時点で,次のステップで扱うべき問題であるのではないかと思っております。
  さきほど棚村先生から,養育費を払わないのだったら面会交流させないというのがありましたけれども,それもよくありそうな話だなと思うのですが,一方で,養育費を払っているのだから会わせろというような形での一体性が出てくると,やはり面会交流の議論というのは出発点でゆがんでしまうのではないかなと思いますので,一応問題としては切り離した上で進めていったらどうでしょうか。切り離すというのは,全く無関係だということではなくて,まずは別の論点だということで柱を立てた上で議論をしていったらどうかなということです。
  今まで出てきた意見とかぶるところも多いのですが,以上3点についての意見でした。
○大村部会長 ありがとうございました。今日のこれまでの議論をまとめていただいたような形になっているかと思いますけれども,まず,法制審の役割に関する捉え方につき,民事法制以外の問題について,議論をしないということではないけれども,最後は立法のあり方,民事法の改正に結び付くような形で議論すべきではないかという御指摘がありました。
  それから,外国法制は,これは研究者の方々がみなさん共有されていることだと思いますが,理解をするというのは本当に難しいことです。そうであるということを踏まえた上で,しかし,一定程度知識を共有するということであれば,ニュートラルな形で紹介していただくというのはよいのではないかという御指摘を頂きました。
  さらに,養育費,面会交流については,一応分けた上で議論はするということでどうかという御意見だったかと思います。
  それぞれについて,異なる御意見も出ておりましたけれども,それを踏まえての御発言だったと理解をいたしました。

○沖野委員 今の窪田委員の御指摘をそのままなぞるような形になってしまって恐縮なんですけれども,同じ項目を3点,やはり申し上げたいと思います。
  一つは,この部会の役割ということで,もうこれは既に,本日問題提起をしていただいたことで共通理解となっているのではないかと思いますけれども,中核としては,法制審議会の部会として,民事法制についての一定の考え方を示すということだと理解しております。しかしながら,取り組むべき問題というものが,民事法制だけで解決するものではないということも共通理解となっており,この民事法制がどう動くか,あるいは,しかるべくように動いていくためには,どういうことが必要なのかという点から,様々な検討が必要だということになってくると思われます。公的支援もそうでしょうし,あるいは民間の団体との協働ですとか,いろいろな形があると思います。
  また,法制度としてどういうものがあるべきかという,その選択においても,他の制度ですとか他のものが関連してきて,こういうことができるのであれば,選択肢Aになるけれども,しかし,そこが難しければ,やはりBになるとか,そういう形で関連してくることが考えられるので法制度だけを独立して論じることもできないと思います。ただ,しかしながら,私たちは全てを同じ比重でやっていくわけではないということは,重々念頭に置いておく必要があるだろうと思います。
  2点目がヒアリングでございますけれども,これまでのヒアリングで,私,途中出られなかったときもあるんですけれども,参加させていただいたところでは,非常に多くを学んだと思います。いろいろな問題,いろいろな経験,そして問題の深刻さ,重さについても,改めて感じ入ったというところがあります。したがいまして,ヒアリングを続けていくということに対しては,更に多くを学ぶ機会だろうとは思っております。
  しかしながら,ヒアリングには一方,限界もあると感じておりまして,様々な御自身の経験を語ってくださるということですが,その経験には,恐らく別の見方もあるだろうと。相手方,あるいは別の立場に立てば,同じ事象が違うように見えてくるとか,違う経験があるということがありまして,そういったことを同じようにヒアリングで補完していくということになりますと,ある意味際限なくなってしまうということがありまして,やはり私たちが最終的に取り組む民事法制の在り方のために,どういうことを考えていくかといったときに,時間も限定されているということもございますけれども,むしろこういうヒアリングが再びやはり必要ですねという指摘がありましたら,正にそれを補充していくというような形で,また,これまでのヒアリングに対し,しかしこういう点も考えなければならないというのは,既にいろいろな専門家の方が知見を持っておられるところですから,そういった留保も十分していくことで,あるいは,今回もそうですけれども,今までのヒアリングになかった,しかし,こういった点が実は重要であるとか,こういった御経験もいろいろとあるんだということは,正に委員や幹事の皆様から伝えてくださって,それを共有しているということもありますので,そういった手法も組み合わせて考えていくべきではないかと思っております。
  同じことは海外法制についても言えまして,海外法制というのは,やはり私たちのこの制度をどういうふうに作っていくかというのに当たって,こういうようなやり方もあるとか,こういう経験もあるとか,そういったことを学びといいますか,それを参照していくものであり,そのための情報入手等としてヒアリングが唯一だとは思われませんので,やはり適宜の方法でということになるのではないか。それもまとめて集中的にということもあり得ますけれども,そうではなくて,例えば,韓国の例でこういうものがあって,こういうところの実態が分かれば,一層参考になるのではないかという御指摘があれば,それについての情報提供ということが,どういう方法があり得るかというようなことで見ていくということもあり得ると思います。もちろん,ヒアリングを否定するというわけではないのですけれども,全てヒアリングをやるべきだということにはならないという前提で,適宜の組合せを考えていくべきではないかと思っております。
  3点目が,具体的な項目につきまして,私も養育費と面会交流というところから始めていくということが適切ではないかと思っております。両者の関係につきましてなのですけれども,これも,ヒアリングですとかこれまでの皆様の御意見を聞いてということなんですが,私は,子どもの養育に親が共にそれを担っていかなければならないと,そういう義務を負っている中で,養育費というのは経済面での担い方ですし,面会交流,あるいはそれだけではないかと思いますけれども,というのは,交流ですとか先ほど精神的ということも言われたと思いますけれども,財産法的にいえば現物給付的ということもあるのかもしれませんけれども,そういう点からの様々な義務を果たす手法の一つと考えますと,両者というのは関係している,あるいは,子どもの養育という点からは,その一環という形で位置付けられるというものではないかと思っております。
  しかしながら,具体的な内容というのはそれぞれかなり違っておりますので,これを一緒に論じていくということの意味がどういうことなのかということで,結局やはり養育費というのはこういうふうに,面会交流というのはこういうふうにというような形で論じていかざるを得ないのではないかと思います。
  両者の関係につきましては,今申し上げたような大きな位置付けといいますか,視点の中で,両者というのをどういうふうに考えていくかという問題と,非常に個別的な点で両者を連動させて考えるのかという問題があり,出てまいりました面会交流がブロックされるならば養育費は払わないとか,あるいは,面会交流をしているなら養育費を減じるべきだとか,これというのは非常に具体的なレベル,それぞれの中身のレベルで両者を関連させ,あるいは連動させていくという考え方ですけれども,果たしてそうかと。そもそもが,子どもの養育というのを担う,あるいは,それが義務であるならば,面会交流をしていても,子どもの養育に費用が必要ならば,それは負担しなければいけないということになりますので,一方が負担できなければ他方が負担すると,中の分担ですとか,最終的な精算をどうするかというのは,また別途考えられると思いますけれども,それはちょっと具体的に立ち入りすぎかもしれませんけれども,そういう具体的なレベルでの関連性があるのかどうかというのは,それぞれの制度を考えた上で,さらに最後,両者の関係性というようなことで考えていくというのがよろしいのではないかと思っているところです。
○大村部会長 ありがとうございました。先ほどの窪田委員の御発言とほぼ対応する形で御意見を頂いたと思います。
  特に最後の3点目ですね。養育費と面会交流について,大枠での捉え方と個別の制度のレベルでの捉え方とを区別して考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をしております。
  それでは,杉山幹事,落合委員の順番でお願いいたします。

○杉山幹事 幹事の杉山でございます。
  私も,これまでのヒアリングで様々な立場の方からの御意見をうかがう機会を頂き,大変勉強になりましたため,感謝申し上げたいと思います。
  私も,このヒアリングに対する感想というよりは,むしろこれからの進め方に関しての意見になりますが,また,既に窪田先生と沖野先生からいただいた御意見とほぼ同じようなものになりますけれども,私自身も,基本的に検討対象を民事法制に絞って,また,事務局が提案されたように,養育費,面会交流の問題からまず議論するという方向性に,基本的に賛成しております。
  先ほど事務局から御紹介がありましたように,例えば,養育費の問題に関しましては,公的な支援とか,あるいは公的な徴収や立替制度の在り方について,他の省庁との協働の上で検討が進められているようですが,少なくとも民事法制,民事執行とか家事手続などの見直しについては,こちらの法制審に委ねられていると理解しておりますので,民事法制については,こちらで議論をするということが必要であると思います。
  また,場合によっては,養育費とか面会交流の問題でも,手続的な面を先に議論するということもあり得るのではないかとは思っております。例えば,養育費の請求権が子の権利か親の権利なのかとか,両親が別居中の取扱いをどうしたらいいのかといったような問題もありますが,実体法の本質的な論点であって,大きく意見の対立する可能性もあります。これらが最終的にどのような方向性になったとしても,手続的な問題,つまり,養育費回収ができない人について手続的な手当てを施すべきだという方向性については,大きな異論はないと思われますし,手続自体は,実体法の議論からはニュートラルなものとして作ることが可能であると理解をしておりますので,場合によっては,手続的な問題から議論を始めて,実体面の方向性がまとまっていけば,その影響が及ぶ範囲で手続についても再度見直すのがよいと思います。一読,二読という機会もありますし,前提が変われば,別途個別に修正していくことはあり得ると思います。
  また,特に養育費に関しましては,これまでのヒアリングの中でも,実際に払われていない実情があることが伺われましたし,これまでにも養育費があまり払われていないことを示す調査があったり,その原因や具体的な問題点が明らかになっているので,議論がしやすいと思います。ヒアリングとか本日の御意見でもあったように,特に面会交流に関して,強制をするのはどうかというような御意見などもあるかと思いますが,他方で,履行を求めたくても,それが実現できないという現状があるのであれば,それを改善する必要性があることは確かでありますので,この問題を先に議論するというのがいいと思います。
  もちろん,これも前の御意見にあったように,面会交流が強制にどれほどなじむのかとか,あるいは後に事情の変更があったらどうするのかとかいったような問題や,養育費と面会交流について今後手続を構築するに当たって考慮要素が違うのかといった点については,今後具体的に詰めていけばいいと思いますけれども,少なくともこれらの問題については,方向性について,この部会全体で大きな意見の対立が出てこないのではないかと思われ,具体的に議論を進めていくのになじみやすいと思います。
  また,これも,ほかの先生方の考えと一緒でありますけれども,海外法制に関して,一覧表を頂くというのは非常に役に立つ,参考になると思っております。他方で,例えば,養育費の回収方法の問題一つをとっても,公的徴収の在り方などについて様々な法制度を並べて比較してみたことはあるのですけれども,その背景にある制度,手続法も実体法も含めて,さらには裁判制度も含めて,どこが違っているからこのように違っているのかというところから立ち返って考えないと結局分からない問題であり,そうすると,たとえ1か国であっても,かなり比較は難しいと思いました。それもありますので,一覧表は参考にさせていただいて,必要があれば少し深めていく,方法はヒアリングなのか文献調査なのか,どれがよいのはちょっと分かりませんけれども,詳細に見ていくのがいいのではないかと思っています。
○大村部会長 ありがとうございました。最初に全体として,事務局で一案を作られたような進め方に賛同するというご趣旨の御発言があったと思いますが,具体的な問題については,養育費から始めるということで,手続を先にすることも考えられるという御発言がありましたけれども,狭い意味での手続ということではなくて,何をどうするのかという問題で,具体的な議論ができて合意が形成されやすいものからやっていったらいいのではないかという御趣旨の発言としてと伺いました。
  外国法については,もう既に御指摘があるところですが,なかなか扱いが難しいので,慎重な対応が必要ではないかという御意見であると理解しました。
  落合委員,それから菅原委員に,お願いしたいと思います。


○落合委員 落合です。
  ちょっと不協和音というような感じになるかもしれないんですけれども,お話を伺っていて,法学者の方たちのカルチャーってこういうのなのかっていうのを感じました。それは,世間の多くの人たちも思うかもしれませんので,何を思ったかを共有させてください。
  一つは,法制度を変えるのが目的なのだから,支援とかのことは二の次というか,ということになるというような話をされているわけですけれども,社会を変えるために法を変える話をしているんですよね。この社会で今何か問題が起きているから,法を変えることでそれが解決できると思っているから,これを議論しているんですよね。例えば,離婚して子どもを育てているお母さんが経済的に苦しいと,子どもを育てるのが大変だということで,養育費の徴収の仕方を法律にどう書き込むかという話をしているんですよね。そうであれば,夫から取り立てられないときは公的な支援でとか,幾つかの方法でその問題を解決することを考えて,そのうちの一つとして,この法改正の話をしているんだと思うんですね。
  法の社会的な機能というのは,法社会学の中でもそういうふうに論じられていると思いますけれども,社会の何をどう変えるために,今,法を変えるんだと話をしていないと,やはり何をしているのか,ちょっとはたから見て分からないと思うんです。ですから,支援の話とか運用の話とか,そこは必ずしも切り離さなくていいというような論調もありますけれども,基本的には切り離さないものだろうと。ただ,法の整合性を議論するときには,テクニカルに法だけの議論をすればいいと思うんですけれども,全体としては,一体として話さなかったら何の意味があるんだと,私は思います。
  不協和音だと思うんですけれども,社会科学一般をやっている者,あるいはこの社会を生きている者としては,そういうふうに思うということを,ちょっとお伝えしたいんです。
  それから,外国法の話ですけれども,すごい一国主義ですね,今日の御議論は。法学が一国主義なのは知っていますし,それは,法が国ごとにできているから,当然そうなんだというのも知っていますけれども,外国法とすり合わす必要もあります。今や人の移動も多いし,家族も国際化していますので,結構それで問題が起きているわけですよね,連れ去りのこととか。日本はそういうことで批判をされているわけですよね。ですから,国際的にハーモナイズするというのは,やはり一つ考えておくべきことだと思うんです。世界の中のガラパゴスにならないために。だから,日本の中の法を変えるために,参考になるから見る,でも十分に参考にするほど深くは見られないから,余り見なくていいとか,そういう議論をしているのではなくて,国際的な家族が生まれているときに,ある程度,これから世界のルールが向かっていく先というのを想像して,そこに一緒に進んでいくように作っていかないと,浮いてしまうと思います。
  こんなことは,本当は言わずもがなだと思うんですけれども,そういうことが海外の例を見るときの目的なんだということを,言葉にしておきたいと思いました。
  あと,ヒアリングについてですけれども,本当は皆さんも多分遠慮して言っていらっしゃるんでしょうが,今までの実務でもっと御存じなんですよね。みんなで共通して話せる事例をということで,ヒアリングをさせていただいたということだと思っていまして,実態が分かってよかったということではないと,ちょっと気を付けて話をしていった方がいいように思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。落合委員は最初に不協和音ですが,とおっしゃいましたけれども,あえて挑発的な御発言をされたと受け止めております。
  ほかの委員,幹事から反論もおありかもしれませんけれども,私が今伺ったところを受け止めて,整理をさせていただきたいと思います。
  まず,最後の点です。ヒアリング,それから外国法調査もそうですが,それで何か客観的な,私たちが議論のベースにできるような確かなものが分かるのかというと,それは必ずしも分からないという認識は皆さんもお持ちなのだろうと思います。特に外国法について皆さんがそういうことをおっしゃったんだろうと思いますけれども,法改正を考える上で,私たちが気付かなかったことに気付くきっかけになる,発想の幅を広げることができる,そうしたものとして,ヒアリングや外国法の調査というのを受け止めておられるのではないかと思います。ここまで委員,幹事からは,こういうことに気付いた,こう考えるきっかけになったという御発言があったものと理解しております。ですから,外国法の調査をこの後に行うという場合についても,どういう目的でこれを行うかということについて考える必要があるのだろうと思って伺いました。
  それから,前の点ですけれども,これも落合委員は,わざとおっしゃったんだと思いますが,皆さん,この部会で民法あるいは民事手続法について立法に向けての議論をするというときに,法改正以外のことについて全く考慮に入れないとおっしゃっている方は,おそらく一人もおられなかったと思います。ただ,有益だろうと思われる基礎作業を全てやった上でないと立法はできないと考えると,今回のミッションを果たすことは難しいのではないかという御意見であったと受け止めました。
  これは,先ほどもお話がありましたけれども,DV問題については内閣府でその検討が進んでいる,子どもの福祉に関しては厚労省で検討がされているということで,それぞれ異なる立法で子どもの問題について対応がなされつつあるので,それぞれと連携しながらやっていくことが必要だろうということで,先ほどの御発言があったと受け止めました。それはそれで必要なことで,それぞれがそれぞれの立場から考えるときに,どこまでのものを視野に入れて行くのかということではないかと理解しております。
  答申に向けて報告書を書くときに,純粋な立法上の提案以外のことを,どの程度どのような形で書けるのかという問題は,報告書の書き方の問題としてもありますので,後の方で御検討をいただきたいと思います。
  ここでさらに立ち入った論争をするのはなかなか難しいと思いますので,落合委員,今のように受け止めさせていただくということでよろしいでしょうか。
○落合委員 はい,どうもありがとうございました。
  おっしゃるように,論点がはっきりするようにわざと言いました。ありがとうございます。
○大村部会長 ありがとうございます。


