ベトナム社会主義共和国 2020 年を目標とする法・司法改革支援プロジェクト (PHAP LUAT 2020)より

2016年加工

2020 年を目標とする法・司法改革支援プロジェクト (PHAP LUAT 2020)より

国会 ベトナム社会主義共和国

法律番号:91/2015/QH13 独立・自由・幸福

民法典

ベトナム社会主義共和国憲法に基づき, 国会は民法典を発行する。

第四編 相続

第XXI章 総則

第609条 相続権

個人は自己の財産の処分のために遺言を作成し,法令に基づいて相続人に自己の財産を残し,遺言又は法令に基づいて遺産を享受する権利を有する。

個人でない相続人は遺言に従って遺産を享受する権利を有する

第610条 個人の相続に対する平等権

すべての個人は,自己の財産を他人に残す権利,遺言又は法律に基づいて遺産を享受する権利に関して平等である。

第611条 相続開始の時点・場所

1. 相続開始の時点は,財産を有する者が死亡した時点である。裁判所が人の死亡宣告をした場合,相続開始の時点は,本法典第71条2項で確定される日である。

2. 相続開始の場所は,遺産を残した者の最後の居所である。最後の居所が確定されない場合,相続開始の場所は,遺産の全部がある場所又は大部分がある場所である。

第612条 遺産

遺産は,死亡した者の固有の財産,他人との共有財産のうち死亡した者の財産持分から構成される。

第613条 相続人

個人である相続人は,相続開始時点において生存している者又は遺産を残した者が死亡する前に胎児となって相続開始時点の後に出生し生存している者でなければならない。遺言に基づく相続人が個人でない場合,相続開始時点において存在していなければならない。

第614条 相続人の権利と義務の発生時点

相続開始時点から,相続人は死亡した者が残した財産に対する権利,義務を有する。

第615条 死亡した者の残した財産的義務の履行

1. 他の合意がある場合を除き,相続人は,死亡した者の残した財産の範囲内で財産的義務を履行する責任を負う。

2. 遺産が分割されていない場合,死亡した者の残した財産的義務は,遺産管理者によって,死亡した者の残した財産の範囲内で,各相続人との合意に基づいて履行される。

3. 他の合意がある場合を除き,遺産が分割された場合,各相続人は,死亡した者の残した財産的義務を,自己が受け取った財産部分を超えないように履行する。

4. 個人でない相続人が遺言に基づいて遺産を享受する場合,個人の相続人と同じように死亡した者の残した財産的義務を履行しなければならない。

第616条 遺産管理者

1. 遺産管理者は,遺言により指定された者又は各相続人との合意により選定された者である。

2. 遺言で遺産管理者を指定せず,各相続人がまだ遺産管理者を選定できない場合,遺産を占有し,使用し,管理している者は,各相続人が遺産管理者を選定できるまで,その遺産を引き続き管理する。

3. この条第1項及び第2項の規定に基づき相続人がまだ確定されず,遺産管理者がまだいない場合,その遺産は権限のある国家機関によって管理される。

第617条 遺産管理者の義務

1. 本法典第616条1項,3項に規定する遺産管理者には,次の義務がある。

a) 遺産のリストを作成する;法律の他の規定がある場合を除き,他人に占有されている,死亡した者の遺産に属する財産を回収する。

b) 遺産を保管する;文書による各相続人の同意を得なければ,財産の売却,交換,贈与,質入れ,抵当の設定又はその他の形式による財産の処分をすることができない。

すみれ

「日本の遺言執行者とは、また違うみたい。」

c) 各相続人に遺産の状態について通知する。

d) 自己の義務に違反して損害を加えた場合,損害を賠償する。

đ) 相続人の請求に基づき遺産を引き渡す。

2. 本法典第616条2項に規定する遺産の占有者,使用者,管理者には,次の義務がある。

a) 遺産を保管する;財産の売却,交換,贈与,質入れ,抵当の設定又はその他の形式による財産の処分をすることができない。

b) 各相続人に遺産について通知する。2020年を目標とする法・司法改革支援プロジェクト(PHAPLUAT2020)

c)自己の義務を違反して損害を加えた場合,損害を賠償する。

d)遺産を残した者との契約による合意又は相続人の請求に基づき遺産を引き渡す。

第618条遺産管理者の権利

1. 本法典第616条1項,3項に規定する遺産管理者は,次の権利を有する。

a) 相続財産に関係する第三者との関係において相続人を代理する。

b) 各相続人との合意により報酬を得る。

c)遺産の保管費用の支払いを受ける。

2. 本法典第616条2項に規定する遺産の占有者,使用者,管理者は次の権利を有する。

a) 遺産を残した者との契約による合意又は相続人の同意に基づき,遺産を引き統き使用することができる。

b) 各相続人との合意に基づき報酬を得る。

c)遺産の保管費用の支払いを受ける。

3.各相続人間で報酬額について合意に達しない場合,遺産管理者は合理的報酬額を得る。

第619条同時点に死亡した互いの遺産の相続権を有する複数の者の相続

互いの遺産の相続権を有する複数の者が,同時点で共に死亡したか,いずれの者が先に死亡したか確定できないことにより同時点に死亡したと見なされる場合(以下,「同時点で共に死亡した」と総称する。),それらの者は,互いの遺産を相続することができない。各自の遺産は,その者の相続人によって受け取られる。ただし,本法典第671条の規定に基づく代襲相続の場合を除く。

