家族信託の相談会その55

お気軽にどうぞ。

2023年5月26日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

渋谷陽一郎「信託契約書から学ぶ民事信託支援業務(2)日弁連ガイドラインの概要と依頼者は誰かという問題(2)」

市民と法[1]の記事「渋谷陽一郎「信託契約書から学ぶ民事信託支援業務(2)日弁連ガイドラインの概要と依頼者は誰かという問題(2)」からです。

この点、遺産分割協議の場合と同様、司法書士は、どこまで、それらの関係者の利害の調整者となりうるのか(なることは可能なのか)、中立調整という役割を担うことは可能なのか(中立調整の定義は何か)、などのクリティカルな問題を生じる。

 司法書士がどこまで、関係者の利害の調整者となりうるか、について、選択肢を全て示して、利害関係者の一人が反対の意思を表示した場合、賛成の意思を表示しなかった場合、意思表示をしなかった場合、だと思います。

 中立調整の定義は、分かりませんでした。よって中立調整という役割を担うことが出来るかどうかも分かりません。法律整序事務と中立調整とは異なることを前提としています。

この点、家族信託をめぐって事後的に紛争が生じた場合でも、信託契約案の作成が原因であると主張されれば、それはさかのぼって組成時から潜在的紛争性を秘めていた事件であると評価されるリスクを生じうる。

公正証書遺言案の作成においても、同じようなリスクはあるので、作成する司法書士はそのリスクを許容する必要があると感じました。

信託の場合、そうはいっても、法律整序的な関与といえども、信託の素人である信託当事者の信託行為の意思形成過程に対して、事実上、影響を与えてしまうリスクがある。

 任意後見契約書(案)の作成など他の業務についても、法律行為を行う当事者の意思形成過程に対して影響を与えます。登記申請においても、法的効果などを説明して署名や押印をもらい、その過程で意思形成に影響を与えていると考えられます。影響を与えない業務というのが思い浮かびませんでした。

注意すべきは、司法書士は、選択肢の一部を提示するのではなく、すべての選択肢を提示する必要があることである。

同意です。すべて、というと難しく感じますが、依頼者に提示する時点で司法書士が知っている選択肢(施行日が確定している法改正も含みます。)、という範囲だと理解しています。

それでは、信託契約書案の作成において、司法書士が、信託当事者や利害関係者(委託者の推定相続人等)に対して、調整型の関与を行うことは可能であろうか。

 すべての利害関係者に対して、調整型の関与を行うことは難しいと思います。利害関係人を把握することが難しい場面があるからです。信託契約書案作成の委任契約書において、利害関係人の範囲は特定してもよいのではないかと思います。

仮に、中立調整を称しつつ、―中略―中立義務違反で訴えられたら、当該司法書士は、どのように抗弁するのだろうか―略―

中立義務が、司法書士業務の関係法令にあるのか分かりませんでした。

さらにいえば、関係者の利害が一致して友好的であればよいが、少しでも利害が対立している場合あるいは利害が事後的に対立した場合には、結局、中立調整者を標榜した司法書士がその責任を問われることになるという意味では、重い業務となる。

最初から依頼を受けないか、委任契約を辞任することで対応可能だと感じます。


[1] 140号、2023年4月、民事法研究会、P88

『任意後見と民事信託を中心とした財産管理業務対応の手引き 各制度の横断的なポイント整理とケース・スタディ』

著者:日本司法書士会連合会 民事信託等財産管理業務対策部/編『任意後見と民事信託を中心とした財産管理業務対応の手引き 各制度の横断的なポイント整理とケース・スタディ』2023年3月、日本加除出版

https://www.kajo.co.jp/c/book/05/0503/40939000001

・位置付け

日本司法書士会連合会が、2023年3月現在の民事信託支援業務を含めた財産管理業務の実務について、指針を示したものとして位置づけられる。他の書籍と違い、この書籍に従った実務を行った場合、日本司法書士会連合会の指針に従って行ったことを説明することができる。

 司法書士が民事信託支援業務を行うことが出来る法令上の根拠(司法書士法、司法書士法施行規則)は、記載がない(はじめに、において司法書士法1条について記載がある。)。犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令8条4項6号、日本司法書士会連合会における犯罪による収益の移転防止に関する執務指針、各都道府県の司法書士会の会則における本人確認に関する規定についても記載がありません。

 記載がない、ということは、司法書士であれば当然出来る業務で他士業の独占業務と抵触することはない、と考えられているのか、司法書士という資格がなくても誰でもできる業務について、市民が自ら使う場合や企業が事業として行う場合を想定しているのだと考えられます。

・特徴

P4 任意後見契約に関する作成支援業務を、任意後見支援業務としている。任意後見監督人選任審判の申立書作成などは、含まない。

P17

 

遺言代用信託について、死亡後に財産を承継させたい者について、当初から受益者として指定しておきつつ、給付を受けることができるのは委託者の死亡後に限るという定め方をすることもできるが、実務上、このような定め方をする例は多くない。

遺言信託(信託法2条2項2号)に似ている方法だと思われます。実務上、多く利用されていない、というのはどのような情報を基にしているのか、分かりませんでした。後継ぎ遺贈型の受益者連続信託についても同じような記載があります。

P19~信託に適していない財産として、担保付きの不動産が挙げられていること。

P20~民事信託支援業務の依頼者は、委託者、委託者と受託者双方が認められると記載されていること。委託者と受託者双方と委任契約を締結する場合には、基準を設けている。費用負担について、基準では委託者と受託者が平等に負担とされているが、委託者負担が望ましいと考えている?