○菅原委員 菅原です,よろしくお願いします。
  ヒアリングについては,ほかの委員と共通するところが非常に多いのですけれども,発達心理学の立場で参加させていただいているという点で,特に前半のところでお話を頂戴しました,離婚を経験したお子さんの立場からという3名の方のお話からは,これまで様々発達心理学の中でも言われてきた,子どもにとって養育費の問題,経済の問題が重要であるということ,それから希望や事情に沿って面会交流が自由にできることの大切さ,また発達段階によって子どもの希望や事情はいろいろ変わっていくということを踏まえることの重要さを確認することができました。また,子どもが相談できる場所があることが大事だということも出てきましたが,その辺りにつきましては,子どもにとって重要なことであるというエビデンスも既にあるところですので,今後の法制度の制定のところに生かしていただきたいと思います。
  明石市の泉市長のお話も大変感銘を受けました。非常に細やかな制度をもう作っていらっしゃって,地方行政の中で実行されているというところで感銘を受けたのですが,泉市長が出された資料の中に,法制審議会へのお願いというものがありまして,1番目に子どもの権利の明確化というところで3点挙げられていました。子どもの権利としての養育費の請求権と面会交流を求める権利というのを明記してほしいということ,また離婚に際しての子どもの意見表明権の保障をしてほしいという3点でした。この辺り,私は法制度の専門家ではないので,今回の改正の中でどう生かされるのか詳しくは分からないのですけれども,是非これらが実現される方向性で,子どもの権利として位置付けていただけるような法制度の議論を本部会でしていくことが必要だと思っております。
  今後の進め方ですが,親権,監護権,それから未成年養子の問題,財産分与権は全て離婚後の子どもにとって非常に重要なことですので,一通り議論を先に進めていただいて,適宜必要なものはまたヒアリングをしていくという方法に賛成です。
  それから,海外の制度については非常に奥が深いことだということも分かりましたが,やはり一覧表にしていただいたガイドがあると,私たち領域外の者もおりますので,有り難いと思います。その際に,公的な支援の制度を持っている国については,そのことも一緒に一覧表に入れていただけると大変有り難いと思いました。
  以上です,よろしくお願いいたします。
○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングについての感想のほか,進め方として,一通りまず全体を見渡すことが必要で,子どもの権利という観点から,そうすることが望ましいのではないかという御意見,それから,外国法については,一覧性の高い資料というのが欲しいという御要望を頂きました。
  そのほか,御発言いかがでございましょうか。はじめに,ヒアリングについての感想をと申し上げましたので,最初の方で発言された委員,幹事の中には,進め方ということであれば,また別途意見があるという方もいらっしゃると思いますので,そういう方々の御意見も含めて御意見を頂ければと思いますが,さらに御発言はございますでしょうか。

○武田委員 進め方ということで,ちゃぶ台をひっくり返すわけではないんですが,私は元々,やはり離婚後の子の養育の在り方,ここは議論が錯綜するとか空中戦になるとかという御指摘はそのとおりだと思うんですけれども,本来はそこから方法論として入り,面会交流,養育費ということには個別論として入っていく,そういうアプローチの方が元々はよいのではないかと思っておりました。ただ,今日の先生方のお話をいろいろ聞きまして,養育費と面会交流から分けて検討するという流れについては,それはそれでアプローチとしてよろしいかと思いますので,賛同いたします。
  これも委員の先生方皆さんおっしゃっていただきましたが,面会交流,養育費ともにどちらも重要ということの共通認識の上で,進め方をどう進めていくのかというお話になろうかと思いますので,大筋後半の先生方がおっしゃっていただいた進め方に賛同をいたしたいと思います。
  ただ,やはり私どもは当事者団体でございますので,この養育費と面会交流の関係ということに1点だけ,意見を述べさせていただきたいと思います。
  養育費の重要性,全く異論ございません。子のための養育を考えた場合,養育費という経済面,非常に重要です,ただ,それのみで本当によいのかというところが,非常に私どもが昔から懸念を持っているところでございます。面会交流ができなければ養育費を支払う必要はないと,こういう条件付けは,当然間違いだと思っています。しかしながら,一方,養育費について合意がある,合意どおりに遅滞なく養育費を払っている,しかしながら,一方,面会交流に関しては,裁判所の調停に話合いを委ねて,約1年は合意に至らない,合意に至るまで1年掛かる。合意した場合も,月1回2時間程度という,現状の相場かと思っています。昨今,1年以上,このコロナの影響で親子の交流が断絶してしまっているというケースも非常に多くなっています。法務省さんからの1年前に見解が出ましたけれども,あれで改善する兆しは正直ございません。そういう相談が今,止まらないような状況であること,当然DVはない前提でのお話でございます。こんな中,心がおかしくなったり,それによってリストラされたり職を失う,こういう例も散見されます。
  先生方にお伝えしたいのは,子どもとの交流が多ければ養育費が適切に支払われるという関係,これは,私がこれまで別居親を支援してきた中,実感としてございます。子どもと離れて暮らす親の気持ちとして,是非先生方に御理解いただきたい。すなわち,面会交流を適切に実施するということは,養育費の確保にもつながる。養育費を数年払って終わりとは思っておりません。やはり支払い続けること,これが非常に重要だと思っております。そういった継続的な支払を確保するという観点からも,面会交流の適切な実施を図ることは重要なのではなかろうかと,こんなふうに思っております。
  また,先に面会交流がなされるケース,安全・安心にきちんと面会交流ができたということになりますれば,養育費の請求をちゅうちょしていた監護親の皆さんに,安心して養育費を請求する動機付けにもなろうかと思っています。したがって,子どもたちのためにも,具体的な議論の順序は別ですけれども,関連付けて議論させて終着点に至るのがよいと,このようなことを皆さんにお伝えしたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費と面会交流とを一応分けて議論をするということでも構わないけれども,しかし,その間には関連性があるということについては,留意をして議論を続けたいという御発言として受け止めさせていただきました。
  ほかにも御発言があろうかと思いますけれども,今,具体的な議論の順番の話も出ております。部会の最初で説明がありましたが,事務当局の方で議論の進め方のたたき台として,ごく大まかな一案を作っていただいておりますので,具体的なイメージを持ってこの後のことを考えるために,これについて説明していただいて,更に御意見を頂いたらいかがかと思います。事務当局から御説明を頂けますか。

○藤田幹事 それでは,家族法制部会の進め方に関し,お手元の事務局たたき台一案について,簡単に御説明いたします。
  これは,この部会の全体の進行について大枠のイメージをお持ちいただくとともに,これから具体的にどういった形で検討を進めていただくかの御議論の参考に,これまでの部会で皆様からいただいた御指摘等を踏まえ,事務局で飽くまで一案としてたたき台をお示しするものです。これも参考にしつつ,自由に御議論を頂ければと思っております。
  この部会は本日が第4回会議となり,これまでに養育費の検討,面会交流の検討に着手して,事務局から部会資料3を出させていただいております。
  今後の進め方として,第5回以降ですが,積み残しの課題のほか,これまでの議論では,海外法制の情報,それから発達心理学といった関連の専門分野について,今回の検討に関連してヒアリングを実施してはどうかという御意見が出たことを踏まえ,まず,専門家ヒアリング等を位置付けております。ただ,本日に御議論があったとおり,どういう位置付け,目的の下で海外法制等のヒアリングを実施するのかについては,もう少し詰める必要があるかと拝聴したところです。
  第6回以降の議論ですが,法制審の全体的進行として,一通り議論してそのまま終わるというような扱いではありません。基本法制の在り方という重要な課題を御議論して頂くということになりますと,まずは一通り,一巡目の検討をして,さらにそれを反映してブラッシュアップした形で二巡目の検討に入っていくことになります。さらに,検討のプロセスとして,中間的な方向性を示す中間試案の作成とそれに関するパブリック・コメントの実施,さらには最終的な法案化を見据えた要綱案の取りまとめということで,段階を追って議論をしていただくことが通例となります。そういう意味では,一巡目の検討というのは,事務局から第1回会議に検討事項の例を示したように,既にこれまでに指摘のある論点や課題について一通り幅広く御議論をしていただくということが考えられます。その観点から,年内に予定されている第6回から第10回までの会に順に検討を進めるという形を,一つの進め方の案としてお示ししているところです。
  具体的には,第6回から順に,離婚後の子の養育に関する問題,子の意思・意見の考慮に関する問題,離婚制度以外の関連する問題の検討,未成年養子制度の検討,財産分与制度の検討と,五つの課題を掲げております。これは,今回の諮問の中核である離婚という事象に着目して,離婚時,離婚後,さらにそれを通じて関わる子どもの意思等に関する課題を初めに挙げた上で,周辺的な,例えば別居の問題といった御指摘もこれまであったかと思いますが,そういったものが,離婚制度以外の関連する問題ということになろうと思います。さらに,父母の再婚に伴う未成年養子の問題,さらには,広い意味で子の成長に資する夫婦間の財産分与を挙げています。こういった課題をどういった形でどのように議論するかということにつき,この場で御議論いただければと思っております。
  事務局からの説明は,以上です。
○大村部会長 ありがとうございました。今,説明があったとおりですけれども,皆さんから御意見を頂く前提として,私の方で不正確なところがあるかもしれませんが,多少補足させていただきたいと思います。
  委員,幹事から既に御発言があったところですけれども,本部会では最終的には,法改正に向けての要綱案を取りまとめることになります。要綱案は,諮問に応じた民事法の改正の原案の形を取ったもので,条文に非常に近い形のものを答申することを目指すことになります。これには補足説明が,事務当局によって付けられるのが通例です。その中では,なぜこのような立法が提案されるのか,このような立法をする前提として,現行法にどのような問題があるのか,改正をすることになると,どういう問題が生じそれについてはどう考えるのかといったことについて解説がなされることになります。このように最終的には,民事法制に関する立法案を提案するということになりますが,それ以外のことにつきましては,補足説明の中で,立法案を提案する際に考慮された事情として書き込まれる,こうしたイメージで捉えていただけるとよろしいかと思います。
  最終的な要綱案の取りまとめに至るまでに,先ほどお示しいただいたように,何度か全体を見直すことになります。第一読会,第二読会,第三読会などと呼ぶこともございますけれども,まず中間試案の取りまとめに向けて議論を行う。その後は,この中間試案をパブリックコメントに付して,パブリックコメントで出てきた意見も考慮しつつ,順次問題を絞り込んでいって,最終的な案を取りまとめる。こういうプロセスで議論を進めるというのが通例かと思います。
  そこで,一巡目の議論にあたっては,何を問題にして,どのようなことについて提案をしていくのかということを,おおよそ定めていくということが,大きな課題になるかと思います。事務当局からは,現在議論を始めたところである養育費,面会交流の問題に関し,次回も部会資料3について更に検討した上で,夏休み明けからはその他の問題について一通り順番に見ていくという案が示されているということかと思います。
  これは,最初に藤田幹事から話がありましたように,たたき台としての一つの案ということですので,自由に御議論を頂ければと思います。
  大きな方向性については,先ほどから幾つかの案が出ていて,ある一定の方向のようなものは,大まかには示されているように思いますけれども,皆さんからは,それを踏まえたとして,様々な御意見が更にあろうかと思いますので,御意見を頂ければと思います。
  どなたからでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。
  それでは,大石委員,原田委員の順でお願いいたします。

○大石委員 千葉大の大石です。
  最初に,菅原委員から御報告をいただきたいという話をしましたが,最終的な答申に向けて,法律,法体系を整えていくということと,ソフト面といいますか,それを可能にするような体制とか支援作りというのは,車の両輪のようなものであり,両方とも共に進めていかなければいけないと思います。
  その中で,子どもの意見ですとか子どもを中心に据えた新しい制度を実現するに当たっては,子ども自身の意見をどのように聴取する体制を整えるのかとか,どのように聞くことが可能なのかとか,そういったことについての知見をやはり必要としていると思いますし,そういった人材育成も必要ということは,明石市長からのお話でも伺ったところです。私が菅原委員にお話を伺いたいとお願いしましたのは,特にそれが念頭に,まずどのような専門性を持って,子どもの気持ちを聞いたりとか,意見が表明できるような環境を整えるのかとか,それが実現しない場合には,子どもの発達にどのような影響が及ぶのかといったことについて,早いうちに知見をお伺いしたいという希望がありましたものですので,最初にあのようにお話をしたという次第です。ちょっと付け加えさせていただきたいと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。御希望は承りました。
  今の御発言を頂いて,先ほどから挙がっている幾つかの項目のうち,海外法制のヒアリングと子どもの心理面についてのヒアリングについては次回にということになっていますので,この部分についてまずお諮りしたいと思います。原田委員の御発言がもしそこに関わるのであれば,御発言を頂いた上で考えたいと思いますが,それ以外のことに関わるのであれば,私がもう少し話してよろしいですか。
  分かりました,ありがとうございます。
  それでは,進行について,決められそうなところから御提案していきたいと思います。
  まず,大石委員から,菅原委員にお話を頂きたいというお話がありました。この部会のメンバーであられるので,お話をしていただけると言っていただければ,次回のセッティングはこの場で済みますので,もしお話しいただけるということであれば,次回にお話を頂いたらいかがかと思っております。菅原委員,もしお願いをしたら,お引き受けいただくことは可能でしょうか。
○菅原委員 微力ながら,皆さんの御希望があれば。
○大村部会長 ありがとうございます。お引受けを頂けるということですので,もし御異論がなければ,そのようにしてはいかがかと思います。


 赤石委員,どうぞ。
○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。
  菅原委員が家族法研究会で御発言くださっていたレジュメ等を拝見させていただきました。すごくいろいろな研究データに基づいての御発言だったかと思います。
  私がやはり知りたいのは,親が葛藤状態にあるときに,子どもが面会ですとかしたときに,果たしてそれが利益になる,利益にならないというところの状況の調査があるのかどうか,ないのであれば,ないで結構なんですけれども,そこが何かちょっとオブラートのようになっていたので,是非その点をきちんと知りたいなと思っておりまして。元々コミュニケーションできて仲がよければ,いい結果が得られるのは当たり前,ごめんなさい,そんな素人の言い方をしてあれなんですけれども,そうではない場合にどうしたらいいんだろうというところを,私たちが苦慮しているんだと思いますので,そこが,ある程度手探りでも分かるといいなと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。今のような御要望が出ておりますので,それも踏まえてお話を頂くということでお願いしてよろしいでしょうか。赤石委員,そのような形でお願いするということでよろしいですか。
 菅原委員で御準備を頂けるということであれば,それでお願いしたいのですが。
○菅原委員 はい,かしこまりました。
○大村部会長 では,そのようにさせていただきます。
○佐野幹事 もし菅原先生に,こういったところも聞きたいということが事前にあれば,事務局の方にお送りさせていただく,もちろん答えていただけるかどうか分かりませんけれども,そのような形でよろしいですか。
○大村部会長 菅原委員には,もしかすると皆さんから更に御希望が出るかもしれませんが,可能な範囲で御勘案を頂くという形でよろしいでしょうか。
○菅原委員 はい,可能な範囲で対応したいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。では,そのようにさせていただきます。
  次に,外国法ですけれども,これについて本格的なヒアリングをするということになると,これは大変なことになるということで,少し慎重に考えた方がよいのではないかという意見が,かなりたくさん出たと認識しております。
  他方で,今までのヒアリングと同様,この先法改正を考えていく上で,外国法について一定のことを知っておきたいとお考えになられる委員,幹事の方も少なくないと思います。
  民法専門の方々は,それぞれ諸外国の制度について御存じのことが多いと思いますけれども,部会のメンバー全員がそれを共有しているわけではございませんので,一度,御了解が得れるようであれば,次回のうちの一定の時間を割いて,ニュートラルな形で制度がどうなっているのかについて御報告していただき,それとの関係で,皆さんの御関心に応じて質問をしていただいて可能な範囲でお答えをいただくことをする。あとは,特定の点について何か必要が生じた場合に,どなたかに来ていただいてその点に関する知識を補う。こうした形で外国法調査をしたらいかがかと思います。
  既にある調査について,一覧表を作っていただくということも,できれば事務当局にお願いしたいと思います。一覧表は便利ですけれども,しかし,読み取るのはそう簡単でもないところがありますので,それだけで外国法についての一定の理解が持てるかというと,それも難しいところです。
  そういう限界がいろいろあることを前提にして,外国法について少し聞いてみたらどうかと思いますが,窪田委員から手が挙がっていますので,御意見を伺いたいと思います。

○窪田委員 外国法の部分について,追加でお願いということになるのかもしれませんが,一覧表を作るのは大変だろうと思いますし,論点ごとに作るとしても,かなり整理が大変なのだろうと思いますが,それ以外に一つお願いしたいのは,先ほども少し出ておりましたが,面会交流についてなのか養育費の問題についてなのか,問題ごとによって違いはあるとは思うのですけれども,外国法についての資料というのは,既に文献資料としてある程度あるかと思います。
  先ほど出ていた話の中では,場合によっては,参考文献として挙げてということではあったのですが,そうした資料を参考文献として挙げられても,実際にアクセスするというのは,全員にとってそれほど簡単であるわけでもないと思いますので,法的な問題が生じない形で,うまくそれを委員に配布していただくようなことができないかなという,これはもう単純な希望ということでございます。
○戒能委員 今の外国法制なんですけれども,一覧表も必要だと,大事だと思うんですが,もう一つ私が希望しているのは,特に面会交流に関しての新しい動きです。見直しということになって,英国司法省から報告書が2020年6月に出ております。それは,日本でいう家裁の実務の検証をしているわけですね。今までは親子関係の継続性というのが子の福祉を促進するんだという推定規定が児童法にあったんですが,それが,実際の運用でどうなのかということを検証しています。そのきっかけとなったのが,2004年と2016年に出ているんですが,いろいろな事件が起きており,事件の報告書が,ウィメンズエイドという,日本でいう女性支援の団体の連合があるんですが,そこがまとめて,それに裁判官が反応をして,実際どうなっているんだろうか,どこが問題なんだろうかということをかなり,検証しているという報告書が出ています。そうすると,これは,今の日本にとても参考になるのではないかと考えます。
  ですから,報告書を全部自分で読みなさいというのは結構大変なものですから,専門家がもしいらっしゃるならば御紹介を頂く。それを基に議論をするということも,大変有益なんではないだろうかと考えるのですね。ですから,単にこういう法制度がありますということではない,そういう動きも紹介して,共有をするということも必要なのではないかと考えております。
○大村部会長 ありがとうございます。


