国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の適用に関するQ&A

 


租税特別措置法の適用を受けるためには、定款の変更と役員の選任を適切に行ってください。すぐに適用取消しなどにはなりません。


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事 務 連 絡 平成 29 年 1 月 24 日
都道府県 各 指定都市 社会福祉法人担当課(室) 御中 中 核 市
厚生労働省社会・援護局福祉基盤課


社会福祉法人制度改革に伴う租税特別措置法第40 条の適用に関する Q&A について


今般、社会福祉法人制度改革に伴う租税特別措置法第 40 条の適用に関する Q&A につい て、別添のとおりまとめましたので、お示しいたします。 なお、改めて、租税特別措置法第 40 条の適用に関する事項は各法人の判断であり、所轄庁が一律に指導するものではないことに留意いただくようお願いいたします。また、都道府県におかれましては、貴管内の市(指定都市及び中核市を除き、特別区 を含む。)に対して周知いただきますようお願いいたします。 本事務連絡については、国税庁と協議済みであることを申し添えます。

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社会福祉法人制度改革に伴う租税特別措置法第 40 条の適用に関する Q&A

【社会福祉法人からの問合せへの対応】
問1 過去に租税特別措置法第 40 条の適用を受けていた法人が、失念等により、租税特別措置法第 40 条の適用を前提としない定款例に沿った内容の定款に改正した場合に、直ちに国税庁長官の非課税承認が取り消されることになるのか。
(答) 直ちに国税庁長官の非課税承認が取り消されることはなく、税務署等からの指摘の際に、租税特別措置法第 40 条の適用要件を満たす定款へ改正すれば取り消されない。


【所轄庁監査の際の対応】
問1 租税特別措置法第 40 条の適用要件を満たす定款に改正したにもかかわらず、監査において、理事等について、親族等特殊関係者(4~6親等以内の親族等)が3分の1を超えて含まれていることが判明した場合には、どのように対応するべきか。

(答) 1.法人においては、社会福祉法等に基づく親族等特殊関係者(3親等以内)の制限については遵守しているが、租税特別措置法第 40 条の適用要件を満たす定款に改正したため、 親族等特殊関係者(6親等以内)の制限に抵触することになった場合には、直ちに文書指摘等を行うことはせず、次回の評議員会で理事を選任し直すよう助言することが適当である。
2.なお、評議員・監事においても、直ちに文書指摘等を行うことはせず、法人における準備期間を考慮して、一定期間の猶予を設けることが適当である。

社会福祉法改正memoその3

最近質問があった事案をまとめてみると,


1.権利義務承継規定について
 役員の権利義務承継に関する社会福祉法第45条の6第1項の規定に関しては,経過措置がなく,平成29年4月1日施行である。

 (役員等に欠員を生じた場合の措置)
第45条の6 この法律又は定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。
2~4 【略


2.代表権について
 社会福祉法人の代表について,改正前社会福祉法においては,理事は,原則として代表権を有する(旧法第38条第1項本文)ものの,定款の定め(同項ただし書)により特定の理事のみが代表権を有するものとされていたのが一般であった。この規律については,施行日以後に選定された理事長が就任するまでの間は,なお従前の例によるものとされた(改正附則第15条)。

附則
第15条 この法律の施行の際現に在任する社会福祉法人の理事の代表権については、施行日以後に選定された理事長が就任するまでの間は、なお従前の例による。

 したがって,例えば,平成29年6月15日に開催された定時評議員会の終結の時に,従前の理事が全員任期満了となり,同定時評議員会で新しい理事(6名以上)が選任されたものの,即時に理事会が開催されず,同月20日に開催された理事会で理事長が選定されたとしたら?

(1)施行日(平成29年4月1日)から定時評議員会の終結の時まで
  なお従前の例による。

(2)定時評議員会の終結の時から理事会で選定された理事長が就任する時まで
  ?????

(3)理事長が選定された理事長が就任した時以降
  理事長が代表する。

 6月15日に開催された定時評議員会の終結後,同月20日に開催された理事会で理事長が選定されて就任するまでの間は,「平成28年改正社会福祉法の施行の際現に在任する社会福祉法人の理事」も存在しなくなっていることから,改正附則第15条の規定の適用もなく,さて?の状態である。

 となると,改正附則第15条の規定は,ちとまずいということか。

 常識的に考えれば,(2)の期間は,社会福祉法人を代表する者が不在ということになる。


3.理事は6名以上
 仮に,平成29年6月15日に開催された定時評議員会で理事を4名しか選任することができなかったとしたら?

 この場合,法第45条の6第1項の規定により,従前の理事は,法定の6名以上の理事が選任されるまでの間,なお理事としての権利義務を有することになる。

 したがって,理事4名の中から理事会において理事長を選定することはできず,当該「理事長に選定された者」から「理事及び理事長の変更」の登記を申請することもできない。

 この場合の社会福祉法人の代表については,従前の「代表権を有する理事」がそのまま当該社会福祉法人を代表することになると考えられる。


印鑑届の取扱いについては,通達では,次のとおり。

「改正法附則第14条の規定により,定時評議員会の終結によって任期満了に伴い退任した理事のうち,代表権を有する者として登記され,かつ登記所に印鑑を提出していた理事が,後任の理事による理事会の決議により,新たに理事長に選定された場合(提出済みの印鑑を継続して使用する場合)には,印鑑届書の提出を要しない。」(23頁)


 日司連定時総会の際の他会の会長さんとの雑談で聞いた話によると,上記の場合でも「資格が変わるから」という理由で,印鑑届の提出が必要という取扱いをしている地方法務局があるらしい。

 通達をきちんと理解して欲しいですね


そろそろ登記申請が出始めているであろう社会福祉法人に係る法改正による理事長の変更の登記であるが,同じ方が引き続き在任する場合であっても,「理事A退任」&「理事長A就任」である。

cf. 平成29年5月11日付け「社会福祉法人に係る法改正による理事長の変更の登記」

 
 とすると,「登記の事由」は,「理事の変更,理事長の変更」ということになる。

 定款の添付は,原則として不要であるが,理事会議事録の記名押印者を「理事長及び監事」に限定している場合には,その旨の定款の定め(社会福祉法第45条の14第6項)を証するために,定款を添付する必要がある。

ストックフューチャー 大垣尚司先生

ストックオプションは、日本の場合、こういう批判を受ける以前の問題として、そもそも経営者に適用すべきなのかよくわからない退職金税制の恩典を活用した1円ストックオプションというかたちでガラパゴス化されてしまった。

その限りでは、すでにリストリクテッドストックと大して変わらない実態になっているので、階上屋を重ねて米国流を猿まねするにあたっては、米国で流行だからという役人・学者的な発想の前に、どういう場合に用いるとどのようなメリットがあるのかを整理しておくべきではないか。


そもそも昔は、従業員から晴れて役員になるときは個人としては相当な金銭的負担が必要な自社株の取得が事実上強制されている会社が多かったように思う(少なくとも役員なのに相応の株数を保有していないと居づらい雰囲気が強かった)。この場合、新任役員はなけなしの蓄えか、従業員としての退職金をつぎ込むか、会社や提携銀行から借り入れをして株を買う必要があった。


この場合、株価が下がればモロにマイナスの負担になるという意味ではリストリクテッドストックの趣旨を正確に体現していたともいえる。その上、ボーナスのほうは自分ではコントロールできない株価ではなく、自分の努力で改善できる業績に対応させて金銭や退職金代替の1円ストックで支払えば、アメリカのように報酬として譲渡制限株式を付与するより理想的な報酬制度になるように思える・・・というか、昔はそういう感じだったのではないか。温故知新という感じ(笑)。


そういう意味では、日本型リストリクテッドストックとして、ボーナスは業績連動で金銭と退職金代替の1円ストックオプションで払い、株価連動部分は報酬ではなく、役員としての地位に応じて、別途ストックフューチャー(行使時期を任期に合わせた差金決済型の自社株先物契約)を買わされるという仕組みはどうか。決議は将来の第三者引受けの予約と自社株式の購入の組合せだから、リストリクテッドストックに準ずることになるだろう。
まあ、単に思いつきだが、2018年7月5日号の商事法務の関連記事などを読んでいると(株式の無償発行についての見解などはちょっと首をかしげる内容にもなっている)米国の猿まねをものすごく専門家っぽく細かく検討するのが学者や役人の仕事みたいな発想から抜け出られないかなと思ったりする。
役員報酬

1円ストックオプション・
リスクテッドストック 金銭+1円ストックオプション+ストックフューチャー
法律構成 特約付き新株予約権
役員報酬
特約付き新株予約権
自社株先物契約
役員就任時の負担 1円 1円+(会社の株価×任期年数)円
役員就任中の報酬 賞与は業績に応じた
金銭
+1円ストックオプション

 

医療法人の敷地内に理事長の家を建てる。債務者理事長、担保提供医療法人として住宅ローンを組むことが出来るか。

1、社員総会決議
2、理事会決議(理事長の議決権はない)
以上の決議を経て、議事録を作成する。

厚生労働省HP(2018年5月21日閲覧)
社団医療法人定款例(最終改正平成30年3月30日)

第 19 条 次の事項は、社員総会の議決を経なければならない。
(1) 定款の変更
(2) 基本財産の設定及び処分(担保提供を含む。)
(3) 毎事業年度の事業計画の決定又は変更
・退社について社員総会の承認の議決を要することとしても差し支えない。
・定時社員総会は、収支予算の決定と決算の決定のため年2回以上開催することが望ましい。
・5分の1を下回る割合を定めることもできる。
・招集の通知は、定款で定めた方法 により行う。書面のほか電子的方法によることも可。
(4) 収支予算及び決算の決定又は変更 (5) 重要な資産の処分 (6) 借入金額の最高限度の決定(7) 社員の入社及び除名 (8) 本社団の解散 (9) 他の医療法人との合併若しくは分割に係る 契約の締結又は分割計画の決定
2 その他重要な事項についても、社員総会の議決を経ることができる。

第 32 条 理事は、次に掲げる取引をしようとする 場合には、理事会において、その取引について重 要な事実を開示し、その承認を受けなければなら ない。 (1)自己又は第三者のためにする本社団の事業の 部類に属する取引 (2)自己又は第三者のためにする本社団との取引 (3)本社団がその理事の債務を保証することその 他その理事以外の者との間における本社団と その理事との利益が相反する取引
2 前項の取引をした理事は、その取引後、遅滞な く、その取引についての重要な事実を理事会に報告しなければならない。

第 38 条 理事会の決議は、法令又はこの定款に別 段の定めがある場合を除き、議決事項について特 別の利害関係を有する理事を除く理事の過半数 が出席し、その過半数をもって行う。