P24~金銭の分別管理について

狭義の信託口口座が開設出来ない場合、委託者と受託者の確認書で対応。

P31~ 感情的に対立している親族の有無を把握しても、民事信託支援業務を進めることを妨げていない。

P33~司法書士が受益者代理人に就任することは可能と記載。

P36 

一般的に、法律専門家は、信託業法3条により、受託者に就任することはできないと解されている。この規制が、清算受託者にまで及ぶか否かについては、公式な見解等はないももの、

条文の通りだと思います。信託法177条1項本文で、信託が終了した時以後の受託者(以下「清算受託者」という。)は、次に掲げる職務を行う、とされ、清算受託者は受託者であると記載があります。

P39 信託の目的は、財産ごとに定めることが合理的な場合もある。運用方法が違う不動産(例えば自宅と原野と収益不動産など。)ごとに別信託にするか、信託を設定しないかの判断もあり。

P40 受益者に義務を課したり、その権利を制限したりすることはできない。

信託法、民法その他の法令で許容されていない限り、という前提が必要だと思います。例として信託法163条1項9号など。

P124 任意後見契約の同意を必要する特約と、民事信託との関係について記載なし。

P128 任意後見人の同意権・取消権により(制限行為能力者制度の取消権によって)本人保護はできない、の記載について、代理人・同意権者として権利行使可能なのに、なぜ本人保護にならないのか、分かりませんでした。

P134

委託者の地位の承継について、その原因を問わず、という文言が必要なのか分かりませんでした。P180について同じ。

P135 受託者が自宅を売却する。の部分は、清算受託者が自宅を売却する、に変更が必要だと思います(信託法177条。)。

P136

条項例、2清算受託者は、前項第1号の規定にかかわらず、信託不動産を売却換価した上で、前記第2号の方法により引渡すことができる。

この条項例だと、

P135(b)記載の遺産分割によって受益権を取得したものが現金での引継ぎを希望する場合

のうち受益者の希望が入らず、受託者の裁量で信託不動産を売却しても良い、しなくても良い、ことが可能になると考えられます。帰属権利者が書面などで希望する場合、という文言を入れる必要があると考えられます。P145について同じ。

P136

信託の設定により相続財産ではなくなり、相続登記の義務化の対象とはならない。

 私なら、相続開始から10年を経過すると主張できなくなる権利もあり、民法904条の3について説明や注釈を加えると思います。

 P139 信託契約の名前に、不動産及び金銭管理処分、などと付ける必要性が分かりませんでした。

P141 (信託不動産の換価等の処分)第10条―中略―その他信託不動産の処分を要する事情が生じた場合において、自らの裁量において、信託不動産の売却、取壊し等の処分を行うことができる。

について、私なら、処分を要する事情が生じた場合の売却・取壊しについては、受託者の裁量とせず、受益者の同意を得る、とすると思います。P176について同じ。

P143 (受託者の解任)第16条(4)について、受託者として信託事務を遂行し難い重大な事由が発生したとき、の基準が分かりませんでした。私なら、法定の受益者への事務報告を怠ったとき、など具体的に定めると思います。

P156

(受益権の譲渡禁止及び質権の設定)

第●条 受益者は、受益権を譲渡することができない。

→私なら、受益者は、受益権を譲渡・質入れをすることができない、に変更します。また、(新受託者の選任)の条項には、生年月日を付け加えます。

P164~第3章障がいのある子を持つ親からの相談、において負担付き遺贈の利用がプラン例1の選択肢として挙げられていること。

P172 民事信託と任意後見を利用する場合に、受託者兼受任者となるとき、受託者に対する監督が空洞化するとして司法書士を信託監督人としている。任意後見監督人が選任された場合も、司法書士の信託監督人が就任し続けるのか、受益者(委任者・本人)にとってどのような利益があるのか、分かりませんでした。P182によると、任意後見監督人選任後も司法書士が信託監督人として就任し続けるプランです。法律専門家を受益者代理人と信託監督人に選任するプランも提示されています。その場合、受益者代理人、信託監督人、任意後見監督人が、受託者を監督(任意後見監督人は任意後見任を通して間接的に。)することになるのですが、ここまで監督を重くする必要性が分かりませんでした。

P177(受益債権)第●条の(2)第二次受益者の受益債権、がどのような意味を持つのか分かりませんでした。当初受益者の受益債権が抑制される、という意味なのでしょうか。

