信託業法の「営業」

営業って何でしょう。営業に当たるか当たらないかによって、家族信託・民事信託における、受託者資格が決まります。

考え方1[1]

1、営利の目的を持って

2、一定の計画に従い反復継続すること

3、対公衆性すなわち不特定多数の者を相手方とすること

このうち、1つでも欠けている場合は、信託業法の許可を得ないで済む、個人間で信託行為をして問題ない。利益を上げる目的でない場合や、特定多数の委託者、不特定少数の委託者の場合など。

多数、少数ってどのくらいでしょうか。多数は特定されていれば1000名でも良いのでしょうか。委託者が1人でも誰だか分からないと、受託者は不安で信託を引き受けるのは怖いと考えるのではないでしょうか。

考え方2

受託者が、反復継続して信託の引き受けを行う意思をもっている場合、営利の目的を持っていなくても「営業」にあたり、信託業法の許可が必要になる[2]

なぜ許可が必要なのでしょうか。反復継続して信託の引き受けを行う業者と顧客との間に情報量や交渉力の格差が生じうること、受託者が預かった信託財産を自己名義で管理運用するという大きな権限を有することから受託者の義務を加重する必要がある等の理由があるようです[3]

 情報量や交渉力の格差が生じると信用できるということにはならないのか、と少し疑問です。大きな権限を持つから義務も加重する必要がある、というのは納得できます。

自己信託

自己信託については、これを「営業」として行ったとしても、信託業に該当することはなく、信託会社としての免許・登録は不要[4]であるが、多数(50名上)の者が受益権を取得できる場合には、自己信託会社としての登録が必要となる(信託業法50の2条、信託業法施行令15条の2)。

 なぜ、40名ぐらいだと可能なのでしょうか。権限が大きくなるからでしょうか。

よく分からないことが分かった、というくらいしか言えませんが、受託者をみて無理そうだなと思ったら信託銀行にお願いしたり、途中から変更したりすることが必要だと考えます。

食堂入り口のドアに「営業中」の札が下がっていれば、営業していることが分かります。

「営業終了」の札が下がっていると、今日の営業は終了したことと、明日は定休日でない限り営業するということが分かります。

「都合により休業中」の札が下がっていると、今は休業していることと、今後、都合が許せば営業するということが分かります。

「○月○日をもって閉店」などの札が下がっていると、閉店して営業をしないということが分かります。

食堂を持ち出すのは安易かもしれません。しかし、受託者の主観は相手から見えない以上、客観的な基準が必要だと考えます。

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信託業法第2条第1項

(定義)

第二条  この法律において「信託業」とは、信託の引受け(他の取引に係る費用に充てるべき金銭の預託を受けるものその他他の取引に付随して行われるものであって、その内容等を勘案し、委託者及び受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。以下同じ。)を行う営業をいう。

商法第502条第13号

(営業的商行為)

第五百二条  次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。

十三  信託の引受け


[1]弁護士山中眞人『信託フォーラムvol.6』P92

[2]小出卓也『逐条解説 信託業法』 2008 (株)清文社P17

[3]小出卓也『逐条解説 信託業法』 2008 (株)清文社P17

[4] 平成19年信託業法パブリックコメント「その他」

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