加工 担保法制部会資料25 担保法制の見直しに関する中間試案のための検討メモ

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00167.html

1 新たな規定に係る担保権の処分等について(部会資料21 第1の6⑵及び⑶、第2の1に5 ついて)

部会資料21 の第1の6⑵及び⑶に、以下の案を併記することについて、どう考えるか。

新たな規定に係る担保権についての転担保、順位の変更、担保権の譲渡・放棄及び順位の譲渡・放棄については、その一部に限ってできるものとする(注)。

(注)できるものとする範囲については、実務上のニーズや公示の観点から、引き続き検討する。

(説明)

部会資料23 では、登記することができる新たな規定に係る担保権の処分等について、公示の分かりやすさの観点から、一部のものに限定する案を示した(部会資料23 第7の(説明)3参照)。また、電子記録債権法(平成19 年法律第102 号)は、電子記録債権を目的とする質権について、順位の変更(同法第39条)及び転質(同法第40条)のみを認めており、質権又はその順位の譲渡又は放棄を認めていない(同法第36 条において民法の規定が準用されていない)。これらを踏まえると、実体法上、新たな規定に係る担保権の処分等をすることができるものとするかどうかについても、その一部に限ってできるものとする案を設けることとするのが相当と考えられるため、これを併記することを提案するものである。

なお、できるものとするか否かについては、

①実務上のニーズがあるか(例えば、ニーズがあると指摘されているものとして、順位の変更など)

②(物的に編成されていない動産・債権譲渡登記においても)公示を適切に行うことができるか(公示を比較的適切に行えると考えられるものとして、例えば、転担保、担保権の譲渡・放棄(=他の担保権の存在が問題とならない担保権の処分))などを参考に検討することが考えられる。

根担保権の元本の確定前に根担保権者又は債務者について相続があった場合について(部会資料21 第1の9⑷ア、第2の1について)

部会資料21の第1の9⑷アに、以下の案を併記することについて、どう考えるか。

根担保権者又は債務者について相続が開始したときは、担保すべき元本は、確定するものとする。

(説明)

部会資料 21 の第1の9⑷アでは、根担保権者又は債務者について相続があった場合について、根抵当権と同様に、相続の開始後6か月以内に合意の登記がされた場合に限り、相続人が相続の開始後に取得する債権/債務を担保することを提案していた。しかし、動産・債権譲渡登記においては、債務者は登記事項とされていない上、登記できる譲渡人も(商号登記をした商人に拡大しない限りは)法人に限られるため、債務者について相続があった場合を念頭において合意の登記のような制度を設ける必要性は乏しいと考えられる。また、自然人である根担保権者又は債務者の相続人との間の新たな債権を根担保権によって担保しなければならない必要性は高くないと考えられる。加えて、「合意の登記」のようなものを動産・債権譲渡登記に設けることにより、公示が分かりにくくなるおそれもある。

以上を踏まえると、端的に、根担保権者又は債務者について相続が開始したことを元本確定事由とすることも考えられることから、これを併記することを提案するものである。

関連 民法398条の8、398条の10。昭和46年10月4日付け民事甲第3220号民事局長通達、昭和46年12月27日付け民事三発第960号民事局第三課長依命通知。登記研究312号P43からP47、319号P50、369号P81、370号P72、533号P156、559号P152、649号P195、795号P104。

3 集合動産を構成する動産の「逸出・加入」及び「処分」の概念等について(部会資料21 第3の1から3までについて)部会資料21 第3の1及び2の「加入」とは、「個別動産が、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された集合体の範囲(以下「特定範囲」という。)に新たに入ること」をいい、同2の「逸出」とは、集合物を目的とする担保権が及ばなくなるという法的な効果をいうものではなく、「集合体の特定範囲に含まれていた個別動産が、事実の問題として特定範囲から出ること」という趣旨で用いているが、そのような理解でよいか。また、これらの趣旨を表す文言としてよりよいものはあるか。

また、同2及び3の「処分」を「担保権の負担のないものとしての処分」と改めた上で、これを「集合動産の構成部分である個別動産の所有権を、新たな規定に係る担保権の負担がないものとして第三者に移転させること」をいうものと考えて良いか。