第620条遺産受領の拒否

1. 相続人は,遺産の受領を拒否する権利を有する。ただし,その拒否が他人に対する自己の財産に関する義務の履行を逃れる目的である場合を除く。

2. 遺産受領の拒否は,文書によりなされ,周知のため遺産管理者,他の各相続人,遺産分割の任務を引き受ける者に通知されなければならない。

3. 遺産受領拒否は,遺産分割前に表明されなくてはならない。

すみれ

「相続放棄のようなものかな。」

第621条遺産を享受する権利のない者

1. 次の者は,遺産を享受する権利がない。

a) 遺産を残した者に対する故意による生命・健康の侵害行為又は著しく苛め,虐待する行為,その者の名誉,人格を著しく侵害する行為に関して有罪判決を受けた者

b) 遺産を残した者に対する扶養義務に著しく違反した者

c)他の相続人が享受する権利のある遺産の一部又は全部を得る目的で,他の相続人の生命を故意に侵害した行為に関して(有罪)判決を受けた者

2020年を目標とする法・司法改革支援プロジェクト(PHAPLUAT2020)

d)遺産を残した者の意思に反して遺産の一部又は全部を得る目的で,遺言の作成において,遺産を残した者に対して詐欺,強追又は妨害;遺言の偽造,遺言の変造,遺言の破損,遺言の隠匿をする行為をした者

2. 遺産を残した者が,この条1項に規定する者の行為を知っているが,そのまま遺言に従って遺産をそれらの者に提供する場合は,それらの者は,遺産を享受する。

第622条実際に相続する者4がいない財産

遺言,法令に従った相続人がいない場合,又は相続人がいるが,遺産を享受する権利がないか,遺産の受領を拒否する場合,財産に関する義務を履行した後に残った,実際に相続する者がない遺産は国家に属する。

第623条相続の時効

1. 相続人の分割請求の時効は相続開始から不動産につき30年,動産につき10年である。この期間が満了したときは,遺産はその遺産を管理している相続人に属する。遺産を管理している相続人がいない場合,遺産は次のように解決される。

