加工不動産ID ルールガイドライン

不動産ID ルールガイドライン

令和4年3月31日

国土交通省 不動産・建設経済局

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk5_000001_00006.html

目 次

1.本ガイドライン策定の背景・課題及び目的・効果・・・・・・・・・・・・・・・・1

2.不動産ID ルール整備に当たっての留意点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

(1)不動産ID ルール整備に当たっての基本的考え方・・・・・・・・・・・・・・・2

3.不動産ID のルールについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

(1)不動産ID に使用する番号について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

1 不動産番号(13 桁)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

2 特定コード(4桁)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

(2)不動産ID の基本ルール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

1 土地のID ルール(ルール№1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

2 建物(戸建て)のID ルール(ルール№1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

3 非区分建物のルール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

非区分建物(商業用 )のID ルール(ルール№3)・・・・・・・・・・・・・・・・6

非区分建物(居住用 )のID ルール(ルール№4)・・・・・・・・・・・・・・・・7

非区分建物全体のID ルール(ルール№5)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

4 区分所有建物のルール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

商業用の区分所有建物【ある専有部分全体を示す場合】(ルール№6)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

商業用の区分所有建物【ある専有部分の一部を指す場合】(ルール№7)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

居住用の区分所有建物【専有部分=1部屋の場合】(ルール№8)・・・9

居住用の区分所有建物【専有部分=複数部屋の場合】(ルール№9)・9

区分所有建物の建物全体(ルール№10)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

(3)複数の用途が混在する建物の不動産番号・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

(4)不動産ID の記述ルール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

4.不動産ID の活用に向けた前提・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

(1)個人情報保護法との関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

(2)ID の入力・登録(紐付け)に際しての留意点・・・・・・・・・・・・・・・12

(3)ID と紐付けたデータの利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

(4)ID やID と紐付いたデータの利用範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

5.おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

1.本ガイドライン策定の背景・課題及び目的・効果

 現在、我が国の不動産分野においては、官民の各主体によって多様な形でデジタル化の取組が進められており、テクノロジーを活用しながら、不動産取引の活性化等を図っているところです。

 一方、現状、我が国の不動産については、土地・建物いずれも、幅広い主体で共通で用いられている番号(ID)が存在せず、住所・地番の表記ゆれにより、同一物件か否かが直ちにはわからない状態となっています。そのため、仲介・開発等の際に、多様な主体が保有する不動産関連情報( 本ガイドラインにおいて「不動産関連情報」とは、不動産の取引や性能・管理等の情報に限らず、当該不動産に関する生活インフラ情報や、官民の保有する地図情報・ハザードマップ等のエリア情報なども含めて、不動産に関連する多様な情報を指す用語として使用します。)を独自に収集・名寄せする場面や、消費者に的確な情報発信を行おうとする場面で手間・時間がかかるなど、不動産関連情報の連携・蓄積・活用における課題となっているところです。

 そこで、今般、不動産を一意に特定することができる、各不動産の共通コードとしての「不動産ID」に係るルールを整備することとしました。不動産ID のルール整備及び活用は、情報の収集・名寄せを容易にすることで事業者の負担軽減に資するとともに、官民の各主体が保有する不動産関連情報の連携・蓄積・活用、消費者への的確な情報発信等を促進するものです。IT を活用した重要事項説明等や、行政情報の電子化といった他の施策や取組とも相まって、不動産業界全体の生産性及び消費者利便の向上等により不動産の流通・利活用を促進するとともに、今後、本格的なデジタル社会を迎えるにあたり、不動産DX を強力に推進する上での情報基盤整備の一翼を担うことにより、不動産市場の活性化及び透明化を図る取組となっていくことが期待されます。

 また、不動産業界内のみならず、今後、電気・ガス・水道・通信等の生活インフラや、まちづくり、物流分野等のより広い社会における活用も期待されるものであり、デジタル田園都市国家構想、スマートシティといった取組や、デジタルツインの実現に向けた取組と連携していくことで幅広い活用が期待されます。