(説明)

部会資料21 の第3の1から3までの「逸出・加入」及び「処分」の概念について、集合動産に関する論点を検討する前提として、その意味内容についての認識を共有しようとするものである。なお、「逸出・加入」の用語については、集合動産の特定に当たり、場所的要件を不要とする、又は柔軟化する考え方によると、必ずしも当てはまらない場合もあり得るが、分かりやすさの観点から、「逸出・加入」に統一することとしている。また、「処分」については、分かりやすさの観点から「担保権の負担のないものとしての処分」という名称に改め、その意味内容を明記している。いずれも他の論点を議論する前提として認識を共有する趣旨で記載したものである。

4 集合動産の構成部分である動産を設定者が処分した場合における第三者保護(部会資料21第3の3⑴及び⑵について)

部会資料 21 第3の3⑴及び⑵の記載を、次のとおり修正することについて、どう考えるか。

⑴ 設定行為に設定者の処分権限を制約する別段の定めがある場合において、設定者が、通常の事業の範囲内で、かつ、制約された権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合には、当該処分を受けた者は、制約された権限範囲を超えていることを知らなかったときに限り、その動産について権利を取得するものとする(注1)。

(注1)これに加えて、知らなかったことにつき過失がないことを求める考え方がある。

⑵ 設定者が、通常の事業の範囲及び権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとして処分をした場合については、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、その動産についての権利を取得するものとする(注2)。

(注2)この場合において、当該処分を受けた者が、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であるとは信じていなかったとき(例えば、設定者による処分は通常の事業の範囲を超えているが、拡大された権限範囲内であると信じていたときや、そもそも集合動産譲渡担保権等が設定されていたことを知らなかったときなど)は、即時取得が成立するときに限り、保護されることになると考えられる。

(説明)

⑴について、ここで問題となる別段の定めを「処分権限を制約する別段の定め(処分権限をデフォルトルールから狭める定め)」に限定することを明記している。なお、部会資料21では、「処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料 21の【案 3.3.1.1】)や、「処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がないときは、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21 の【案 3.3.1.3】)を併記していたが、第13 回部会の議論では、「処分を受けた者は、設定者による処分が権限範囲を超えていることを知らなかった場合には、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21の【案 3.3.1.2】)に支持が多かったことから、これを本文に記載することとし、部会資料21 の【案 3.3.1.3】を(注)に記載することとした。なお、「処分を受けた者は、その動産について権利を取得するものとする」案(部会資料21 の【案 3.3.1.1】)については、悪意の者を保護すべき実質的理由もないことから、本文には記載しないこととした。以上の整理について、どう考えるか。

 ⑵について、当該処分を受けた者の主観に応じて第三者保護の規律を分けることを提案している。すなわち、設定者が、通常の事業の範囲及び権限範囲を超えて、担保権の負担のないものとしての処分をした場合については、当該処分を受けた者は、設定者による当該処分が通常の事業の範囲であると信じていた場合には、その動産についての権利を取得するものとし(この場合には、即時取得の要件を緩めることになる。)、それ以外の場合(例えば、設定者による処分は通常の事業の範囲を超えているが、拡大された権限範囲内であると信じていたときや、そもそも集合動産譲渡担保権等が設定されていたことを知らなかったときなど)については、原則どおり即時取得の規律によることになると考えられる。

このような整理が適当かについて、御意見を伺いたい。

5 動産譲渡担保権等相互の優劣について(部会資料23の第4の1⑵について)

次の⑴及び⑵を前提として、⑶の場合の規律について、どう考えるか。

⑴ 同一の個別動産に数個の個別動産譲渡担保権等が設定されて競合したときは、その順位は、原則として、個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり。

⑵ 同一の集合動産に数個の集合動産譲渡担保権等が設定されて競合したとき(その一部が重なり合って競合する場合を含む。)は、その順位は、原則として、集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