a) 本法典236条の規定に基づき遺産を占有する者の所有権に属する。

b) この項第a号に規定する占有者がいない場合は,遺産は国家に属する。

2.相続人が自らの相続権の確認又は他人の相続権の否認を請求する時効は,相続開始から10年である。

3.相続人に対する死亡した者が残した財産についての義務履行請求権の時効は,相続開始から3年である。

第XXII章遺言による相続

第624条遺言遺言は,死亡時に,他人に自己の財産を移転することを目的とする個人の意思を表明するものである。

第625条遺言者

1. 本法典第630条1項a号の規定に従った条件を十分に備える成年者は,自分の財産を決定するため遺言をする権利を有する。

2. 満十五歳から十八歳未満の者は,遺言をすることにつき父,母,又は後見人の同意を得たときは,遺言をすることができる。

第626条 遺言者の権利

遺言者は,次の権利を有する。

1. 相続人を指名する。相続人の遺産を享受する権利を排除する。

2. 各相続人に対する遺産の分け前を決める。

3. 遺贈,祭祀のために遺産における財産の一部を保存する。

4. 相続人に義務を引き受けさせる。

5. 遺言保管者,遺産管理者,遺産分割者を指名する。

第627条 遺言の形式

遺言は文書によりなされなければならない;文書により遺言することができないときは,口頭で遺言することができる。

第628条文書による遺言

文書による遺言は,次のものからなる。

1. 証人のない文書による遺言

2. 証人のある文書による遺言

3. 公証された文書による遺言

4. 確証された文書による遺言

第629条 口頭による遺言

1. ある者が,死亡の危急に迫っており,文書による遺言をすることができない場合,口頭による遺言をすることができる。

2. 口頭による遺言をした時点から3か月の後,遺言者が存命で意識がはっきりする場合,口頭による遺言は当然取り消される。

第630条 合法的な遺言

1. 合法的な遺言は,次の条件を満たすものである。

a) 遺言者は,遺言作成時において,意識がはっきりしていて,詐欺,強迫,強制を受けていない。

b) 遺言の内容が法律の禁止事項に違反せず,社会道徳に反しない。遺言の形式が法律の規定に反しない。

2. 満十五歳から満十八歳未満の者の遺言は,文書によりなされなければならず,父,母,あるいは後見人の遺言作成についての同意を得なければならない。

3. 身体障害者又は識字できない者の遺言は,証人が文書で作成して,公証あるいは確証されなければならない。

4. 公証,確証のない文書による遺言は,この条第1項に規定される各条件を全て満たす場合に限り,合法的と看做される。

5. 口頭で遺言をする者が少なくとも二人の証人の前で最後の意思を表明して,その表明の日の後に証人が筆記してその文書に共に署名するか又は指印を押した場合,その口頭による遺言は,合法的なものと看做される。口頭で遺言をする者が最期の意思を表明した日から5営業日以内に,遺言は公証人あるいは確証権限を有する機関により証人の署名又は押印を確認されなくてはならない,

第631条 遺言の内容

1. 遺言は,次の主要な各内容からなる。

a) 遺言をした年月日

b) 遺言者の氏名と居所

c) 遺産を受領する,個人の氏名,機関,組織の名称

d) 残した遺産と遺産の存在場所

2. この条第1項で規定する各内容のほか,遺言はその他の各内容を有することができる。

3. 遺言を略字や記号で書くことはできない。遺言が複数の頁により構成されているときは,各頁に番号を記し,遺言者が署名又は指印する。

遺言が消去,修正された場合,遺言を自ら書いた者又は遺言の証人は,消去,修正の隣に,名前を記載しなければならない。

第632条 遺言の証人

次の場合を除き,何人も遺言の証人となることができる。

1. 遺言者の遺言又は法令による相続人

2. 遺言の内容に関係する財産の権利,義務を有する者

3. 未成年者,民事行為能力喪失者,行為認識制御困難者

第633条 証人のいない文書による遺言

遺言者は,自筆で遺言書を書き,署名しなければならない。

証人のいない文書による遺言は,本法典第631条の規定を遵守しなければならない。

第634条 証人のいる文書による遺言

遺言者が自筆で遺言書を書かない場合,遺言書を自らタイプ打ちをする,又は他人に書くこと若しくはタイプ打ちをすることを依頼することができるが,少なくとも二人の証人がいなければならない。遺言者は,証人の面前で遺言書に署名し,又指印をしなければならない。証人は,遺言者の署名又は指印を確認し,その遺言書に署名する。

証人のいる文書による遺言をするにあたっては,本法典第631条及び第632条の規定を遵守しなければならない。第635条 公証又は確証のある遺言

遺言者は,遺言書の公証又は確証を請求することができる。

第636条 公証営業組織又は社級人民委員会における遺言の作成の手続

公証営業組織又は社級人民委員会における遺言の作成は,次の手続を遵守しなければならない。

1. 遺言者は,公証人又は社級人民委員会の確証権限者の前で,自分の遺言の内容を宣言する。公証人又は社級人民委員会の確証権限者は,遺言者が宣言した遺言の内容を書き取らなければならない。遺言書が,正確に書き取られ,自分の意思が適切に表明されたことを確認した後,遺言者は,その遺言書に署名し,又は指印を押す。公証人又は社級人民委員会の確証権限者は,遺言書に署名する。

2. 遺言者が遺言書を読めない,又は聞けない,署名できない,指紋を押すことができない場合,証人を依頼し,その証人は,公証人又は社級人民委員会の確証権限者の面前で,確認署名をしなければならない。公証人又は社級人民委員会の確証権限者は,遺言者及び証人の面前で遺言書を認証する。