 不動産ID は、官民を問わず、どなたでも原則として自由に活用していただくことを想定しており、本ガイドラインは、幅広い活用が期待される不動産ID のルールを定め、その利用にあたっての留意点を解説することを目的として策定するものです。また、本ガイドラインは、「不動産ID ルール検討会」(座長:田村 幸太郎 弁護士。以下「検討会」という。)の中間とりまとめ(参考資料を参照。)を踏まえて策定しています。

2.不動産ID ルール整備に当たっての留意点

 本ガイドラインに定める不動産ID ルールは以下の2点を前提として検討し、策定しました。以下の点は、ルールを正確に理解し、活用していくためにも不可欠な内容であるため、本項で解説します。

(1)不動産ID ルール整備に当たっての基本的考え方

  本ガイドラインで定める不動産ID ルールは、個々の不動産を一意に特定する番号(ID)の内容に関するルールです。不動産ID の取組は、本ガイドラインで定めるルールに従って、不動産関連情報を保有する者・活用しようとする者(以下「主体」という。なお、主体は官民を問いません。)が自ら保有する不動産関連情報に不動産ID を紐付け、紐付けた情報を各主体や主体間で連携・蓄積・活用することで様々なメリットを発現させていくことを想定しています。

 このため、各主体で不動産関連情報に不動産ID を紐付けた後に、どのように情報を連携させるかについては、各主体の発意・主体間の交渉に委ねる、というようなあり方を目指しているものです。

従って、本取組はが一元的なデータベースを作成して不動産ID を発番したり、不動産情報を収集・蓄積して各主体に提供するといったことを意図したものではありません。

 一方で、不動産ID を普及させ、その効果を最大限発現させるため、検討会においては、不動産ID が広く利用されるための方策についても議論を行いました。例えば、想定される不動産ID の活用方法(ユースケース)・メリットとして下記の例(※)が挙げられています(詳細は参考資料P23~31「4.不動産ID の利用拡大に向けた方策について」を参照。)。

(※)想定される不動産ID のユースケース

○ 不動産ID は、その活用により、住所の表記揺れや同一住所・地番に複数の建物がある場合も含めて、一義的に不動産の特定が可能となるものです。

〇 このため、社内や関連会社間のデータベースの物件情報の管理をID により行うことで、物件情報の名寄せ・紐付けが容易になるほか、各主体間でID を活用することにより、例えば、外部から取得したデータを自社データベースに連携させる際などにも、ID を突合するだけで同一物件か否かの判断が可能となります。

〇 また、物件ポータルサイトにおいては、ID を活用して物件管理を行うことで、検索機能の向上のほか、重複案件の一括表示や、成約案件等の適時の掲載終了が可能となるなど、事業者・消費者等の利用者の利便性向上に向けた取組が考えられます。

〇 さらに、不動産ID と空間情報等との紐付けが可能となれば、生活インフラ事業、まちづくりや物流など不動産関連分野以外でも、一義的に不動産の特定が可能という性質を生かした活用が想定されます(参考資料P28 参照) 。

不動産ID のルール整備と、各主体が保有する情報の公開・提供範囲とは別の議論となります。不動産ID の取組は、上述の通り、まず情報保有・活用主体が自ら保有する不動産関連情報に不動産ID を紐付けるところから始まりますが、それにより許諾なく個人情報や各主体が保有する内部情報が外部に流出するものではありません。ID が紐付けられた情報をどのように利用するかは個別のユースケースごとに、各主体が自ら決めることができます。

3.不動産ID のルールについて

(1)不動産ID に使用する番号について

不動産ID は、不動産番号(13 桁)と特定コード(4桁)で構成される17 桁の番号とします。

 不動産番号(13 桁)

 不動産番号は、不動産登記法及び不動産登記規則に基づき、一筆の土地又は一個の建物ごと(区分所有建物においては一個の専有部分ごと)に不動産登記簿の表題部に記録されている符号です。通常は、登記事項証明書の右上に記載されています(参考資料P14~16 参照)。不動産番号はその性質上、

・一意でゆらぎのない番号であること

・紛れなく不動産を識別可能な文字列であること

・全国の不動産を対象に広く付番されており、各事業者等が統一的に利用できること。

・紐付いている所在情報等の真正性があることといった不動産ID の基礎として使用する番号としての性質を満たしている公的・基本的な情報です。

 特定コード(4桁)