○赤石委員 私,先ほど,日本の家裁実務について,やはり振り返りが必要ですということを申し上げて,多分,皆さんも結構御賛同いただけるのではないかと思います。だから,それを議論の中に持ち込むときに,さらに,今,戒能先生おっしゃってくださったように,英国あるいはオーストラリアですね,2006年に法改正をして,かなり両親が均等に子どもの時間を持つみたいな法改正をした後に,2011年,2019年と二度の法改正をしている。これはなぜ起こったのか,やはりいろいろな弊害が起きてきたからだということを聞いております。
  こういう動きを踏まえて,日本は一体今,どこに向かっていったらいいのかということが見えてくるだろうと思いますので,日本の振り返りと,それから海外でのこういった新しい動きについてのヒアリングというのが,多分両方があいまって,私どもが子どもを本当に大切に育てられる,そういう社会にするために,参考になるのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。幾つかの御発言を頂いたかと思います。
  私が申し上げたのは,ともかく最小限の事柄であっても,まず次回に情報を共有しましょうということでした。その上で,戒能委員からは,イギリスの報告書を紹介してほしいという御要望があり,赤石委員からは,最近の動向に焦点を当てた形での外国法を知りたい,あるいは日本の状況も併せて知りたいという御発言があったかと思います。
  最近動きがあったようなところについては,ヒアリングの中に入れていただき,こういう動きがあったということをご紹介いただいて,それについて皆さんから質問をしていただき,その背景についての御発言を聞くことで,差し当たり対応できるかと思います。他方,外国の報告書の内容や,家裁の実務状況ということについては,次回直ちにということにはならないのかもしれませんが,それは,可能な時期に対応を検討していただくといった方向で,事務当局の方で考えてもらえますか。
○藤田幹事 いろいろと貴重な御示唆をいただいたかと思っていますので,今,部会長におまとめいただいたような形で,事務局としてできる範囲で,次回に向けての準備は可能かと思います。
○大村部会長 実務については,裁判所の方とも相談,調整が必要と思いますので,多少時間が掛かるかもしれませんし,報告書もそう簡単には対応できないということがあると思いますので,少し時間を頂ければと思います。
  そういう留保した上で,次回,一定の時間を使って外国法について話を聞くということについては,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
  どの国を対象に具体的にやるかということにつきましては,先ほどから具体的な国の名前も挙がっています。多少の時間がありますので,御希望があれば事務当局まで早急に寄せていただき,次回の使える時間との関係で絞り込みが必要ではありますが,それについてはお任せいただくということで調整させていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  また,次回の会議に来ていただくという形ではなく,資料を出していただく方法も含めて,検討させていただければと思います。
 外国法については以上のような扱いにさせていただきます。
  そのほか,家裁実務やその他の資料についても,さらにこういうものが必要ではないのかという御要望も出てくるかと思います。それは,随時皆さんの御意見を伺って,可能な範囲で組み込んでいくことにしてはいかがかと思いますが,これは,全体の進行にも関わってまいります。
  全体の進行については,取りあえず,外国法のヒアリングと残っている養育費と面会交流の議論は次回に行うとして,夏休み以降にこの部会で扱う課題を順に見ていこうというのが,事務当局の今後の進行案になっています。その過程で,繰り返しになりますが,必要であればヒアリングや調査等を行っていくということで進めることについて御意見を伺いたいと思います。
 先ほどから原田委員に待っていただいたので,まず原田委員から御意見を頂きたいと思います。

○原田委員 手を挙げたのは,海外調査の件で,一覧表のことなんですけれども,すみません,事務局に御負担を掛けるとは思いますが,先ほど公的支援についても入れてほしいという御意見があったと思いますが,それを支えている,例えば,裁判所の物的な規模とか事件数とか,そういうものも入れていただけると有り難いなと。難しい注文かもしれませんが,一言付け加えさせていただいて。
 今後の進行の問題ですけれども,6回から10回の間に5項目入っていますが,DVをどう切り分けるかというところについて,検討会では安全・安心な面会交流ということが言われていましたけれども,では,どうやって安全・安心な面会交流を確保するのかというところの議論がちょっと少なかったのかなと思っています。
  この中で,例えば,子の意思・意見の考慮に関する問題というのは,全てのところに関わってくる問題だと思うんですけれども,DVをどう切り分けるかというところも,やはり全てのところに関わってくる問題だと思いますので,それを1項目入れていただきたいなと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。DVについて全体的にどうするかということは,先ほども話題になりましたが,内閣府の方で対応いただくことも必要になるかと思いますけれども,この部会で扱う民事法の問題についても,DVが問題になったときに,それをどのように考えるのかということについては,どこかでまとまった形で議論をしたいというのが,今の原田委員の御希望であると捉えてよろしいでしょうか。
  これは,今回のたたき台の中でいうと,どういう位置付けになりますか。
○藤田幹事 事務局です。
  原田委員から御指摘があったDVの問題というのは,我々としても当然念頭にございます。このお示しした進め方の一案では,独立の課題というより,各検討課題のいずれでもそれぞれ問題になると考えており,その前提で位置付けております。具体的には,これから御議論いただく養育費と面会交流の場面でも問題になってまいりますし,その後の離婚後の子の養育から財産分与まで,全ての検討課題のところで,それぞれDVの取扱いや対応が問題になってくるかと思っております。そこで,このたたき台では,各課題,論点のところでそれぞれDVの問題を関連付け必要に応じ取り上げようと,そういう認識で整理していたところです。
○大村部会長 今のような御説明ですけれども,いかがでしょうか。

○赤石委員 DVの問題は,全てに関わるというのはそのとおりでございます。かつ,内閣府がこの間の報告書の中でも,面会交流については慎重にすべきだという,新しい報告書をまとめていたと思います。では,あれが,一つ一つの案件にどう考慮されるのかということはかなり難しい,そして,本当に失礼ながら申し上げますけれども,私は,毎年2,000件ぐらいの御相談を受けています。しかし,そこまでそうした深刻なものに接していない方たちが委員になっていらっしゃるのは,事実だと思うんですね。この切迫感がある中では,きちんと事実を聞いていかないといけないので,やはりもう少し,面会交流をして危険にさらされた方たちの声とかは聞いていかないと,議論の参考にならないというのが私の思いですし,お子さんたちが嫌がっていたにもかかわらずお父さんと会うことを,会えば平和なコミュニケーションができるはずというのは大人の論理でして,嫌だと思っている子は,泣き叫んで嫌だと言っているにもかかわらず,決まったがために,母親さえ裏切らなければいけないということになってしまうときだってあるわけですよね。こういう事態を防ぐ手立てがあるのかどうかということを,やはり。
  私どもも,そういう方をここにお招きしたいと本当に思って探しましたけれども,そういうお子さんたちはメンタルヘルスも病んでいて,ここに来ることすらかなわない方たちがいるということなんですよ。それをどうやってこの議論に反映させるのかということは本当に,基本的に大事な視点ですけれども,見逃されてしまうと思っておりますので,是非適宜,私どもも慎重に,かつ,何とかここに来てもメンタルヘルスがやられないような方を選んで,やはりお聞きしていただきたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員と赤石委員から同じ方向の御要望を頂きました。
  そして,スケジュールについてですが,まず,本日は,部会資料3の養育費,それから面会交流の検討を残りの時間でやろうと思っておりましたが,だんだんと時間がなくなっております。次回にはヒアリングを行うということですので,養育費と面会交流について議論をする時間は限られてくるだろうと思います。しかし,この課題は,皆さんが最重要課題の一つとして挙げられていることで,一読の段階で,時間を掛けて意見交換をすることが必要かと思います。
  たたき台では,今後の日程が一応組まれていますけれども,このスケジュールに収まるかどうかは,なかなか読めないところもあります。私自身はなかなかタイトなスケジュールではないかという感触を持っております。事務当局からこの案を示していただいているわけですが,これで収まらないこともあり得ると思っておりまして,令和3年中に1巡目の検討を終えるという点に関しては,多少,持ち越しになる部分が残っても仕方がないのではないかと思っております。それが一つと,DVはどの問題にも関わるということで,それぞれの問題において,事務当局の方では注意をして問題提起をしていくということをおっしゃっていただきましたけれども,そういう議論の後で,やはりまとめて議論する必要があるという御意見が出ることもあろうかと思います。その中で,赤石委員がおっしゃったように,どなたかに来ていただくということが必要かつ可能であるという条件が整えば,そういうことも併せて,更に追加的なセッションを加えるということもありうるかと思っています。そうすると,一巡目の検討が年内に終えるということが,必須のスケジュールなのかということについて,事務当局に御感触を伺っておく必要があろうかと思います。

○藤田幹事 事務局でございます。
  今日お示ししたものも一つのたたき台の案でございまして,スケジュールについて,部会長から御心配いただきましたが,特にいつまでに,どこまでを,ということはございません。ただ,改めて整理しますと,議論する項目,論点がかなり多いなということは確かでございますので,御議論を進めていただくことは必要かと思います。先ほど委員から御指摘あったようなDVの問題は,特に留意をして資料を作成することに努めたいと思っています。ですので,このとおりお進めいただければと思います。
○大村部会長 このとおりというのは,今,私が申し上げたような,一巡目の検討が多少長びくこともやむを得ないという趣旨だと理解してよいですか。
○藤田幹事 スケジュールも含めて,もちろん先のことを考えつつというところはありますけれども,その点はその趣旨で構いません。

○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  DVの問題が非常に重要で多岐にわたるということと,それからDV,ハラスメント,暴力,虐待,こういうことについて,海外と比べても日本の法制とか対策が非常に弱いというのも,私も全く同感です。
  ただ,問題は,やはり家族の法制度を変えるとか,改めていくというときに,DVとか暴力の問題だけではなくて,子どもの権利とか子どもの意思とかということも含めて,私は全体に関わってくる大切な問題だと思っています。そこで,これらの問題は,具体的にどのような場面で全体にどういうふうに関わって,どの程度,どんなふうに配慮しなければいけないかということについて,養育費,面会交流などの取り決め,実施等で議論になってこようと思います。そこで,やはり早く具体的な事項や問題の検討に移って,各箇所や場面でそれぞれのところで,この場面でこういう対策が必要だとか,支援が必要だというのも出てくると思いますので,私は,DVとか子どもの意思だとかということだけに特化して最初に何かを設けるというよりは,議論をして,制度の問題点,課題,運用,そういうことを議論する中で,子どもの意思が全然反映されていないとか,子どもにきちんと説明がなされないとか,それから,怖くて関わりたくないとか,DVが深刻に作用する,リスクがあるとか,そういう問題の取り上げ方もあるのではないかと思います。もちろんモラハラでも出てくると思います。
  それをまずは議論した上で,そこで出てきた問題をどういうふうに,制度一般の中でどう取り上げるか,それから,先ほど赤石さんからも出ていた問題というのは,正に個別ケースでどう対応するかということは,実務上もどんな法制度を作っても出てくるので,その辺りを法制度一般の中でどういうふうに配慮していくかという,制度設計をするときにどうするかという問題と,それから個別ケースというのは非常に多様なものがあって,それに対して柔軟に対応しないといけないというは,少し区別して考えてもよいのではないか。個別案件では緊急性は非常に高いという問題があるので,法制度一般の設計の見直し,リスクのある個別事案への対応については,その辺りを少し切り分けて,対応した方がいいだろうと思います。
  個別ケースではかなり深刻な問題が出てくるということなので,出てきたときにどう対応するか,法制度一般の制度設計でどうするか,個別の緊急性を要するもので対応がまずかったり,いろいろな問題があるということは,制度設計の中にも出てくると思うので,そういうことをやりながら,個別にその問題について特化して,審議を集中してやるべきだということになったら,ヒアリングも海外の法制も必要に応じてやる,いろいろな知見を調べるなり,是非,必要に応じて柔軟に臨機応変にやっていくということでいいのかなと思っています。
  議論の後ろがそれほど切られていないということも,ある程度,分かりましたので,一通り議論をしながら具体的な問題,どの場面でどういうリスクがあって,どういう制度になるとどういう問題点があるのかという中で,DVとか子どもの意向をどうやって酌んでいくかということで議論してみる。そして,これらは非常に重要だと思いますので,取りあえず具体的な議論を進めてみた上で,特化して取り上げる必要があれば,子どもの権利というものをどういうふうな制度設計の中で取り入れていくとか,DVの問題に対して民事法制の中でもどうやるべきかということを議論した方がいいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。各論の中で議論することでまず対応して,その上で,必要があれば追加のセッション等を設けるということでしょうか。
○棚村委員 いずれにせよ,必要な論点,重要論点だと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。

○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。
  私と棚村先生は何年来のお付合いで大変仲がよいということを言った上で,前回と今回はちょっと意見が違うということをお伝えしたいと思います。
  やはり海外の法制度は,いろいろな事件が起こって見直しが始まりました。オーストラリアでは,4歳のお子さんが面会交流中に橋の上から投げられ殺されてしまったという事件がございました。英国もいろいろな深刻な事件があったわけです。日本はそれを学んでいかなければいけないというときに,この議論の中で1回はきちんと,2011年から面会交流推進になったときに,どのようなことが起こり,お子さんがどういう思いをしたかということを聞いてくださいと申し上げていることが,やはり予防としてすごく大事であり,そこから照射される各方面のいろいろな取決めがどう見えてくるのかということを,想像力を持って聞いていただきたいということでございます。何か議論を止めたいというようなことではございませんので,是非御理解いただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員も,おっしゃるような議論はすべきではないという御趣旨ではないと思います。
 まず,各論の中で,それぞれの場面でしっかりと議論をした上で,それを通して検討をすべき問題がさらに出てくるかもしれないといった御指摘も,先ほど棚村委員からはございましたけれども,そうした点については,どこかでまとまった検討をすることはあるべしということで進めるというのを,本日の一応の案にしたいと思いますが,この点について更に御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。


○武田委員 質問です。
  今日の議論の中で,親同士,高葛藤のときどうしようと,いろいろ大変だよねと,それはそのとおりだと思います。その葛藤を下げる支援というアプローチもあれば,他方,法制度でどんなふうに担保していくんだという話もあろうかと思っていまして,その辺りの議論はどこに入りますか。
○藤田幹事 事務局でございます。
  武田委員から御指摘あった点は,これからの議論や部会資料の各所で出てくるものではないかと見ております。例えば,部会資料3の中でも,今おっしゃったような葛藤の高い場合に,親である父母に事前にどういった情報を提供するか,又は,取決めであれば,その段階でどういう問題があるか,そういうところをステージごとに課題であるとか,必要な制度の在り方と,それに関連する支援等の問題は取り上げていただければと思っております。
○武田委員 ありがとうございます。
○大村部会長 ほかに御発言いかがでしょうか。
  では,進め方につきましては,今のようなことで進めさせていただくということにさせていただくことにしたいと思います。二巡目の進め方などもございますが,この夏以降の議論の中で,進め方についても随時皆様の御意見を頂いて,更に考えていくことにして,まずは今ここでお諮りしたような形で議論をするということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  その上で,今日,残った時間で,部会資料3について,更に御議論を頂きたいと思っておりますが,ここで10分ほど休憩したいと思います。

          (休     憩)

○大村部会長 再開します。
  今後の進め方について大まかな合意を頂きましたので,具体的な問題に入らせていただきます。
  養育費と,それから面会交流とをあわせた形で資料はできておりますけれども,先ほどからの皆さんの御意見をまとめますと,養育費と面会交流とを一応別々に議論をして,その上で両者の関係について必要な議論をするという御趣旨の御意見が多かったかと思います。
  この二つを別々に議論しつつ大きくばらけてしまわないように,本来ならば1日のセッションの中で,前半で養育費,後半で面会交流といった分け方で議論すればいいと思うのですが,今日はもう1時間しかありませんので,養育費の一部を議論させていただければと思います。ただ,面会交流の議論がずっと後にならないように,次回は面会交流に一定の時間を割き,養育費の残る部分についても時間を割くということにして,それで終わらなければ,さらに持ち越すことあるべしという形で,それぞれ別々に議論をし,そして,二つの問題が大きく離れないという形で進めるということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  では,残りの時間で御意見を頂きたいと思います。部会資料3の中身は,前回御説明を頂きました。第1ははしがきなので,第2から御意見を頂いて,前回は,第2についてある程度御意見を頂いたところで時間切れになっていたかと思います。
  本日は,資料3の第2についての御意見も頂きますが,第3の養育費の取決めの促進・確保,第4の養育費に関する取決め内容に関する規律という点について御議論を頂くことにします。第5は裁判手続になりますが,そこまでは今日は無理かと思いますので,次回送りにさせていただくということでよろしいでしょうか。
  それでは,資料3の第3,第4の部分を中心に,第2についても御意見を伺うということで御発言を頂ければと思いますので,お願いいたします。

○池田委員 弁護士の池田でございます。
  第2からということで,まず,養育費の件について,5ページの①について,意見を申し上げたいと思います。
  ここでは,養育費について,子を権利者とする子の扶養請求権を中心に据えるということが書かれていまして,これに基本的に賛成です。ただ,一つ検討しなければならないことは,手続法の話で,子どもが権利者と明確にされたとしても,現状,行為能力がない,つまり財産処分権がないということで,子どもが自分で家事調停,審判の申立てをするということはできない仕組みになっていますけれども,かといって,特別の代理人を付けるという手続も特段用意されていませんので,そこの代理人を選任できるということも併せて検討しなければいけないかなと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。先ほど杉山幹事から御指摘があったような,手続法上の問題とも関わる問題について,御指摘を頂いたと受け止めました。
  ほかに,今の点と関連してでも結構ですし,そのほかの点でも構いませんので,御発言を頂ければと思います。

○石綿幹事 石綿でございます。
  広い意味では第4に関係する話かと思いますが,休憩前の議論で,養育費については一度決めたら変更もなく払い続ける,それで問題が生じないという御指摘があったかと思うのですが,養育費に関しても,様々な事情で変更を検討する必要性が生じる場面というのはあるのではないかと思います。一つ目は義務者,あるいは権利者の収入の変化が生じた場合,二つ目は子どもに進学等,新たな費用が掛かるような事情や希望が生じたような場合,さらには,8ページの(注1)のような事情,すなわち子どもを監護している親が再婚し,その配偶者と養子縁組をした,あるいは義務者の方が再婚したような場合などに,取決めの変更の必要性があるか,ないかということも,議論をした方がよいのかと思います。これを,第4に絡めて検討するのか,あるいは事情の変更というのは別途取り扱うのかはお任せしますが,その点も検討した方がよいのではないかということです。
○大村部会長 ありがとうございました。先ほど面会交流について,事情が変わったときの手続に関するお話がありましたけれども,養育費もついても事情が変わることがあるので,同様に問題として意識して検討する必要があるのではないかという御指摘を頂きました。
  ほかにはいかがでございましょうか。

○原田委員 検討の必要性という意味では,婚姻費用の請求というときに,その中身として,子どもの扶養請求と片方の配偶者の扶養請求の関係をどうするのかということも,検討の必要が出てくるんだろうと思いました。ちょっと回答は分かりませんが。
○大村部会長 ありがとうございます。婚姻費用との関係というのも,問題としてあるだろうという御指摘で,確かに問題はあるのではないかと思われます。
  水野委員,どうぞ。