第637条 遺言を公証し,確証することのできない者

公証人,社級人民委員会の確証権限者が次の各場合のいずれかに属する場合,遺言を公証し,確証することができない。

1. 遺言者の遺言又は法令に基づく相続人

2. 遺言又は法令に基づく相続人である父,母,妻又は夫,子がいる者

3. 遺言の内容に関係する財産の権利,義務を有する者

第638条 公証され,確証された遺言と同一の価値を有する文書による遺言

1. 公証又は確証を請求することができない場合に,大隊以上の隊長に確認される軍人の遺言

2. 船,飛行機に乗っている者の,その船,飛行機の長によって確認される遺言

3. 病院,治療施設,その他静養施設で治療している者の,病院,施設の責任者に確認される遺言

4. 山岳地帯,島嶼部において考察,探査,研究をしている者の,部門責任者によって確認される遺言

5. 外国滞在中のベトナム人の,その国のベトナムの領事機関,外交代表者に承認される遺言

すみれ

「これはベトナムの人にとっては良いかも。」

6. 臨時的に拘置されている者,暫定留置されている者,監獄にいる者,教育施設, 治療施設において行政処罰措置を受けている者の,その施設の責任者に確認される遺言

第639条 公証人によって遺言者の所在地で作成される遺言

1. 遺言者は,公証人に対し,自己の所在地に来て遺言を作成するよう請求することができる。

2. 遺言者の所在地で作成する手続は,本法典第636条の規定に基づき公証営業組織における手続と同じように行われる。

第640条 遺言の修正,補充,代替,撤回

1. 遺言者は,いつでも遺言を修正し,補充し,代替し,撤回することができる。

2. 遺言者が遺言を補充する場合,作成済みの遺言と補充した部分は,同等の法的効力を有する。作成済みの遺言の一部と追加した部分が矛盾するときは,追加した部分のみ,法的効力を有する。

3. 遺言者が新遺言を遺言に代替する場合,前の遺言は撤回される。

第641条 遺言の寄託

1. 遺言者は,公証営業組織に対し,遺言書を保管するか,他者に遺言を寄託するよう請求することができる。

2. 公証営業組織が遺言書を保管する場合,本法典又は公証に関する法令の規定に基づき保管,保存しなければならない。

3. 遺言書を保管する者は,次の義務がある。

a) 遺言の内容の秘密を保持する。

b) 遺言書を保存,保管する;遺言書を紛失し,破損した場合,遺言者に直ちに通知しなければならない。

c) 遺言者が死亡した時,遺言書を相続人又は遺言を公表する権限を有する者に引き渡さなければならない。遺言書の引渡しは,文書によりなされなければならず,少なくとも二人の証人の前で,引渡人と受取人に署名される。

すみれ

「コピーはもらえないのかな。」

第642条 紛失し,破損した遺言

1. 相続開始の時点以降,遺言書が紛失又は破損して,遺言者の意思が十分に表明することができず,遺言者の願望を事実どおりに証明する証拠がない場合,遺言がないと看做され,法定相続に関する規定を適用する。

2. 遺産がまだ分割されないうちに遺言が見つかった場合,遺産は,その遺言に従って分割される。

3.遺産分割請求の時効期間経過前で,遺産分割後に遺言を見つけた場合,遺言に従った相続人が請求すれば,遺言に従って再分割しなければならない。

第643条 遺言の効力

1. 遺言は,相続開始の時点から効力を有する。

2. 遺言は,次の場合において,全部又は一部の効力を有しない。

a) 遺言に従った相続人が,遺言者より前に又は同時に死亡した

b) 相続人であると指定された組織,機関が相続開始時に存在しない。

遺言に従った相続人が複数いるが,その中に遺言者より前に若しくは同時に死亡した相続人がいる,又は遺言に従った相続人であると指定されたいずれかの機関,組織が相続開始時に存在しない場合,その個人,機関,組織に関係する遺言の部分のみが効力を有しない。

3. 相続人に残された遺産が相続開始の時点において存在しない場合,遺言は効力を有しない;相続人に残された遺産の一部だけが存在する場合,存在する遺産に関する遺言の部分は効力を有する。

4. 遺言に合法でない部分があるが,残りの部分に影響を与えない場合,その合法でない部分のみが効力を有しない。

5. 一人の者が,一つの財産に対して複数の遺言書を残した場合,最後の遺言書のみが効力を有する。

第644条 遺言の内容にかかわらない相続人

1. 遺言者から遺産を享受させてもらえない又は遺産が法律に基づき分割された際の法定相続人の一人分の三分の二より少ない遺産の分しか享受することができない場合,次の者は,法定相続人の一人分の三分の二と同等の遺産の分を享受することができる。

a) 未成年の子,父,母,妻,夫

b) 成年者となっているが,労働能力がない子

2.この条1項の規定は,本法典第620条の規定に基づき遺産受領を拒否した者,又は第621条1項の規定に基づき遺産を享受する権利を有しない者に対しては適用されない。

第645条 祭祀に用いられる遺産

1. 遺言者が遺産の一部を祭祀用に残した場合,その遺産の分は相続の対象にならず,遺言で指定された者に引き渡され,祭祀のために管理される;指定された者が遺言を適切に,又は各相続人の合意に基づいて実施しない場合,各相続人は,祭祀用の遺産を祭祀のために管理するその他の者に引き渡す権利を有する。

遺言者が祭祀用の遺産管理者を指定しない場合,各相続人は,祭祀用の遺産管理者を選任する。

遺言に従った相続人全てが死亡した場合,祭祀用の遺産は,法定相続人の中でその遺産を合法的に管理している者に属する。

2. 死亡した者の全財産がその者の財産義務を精算するのに十分ではない場合,祭祀用の遺産を残すことができない。

第646条 遺贈

1. 遺贈とは,その他の者に贈与するために,遺言者が遺産の一部を残すことである。遺贈は遺言に明確に記載されなければならない。

2. 受遺者が個人の場合,相続開始時点において生存している又は遺産を残した者が死亡する前に胎児になって相続開始の後に出生し生存していなくてはならない。受贈者が個人でない場合,相続開始時点で存在していなくてはならない。