 上記の通り、不動産番号は一筆の土地又は一個の建物ごと(区分所有建物においては一個の専有部分ごと)に記録されています。例えば一般的な賃貸マンションは実際の不動産取引においては、各部屋を特定するニーズが高いと考えられます。他方、一般に賃貸マンションは非区分建物であり、1棟で1つの不動産番号が与えられているのみであり、不動産番号だけでは各部屋を特定することはできません。

 このように、不動産番号のみでは対象となる不動産を特定できない場合は、後に記載する個別のルールに基づいて、4桁の個別の符号を不動産番号(13桁)に続いて入力するものとします。当該符号を本ガイドラインでは「特定コード」と呼称します。なお、特定コードを活用しなくても対象不動産を特定することができる場合には、特定コード部分には「0000」と入力することとします。

(2)不動産ID の基本ルール

 前述の通り、不動産の類型にかかわらず、不動産番号(13 桁)と特定コード(4桁)で構成される17 桁の番号が不動産ID です。各不動産の類型毎に、使用する不動産番号及び特定コードのルールを整理した不動産ID の基本ルールは、以下の表のとおりとなります。なお、新築未登記の場合など、表題部登記前のものに関しては、不動産ID のルールは設けていません。

(表)不動産ID の基本ルール

 土地のID ルール(ルール№1)

土地の不動産番号(13 桁)-0000

土地の不動産ID は、不動産登記された「筆」ごとに付します。1筆の土地に対応する1つの不動産番号が存在することから、当該不動産番号(13 桁)を用います。また、特定コードを用いることなく対象を特定することができることから特定コード4桁には「0000」を用います。

 建物(戸建て)のID ルール(ルール№2)

建物の不動産番号(13 桁)-0000

建物(戸建て)の不動産ID は、当該建物全体について1つの不動産ID を付します。1つの建物には原則として1つの不動産番号が存在することから、当該不動産番号(13 桁)を用います。また、特定コードを用いることなく対象を特定することができることから特定コード4桁には「0000」を用います。

※2世帯住宅等において、1件の戸建て住宅が区分登記されている場合には、区分所有建物のルール(各専有部分を表す場合はルール№8、建物全体を表す場合はルール№10)を用います。

 非区分建物のルール

ⅰ)非区分建物(商業用・本ガイドラインにおいて「商業用」とは、主にオフィスや店舗等の商業施設を想定して、居住用以外の用を指し示す用語として使用している。)のID ルール(ルール№3)

建物の不動産番号(13 桁)-階層コード(2桁)・階数(2桁)

商業用の非区分建物は、利用形態に応じて区画・部屋の広さ、形状等を変更することも多いことから、当該建物の一部区画・部屋を示す場合には個々の区画・部屋を特定するのではなく、当該建物の「何階部分であるか」を特定し不動産ID を付します。1つの非区分建物には1つの不動産番号が存在することから、当該不動産番号(13 桁)を用います。その上で「何階部分であるか」を特定するために特定コードとして、階層コード2桁+階数2桁の計4桁を用います。

階層コードは以下の表の通りです。地上階の場合は「G0」、地下階の場合は「B0」、地上の中間階の場合は「GM」、地下の中間階の場合は「BM」となります。

また、階数は右詰で記載します。例えば2階にある区画を示す場合には、特定コードは「G002」となります。本ルールについては、個々の区画・部屋を特定するのではなく、当該建物の「何階部分であるか」を特定する性質上、同一フロアに存在する区画・部屋の不動産ID は同一になるという点に留意が必要です。

(表)階層コードのルール

1桁目(地上階か地下階かを選択) 2桁目(通常階か中間階かを選択)地上階の場合 G 通常階の場合 0(ゼロ)地下階の場合 B 中間階の場合 M

※ 部屋番号、ドア番号、区画番号などにより個々の部屋や区画が特定できる可能性がある場合であっても、居住用の建物と異なり特定コードに部屋番号は用いないこととします。(例えば、非区分建物のオフィスビルで、フロアの各区画が固定的で、固有の部屋番号等が付されている場合でも、特定コードに部屋番号は用いません。)