○水野委員 7ページの父母間での取決めの促進・確保という表題についての質問です。御存じのように日本の場合は,養育費にしろ財産分与にしろ,全部,私人間の取決め,当事者の夫婦の取決めに任されてしまっている構造になっていますから,ともかく別れたいと望む側が経済的な権利をすべて放棄して離婚合意を得ようとすることも少なくありませんが,これはとても変わった法制で,離婚裁判で裁判官がチェックして妥当な金額が自動的に決まって命じられる国の方が圧倒的に多いわけです。
  そこで,日本法の場合も,あえて夫婦に相談させる取決めの促進・確保というのが大前提になる必要はないのではないかと,私は思っております。養育費については,ある程度機械的に命じられる,それは必ずしも多額でなくてもいいと思うのですが,最低でも自動的にこれだけの額が命じられる,あるいは収入などによって機械的に決められるのであれば,それは自動的に発生するということにし,その内容がいろいろな事情できついということならば,改めて修正の相談をするというような制度設計もあり得ると思うのです。大前提として,必ず取決めの促進という枠組みは,今度も崩されないということで考えるのか,それとも,そういう自動的にある程度一律のものが命じられるという制度設計まで考えてもよいのかという点をお伺いしたいのですが。
○藤田幹事 事務局でございます。
  部会資料3の7ページの第3の見出しで「取決め」という用語を使っておりますが,用語の使い方としては,父母間の協議・合意によるものも取決めですけれども,それ以外の審判等の合意に基づかないものも含め,具体的内容として定められるものを「取決め」と呼称する整理をしています。
  その上で,今,水野委員から御指摘があった点については,部会資料3の11ページを御覧いただいて,③です。ここに今御指摘があったとおり,養育について,これまでは,基本的な合意なり裁判所の判断によって初めて具体的請求権が発生すると整理していた規律を見直し,今回の一つの提案として,一定の場合には自動的,暫定的に具体化する,要するに合意なり裁判手続によらずに養育費請求権が発生するという規律を設けてはどうかということを挙げており,御指摘の点は十分にあり得るものと考えております。
○水野委員 ありがとうございました。


○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  まず,5ページのところで,基本的に未成熟子に対する扶養について,どういうような規定上の位置付けとするか,養育費請求権という言葉も出てきていますし,原田委員も先ほどおっしゃっていました,婚姻費用の分担ということで別居中に請求をするということも出てきます。それから,監護費用の分担ということで,養育費は766条にも出てきますし,扶養請求権ということになると877条と。この三つの請求権を立法の際に一本化して規定をするのか,それとも,各箇所にサテライトみたいな形で分散して置くという位置付けにするのかということも,議論しなければならないと思っています。
  それから,ここに書いてある,未成熟子という,誰が誰に対していつまでということについても,何らかのルールなり明確化をしないと,未成熟子なのか未成年者なのかということで,随分受け取る人によって混乱も起きますので,その辺りも整理をする必要があります。扶養請求権とか養育費請求権といっても,今言ったように,それぞれ一本化して整理をしていくということなのか,各段階に応じて,場面ごとにサテライトのように複数の場所にそれぞれの段階ごとにあって,それを最終的には統一するような概念とか基準とか,そういうものを構想していくのかでも,大分違うと思います。
  それから,決めるときの考慮要素とか基準とかについても,先ほど事情変更とかいろいろ出てきましたけれども,扶養の必要性とか扶養の可能性とかという資産,収入のことと,それから需要みたいなことでバランスを取って最終的には決めることになると思うのですけれども,その考慮要素や考慮事項みたいなことについても,きちっと明確な規定を置く,例えば,再婚した場合とか,収入が減ったとか,リストラされたとか,いろいろな事情をどんなふうに考慮するかというのも,実務の運用でされているのですが,海外の法制を見ても,裁判官の裁量の範囲を定めたり,当事者にとっての予測可能性も確保する意味でも,ある程度基準なりルールというのを議論して明確にする必要はあるのではないかと思います。
  そういうことを議論していると,水野委員がお話ししたように,取決めだとか話合いが可能なケースと,それから非常に困難なケースというのも出てきますから,やはりスタンダードな算定基準,ガイドライン,今も算定表が,裁判所の紛争の効率的な解決とか,目安として作られています。しかし,海外ですと,関係する中央省庁や,司法だけでなく,統計,福祉,教育に関わるようなところも含めて,最新の統計的な数値を持ち寄って,最低限度生活していく上でこれぐらいのお金が必要だという観点から,数年ごとに改定していたりします。今裁判所の用意した簡易算定表は,飽くまでも権利者と義務者の双方の収入を比較して,そして,できるだけ目安として早く問題の解決をしたいというところに主眼があるものなので,どうしても限界があります。その辺りも,今後の議論ですけれども,どういう基準でもって,どこがどんなふうに決めていくかということについても,裁判所だけでなく,国を挙げて考えなければいけないと思います。つまり,取決めをしたり話合いができないケースに対しても,自動的に算定表・計算ツールなどで決まるなど,どういうふうに対応していくかということも重要だと思います。
  それから,紛争や葛藤が非常に高いケースがあるというのは,よく分かるのですけれども,逆に言うと,早期に親ガイダンスとか,教育的な働きかけや情報提供,啓発プログラムに参加するなども大切だと思います。今,厚労省が音頭を取って,東京都なども力を入れてやろうとしています。また,自治体の離婚前後の親支援講座などについても力を入れ始めていますから,是非,離婚前後の親ガイダンス,親支援講座みたいな形で,一定の知識と情報を与えることが重要だと思います。
  いずれにしても,民法の中で養育費とか扶養請求権とか,いろいろな言い方,婚姻費用分担の中にも一部含まれているのですが,それをある程度整理をして考えていかないといけません。場面ごとにその中身が変わるのも困りますし,要するに,誰が誰に対してどんなものを請求するかというときに,民法の規定や条文が不明確で,あちこちに異なって規定されていますと,齟齬とか不統一が生じたりします。今回は,せっかくの機会ですから,そういう実務の現状を知った上で,子どもの権利を本当に実現するためには,一本化して基準も手続もやっていくのがいいのか,それとも,それぞれのところにある制度や規定の中で,できるだけ齟齬や不整合が生じないように統一をしていくというか,そういうような形で,各箇所にある程度置いておくということにするのか。私自身も今,結論は出ていないのですが,学会でこの問題を取り扱って検討してきたときに,海外でもいろいろな対応の仕方があったが,ただ,少なくとも,扶養請求権のところに,未成熟子の扶養の規定がきちっと置かれていないというのは日本だけなものですから,ある意味では,そういう子どもの権利とか子どもの利益が優先されずに,大人の紛争を解決するということで,どちらかというと子どもの利益が後退している部分は,是非この機会に改正をしてはどうかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。幾つか御指摘いただきましたけれども,5ページの①,②について,出来上がりがどうなるかについては幾つかの考え方があるけれども,この際,この点をきちんと整理することが必要ではないかという御指摘と,それから,高葛藤で協議ができないような場合についての対応が一方で必要である,それは水野委員がおっしゃったことだけれども,他方でそうでないカップルに対する支援も必要ではないかという御指摘を頂いたと受け止めました。
  手が挙がっていますので,大石委員,窪田委員の順番でお願いします。


○大石委員 千葉大学の大石です。
  12ページの具体的な養育費について,幾つか御提案というか,させていただきたいんです。まず,養育費の算定方式ですけれども,日弁連からも問題点を指摘する意見書が出ておりますし,そういう水準について,もう少し包括的な,できれば細かい家計のデータなどを用いた検証というのが行われた方がよいと,かねがね思っておりました。ただ,こちらの部会でするのがよいのか,更にもう少し何かブレークダウンした別のパートですればよいのかは,また検討する必要があるかとは思います。諸外国の事情についても,海外法制との関連でどのような基準に基づいて養育費の水準が決定されているかといったことをお調べいただくとよいかと思いますし,日本の基準の設定の仕方,子ども1人の成長にどのぐらいの費用が掛かるのかといった視点から考えるということが必要と思っております。
  もう一つ。やや超越的なコメントかもしれませんが,養育費というのはフローですよね,月々とか,一定期間ごとの送金となっていると思いますが,私のような経済畑の考えから言うと,ストックでもらっても同じではないかという発想があります。財産分与と絡んでくるかもしれませんが,将来的に支払が不安定になるのであれば,まとめてもらって,それを年金化していっても同じではないかという発想があります。実務でどのようになさっているのか詳しくはないのですが,そういう考え方はあり得るのだろうかということを,問題提起させていただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費の算定表に関連する御指摘を二つ頂きました。
  一つ目は,これを細かくする方向で,計算の仕方はこれでいいのだろうかといったことについて,この際見直してみる必要があるのではないか。それをどこで見直すかという問題はあるけれども,という御指摘だったかと思います。
  他方,先ほど棚村委員も触れられましたけれども,現在のこの表を支える考え方がどのようなものかということを見直すという方向もありますので,この表について,あるいは実務について,どこかで皆さんに御意見を頂くということが必要かと思って伺いました。
  二つ目は,一括払いというのはどうかということでしたが,この点については,それぞれ知見をお持ちの方に伺いたいところですけれども,これは,先ほどの石綿幹事の御発言とも関連するところがあろうかと思います。変動しないならば一括払いもあり得るわけですけれども,変動するということになると,それをどのように組み込むかといった問題も考えなければならないと思って伺ったところです。


○窪田委員 窪田です。
  ちょっと答えが分からない状態で,こういう論点もあるのかなということだけなのですが,養育費に関して,面会交流もそうかもしれませんが,父母間での取決めがやはり重要であって,それを促進する必要があるということは,一般論としては,私自身は十分に理解できますし,この方向で準備していただいているのも理解できます。
  ただ,ちょっとよく分からなくなってきてしまったのが,一方で,特に部会資料3の3ページには,養育費の位置付けが,父母間の問題なのか,扶養請求権の言わば代理行使の問題なのかという建付けというような問題があります。今,養育費と言っているときには,父母間の話だという前提でいるわけですけれども,仮に,基礎にあるのが子の扶養請求権にあって,監護親の方は,それについて掛かった費用を求償しているにすぎないのだと考えた場合に,父母間での養育費の合意って一体何なのだろうかというのが,実は法的には結構深刻な問題として出てくるのかなと思います。
  そんなうるさいこと言わなくてもという意見もあるのかもしれませんが,恐らく,例えば,養育費に関しては要らないという取決めをしたとしても,それは,子どもの扶養請求権を否定することにはならないと思いますし,今ちょっと答えがない状態なのですが,少し整理する必要があるのかなと思いました。
  私は,大石先生の先ほどの年金化というのは,すごく面白いなと思って伺ったのですが,これも恐らく財産分与を手掛かりにすると,夫婦間の問題としてはうまく説明できるのですが,子どもとの関係だとすると,実はその説明が難しくなるのかなという気もしますので,いろいろ派生する問題なのかなということで,思い付きで申し訳ないのですが,発言させていただきました。
○大村部会長 ありがとうございます。父母間の養育費請求権と子どもの扶養請求権との関係については,親が子どもの扶養請求権を処分できるのかといった問題が出てくるという御指摘かと思います。それは検討しなければならない問題だろうと思います。
  沖野委員,原田委員,赤石委員の順番でお願いします。

○沖野委員 私も,少し思い付き的なことで,きちんと詰めていないままの発言で申し訳ないのですけれども,この養育費請求権の位置付けに関しましては,各親が子を養育する義務があるということで,ただ,その義務の内容というのは,単にお金でバックアップするということだけではなくて,非常に多様な形で子を養育していくという,そういう義務を負っている,その中で経済的にも対応するということは,その一つなんだろうと思います。
  そのように考えた場合は,やはり養育費請求権というのを持っているのは子であって,子に対してそれぞれの親が,合同でなのかもしれませんが,義務を負っていると。一方で,親同士の話というのは,そういう義務を負っている者の間の分担の請求であったり,取決めであったりと,そういう位置付けではないかと思います。したがいまして,両者の取決めにおいて,全体の内容が適正なのかというと,分担としてはこういうふうに,しかも経済的な部分の分担はこうするというだけのものですから,義務全体としてどれだけかとか,経済的に言ってもそれが足りるのか足りないのかということが,合理性が確保されていないというものとして,したがって,それでは足りないということになれば,子からの請求というのは妨げられないということになるんだろうと思います。
  もっとも,子の請求を誰が具体的にやっていくのかという問題は,最初に池田先生から御指摘のあったとおりかと思いますが,そのような位置付けで考えていくことができないかと思っております。
  そうしたときには,例えば,婚姻費用の分担というときには,共に養育の義務を負い,経済面においても分担していく義務者間において,子どもに対して負う義務をどのように分担していくかという話と,それ以外の夫婦間の婚姻の費用を更にどうするかということを,言わばまとめて請求していくという位置づけができるのではないかと思います。ちょっと直接関係ない別の事項ですけれども,財産分与でも様々な性格があるとか,あるいは不法行為の損害賠償もあり,それらを一緒に請求することもできるとかもありますので,そういう形で整理ができるのではないかと思います。
  それから,離婚後につきましては,元夫婦の間の離婚後扶養というような話も,財産分与の中で出てくる話がありますので,そういう性格を持った中で請求していくというようなことも,あるいはあるのかもしれません。別居中が婚姻費用の分担でないと考えれば,また似たような話も出てくるかと思いますので,少し概念整理として,そのような形で整理をしてはどうかと思います。
  ただ,養育義務は,一種の扶養かもしれませんが,非常に多様であり,こういう性格を持っているので,親子の間の養育義務として取り扱えばいいのではないかと思っておりますけれども,それ自体,やはり義務の具体的な内容自体が,子どもの状況に応じて,どういうものが必要かというのは中身も変わってきますので,そうすると,ある意味不断の見直しというのも表現として適切ではないのかもしれませんが,かなり長期にわたる義務であり,状況に応じて適切に養育する義務だということになりますので,その義務の性格上,見直しの機会というのはきっちり確保されるということと,当事者の取決めについて,飽くまで義務者間の取決めということになりますので,その合理性の確保措置というのが必要になってくるのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。基本的な一つの考え方を示されて,そこからこういう帰結になるというお話を頂きましたけれども,最初の発想は,父母の養育費の取決めというのは,共同で義務を負う者の間での内部的な負担部分の取決めであるということで,子どもにそれは影響しないと考えることができるということかと思います。これが基本的な発想であり,そこから,どのように考えを進めることができるかということですね。

○沖野委員 はい,そのように考えております。
  もっとも,その取決めを子が援用するとか,そういう話が出てくるのかもしれませんけれども。
○大村部会長 ありがとうございます。
○原田委員 すみません,時宜に遅れてしてまって,先ほどの大石委員の一括負担という内容が,ちょっとどういうものなのかをお聞きしたかったのですが,信託の利用とか,そういうこともあり得るということで御紹介をします。
  今の実務では,一括というのは,これは裁判官の方が違うと言われるかもしれませんが,例えば,お子さんが亡くなるとか,そういうときに清算の問題が起きるとか,あるいは,お母さんがというか,養育者がそれを使って,例えば事業を始めたと,それで失敗して,それはなくなってしまったと,その後どうなるのかとかいう,いろいろな問題があって,よほど当事者同士で合意がある場合を除いては,使われていないんだろうと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。

○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。
  養育費の概念がこんなに幾つもあるんだというのは,私も読んで,支援団体としては,そこはちょっとお任せするしかないんですけれども,税制との絡みをどうするのかというのを,一応お伝えしておきます。
  今,親が養育していて,同居親が養育していて,子どもの扶養に関しての税制の控除を受けている場合が多いんですけれども,これは別にどちらでも選択できるということなのか,所得の高い方が先に,自分が税の申告のときに,この子ども2人は自分が扶養していますということを申告してしまえば,こちらの方が所得が高いので,そのまま認められてしまうというようなことが起こっているようなんですね。
  この税の控除の問題をどう整理していくのかというのは,結構後に残る問題で,では,扶養とは何なのか,扶養控除とは何なのか,結構議論が必要なのだなと思っておりますし,もしかしたら分割した方がいいのかもしれませんし,そこもよく分からないというところなので,一応お伝えしておき,先取り勝ちで,扶養控除を取れないため,所得が高くなってしまって,いろいろな手当てとかもらえなくなってしまっておられる方がいらっしゃるということをお伝えしておきます。
○大村部会長 ありがとうございます。請求権の法的性質をどう考えるかということについて,論点が出されていますが,その性質決定が税制に影響するかもしれないということで,そのことも考えて議論しなければいけないという御指摘を頂いたと承りました。

○小粥委員 小粥です。
  現在,養育費の件でどのように理解するかということが議論されていると思うんですけれども,債権者は誰なのかというような問題とは別に,実体法上,ただの金銭債権という扱いのままでよいのか,現状でも民事執行法で養育費請求権については特別扱いがされているわけですけれども,今般の改正論議の中で,民事執行法,つまり債権回収の手続でより強力な特別扱いをしようとする際に,実体法というか,民法で現在のようなただの金銭債権という扱いのままで,手続法上の特別扱いがどこまで正当化できるのかという問題は考えなくてよいのかと。つまり,養育費は債務名義をより簡単に取れるようにするといったことが示唆されていますけれども,ただの金銭債権ではなく,若干の特殊性がある金銭債権ということで,あるいは,例えば先取特権を付与するような形にした方が,取扱いが正当化できるというようなことがあるんだとすると,そこも考えた方がいいのではないかと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。先ほど棚村委員から資料5ページの①,②について御指摘がありましたけれども,小粥委員の今の御発言は③に関わるのだろうと思って伺いました。
  ここには,極めて重要な権利であると書かれているのですが,民事手続において,ここでいう養育費請求権に特別な保護を与えるというときに,何か理由付けが必要になるのではないか。小粥委員がおっしゃったように,優先権にかかわる問題が一つありますけれども,優先権に尽きない問題も多分あって,それらをどうやって正当化するかのということを議論する必要があるだろうという御指摘かと思いますが,資料としては③のところで扱っていることかと思います。
  そのほか,いかがでしょうか。