3. 受遺者は,遺贈される遺産の分に対する財産義務を履行しなくてもよい。遺言者の全財産が遺言者の財産義務を精算するのに不足している場合,遺贈用の遺産は遺言者の残りの義務履行に用いられる。

第647条 遺言の公表

1. 文書による遺言が公証営業組織に保管される場合,公証人が遺言の公表者となる。

2. 遺言者が遺言の公表者を指定した場合,その者は遺言を公表する義務を負う;遺言者が遺言の公表者を指定しない又は指定したが指定された者が遺言の公表を拒否する場合,残りの相続人が合意により遺言公表者を選定する。

3. 相続が開始した後,遺言の公表者は,遺言を複写して,遺言の内容に関係するすべての者に送付しなければならない。

4. 遺言の写しを受け取った者は,遺言の原本との対照を請求する権利を有する。

5. 遺言が外国語で作成される場合,その遺言書はベトナム語に翻訳され,公証又は確証されなければならない。

第648条 遺言の内容の解釈

遺言の内容が明確でなく,相互に異なる複数の理解方法がある場合,遺言に従った相続人は,死亡した者の生前の事実どおりの願望に基づき,死亡した者と遺言による相続人との関係を考慮して,遺言の内容を解釈する。それらの者が,遺言の内容の理解方法について一致しないときは,裁判所に対し,解決を請求する権利を有する。

遺言の内容の一部を解釈することができないが,遺言の残りの部分に影響を与えないときは,解釈できない部分のみが無効となる。

第XXIII章 法定相続

第649条 法定相続

法定相続は,法令が規定する相続の順位,条件と相続の順番に従った相続のことである。第650条 法定相続のいくつかの場合

1. 法定相続は,次の場合に適用される。

a) 遺言がない。

b) 遺言が合法でない。

c) 遺言による相続人が全員遺言者より前に死亡した又は遺言者と同じ時点で死亡した;遺言による相続人である機関,組織が相続開始の時点において存在しない。

d) 遺言による相続人と指定された者が遺産を享受する権利を有しない又は遺産受領を拒否した。

2. 法定相続は,次の遺産の部分に対しても適用される。

a) 遺言において処分されない遺産の部分

b) 遺言の無効な部分に関係する遺産の部分

c) 遺産を享受する権利を有しない,又は遺産の受領を拒否した,遺言者より前又は同じ時点で死亡した遺言による相続人;相続開始の時点において存在しない,遺言により遺産を享受する機関,組織,に関係する遺産の部分。

第651条 法定相続人

1. 法定相続人は,次の順序に従って規定される。

a) 第一相続順位は,死亡した者の配偶者,実父,実母,養父,養母,実子,養子からなる。

b) 第二相続順位は,死亡した者の父方の祖父母,母方の祖父母,実の兄弟姉妹,父方の祖父母,母方の祖父母である死亡した者の実孫からなる。

c) 第三相続順位は,死亡した者の曾祖父母,死亡した者の伯父・伯母,叔父・叔母,死亡した者の実の甥・姪,死亡した者の実の曾孫からなる。

2. 同じ相続順位にある複数の相続人は,相互に均等の遺産部分を享受する。

3. 死亡したか,遺産を享受する権利を有しないか,相続権を取り消されたか,遺産の受領を拒否したかの理由で先相続順位の者がいない時にのみ,次相続順位の者は相続を享受することができる。

第652条 代襲相続

遺産を残した者の子が,遺産を残した者より先に死亡した又は同時に死亡した場合,遺産を残した者の孫は,自分の父又は母が存命していれば享受する遺産の部分を享受することができる;遺産を残した者の孫も,遺産を残した者より先に死亡した又は同時に死亡した場合,曾孫は,自分の父又は母が存命していれば享受する遺産の部分を享受することができる。

第653条 養子と養父,養母と実父母との相続関係

養子と養父,養母は,互いの財産を相続することができ,また本法典第651条,第652条の規定に基づき遺産を相続することもできる。

第654条 継子と継父,継母との相続関係

継子と継父,継母は,親子のように面倒をみて,扶養している関係であるときは,互いの財産を相続することができ,加えて本法典第652条,第653条の規定に基づき遺産を相続することもできる。

第655条 妻,夫が共有財産を既に分割した;妻,夫が離婚申請中である,又は他の者と結婚した場合における相続

1. 婚姻している間に妻,夫が共有財産を既に分割し,その後,一方が死亡した場合,存命者は,遺産を相続することができる。

2. 妻,夫が離婚申請中であるが未確定である又は離婚を認めた裁判所の判決,決定に法的効力が生じていない間に,一方が死亡したときは,存命者は,遺産を相続することができる。