この場合において、集合動産譲渡担保権等の設定に集合動産に加入した個別動産(加入時に、当該個別動産を目的とする動産譲渡担5 保権等は設定されていない。)があるときであって、集合動産譲渡担保権等同士の競合が問題となる場面においては、設定後に加入した個別動産について、その順位は、原則として、集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり(登記優先ルールの適用範囲をこの場面に限定する考え方がある。)。

⑶ 集合動産に一個の集合動産譲渡担保権等が設定されており、その設定後に、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が加入したときは、集合動産譲渡担保権等(が当該個別動産に及ぶ効力)と個別動産譲渡担保権等との順位は、次のいずれの立場によって決するのが相当と考えるか。

【甲案】個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時と集合動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時の前後による(設定時説)。

【乙案】個別動産譲渡担保権等について対抗要件を備えた時と当該個別動産が集合動産に加入した時の前後による(加入時説)。

※いわゆる登記優先ルールの適用あり

(説明)

前回の部会では、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が集合動産譲渡担保権等が設定された集合動産に加入した場合の優劣の基準について議論が行われたが、いわゆる加入時説と設定時説の対立が問題となる場面設定をより明確にした上で、改めて問題提起するものである。

まず、

①個別動産譲渡担保権等と個別動産譲渡担保権等が競合する場合

②集合動産譲渡担保権等と集合動産譲渡担保権等が競合する場合

について、原則として対抗要件具備の先後により順位を決することに争いはない。なお、集合動産譲渡担保権等の設定後に(個別動産譲渡担保権等が設定されていない)個別動産が加入した場合であっても、集合動産譲渡担保権等同士の競合が問題となる場面では、設定後に加入した個別動産を含めて、上記②と同様の規律により順位を決すべきことになる(この場面で設定時説と加入時説の対立が問題となるわけではない。)。

これに対し、③個別動産譲渡担保権等と集合動産譲渡担保権等が競合する場合

すなわち、個別動産譲渡担保権等が設定された個別動産が、集合動産譲渡担保権等が設定された集合動産に加入した場合には、設定時説と加入時説の対立が問題となる。上記を前提に、設定時説と加入時説のいずれを採用すべきと考えるか。

なお、登記優先ルールは、上記①から③までのいずれについても適用されることになると考えられる(登記優先ルールの適用範囲を限定する立場によれば、上記②の場合に限って適用されることになる。)。

6 留保所有権の対抗要件等(部会資料23 の第4の2について)

部会資料23 の第4の2の記載を、分かりやすさの観点から、次のとおり修正することについて、どう考えるか。

2 留保所有権の対抗要件等 ※以下では留保所有権の対抗要件等に関する実質的規律について記載するものであり、担保目的取引規律型又は担保物権創設型の立場から厳密な記載を行うものではない。

 ⑴ 留保所有権の対抗要件の要否

ア 目的物の代金債権を担保する留保所有権(以下「狭義の留保所有権」という。)は、これを第三者に主張するために対抗要件を必要とするかどうかについては、次のいずれかの案によるものとする(注1)。

【案4.2.1.1】狭義の留保所有権は、これを第三者に主張するために、特段の要件を必要としないものとする(注2)。

【案4.2.1.2】狭義の留保所有権は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ (目的物の代金債権及び)目的物の代金債権(注1)以外の債権を担保する留保所有権(以下「拡大された留保所有権」という。)は、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする(注3)。

(注1)動産を購入するための資金の融資に基づく債権など、目的物である動産と密接な関連性を有する一定の債権を担保する留保所有権についても、狭義の留保所有権に含める考え方がある。

これに関連して、このような密接な関連性を有する一定の債権を被担保債権とする動産譲渡担保権等が設定された場合には、当該動産譲渡担保権等についても、狭義の留保所有権と同様に取り扱う考え方がある。

(注2)【案4.2.1.1】によっても、(代位弁済等により)目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合には、その動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする考え方がある。

(注3)留保所有権についても、登記できるとすることが考えられる。

⑵ 留保所有権等と新たな規定に係る動産担保権との優劣関係

ア 留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、留保所有権が目的物の代金債権以外の債権を担保する限度では、これをもって第三者に対抗することができるようになった時の前後によるものとする(注4)。