○井上委員 連合の井上です。
  養育費については,子の利益だと考えていますので,支払が親の責任であることを明確にした上で,取決めの作成支援のみならず,受取り側に代わって取立てや立替えなどを行う公的な仕組みを検討すべきではないかと考えています。これは,明石市長のヒアリングのときにも孤軍奮闘されている様子が話されましたけれども,やはり国として一定の水準,基準は持つべきだと思っています。
  特に,ひとり親家庭の貧困問題が深刻化している中で,養育費を確保するための方策は,優先的に検討すべきではないかと考えています。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費の履行確保についての方策が重要ではないかという御指摘を頂きました。公的なということですけれども,民事法の外でやるということもあるだろうと思いますし,民事執行法の中で,あるいは他の手続法の中でどこまでできるかという問題もあるかもしれません。問題提起として承りました。

○久保野幹事 幹事の久保野です。
  一つ前の話に戻るのですけれども,5ページの③のような方向で,未成熟子からの扶養請求権,子どもの方からの請求権の実体法的手続法的な特性を詰めていくことが大事だということだというのに私も賛成ですけれども,この件について,少し前だったか,沖野委員の方から,扶養請求権という名称を変えて,何かいい言葉に置き換えられるとよいだろうというような方向性についての御発言があったかと思います。繰り返すのも変ですけれども,扶養請求権という言葉を使うことによって,現在扶養について取られている考え方と結び付けてということになりやすいというようなこともありますし,いつ変えるかはともかくとしましても,扶養請求権という言葉を非常に気を付けて,どういう実態,例えば,成長発達権と結び付けるのかどうかとか,いろいろなことがこれから議論されるんだと思いますけれども,その実態に合わせてどのような言葉を使っていくかということについても,積極的に議論をしていけるとよいなと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。他の請求権と性質が違うものだと考えるならば,概念の方も区別するということが望ましいのではないか,そういう方向の議論も必要であろうという御指摘として承りました。


○佐野幹事 佐野です。
  11ページのところで,ちょっとまた支援の話になってしまうかもしれないのですけれども,最初,①ガイダンスを実施すること,これは非常に賛成なのですが,ただ,ガイダンスだけではなかなか心情的に受け入れられない当事者の方もいらっしゃるというところを踏まえると,やはりそういう方には,その後個別の相談につなげるという何らかの枠組みが必要なのではないかなと思います。それは,韓国でもやっているのではないかと思います。
  それから,先ほど窪田委員からあったような,やはり養育費の額を取り決めるとしても0で取り決めてしまうというインセンティブが働いてしまうということを防止するためには,やはり税制上など何らかの,養育費を払うことによる利益といったところも考えなければいけないのではないかなと思いました。
  12ページの算定方式,考慮要素を法定してはということは,今は裁判官だけで決められているところですので,これは非常に賛成です。ただ,その前提となる収入の部分について,その後の話なのかもしれないですけれども,ここでも指摘されているように,やはり自営の方などで経費をかなり多く計上している事案などもあり,それを適正化するためにはどうしたらいいのかというところは,また別途検討する必要があると思っています。
○大村部会長 ありがとうございました。ガイダンスという話が出ていますが,ガイダンスには来ない人がいるということが,いろいろなところで問題になりますので,そうした問題についても対応が必要であるということ,また,算定表につき実際の算定の方法に関する問題などに関する御指摘を頂きました。
  ほかに御発言いかがでしょうか。
  青竹幹事,窪田委員,落合委員の順番でお願いします。

○青竹幹事 先ほど,国による立替払いについての御指摘がありましたので,それに関連して一言だけなんですけれども,義務者から何が何でも徴収するという発想だけではなくて,国による立替払いもそうなのですけれども,公的機関の仕組みというのも,民法の外ですけれども,払えなかった場合ということにはなるんですけれども,むしろ少し積極的に検討するという方向があってもいいのかと思いました。
  落合委員が,第1回のときだったかと思うんですけれども,子の養育というのが,親だけの義務ではなくて社会が負担すべきという視点を御提示されていたのを,印象的に伺ったのですけれども,少しそういったことからも検討してもいいのではないかと思いました。
○大村部会長 ありがとうございました。履行確保以外あるいは,それ以上の対策というのも必要だという御指摘として承りました。
○窪田委員 窪田です。
  5ページの①,②,③に関わる部分で,前回も確か私,未成熟という概念をそう簡単に使っていいのかという発言をしたと思いますので,それと重なってしまうのですが,特に今回もう一度資料を見直していたときに,②の親が未成熟子に対して重い扶養義務を負っていることを民法において明らかにしてはどうかというのは,重い扶養義務を負っていることが当然の前提になっているのですが,本当にそうなのだろうかという点について,少し違和感を持ちました。
  つまり,未成年であるというのは,行為能力も制限されていて,言わばまだ法的に完全には自立していない,そういった未成年者に対する関係と,大学に行っていて,成年には達しているけれども,経済的に自立していないという場合とでは,扶養をめぐる関係はやはり違うのかなという気もしますので,全部何かひっくるめてこういう形で重い扶養義務と言われてしまうと,成年の未成熟子に対して重い扶養義務を負っているのはどうしてなのというのを,やはり聞いてみたくなってしまいます。そういう点も含めて,少し慎重な書き方をしていただく,あるいは,もし書くのだとすると,成年の未成熟子,それから未成年の成熟子という概念があるのかどうか分からないですが,未成年であるけれども経済的に自立している子どもとか,幾つかきちんと整理した上で書き分ける必要があるのかなと思いました。前回の話と同じことになってしまいますが,感想です。
○大村部会長 ありがとうございました。5ページの②について,言葉遣いと,それから実質についても,この問題についてはより慎重に考える必要があるのではないかという御指摘を頂きました。
○落合委員 子を権利者とする子の扶養請求権という話なんですけれども,子どもの権利だというのはものすごく賛成です。ただ,その場合,母親と考えが違うときに何が起きるのかというのを,現状でも起きているのではないかと思うんですけれども,どういうふうに処理するものなのかというのを,ちょっと伺いたいなと思いました。
  母親は,例えば,養育費をものすごく少なく合意してしまったとか,でも,子どもとしては,自分は大学に行きたいんで,やはり本当はもっと欲しいんだけれどもとか,あるいは,母親がほかのことに使ってしまっているというようなことも,先ほどありましたよね,例として。母親と子どもの間の関係は,どういうふうに扱われることになるんでしょうか。
○大村部会長 ありがとうございます。今,質問という形でおっしゃっていただいたのですけれども,先ほどから,それに関わる御指摘が出ていて,その問題について,今回一定の考え方を示す必要があるのではないかということで,複数の委員から御意見を頂いたところかと思います。落合委員がおっしゃっているような危惧に対応できるような形で,制度を組む必要があるのではないか。その基盤として,沖野委員のような発言があったということではないかと思います。
  具体的にどうするかということを,規定を詰めた形で,この先で議論する必要があると思いますけれども,問題の御指摘は落合委員がおっしゃるとおりなのではないかと思います。
○落合委員 ありがとうございます。
○大村部会長 杉山幹事,武田委員の順番でお願いします。
○杉山幹事 幹事の杉山です。
  先ほど養育費の支払が一括なのか,それとも,定期的に少額に払うのかという話が出ましたが,今の執行法などは,基本的に定期的に少額で毎月払うということを前提にしていると思います。ただ,一括での支払いが絶対排除されるのかというと,必ずしもそうではないような気がしています。
  先ほど一括払いですと,後の事情の変更に対応できないという問題がありますが,必ずできないかというと,事後的な調整は不可能ではないと思いますし,一括で払った後に,子どものために使われない可能性があるという問題についても,毎月払う場合でも同じような問題が出てくるかとは思います。
  ただ,子どもの養育のための費用であるということであれば,一括払いよりも定期的に払うことを基本的に念頭に置いて検討するのでいいと思いますが,11ページにあるような取決めができないときに,そもそも取決めをする必要性があるかどうかとの関係で,離婚時に一定額,恐らくはかなり低い額で,自動的に請求権が発生するという考え方も検討に値するとありますが,そのような制度自体はあり得るとは思いますが,他方で,自動的に債務名義となるとした場合に,先ほどから養育費の額が変動する可能性があるという話がありましたが,その場合に債務者側にも修正のための重い負担を課すということになると思います。また,仮に追加請求もできるとして,その追加部分も債務名義にしなければならないといった問題も出てきます。いずれにしても,債務名義としない限りは実効性のある制度にならない点は理解できますが,何も手続的な保障がないまま,債務名義として修正の負担を債務者側に課すというのがいいかという点は,少し慎重に検討した方がいいのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。手続的な面からの非常に重要な御指摘を頂いたかと思います。その点について注意をするとともに,どこかで皆様の意見を伺いたいと思います。
  武田委員,大石委員の順番で伺って,その辺りで今日はまとめたいと思います。
○武田委員 私どもは,養育費を払うことが常識というふうな中でやっておりますので,まずは,ずっと払い続けられるという観点と,もう一つは,継続的な支払確保のために収入に合わせて流動的に変動させるという2点が必要なのかなと,そんなふうに思っています。
  基準に関して,また別途整理いただいて情報提供いただけるという話ですけれども,今,基礎収入をベースにした考え方,今それだけで「えいや」って決めているように,やはり見えておりまして,払うのは全然当たり前のことなんですけれども,そこに対する納得感というところが,今はまだ足りないのかなと,そんなふうに思います。特に昨今,年収が上下することは,同じ会社に勤めながらもということは,非常に当たり前の世の中になっております。これはちょっとどこの国か忘れましたけれども,毎年双方の収入証明を出すと,それに伴って自動的に再計算すると,そのような仕掛けを持っている国もあるやに聞いております。そういった事例も踏まえて,払い続けられるようにという観点で,今後どう整理していくのかということが必要になろうかというのが,私からのコメントの1点目です。
  あともう1点は,次回のテーマになりますが,裁判手続の中でということで,先だって民事執行法が改正になっております。一定,回収に当たっても使いやすくなったとは聞いております。これは,可能であれば,新民事執行法改正以後,具体的にデータとしてどこがどういうふうに変わった,そういうようなものを,次回の部会の前に資料として御提供いただきたいというのがお願いでございます。
○大村部会長 ありがとうございました。第2点は,次回に間に合うかどうか分かりませんけれども,事務当局で御検討いただきたいと思います。
  第1点については,収入が変動するということが,かつてに比べて多い時代になっていますので,それを見込んだ支払可能な制度を考えてほしいという御要望として承りました。
○大石委員 千葉大の大石です。ありがとうございます。
  先ほど発言に追加なのですが,一括というときに,例えば,離婚が比較的若い時期に行われるとすると,そのときの余り蓄積していない資産で一括払いするというのは,もしかしたら子どもにとっては不利な状況に,あるいは子と同居する側に不利になるかもしれないという問題はあるかと思います。
  それと関連して,もう一つ問題提起させていただきたいのは,定額にするのか,定率にするのかということもありまして,今ですと,離別時に決めた金額がずっと続くということが多いと理解いたしましたけれども,例えば,年功賃金体系のもとでは年齢が上がっていくにつれて収入は増えていくわけですけれども,若いうちに定額で決めてしまうというのは,後々多くなるかもしれない支払能力というものを反映できないというリスクがあるかもしれないというのが一つ。ただし,賃金の年功度も緩やかになってきていると言われておりますので,今申し上げた問題点がどの程度当てはまるかどうかはまた別かもしれません。
  それから,定率にするということは,それぞれの時期に変動する収入に応じて,その一定割合を支払うということですね。アメリカの州によってはそういうシステムを取り入れている州もあります。ただ,これは海外の研究ですけれども,そういうふうに定率になってしまうと,今度は,例えば,払わなければいけない側が一生懸命働かなくなるというような,つまり収入を増やす努力を怠っていくというような行動を惹起するということも指摘されています。定額・定率のどちらも長所短所があり,両者をミックスした方がいいのかもしれませんが,そういったディテールについても,何らかの機会に検討することができればよいと考えています。
○大村部会長 ありがとうございました。直前の武田委員の発言と同じ方向で,収入の状況が変動するので,それをどのように考慮するのかということを,様々な選択肢の得失を考えて検討すべきではないかという御指摘を頂きました。
  現在の雇用状況について,どのように認識をするのかといったことも関わると思いますけれども,その辺はまた,大石委員からも知見を披露していただくこともあろうかと思いますが,引き続き議論をしていきたいと思います。
  ほかに御発言ございますでしょうか。
○落合委員 この際,質問させてほしいと思うのですけれども,養育費というのは,両親以外の義務にはならないでしょうけれども,実態として払っていたりしますね。祖父母などが。息子が払えなくなったときに,おばあちゃんが払っているとか,例はいろいろ見たりしています。
  お父さんが払えなくなったら,誰かにその義務が移転していくようなことはあり得るんでしょうか。それがいいと言っているのではないのですけれども,質問です。
○大村部会長 お尋ねは,実態についての質問ということになりますか。
○落合委員 はい,実態ですね。日本と,それからほかの国で。
○武田委員 日本国内でも事例としてはございます。お父さん払えなくなって,今,おじいちゃん,おばあちゃんが一生懸命なんで,何とか孫と接点を持つために払うというケースは,実はあります。
  もう一つ,大学の学費ですね。大学の学費,お父さんだけではどうしても出せなくて,お母さんも出せない,その中,おじいちゃん,おばあちゃんが田んぼを売って学費を出してあげると,そんなケースも実態としては耳に入っております。
○落合委員 あるなと思ったんですけれども。
  それが,扶養控除など,税制上何か優遇されるとか,養育費一般についてあるんでしたら,祖父母のも入るのかなと,お尋ねさせてください。
○大村部会長 実態についてどうなのかというのは,なかなか難しい問題だろうと思いますが,親の義務を祖父母が代わりに履行しているという話なのか,あるいは,祖父母が子どもに対して直接金銭的な給付をしているという話なのか,そういうことも,考えていく上では整理が必要なのかと思います。
  この問題は,監護者として,祖父母をどう考えるのかという問題とも,緩やかにつながるところがあるかと思いますので,またその辺りで御議論を頂ければと思います。
  窪田委員,原田委員の順番でお願いします。
○窪田委員 窪田です。
  大村先生から御説明があったとおりなんですが,おじいちゃん,おばあちゃんが代わって払うことがあるというのは,別におじいちゃん,おばあちゃんが義務を引き受けているわけではありませんので,ちょっとそこの部分は丁寧に,次回にでも結構ですから説明していただいた方がよろしいのかなと思いました。
  基本的には,おじいちゃん,おばあちゃんが払う場合があったとしても,お父さん,お母さんの義務が移っているわけではありませんので,法的には,それを前提として,直系親族の,血族の関係だけだということだと思いますから,改めて説明していただいたらよろしいかと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。
○原田委員 私も今,同じことを言おうとしていました。
  実態的には,おじいちゃん,おばあちゃんがお金を出すことは一杯あります。でも,それが義務として裁判所で例えば認められるかといったら,それは違う話だということだと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。
  ほかに御発言ございますか。よろしいでしょうか。
  それでは,取りあえず今日のところは資料3の第4まで,13ページの3行目まで御意見を頂いたということにいたしまして,次回,ヒアリングと併せて,残りの部分と,それから面会交流について取り扱うということで検討を続けたいと思います。
  次回に面会交流も併せて終わらないかもしれませんが,その場合には,残ったものはその次に持ち越して,継続して議論をするということにさせていただこうと思います。
  それでは,次回の予定等について,事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。
○藤田幹事 本日も御議論をありがとうございました。
  次回は,7月27日の午後1時半からということで,場所は改めて御連絡いたします。
  部会長から御説明がありましたとおり,次回は,まず部会資料3の養育費に関する残りの部分を御議論いただいた後に,面会交流に関する御検討を引き続きお願いするということになります。その後に,海外に関する研究者からのヒアリングと,菅原委員からお話を伺うということになりましたので,そのような進行で次回はお願いしたいと思います。
○大村部会長 次回のヒアリングでは皆様からいろいろな質問が出ると思いますけれども,次回は,今日の養育費の残りの問題と面会交流の問題について意見交換をしたいと思いますので,そちらを先にさせていただきまして,ヒアリングをお願いした方がお越しいただく時間になりましたら,議論はそこで一旦打ち切って,ヒアリングに移らせていただくという形で,時間配分をしたいと思っております。この点,どうぞよろしくお願い申し上げます。
  今日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。
-了-

相続等により取得した不動産の登記義務などについての民法の改正について

 相続等により取得した不動産の登記義務などについての民法の改正について

民法等の一部を改正する法律

可決成立日 令和3年4月21日

公布日    令和3年4月28日

官報掲載日 令和3年4月28日

施行日    原則として公布の日から2年以内

第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

・持分の過半数の共有者の所在が分からない場合の管理行為

 共有者の一部が不特定又は所在不明である場合に、裁判所においてそのことを確認し、かつ公告を実施するなどの手続を取った上で、管理人の選任を経ることなく、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、又はその持分の過半数の決定によって共有物の変更又は管理を可能とする仕組みを創設。

・共有者の一部の所在等が不明である場合の変更・処分行為について

 共有物分割訴訟には、共有者全員を当事者としなければならないなどの手続上の負担があることも踏まえまして、共有者の一部の所在等が不明である場合に、訴訟手続ではなく非訟手続の下で、共有者全員を当事者とすることなく、他の共有者が適正な代価を支払った上で所在等不明共有者の持分を取得したり譲渡したりすることができる仕組みを創設。

・所在不明な共有者、相続人の探索方法について

 一般論として、例えば共有者の所在を知ることができないと認められるときには、登記簿や住民票といった公的記録を調査し、その住所に当該共有者が居住しているのかを調査してその所在が不明であることを立証。共有者が死亡して相続が開始しているケースでは、相続人やその所在を確認するため、戸籍や相続人の住民票などの調査が必要となるほか、当該不動産の利用状況を確認したり、他に連絡を取ることができる相続人がいればその相続人に確認してみるなど。

・誰々ほか十六名のような不動産登記記録の表題部記載について

 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づいて対応することが可能・登記官において探索等を行ってもその共有者が不明なケースでは、裁判所が管理命令を発し、その選任した管理人がその共有持分の管理、処分を行うことができる。

 所有者等不明共有者の持分の取得、譲渡の制度も表題部所有者不明土地について適用することが可能。申立人が、表題部所有者不明土地の共有者が不明であることを立証し、裁判所が命ずる金銭を供託するなど所要の手続を取れば、管理人の選任を経ることなく持分の取得、譲渡をすることができる。