3. 死亡した者の寡掃又は寡夫は,別の者と結婚しても遺産を相続することができる。

第XXIV章 遺産の精算と分割

第656条 相続人の集合

1. 相続開始が通知された,又は遺言が公表された後,相続人は,次のことを合意するために集合することができる。

a) 遺産を残した者が遺産管理人と遺産分割人を指定しない場合,遺産の管理人と遺産の分割人の選定,それらの者の権利と義務の確定

b) 遺産の分割方法

2. 相続人の全ての合意は,文書によりなされなければならない。

第657条 遺産分割人

1. 遺産分割人は,同時に,遺言で指定された又は相続人の合意によって選定された遺産管理人であってもよい。

2. 遺産分割人は,遺言どおりに,又は法定相続人の合意どおりに,遺産を分割しなければならない。

3. 遺産を残した者が遺言で許可した,又は相続人の合意がある場合には,遺産分割人は報酬を受け取ることができる。第658条 精算優先順位

財産義務及び相続に関する費用は,次の順序に従って精算される。

1. 慣習に従って死亡した者の埋葬にかかる合理的な費用

2. 未済の扶養料

3.遺産の保管費用

4. 死亡した者に依存している者に対する支援金

5. 労働賃金

6. 損害賠償金

7. 税金,国家予算に納入しなければならない他の金額

8. 個人,法人に対するその他の債務

9. 罰金

10. その他の各費用

第659条 遺言による遺産の分割

1. 遺産の分割は,遺言者の意思に基づいて行われる;遺言が相続人ごとの相続分を明確に確定していないときは,遺産は,遺言に指定された者に対して均等に分割される。ただし,他の合意がある場合を除く。

2. 遺言が現物による遺産の分割を確定している場合,相続人は,現物とその現物から生じる天然果実と法定果実を受け取るものとし,現物が遺産分割の時点で価値が滅少していてもその現物を引き受けなければならない;他人の故意過失によって現物が滅失した場合,相続人は,損害賠償を請求する権利を有する。

3. 遺言が財産の総価値に対する比率で遺産の分割のみを確定している場合,この比率は,遺産の分割時点における遺産の残存価値に基づいて決められる。

第660条 法令による遺産の分割

1. 遺産を分割するとき,同相続順位の相続人が胎児で未出生であっても,他の相続人の享受する分と同じ遺産の部分を取っておかなければならない。その相続人が出生後も生きていれば,その遺産の分を享受する。出生前に死亡したならば,他の相続人が享受する。

2. 相続人は,遺産の現物分割を請求する権利を有する;現物で均等に分割できない場合,相続人は,現物を価格鑑定すること及び現物を受け取る者について合意することができる;合意できなければ,現物は売却され,分割される。

第661条 遺産分割の制限

遺言者の意思又は相続人の全ての合意により,遺産が一定期間の後に分割される場合,その期限が満了した後にのみ,遺産は分割される。

遺産相続の分割請求で,遺産分割が存命している妻又は夫及びその家族の生活に著しく影響を与える場合,存命当事者は,裁判所に対し,相続人が享受する遺産の部分の確定と一定期間において分割させないよう請求する権利を有する。この期限は相続開始の時点から

3年を超えない。3年の期限が満了しても,存命当事者は,遺産分割が依然として家族の生活に著しく影響を与えることを証明することができれば,裁判所に対し,3年を超えない期間の一回延長を請求することができる。

第662条 新しい相続人が出現する又は相続権が取り消される相続人がいる場合の遺産の分割

1. 遺産の分割後,新たに相続人が出現した場合,遺産の現物による再分割はしないが,遺産を受け取った相続人は,受け取った遺産分に相当する割合で遺産分割時点における新相続人の遺産分に相当する金額にて新相続人に対して清算を行わなければならない。ただし,他に合意がある場合を除く。

2. 遺産の分割後相続権が取り消される相続人がいる場合,その者は遺産を返還し,又は遺産分割時点に享受した当人の遺産の価値に相当する金額を他の相続人に対して清算しなければならない。ただし,他に合意がある場合を除く。

第五編 外国的要素を持つ民事関係に適用する法令

第XXV章 総則

第663条 適用範囲

1. この編は,外国的要素を持つ民事関係に適用する法令について規定する。

その他の法律に外国的要素を持つ民事関係に適用する法令に関する規定があり,本法典第664条から第671条の規定に反しない場合は,その法律が適用される。反する場合は,本法典第五編に関連を有する規定が適用される。