法制審議会信託法部会 第39回会議 議事録


法制審議会信託法部会 第39回会議 議事録 第1 日 時  平成29年3月21日(火)   自 午後1時30分                         至 午後5時37分 第2 場 所  法務省地下1階大会議室 第3 議 題 公益信託法の見直しに関する論点の補充的な検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第39回会議を開会いたします。本日は御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は,小川委員,平川委員が御欠席です。   では,本日の会議資料の確認などを事務当局からお願いします。 ○中辻幹事 お手元の資料について御確認いただければと存じます。前回,部会資料38「公益信託法の見直しに関する論点の補充的な検討(1)」を配布しております。また,今回新たに配布する資料として,部会資料39「公益信託法の見直しに関する論点の補充的な検討(2)」を事前に送付いたしました。さらに,当日配布資料として,今回御欠席の平川委員から「公益信託法の見直しに関する論点の補充的な検討(2)に対する意見書」を頂いております。   以上の資料について,もしお手元にない方がおられましたらお申し付けください。よろしいでしょうか。   それから,前回の部会で道垣内委員から御質問を頂いた,税法の規定に挙げられている「合同運用信託」はどのような方針で運用がされてもよいものか,という点について私どもの方で調査しましたので御報告いたします。合同運用信託は,法人税法第2条第26号において,「信託会社が引き受けた金銭信託で,共同しない多数の委託者の信託財産を合同で運用するもの」と定義されています。前回の部会で沖野幹事が御指摘されたような元本補填特約のある合同運用信託は,金銭信託の一類型である合同運用指定金銭信託のことを指しておられると思いますが,合同運用信託指定金銭信託は,貯蓄性のある商品として扱われていることから,その信託財産の運用においても安定性が求められ,実務的には信託契約の中で預金や公社債等を運用対象として指定しているようです。そのようなことから,部会資料38の第3の3の甲案で掲げられている信託財産の運用対象としては,現在,合同運用指定金銭信託の運用対象として実務上指定されている預金や公社債等が想定されるということになります。   また,平川委員の意見書の概要を御紹介しておきますと,部会資料39で提案している事項について,項目順に平川委員の御意見ないし事務局提案とは別の御提案が記載されたものとなっています。特に平川委員が第一読会でもおっしゃっておられた,受託者への助言及び監督の機能を果たす運営委員会の設置を法律上義務付けなければならないという立場から受託者の解任等についても運営委員会を関与させるべきであるという御提案をされておりますので,この平川委員の意見書について本日御出席の皆様から御意見ないしコメントがございましたら,当該論点の箇所で触れていただければと存じます。 ○中田部会長 本日は,前回積み残しになりました部会資料38の「第4 公益信託の認定基準」の残りの部分及び「第5 公益信託の認定主体」を御審議いただきました後,部会資料39について御審議いただく予定です。具体的には,途中の休憩の前までに部会資料39の「第4 運営委員会等」までを御審議いただきまして,そこで適宜休憩を入れることを予定しております。その後,第5から第8まで御審議いただきたいと思います。   それでは,本日の審議に入ります。まず,部会資料38の第4の「5 公益信託の受託者の報酬」についてです。この点に関する事務当局の説明は,前回既にされておりますので,直接御意見を頂戴できればと思います。御自由にお願いいたします。 ○新井委員 この提案に賛成します。賛成するということを申し上げた上で,私の意見を申し上げさせていただきたいと思います。それは,この規定ぶりについてです。現行の公益信託に関する規定は,税法関係を別とすると,公益信託法本則,その附則,政令,内閣府令,引受許可審査基準等様々なレベルがあります。資料38の23ページ以下の公益信託の認定基準については,前回の中辻幹事の御説明ですと全て公益信託法本則に規定するというお考えでしたけれども,現行のように引受許可審査基準のレベルにとどめるという考え方もあるように思われます。あるいは一般法人法と公益法人認定法に倣って,公益信託法と公益信託認定法というような区別があってもいいかもしれません。また,前回の部会の最後に検討した,公益信託の受託者の資格,資料38の17ページ以下についても目的信託の受託者については信託法の附則に規定されていることを参考にして,公益信託法本則ではなく,附則に定めてはどうかと考えております。   前回の部会の最後の私の発言がやや不明瞭であったために,御迷惑をお掛けしたことをお詫びして,私の考えていることを改めて発言させていただきました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○吉谷委員 まず,提案については賛成でございます。その上で,このような理解で賛成しているということで発言させていただきます。   まず,前回の資料に当該信託事務の内容,当該信託の経理の状況等というような記載がありましたが,今回はそれが記載されていないということなのですが,このような要素を考慮して不当に高額にならないということが判断されるのだということについては,引き続き同趣旨であると理解をしております。   その上でさらに,前回一読で申し上げたことの繰り返しになってしまいますけれども,長期の信託があるために信託期間中に報酬水準の変更等も可能であるような仕組みを採るべきだろうと思います。それが今後議論される信託の変更の問題とも関わってくると思います。信託行為に算定方法等を定めるということでございますので,それを変更する場合にどのような手続が必要なのかというところに関わってくると理解しておりますが,前回,信託行為の内容も踏まえて公益認定の審査というのがされるべきであるということを発言しておりますので,それを踏まえますと,信託報酬の変更についても,やはりそれを踏まえた行政庁の認定等が必要になるということかと一応理解しております。   また,これも前回発言している繰り返しでありますけれども,信託財産に対する信託報酬の割合が著しく高いような場合等については,経理の状況等を勘案して認められないということでもあるのだと理解をしております。 ○中田部会長 ほかにございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,この案自体については賛成であるという御意見を頂戴いたしました。その上で規定の仕方であるとかあるいはその内容の細目についてそれぞれ御意見を頂戴いたしました。   続きまして,「第5 公益信託の認定主体」について御審議をお願いします。まず事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 それでは,御説明いたします。「第5 公益信託の認定主体」について御説明いたします。   まず,第5の「1 有識者委員会の意見に基づく行政庁による認定」について御説明いたします。本文では,公益信託の認定は,民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいて,特定の行政庁(課税庁を除く)が行うものとすることでどうかとの提案をしております。   部会資料34の提案の中では,公益法人認定法と同様に,有識者委員会の意見に基づき特定の行政庁が公益認定を行うとする甲2案に賛成する意見が多数であったことから,このような提案をしております。第一読会では,行政庁が民間団体に委託するような形を検討すべきである旨の御意見もありましたが,公益信託の認定を適切に行う能力を有する民間団体を見出すのは容易でないですし,認定主体を複数設けることで,かえって認定の平準化の支障になる可能性もあり得ることから,現時点においてそのような御意見を実現することは困難ではないかと考えております。   次に,「2 認定行政庁の区分」について御説明いたします。本文では,認定行政庁は,公益信託事務が行われる範囲が1の都道府県の区域内に限られるものは都道府県知事とし,公益信託事務が行われる範囲が2以上の都道府県の区域内であるものについては,国とすることでどうかとの提案をしています。   平成20年12月1日当時,2万4,317の法人が存在していた旧公益法人と比較して,平成28年3月末現在で479件と少数である公益信託では,国において一元的に認定を行うという選択肢が考えられないわけではありません。しかし,公益信託についても,地方の実情に通じた知見により公益性が判断されることが望ましいですし,地方分権の要請からも,あえて国が一括して公益信託の認定を行う強い必要性はないものと考えられます。   また,公益法人制度と同様に,都道府県の教育委員会を公益信託の認定機関とすることは,廃止すべきであると考えられることから,このような提案をしています。 ○中田部会長 ただ今説明のありました部分について御審議いただきます。1と2は関連いたしますので,一括して取り扱いたいと思います。御自由に御発言をお願いいたします。 ○吉谷委員 1,2とも提案に賛成でございます。特に付け足すところはございませんけれども,合理的な方法であると考えます。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○小幡委員 公益認定をやっている立場からすると,民間の合議制第三者機関を通す方がよいと思いますし,委員の個性で揺れるということは実際上それほどないので,そのような心配はないと思います。そうすると,あとは受け皿的に国の機関の方がどの程度大丈夫かという辺りですが,それほどの数ではないと思うので可能なのかとは思います。   1点,都道府県との関係ですが,公益信託事務が行われる範囲が2以上の都道府県の区域内かその都道府県にとどまるかという区分けになっています。今の現状が余り分からないのですが,一つの都道府県内に限るという公益信託は結構ございますかね。現状の公益信託の場合どんな感じか,お伺いしたいのですが。 ○中田部会長 もし資料等ございましたらお分かりになる範囲で。では,吉谷委員から。 ○吉谷委員 すみません,今,資料を持ってきておりませんでしたので,大ざっぱな話をしますと,都道府県の方はかなり多いと思います。何々県の範囲内で助成をする。今助成型しか存在しておりませんので,助成の範囲を地方公共団体の中に限って行うという形のものが非常に多数存在しているということです。非常に多く利用されています。 ○小幡委員 そうすると都道府県の方も準備をしなければいけないということになると思いますが。公益認定法のときに税法上の優遇があるのに都道府県ごとにばらついては困るのではないかという,そういう危惧が最初は多少あったように思われますが,もう何年もたちますが,それほど問題なく推移しているので,それは都道府県ごとにそれぞれやっていることに,それほどかけ離れるような差があるということではないので,その点は問題ないと思っています。結構都道府県管轄になるものがあるということですね。了解しました。 ○中田部会長 ありがとうございました。公益法人の認定に長く携わってこられた実感からの御意見を頂戴したと思います。   ほかに。 ○林幹事 5の1の認定主体については,弁護士会の議論では,今回の補充的な検討1の時点においては,御提案に賛成でございました。   ただし,部会資料38ではこれまで任意的取消事由という言葉も出てきていて,後々公益認定の取消しや他の論点でも,この民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいてという形を取っていかれるのかと思っています。   それから,5の2の行政庁の区分に関しましては,基本的には賛成ですが,先ほど都道府県レベルのものが多いということでしたが,都道府県で明確に区別できるか,分かりにくいのもあるのではないのかとも考えられます。また,外国などを想定している場合どうなのか,恐らく国にはなるのだろうと思いますが,そういう問題意識もありました。   また,基本的には都道府県なのだけれども,国に公益認定してもらいたいというものあってもいいのではないかという指摘もありました。基本的にはこの御提案には賛成というところです。 ○山田委員 二つ申し上げます。一つは,第5の1に関わることで,この御提案賛成でありますが,民間の有識者から構成される委員会という表現が,この(補足説明)の最後まで書かれていると思うのですけれども,差し障りがあるなら強く申し上げませんが,現に存在する公益認定等委員会というものを私はイメージして,そこに委ねるのがいいと思いますので,なぜそこをぼやかしているのかなと思いました。お答えいただかなくても結構です。感想を申し上げます。   それから,もう一つは,2の方で既に小幡委員とそれから吉谷委員が御発言されたことに関わるのですが,将来,公益信託件数が多くなった場合には,この公益信託事務が行われる範囲が1の都道府県内の区域内に限られるものは都道府県知事とするという,この考え方は私良いと思うのですね。地方分権とかそういう考え方,大変私も結構だと思います。ただ,必ずしもそうならない,あるいはそうならない段階をどう考えるかなのですが,東京都などはこういうふうにしてもスタートのときからそれなりの件数がありますから,何度も経験して判断の進め方とか水準とかがこなれていくと思うのです。しかし,全国に幾つあるのでしょうか,47か48ある都道府県の小さい県などでは,公益認定等委員会は各県にあってそれぞれ活動されているものと思いますが,公益法人の数に比べて公益信託の数はやはり絶対的に少ないと。そうすると,ゼロならばゼロでもいいのですが,非常に少ない数しか扱わない公益認定等委員会,ここはすみません,先ほどの一つ目の発言を前提にしていますが,ですと,やはりコストが高いのではないかなという気がするのです。委託者側が東京まで行かなければならないコストと,県庁所在地で手続が全部済むコストとを比べると都道府県庁所在地で全部済むのがよろしいと思うのですが,受け付けた方がどう処理していいか分からないというような状況に置かれないかなという心配があります。それは,それを担っている人たちが公務員と有識者の人たちで,その人たちは御気の毒ですが頑張っていただきたいのですけれども,それで実際上申請の受理,申請が躊躇され,なぜかというと,申請の受理が実質的にハードルが高まってしまうと,それぐらいならば東京まで行って,あるいは東京にいる弁護士の方に頼んで申請をするというようなことの方がかえってよいのかなという感じがします。   事務当局にお願いなのですが,もしできるならば,全国にある都道府県単位の公益認定等委員会でやる気があるかと聞いたらやる気がないという答えが出てくるかもしれませんが,公益信託についてどういうふうにできそうかというのを,大規模な委員会はいいのですが,件数の多い委員会はいいのですが,件数の少ないところについて少し調査をされてからこの2の公益信託事務が行われる範囲が1の都道府県知事とする,これを進めるのが安全かなという気がいたします。   長くなりましたが,以上です。 ○中田部会長 調査というのはなかなか難しいかもしれませんけれども,山田委員のお考えとしては,仮に件数の少ないような都道府県があったとして,具体的に何かこうしたらいいというようなお考えをお持ちでしょうか。 ○山田委員 要するに有識者委員会相互で情報交換ができると件数の少ない有識者会議,委員会ですか,は判断をしやすくなると思うのですが。しかし,それぐらいならば,もう国に申請するという,ちょっと建前とは反するのですけれども,現実的なことを考えるとそちらの方が使いたい人にとっても利益かもしれないなと思います。 ○中田部会長 分かりました。どうもありがとうございました。 ○深山委員 提案について基本的には1も2も賛成をしておりますが,今日のこの場の議論も聞いていて,2の認定行政庁の区分のところは,実務的に難しい問題が生じるように思いました。ゴシック体で書かれているところでは,公益信託事務が行われる範囲が特定の都道府県かどうかということで都道府県にするか国にするかを区別しているのですが,(補足説明)や現行の仕組みを見ると,公益信託の受益の範囲ということで説明をされております。今は助成型に事実上限っているということもあって,余りそれで問題は生じていないのかなと推測はするのですが,今後いろいろな事業型等々の公益信託が現れる可能性を考えますと,その範囲はどういうメルクマールで考えることになるのか。例えば,よくこの場で例に出される美術館をどこかの都道府県に設置をして,それを公益信託に供したときに,その美術館にやって来る人は,別にその都道府県の人に限られないで全国から来るでしょうし,そのことを妨げる趣旨もないでしょうから,そういう意味では受益の範囲は全国に及ぶ。しかし,事務は特定のところでやっているというふうに考えると,何の範囲をもって一つの都道府県なのかそうではないのかを決めるのかとか,なかなか難しくなって,申請する側でもここだと思ったらそうではないということになってもいけないなと思います。   そういうことも含めて考えると,今の山田委員の意見にも関係するのですけれども,国は,常に受け付けられるというか判断ができるというような形に,競合管轄という形にしておくかとか,その範囲が必ずしも不明確と言いますか,決しがたいものについては,少なくとも国は常に受け付けられるとか,何か少し工夫をしないと難しいような気がいたしました。 ○能見委員 今のことに関連いたしますけれども,これは公益法人においても恐らく同じ問題があるのだと思います。公益法人においても,その活動範囲というのは,余り明確ではないことがありますが,ある県を中心に活動していればその県に公益認定の申請をするわけですが,受け付けた県において,これはもっと広い範囲で活動する公益法人だと判断されれば,どういう手続になるのか承知していませんが,国の方に回すということになるのだろうと思います。常にそういう道は開かれているので,公益信託の場合も同じような柔軟な対応をすればいいのかなと思います。   県と国と両方に競合して管轄があるという考え方もあり得るかもしれませんが,申請者が国の方が便利そうだとかという理由でみんな県を敬遠して国の方に行ってしまうなどということになると,これは都道府県の立場からするとやはり適当ではないと思います。私は公益法人の場合と同じように考えればいいと思いました。   取りあえずその点だけ意見を申し上げます。 ○小幡委員 公益法人の方もその事業を少しでも広げると,1の例えば東京都だけにとどまらなくなって,国に行くことになるという,割とグレーなところがありまして,もう少し広がる可能性があるのであれば国に申請した方がいいのではないかという扱いをおそらくしているのだと思います。公益法人の場合は法人なので,一応事務所がどこにあるかとか,そこがまず分かりやすい切り口になるのですが,公益信託の場合,受益の範囲という話になってくると,限定しにくいように思います。先ほどの話,私は予想外だったのですが,むしろほとんどが国ではないかなと思ってお聞きしたら都道府県も多いというお話をお聞きして意外に思ったのです。今は,県を多少またいでも受益の範囲が広がる可能性は多いと思うのです。公益法人の場合は,どこに事務所があるか,東京都だけにあれば東京都,ということで非常に分かりやすく,もちろん公益目的事業もありますが,事務所というのがあるので,限定されやすいのに対して,信託の場合は,そういう意味では余り都道府県にならないのかなという印象が実はあるのです。その点は,公益法人と多少違うと思うので,都道府県か国かというところのメルクマールのところをどのように作るかということを,技術的な問題ですが,当事者にとって一番利益となるような形で書き込むということを考えた方がよろしいのかなと思っています。 ○林幹事 先ほどの発言に対する追加をさせてください。山田委員がおっしゃったところを受けてではありますが,地域で件数が少なかったりするような場合は,国もそうなのですけれども,感覚的に裁判の管轄などと同じような議論をしているようにも思えて,地域的には高裁所在地のどこかに出せるというか,そういう仕組みになればなおいいと思います。ただ,都道府県と国という組織で考える以外に方法はないので,国の組織が地域にそれなりに出ていれば国でも対応できるのかもしません。そういうアイデアもあってもいいのではないのかと思います。 ○明渡関係官 公益法人の実情を申し上げますと,最初,都道府県で認定されたものが国の方に移管されるというようなことはしばしばあります。その一方で,国で認定したものについて,事業を縮小すると,一つの都道府県の中で納まるようになるということで各都道府県の方に移すというようなこともございます。   1点,問題になっていた話といたしましては,国と都道府県の両方に申請するというようなことがございました。これは,今の仕組みからすると,国,内閣総理大臣又は都道府県知事に対し申請を行うという形になっていますので,両方の申請というのはあり得ないだろうということで不認定にしたというのが最近の事例としてございました。そういった意味からすると,重複して申請を行えるというふうな形は採るべきではないのではないかというように思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかはよろしいでしょうか。   1については賛成という御意見を頂きました。2についても賛成であるということを前提とした上で,その実施体制が大丈夫かということと,それから運用に当たってどのような基準を設けるべきかについて御指摘を頂きました。公益法人の例も参考にしながら問題点を更に詰めておくということが必要になっているのだろうと思います。基本的には第5については,これでよかろうという御意見だったと承りました。   よろしければ次に進みます。今度は部会資料39です。「第1 公益信託の受託者」と「第2 公益信託の信託管理人」について御審議を頂きます。事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 それでは,部会資料39の御説明をさせていただきます。   まず「第1 公益信託の受託者」について御説明いたします。本文では,公益信託の受託者の権限,義務及び責任は,目的信託の受託者の権限,義務及び責任と同一とするものとすることでどうかとの提案をしています。   第一読会でも同様の提案をしておりましたが,それに対し特段の異論は示されなかったことから,その提案を維持しているものです。なお,第一読会では公益信託の認定基準のうち,関係者に対する特別の利益供与禁止の認定基準を設けることの要否に関連して,公益信託の受託者の善管注意義務等を任意規定とすることには慎重であるべき旨の指摘がありましたが,平成18年の信託法改正の特色の一つが受託者の義務を適切な要件の下で合理化した点にあることを踏まえ,公益信託についてのみ受託者の善管注意義務を強行規定化することには慎重な検討が必要であると考えられることから,その旨を(補足説明)で記載しています。   次に,「第2 公益信託の信託管理人」について御説明します。まず,「1 公益信託における信託管理人の必置」について御説明します。本文では,公益信託をするときは,信託管理人を指定する定めを設けなければならないものとすることでどうかとの提案をしています。この提案も第一読会の提案と同様であり,特段の異論は示されなかったことから,その提案を維持しているものです。   そして,この提案を具体化する方法としては,公益信託法の中に信託法第258条第4項及び第8項と同様の規定を置き,公益信託の信託行為で信託管理人を指定する定めを設けなければならないとすることを想定しています。   なお,信託管理人を指定する定めを設けていることを公益信託の認定基準とするかも問題となりますが,公益信託の信託管理人の資格について認定基準を設け,その資格の有無を行政庁が判断するのであれば,これとは別に信託行為で信託管理人を指定する定めを設けていることを公益信託の認定基準として置くまでの必要性はないと考えられることから,その旨を(補足説明)で記載しています。   次に,「2 公益信託の信託管理人の権限・義務,報酬」について御説明します。本文では(1)公益信託の信託管理人の権限・義務は,目的信託の信託管理人の権限・義務と同等のものとすることでどうか。  (2)信託行為の定めによって公益信託の信託管理人の権限を制限することは原則としてできないものとすることでどうか。  (3)公益信託の信託管理人の報酬が不当に高額にならない範囲の額又は算定方法が信託行為で定められていることを認定基準とすることでどうか,との提案をしています。   これらの提案も既に第一読会において同様の提案をしていたものであり,特段の異論が示されなかったものを基本的に維持する形で再度提案しているものです。   もっとも,信託行為の定めによる信託管理人の権限の制限の可否に関しては,第一読会では,信託管理人の権限のうち,信託法第145条第2項各号の権限を制限することはできないものとする甲案と,信託管理人の権限を制限することは全てできないものとする乙案を提示しており,甲案を支持する意見はなく,乙案を支持する意見が複数あり,その中には信託管理人の権限の制限は,原則としてできないようにすべきであるが,受託者の辞任・解任,信託の変更・終了等の場面で外部の第三者機関が手続に関与するときは,信託行為で信託管理人の権限の制限を可能とすべきとの意見もあり,そのような選択肢もあり得ると考えられることから,第一読会の乙案の一部を修正した形で(2)の提案をしています。   なお,公益信託の信託管理人に対し,受託者と同様に任務終了時における任務継続義務や損失填補責任を課す規定を設けるか否かについては,信託管理人に過剰な負担を負わせることになり,信託管理人の確保が難しくなることなどから,第一読会で提案した規定を設けるべきでないとの考え方を維持しており,その旨を(補足説明)で記載しています。   次に,「3 公益信託の信託管理人の資格」について御説明します。本文では甲案として信託法第124条の信託管理人の欠格事由に該当しないこと,公益法人認定法第6条第1号と同様の事由に該当しないことに加え,委託者又は受託者及びこれらの者の親族,使用人等の委託者又は受託者と特別の関係を有する者に該当しないことを必要とする。乙案として,甲案の事由に加え,当該公益信託の目的に照らして,これにふさわしい学識,経験及び信用を有することを必要とする,との提案をしています。これらの提案は,第一読会において提案した四つの案のうち支持があった乙2案及び乙3案を改めて甲案及び乙案として提示しているものです。   その上で,公益法人認定法第6条第1号は,公益法人の理事,監事等の属性を定めたものであるところ,公益信託の信託管理人には法人のほか自然人が就任することも可能であり,現在の公益信託の実務では専ら自然人が信託管理人となっていることに照らし,法人と信託の異同に留意して公益信託法の規律を検討する必要があると考えられることから,その旨を(補足説明)で記載しています。 ○中田部会長 ただ今説明のありました部分について御審議いただきます。まず,「第1 公益信託の受託者」について御意見をお願いいたします。 ○吉谷委員 提案には賛成でございます。受託者の義務につきましては,公益信託法においても任意規定のままでよいと考えます。しかしながら,第一読会で議論に出ておりましたと思いますが,委託者と受託者の合意で義務の軽減が無制限に認められていいわけではないと考えております。ですので,公益認定段階で不適切に義務が軽減されていないかということは審査されるべきですし,信託の変更で義務の軽減が容易にできるようにはされるべきではないと考えております。そうすると,現在の認定基準の提案内容で認定機関が信託契約に不適切な内容が含まれていれば修正させたり,認定を拒否したりということができることになっているのかということを確認する必要があろうかと思われます。今の認定基準で読めるのかどうか,あるいはガイドライン的なものがあれば足りるのかどうかということについて検討すべきであろうと思われます。 ○沖野幹事 受託者の義務の軽減の点で,善管注意義務の軽減の点だけは少し気になるものですから申し上げたいと思います。   現行法では,確かに29条2項ただし書によって軽減も可能ということになっております。説明としましては,今回の部会資料あるいは今の口頭での説明でも,平成18年の受託者の義務の合理化という観点からという説明がされたかと思います。この合理化の観点ですとか,必要以上に規制的なルールという点は忠実義務に,特に利益相反の規律などにはよく妥当したと思うのですけれども,果たして善管注意義務にそこまで妥当したのかという疑問があります。善管注意義務の場合は,むしろ信託の多様化の方が一つの観点ではなかったかと思います。と申しますのは,例えば友人を受託者として頼むというときに,自己の財産におけるのと同一の注意でいいからと,またそれが信託目的に照らしてもそれで足りるというようなタイプのものをおよそアプリオリに排除する必要はないだろうというような観点からではなかったかと思います。ですので,そういったものもあることはあるだろうという観点から入れられているもので,本来はやはり善管注意義務だと思うのです。だとしますと,例外的にそういう場合もあり得るという余地はあるという程度のことではなかったかと思われます。   そうしますと,公益信託の場合に同じような事情があるのかということです。実際に信託行為において受託者が何をすべきかということを細かく詳細に書いていくということは必要な場合が多いと思われますけれども,現在においてもその大半は,善管注意義務を軽減する定めではなくて,具体化する定めと考えられていると思います。ですから,軽減はできないとしたとしても具体化する定めを置くことは全く問題ないわけですし,そのようなものとしてはもちろん認められるわけですけれども,果たして軽減まで認める必要はあるのかというのはちょっとここで一度立ち止まって考えてみるべきではないかと思います。   なお,以上は,善管注意義務の29条2項ただし書の軽減型についてのみであって,利益相反などについては,これは現在の31条,32条のような規定でないと適切ではないと考えております。   付随的に申し上げますと,信託法の中にも受益証券発行信託についての212条1項のように,軽減する部分だけは適用しないとしているものがあります。もちろん今回の公益信託とは状況が違っていて,委託についての規律も排除していますから同じとは言えませんけれども,信託法の規定の中に既にそういったものもございますので,公益信託という類型については同じような規律を設けるということが考えられていいのではないかということです。   それから,これはもっと付随的で余り理由としては適切ではないのかもしれませんけれども,信託業法の方ではこのような軽減は認められておらず,それが私法上の効力や効果として何を持つのかというのはまた別の問題かと思われますし,信託法と全くパラレルに考えることはできないわけですけれども,信託業法がいろいろな公益信託における受託者に適用されるべきかどうかといったことも一つの論点になっている中で,例えば信託業法が懸念しているそのような規律の基礎にある考慮は,公益信託については信託法の方で賄われているというようなことがそういった議論の中で意味を持ち得ることもあるのではないかと思われます。それよりも第1の点が一番重要ですけれども。そういった考慮もありまして,29条2項ただし書の軽減する方向についてだけは排除する規律を設けるかどうかを考えてもいいのではないかと思っております。 ○中田部会長 今の点に関連いたしましてでも結構ですし,あるいは他の点でも結構ですが,いかがでしょうか。 ○小野委員 関連はするのですが,ほかの点で発言させていただきます。少し前の部会で公益信託の場合,公益信託と表示するという議論があったかと思います。したがって,具体的にどうとかまで考えは及んでいないのですけれども,この公益信託という表示をすることに伴う効果,権限とか義務というのも考えてよろしいのではないかと思います。   一つ思い当たるのが,前にも発言しましたけれども,信託法には限定責任信託という制度がございますが,そもそも個人が公益信託の受託者となり,かつ公益信託と表示しているときに,それ以上に個人財産まで含めて公益に供することまで取引の相手方に期待させる必要はないのではないかと思います。善管注意義務の議論もそうだと思いますけれども,公益信託と表示することによって状況が変わってくる面があるのではないかと今の議論を聞いていて感じました。 ○新井委員 (補足説明)の3行目,「信託法第260条1項が規定する信託目的の受託者の委託者に対する通知・報告等の義務を負わせることの当否を問い」の部分についての意見を申し上げます。   公益信託を目的信託の一つの類型とする理由は,両者ともに受益者が存在しないということが理由だと言われております。しかしながら,我が国の目的信託は極めて特殊であって,委託者が受託者をコントロールするという側面が非常に強いと思います。そのことが端的に表現されているのが受託者の委託者に対する通知・報告等の義務であると理解しています。他方,公益信託においては財産は公益のために出捐されておりますので,信託設定後は委託者の関与は弱くても構わない,という理解もあると思います。したがって,私は受託者の委託者に対する通知・報告等の義務は必須にすべきではない,という意見を持っております。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。   そうしますと,今,具体的な点といたしまして,善管注意義務を軽減するという方向については更に検討すべきではないかという点と,受託者の委託者に対する通知・報告等の義務を必須のものとすべきではないのではないかという点の御指摘を頂きました。それ以外については基本的にはこれでよかろうということだったかと存じます。どうぞ。 ○樋口委員 沖野幹事の御意見に乗っかってというのか,明らかにしてもらいたいということで質問なのですけれども。今日の2ページ目から3ページ目のところで,考え方として分からなくもない,信託法は一つというので私益信託であれ公益信託であれ,その原則として私的自治の原則にのっとってかつての信託法の時代(強行規定が多かった時代)とは違いますよということを原則とする。つまり,善管注意義務等も任意規定で当事者の変更可能とする。しかし,その後読むと,公益信託の認定の基準のところでうまく運用すれば,これ読み方ですけれどもね,一つの例としては3ページの上のところで,関係者に対する特別の利益供与などということを定めても,認定基準のところで何とかする,だから大丈夫だということになります。これは明らかに利益相反の場合なので。同じように,では善管注意義務についても軽減するということを定めておいた場合に,認定基準のところでどうするのかということをやはり明らかにしてもらいたい気がするのですね。だから,もう一つうまく言えないけれども,素人考えだと,もしそうだとしたら結局同じ話に戻るだけで,ここで緩めておくかこっちで緩めておくか,そこにはどういう違いがあるのかというと,認定基準を定めるのは先ほどの別項の議論であったように,場合によっては都道府県単位で違う基準ということも日本国の中ではあり得るのでしょうか。あるいは基準は同じなのだけれども,やはり運用として都道府県によっては違いがあり得るという話になるのだろうかというような疑問も出てくるのですね。   それで,私はこの会議のこれまでの記録をもちろん覚えてられないのです,残念だけれども。だから,認定の仕方についていろいろ基準がずっと議論されてきましたね,そのときのことを私が振り返るのではなくて,ほかの先生方の方がよく覚えておられるだろうから,先ほど言ったような善管注意義務の軽減とか利益相反の許容みたいな話が認定基準のところでも十分,いやいや,逆にそれは非常に厳しく認定基準のところでチェックするのですよという話になっていたのかどうか。もし仮にそうだったとしたら,ここでの議論の本当の意味というのは何なのだろうかということを問いかけてみたくなったのです。 ○中田部会長 確かに認定基準というのがいろいろなレベルで使われていて分かりにくいということは私もそう思うのですが,2ページの(補足説明)の2の2行目ですが,この文章の基本的なスタンスはそこに書いてありますように,公益法人の認定基準と同様に基本的な事項は法律で定めることを前提としている,というのが一応の出発点だと思います。その上でしかし,基本的なと書いてありますから,更に下位のものもあり得るとは思います。そこで,どのようなことを法律に定めるのか認定基準とするのかと,認定基準の中で法律に書くものと,より下位のものと幾つかがあると思うのですが,一応議論を整理する上で,この文章においてはここに書かれたような意味で使われているということです。   ただ今の樋口委員の御指摘は,もっと実質的なことをおっしゃっているということはよく理解しておりますが,言葉遣いとしては一応ここを出発点とお考えいただければ,単に議論を整理するだけですけれども,この文章としてはそう考えているということだと思います。 ○能見委員 沖野幹事,それから樋口委員の御意見に関係することです。私も,善管注意義務の基準を軽減してもいいということがどんな意味を持つのか,あるいはどんなときに軽減ができるのかということと関連させて考えていました。