・登記名義人が五十年以上前に死亡している土地について、子供の兄弟が三人いることが分かっている、二人についてはやっと連絡が取れました、でも、残り一人についてはどうも外国で亡くなっているらしい、相続人がどれだけいるかも分からない。この土地を譲り受けたい、あるいは処分したいという場合

 制度を利用し、遺産分割を経ることなく、他の相続人が当該土地の持分を取得するなどして譲渡することも可能。

・ごみ屋敷への管理不全建物管理命の適用可能性について

 ごみ屋敷についても、他人の権利利益の侵害の状況等によっては管理不全建物管理命の要件を満たす場合はある。

・相続人申告登記がされた後に遺産分割があったケースについて

遺産分割成立の日から三年以内に遺産分割の内容を踏まえた登記申請をする義務を負う。

・遺言が作成されていた場合

 遺言により不動産を取得すると定められた者は、所有権を取得したことを知った日から三年以内にその旨の所有権の移転の登記の申請か、相続人申告登記の申出をする義務を負う。

・相続人申告登記の添付書面について

 申出をする相続人が、被相続人の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出。

・相続登記申請をするための登録免許税(現行は不動産の固定資産税評価額の0.4%)について

令和四年度税制改正において必要な措置を検討。

・住所等の変更登記に当たって、他の公的機関との情報連携について

自然人・・・所有権の登記名義人から、その氏名、住所のほか、生年月日等の情報を提供してもらい、これを検索キーとして法務局側で定期的に住基ネットに照会して情報の提供を受けることにより、住所等の変更の有無を確認。

法人・・・省内のシステム間連携による対応が可能。法人の住所等に変更が生じた場合には、不動産登記システム側からの定期的な照会を要さずに、商業・法人登記のシステムから不動産登記システムにその変更情報を通知することにより、住所等の変更があったことを把握。登記官が職権的に住所等の変更の登記を行うことになる。

・改正法の施行日前に相続の開始等があった場合

 原則として適用。施行日前に既に相続が開始した場合又は住所等の変更があった場合であっても、登記の申請に必要な期間を確保する観点から、少なくとも施行日から三年間又は二年間の猶予期間を置く。

 施行日前に相続が開始した遺産の分割について、長期間が経過している場合には、法定相続分等の割合により分割を行うことを可能とすべく、改正法を適用。施行日前に生じた相続について、改正後の規定を適用することとしつつ、少なくとも施行日から五年間は具体的相続分による遺産分割の請求を求めることができる。

・管理不全土地管理の制度について地方公共団体の長などを請求権者としなかった理由

 管理不全土地管理制度について権利利益を侵害されるなどの利害関係の有無に関係なく地方公共団体に申立て権を付与することは、現行の所有者不明土地特措法で定められた目的の範囲を超えており、その是非については、同法の趣旨、目的や、同法における管理不全土地対策の位置づけも踏まえ、国土管理の観点から、別途検討すべき課題と整理された。

・管理不全土地、管理不全建物管理命令の申立て権者である利害関係人について

例えば公共事業の実施者などの土地の利用、取得を希望する者。隣地に擁壁が設置されている場合、劣化して倒壊して、それによる土砂崩れが生ずるおそれがあるというようなケースで、そのことを主張するその隣地の所有者など。

 ごみ屋敷状態で、草が生えて獣が入って悪臭が漂うとか、具体的な意味での隣地に対する影響が出ていればこれに該当する可能性はあるが、町内会あるいは自治体も含めて申立て権を認めるかどうか、利害関係に含めるかどうかは、引き続き議論をして検討。

・相続登記申請と住所変更登記申請義務について、過料の制裁を科さない正当な理由がある場合

 相続が数次にわたって何度も発生して、相続人が数十人を超えるなど極めて多数に上る場合。戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するケース。遺言の有効性、遺産の範囲等が争われているケース。

 申請義務を行う相続人自身が病気で入院している場合。登記費用を負担する能力がないケースについては、その財産状況や具体的な生活環境にもより、正当な理由があるとされる場合もある。

・DV被害者等の住所等の情報に係る部分について

 課長通知に基づく実務運用として、既に本人以外の者に対しては閲覧を制限する措置が取られているが、今回法制化。

20211004追記 改正後不登法第76条の6関係

Q 改正後に所有権を取得した人は、全員が検索用情報を提供するか。

A 現在、登録のある人は全員提供している。法務局が住民基本台帳ネットワークシステムに照会する基準をどのように設けるのかの問題。住民基本台帳法別表第一(三十一) 

Q改正前に所有権を取得して検索用情報を提供していない人は過料の対象となるか。

A 施行日前に既に住所等の変更があった場合であっても、少なくとも施行日から三年間又は二年間の猶予期間を置く。

Q 住所変更登記申請義務について、過料の制裁を科さない正当な理由がある場合とは

A 申請義務を行う相続人自身が病気で入院している場合。登記費用を負担する能力がないケースについては、その財産状況や具体的な生活環境にもより、正当な理由があるとされる場合もある。

Q 他の公的機関との情報連携について(自然人の場合)

A 所有権の登記名義人から、その氏名、住所のほか、生年月日等の情報を提供してもらい、これを検索キーとして法務局側で定期的に住基ネットに照会して情報の提供を受けることにより、住所等の変更の有無を確認。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第7号 令和3年3月24日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00720210324&spkNum=5&single

・登記官が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報を取得をして、これに基づいて不動産登記にその旨を符号によって表示する制度の情報源

 住民基本台帳、また固定資産課税台帳のほか、長期相続登記等未了土地や表題部所有者不明土地の解消事業、また登記所備付け地図作成事業など。

・所有者不明土地、所有者不明建物管理人が、裁判所の許可を得て土地、建物を売却等した場合の不服申し立てについて

 借地借家人等の利害関係者を含めて、不服を申し立てることができない。

・沖縄県の大戦によって不動産登記とか公図とか戸籍が全て焼失してしまっている場合。今まで、その焼失等によって生じた沖縄の所有者不明土地について、沖縄の復帰に伴う特別措置法に基づき沖縄県又は市町村が管理するという便宜的な対応をしている。この不動産について、相続人があることが明らかでないときは相続財産法人となるが、その近隣に居住する者は戸籍謄本を確認することができないので、それが相続財産法人となっているかどうかすら確認ができないが、所有者不明土地管理の制度を利用することについて

 利用可能。

・沖縄県にある不動産登記簿にについて、表題部の所有者欄に所有者名の記載がない空欄、又は不明地と記載されていて、便宜的に県とか市町村の名前が記載されている。本来の所有者は不明であるが、その管理を地方自治体が行えることが沖縄の特別措置法によって担保されている。管理をしている地方自治体が利害関係人に含まれ、申立てをすることができるのか。

 沖縄県又はその市町村が管理している不動産について、所有者が不特定又は所在不明なものであることから、個別の事案における裁判所の判断に委ねられる。裁判所が選任する管理人による管理の必要性が認められる場合には、所有者不明土地管理命令が発令されるケースもあり得る。

 沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律第六十二条に基づいて現に土地の管理を行っている地方公共団体が、利害関係人として所有者不明土地管理命令を請求することができるかについては、個別の事案ごとの判断による。事案によっては利害関係が認められるケースもあり得る。

・外国籍の方の遺族年金等の請求について

 請求者との婚姻や親子関係などを明らかにすることができる書類として、戸籍謄本又は抄本の提出。外国籍の方の場合は、戸籍に代えて、請求者等の属する国の公的機関の発行した出生証明書や婚姻証明書などを提出。

 請求者等の属する国の公的機関が発行した証明書で、いつから婚姻されていたかなどの必要な確認ができない場合は、外国人登録原票を提出するケースもある。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第8号 令和3年3月30日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00820210330&spkNum=3&single

・居住者がいる建物がごみ屋敷となった場合

 居住者が、発令後に管理不全建物管理人の管理を妨げる行為をすることが見込まれるときは、管理人を選任したとしても、結局、訴訟を起こさざるを得ず、実効的な管理をすることが困難となる可能性が高いことから、権利利益を侵害されている者としては、この管理不全建物管理命令を求めるよりも、訴訟を提起して物権的請求権等を行使することが適当である場合もある。

 建物がいわゆるごみ屋敷状態となった場合、その居住者が管理人による管理を妨げる行為をすることが見込まれているケースでは、利用することが難しい。

 建物所有者が建物をごみ屋敷状態としたまま遠方に移住しており、建物を放置し居住者もいない、は居住者がいても管理人の求めに応じて任意に退出することが見込まれるようなケースでは、この制度の利用が想定される。

・利害関係人があらかじめ費用や報酬に見込まれる予納金を支払った場合

 管理人はその予納金から費用や報酬を受け取ることになり利害関係人は、別途、最終的な費用の負担者である土地の所有者に対して求償することになると考えられる。

・相続開始後、遺言がなく遺産分割も直ぐには調わない場合の最初の登記について

 法務省としては、法定相続分での相続登記ではなく、より簡易な手続である相続人申告登記が利用されて相続登記の申請義務が履行されるようになることを想定。

・管理人による共有持分の処分、共有物の分割協議、持分の全部を取得

 裁判所の許可を得て、所在が明らかな共同相続人との間で可能。

・選任される管理人の要件について

 専門職という縛りはない。

・所有者不明建物管理人が自ら建物を取り壊すことについて

 基本的には許されない。建物の管理を続けるのが困難なケースにおいて、所有者の出現可能性や建物の所有者に生ずる不利益の程度などを考慮した上で、建必要かつ相当と認められる場合には、管理人が、裁判所の許可を得た上で、建物を取り壊すことも可能。

・遺言がある場合で、2つの不動産のうち1つの不動産について相続登記を申請した場合の3年以内の起算日

 相続人が遺言書を添付して特定の不動産についての登記の申請をした際に、遺言書が他の不動産の所有権についても当該申請人に移転する旨を内容とするものであった場合に登記官が通知したとき。

・相続登記等の申請期間の最初の日

 原則として、当事者の主観。

・相続登記等の申請期間について

 相続人申告登記の申出が可能。

 遺産分割がされたケースについては、遺産分割が相続開始に伴う登記申請義務の三年以内にされた場合には、登記の申請をすることになります。

 遺産分割が三年以内にされないケースは、相続人申告登記をすることで義務の履行。その後、遺産分割が現に調ったケースは、遺産分割の日から三年以内に登記の申請。

 遺言が作成されていた場合、遺言により不動産を取得する者は、所有権を取得したことを知った日から三年以内。

・隣の土地を所有している人、住んでいる人が不明な場合に立ち入る際の事前通知について

 立ち入る際に隣地の所有者等の所在が不明な場合、事前の通知は不要。立ち入って隣地を使用した後に所有者の所在が明らかになった場合、所在が明らかになった所有者に対して事後的に通知する必要がある。

第204回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和3年4月13日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00720210413&spkNum=4&single

・相続人申告登記の申出をした後、遺産分割が調わない場合

  遺産分割が調うまで、申告登記のままで可能。期間は問わない。

・数次相続がある場合の相続登記等の申請期間について

 相続開始時から十年を経過するまでに家庭裁判所に遺産分割の請求をしなかった場合には、原則として具体的相続分による遺産分割を求めることができない。遺産分割は法定相続分又は指定相続分によりする。

 数次相続のケースは、個々の相続ごとにこの十年の期間の経過が問題となり、その開始時から十年を経過した遺産の分割については、原則として具体的相続分による遺産分割を求めることはできなくなる。改正法の七十六条の二は、二次相続、三次相続の場合も含む。

 家庭裁判所は、相続開始時から十年を経過した後に遺産分割の申立てがされた場合には、特別受益や寄与分については考慮せずに法定相続分又は指定相続分によって遺産の分割をすることになる。

・申告登記をした相続人が亡くなった場合、この場合には二次相続人は申告登記できるか。

 可能。

第204回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和3年4月20日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120415206X00920210420&spkNum=4&single

・自己に相続があったことを知ったことについて

相続人において、相続が開始した事実を知らないケース、不動産の存在自体を知らないケース、具体的な土地の地番等までは把握していないなどといったケースは、この要件を満たすことはなく、相続登記の申請義務は生じない。

20210906追記 民法・不動産登記法部会資料 57

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (2)

https://www.moj.go.jp/content/001339375.pdf

所有不動産記録証明書(仮称)の代理交付請求について

 郵送による本人申請請求の場合・・・本人確認書類の写しを送付させた上で、対象不動産の登記に記録された本人の住所地(所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人による交付請求の場合にはその本人の住所証明書類の原本に記載された住所地)宛てに送付するなどして、請求者本人が確実にその書類を取得するように配慮することが考えられる。

 代理申請の場合・・・委任者の実印が押印された委任状及び印鑑登録証明書(例えば、3か月以内に取得したものに限定する。)の提供がある場合には、受任者宛ての送付を可能とするといった手法を併用することも考えられる。

・相続放棄で遡及的に持分を失った人も、持分を取得した人が登記申請を行うまでは申請義務は免れないか・・・免れる。
民法・不動産登記法部会資料 60民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案 (案) (5)p2
https://www.moj.go.jp/content/001340118.pdf

民法 第209条(隣地の使用)

 同条第1項中「境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕する」を「次に掲げる目的の」に、「の使用を請求する」を「を使用する」に改め、同項ただし書中「隣人」を「住家については、その居住者」に改め、「その住家に」を削り、同項に次の各号を加える。

  1 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

  2 境界標の調査又は境界に関する測量

  3 第233条第3項の規定による枝の切取り

 第2項中「前項」を「第1項」に、「隣人」を「隣地の所有者又は隣地使用者」に改め、同項を同条第4項とし、同条第1項の次に次の2項を加える。

 2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 3 第1項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

 第213条の2(継続的給付を受けるための設備の設置権等)

 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第1項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

 2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 3 第1項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

 4 第1項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第209条第1項ただし書及び第2項から第4項までの規定を準用する。

 5 第1項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第209条第4項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。

 6 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

 7 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

 第213条の3

 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第5項の規定は、適用しない。

 2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)

 第1項中「隣地」を「土地の所有者は、隣地」に改め、同条第2項を同条第4項とし、同条第1項の次に次の2項を加える。

 2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

 3 第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

 1 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

 2 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 3 急迫の事情があるとき。

 第249条(共有物の使用)

 次の2項を加える。

 2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

 3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

 第251条(共有物の変更)

 中「変更」の下に「(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)」を加え、同条に次の1項を加える。

 2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

 第252条(共有物の管理)

 中「は、前条の場合を除き」を「(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は」に改め、同条ただし書を削り、同条に後段として次のように加える。

 共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

 2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

 1 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 2 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

 3 前2項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

 4 共有者は、前3項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

  1 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年

  2 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 5年

  3 建物の賃借権等 3年

  4 動産の賃借権等 6箇月

 5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

 第252条の2(共有物の管理者)

 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

 2 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

 3 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

 4 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 第258条(裁判による共有物の分割)

 同条第1項中「とき」の下に「、又は協議をすることができないとき」を加え、同条第2項中「の場合において、」を「に規定する方法により」に改め、「の現物」を削り、同項を同条第3項とし、同条第1項の次に次の1項を加える。

 2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。

 1 共有物の現物を分割する方法

 2 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

 4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

 第258条の2

 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

 2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

 3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第1項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

 第262条の2(所在等不明共有者の持分の取得)

 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が2人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

 2 前項の請求があった持分に係る不動産について第258条第1項の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。

 3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、第1項の裁判をすることができない。

 4 第1項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。

 5 前各項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

 第262条の3(所在等不明共有者の持分の譲渡)

 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

 2 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。

 3 第1項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。

 4 前3項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

 第264条(準共有)

 中「この節」の下に「(第262条の二及び第262条の3を除く。)」を加える。

 第264条(準共有)

 中「この節」の下に「(第262条の二及び第262条の3を除く。)」を加える。

 第264条の3(所有者不明土地管理人の権限)

 前条第4項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

 2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

 1 保存行為

 2 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 第264条の4(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い)

 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

 第264条の5(所有者不明土地管理人の義務)

 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

 2 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

 第264条の6(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)

 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

 2 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

 第264条の7(所有者不明土地管理人の報酬等)

 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

 2 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

 第264条の8(所有者不明建物管理命令)

 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第4項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

 2 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

 3 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

 4 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

 5 第264条の3から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。

 第264条の9(管理不全土地管理命令)

 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第3項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

 2 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

 3 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

 第264条の10(管理不全土地管理人の権限)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。

 2 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。

 1 保存行為

 2 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 3 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

 第264条の11(管理不全土地管理人の義務)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

 2 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

 第264条の12(管理不全土地管理人の解任及び辞任)

 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。

 2 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

 第264条の13(管理不全土地管理人の報酬等)

 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

 2 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。

 第264条の14(管理不全建物管理命令)

 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第3項に規定する管理不全建物管理人をいう。第4項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。

 2 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

 3 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

 4 第264条の10から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

 第392条(共同抵当における代価の配当)第1項中

 「按分する」を「按分する」に改める。

 第897条の2(相続財産の保存)

 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が1人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。

 2 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

 第898条(共同相続の効力)

 に次の1項を加える。

 2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

 第904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)

 前3条の規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

 1 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 2 相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 第907条(遺産の分割の協議又は審判等)

 の見出し中「審判等」を「審判」に改め、同条第1項中「次条」を「次条第1項」に改め、「場合」の下に「又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合」を加え、同条第3項を削る。

 第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

 に次の4項を加える。

 2 共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 3 前項の契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 4 前条第2項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 5 家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができない。

 第918条(相続人による管理)」

 同条第2項及び第3項を削る。

 第926条(限定承認者による管理)

 第2項中「、第650条第1項」を「並びに第650条第1項」に改め、「並びに第918条第2項及び第3項」を削る。

 第936条(相続人が数人ある場合の相続財産の管理人)

 (見出しを含む。)中「管理人」を「清算人」に改める。

 第940条(相続の放棄をした者による管理)

 第1項中「によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで」を「の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」に、「の管理を継続しなければ」を「を保存しなければ」に改め、同条第2項中「、第650条第1項」を「並びに第650条第1項」に改め、「並びに第918条第2項及び第3項」を削る。

 第952条(相続財産の管理人の選任)

 の見出し及び同条第1項中「管理人」を「清算人」に改め、同条第2項中「管理人」を「清算人」に、「これ」を「、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨」に改め、同項に後段として次のように加える。