2. 外国的要素を持つ民事関係とは,次のいずれかに属する民事関係をいう。

a) 参加する少なくともいずれか一方の当事者が外国の個人,法人である。

b) 参加する各当事国はともにベトナムの公民,ベトナムの法人であるが,当該関係の確立,変更,実施,消滅が外国において生じている。

c) 参加する各当事者はともにベトナムの公民,法人であるが,当該民事関係の対象が外国に所在する。

第664条 外国的要素を有する民事関係に適用する法令の確定

1. 外国的要素を有する民事関係に適用する法令は,ベトナム社会主義共和国が加盟する国際条約又はベトナム法に従って確定される。

2.ベトナム社会主義共和国が加盟する国際条約又はベトナム法に,各当事者が選択権を有するとの規定がある場合,外国的要素を有する民事関係に適用する法令は,各当事者の選択に従って確定される。

3.この条第1項及び第2項の規定に基づき適用する法令を確定できない場合,適用法令は,その外国的要素を有する民事関係と最も密接に関係する場所を有する国の法令である。

第665条 外国的要素を有する民事関係に対する国際条約の適用

1.ベトナム社会主義共和国が加盟する国際条約が,外国的要素を有する民事関係に参加する各当事者の権利義務に関する規定を有する場合,その国際条約の規定を適用する。

2.ベトナム社会主義共和国が加盟する国際条約が,外国的要素を有する民事関係に適用する法令について,この章の規定及び他の法律と異なる規定を有する場合,その国際条約の規定を適用する。

第666条 国際慣習の適用

本法典第664条2項が規定する場合において,各当事者は国際慣習を選択することができる。その国際慣習の適用結果がベトナム法令の基本原則に反する場合には,ベトナム法令を適用する。

第667条 外国法令の適用

適用する外国法令に相互に異なった理解の仕方がある場合,その国において権限を有する機関の解釈に従って適用しなくてはならない。

第668条 参照25法令の範囲

1. 参照法令は,この条第4項に規定する場合を除き,適用法令の確定に関する規定及び民事関係に参加する各当事者の権利義務に関する規定からなる。

2ベトナム法令を参照する場合,適用する民事関係に参加する各当事者の権利義務に関するベトナム法令の規定を適用する。

3第三国の法令を参照する場合,適用する民事関係に参加する各当事者の権利義務について第三国の法令の規定を適用する。27.

4本法典第664条2項に規定する場合,各当事者が選択する法令は,民事関係に参加する各当事者の権利義務に関する規定であり,適用法令の確定に関する規定を含まない。

第669条 複数の法令体系を持つ国の法令の適用

複数の法令体系を持つ国の法令が参照される場合,適用法令はその規定の国の法令が規定する原則に基づいて確定される。

第670条 外国法令を適用しない場合

1. 参照される外国法令は,次の場合には適用することができない。

a) 外国法令の適用結果がベトナム法令の基本原則に違反する。

b) 訴訟法の規定に基づき必要な各措置を適用したにもかかわらず,外国の法令の内容を確定することができない。

2. この条第1項の規定に基づき外国法が適用されない場合,ベトナム法令が適用される。

第671条 時効

外国的要素を有する民事関係の時効は,当該関係に適用する法令に基づき確定される。

第XXVI章 個人,法人に適用される法令

第672条 無国籍の者,多国籍の者に対する適用法令確定根拠

1. 参照される法令が個人が国籍を有する国の法令であるが,その者が無国籍である場合,適用法令は,外国的要素を持つ民事関係が生じた時点でその者が常住していた地の国の法令である。その者が外国的要素を持つ民事関係が生じた時点で複数の居所を有していた,又は居所を確定することができない場合,適用法令は,その者が最も密接な関係を有する地の国の法令である。

2. 参照される法令が個人が国籍を有する国の法令であるが,その者が多国籍者である場合,適用法令は,その者が外国的要素を持つ民事関係が生じた時点で国籍を有し,常住していた地の国の法令である。その者が外国的要素を持つ民事関係が生じた時点で複数の居所を有していた,居所を確定することができない,又は居所と国籍を有する地が相互に異なる場合,適用法令は,その者が国籍を有し,かつ,最も密接な関係を有する国の法令を適用する。