※ 商業用・居住用(本ガイドラインにおいて「居住用」とは、主にマンション、アパートのように人が居住することを主な用途とする建物を指す用語として使用します。)の別は、個々の部屋の利用目的ではなく、建物全体の利用目的から判断します。ただし、建物全体が同一の利用目的ではない1階・2階は商業用、3階・4階は居住用といった建物の場合は、1階・2階は商業用、3階・4階は居住用のルールを用います。

※ 居住用マンションの一室を事務所として使用しているなど、居住用建物において、一室を居住以外の目的で賃貸する場合は、居住用としてルール№4、8、9を用います。

(例) 非区分建物(商業用)のID ルール(ルール№3)

非区分建物(居住用)のID ルール(ルール№4)

建物の不動産番号(13 桁)-部屋番号(4桁)

居住用の非区分建物としては、一般的な賃貸マンション、賃貸アパートを想定しています。こうした不動産は、一般的に部屋ごとに賃貸等が行われることを踏まえて、部屋ごとに不動産ID を付すものとします。

1つの非区分建物には、建物全体として1つの不動産番号が存在することから、当該不動産番号(13 桁)を用います。その上で「個々の部屋」を特定するために特定コード4桁には「部屋番号(4桁)」を用います。

※ 部屋番号に、平仮名、片仮名、漢字等の、数字及び英文字以外の表記が含まれる場合、数字及び英文字部分のみを不動産ID として用います。また、ローマ数字はアラビア数字に、英文字の小文字は大文字に変換して用います。

※ 原則として棟ごとに登記がなされ、不動産番号も棟ごとに存在することが一般的であることから「A 棟」などの棟番号の表記や、「A1101」のように棟番号(A)が部屋番号に付されている場合の棟番号は省略します。(上記例であれば、特定コードは「1101」となります。)

(例)非区分建物(居住用)のID ルール(ルール№4)

非区分建物全体のID ルール(ルール№5)

建物の不動産番号(13 桁)-0000

商業用、居住用いずれの非区分建物も、当該建物全体について1つの不動産ID を付します。1つの非区分建物には1つの不動産番号が存在することから、当該不動産番号(13 桁)を用います。また、特定コードを用いることなく対象を特定することができることから、特定コード4桁には「0000」を用います。

4 区分所有建物のルール

ⅰ)商業用の区分所有建物【ある専有部分全体を示す場合】(ルール№6)

専有部分の不動産番号(13 桁)-0000

区分所有建物においては、建物全体についての不動産番号は存在せず、専有部分ごとに1つの不動産番号が存在します。このため、商業用の区分所有建物のうち、ある専有部分全体を指す場合には、当該専有部分の不動産番号(13 桁)を用います。当該部分は特定コードを用いることなく対象を特定できることから、特定コード4桁には「0000」を用います。

商業用の区分所有建物【ある専有部分の一部を指す場合】(ルール№7)

専有部分の不動産番号(13 桁)-階層コード(2桁)・階数(2桁)

商業用の区分所有建物のうち、区分登記されたある専有部分内に存在する特定の区画、部屋について不動産ID を付す場合には、不動産番号は当該専有部分の不動産号(13 桁)を用います。特定コードについては、ルール№③と同様、当該区画や部屋が「何階部分にあるか」に着目し、階層コード2桁+階数2桁の計4桁を用います。階層コードのパターンなど、特定コードに係るルールはNo.③ⅰ)に定めている内容と同じです。

居住用の区分所有建物【専有部分=1部屋の場合】(ルール№8)

専有部分の不動産番号(13 桁)-0000

居住用の区分所有建物として、最も一般的な例は分譲マンションです。分譲マンションは、各部屋単位で売買等の取引が行われることを踏まえて、部屋毎に不動産ID を付すものとします。こうした区分所有建物においては、1つの部屋(専有部分)ごとに区分登記されています。このため、不動産番号は当該専有部分(=部屋)の不動産番号を用います。また、当該部分は特定コードを用いることなく対象を特定できることから、特定コード4桁には「0000」を用います。