イ 留保所有権は、【案4.2.1.2 によると引渡しがされていることを前提として、】目的物の代金債権を担保する限度では、他の新たな規定に係る動産担保権に当然に優先するものとする(注5、6)。

(注4)この場合には、前記4の1⑵ウと同様のルール(登記優先ルール)を採用することが考えられる。

(注5)なお、拡大された留保所有権について、目的物の代金債権を担保する部分と目的物の代金債権以外の債権を担保する部分がある場合には、これと競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、本文⑵イにより目的物の売買代金を担保する限度では拡大された留保所有権が優先し、それ以外の部分については、原則として、それぞれが対抗要件を具備した時の前後によるものとなる。

(注6)他の新たな規定に係る動産担保権に優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方がある。

(説明)

留保所有権の対抗要件等について、分かりやすさの観点から、表現振りを修正したものである(担保目的取引規律型又は担保物権創設型からの厳密な記載ではなく、実質的な規律内容を記載することとした。)。

実質的な規律内容に変更がある点として、(注2)で代位弁済等により目的物の売主以外の者が狭義の留保所有権を有する場合に対抗要件の要否についての規律を変える考え方があることを明記した。また、部会資料23 の【案4.2.2.2】では、前記の「加入時説」と採ることを前提に、留保所有権が目的物の代金債権を担保する限度であっても、当然には優先しない(原則どおり、対抗要件の先後による)案も提示していたが、当然に優先する立場を支持する意見が多かったことから、これを本文から削ることとしている。

なお、(注6)として、他の新たな規定に係る動産担保権に優先するための要件として、一定期間内に登記を備えることを求める考え方を明記することについて、どう考えるか。

〇〇県〇〇市〇〇町1-1-1全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地):The land.
表題部:The heading section.
(土地の表示):The description of the land. 調整
: The prepared. 令和〇〇年〇月〇日
: The prepared date. 不動産番号
: The real property number. 12345567890123
地図番号
: The map number. A11―1 筆界特定
: The parcel boundary demarcation.       余白:The blank.
【所在】
: The location. 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇  余白: The blank
①地 番
: The parcel number.
②地 目
:The land category
(current state of the Land) ③地  積 ㎡
:The parcel area (area of the Land) 原因及びその日付
: The cause for recording and date thereof.
【登記の日付】:The recording date.
9999番3 宅地
: The presidential land.     :100.00㎡ ①9999番1から分筆
: Subdivision of the Parcel Number.9999-1.
【令和〇〇年〇月〇日】
所有者:
The owner.
〇〇市〇〇丁目〇番〇号 E: The name and address of Owner.

 権 利 部(乙区): The rights section (The section B).(所有権以外の権利に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号
: The rank number. 登記の目的
: The purpose of recording. 受付年月日・受付番号
: The recording date and number. 【権利者その他の事項】
: The holder of rights and other particulars.

付記1号

付記2号 根抵当権設定
: The revolving mortgage.
令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 略
the scope of claims to be secured and the maximum amount;
債務者: The name and address of obligor .
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
E
根抵当権者:The name and address of obligor .
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:
A銀行
1番根抵当権変更
:The modification of revolving mortgage No. 1. 令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 原因:
When and for what cause obligor was acquired.
令和○年〇月〇日相続: The Inheritance date.
債務者:The names and addresses of debtor’s heirs
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:B
○○県〇〇市〇〇丁目〇番〇号:C.
1番根抵当権変更
:The modification of revolving mortgage No. 1. 令和〇〇年〇月〇日
第〇〇〇〇号 原因The date of agreement.
令和○年〇月〇日合意
指定債務者 B
※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
The underlines indicate delated matters. The filing Number:00000000000 (1/1)                  

これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。
: This document evidences all of the entries made in the registry.

(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau.

〇〇年〇〇月〇〇日 Date
〇〇Legal Affairs Bureau   登記官 〇〇  Registrar’s name: 〇〇

※下線のあるものは抹消事項であることを示す。
Underlines indicate delated matters. Filing Number:00000000000 (1/1)                   

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