参照される法令が個人が国籍を有する国の法令であるが,その者が多国籍者であり,その中にベトナム国籍がある場合,適用法令はベトナム法令である。

第673条 個人の民事法律能力

1. 個人の民事法律能力は,その者が国籍を有する国の法令に従う。

2. ベトナムに所在する外国人は,ベトナム法令が他の規定を有する場合を除き,ベトナム公民と同じ民事法律能力を有する。

第674条 個人の民事行為能力

1. 個人の民事行為能力は,この条第2項に規定する場合を除き,その者が国籍を有する国の法令に従う。

2. 外国人がベトナムにおいて民事取引を確立,実施する場合,その外国人の民事行為能力はベトナム法令に従って確定される。

3. ベトナムにおける個人の民事行為能力喪失,行為認識制御困難又は民事行為能力制限の確定は,ベトナム法令に従う。

第675条 失踪又は死亡した個人の確定

1.失踪又は死亡した個人の確定は,この条第2項に規定する場合を除き,その者に関する最後の情報があった時点の前にその者が国籍を有していた国の法令に従う。

2.失踪又は死亡した個人のベトナムにおける確定は,ベトナム法令に従う。

第676条 法人

1. 法人の国籍は,法人が設立された地の国の法令に従って確定される。

2. 法人の民事法令能力;法人の名称;法人の法定代表者;法人の組織,再編,解体;法人と法人構成員の関係;法人及び法人構成員の法人の義務に対する責任は,この条第3項が規定する場合を除き,法人が国籍を有する国の法令に従って確定される。

3.外国法人がベトナムにおいて民事取引を確立,実施する場合,その外国法人の民事法令能力はベトナム法令に従って確定される。

第XXVII章 財産関係と身分関係に対して適用される法令

第677条 財産の分類

財産の動産,不動産への分類は,財産がある地の国の法令に従って確定される。

すみれ

「財産がある国の法令、か」

第678条 所有権及び財産に対するその他の権利

1. 所有権及び財産に対するその他の権利の確立,履行,変更,消滅は,この条2項が規定する場合を除き,財産がある地の国の法令に従って確定される。

2. 輸送中の動産に対する所有権及び財産に対するその他の権利は,その他の合意がある場合を除き,動産の輸送先の地の国の法令に従って確定される。

第679条 知的所有権

知的所有権は,知的所有権の対象が保護を求められる地の国の法令に従って確定される。

第680条 相続

1. 相続は,相続される遺産を残した者が死亡の直前に国籍を有していた国の法令に従って確定される。

すみれ

「国籍で決まるんだ。」

2. 不動産に対する相続権の行使は当該不動産の所在する地の国の法令に従って確定される。

第681条 遺言

1. 遺言の作成,変更又は撤回の能力は,遺言作成,変更又は撤回の時点で遺言作成者が国籍を有する国の法令に従って確定される。

2. 遺言の形式は,遺言が作成された地の国の法令に従って確定される。遺言の形式も,次の各国のいずれかの法令と合致する場合,ベトナムにおいて公認される。

a) 遺言を作成した時点又は遺言作成者が死亡した時点で,遺言作成者が常住していた地の国

b) 遺言を作成した時点又は遺言作成者が死亡した時点で,遺言作成者が国籍を有していた地の国

c) 相続遺産が不動産である場合,不動産の所在地。

第682条 後見

後見は,被後見人が常居する地の国の法令に従って確定される。

第683条 契約

1. この条第4項,第5項及び第6項に規定する場合を除き,契約関係における当事者は,契約に対する適用法令の選択につき合意することができる。適用法令につき各当事者間に合意がない場合,その契約と最も密接な関係を有する国の法令が適用される。

・・・中略・・・・・

第六編 施行条項

第688条 経過規定

1. 本法典が効力を有する日の前に確立された民事取引については,次のように規定される法令を適用する。

a) まだ実施されていないが,内容,形式が本法典の規定と異なる民事取引については,取引主体は引き続き民法典33/2005/QH11及び民法典33/2005/QH11を詳細に規定する各法規範文書の規定に基づき実施する。ただし,民事取引当事者が取引の内容,形式を本法典に合致させ,本法典を適用するために修正,補充する合意を有する場合を除く。

実施中の民事取引で内容,形式が本法典と異なる場合,民法典33/2005/QH11及び民法典33/2005/QH11を詳細に規定する各法規範文書の規定を適用する。

b) まだ実施されていない又は実施中であるが,内容及び形式が本法典の規定と合致する民事取引は,本法典の規定を適用する。

c) 本法典が効力を有する日の前に実施が完了したが紛争が生じている民事取引は,民法典33/2005/QH11及び民法典33/2005/QH11を詳細に規定する各法規範文書の規定を適用して解決する。

d) 時効は,本法典の規定に基づき適用する。

2. 本法典が効力を有する日の前に民事に関する法令の規定に基づき裁判所が解決した事件の,監督審,再審の手続に従った異議申し立てのために,本法典を適用しない。

第689条 施行効力

本法典は,2017年1月1日から施行効力を有する。

民法典33/2005/QH11は,本法典が効力を有した日から効力を失う。

本法典は,ベトナム社会主義共和国第13期国会第10会期において採択された。

国会議長

グエン シン フン

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

すみれ・ポリー・番人

「お疲れ様でした。上原ひろみさんすごいですね。」

PAGE TOP