民事信託の登記の諸問題(9)

 登記研究(891号、令和4年5月、(株)テイハン、P31~ の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(9)」)について、考えてみたいと思います。

所有権に関する信託登記における信託目録の内容の法的性格については、三つの考え方がありうる。一つ目は、処分制限の登記の一種であるという考え方(処分制限登記説)、二つ目は、賃貸借の登記などと同様、債権の登記の一種であるという考え方(債権登記説)、三つめは、処分制限の登記、債権の登記、所有権の特約の登記の性格その他がその他が混在しているとする考え方(多元的登記説)である。―中略―第三の多元的登記説をもって正当としよう。



 処分制限登記説、債権登記説、多元的登記説の説は、今までも使われていて、今後も使われていくのでしょうか。私は初めて知りました。
多元的登記であるということについて、同意です。

事業用定期借地権の例

目的 借地借家法第23条第1項建物所有

特約 譲渡・転貸ができる

   借地借家法第23条第1項の特約


 登記原因で認められない譲渡、については売買契約でも贈与契約でも、名義が変わる、という意味で使われているのかなと思いました。

また、法令上、内容が具体化・特定された特約は、法令名(条文番号)の公示で足りるとしている登記先例の趣旨も参考となる。上記を参考とすれば、例えば、次のような信託目録の要約例(あくまで参考例の一つ)がありうる。

4 信託の条項
2.信託財産の管理方法
(1)受託者の権限
信託不動産の管理及び処分
信託不動産のための借入
信託財産責任負担債務のための抵当権の設定
信託法26条のただし書きの特約
抵当権の設定には受益者の承諾を要する

 条文番号が変更になった場合、効力は改正法令の附則、変更登記義務については通達に委ねられることになるのかなと思いました。
信託不動産のための借入、というのは、信託財産に属する不動産の修繕などのための借入れという意味なのか、よく分かりませんでした。
また借入れは、信託財産に属する金銭の管理方法であり、信託財産に属する不動産の信託目録に記録する事項なのか、分かりませんでした。借入れる際は、信託行為の記録を金融機関に審査してもらえば足りるのではないかと思います。

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