2017年11月17日付 週刊「かふう」よく分かる不動産相続Q&Aについて

2017年11月17日付 週刊「かふう」よく分かる不動産相続Q&A
認知症など判断能力を喪失した場合の対策
著者中村敦司法書士

週刊「かふう」の編集長から電話があり、訂正があるものと思っていました。訂正はないようなので前回までの記事は、正確な記事であり誤りはないという認識を執筆者および編集長が持っている、と受け止めさせてもらいます。

今回の家族構成は、夫婦と子供2人。

最初の受益者は、夫のみです。でも家族信託契約の中で、妻の身上介護などに必要な費用を信託財産から給付すること、を内容としています。

このままでは、契約通りに妻の介護費用などを支出することは難しくなります。
やり方としては、
1、妻を扶養義務の範囲内で受益者に加える、信託の変更を行う。
2、信託契約には妻のことは書かないで、夫の個人財産から給付する。
(2の場合は、夫が亡くなると妻への援助が出来なくなるので、2次受益者に加えなくてはなりません。)


任意後見制度では、後見人が就任すると基本的には夫の財産は事実上凍結する、とあります。
事実上凍結、凍結などよく聞くのですが本当でしょうか。任意後見制度でも本人のためになら利用することが出来ます。権限を明確に定めなくても使えます。本人のために利用することを凍結、というのであれば違うのではないかと思いませんか?


前回投稿分が無視されていますが、無視された事実も含めて相談者へ説明する必要があるので指摘させていただきます。

1、「契約や遺言で行うもので」は、誤りです。信託宣言(自己信託)(信託法第3条第1項第3号)があります。適切な受託者を見つけることができない方や、自己信託を利用した方が有効な方もいらっしゃいます。

2、「そして、将来父親が亡くなったら、家族信託契約時に受託者である子を次の受益者(二次受益者)として決めておけば、契約に従い子が賃料を受領する。という内容で家族信託の契約を締結することができます。」は、誤りです。その状態が一年間続けば信託は終了します(信託法163条)。

3、「信託財産であるアパートについては、成年後見人の権限は及ばず」は誤りです。
法定後見人の場合、法定代理人として受益者が持つ権限のうち信託法27条、31条、36条、38条、40条、41条、44条、45条、92条などは、行使することができます。
任意後見人の場合、一般的に包括的な代理権が与えられます。受益者が持つ権限のうち法定後見人が行使できる権利は、任意後見人も行使することができます
(受益者代理人が就いていても同じです。)。

4、「委託された」は、託された、又は信託設定されたの誤りです。委託されていません。

5、「生前にあるいは受益者死亡後に受益権の移動があった場合には贈与税や相続税の課税対象となる場合があります」について、相続税の課税対象となる場合があるのでしょうか?

金融機関からの指摘

 

最近、家族信託・民事信託の信託契約書(案)を金融機関へ送信した際、このような指摘がありました。
「受託者が、第2次受益者となっていますが、そうすると信託が終了してしまうのではないですか。」

「受託者は、後任の受託者に代えようと思っています。」

「ただ、宮城さんが対応してくださると思うのですが、もしかしたら当事者が分からなくてトラブルになってしまうかもしれないので、その辺を契約書に入れてもらえませんか。」

なるほど、と思いました。
委託者(兼当初受益者)が亡くなると信託は終了する予定なのですが、委託者の死亡を信託の終了事由とはしていません。

金融機関のおっしゃる通り、受託者が唯一の受益者である状態が1年間続くと、信託は知らない間に終わってしまいます。

そこは契約書に「その他信託法に定める事由が生じたとき。」としか書いていなかったので、当事者(特に受託者)が知らなかった場合や忘れている場合はあり得ます。

金融機関の方がおっしゃるように、私がフォローするつもりでいたのですが、受託者の任務終了事由と信託の終了事由は、裁判所を通す場合を除いて信託法の文言をきちんと入れるべきだなと気づきました。

(株)琉球銀行で任意代理契約の通帳が作成できない。

 

金融機関で任意代理契約の通帳が作成出来ません(親族間です)。
事前に公正証書の案を出してOKもらっていたのに。家族信託契約、遺言、任意後見契約とセットです。

信託専用口座のことで一杯な感じです。
信託専用口座だけでは今回のケース、意味がないのです。
金融機関が自宅まで来てくれるはずもなく、依頼者と何度も支店窓口まで行ったり電話やメールで検討のお願いをしたり。

最後に副支店長から返ってきた言葉が、「本部の弁護士が言っているから駄目です。あとはそちらで管理して下さい。」です。

これは理由にはなりません。
ただ、金融機関が駄目と言う場合、理屈を問わず駄目なので無力感に襲われないように少しずつ検討してもらう方向で行きます。
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参考:『CSのための金融実務必携』2015きんざいP390~P399など。


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2017年12月14日
その後、本店の方と話しました。

代理人口座の開設が可能か。
受益者代理人の権限の解釈について。

私としては、民事信託・家族信託契約における委託者、任意代理契約・任意後見契約における委任者が金融機関窓口に来なくても良い方法であれば、どんな形でも良いということ言いました。
 そこは分かっていただけて収穫です。
金融機関からすると、代理人口座を作成した場合、任意後見監督人を選任するタイミング(任意後見人が就任する時期)が分からないので、少し検討させて欲しいとのこと。
受益者代理人の権限に関しては、解釈と預金取り扱いの実務を整合できるか、これも少し検討したいとのこと。

 なぜ出来ないのか、理由を聞くことが出来ました。そうすれば、どこを改善すれば良いのか、考えることが出来ます。

【氏名】持分全部移転及び信託、所有権移転及び信託

 


民事信託・家族信託契約を締結して委託者の財産を信託財産とする場合に、不動産が入っているときは登記が必要です(信託法34条1項1号)。

不動産が2つあるとします。1つは委託者1人が所有者の建物。
もう1つが委託者とその子が2分の1ずつ所有している土地。

1つの信託契約に建物と土地が入っている場合、登記を1つの申請書で4件申請できるか(不動産登記法98条)。
それとも、建物は「所有権移転及び信託」、土地は「【氏名】持分全部移転及び信託」で2つの申請書を作って4件登記申請をするか。

一般の感覚だと、同じ契約なのになぜ1つの申請書でできないのか、と考えたりもします。そして一般の感覚が正しく、1つの申請書で登記申請を行うことになります(登記研究470号P97、ただし建物の一部や、委託者の土地持分の一部に抵当権が設定されていたりすると、1つの申請書では出来ません。)。

金融法学会

 

昨日、弁護士事務所へ行ってきました。
何故かというと、金融法学会に入会してみようとしたところ、
推薦人が2人必要と言われたからです。
そして司法書士はこの学会に1人もいない。
沖縄県でもこの弁護士先生しかいないので、推薦をお願いしに行きました。

(  )は心の声です。
「何で金融法学会なの?」
「民事信託をやっているので。(あと、登記も金融と関係があるし、道垣内弘人先生も大垣尚司先生も入っているし。)」

「じゃぁ信託法学会じゃないの?」
・・・。(信託法学会が信託法理学会なら入会しているかもしれません。)

「私は信託法学会も入っているよ。最近は司法書士が民事信託に入ってきているけど、私なんか〇〇年も前から入っているよ。民事信託は遺留分が整理していないからやらない。~」

「そうですねぇ。(でも、高齢社会は始まっているし、保険などでカバーして対応できないかなぁと考えながら実践してます。)」

ということで、推薦は快くしてくださったし、僕の名刺を見て、先生の家が隣の字であることも判明。親切な先生でした。

今後ともご指導お願いします。

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