例えばファンドがそれほど大きくなくて,そのファンドを公益のために使う仕組み,要するに善管注意義務を課すということはそれなりにコストをかけて財産を管理しなくてはいけないことになるので,そういう意味ではこの程度のファンドでそれほど運用の仕方も高度である必要はないというようなときには,善管注意義務の基準を少し下げて,コストを下げるということもあり得る。そういうようなときに善管注意義務を軽減するという場合があるのかもしれないと思っていました。   そうすると,認定基準の問題として,善管注意義務を軽減しているからこれは認定の段階では一律に駄目になるということには必ずしもならなくて,恐らくケースバイケースで判断すればよいことになる。各都道府県でも,異なる判断の仕方があってもよいかもしれない,そんなふうに私としては整理してみました。そういうふうに考えますと,樋口委員の御意見との関連で言うと,信託法本体はそれとしてあり,また公益信託法本体のところもそれとしてあり,これと認定基準の問題というのは必ずしも連動しない。連動しない結果,認定基準のところで独自に厳しい基準が設定されるというわけではなく,認定基準のところではケースバイケースで考えて構わないということになると思います。   ただ,公益信託法の問題として,私も公益信託の規律としては,本当に私益信託の場合のように注意義務の基準を下げてもいいのだろうかと思わないではないわけですが,今私が挙げたような例も考えられるかもしれないので,公益信託の場合に注意義務の程度を下げることが絶対に駄目だとして否定する必要はないのだろうと思いました。 ○沖野幹事 余りこだわるつもり自体はそれほどにはないのですけれども,今,能見委員がおっしゃったような例は,善管注意義務の具体化ではないかと私は考えております。すなわち,コスト倒れになってもいいからその分だけやるべきだというのではなくて,財産の規模ですとか目的に照らして必要な範囲にとどまるというのはそうでしょうから,善管注意義務の内容と言ってよいと思います。ただ軽減が駄目だということになると,これは軽減なのか具体化なのかというそこの判断の難しさというのが出てくるかと思うのですが,それでも正面から軽減も構わないと,信託法なりあるいは認定基準についての特別な法律なりで許容するというか何も書かなければ29条が前提になると思うのですけれども,それがいいのかなというのが気になるところではあります。 ○神作幹事 ただ今議論されている論点について,御参考になるかどうか分かりませんけれども,会社法について少しお話をさせていただきたいと思います。   株式会社は,私的利益を目的とする営利団体でありますけれども,取締役等の善管注意義務は強行法規だと考えられております。もちろん沖野幹事が先ほど指摘されましたように,限定責任信託のように株主について有限責任が適用されることがその根拠であるという説明もあり得ると思いますけれども,株式会社法の場合は特に株主が多数であり,実際には定款で取締役の注意義務等についてその緩和や免除が定められるとすると,本当に真の意味での十分な情報に基づく合理的判断による合意が実現できるのかという点に対する懸念があるのだと思います。それから,エンフォースメントという観点から,善管注意義務は結局事後的に裁判所が司法的に介入するための法的手段でありますから,株主などに比べると受益権を有する受益者も存在せず,エンフォースメントが更に弱い公益信託の受託者の善管注意義務について強行法規と解することは何ら不自然でないように思われますので,会社法のお話で論点をそらしてしまったかもしれませんけれども,御参考までに一言申し上げさせていただきました。 ○中田部会長 ありがとうございました。法律のレベルなのか認定基準なのかという問題と,実質的に言って善管注意義務の具体化ではなくて軽減を封じることの当否ということで,その根拠として,神作幹事からエンフォースメントが弱いという点を御指摘いただいたわけです。沖野幹事の理由というのも,神作幹事がおっしゃったようなことでしょうか,それとも公益信託だからということなのか,もう少し御説明くださいますでしょうか。 ○沖野幹事 私自身は公益信託においては,ということを考えておりました。前提としましては,善管注意義務の軽減は,ごくごく例外的にそのようなタイプのものが考えられる場合について念頭に置きつつ定められているという理解で,公益信託においてはそのようなものは認める必要がないのではないかというのが元々の理由です。 ○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。 ○吉谷委員 本当は先ほど申し上げたことで尽きてはおるのですけれども,御議論を聞いていました感想としまして,まず私の先ほどの発言というのは善管注意義務を緩めたりすることについて良いと言っているわけではもちろんないですし,そして,例えば善管注意義務だけではなくて,利益相反行為の制限などにつきましても,信託法では任意規定とされておりますので,緩めることができてしまうと。極端な話は公益信託でも自己取引,固有勘定と信託勘定との取引をすることによって固有勘定が利益をかなり大きなものを得るということも任意規定ですので,書けばできるのかということが一応まず考えないといけないということになるかと思います。   ただ,利益相反の行為の制限の場合だと,そういう報酬を得ることの脱法なのではないかとかそういう解釈もできてくるのではないかとかいうふうにいろいろ考えて,善管注意義務とはやはり違うのかなとも思ったりするのですけれども,考えだすと本当にキリがなくて,そういう趣旨で先ほど義務の規定として法律レベルで任意規定であるままでよくて,やはり認定段階で判断するしかやりようがないのかなと考えて,先ほどの発言に至ったということでございます。 ○中田部会長 この問題について,様々な角度から御議論いただきまして,かなり論点が深まったと思います。ほかにはよろしいでしょうか。   それでは,受託者についてはこの程度といたしまして,続きまして「第2 公益信託の信託管理人」について御意見を頂戴します。1から3までございますが,一括して御意見を頂きたいと存じます。 ○吉谷委員 まず,公益信託の信託管理人の必置ですけれども,この1の提案には賛成いたします。ただ,(補足説明)で言いますと3番,3から4ページにかけてのところで,信託人が欠ける状態が1年以上継続したときは,当該信託は終了することを想定していると,この部分については反対したいと考えております。   従来の助成型を例にとりますと,信託管理人の役割というのは年に数回,受託者から連絡を受けて活動をするという形でありますので,信託関係人がその死亡に気付かないような場合もあります。ですので,1年間の不在で当然終了とする法制は画一的にすぎてかえって不都合であると。信託管理人の不在は公益認定の任意的取消事由とすることが適当であると考えております。   2番の公益信託の信託管理人の権限・義務,報酬のところですが,これは提案に賛成いたします。   3番の公益信託の信託管理人の資格ですが,乙案に賛成です。用語としてふさわしい学識経験及び信用というものにこだわるわけではありませんし,もっと適切な表現があるのかもしれませんけれども,信託管理人としての役割を全うするために必要な資質,信託管理人としての適正な事務をなし得るための積極要件というのは必要であると。受託者に積極要件が必要とされているのとそれは同じであると思われます。   ただ,前回の議論で若干公益信託の受託者のような学識経験,信用のようなものが必要かどうかということについて少し議論がされていたかと思われますが,受託者と信託管理人では,その適正な事務処理を行うための必要な積極要件というのはおのずと異なると考えております。別に公益信託の公益を増進する事業を実施するのに必要な学識経験,信用というのを求められているわけではないと考えます。   しかしながら,甲案の基準を満たせば誰でも信託管理人になれるというような制度は不適当ではないかと,何らかの積極要件は必要であると考えております。 ○中田部会長 ほかに。 ○林幹事 弁護士会の議論としては,1の信託管理人の必置は賛成です。2の権限・義務,報酬についても,(1),(2),(3)通じて,おおむね賛成意見であったところです。ただ,3の資格については,甲案,乙案両方ありましたが,乙案についてというか,先ほどもおっしゃっていましたが,信託管理人の資質という点について何らかの積極的な要件があった方がいいのではないかという意見も多かったところです。ただ,この乙案の表現がよいのかについては,必ずしもそういうわけではありませんでした。受託者と比較すると,受託者ではない以上,信託事務そのものを遂行するわけではありませんので,監督という観点からの一定の要件を考えるべきではないか,表現としてもそういうところに意識した表現にできないのかと考えます。監督するとすれば,違法なことをしていないかであったり,義務違反がないかであったりだと思いますので,そういう資質が積極的要件になるべきであって,その点を意識した表現ぶりになるべきだと思います。 ○小野委員 今,林幹事が言った点は同意見なので,ちょっと違うポイントと言いますか確認的な質問をさせていただきます。信託管理人制度は既に採用されており,したがって,それと同じ権限・義務内容という考えは普通に了解できるところではあります。ところで先ほど神作幹事より執行のところで受益者がいないという議論がございましたが,今回,恐らく皆さん反対がないということで信託管理人が必置になるということを前提としますと,信託管理人は実質においても法的にも,あたかも受益者と同じ立場に立って公益のために行動すると考えることができるのではないでしょうか。受益者とは異なり,善管注意義務を負っていますから,受託者の善管注意義務を見過ごすことはできないはずと思います。したがって,信託管理人を既存の制度と同一と言い切ることで何か過不足がないのかどうかというところは気になりました。また,裁判上の権限があるという点,法定訴訟担当かと思うのですが,そこにおける本人というのは受益者がいない以上どう考えるのかという論点もあるかと思います。   いずれにしても信託管理人の地位というのは今まで以上に非常に重要になってきているということを認識の上で,個別の具体的な状況を検討して,今の条文で問題ないかどうかというところまで確認する必要があるのではないかと思います。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○林幹事 すみません,先ほど言い忘れたので,1点だけ。先ほども出たのですが,信託管理人について,信託管理人が欠ける状態が1年継続したときには公益信託は終了するということが補足説明に書かれていますが,これについては大阪などでは従前から1年で終了ではなくて,取消事由にすべきだという意見です。この点は決めつけないで,両案あり得るということで,もう少し議論していただけたらと思います。平川委員の意見書も同じような内容だと思います。 ○中田部会長 ほかに。 ○樋口委員 先ほどの続きのような話で恐縮なのですけれども,この信託管理人の義務というのは何なのだろうという話になると,善管注意義務というのが126条に書いてあり,それから2項では受益者のために誠実かつ公平にというのが書いてありますね。これまず質問が一つと,それからコメントというか私が考えていることの概要というかごく簡単な話が二つ目にあるのですけれども。   これはやはり受託者について先ほどの議論がありましたね。だから,法律上は一応任意規定,義務についてもそういう原則にしておくけれども,認定基準のところで結局チェックをするという,これと同じ話が信託管理人についてちょっと私が見落としたのかもしれませんが,書いていないけれども,実は同じ話が信託管理人についてもあるよということでいいのかどうか,まずその確認が一つ。   あとは,ちょっと私のコメントなのですね,今回の法制審議会のあり方について大きなことを言ってみるのだけれども,それだけ私の申し上げることが空虚だということかもしれません。しかしながら,議論の方向の進め方として,こうやって一つ一つの権限・義務,こうやって丁寧にやっていくのはいいのですけれども,何か私みたいな乱暴なというか概括的な考え方をする人間としては,大きく分けて方向性は二つあって,議論するときにですね。実際はこの種の議論で例えば信託管理人を今度は必置にしようというのもガバナンスを強めて何らかのロングドゥーイングというのかな,何か不祥事がないようにしようということを配慮しているには決まっているのですけれども,そのこと自体を直接議論していないのですね。   それで,一方で二つ方向があってね,やはり公益信託については一番初めの認識の問題があって,昭和52年からスタートしました。それ以前は何もありませんでした。そのこと自体が日本に極めて特殊な状況だったわけです。昭和52年以来ずっとやってきましたが,しかし近年はこうやって下降しています。金額的にも下降しています。今度公益信託法改正するのも,それは信託法改正の際に残された宿題でもあったのだけれども,せっかくやるからにはやはり公益信託という器を使って,それは中辻幹事もどこかに書いておられると思いますけれども,そういう公益活動を何とか増やそうというそういう話がある。だから,プロモーションという言葉がいいのかどうか分からないのですけれども,どうすれば公益信託が増えるのだろうか,どういう仕組みを作ったらいいのだろうかということを考える必要がある。   そのときには,私,先ほど言ったこととちょっと自分で自己矛盾のような話なのですけれども,場合によっては受託者や信託管理人に重いリスクを負わせるというだけでは成り手がなくなるかもしれないのですね。だから,リーガルリスクを少なくして,むしろ沖野幹事の言うところの義務の具体化ですかね,明確化が必要です。善管注意義務に反しているかどうかなんて誰が分かるのですか。一番最後に裁判所が言うだけなのですね。そうすると,やはり受託者あるいは信託管理人になる人というのはやはりこれで善管注意義務を果たしているのかというのは本当に分からないので困るはずなのですよ,自分がなったら。そうではなくて,これとこれだけは少なくともしてくださいと具体化する。そうではなくて,逆にこれとこれだけは少なくともしてくださいという明確化をするような話というか,リーガルリスクを明確化,あるいは場合によっては軽減するというのもやってもいいことかもしれないのです,その公益信託活動を増やすためには。   もう一つの方向性は,今まで私の理解が不十分かもしれないのだけれども,公益信託については吉谷委員も賛成してくれると思うけれども,これまで何か不祥事は聞いたことがないのですね,私が知らないだけかもしれないのだけれども。公益法人については一杯あります。別に小幡委員の責任ではないけれどもね。それで,それはアメリカでもそうなのですね,ファウンデーションという形をとっていて,不祥事は一杯あって,その不祥事にはいろいろ類型があるのですね,やはりいろいろな形の類型がある。例えば一つ例を挙げると,例えばここでは余り問題になっていないと思いますけれども,公益信託というのは助成が一番初めにボンとファンドがあって,それをだんだん助成していって少なくなっていくというのが典型的なやり方なのだけれども,別に追加でファンドが入ってくるのは構わないわけですよね。そうすると,先ほど小野委員が言ったように,私どもは公益信託ですという名称ももらっていますからね,だから信用度もある,それでどんどん公益的な寄附をしてくださいといって,実は公益活動に使わないでとんでもないやつが乱用するような事例というのは少なくとも公益法人では,アメリカの話ですけれども,あるのですね,実際に。だから,そういうような話をどうやって防ぐかという話が,この改正法の議論の中でもっとピンポイントで何かあったらいいという気がするのです。   それがこの信託管理人の権限であるとか義務であるとか,受託者の義務であるとかというところとタイアップして,こういう不正には対処できますよねという話で議論されているといいかなと,ないものねだりで申し訳ないのですけれども,それ以上のアイデアがあるわけではないのですけれども,ここで非常に抽象的,概念的に言われていることだけでそういう話に実際結び付くのだろうか。将来公益信託が実際に動き出しますね,新しい,そのときに何か出てきたときに,信託管理人を必置にしておいただけで十分でしたね,という話で済むのかどうかみたいなことをぼんやりと考えているということを,ちょっとコメントというか感想というか,申し上げました。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○能見委員 樋口委員の今の御意見の中で,先ほど問題にした善管注意義務がまた出てきましたので,受託者の場合の善管注意義務の軽減を認めるか否かという点と,信託管理人の場合についてはどう考えるべきかという点を,自分の考えの整理の意味も兼ねて,コメントしたいと思います。   樋口委員が言われたように,これからどんどん公益信託を作っていこうということになると,信託管理人というのは恐らく専門家ではなくて,素人の個人がなるということが多くなるのだろうと思います。それなりの見識とか監督をする能力等についてはちゃんとあるにしても,一般の普通の個人が信託管理人になることが多くなるでしょう。そういうときに,信託管理人については樋口委員が言われたように126条の規定があって,29条と比較をすると,信託管理人の善管注意義務というのは軽減できない,126条は任意規定ではないという考え方でできているのかなと思うわけです。それは受託者の場合にはいろいろな信託の事業と言いますか,ある意味で会社の経営者と同じようないろいろな経営的な判断もしなければいけない。先ほど神作幹事は,善管注意義務は会社の場合は強行規定だとおっしゃいましたけれども,受託者はいろいろ業務執行上の判断を迅速にしなければいけない場合があって,受託者については善管注意義務の軽減が可能かもしれないけれども,信託管理人のように受託者の業務執行を監督するという立場からすると,その監督の注意義務を軽減するというのはやはりおかしいので,信託管理人の場合には善管注意義務というのは軽減できないのだろうという理解をしておりました。ただ,他方で先ほど言いましたように,個人が信託管理人になるというような場合を考えますと,信託管理人についても善管注意義務の軽減を可能にして,信託管理人の成り手をより広く募るということもあり得るかもしれない,ここら辺をどう考えるかというのが問題としては残っている気がいたしました。   それから,これは小野委員が言われたことですけれども,この信託管理人というのは本来受益者の権利等を,受益者がいないので,それに代わって権利行使をするということですが,公益信託の場合には受益者はいませんので,本当にそのような理解でよいのか。