P175~(信託の目的)、(信託不動産の管理)条項で、受益者が施設入所・入院などにより信託不動産に居住しなくなった場合は、受託者の裁量で信託不動産を売却してもよい、とあります。最期は自宅で迎えたい、という方はそんなに多くないのか、分かりませんでした。P141、P178について同じ。

P210(4)株式の受益権を受託者に暦年贈与することについて、当初忠実義務違反、善管注意義務違反のリスクを挙げている。その解決策として、年間110万円ずつ贈与すること、としているが、解決策になっているのか、分かりませんでした。

P215 株式の信託における指図権の内容について、指図の内容が信託の目的又は受益者の利益に明白に反する場合は、受託者は指図に従う必要がない、と定められていますが、どのように判断すれば良いのか分かりませんでした。

・条項例と信託目録の関係について

本書中、様々な条項例が掲載されています。長文になる条項や他の条項を援用する条項もあります。信託財産に属する財産の中に不動産がある場合、これらをどのように信託目録に記録するのか、分かりませんでした。

P246、252

民事信託支援業務について、着手金を徴収することは可能の記載。計算方法に指針がないので、委任者が納得すれば、どのような方法でも良い。

P248

民事信託支援業務におけるリスク説明義務について、重要事項説明書ではなく、委任契約書の免責事項としている。

家族信託の相談会その54

お気軽にどうぞ。

2023年4月28日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

民事信託の登記の諸問題(18)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(18)」からです。

受託者の権限が、信託目録上、一般人にも分かるように明瞭に公示されており、それを見れば、当該行為が、受託者の権限外行為であることが、その行為時、容易に判明する状態であったならば、受託者と権限外取引を行った相手方の悪意が、事実上、推認されよう。

 信託目録の記録が、一般人にも分かるように明瞭に公示出来るのか、分かりませんでした。また受託者が権限外取引を行っても、信託目録上受託者の権限が明瞭に公示されている場合は、権限外取引の登記申請は、不動産登記法25条4号または5号により却下されると考えられます。

それゆえ、訴訟における要件事実論の構造と同様、信託目録に記録すべき情報は、予め手続的に決定することができる。如何なる情報が必要であり、かつ、不要であるかは信託登記の手続き構造から来る必然的な枠組みがある。

民事訴訟法における要件事実論の構造と、信託目録の構造に似ている部分がある、ということに同意します。

なお、信託目録のための整序された要約を実現するためには、信託契約書上の信託条項それ自体が、的確に整序されているものである必要がある。信託条項の要約が上手くいかない場合、元になる信託契約書における信託条項の内容(要件)自体が整序されていない場合も少なくない。

要約をせずに、抽出で済むような信託契約書を作成する必要があると考えます。

例えば、次のような積極的な禁止の定めに関する情報があり得るかもしれない。

―中略―信託法26条但書の定め

信託不動産の売却処分は禁止する。

信託不動産であることは、登記記録から明らかなので、売却の禁止が記録されれば目的は達成できるのではないかと感じました。また積極的な禁止に加えて、制限も必要な場合があると思います。

もっとも、高齢者の認知症対策や障害児のための家族信託では、適格者による受益者代理人や信託監督人が設置されていない場合(それらの設置は強制されていないし、不適格者による場合、受託者との共謀もあり得る)、受益者による主体的選択は期待できない。それゆえ、結果として、信託登記の仕組みが、僥倖にも、弱者である福祉型信託における受益者保護の防波堤になっているという意義を忘れてしまっても良いのか、という議論があり得る(極めて難しい論点である)。

現時点での私見です。契約時については、委託者が確認・同意をします。受益者保護の仕組みとして考えるとすれば、法定後見制度の発動を促すために、信託不動産の処分について受益者(法定代理人)の同意を要する、などと定めることです。

例えば、次のような信託条項が信託目録に記録すべき情報として提供された場合、その適法性・有効性をどのように判断すべきなのか(判断できるのか)、という実務論点である。

その他の信託の条項

本信託の残余財産の帰属権利者は、委託者の遺言で指定する。

信託法183条で禁止されていない条項について、当初申請時において、不動産登記法25条に基づき却下することは難しいと思います。

しかしながら、当該信託条項だけが無意味であるが、全体の信託の効果に影響がないような場合には、あえて、却下事由として評価しないという選択もあり得るかもしれない。

上のような場合、登記官の権限で、却下事由として評価できないのではないかと思います。

×

4信託の条項

(4)その他の信託の条項

受益権の相続

 受益者法務太郎の相続人が受益権を相続する

第2次受益者となるべき者

 受益者法務太郎の死亡時、受益権は消滅し、受託者が、新たに発生する受益権を取得すべき者を指定する

不整合として無効と判定される場合がある、という著者の記載に同意です。このような不整合な条項がある場合、上の条項が優先し、それが達成されない場合に下の条項が発効する、という風な解釈が出来るような条項だと、まだ良いのかなと感じます。


[1] 901号、令和5年2月、テイハン、P71~

PAGE TOP