遠藤英嗣「家族民事信託の現状と展望」

月報司法書士[1]に、遠藤英嗣弁護士が寄稿されていました。

第1 家族民事信託の現状

1 一時の勢いはなくなりつつある家族民事信託の利用

2 民事信託は認知症対策とともに資産承継機能への転換期に入る

  • 後見的な財産管理機能の役割(認知症対策)
  • 資産承継機能の役割とその重要性(遺産分割協議不要、後継ぎ遺贈型受益者連続)

3信託組成者によるいわゆる「やっつけ仕事」が多く、紛議性の高い信託契約書等が数多く世に出回っていること

  • 奔放野放図な家族信託の組成(受託者(残余財産の帰属権利者など)の思いを過度に反映させるもの)
  • 意味が変わりつつある「信託の登記をすれば、あとは安心」(信託契約書に、受益権の内容が記載されていない)

4 より慎重になりつつある金融機関

  • 民事信託利用の趨勢は金融機関の信託口座の開設にかかっている
  • 信託口座を開設する金融機関の責任は重い

5 隠れて作られている「信託もどき口座」

  • 公正証書で作成しない信託契約書
  • 「信託口座もどき口座」の開設でごまかす(屋号口座の危険性)

6 取組みに積極的な司法書士、慎重な弁護士、税理士

  • いわゆる「立ち位置」が難しい家族信託支援業務(利益相反など)
  • 信託口座開設に関わる多くの司法書士

7 家族信託の専門家を名乗る者に大きな衝撃を与えた平成30年9月の東京地裁判決

8 家族信託の課題を解決する当面の方策

  • 信託実務能力を有する専門家に家族信託支援業務を依頼することの大事さ(ネットワークを持っている専門家)
  • 信託関係人に特異な信託を理解してもらうこと
  • 公証人に頼るのは難しい

9 民事信託支援業務における専門職の責任

  • 専門職が株式会社の名で民事信託支援業務を始める(株式会社を設立して会社名で受任)
  • 信託契約書の事前リーガルチェックの依頼(多くなっている)

第2 家族民事信託の展望

1 家族民事信託の新たな大きな役割

民法899条の2(登記が第三者対抗要件となる)の存在により、家族民事信託は今後広がっていく。

2 専門職による信託専門分業化(出来ることを出来ないことを依頼者に伝える)

3 「危うい信託」の自然淘汰

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というような内容でした。第1 家族民事信託の現状については、たしかにそのような傾向があるかもしれないと思わされました。原因が東京地判平成30年9月の判決なのかは私には分かりません。また、この判決は最高裁ではないからまだ100%決まったわけではない、という方もいらっしゃいます。これは確かに100%ではないですね。私は訴訟になるのが嫌で、最高裁まで争う気力もないので、そこまでは出来ないです。

奔放野放図な家族信託の組成(受託者(残余財産の帰属権利者など)の思いを過度に反映させるもの)、意味が変わりつつある「信託の登記をすれば、あとは安心」(信託契約書に、受益権の内容が記載されていない)、については、受益権の内容が記載されていない、の部分は一定の量であると思いますが、相続人による遺産の囲い込み、というのは私の周りではあまりないので実感がわきませんでした。

隠れて作られている「信託もどき口座」、について屋号口座は県外では聞きます。信託契約書で特定しておけば大丈夫、民事信託専用の口座でなければいけない、など半々な感じを受けています。沖縄県内の地銀は、全て信託専用口座を作成してくれるので、この面では恵まれていると思います。

取組みに積極的な司法書士、慎重な弁護士、税理士、というのはどうなのでしょう。県内と、私が知る限りの県外では消極的、慎重な士業を見つけるのが難しい

というのが体感です。

特に不動産会社と提携のある士業と一部の金融機関が過度に積極的という印象を現時点で持っています。

専門職が株式会社の名で民事信託支援業務を始める(株式会社を設立して会社名で受任)、は初めて聞きましたが、ここまで露骨ではなくても近いようなことは確かにあります。一般社団法人を設立して受任する、法人の中には入っていないけれど、その法人の家族信託に関してはセミナー、コンサルティング、実務を行い実質的に法人の業務を全て行っている(または名前をちらつかせる)。違法なのかはグレーだと考えますが、責任は関わった分取ることになるのだと思います。

第2 家族民事信託の展望、については遠藤弁護士の展望の通りになってくれたら良いなぁと思います。

他に個人的に思うことは、地方の公証人には理解のある方がいて、公証人会連合会で決められているからといって断るのではなく、理詰めで話せば分かってくれる方がいます。ただ、今は少し待っていて、と言われています。

また一部の金融機関に関して、不可解な理由で信託口口座の開設を認めないといわれることがあります。それが公正証書作成の前日だったりするので、このようなことが無くなって欲しいと思います。


[1] 日本司法書士会連合会2020.7№581、P16~