もっと何か強力な監督機関として位置付けた方がいいのか。そういう信託管理人の位置付けについての根本問題もあるかもしれません。このような根本論との関連で信託管理人の善管注意義務などをどうするか,その責任をどうするかという問題を考えるべきだと思います。先ほどは,現行の信託法を前提に,信託管理人の善管注意義務に関しては軽減できないという考え方が適当であると言いましたが,信託法と公益信託法の関係を見直すとすると,それを今回議論すべきだというわけではありませんが,いろいろな議論ができそうに思います。 ○中田部会長 1の必置とするということについては御異論がないと承っております。  2の権限・義務,報酬というのについてはより実質的に考えて,とりわけ信託管理人の地位の重要性ということを考えてどうあるべきかということを更に突き詰めて考えるべきではないかと。具体的には,善管注意義務の軽減について受託者がどうであれ,信託管理人については少なくともこれは軽減すべきではない,条文上もそうなっているのだろうということですけれども,実質的にもそうあるべきだということがあったと思います。他方で,しかし,場合によってはその成り手を増やすという観点からの検討も必要ではないかということだったかと存じます。   それで,3については,甲案を支持されるという御意見は今のところ出ていないように思ったのですが,乙案を前提として表現や実質的な内容を検討すべきだという御意見を頂いたと思いますが,甲案を御支持される方はいらっしゃいますでしょうか。   とすれば,乙案を基本としながら,受託者との立場の違いも踏まえて,実質あるいは表現を更に詰めていくということで今日は御意見を頂いたということでよろしいでしょうか。 ○樋口委員 今の点は別に私異論はないですが,ちょっと能見委員の御発言と,それから私がぐずぐずいろいろしゃべったからもう忘れられてしまったのだと思うのですけれども,確認事項で,受託者については先ほどのところでこれは任意規定ですよと,しかし,認定基準のところで何度か判断するのですよということでしたね。この信託管理人のところはそれは書いていないのですけれども,事務局としては同じことなのか,あるいは能見委員が言っているように信託管理人の方は一種強行規定で善管注意義務も当然効いてくるのですねということなのかどうかは確認しておきたいと思いますが,今の議論の中で。 ○中田部会長 大変失礼しました。前提として現行法の条文の作りがまず違うということを踏まえた上でどうあるべきかという御質問かと思います。もし何かございましたら。 ○中辻幹事 先に能見委員から答えていただけましたのであえて私から発言しませんでしたけれども,信託法126条の信託管理人の善管注意義務や誠実公平義務については,受託者の善管注意義務等と比較して条文の書きぶりも違いますし,受託者と信託管理人の役割の違いからしても,別途の解釈をする余地があるのだろうと事務局としては考えておりました。 ○道垣内委員 私も部会長のまとめ自体には何ら異存はないのですけれども,信託管理人の善管注意義務というのは126条1項にあって,今,中辻幹事がお答えになられたように,あるいは能見委員が御指摘になられたように,ただし書で別段の定めが許容するという形になっていないわけですよね。それを今ここで公益信託の信託管理人は善管注意義務というのは強行規定だよねと,ではそう書こうということになって,そう書いてしまいますと,これは126条との不整合と言いますか,同条の解釈に影響を及ぼすことになるのだろうと思うのですね。したがって,信託法126条について,善良な管理者の注意という基準を信託行為によって低下させることはできないと解釈するのが前提であるならば,公益信託に関する規律についてだけ,信託管理人は善良な管理者の注意を負って別段の定めは許されない,と明記することは避けていただきたいと思います。   もう1点,受益者がいないということで特殊なのではないかという話なのですが,それは正に受益者の定めのない信託について既に存在している問題点であり,126条2項というのは受益者のためにとなっているところを,261条で信託目的の達成と読み替えているわけです。しかるに,この点についても,公益信託の場合には受益者はいないのだから特別なことにしようということになりますと,信託法における受益者の定めのない信託の特例の規律構造に影響を及ぼさざるを得ないということになります。公益信託のことだけを考えて,明確化すればよい,という議論は慎むべきであろうと思います。 ○中田部会長 それでは,今の点も当然のことですけれども,考慮しながら詰めていくということになろうかと思います。   一つ,先ほど申し忘れましたけれども,1の信託管理人の必置のところで,信託管理人が欠ける状態で1年経過したときに当然終了ということではなくて,任意的な取消事由にすべきであるという御意見,複数の御意見を頂きましたので,それも更に引き続き検討するということにしたいと思います。   信託管理人についてはよろしいでしょうか。 ○能見委員 信託管理人の権利・義務との関係なのですけれども,前に第一読会でも多少議論ありましたが,信託管理人の善管注意義務の違反があったということで責任が生じるとき,その責任というのは何を根拠というか,どういう性質の責任なのかというのがちょっと私自分でもよく分かっていなくて,それを考えるにあたっては,信託管理人が誰かと契約関係があるのかないのか,あるとすると債務不履行的な責任なのか,あるいはそういうものと違って信託管理人というのは,道垣内委員が先ほど反対されましたけれども,独立の制度になったので,誰かと契約関係があるというよりは公益信託における一つの制度みたいなものだ,そういうところでの善管注意義務違反の責任として生じる損害賠償なので,信託法40条は適用しないということなのか。損害賠償にしてもどんな根拠でそれは認められて,どんな性質の責任で,例えば時効はどうなるのかとか,そういうところがはっきりしていないように思います。私自身はちょっと今明快な答えを持っていないのですけれども,そういうところも詰めたおいた方がいいかなという気がします。 ○中田部会長 ありがとうございました。問題点の御指摘を頂きました。多分それは他の組織法の中でも共通するような問題があるのだろうと思いますけれども,そういうものを踏まえながら更に検討するということになろうかと存じます。 ○道垣内委員 能見委員の方から道垣内委員は反対したけれどもという御発言がありましたので一言申し上げておきますと,例えば公益信託における信託管理人というのは,信託法124条の信託管理人というのとは全く別個の制度であるとするのならば,それはそれで一つの選択だろうと思います。私はカテゴリを同じにしておいて,一方だけにいろいろなことを書かないでくれというふうに言っているだけです。   2番目の責任の法的性質は何かという問題について明確にするというのも,ここで言う信託管理人というのは信託法上の信託管理人とは違うのだとなってこちらにだけ明確化するというのであれば,それは分からないではないのですが,信託法における信託管理人についても,全く同じ問題が存在しているわけです。不法行為であるとしても自分を監督してくれなかったから不法行為だと受託者が言うというのも変な話ですから,誰が言うのだという話にもなってくるわけです。その問題は信託法の方にも存在しているということを考慮した上で,公益信託法において書くのであれば,なぜ公益信託法についてだけ書けるのかということを詰めていただければと思います。 ○中田部会長 大体以上のような辺りでよろしいでしょうか。 ○沖野幹事 3についてなのですけれども,せっかくまとまりかけているようなのに大変恐縮ではあるのですけれども,平川委員の御意見書を見ますと,3ページの下の部分に甲案に賛成するという意見が書かれておりまして,さらに法人が含まれるかどうか検討されたいという問題の提起があります。法人の点は,(補足説明)というか資料の説明ですと7ページの方で,7ページの3の2段落目,「その上で」からのところの2行目に,公益信託の信託管理人としては法人のほか自然人が就任することも可能であり,現在では専ら自然人がということに照らして,規律を検討する必要があるとされております。   それで,何らかの積極要件があった方がいいのではないかというところまで平川委員が反対されているのかどうかというのはちょっと分かりませんけれども,確かに法人のことを考えると,法人の学識というようなことが妥当するのかというのも,日本語の問題かもしれませんが,表現ぶりはその法人のことも考える必要があると思います。監督権能であるということのほか,法人というのをどう考えるかということも含めて考える必要があるかと思いますので,その点だけ付言をしたいと思います。 ○中田部会長 御注意いただきまして,ありがとうございました。大変失礼いたしました。 今の沖野幹事の御指摘は,平川委員の意見としてこれがあるのではないかという御指摘にとどまるのか,沖野幹事もそれに同調されるということでしょうか。 ○沖野幹事 いえ,私自身は特にこれ強い意見を持っているわけではないのですけれども,乙案の方向でもよろしいかなとは思いますが,確かに表現ぶりは監督の点だけではなくて法人のことも考えたときになお工夫する必要があるのではないかというのが私個人の方の意見であります。 ○中田部会長 ありがとうございました。   それでは,平川委員の甲案支持という意見があるということを先ほどのまとめに付け加えて,ただ本日御出席の方からは乙案を支持される御意見が出ていたというように変えさせていただきたいと存じます。   それでは,続きまして,「第3 公益信託の委託者」,「第4 運営委員会等」,「第5 公益信託外部の第三者機関による監督」について御審議いただきたいと思います。事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 それでは,御説明いたします。   まず,「第3 公益信託の委託者」について御説明いたします。本文では,公益信託の委託者は甲案として,信託の利害関係人が有する権限のみを行使できるものとする。乙案として,甲案の権限に加えて,受益者の定めのある信託の委託者が有する権限を行使できるものとする,との提案をしています。   甲案及び乙案の内容及び提案理由は第一読会から変更はありません。第一読会ではこれらの案のほかに,丙案として,公益信託の委託者は,甲案及び乙案の権限に加えて,目的信託の委託者が有する権限を行使できるものとする,との提案をしていましたが,それを支持する意見はありませんでしたので,本部会資料では丙案を提案から除いています。   続いて,「第4 運営委員会等」について御説明します。本文では,公益信託法には運営委員会等に関する規律を設けないものとすることでどうか,との提案をしています。   第一読会では,このほかに,公益信託をするときは,受託者に対する助言的な役割を果たす運営委員会を設けることを信託行為で定めなければならないとする甲案,それから,受託者に対する監督の役割を果たす信託管理人以外の主体を設けることを信託行為で定めなければならないとする乙案を提示していましたが,公益信託法には運営委員会等に関する規律を設けないとする丙案を支持する意見が多数であったことを踏まえ,本部会資料では第一読会の丙案を単独で提示しています。   現在の公益信託の実務では,受託者である信託会社に対する助言的な役割を果たす運営委員会が設置されていますが,今般の公益信託法の見直しにより,公益信託の受託者や信託事務の範囲を拡大することとしているところであり,受託者が自らの識見で公益信託の運営を行うことが可能である場合も想定され,その場合には助言的な役割を果たす運営委員会を必置とするまでの必要性はなく,公平に公益信託事務を処理する仕組みを信託内部で整えることにより対応できるものと言えます。   さらに,受託者に対する監督の役割を果たす信託管理人以外の主体を設けることは,軽量・軽装備という公益信託のメリットを阻害する面があり,受託者の監督機関である信託管理人が適切にその権限を行使し,きちんとその機能が果たされるようにすることがむしろ重要であると考えられることから,その旨を(補足説明)で記載しています。   続いて,「第5 公益信託外部の第三者機関による監督」について御説明します。まず「1 行政庁の権限」について御説明します。なお,部会資料のゴシック1,冒頭に括弧書きで記載しているとおり,ここで言う行政庁とは公益信託の認定・監督を行う行政庁のことを指しています。本文では(1)公益信託法第3条は廃止することでどうか。(2)公益信託法第4条第1項の規律をアからエ記載のとおり改めることでどうか,との提案をしています。   (2)のアからエの内容をそのまま読み上げることはしませんが,これらは公益法人認定法第27条から第29条において行政庁の権限とされているものであり,(2)はそれらと同様の権限を公益信託における行政庁にも持たせるようにすることを提案するものです。   これらの提案は,第一読会における提案をより具体化したものであり,その実質的内容及び理由に特段の変更はありません。その上で,行政庁の具体的な権限の範囲について検討しますと,行政庁が公益目的をプロモートするような形で積極的・後見的に監督権限を行使することは相当ではないと考えられますが,公益信託の受託者による認定基準違反を把握した場合に,監督権限を行使することは当然認められて良いですし,受託者の法令又は法令に基づく行政機関の処分に違反する行為を把握した場合にも監督権限を行使することは認められて良いと考えられることから,その旨を(補足説明)で記載しています。   なお,公益信託法第4条第1項は,主務官庁に財産供託命令の権限を付与していますが,この権限は主務官庁制を前提としたものであり,新たな公益信託では主務官庁制を廃止する方向性であることに加え,公益信託事務の効果を維持・保全するという供託命令の趣旨は,受託者の資格として公益信託事務を適正に処理する能力を要求するなどの方法により達成できることからすると,この規定は廃止するのが相当であると考えられますので,その旨も(補足説明)で記載しています。   次に,「2 裁判所の権限」について御説明します。本文では,裁判所は,公益信託法第8条が裁判所の権限として規定している権限を有するものとすることでどうか,との提案をしています。   この提案も第一読会の提案と同様であり,第一読会で特段の異論は示されなかったことから,その提案を維持しているものです。   次に,「3 検査役の選任」について御説明します。本文では,検査役の選任権限は,甲案として,行政庁が有するものとする,乙案として,裁判所が有するものとする,との提案をしております。   これらの提案は,第一読会におけるものと同様であり,その内容及び提案理由に変更はありません。   なお,会社法第358条をはじめとして,多くの法律で検査役の選任は裁判所の権限とされているところであり,この点も乙案の理由として付加することが考えられることから,その旨を(補足説明)で記載しております。 ○中田部会長 それでは,御説明のありました部分につきまして御審議をお願いいたします。まず,「第3 公益信託の委託者」について御意見をお願いします。 ○山本委員 質問を最初にさせていただきたいのですけれども,甲案と乙案が上がっていて,そのどちらも(注)が付いていて,デフォルトルールであるということになっています。このうちの甲案は,理由があって,信託の利害関係人が有する権限のみを行使するものとするという意見ではないかと思います。それにもかかわらず,これはデフォルトルールだとすると,一番阻止したいと思う人こそが信託行為にこれもできるあれもできるという規定を置くはずでして,趣旨が実現できないような気がするのですけれども。このような考え方が甲案と理解してよろしいのでしょうか。 ○中辻幹事 委託者と受託者が信託を設定するときには,信託行為,信託契約で委託者の権限を定めることになるわけですが,その契約の中でお互いが合意して,利害関係人の権限よりも広くここまでは委託者に権限を持たせるということであれば,それを敢えて法律が妨げる必要はないというのが甲案を提案している趣旨です。 ○山本委員 そうすると,甲案が信託の利害関係人が有する権限のみを行使できるものとする,つまり乙案のようにそれを越えた権限を認めるべきではないという考え方は,何が理由でそうだということになるのでしょうか。 ○中辻幹事 甲案も乙案もデフォルトルールであり,信託契約で何も委託者の権限が定められていなかった場合にどちらのルールが適用されるのかと。デフォルトルールとして委託者の権限を狭くするのが甲案で,デフォルトルールとして委託者の権限を広くするのが乙案というような整理で考えておりました。 ○山本委員 それ以上の意味がないというのが甲案だということですか。ただ,今日は御出席ではありませんが,平川委員などが甲案に賛成するとおっしゃるときはもう少し強い意味ではないかとは思ったのですけれども,そうではないのでしょうか。 ○中辻幹事 公益信託の委託者に余り権限を持たせるべきではないという御意見が度々この部会で出てきたことは承知しております。ですから,甲案を強行法規として,信託行為でも委託者に甲案以上の権限を持たせるべきではないという御意見もあり得ると思います。ただし,今回の部会資料ではそこまで縮こまるというか,法律で限定する必要はないのではなかろうかと考えて提案しているものです。 ○山本委員 おっしゃっていることの意味は理解しましたが,本当にこれが甲案でよいのだろうかとは思いました。私自身は甲案に賛成するというわけではないのですけれども,理解が難しかったもので確認をさせていただきました。 ○中田部会長 基準が狭いか広いかいずれにせよ,どれを基準にするとしても,それが任意規定であれば幾らでも広がり得るではないか,基準の意味がないのではないかという御指摘だったかと思います。その上で,仮に今のような御説明を受けた上で,山本委員としてのお考えの方向のようなものがもしありましたら御披露いただけますでしょうか。 ○山本委員 私自身甲案に賛成であるわけではないと申し上げたとおりです。もしデフォルトルールとして定めるのであれば,必ずしも甲案のような考え方を採る必要はないのではないかと思ったというだけです。 ○中田部会長 というと,むしろ乙案というわけでもないのでしょうか。 ○山本委員 甲案ではないということだけは申し上げます。 ○中田部会長 分かりました。ほかにいかがでしょうか。 ○深山委員 委託者の権限については,やはり公益信託というものにおける委託者の位置付けについて,今中田部会長の御指摘もあったように,いろいろな場面でどの程度の権限を認めるべきなのか,むしろ認めないべきなのかという,大きな価値観というか制度に対する見方の違いがあるのだと思います。