   この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

 第953条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)

 第954条(見出しを含む。)及び第955条ただし書中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改める。

 第956条(相続財産の管理人の代理権の消滅)

 の見出し及び同条第1項中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改め、同条第2項中「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に、「管理の」を「清算に係る」に改める。

 第957条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)

 第1項中「後2箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかった」を削り、「相続財産の管理人は、遅滞なく、すべて」を「相続財産の清算人は、全て」に、「一定の」を「2箇月以上の期間を定めて、その」に、「2箇月を下ることができない」を「同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない」に改める。

 第958条を削る。

 第958条の2(権利を主張する者がない場合)

 中「前条」を「第952条第2項」に、「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改め、同条を第958条とする。

 第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)

 第2項中「第958条」を「第952条第2項」に改め、同条を第958条の二とする。

二不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)(第二条関係)

改正案

現行

目第次四章(略)

第一節・第二節(略)

第三節(略)

第一款(略)

第二款 所有権に関する登記(第七十三条の二―第七十七条)

第三款~第八款(略)

(登記することができる権利等)

第三条(略)

一~九(略)

十採石権(採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)に規定する採石権をいう。第五十条、第七十条第二項及び第八十二条において同じ。)

(当事者の申請又は嘱託による登記)

第十六条(略)

2第二条第十四号、第五条、第六条第三項、第十条及びこの章(この条、第二十七条、第二十八条、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第四十一条、第四十三条から第四十六条まで、第五十一条第五項及び第六項、第五十三条第二項、第五十六条、第五十八条第一項及び第四項、第五十九条第一号、第三号から第六号まで及び第八号、第六十六条、第六十七条、第七十一条、第七十三条第一項第二号から第四号まで、第二項及び第三項、第七十六条から第七十六条の四まで、第七十六条の六、第七十八条から第八十六条まで、第八十八条、第九十条から第九十二条まで、第九十四条、第九十五条第一項、第九十六条、第九十七条、第九十八条第二項、第百一条、第百二条、第百六条、第百八条、第百十二条、第百十四条から第百十七条まで並びに第百十八条第二項、第五項及び第六項を除く。)の規定は、官庁又は公署の嘱託による登記の手続について準用する。

(申請の却下)

第二十五条(略)

一~六(略)

七申請情報の内容である登記義務者(第六十五条、第七十六条の五、第七十七条、第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)、第九十三条(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)又は第百十条前段の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。

八~十三(略)

(権利に関する登記の登記事項)

第五十九条権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。

一~五(略)

六 共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項ただし書(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)若しくは第九百八条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同条第一項の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定め又は同条第四項の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、その定め

七・八(略)

(判決による登記等)

第六十三条(略)

2(略)

3遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

(買戻しの特約に関する登記の抹消)

第六十九条の二買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

(除権決定による登記の抹消等)

第七十条登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができる。

2前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

3前二項の場合において、非訟事件手続法第百六条第一項に規定する除権決定があったときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第一項の登記の抹消を申請することができる。

4(略)

(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)

第七十条の二 登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第二項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から三十年を経過し、かつ、その法人の解散の日から三十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

第二款 所有権に関する登記

(所有権の登記の登記事項)

第七十三条の二 所有権の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの

二 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの

2 前項各号に掲げる登記事項についての登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

3前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

(相続人である旨の申出等)

第七十六条の三 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。

2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。 

3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。

4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

6 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(所有権の登記名義人についての符号の表示)

第七十六条の四 登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)

第七十六条の五 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

(職権による氏名等の変更の登記)

第七十六条の六 登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

(登記事項証明書の交付等)

第百十九条(略)

2~5(略)

6 登記官は、第一項及び第二項の規定にかかわらず、登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、法務省令で定めるところにより、第一項及び第二項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。

(所有不動産記録証明書の交付等)

第百十九条の二何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。

2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。

3 前二項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

4 前条第三項及び第四項の規定は、所有不動産記録証明書の手数料について準用する。

(地図の写しの交付等)

第百二十条(略)

2(略)

3 第百十九条第三項から第五項までの規定は、地図等について準用する。

(登記簿の附属書類の写しの交付等)

第百二十一条(略)

2何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記簿の附属書類のうち前項の図面(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の閲覧を請求することができる。

3何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、登記簿の附属書類(第一項の図面を除き、電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。

4前項の規定にかかわらず、登記を申請した者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。

5(略)

(法務省令への委任)

第百二十二条この法律に定めるもののほか、登記簿、地図、建物所在図及び地図に準ずる図面並びに登記簿の附属書類(第百五十四条及び第百五十五条において「登記簿等」という。)公開に関し必要な事項は、法務省令で定める。

(筆界特定の申請)

第百三十一条(略)

2~4(略)

5 第十八条の規定は、筆界特定の申請について準用する。この場合において、同条中「不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名又は名称、登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)」とあるのは「第百三十一条第三項各号に掲げる事項に係る情報(第二号、第百三十二条第一項第四号及び第百五十条において「筆界特定申請情報」という。)」と、「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と、同条第二号中「申請情報」とあるのは「筆界特定申請情報」と読み替えるものとする。

(筆界特定書等の写しの交付等)

第百四十九条 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、筆界特定手続記録のうち筆界特定書又は政令で定める図面の全部又は一部(以下この条及び第百五十四条において「筆界特定書等」という。)の写し(筆界特定書等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。

2・3(略)

第七章 雑則

(情報の提供の求め)

第百五十一条 登記官は、職権による登記をし、又は第十四条第一項の地図を作成するために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、その対象となる不動産の所有者等(所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)をいう。)に関する情報の提供を求めることができる。

(登記識別情報の安全確保)

第百五十二条(略)

2(略)

(行政手続法の適用除外)

第百五十三条(略)

(行政機関の保有する情報の公開に関する法律の適用除外)

第百五十四条(略)

(削る)

(秘密を漏らした罪)

第百五十九条 第百五十二条第二項の規定に違反して登記識別情報の作成又は管理に関する秘密を漏らした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

(虚偽の登記名義人確認情報を提供した罪)

第百六十条 第二十三条第四項第一号(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による情報の提供をする場合において、虚偽の情報を提供したときは、当該違反行為をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(検査の妨害等の罪)

第百六十二条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

一 第二十九条第二項(第十六条第二項において準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。

二 第二十九条第二項の規定による文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの提示をせず、若しくは虚偽の文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものを提示し、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。三 第百三十七条第五項の規定に違反して、同条第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げたとき。

(過料)

第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

2第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

三 非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号) (第三条関係)

目次

第三編(略)

第一章 共有に関する事件(第八十五条―第八十九条)

第二章土地等の管理に関する事件(第九十条―第九十二条)

第三章供託等に関する事件(第九十三条―第九十八条)

第一章共有に関する事件

第一章(共有物の管理に係る決定)

第八十五条 次に掲げる裁判に係る事件は、当該裁判に係る共有物又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十四条に規定する数人で所有権以外の財産権を有する場合における当該財産権(以下この条において単に「共有物」という。)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

一 民法 第二百五十一条第二項、第二百五十二条第二項第一号及び第二百五十二条の二第二項(これらの規定を同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)の規定による裁判

二 民法第二百五十二条第二項第二号(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定による裁判

2 前項第一号の裁判については、裁判所が次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、することができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。

一 当該共有物について前項第一号の裁判の申立てがあったこと。

二 裁判所が前項第一号の裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(民法第二百五十一条第二項(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する当該他の共有者、同法第二百五十二条第二項第一号(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する他の共有者又は同法第二百五十二条の二第二項(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する当該共有者をいう。第六項において同じ。)は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 前号の届出がないときは、前項第一号の裁判がされること。

3 第一項第二号の裁判については、裁判所が次に掲げる事項を当該他の共有者(民法第二百五十二条第二項第二号に規定する45当該他の共有者をいう。以下この項及び次項において同じ。)に通知し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、することができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。

一 当該共有物について第一項第二号の裁判の申立てがあったこと。

二 当該他の共有者は裁判所に対し一定の期間内に共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。

三 前号の期間内に当該他の共有者が裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、第一項第二号の裁判がされること。

4前項第二号の期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした当該他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る第一項第二号の裁判をすることができない。

5第一項各号の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

6第一項第一号の裁判は、当該他の共有者等に告知することを要しない。

(共有物分割の証書の保存者の指定)

第八十六条 民法第二百六十二条第三項の規定による証書の保存者の指定の事件は、共有物の分割がされた地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、前項の指定の裁判をするには、分割者(申立人を除く。)の陳述を聴かなければならない。

3 裁判所が前項の裁判をする場合における手続費用は、分割者の全員が等しい割合で負担する。

4 第二項の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(所在等不明共有者の持分の取得)

第八十七条 所在等不明共有者の持分の取得の裁判(民法第二百六十二条の二第一項(同条第五項において準用する場合を含む。次項第一号において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分の取得の裁判をいう。以下この条において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号、第三号及び第五号の期間が経過した後でなければ、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることができない。この場合において、第二号、第三号及び第五号の期間は、いずれも三箇月を下ってはならない。

一 所在等不明共有者(民法第二百六十二条の二第一項に規定する所在等不明共有者をいう。以下この条において同じ。)の持分について所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあったこと。

二 裁判所が所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 民法第二百六十二条の二第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の異議の届出は、一定の期間内にすべきこと。

四 前二号の届出がないときは、所在等不明共有者の持分の取得の裁判がされること。

五 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。

3 裁判所は、前項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、同項各号(第二号を除く。)の規定により公告した事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。

4 裁判所は、第二項第三号の異議の届出が同号の期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。

5 裁判所は、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。

6 裁判所は、前項の規定による決定をした後所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするまでの間に、事情の変更により同項の規定による決定で定めた額を不当と認めるに至ったときは、同項の規定により供託すべき金銭の額を変更しなければならない。

7 前二項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

8 裁判所は、申立人が第五項の規定による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。

9 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

10 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、所在等不明共有者に告知することを要しない。

11 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを受けた裁判所が第二項の規定による公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が同項第五号の期間が経過した後に所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、当該申立人以外の共有者による所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを却下しなければならない。

(所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与)

第八十八条 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判(民法第二百六十二条の三第一項(同条第四項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判をいう。第三項において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 前条第二項第一号、第二号及び第四号並びに第五項から第十項までの規定は、前項の事件について準用する。

3所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判の効力が生じた後二箇月以内にその裁判により付与された権限に基づく所在等不明共有者(民法第二百六十二条の三第一項に規定する所在等不明共有者をいう。)の持分の譲渡の効力が生じないときは、その裁判は、その効力を失う。ただし、この期間は、裁判所において伸長することができる。

(検察官の不関与)

第八十九条 第四十条の規定は、この章の規定による非訟事件の手続には、適用しない。

第二章 土地等の管理に関する事件

(所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令)

第九十条 民法第二編第三章第四節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、所有者不明土地管理命令(民法第二百六十四条の二第一項に規定する所有者不明土地管理命令をいう。以下この条において同じ。)をすることができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。 

一 所有者不明土地管理命令の申立てがその対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。

二 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 前号の届出がないときは、所有者不明土地管理命令がされること。

3 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。

4 裁判所は、民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の裁判又は同法第二百六十四条の七第一項の規定による費用若しくは報酬の額を定める裁判をする場合には、所有者不明土地管理人(同法第二百六十四条の二第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下この条において同じ。)の陳述を聴かなければならない。

5 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。

一 所有者不明土地管理命令の申立てを却下する裁判

二 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の申立てを却下する裁判

三 民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の申立てについての裁判

6 所有者不明土地管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記を嘱託しなければならない。

7 所有者不明土地管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

8 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者又はその共有持分を有する者のために、当該金銭を所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

9 裁判所は、所有者不明土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

10 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、所有者不明土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。

11 所有者不明土地等(民法第二百六十四条の三第一項に規定する所有者不明土地等をいう。以下この条において同じ。)の所有者(その共有持分を有する者を含む。以下この条において同じ。)が所有者不明土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。この場合において、所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者に帰属することが証明された財産を引き渡さなければならない。

12 所有者不明土地管理命令及びその変更の裁判は、所有者不明土地等の所有者に告知することを要しない。

13 所有者不明土地管理命令の取消しの裁判は、事件の記録上所有者不明土地等の所有者及びその所在が判明している場合に限り、その所有者に告知すれば足りる。

14 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることができる。

一 所有者不明土地管理命令利害関係人

二 民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の裁判利害関係人

三 民法第二百六十四条の七第一項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判所有者不明土地管理人

四 第九項から第十一項までの規定による変更又は取消しの裁判利害関係人

15 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

一 民法第二百六十四条の二第四項の規定による所有者不明土地管理人の選任の裁判

二 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の裁判

16 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の八第一項に規定する所有者不明建物管理命令及び同条第四項に規定する所有者不明建物管理人について準用する。

(管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令)

第九十一条 民法第二編第三章第五節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 民法第二百六十四条の十第二項又は第二百六十四条の十二第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。

3 裁判所は、次の各号に掲げる裁判をする場合には、当該各号に定める者の陳述を聴かなければならない。ただし、第一号に掲げる裁判をする場合において、その陳述を聴く手続を経ることにより当該裁判の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

一 管理不全土地管理命令(民法第二百六十四条の九第一項に規定する管理不全土地管理命令をいう。以下この条において同じ。)管理不全土地管理命令の対象となるべき土地の所有者

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の裁判管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の裁判管理不全土地管理人(同法第二百六十四条の九第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下この条において同じ。)

四 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による費用の額を定める裁判管理不全土地管理人

五 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による報酬の額を定める裁判管理不全土地管理人及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

4 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。

一 管理不全土地管理命令の申立てについての裁判

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の申立てについての裁判

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の申立てについての裁判

四 民法第二百六十四条の十二第二項の許可の申立てを却下する裁判

5 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

6 裁判所は、管理不全土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

7 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理不全土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地管理命令を取り消さなければならない。

8 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることができる。

一 管理不全土地管理命令利害関係人

二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の裁判管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の裁判利害関係人

四 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による費用の額を定める裁判管理不全土地管理人

五 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による報酬の額を定める裁判管理不全土地管理人及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

六 前二項の規定による変更又は取消しの裁判利害関係人

9 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

一 民法第二百六十四条の九第三項の規定による管理不全土地管理人の選任の裁判

二 民法第二百六十四条の十二第二項の許可の裁判

10 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の十四第一項に規定する管理不全建物管理命令及び同条第三項に規定する管理不全建物管理人について準用する。

(削る)

供託等に関する事件(適用除外)

第九十二条 第四十条及び第五十七条第二項第二号の規定は、この章の規定による非訟事件の手続には、適用しない。

第三章 供託等に関する事件

四 家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)(第四条関係)

改正案

目次

第二編(略)

第二章(略)

第十二節 相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件(第百九十条)

第十二節の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件(第百九十条の二)

(相続に関する審判事件の管轄権)

第三条の十一(略)

2(略)

3 裁判所は、第一項に規定する場合のほか、推定相続人の廃除の審判又はその取消しの審判の確定前の遺産の管理に関する処分の審判事件(別表第一の八十八の項の事項についての審判事件をいう。第百八十九条第一項及び第二項において同じ。及び相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件(同表の九十九の項の事項についての審判事件をいう。以下同じ。)について、相続財産に属する財産が日本国内にあるときは、管轄権を有する。

4・5(略)

(家事審判の申立ての取下げ)

第八十二条(略)

2(略)

3 前項ただし書、第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合においては、家庭裁判所は、相手方に対し、申立ての取下げがあったことを通知しなければならない。ただし、申立ての取下げが家事審判の手続の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは、この限りでない。

4・5(略)

(家事審判の申立ての取下げの擬制)

第八十三条 家事審判の申立人(第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合にあっては、当事者双方)が、連続して二回、呼出しを受けた家事審判の手続の期日に出頭せず、又は呼出しを受けた家事審判の手続の期日において陳述をしないで退席をしたときは、家庭裁判所は、申立ての取下げがあったものとみなすことができる。

(管理人の改任等)

第百四十六条(略)

2家庭裁判所は、民法第二十五条第一項の規定により選任し、又は同法第二十六条の規定により改任した管理人及び前項の規定により改任した管理人(第四項及び第六項、次条並びに第百四十七条において「家庭裁判所が選任した管理人」という。)に対し、財産の状況の報告及び管理の計算を命ずることができる。同法第二十七条第二項の場合においては、不在者が置いた管理人に対しても、同様とする。

3(略)

4 家庭裁判所は、管理人(家庭裁判所が選任した管理人及び不在者が置いた管理人をいう。次項及び第百四十七条において同じ。)に対し、その提供した担保の増減、変更又は免除を命ずることができる。

5・6(略)

(供託等)

第百四十六条の二 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

2 家庭裁判所が選任した管理人は、前項の規定による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

(処分の取消し)

第百四十七条 家庭裁判所は、不在者が財産を管理することができるようになったとき、管理すべき財産がなくなったとき(家庭裁判所が選任した管理人が管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、不在者、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任その他の不在者の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。

第十二節の二

相続財産の保存に関する処分の審判事件

第百九十条の二 相続財産の保存に関する処分の審判事件は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

2 第百二十五条第一項から第六項まで、第百四十六条の二及び第百四十七条の規定は、相続財産の保存に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、第百二十五条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。

(申立ての取下げの制限)

第百九十九条(略)

2 第八十二条第二項の規定にかかわらず、遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

第二百一条 相続の承認及び放棄に関する審判事件(別表第一の九十の項から九十五の項までの事項についての審判事件をいう。)は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

2(略)

3 家庭裁判所(抗告裁判所が限定承認の申述を受理した場合にあっては、その裁判所)は、相続人が数人ある場合において、限定承認の申述を受理したときは、職権で、民法第九百三十六条第一項の規定により相続財産の清算人を選任しなければならない。

4~9(略)

(管轄)

第二百三条

次の各号に掲げる審判事件は、当該各号に定める家庭裁判所の管轄に属する。

一 相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件相続が開始した地を管轄する家庭裁判所

二 相続人の不存在の場合における鑑定人の選任の審判事件(別表第一の百の項の事項についての審判事件をいう。)相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件において相続財産の清算人の選任の審判をした家庭裁判所

三(略)

(特別縁故者に対する相続財産の分与の審判)

第二百四条 特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てについての審判は、民法第九百五十二条第二項の期間の満了後三月を経過した後にしなければならない。