居住用の区分所有建物【専有部分=複数部屋の場合】(ルール№9)

専有部分の不動産番号(13 桁)-部屋番号(4桁)

該当しない形態として、例えば、賃貸併用住宅のように、一つの建物内に大家の自宅と複数の賃貸の部屋が存在し、大家の自宅で一つ、賃貸の部屋エリア全体で一つの区分登記がされている場合が挙げられます。

こうした場合には、賃貸の各部屋を特定するニーズがあることを踏まえ、部屋ごとに不動産ID を付すものとします。不動産番号は当該部屋が含まれる専有部分の不動産番号を用います。また、ルール№④と同様、「個々の部屋」を特定するために特定コード4桁には「部屋番号(4桁)」を用います。特定コードに係るルールは3)に定めている内容と同じです。

区分所有建物の建物全体(ルール№10)

不動産番号(13 桁)-000B(建物を表す符号(4桁))

区分所有建物は、専有部分ごとに1つの不動産ID が存在しますが、建物全体の不動産番号は存在しません。このため、区分所有建物の建物全体を示す不動産ID には、当該建物が建つ「土地」の不動産番号を用います。

建物が複数筆の土地の上に建っている場合は、建物の不動産登記簿の所在欄の先頭に示されている地番の土地に係る不動産番号(不動産登記事務取扱手続準則(平成17 年2 月25 日 法務省民二第456 号法務省民事局長通達)第88 条第2項において「建物の登記記録の表題部に2 筆以上の土地にまたがる建物の不動産所在事項を記録する場合には,床面積の多い部分又は主たる建物の所在する土地の地番を先に記録し,他の土地の地番は後に記録するものとする。」と規定されている。)を用います。

また、特定コードには、当該不動産ID が、土地の不動産ID ではなく、「区分所有建物の建物全体」であることを示すための符号として「000B」を用いることとします。

本ルールについては、土地の不動産番号を用いる性質上、同一筆の土地に複数の区分所有建物が存在する場合や、建物の建て替えを行った場合に新旧の建物で不動産ID が同一になることもありうるという点に留意が必要です。

(3)複数の用途が混在する建物の不動産番号

前述の通り、商業用・居住用の別は個々の部屋の利用目的ではなく、建物全体の利用目的から判断することとしています。ただし、建物全体が同一の利用目的ではなく、1階・2階は商業用、3階・4階は居住用といった利用目的の建物も想定されます。

このような場合も、(2)で定めた各ルールを用いることで対応できます( 具体例として参考資料P12 を参照。)。

(4)不動産ID の記述ルール

不動産ID は、これを利用するデータベース間でデータとしての記述に著しいかい離があると、情報の連携・蓄積・活用を進める観点で支障となり得ることから、以下の基本的なルールに従い記述します。

○ 使用する文字種は、半角とする(数字は半角数字、アルファベットは半角大文字のみ)。

⇒ 例えば、ルール№4における特定コードとなる部屋番号について「2a」号室などアルファベット小文字が使用されていた場合は、「2A」と大文字に変換して記述します。

○ 原則として「不動産番号(13 桁)-(半角ハイフン)特定コード(4 桁)」と記述する。

⇒ 不動産番号(13 桁)のみでも情報連携等の活用を容易にするため、半角ハイフンを用いることで、不動産番号(13 桁)と特定コード(4桁)の区切りを明確化する趣旨であり、データベース整備上、「-」(半角ハイフン)以外の文字(例えば「;」(半角セミコロン)など)で記述することが適切な場合は、当該文字を使用することも可能です。

4.不動産ID の活用に向けた前提

不動産ID の活用に際しては、ID に用いる文字列のルールを決めるだけではなく、ID を用いる上での基本的な前提・留意点についても、各主体間で共通認識を築くことが必要です。

(1)個人情報保護法との関係

不動産ID は、それ単体では、特定の個人を識別することはできないものの、不動産ID や登記簿上の不動産番号(以下、「不動産ID 等」という。)を保有する者において、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる場合には、「不動産ID 等及び当該他の情報」による情報全体として、個人情報保護法第2条第1項の「個人情報」に該当します。このため、ユースケースに応じて個人情報保護法制との関係で整理が必要となります。