元々の第一読会のとき,丙案という委託者に目的信託の委託者と同等の権限を認め,更に強いというか広い権限を与える案もあった中で,今回はそれは支持がないということで落ちておりますが,私自身は前回の甲乙丙で言えば乙か丙かということを迷いつつ乙を採ったというぐらいのところでした。委託者という立場は,この公益信託を作り上げた,あるいは財産を拠出した当事者として,それなりの関心を持って公益信託設立後も一定の関与をしていくことは認められていいだろうと考えます。もちろん強すぎてもいけないので,丙案にはしていないわけですが,乙案程度の,すなわち受益者の定めのある信託という一般的な委託者の権限と同程度の権限を認めるのが妥当だという意味で,従前も支持した乙案を今回も支持したいと考えます。 ○吉谷委員 甲か乙かというと甲案に賛成で,デフォルトとしては甲であろうと。それは委託者は監督機関としての役割をデフォルトで期待するべきではないと考えているからであります。   その上で,甲案なのですが,何でも信託行為に書けばできるというのはこれまたちょっと行き過ぎでありまして,例えば助成をするときには毎回委託者の承認を得るとかそういうふうになってしまいますとほとんど受託者と同じような役割なのかということになりかねませんので,そんなことをしていいのだろうかというふうなことも考えないではないというところでございます。   ですので,過度に強い権限を与えるということは公益性の確保に疑義を生じさせるため,おのずと何らかの限界があり,それは認定なり監督のところで制御されるべきであろうというふうに考えるところでございます。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○林幹事 弁護士会の議論では,甲案と乙案の両方ありました。要するに委託者の関与を減らす方向の考え方もあるので,甲案という意見もあったのですが,他方で,乙案で,この後の論点でも出ますけれども,個々の論点において委託者をどう関与させていくか個別に考えるというような意見もありました。ここで甲案と言ってしまうと,後の論点では委託者の関与を否定という方向に流れてしまうので,それでいいのかというような問題意識と思います。 ○樋口委員 これも,ちょっとつまり違った角度から見ているからこんなことになるのだと思うのですけれども,私の意見がですね。アメリカでも公益信託については本当は困っているわけです,とにかく。私益信託なら受益者が動かなければ動かないというのはそれは受益者の責任で自分のところへ返ってくるような話だからいいのですけれども,正に私益信託だから。公益信託の場合は一般的にはアトニージェネラルが動くと言っているけれども動かないわけですよ,アトニージェネラルそれほどひまではないので。そうすると実際にはどうするかというと,幾つかの判例や何かで傾向として一番これに関心のある人は委託者なのですね,あるいは委託者の関係者。自分たちがこういう形で使ってもらいたいと思っているのに動いてないではないかといって,それでやってくるのですけれども。   そのときにやっていき方があって,私の完全な誤解でないといいのだけれども,日本ではこうやってそういう人にどんな権限,つまり実体法的な権限を認めるかどうかという議論をしているのだけれども,アメリカでは原則はまずスタンディングを認めるかどうか,そういう訴える資格を裁判所に持ってくるときに,委託者からでもいいではないかという先例が出てきて,それで委託者に一定の,だから手続的権限というのですか,申立権限というのが認められて,それで中身について裁判所で判断するような仕組みだと思うのですよね。ところが,日本ではその手続的な話ではなくて,もうとにかく実体法上の権限としてどこまで認めるかという話でやはり議論が推移していくのが,すみませんね,外部者的な感覚で言うと非常にやはり面白いというか,何か日本的な感じがするというようなことを感じました。 ○道垣内委員 デフォルトルールであるという話なのですが,この甲案にせよ乙案にせよ,信託行為により権限を増加させるという場合を考えたときに,それは委託者の権限の増加なのだろうかというのが疑問なのです。吉谷委員が助成をするに当たって委託者の了解を必ず取らなければならないというのはそれはおかしいだろうとおっしゃったのですが,本当におかしいのだろうか。つまり,例えば第三者で当該分野について大変詳しい人がいて,運営委員会や受託者の判断も重要なのだけれども,しかしながら当該第三者に最後のレビューをしてもらうとなって,その人がオーケーと言わなければやはり受給権者に受給をしないという制度設計はおかしくないと思うのですね。しかるに,当該第三者が委託者であったとすると,それは駄目だということになるのだろうか。そうではないのではないかなという気がします。もちろんいろいろなことで,受託者が受託者の権限を縛ったり,あるいは,場合によって実際には委託者が完全にコントロール権限を持って自分の利益のために信託財産を使うことができるようになっていますと,そのことによって公益目的であると認定されないということは十分にあり得ると思います。しかし,第三者に与えることができる権限であるならば,それを委託者に与えることもできるのではないか。それは決して委託者の権限の増加なのではなくて,そういう機関ないしは判断権者みたいなものを作って,それがたまたま委託者であったというだけなのではないかなという気がします。   そこで何が言いたいかというと,権限縮減の場合には確かに減なのですが,増加の場合には,委託者の権限の増加という捉え方が唯一のものではなくて,第三者に与えられ得る権限にはどんなものがあり得るのだろうかといった検討の方向性もあるだろうと思いますので。これはできた後の解釈論の問題かもしれませんけれども,構造の捉え方として一言だけ申し上げておきたいと思います。 ○沖野幹事 すみません,これもちょっとむしろ解釈論なのかもしれないのですけれども。この甲案,乙案そのものについてではなくて,委託者の概念と言いますか,についてなのです。一つは,相続をどう考えるかという話と,それから委託者たる地位の移転について,この記述の下でどうするのかということでして,特に最後,道垣内委員がおっしゃった点はあるいはこれとも関わる面があるのか思われまして,たまたま委託者である人を適任の人として指定するということは,たまたま委託者であるAさんを指定しているだけなので,相続人が出てきても相続されないということになるのか,それとも委託者と指定している以上その含意は相続人も含むということなのかといったところが出てくるかと思われます。委託者ことAという指定をするのであれば,基本的にはその人限りですし,地位の移転ということもないと思うのですけれども,ここで一般的に委託者というときには,しかも公益信託はかなり長く続くものもある,美術館の運営というような話をしますと,もう共同相続人だけで何十人もいるというようなこともあると,利害関係人が有する権限のみであれば余り問題はないのかもしれませんけれども,もっと付加していったときに,この委託者の範囲が当初委託者からどこまで広がっていいのか,地位の移転などができていいのかというのが気になっております。   関心を持つ人という点では相続人も関心を持つとは思うのですけれども,すみません,当初委託者ぐらいなのかなという感じもするものですから。論点をいたずらに拡大するのもどうかということがありますし,それはその後考えるということならそれはそれでいいのですけれども,委託者像も想定して権限を考えていく必要があるのではないかという気がしております。 ○深山委員 今の沖野幹事の御指摘は非常に重要な御指摘だと思います。弁護士会で議論したときも,委託者の地位の相続性については少し話が出ましたけれども,多くの者の理解としては,委託者本人の一身専属的に考えて,相続ということは基本的には考えないということで余り異論はなかったです。一般論としては,委託者の権利義務を承継する相続人に委託者と同じ地位が引き継がれることで問題が直ちに生じないのかもしれませんけれども,信託の場面というのは,これは公益信託に限らない信託全般の問題でしょうけれども,公益信託に拠出する財産というのは拠出されなければ相続財産となったものだったという意味では,実質的には正に利害が対立するべき立場に相続人が立つということがむしろ一般的であるような気がします。そういう実質を考えても,ここで議論している委託者というのは委託者本人の一身専属的な,一代限りのものと理解をしないとまずいのではないかなという気がいたします。 ○中田部会長 委託者については,今ここでは甲案,乙案という形で出ているわけですが,より本質的なこととして,委託者をどのように位置付けるのか,その権限なり資格なり,あるいはその像をどのようなものをとして想定すべきなのかという非常に大きな問題があることを複数の委員,幹事から御指摘いただきました。   その上で,この甲案,乙案をもう一遍見てみますと,これは具体的にこれと提示しているわけですが,むしろこの部会で合意が調達できそうなのがどの辺りなのかということを,今探っているのかなという気がしてきました。ですから,冒頭山本委員が甲案ではないのだとだけおっしゃったのもひょっとしたらそういうことなのかなと。どの辺りが合意ができるレベルというか内容なのかというのが実質的な問題であるということが出てきたのではないかと伺いました。   ということで,今の段階では,ここだとはまだ落ち着いていないわけですけれども,問題の全体像が把握できてきたのではないかと感じております。   委託者についてほかになければ,次の運営委員会に進みたいと思いますが。 ○小野委員 今の議論との関連ですが,信託法の議論で指図権の議論があります。指図権者そのものが委託者なのか受益者なのか,第三者なのか,ここですと,委託者のほか運営委員又は委員会というのも考えられます。信託法の一般的な議論として,指図権者を信託契約で規定することについていけないという議論はないかと思います。ところが,今の議論ですと,委託者が委託者の立場で指図権を持つとするのは多分受け入れられないのでしょうが,先ほど吉谷委員の発言にもあったように,専門家が別途必要ではないかということからすると,場合によっては委託者が委託者たる地位を離れて,専門家としてアドバイスするという状況もあってしかるべきかと思います。公益信託で指図という言葉は少し強いかもしれませんけれども,運営委員会とまで言わないけれども,専門家アドバイザーとかそういう観点からの検討も必要かと思います。委託者というのは属人的なのではなくてたまたま委託者であって,その委託者が違う資格を持つということもあるかと思いますが,この点についてときに議論が混乱していることもあるのではないかと思います。委託者としてのどこかすぐれた別の能力を当該公益信託に生かすということは許容してもよろしいのかなと。 ○中田部会長 ありがとうございました。今の御意見は第4の運営委員会ともちょっと関係するところでありますけれども,取りあえず議論を「第4 運営委員会」の方に進めたいと思いますがよろしいでしょうか。 ○吉谷委員 委託者なのですが,ちょっと先ほどの発言の趣旨としましては,例として挙げましたのは,委託者が監督的な役割を超えて事実上の執行を左右するレベルにまで行ってしまうと,もはやその受託者と同じではないでしょうか,という趣旨で申し上げたのですということの補足だけさせていただきます。 ○中田部会長 ほかに委託者についてございますでしょうか。   それでは,「第4 運営委員会等」について御意見を頂きたいと思います。 ○吉谷委員 運営委員会につきましては提案に賛成でございます。ただ,信託銀行であれば助成型には常に運営委員会を設置するようにしているということからも分かりますように,認定の際には運営委員会のようなものを設けるのか設けないのかによって公益信託事務の執行がちゃんと行われるのか,監督がちゃんと行われるのかということの確認をするべきであると,公益信託事務の執行と監督の体制が十分であるということについて確認されるべきである。あるいはそのような体制整備の義務が受託者なのか何なのかにあると言った方がいいのかもしれませんけれども,そのような処置が必要であると思われます。 ○能見委員 私も原案で賛成と言いますか,こういうものは必置の機関としては設けないということでいいと思っていますが,仮に任意に信託行為でもって運営委員会を設けたときに,その運営委員会の役割として何を与えることができるのかという点が問題となるかと思います。今までは任意に設ける運営委員会の役割を助言ということで考えていましたけれども,監督的な権能まで与えるということなると問題がありますので,この辺りを詰めておいた方がいいのかなと思いました。   さらに,先ほどのちょうど委託者とも関係するのですが,委託者が運営委員になるということも選択肢としてあり得ると思います。委託者が信託管理人になるのは駄目だというのが多数の意見でしたけれども,運営委員会の場合にはその役割如何によっては委託者を入ることもできるかもしれません。そこら辺も整理の問題ですけれども,しておいた方がいいかなと思いました。 ○新井委員 日本の公益信託は約500ぐらいあって,そのほとんどの受託者が信託銀行です。信託銀行は財産管理の専門家ですけれども,当該公益信託目的に関する専門的知識は持っていないわけです。したがって,ほとんどの公益信託においては,現在運営委員会が置かれているということで,私は実務を尊重して運営委員会というのは残してもいいのではないかと考えております。しかしながら,この部会ではそれは少数意見だということもよく承知しております。   それで,もし運営委員会を必置として設けないということで考えた場合にちょっと気掛かりなことがあります。それはどういうことかというと,現在は許可審査基準の中に運営委員会等を設置していなければならないという規定があるわけです。それで今度先ほどの議論もあったところですけれども,現在の許可審査基準というのを全て法律のレベルに格上げするというのが私の理解です。そうすると,公益信託本則の中に運営委員会の規定が入らないということは,つまり現行の許可審査基準も廃止するということにするわけです。ちょっとそれは行き過ぎではないのか。公益信託本則には入れないとしても,運営委員会を設けることが許容されるぐらいの規定があってもいいのではないかと考えます。ですから,原則は大勢に従いつつも,もう少し弾力的に運営できるような道を残してもよろしいのではないかというのが私の意見です。   それから,10ページの補足意見の最後のところに,一番最後の方ですけれども,諸外国の信託法制と比較しても,運営委員会等のような信託関係人を法律上規定している国は見当たらない,との指摘は全く的確です。しかしながら,この点については日本の事情と諸外国の事情は違うと思います。というのは,諸外国で公益信託の受託者になっているのは,私が理解するところ専門家です。ですから,その公益信託目的の専門的な知見を持っているわけです。他方,日本はそうではなくて,ほとんどが先ほど申し上げたように信託銀行が受託者を担っているという点の違いもあるので,この表現それ自体は妥当ではあるのですが,日本の実情も踏まえる必要があろうかと思います。 ○川島委員 ありがとうございます。事務局が提案された公益信託法に規律を設けないということ,また(注)や(補足説明)にある必要に応じ任意に設置するという考えに賛成をいたします。その上で,付随的な事柄になりますけれども,この運営委員会を任意に設置をする場合のひな形を示し,その一助とする観点から運営委員会の設置や役割,機能などについてのガイドラインを定めることは有益だと思いますので,意見として申し上げます。 ○沖野幹事 運営委員会なのですけれども,私も,新井委員と同じ考えなのかなと伺っていたのですけれども,運営委員会を必置とはしなくても,設けることができるということで,助言の機関を設けるとしたらこういうものだというものを示すことにはそれなりの意味があるのではないかとは考えております。   それから,能見委員の御指摘になった,それにどこまでの権能を任意とはいえ与えることができるのかとか,委託者がそれにメンバーになれるかといった問題があるとすると,それを検討する必要が確かにあると思うのですけれども,それを全く法律にも何もなくて,後は委ねてしまっていいのかというのは問題であるように思われます。   それで,ガイドラインとして例えばそういうことを設けることも考えられると思いますけれども,もう少し正式にというか,任意にこういうものを置くことができるとした方がいいのではないだろうか。もしそうしない場合,事実上は統一されていくのかもしれませんけれども,様々な名称で助言か監督かよく分からないような機関をいろいろ設けていくということのどこまでが許容されてどこまでがそれは望ましくないのかといったようなことも生じうるように思いますので,何か設けるとしたらこういうタイプという形での規律を置くことが考えられてもいいのではないかと思っております。以前に申し上げたことの繰り返しですので,繰り返しで申し訳ないのですけれども。 ○中田部会長 ありがとうございました。前の部会でも御意見を頂いたかと存じますが,仮に法律で書く場合に,運営委員会あるいは助言を任務とする組織体を置くことができるとだけ書くのか,置いた場合の効果あるいはほかの制度との関係で要件化するというようなところまでお考えでしょうか。それとも何かこういうものが置けるのだということだけでしょうか。 ○沖野幹事 置けるだけだと名称を入れるだけですので,中身をもう少し書いた方がいいのではないかと思っておりまして,どういう権能を持たせられるかとか,メンバーをどういうものならば入れられるかとか,法人をメンバーに入れられるかとか,幾つかの点が出てくるかと思いますので,そういうものを入れてはどうかとは考えておりますけれども。 ○中田部会長 それは分かるのですが,その置いた場合の効果については何かお考えでしょうか。 ○沖野幹事 置いた場合に,その助言に従わなかったときにはどうなるかとかそういうことですか。 ○中田部会長 あるいは運営委員会という機関を設置した公益信託には何か効果が伴うのかということです。 ○沖野幹事 それは特には考えておりませんでした。ただ,運営委員会を設置すべきタイプのものがあるならば,それは一部必置みたいになってくるかと思いますけれども,そこは全く置くことは考えておりませんでした。 ○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。   新井委員は今の点について何かお考えお持ちでしょうか。 ○新井委員 まず,この(注)ですと,公益信託の信託行為の中で設けることができるというのですけれども,やはり少しレベルを上げて,許可審査基準みたいなものですね,今回はそれは置かないということなのでちょっと私もそこ悩んでいるわけですけれども,やはりそういうレベルで決めていただいた方がいいのではないか。