2(略)

(意見の聴取)

第二百五条 家庭裁判所は、特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てについての審判をする場合には、民法第九百五十二条第一項の規定により選任し、又は第二百八条において準用する第百二十五条第一項の規定により改任した相続財産の清算人(次条及び第二百七条において単に「相続財産の清算人」という。)の意見を聴かなければならない。

(即時抗告)

第二百六条 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。

一 特別縁故者に対する相続財産の分与の審判申立人及び相続財産の清算人

二(略)

2 第二百四条第二項の規定により審判が併合してされたときは、申立人の一人又は相続財産の清算人がした即時抗告は、申立人の全員に対してその効力を生ずる。

(相続財産の換価を命ずる裁判)

第二百七条 第百九十四条第一項、第二項本文、第三項から第五項まで及び第七項の規定は、特別縁故者に対する相続財産の分与の審判事件について準用する。この場合において、同条第一項及び第七項中「相続人」とあり、並びに同条第二項中「相続人の意見を聴き、相続人」とあるのは「相続財産の清算人」と、同条第三項中「相続人」とあるのは「特別縁故者に対する相続財産の分与の申立人若しくは相続財産の清算人」と、同条第四項中「当事者」とあるのは「申立人」と、同条第五項中「相続人」とあるのは「特別縁故者に対する相続財産の分与の申立人及び相続財産の清算人」と読み替えるものとする。

(管理者の改任等に関する規定の準用)

第二百八条 第百二十五条の規定は、相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、同条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。

(家事調停の申立ての取下げ)

第二百七十三条 家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

2 前項の規定にかかわらず、遺産の分割の調停の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

3 第八十二条第三項及び第四項並びに民事訴訟法第二百六十一条第三項及び第二百六十二条第一項の規定は、家事調停の申立ての取下げについて準用する。この場合において、第八十二条第三項中「前項ただし書、第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項」とあるのは「第二百七十三条第二項」と、同法第二百六十一条第三項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは「家事調停の手続の期日」と読み替えるものとする。

別表第一(略)

事項

根拠となる法律の規定

(略)

相続財産の保存

八十九

相続財産の保存に関する処分

民法第八百九十七条の二第一項及び第二項

相続の承認及び放棄

九十

相続の承認又は放棄をすべき期間の伸長

民法第九百十五条第一項ただし書

(略)

九十四

限定承認を受理した場合における相続財産の清算人の選任

民法第九百三十六条第一項

(略)

九十九

相続人の不存在の場合における相続財産の清算に関する処分

民法第九百五十二条及び第九百五十三条

百一

特別縁故者に対する相続財産の分与

民法第九百五十八条の二第一項

(略)

別表第二(略)

事項

根拠となる法律の規定

(略)

十三

遺産の分割の禁止

民法第九百八条第四項及び第五項

(略)

(不動産登記法の準用)

第八条 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第七条から第十一条まで、第十三条、第十六条第一項、第十八条、第二十四条、第二十五条第一号から第九号まで及び第十二号、第六十七条第一項から第三項まで、第七十一条、第百十九条(第六項を除く。)、第百二十一条第三項から第五項まで、第百五十三条から第百五十六条まで、第百五十七条第一項から第三項まで、第五項及び第六項並びに第百五十八条の規定は、夫婦財産契約に関する登記について準用する。この場合において、同法第十八条中「政令」とあるのは、「法務省令」と読み替えるものとする。

附 則

  (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 第二条中不動産登記法第百三十一条第五項の改正規定及び附則第三十四条の規定 公布の日

 二 第二条中不動産登記法の目次の改正規定、同法第十六条第二項の改正規定、同法第四章第三節第二款中第七十四条の前に一条を加える改正規定、同法第七十六条の次に五条を加える改正規定(第七十六条の二及び第七十六条の三に係る部分に限る。)、同法第百十九条の改正規定及び同法第百六十四条の改正規定(同条に一項を加える部分を除く。)並びに附則第五条第四項から第六項まで、第六条、第二十二条及び第二十三条の規定 公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日

 三 第二条中不動産登記法第二十五条第七号の改正規定、同法第七十六条の次に五条を加える改正規定(第七十六条の四から第七十六条の六までに係る部分に限る。)、同法第百十九条の次に一条を加える改正規定、同法第百二十条第三項の改正規定及び同法第百六十四条の改正規定(同条に一項を加える部分に限る。)並びに附則第五条第七項の規定 公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日

 (相続財産の保存に必要な処分に関する経過措置)

第二条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に第一条の規定による改正前の民法(以下「旧民法」という。)第九百十八条第二項(旧民法第九百二十六条第二項(旧民法第九百三十六条第三項において準用する場合を含む。)及び第九百四十条第二項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分は、施行日以後は、第一条の規定による改正後の民法(以下「新民法」という。)第八百九十七条の二の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分とみなす。

2 施行日前に旧民法第九百十八条第二項の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分の請求(施行日前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、施行日以後は、新民法第八百九十七条の二の規定によりされた相続財産の保存に必要な処分の請求とみなす。

 (遺産の分割に関する経過措置)

第三条 新民法第九百四条の三及び第九百八条第二項から第五項までの規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と、新民法第九百八条第二項ただし書、第三項ただし書、第四項ただし書及び第五項ただし書中「相続開始の時から十年」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時」とする。

 (相続財産の清算に関する経過措置)

第四条 施行日前に旧民法第九百三十六条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、施行日以後は、新民法第九百三十六条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

2 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、新民法第九百四十条第一項及び第九百五十三条から第九百五十六条までの規定の適用については、新民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

3 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定によりされた相続財産の管理人の選任の請求(施行日前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、施行日以後は、新民法第九百五十二条第一項の規定によりされた相続財産の清算人の選任の請求とみなす。

4 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における当該相続財産の管理人の選任の公告、相続債権者及び受遺者に対する請求の申出をすべき旨の公告及び催告、相続債権者及び受遺者に対する弁済並びにその弁済のための相続財産の換価、相続債権者及び受遺者の換価手続への参加、不当な弁済をした相続財産の管理人の責任、相続人の捜索の公告、公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者の権利並びに相続人としての権利を主張する者がない場合における相続人、相続債権者及び受遺者の権利については、なお従前の例による。

5 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における特別縁故者に対する相続財産の分与については、新民法第九百五十八条の二第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)

第五条 第二条の規定(附則第一条各号に掲げる改正規定を除く。)による改正後の不動産登記法(以下「新不動産登記法」という。)第六十三条第三項、第六十九条の二及び第七十条の二の規定は、施行日以後にされる登記の申請について適用する。

2 新不動産登記法第七十条第二項の規定は、施行日以後に申し立てられる公示催告の申立てに係る事件について適用する。

3 新不動産登記法第百二十一条第二項から第五項までの規定は、施行日以後にされる登記簿の附属書類の閲覧請求について適用し、施行日前にされた登記簿の附属書類の閲覧請求については、なお従前の例による。

4 第二条の規定(附則第一条第二号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下「第二号新不動産登記法」という。)第七十三条の二の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第二号施行日」という。)以後に登記の申請がされる所有権の登記の登記事項について適用する。

5 登記官は、第二号施行日において現に法人が所有権の登記名義人として記録されている不動産について、法務省令で定めるところにより、職権で、第二号新不動産登記法第七十三条の二第一項第一号に規定する登記事項に関する変更の登記をすることができる。

6 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、「知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。

7 第二条の規定(附則第一条第三号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下この項において「第三号新不動産登記法」という。)第七十六条の五の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があった場合についても、適用する。この場合において、第三号新不動産登記法第七十六条の五中「所有権の登記名義人の」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人となった者の」と、「あった日」とあるのは「あった日又は第三号施行日のいずれか遅い日」とする。

 (第三号施行日の前日までの間の読替え)

第六条 第二号施行日から第三号施行日の前日までの間における第二号新不動産登記法第十六条第二項の規定の適用については、同項中「第七十六条の四まで、第七十六条の六」とあるのは、「第七十六条の三まで」とする。

 (家事事件手続法の一部改正に伴う経過措置)

第七条 第四条の規定による改正後の家事事件手続法(以下この条において「新家事事件手続法」という。)第百九十九条第二項及び第二百七十三条第二項の規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新家事事件手続法第百九十九条第二項中「十年を経過した後」とあるのは「十年を経過した後(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第24号)の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から五年を経過した後)」と、新家事事件手続法第二百七十三条第二項中「十年を経過した後」とあるのは「十年を経過した後(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から五年を経過した後)」とする。

2 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における特別縁故者に対する相続財産の分与の審判については、新家事事件手続法第二百四条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

3 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、新家事事件手続法第二百五条から第二百八条までの規定の適用については、新民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。

20220502追記

『登記研究』886号、887号、888号、889号、890号(株)テイハン

法務省民事局総務課長 村松秀樹、法務大臣官房参事官 大谷太、法務省民事局参事官脇村真治、東京地方検察庁検事 川畑憲司、法務省民事局付 芳賀朝哉、法務省民事局付 宮崎文康、東京地方裁判所判事 渡辺みどり、弁護士 小田智典、法務省民事局付 中丸隆之、法務省民事局付 福田宏晃「令和3年民法・不動産登記法等改正及び相続土地国庫帰属法の解説1~5」

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

     令和3年(2021年)2月2日、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案が発出されました。おそらくこの後、要綱案に関する補足説明が発出されるのではないかと思います。要綱案を基に考えてみます。

 

・民法等の見直し

相隣関係

209条 隣の土地を使用する目的が具体的になっています。

233条 根に関する記載が削除されるようです。竹林と土地の所有者が違う場合、竹林が共有である場合の対処方法が明確に定められることになりそうです。

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権の創設・・・水道管などライフラインが他の土地を通って設置されている場合は、修繕・新たに設置することが出来ることが、民法上の権利となります。

共有等

共有物に関して、使用している人としていない人との対価に関する定めと使用していない人も含めた共有者の使用に対する善管注意義務の創設。(民法249条)

共有物の変更・管理についての裁判の創設(連絡が取れない人がいる場合)。(民法251条)

民法252条 共有者のうち、連絡が取れない人がいる場合は、その人を外して共有物の管理を行うことが出きることの明記。共有者が短期賃貸借契約を締結することが出来ることを明記(民法602条)。共有物を管理する者(共有物の管理者)の規定の設定。

変更・管理の決定の裁判の手続の進め方(申立て・公告後1カ月の経過・裁判所による裁判。)。

民法258条 現物分割、全面的価格賠償(最判平成8年10月31日)の明記。相続開始の時から10年を経過したときは、相続人の異議がない限り、相続財産に属する共有物の持分について、民法258条の規律による分割請求をすることができる。

所在等不明共有者の持分の取得

要件

  • 共有者の中に所在不明の者がいる。
  • 裁判所へ持分所得の請求を求めて、裁判を行う。
  • 所在不明の者から異議が出ない。
  • 不動産に関する権利のうち、準共有(民法264条)についても準用する。

手続

1 共有者からの裁判の申立て

2 裁判所による公告(一定の期間(3か月以内)に異議を申し立てることが出来ること)

3 裁判所が所在が判明している共有者に対して、公告したことを通知。

4 申立人は、裁判所が定めた金額を供託。

所在等不明共有者の持分の譲渡

要件

・所在等不明共有者以外の共有者が、特定の者に対して持分を譲渡したときに、所在等不明共有者の共有持分を特定の者に対して譲渡する権利を与えることを内容とする(共有状態の解消)。

手続

・裁判所から、所在等不明共有者の共有持分を特定の者に対して譲渡する権利を与える裁判を得てから、原則として2か月以内に実行する必要がある。

所有者不明土地管理命令「等」・・・所有者不明建物管理命令を含む。(非訟事件)

裁判所は、利害関係人の請求により、1か月の公告経過後に所有者不明土地管理人を選任し、管理を命ずる処分(所有者不明土地管理命令)を行うことが出来る。命令の効力は、所有者不明土地の上にある動産(固定されていない倉庫など)に及ぶ。

所有者不明土地管理命令は、何度でも発令することが出来る。

所有者不明土地管理人の権限・・・管理、処分(売却など)。

所有者不明土地管理命令の登記の嘱託と、所有者不明土地管理命令の登記の抹消の嘱託・・・登記原因は?登記権利者、登記義務者?申請人?添付情報は?

所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人が原告又は被告。弁護士を想定?

所有者不明土地管理人の義務

・善管注意義務・忠実義務・公平義務。

・解任・・・利害関係人の請求により、裁判所が判断

・辞任・・・裁判所の許可を得ることが条件

・所有者不明土地管理人の報酬・業務上の費用・・・裁判所が定める。

・所有者不明土地から収益が出た場合(貸土地などの賃料)、供託可能で供託した場合は公告義務。

所有者不明土地管理命令の取消し事由

・管理すべき財産がなくなったとき(売却して、代金は全額供託したなど)。

・財産の管理を継続することが相当でなくなったとき・・・想像できません。

・所在不明だった所有者が、裁判所で自己に帰属することを証明したとき。

所有者不明建物管理命令

・所有者不明土地管理命令とほぼ同じ規律。マンション(建物の区分所有等に関する法律)は対象外。

管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

・管理不全・・・所有者による土地・建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合。

・所有者は、裁判所の命令によって管理人が管理することに同意するのでしょうか?

・管理不全土地管理命令の対象とされた土地・建物について、保存行為・管理行為を超える処分を行うには、その所有者の同意がなければならない。

その他は所有者不明土地・建物管理命令とほぼ同じ。

相続等

民法918条2項、3項、926条、940条1項、2項。

・家庭裁判所が、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができない場合(原則として可能。相続財産の清算人)・・・相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき又は民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているとき。

・不在者財産管理人(民法27条から29条まで)、限定承認をした人、相続放棄をした人についても同じ規律に揃える。

・相続放棄をした人が相続財産を占有している場合、管理する期間・・・相続人か相続財産の清算人に対して財産を引き渡すまでの間。

・不在者財産管理人、相続財産の清算人(管理する財産が全て金銭のとき)について、管理すべき財産の全部を供託・公告したときを取消し(退任)事由とする。

・相続財産の管理人から相続財産の清算人への名称変更(民法936条1項、民法952条)。

民法第952条第2項、957条。

・家庭裁判所は、相続財産の清算人が選任されてから、6カ月以内の公告。家庭裁判所の公告があった場合は、相続財産管理人も全ての相続財産債権者と受遺者に公告する義務。

民法第903条から第904条の2(特別受益、寄与分)

・原則・・・相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。

例外・・・相続開始の時から10年を経過する前(6か月の個別猶予有り)に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

・遺産の分割の調停又は審判の申立て・申立ての取下げの要件・・・相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得ることが必要。

遺産の分割の禁止(民法907条など)

・共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる(相続開始の時から10年以内。)。更新の契約も同じ。

・民法第907条第2項家庭裁判所による遺産分割の禁止(相続開始の時から10年以内)。更新も同じ。

不動産登記法等の見直し

所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み

・不動産の「所有権」の登記名義人が「死亡」(自然人)し、相続等による所有権の移転が生じた場合における公法上の「登記申請」義務・・・自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内。相続人に対する特定遺贈・包括遺贈についても同じ。

「登記申請」・・・法定相続分、相続人申告登記(仮称)の申出も登記申請に含まれる。

・相続登記等の申請義務違反の効果・・・10万円以下の過料。

・相続人申告登記(仮称)・・・登記官にたいして、相続開始の事実と自らが相続人であることを申し出ること。添付情報は戸(除)籍謄本等。遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請する義務。→この仕組みが機能すると、所有権については、相続開始後13年以内に相続登記が行われる。

登記官は職権で付記登記を行う。登記の目的、登記原因は?

・遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記手続(不動産登記法60条)・・・登記権利者が単独で申請。

・法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続(不動産登記法60条)・・・登記権利者が単独で申請(他の相続人の相続の放棄、特定財産承継遺言、相続人が受遺者である遺贈など。)。

・権利能力を有しない所有権の登記名義人についての符号の表示・・・登記官は職権で符号を表示することができる。どんな符号?

所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み

・変更があった日から2年以内の登記申請義務。5万円以下の過料。

・登記官は、職権(自然人は申出があったとき)で氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。法人は職権。

登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み

・所有権の登記名義人が登記官に、検索用情報を提供。住民票?

・登記官は、住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会を行うなどして自然人である登記名義人の死亡の事実や氏名又は名称及び住所の変更の事実を把握。

登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化

・不動産登記法70条の条件追加

法務省令で定める方法により調査を行った場合

買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したとき・・・登記権利者は、単独申請。

解散した法人の担保権に関する登記の単独抹消手続

1法務省令で定める方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しない。

2被担保債権の弁済期から30年を経過

3法人の解散の日から30年を経過

その他の見直し事項

・所有権について、会社法人等番号が登記事項。

・所有権について、登記名義人の住所が日本でないときは、日本における連絡先と人の氏名住所その他の法務省令で定めるものが登記事項。

・外国に住所を有する自然人、法人についての住所証明情報

外国政府等の発行した住所証明情報か、住所を証明する公証人の作成に係る書面(外国政府等の発行した本人確認書類の写しが添付されたものに限る。)の2つに限定する。

所有不動産記録証明制度

・誰でも(自然人、法人問わず)登記官に対して、所有権(と法務省令で定めるもの)に関して名寄せの証明書請求が出来る。相続人は、被相続人に関する名寄せが出来る。

・所有不動産記録証明書の請求・取得は、「代理人」による交付請求も許容。

被害者保護のための住所情報の公開の見直し

不動産登記法第119条・・・登記官は、申出があったときは、法務省令で定める措置をする。

参考

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.html

土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設

共有の場合・・・共有者の全員行うときに限定

法務大臣が国庫帰属を承認する場合

  • 建物がない。
  • 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されていない。
  • 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれていない。
  • 土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されていない

⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがない土地

⑥ 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要しないもの

⑦ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存しない。

⑧ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存しない土地

⑨ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟がない。

⑩ ①から⑨までに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をすることができる。

・承認は、土地の一筆ごと。

・承認申請者は、承認があったときは、国有地の種目ごとにその管理に要する「10年分の標準的な費用の額を納付」。

登記の目的、登記原因は?

参考

法務省 法制審議会―民法不動産登記法部会

「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」

https://www.okinawa-shiho-shoshi.net/wp-content/uploads/9d75ff4ad984aa158df82f0d97986134.pdf

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