ただし、不動産ID は、不動産登記簿等と照合すれば所有者の識別が可能といった点で、住所や地番等と同じ性質の物件情報の一つです。このため、現在個人情報保護法等の法令に基づいて行われている実務の範囲内で不動産ID の利活用が行われる場合は、特段新たな対応を講じる必要はありません。

上記を超えて、更なる不動産ID の利活用を図る場合には、具体的な利用方法や紐付ける情報の性質に応じて、適切な利用目的の公表や、第三者提供時の同意取得等の措置を講じることが求められます。

なお、匿名加工情報や仮名加工情報(仮名加工情報は令和4年(2022 年)4月より新たに導入される制度です。)といった個人情報保護法上の制度を活用することで、個別の同意取得や新たな利用目的の公表といった措置を取ることなく、データの利活用を進めていくことができますが、匿名加工情報においては、加工にあたり、不動産ID も含めて「個人情報と他の情報とを連結する符号を削除」するよう求められており遺漏無く対応していくことが必要です。

(2)ID の入力・登録(紐付け)に際しての留意点

不動産ID の取組は、不動産に関する様々な情報が、本ガイドラインのルールに沿って、各主体により不動産ID と紐付けられた形で蓄積され、連携していくことで、その利活用が進んでいくものです。こうした取組を的確に進めていくためには、不動産ID と不動産関連情報を紐付ける際に、不動産ID を正確に入力・登録していくことが必要です。このため、不動産ID の入力・登録を行う際は以下の点に留意してください。

土地と住宅を合わせた取引や、複数筆の土地をまとめて取引する際に、ポータルサイトに物件情報を登録し、不動産ID を入力する時など、複数のID 入力を想定しうる場合は、各主体・主体間において、ユースケースに応じて、予めどの不動産ID を入力するか明確化しておきます。その際、将来的な情報連携も視野に入れて検討することが重要です(※)。

ID の誤入力に関しては、不動産ID は住所・地番等の物件情報に類するものであり、通常の情報相違への対応と同様に、その都度の訂正を行うことができるようにしておきます。不動産ID であることをもって、特別の取扱(一度登録したら修正できないなど)を必要とするものではありません。(なお、例えば、ポータルサイトにおいて、あえて誤ったID を入力し、消費者に対するおとり広告を行っている場合には、公正競争規約に基づく措置の対象となります。)

新築未登記の場合など、表題部登記前のものに関しては、ルール上、不動産ID は存在しない点にも留意してください。

※ 複数のID 入力を想定しうるケースの具体例と入力するID の考え方の例

(ユースケースの想定に応じて、これ以外のID を入力することとしてもよい。)

ケース1) 不動産取引時における事業者間の情報共有や広告のため物件情報を登録し、ID を入力する場合は、ID は、事業者が当該取引に係る情報を検索したり、情報や広告の表示を整理するためにバックデータで利用することが想定されるため、同一の取引単位の物件情報には、同一のID が付されるルールとすることが望ましい。

 土地と住宅を合わせた取引(土地付き住宅)の場合

古家付き土地を含め、建物ID を入力する。

・中古住宅は建物ID、古家付き土地は(土地分類のため)土地ID を入力するなど、登録時の物件種別を捉えてID を入力することも考えられるが、現在のポータルサイトの物件種別は、明確な登録基準があるわけではなく、売主や販売会社の意向を踏まえて、どの種別で登録するか判断されているため、広告主が異なると同一取引の広告であっても物件種別が異なることがあり、同一取引の情報に同一のID が付されないケースが想定される。

・このため、登録時の物件の状態(=建物が存在)を捉えて建物ID を入力する。

・他方で、広告出稿から取引成立までの間や取引直後に、古家を除却し、古家付き土地が更地となるケースもあるため、建物ID に加えて、土地ID を入力する欄を設けることも考えられる。