というのは,運営委員会を置くかどうかというのは税法上の公益性の認定の問題とかいろいろなところにやはり関連してくると思うので,やはり置いた方がいいし,一定の私法上の効果も伴うということですので,公益信託法本則には置く必要はないと思うのですが,やはり少しレベルの下がるようなところで規定するというのが考えられるかと思っています。 ○中田部会長 ありがとうございます。 ○深山委員 運営委員会等についての規定を必置にしないことを前提にしつつも,設置できるということを示す規定を置いたらどうかという幾つかの御意見があったのですが,仮に任意の機関として設けることができるというような規定を置くのであれば,それだけ置くというのは非常に中途半端で,これまで受託者とか信託管理人で議論したように,資格であるとか権限だとか義務だとかということをデフォルトルールとして置かざるを得なくなってくるような気がします。現行の運営委員会というものに,あるいは現行の税法などにも何らかの配慮をするということになると,必置ではないと言いながら,運営委員会付きの公益信託とそうでない公益信託のような類型のようなものに言わばなってしまって,事実上,一定のものについては運営委員会が実質的に必置になっていくような懸念を感じます。   もちろん,いつも申し上げるように,助言機関などが必要な公益信託において運営委員会のようなものを置くこと自体を反対するものではありませんけれども,そのように法律に資格,権限,義務等をうたえばうたうほど,やはり重装備の制度になっていくということから,デフォルトルールとしての規定は中途半端な規定も含めて置かないで,解釈として信託行為の中で定めることは妨げないということで足りると考えます。   結果として名称がいろいろになったりということは確かに想定されますけれども,法律に書いてしまう,あるいは法律ではないにしても法律に準ずるようなものに書いてしまうということには,むしろ事実上それを一定の範囲で必置化するに等しいようなことにならないかという懸念を感じますので,提案のとおりがよろしいという意見でございます。 ○中田部会長 ほかに御意見ございますでしょうか。   法律のレベルで必置にするということについては,その必要はないということで一致していると思います。その上で,任意に設けられるというのを全面的に信託行為に委ねるのか,それとも,もう少し上げてガイドラインみたいなもので書くのか,あるいは更に上げていくのか,もっと上げて法律の中でそういうものを書くのかという辺りまで何段階かの御意見を頂いたかと思います。任意の機関をどのレベルで位置付けるのかということはなかなか難しい問題もあろうかと思いますが,頂いた御意見を踏まえて更に次の段階に進みたいと思います。 ○山田委員 今の点について私の意見を申し上げたいと思います。「第4 運営委員会等」,9ページですね,(補足説明)の1のブロックの最後に,所得税法施行令第217条の2第1項第6号等というのがあります。新井委員がおっしゃったのもこれに関わることなのかなと思うのですが。税制優遇を受けられない公益信託をここでいかに立派に作っても私はやはりそれは余りうまくないと思うのですね。現在の公益信託ではこの所得税法施行令の下で,恐らく私の理解では運営委員会というのはこの役割を果たしているということなのだろうと理解をしました。信託財産の処分というのも何か大きな不動産を処分するだけでなくて,助成をするために信託財産の処分と考えると,1年に1回助成をすると,あるいは半年に1回助成をするときに運営委員会の意見を聞いて,誰に幾ら給付をするかということを決めているのではないかなと推測しました。全く専門的な知識はありませんので,全然そうでないかもしれません。   他方,美術館のような事業型のものを考えると,美術館グッズみたいなものを販売するのが信託財産の処分なのかどうかという辺りがちょっとよく分からないのですが,しかし,収蔵品の売却とかこれまでもいろいろな別の文脈でですが,話題になった,そういうときにこの学識経験者の意見を聞くということになるのかなと思います。そうすると,何か特別のことがあったときに学識経験者の意見を聞きなさいというのがこの所得税法施行令の適用場面ではないか。いわゆる事業型公益信託というものが導入されるようになると思いました。   そうしますと,それでよいのかどうかということですが,運営委員会,私はない方がいいと思うのです。そして,少しいろいろ工夫をしたらどうかという御意見もありましたが,最後の今の結論は深山委員のおっしゃるのと同じで,それもなるほどなとも思うのですけれども,設けないのがいいと思うのですが。ただ,そうしてしまいますと,運営委員会なしの公益信託というのができると,運営委員会ありの公益信託もあるだろうと。運営委員会のあるものはこの所得税法施行令の適用を受けて税制優遇を受けると,ないものは,ないというだけで駄目だと言われるのかどうか分からないのですが,何かいろいろと高いハードルを設けられるということですと,せっかく運営委員会なしというので必置としないということにした,狙っていたものが実現しないなと思います。   ですので,ちょっと先ほど事務当局で調査いただけませんかと申し上げて,中田部会長から,いやいや,調査はまたそれはそれで難しいと別のところで御発言いただきましたが,ここもちょっとこの所得税法施行令第217条2の下で,ここには運営委員会とは書いてないのですね,学識経験を有する者の意見を聞くことと,これが助成型で今までどおりでなければならないかというのも一つの論点になると思いますが,事業型の公益信託でどういう条件を満たせばこれに当たるのか,あるいはここが少し変わり得るのかというところも含めてなのかもしれませんが,そういったところの誰々がこう言ってましたというお話はここの場ではなかなかされにくいのかと思いますが,何かもう少し相場観というのが分かると議論がしやすいなと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○小野委員 公益信託の柔軟性という観点からすると,運営委員会を必要とはしないという部会の大勢を占めている意見そのものに同意します。なお,先ほどからの議論とも関連しますけれども,公益信託と名称を与えるということは,一般の方にとって公益信託に運営委員会が置かれた場合地位とか責任とか権限が認識できるというような透明性あるような制度とすべきかと思います。そのほうが公益信託と接点をもつ取引する方にとっても,また逆に運営委員という役割を担う人にとっても分かりやすいのかと。会社法でもいろいろな組織形態がありますから,運営委員会設置型,非設置型両方あってもいいと思います。運営委員会というものは,先ほど部会長がまとめられたように,やはり制度的に組み込みそれを採用するしないは任意ですけれども,採用した場合にはこういう権限とか義務がありますみたいな形での透明性というか見えやすさを持った方がよいかと思います。特に当初信託契約で設置していなくても,やはり運営委員会は必要だろうと受託者が考えたときに,信託行為ということになると信託契約の変更で裁判所に行くことになるかもしれませんが,もっと簡単に採択できるような,制度的に組み込まれたそれなりに理解されやすいものであることが必要かと思います。もちろん,それは必置にしなければいけないということではなく,美術館関係者が受託者になってるときにもう一人別の見識を持った方が必要かもしれないということも,また弁護士が受託者になるときにやはり専門性という意味からすると違った方,それが共同受託者になればいいという議論があるかもしれませんけれども,それはそれでなってもいいし,別に運営委員会としてアドバイザーでもいいという多様なメニューを用意するということが必要だと思います。   先ほど沖野幹事がおっしゃったように,いろいろな名称でいろいろな人が絡んでくると,やはり公益信託と名称を与えて,またそれを義務としているにもかかわらず,分かりにくいものになってしまうのではないかと感じて発言させていただきました。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○吉谷委員 山田委員がおっしゃったところの趣旨は,私ども元々賛同するところであるのですけれども,私どもの方で先ほど受託者が公益信託事務の執行と監督の体制が十分であることを認定段階で証明できるようにと,確認してもらえるようにというふうにするべきだと申し上げましたのは,その確認を持って税の方の認定もしてもらえるというような前提で考えていたということであります。それを運営委員会であるとか,専門家,学識経験者というような表現でなく言ってみますと,そういう執行監督の体制を認定段階で審査してもらうということかなと思っております。 ○小野委員 運営委員会というと会を構成しなければいけないので,最低2名恐らく決議をしなければいけないとしたら3名ということになると,ちょっとやはりそうなると本当に重装備になってしまうかと思うので,運営委員という最小単位でも構わないのではないでしょうかということを言うのを忘れたものですから追加させていただきます。 ○中田部会長 ありがとうございました。大体御意見はよろしいでしょうか。運営委員会を任意のものとして設けるというときに,その任意のもの以外のものも設けることができるでしょうから,そうするとその任意のものとして何か設けたものが果たしてどういう効果を持つのかということもまた問題となってくるでしょう。運営委員というのを設けると,今度は信託管理人との権限分配の問題とかということも出てくるでしょうから,シンプルにしながら,しかし現在の実務の経験を生かせるような方法もないだろうかということを,必置とはしないという前提で,更に検討をするということになろうかと存じます。   大体よろしいでしょうか。   それでは,予定したところまで来ましたので,ここで少し休憩を挟みたいと思います。後ろの時計で4時5分まで休憩いたします。           (休     憩) ○中田部会長 それでは,再開いたします。   部会資料39の「第5 公益信託外部の第三者機関による監督」ですが,1から3まで一括して御意見をお伺いいたします。御自由に御発言ください。 ○棚橋幹事 第5の1の行政庁等の監督権限という部分の(2)の部分について質問が2点ございます。1点目は,今回(2)のアで行政庁の検査権限を御提案いただいているのですけれども,この検査権限の在り方については,今後定期的に行政庁が検査を行うことになるのか,それとも必要に応じた形で検査を行うことになるのか,両方併用されることになるのか,何か制度設計としてお考えのところがあれば伺いたいと思います。   2点目は,後で検査役の検査という部分も出てきますけれども,行政庁が行う検査と検査役が行う検査との間には実際に行う検査の中身に相違があるのかどうかを伺いたいと思います。 ○中辻幹事 御質問にお答えします。   まず,検査の在り方につきましては,現在の公益法人が参考になると考えておりまして,受託者に対して3年に一度定期的に立入検査することもあれば,必要に応じて検査に入るということもあるでしょうし,それらの併用もあってしかるべしという前提で,今回の部会資料は作っております。   次に,行政庁の行う検査は,原則として,行政庁の有する公益信託の認定及びその取消しの判断に必要な範囲での検査を想定しています。   一方,信託法46条1項で規定されている裁判所の選任する検査役が行う検査は,「不正の行為又は法令若しくは信託行為の定めに違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるとき」にその有無を明らかにするために必要な検査を想定しています。そのようにそれぞれの目的,役割を整理した上で,仮に行政庁による検査と検査役の検査が併存することになれば,両者で重複する部分が出てくる可能性はございますので,その部分をどうするのかについてはさらに検討を要すると考えております。 ○中田部会長 棚橋幹事,よろしいでしょうか。 ○棚橋幹事 質問は以上なのですけれども,第5の3について引き続き意見を述べさせていただきます。一読で申し上げたことの繰り返しになりますが,検査役の選任については,もちろん信託法上裁判所が選任するという条文があるわけですけれども,公益信託については,先ほども質問させていただいたとおり,行政庁に検査権限があるという点で私益信託とは全く異なっていると考えております。そういった相違を前提とした上で,検査を通じた適切な監督を行うという検査役の制度の目的や,検査役の検査結果の用い方,そういったことを考慮して,どの機関が検査役を選任するのが手段として一番実効性があるのか,適切なのか,という視点から検討する必要があると考えております。   行政庁は,勧告措置命令,認定取消しなど検査権限を有している機関ですので,そういった権限を背景に有する行政庁が検査役を選任し,報告を受けるという在り方の方が実効性があるものと考えられますし,検査監督作用を単一の機関が行うことができるということになりますので,監督の在り方としては適切なのではないかと考えております。   裁判所は定期的又は随時に行政庁が行うであろう検査の内容は全く把握していない状況でございますし,もちろん勧告ですとか措置命令などの権限はございませんので,裁判所が検査役を選任することによって,検査結果を受託者の事務の是正等に活かすことができるのかどうかについては疑問がございます。   意見は以上です。 ○中田部会長 そうしますと,3については甲案ということでございますね。はい。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉谷委員 まず,1番の行政庁の権限でございますが,(1)につきましては提案に賛成でございます。(2)につきましては,イ以下の部分について修正の提案をしたいと考えております。   提案は,行政庁の勧告命令の対象というのを受託者としているのですけれども,これに信託管理人を加えるべきであると考えます。新しい公益信託法制においては,信託管理人は内部ガバナンスの担い手でありまして,その業務執行の適正性確保のための方策というのを整えておくことが必要であろうと思われます。公益法人認定法では,勧告等の対象は公益法人であるわけですが,間違っていたら教えていただきたいのですが,公益法人の機関である監事等に関する勧告というのもあり得るのではないかと思いました。公益信託の場合は公益認定の対象が信託なわけですけれども,その担い手である受託者,信託管理人の双方を勧告等の対象として,信託管理人の権限の不行使がある場合には信託管理人に対する勧告を行うのがよいと考えます。   信託管理人の職権による解任というのを前回お話しさせていただいて,また後で述べるのですが,それはともかくといたしまして,信託管理人の適正性の確保の方策として,勧告等の対象とすべきであると考えます。   2番の裁判所の権限は提案に賛成いたします。   3番の検査役の選任につきましては,甲案に賛成です。受託者の不正について,信託管理人が自ら検査ができないと考えた場合には,行政庁に対して検査役の選任の申立てをして,また不正の疑いがあるということを報告すると。行政庁はそれに対して自ら調査を行うのか,あるいは検査役を選任するのかという選択をするという手順がよいと思われます。   検査役と行政庁が並行して調べるということがあってもよいと思いますし,行政庁が選択することによって最も効率のよい方法というのを選択できるのではないかと考えます。 ○深山委員 第5の1については提案に賛成をいたします。今吉谷委員の方からは,イ以下について受託者のみならず信託管理人もという新たな提案もあったので,それについても意見を申し上げると,私は原案どおりでよろしくて,信託管理人をここに入れるというのはふさわしくないと思います。信託管理人というのは,信託管理人自体が監督を担っている立場にあって,その監督の仕方をまた監督するというような構造になること自体が違和感もありますし,その必要性もないと思います。もちろん,信託管理人に何か問題があったときに,その解任をすることなどというのは,後に議論するように,それはそれで別の手当は必要ですが,ここに行政庁の権限として受託者と信託管理人を並べることについては賛成し難いと思いました。   それから,2の裁判所の権限については提案どおりで賛成いたします。   3の検査役ですけれども,こちらは乙案を支持したいと思います。先ほど行政庁との役割分担的な話が出ましたけれども,もちろん行政庁も検査権限,更には勧告,命令,認定取消しという権限を持っていて,それはそれで機能させるべきであることは当然前提なのですが,それとここで問題にしている信託法46条に定めている検査役の制度というのは,やはり役割が違う,別の制度だろうと思います。ここでは専ら受託者に不正なり法令違反があったことが疑われるようなときに,受託者の職務適正性について事実関係を調査するために,公益信託であれば信託管理人がその監督をする上で必要な調査を検査役という機関に委託をし,その補助を受けるという仕組みであります。ですので,裁判所を選任機関とすると定められている出来上がった仕組みをここでも実施するということなのであり,行政庁の監督等とはまた別の観点で,この制度というのは存在意義があるのだろうと思います。   事案によってはその両方が発動するということもあるとは思いますが,それを避ける必要もないのであり,検査役の選任権限については裁判所の方が適切だろうと考えます。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○林幹事 まず1点。行政庁につきましては,先ほども申し上げたのですが,先ほどの認定主体のところで民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいてと認定のところにあったと思うのですけれども,この監督においてもそういう民間の有識者からの委員会の意見を聞きながら監督するという,そういう前提で理解していいでしょうか。一致させるならなおその点を明確にした方がいいかと思います。   それから,行政庁につきましては,第一読会のときには行政庁の監督は補充的な,二次的なものだという位置付けをしたかと思います。今回の部会資料にもそういう記載もあるところです。それは,先ほどもありましたけれども,認定基準に適合しているかどうかとか,取消し事由に該当するかとういう観点になるのだろうと思います。そういう観点で見たときに,5の1の(2)につきましては,イ,ウ,エは理解できたのですが,アは若干広いのかなとも思えて,この点をどう読むべきなのかと思いました。一定の監督をし,立ち入ること等も必要だろうと思いますが,それをどういう観点で行うのかというところはあると思います。適正な処理を確保するために必要な限度においてと書かれているのですけれども,先ほどの補充的な監督という点と一致しているかというような気もしました。