② 複数筆を集約した土地(更地)を取引する場合

面積が最大の筆のID を入力する。

・複数筆の取引の中には多くの筆を含むものも想定され、全てを入力することは実務上もシステム整備上も困難と考えられることから、面積が最大の筆のIDを入力する。

・他方、(市境をまたぐ土地や面積が最大の筆とほぼ同じ面積の筆がある土地など)他の筆のID もあわせて登録されている方が、取引情報として望ましい場合も想定されることから、面積が最大の筆に加えて、他の筆のID を入力する欄を設けることも考えられる。

・また、複数筆の取引であることの識別を要する場合は、筆数を合わせて登録する等の対応が考えられる。

ケース2) インフラ情報の管理のためID を入力する場合は、土地に設置される設備(メーター等)は住宅の建替があっても維持されるため、土地に設置される場合は土地のID、住宅に設置される場合は住宅のID を入力。

(3)ID と紐付けたデータの利用

2.2で指摘したように、不動産ID の取組は、不動産ID の紐付けにより、許諾無く、個人情報や各主体が保有する内部情報が外部に流出するものではありません。その上で、不動産ID が紐づけられた情報をどのように利用するかは、個別のユースケース毎に各主体が決定します。

その際は、個人情報の観点や、現在の実務における取扱いも踏まえて検討することが必要です。具体的には、不動産ID は「住所・地番」と同じ性質を持つ(不動産登記簿と照合すれば所有者が特定できる)ことから、これらの取扱いも踏まえて検討することが重要です(※)。

※ 不動産取引における物件情報広告等の場面におけるID の表示について

○ 登録と表示は別の問題であり、登録したから無条件に表示しなければならないというものではありません。例えば、募集時に物件情報と併せて不動産ID を登録するが、当面、ポータルサイトの外部(例:一般向けのポータルサイトにおける物件情報の提供時)には、不動産ID 自体は表示しないことも考えられます。

・ 一般向けのポータルサイトでは、基本的に、地番・部屋番号は非表示となっているが、これらを表示する点について、売主・貸主から個人情報保護法上の必要な同意がある場合に、例外的に、町字に加えて、地番・部屋番号を表示しているケースがあり、不動産ID について、表示する場合には売主・貸主の同意を得る必要があります。

・ 個人情報保護法上、売主・貸主の合意があると認められる場合は、不動産IDを一般に表示することは差し支えありません。地番等と同様に、表示によって購入・賃借希望者が詳細な物件情報を調べられる点はメリットとなりえます。

会員向け(=事業者間)の情報提供等にあたっては、現行の不動産取引実務を踏まえつつも、不動産ID の表示によって物件を特定できることで、円滑な取引に資するメリットも踏まえて、取扱の検討が必要となります。

(4)ID やID と紐付いたデータの利用範囲

不動産ID は、広く社会の様々な分野での活用が期待されることから、原則として各主体が自由に活用できます。ただし、適切でない目的で利用されること等で、不動産ID の制度自体の信頼性が損なわれることのないよう、

○ 法令や公序良俗に反する行為への利用

○ 不当に第三者に損害を与えるような利用

○ 不動産ID の信頼性を損ねるような利用

といった利用目的での利用は認めないこととします。

また、不動産ID を利用した情報の連携・蓄積・活用を行う際には、上記に該当するような利用が行われないよう、規約などで必要な規定をおくことが望ましいです。

5.おわりに

不動産ID の取組は、不動産に関する様々な情報が、本ガイドラインのルールに沿って、各主体により不動産ID と紐付けられた形で蓄積され、連携していくことで、その利活用が進んでいくものです。

今後、ID に紐付いた不動産関連情報が段階的に増えていくことで、不動産ID を活用した不動産関連情報の連携・蓄積・活用として実現できるユースケースも広がっていくことが想定されます。

このため、まずは、官民問わず、多くの主体が本ガイドラインのルールに沿って、不動産ID を不動産関連情報に紐付けていくことが重要となります。国土交通省としても、今後、ID に用いられる不動産番号の確認の容易化に向けた検討や国・自治体の保有するデータと不動産ID の紐付けに向けた検討を行うなど、不動産ID の活用に向けた環境整備に取り組んでいきます。

(以上)

PAGE TOP