ただ,どうあるべきかは,どちらもあり得ると思ったので,問題意識だけ申し上げます。   2の裁判所の権限については賛成,3の検査役については乙案です。検査役については深山委員が述べたところと同じです。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 検査役の選任に関して深山委員がおっしゃったところに私も賛成したいと思うのですが,第一読会でも発言をしたかもしれませんけれども,やはり目的は違うはずなのですよね。例えば受託者が第三者委託をしてはならない,ないしは第三者委託をするときにはこういった者に対してしなければならないという信託行為の定めであったときに,当該信託行為の定めに反して第三者委託を行ったことは,それによって公益が推進されることになり,かつ受託者が不当な利益を得ているとかにならないとするならば,公益認定には影響しないのだろうと思うのです。しかしながら,第三者に受託者の権限を再委託するというのは委託者の意思に反しており,それが○○記念公益信託の目的には反しているか否かについて,検査役はそういうことを検査すべき立場にいるのだろうと思うのです。これに対して,行政庁はそういう立場にはいない。そういうわけで,少し目的が違うということと思います。 ○明渡関係官 先ほど林幹事がおっしゃった関係で申し上げますと,今の公益法人の認定法には59条という規定がありまして,権限の委任ということで内閣総理大臣は監督の権限を委員会に委任するというような条項がございます。今回のものがどうかというのはまた別ですけれども,今ある公益法人認定法につきましてはそのような形になっているということでございます。   あと,すみません,13ページの「3 検査役の選任」のところの下の方ですけれども,今の公益法人認定法は御存じのとおり入口が認定という形になっております。それ以降の許認可等見ていきますと,変更のときに認定がある,あと合併に関して認可があるということはございますが,それ以外は届出若しくは提出というような形になっております。これ以降の議論にも関わるかもしれませんけれども,許可であったりいろいろ選任していくというような権限は今の仕組み上はないというのが,今の公益法人認定法上の仕組みということで,ファクトとしてお伝えしておきます。 ○中田部会長 ありがとうございました。一つ前の林幹事の御質問の中で,ただいまの明渡関係官の御説明とも関係しますけれども,この原案が行政庁というのが有識者の委員会の意志に基づくのかという点についてはいかがでしょうか。 ○中辻幹事 基本的には今の公益法人制度に倣ったものを考えており,公益法人認定法43条では,行政庁が公益法人の認定や取消し等の重要な権限行使については有識者委員会に諮問しなければならないとされています。信託と法人の性質の違いはありますので,この条文をそのまま公益信託に持ってくることはできませんが,必要な修正をした上で同じような仕組みを採るのが適切ではないかと事務局としては考えております。 ○中田部会長 ちょっと順番が前後してしまいました。   ほかに。 ○小野委員 第一読会でも発言したところですけれども,信託業法との関係で述べますと,今,公益認定法を見ていたのですけれども,認定のほか,監督規定があっていろいろと監督する立て付けになっている,そうでないと認定どおりの公益活動をしているかどうか分からないと思うので当然の帰結と思います。ですから,やはり公益認定機関である行政庁が認定し,監督するという本日のこの補足説明又この提案での議論がふさわしく,この点からすると,信託業法上の監督というのはかなり後退するという理解にせざるを得ないのかなと,そうあってほしいという気持ちもあるのですけれども思います。そうでないと,監督を二つの行政庁が担い,二つの行政機関が違った判断をするとか,違った方向を目指すとかそういうことになり得ます。 ○中田部会長 ほかに。 ○沖野幹事 検査役の点についてなのですけれども,結論自体は深山委員や道垣内委員がおっしゃった形がよろしいのではないかと考えております。行政庁というのが,基本的には,最終的には認定取消しに至るほどのものを想定した段階的なものを考えるのに対して,より日常的にきちんとやっているかということを信託管理人などが与えられた報告を求める権利などを通じて十分に調査できないときにまず調査をしてくれということですから,その結果によっては受託者の解任ということもありますけれども,填補請求などの責任追及ですとか,あるいはこれが繰り返されるようだと差止めとかいろいろな権能の行使ですけれども,それは,行政庁として最終的にはそれがされないときは認定取消しというよりは,もっと軽いものであっても日常的な適正化というための信託管理人の権限行使につながっていくようなものということですので,一応別物ではないかと考えます。そうしますと,行政庁の公益信託の認定等についてはそれに限ってというかそこに必要な限りでということだとすると,日常的な監督に必要な調査で検査役の選任まで必要なものというのは信託法が用意するものでよろしいのではないかと思っております。   ただ一方で,しかしそれが日常的なというレベルなのか,もっと重いもので実は幾つかの段階を経て認定取消しというようなことにまで至るようなものなのかというのは重複する場合がありますので,その重複の調整などを考える必要がないか考えるべきだろうと思います。一つは検査自体の重複の問題と,もう一つは検査結果の利用というところでして,検査自体の重複は,これはもう重複しても仕方がないのかなとも思いますけれども,例えば検査役を選任する場合には行政庁の方に一報を入れるとか,あるいは検査結果についても通知をするとか,現在であれば申し立てた主体に対してと,それから必要に応じて受託者に受益者への通知ですとか,周知措置を執るようにということになっていますけれども,そこにもう少し行政庁にも通知するとか,そういうような連携の措置は考えてもいいのではないかと思っております。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。第5につきましては第一読会で頂きました御意見を更に敷衍し深める形で御意見を頂くことができました。更に次の段階に向けて進んでいきたいと思います。   続きまして,部会資料39の「第6 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任」,「第7 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任」,そして「第8 公益信託における情報公開」について御審議いただきたいと思います。事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 では,まず「第6 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任」について御説明します。   「1 公益信託の受託者の辞任」について御説明します。まず,「(1)信託法第57条の適用の可否」についてですが,本文では甲案として,受託者が信託関係人の同意を得て辞任することのみを可能とする。乙案として,受託者が外部の第三者機関の許可を得て辞任することのみを可能とする。丙案として,受託者が信託関係人の同意を得て辞任することも外部の第三者機関の許可を得て辞任することも両方可能とするとの提案をしています。これらの提案のうち,甲案及び乙案は第一読会における提案と同様のものです。今回は信託法第57条は第1項で受託者が信託関係人の同意を得て辞任することを可能とし,第2項で受託者が裁判所の許可を得て辞任することを可能としていることに併せ,これらの案よりも柔軟な制度を指向する観点から,甲案及び乙案の両方のルートによる受託者の辞任を可能とする丙案を新たに提示しています。   次に,「(2)信託関係人の同意による受託者の辞任を認める場合」についてですが,本文では「ア 受託者の辞任事由」に関し,甲案として,やむを得ない事由を必要とする。乙案として,やむを得ない事由を必要としない,との提案をしています,甲案は,公益信託の継続性,安定性を確保するために信託関係人の同意に加えて,やむを得ない事由を受託者の辞任事由として必要とする考え方です。他方,乙案は信託法第57条第1項において,信託関係人の同意があれば事由は問わず受託者の辞任が認められていることに合わせた考え方です。   また,本文では「イ 受託者の辞任手続」に関し,甲案として,委託者及び信託管理人の同意を必要とする。乙案として,信託管理人の同意のみを必要とする,との案を提示しています。甲案は,信託法第261条第1項による読替え後の信託法第57条第1項の規定によれば,受託者の辞任には委託者及び信託管理人の同意が必要となることに合わせた考え方です。他方,乙案は,公益信託の公平な運営を確保する見地から,委託者の関与をできるだけ排除することが望ましいことから,原則として受託者の辞任には委託者の同意を必要とせず,信託管理人の同意のみで足りるものとすべきであるという考え方です。   次に,「(3)外部の第三者機関の許可による受託者の辞任を認める場合」についてですが,本文ではア,受託者の辞任事由は,やむを得ない事由とする,との提案をしています。この提案の内容は提案理由については第一読会から変更はありません。本文では,イ,受託者の辞任手続は,甲案として,行政庁の許可を必要とする。乙案として,裁判所の許可を必要とする,との提案をしています。これらの提案の内容や提案理由についても第一読会から変更はありません。   次に,「2 公益信託の受託者の解任」について御説明します。まず,「(1)信託法第58条の適用の可否」についてですが,本文では甲案として,受託者を委託者及び信託管理人の合意により解任することのみを可能とする。乙案として,外部の第三者機関が信託関係人の申立てにより受託者を解任することのみを可能とする。丙案として,受託者を委託者及び信託管理人の合意により解任すること及び外部の第三者機関が信託関係人の申立てにより受託者を解任することの両方を可能とする,との案を提示しています。   これらの提案のうち,甲案及び乙案は第一読会における提案と同様のものです。さらに,今回は信託法第58条は第1項で信託関係人がその合意により受託者を解任することを可能とし,第4項で外部の第三者機関が信託関係人の申立てにより受託者を解任することを可能としていることに合わせ,これらの案よりも柔軟な制度を指向する観点から,甲案及び乙案の両方のルートによる受託者の解任を可能とする丙案を新たに提示しています。   次に,「(2)委託者及び信託管理人の合意による受託者の解任を認める場合」についてですが,本文では甲案として,受託者の解任事由として,受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときを必要とする。乙案として,甲案に掲げられている事由を必要としないとの提案をしています。甲案は,公益信託の継続性,安定性を確保するために信託関係人の合意に加えて,受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたこと,その他重要な事由があるときを解任事由として必要とする考え方です。他方,乙案は,信託法第58条第1項において,信託関係人の同意があれば事由は問わず受託者の解任が認められていることに合わせた考え方です。   次に,「(3)外部の第三者機関による受託者の解任を認める場合」についてですが,本文では,ア,受託者の解任事由は,受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときとする,との提案をしています。この提案の内容や提案理由については第一読会から変更はありません。   次に,本文では,イ,受託者の解任申立権者について,甲案として,公益信託の委託者及び信託管理人とする。乙案として,公益信託の信託管理人とする,との提案をしています。これらの提案の内容や提案理由についても第一読会から変更はありません。   次に,本文では,ウ,受託者の解任権限を有する外部の第三者機関について,甲案として,行政庁とする。乙案として,裁判所とする,との提案をしています。これらの提案内容や提案理由についても第一読会から変更はございません。   次に,「3 公益信託の新受託者の選任」についてですが,本文では甲案として,行政庁が利害関係人の申立てに基づき新受託者を選任することができるものとする。乙案として,裁判所が利害関係人の申立てに基づき新受託者を選任することができるものとする,との提案をしています。第一読会では本部会資料の甲案のみを提示していました。もっとも仮に公益信託それ自体の継続と,公益信託の受託者の継続は同一平面上の事象でないことを重視して,受託者の辞任や解任には行政庁ではなく裁判所が関与することを前提とするならば,その延長線上にある新受託者も裁判所が選任することが相当であるとの考え方もあり得ることから,その考え方を本部会資料の乙案として新たに示しています。   「第7 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任」について御説明します。   本文では,公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任については,公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任と同様の規律とすることでどうか,との案を提示しています。この案は,信託法が信託管理人の辞任・解任,及び新信託管理人の選任について受託者の規律を準用しており,その仕組みをあえて公益信託についてのみ変更するまでの必要性は認めらないとの考慮に基づくものです。もっとも,公益信託の信託管理人の解任については,委託者及び解任対象となる信託管理人以外の信託管理人がいない場合に,信託管理人を解任する主体が存在しなくなる可能性があるという問題点があります。そして,信託管理人の解任に行政庁又は裁判所を関与させるのであれば受託者からの信託管理人の解任申立てを認めても不当な結果を生じる可能性は低いと言えることなどから,公益信託の受託者にも公益信託の信託管理人の解任申立権を付与することが相当であると考えられますので,その旨を(補足説明)に記載しています。   最後に,「第8 公益信託における情報公開」について御説明します。本文では,1,公益信託法第4条第2項の趣旨を維持しつつ,受託者による公益信託事務及び信託財産の財産状況の公告の方法として電子公告を認めるなど,関連する規定を整備することでどうか。2,行政庁は,公益信託の認定や認定の取消し等をしたときは,その旨を公示しなければならないものとすることでどうか,との提案をしています。公益信託に対する社会の信頼を高めるという観点からは,公益信託の事務処理や財産状況が公開されることが必要ですが,信託と法人の制度的相違に留意して,信託行為を公告の対象に含めることは妥当でないと考えられます。その上で,公益信託法第4条第2項の趣旨を維持しつつ,電子公告による公益信託事務及び財産状況の公告を認めるなど,関連する規定を政省令で整備することが相当であると考えられます。   また,行政庁における情報公開も同様に有用であることから,公益法人認定法の規定を参考として,行政庁が公益信託の認定,取消し等を公示する旨の規定も整備する必要があるものと考えられます。 ○中田部会長 ただ今説明のありました部分につきまして御審議いただきたいと思います。まず,「第6 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任」ですが,1と2と3いずれも関連している問題でして,かつそれぞれの理由も共通するところが多いと思います。ですので,一括した方がいいとも思うのですが,一つ一つがかなり幾つかの枝分かれがしていて複雑ですので,まず1の辞任について根拠も含めていろいろ御意見いただいた上で,2と3についてまとめて御意見を承ろうかと思います。ですので,2と3については根拠が1と同じであれば比較的コンパクトに御発言いただけるかと思いますが,1についていろいろ積極的に御発言いただければと存じます。   ということで,第6の「1 公益信託の受託者の辞任」について,いかがでしょうか。 ○沖野幹事 中身の確認をさせていただきたいのですけれども。1の(1)の甲案の意味についてです。関係人の同意を得て辞任することのみを可能とすると書かれておりまして,この乙案は部会資料36,前の部会資料と趣旨が同じであるとされているのですけれども,この囲みの中を見ますと,甲案は言わば57条1項ルートで,乙案はその1項ルートを封じるという趣旨に読めます。だけれども,今回は甲案というのは,のみを可能とするというのは1項ルートしか辞任の道はないという提案なのでしょうか。ということは,前回の部会資料と少し話が違っているようにも思われます。かつ,デフォルトルールとは書かれているのですけれども,これは受託者としては例えばやむを得ない事由があるのだという場合とか,やむを得ない事由と信託関係人は認めてくれないけれどもというような場合には,もう辞任の途はないというのが甲案の含意になるのでしょうか。あるいは同意しないことが乱用であるとか,そういうことで裁判所等に求めていくことになるのでしょうか。甲案というのがそういう意味だと成り立つのだろうか疑問に思います。   デフォルトルールと書かれているのも,ここで書かれているのは,同意ルートを封じる方のデフォルトルールとしての働き方を書かれているのですけれども,その甲案の含意がどういうことなのかというのは解任のところにも妥当しますので,説明をしていただければと思います。 ○中辻幹事 今回の甲案,乙案及び丙案は,前回いろいろ御指摘いただいた点を踏まえて私どもの頭の整理の意味も込めて構成し直したものですので,前回の甲案,乙案がそのまま今回の甲案,乙案にはなっていないのではないかという沖野幹事の御指摘はそのとおりでございます。その上で,今回の甲案は57条1項ルートの辞任のみを可能とするもので57条2項ルートは封ずるという意味を含んでおり,今回の乙案は57条2項ルートの辞任のみを可能とするもので57条1項ルートは封ずるという意味を含んでいるということになります。   そして,今回新たに提案しました丙案は,57条1項ルートも57条2項ルートも一般の信託では認められているのであるから,公益信託でも両方を認めて良いという発想に立っているものです。 ○沖野幹事 そうしますと,甲案の下で受託者にはそれなりのというか,通常であれば辞任が認められてしかるべきと思われるような事由があるときに,信託関係人が同意してくれないというときは辞任の道はないというのが甲案の含意なのでしょうか。 ○中辻幹事 そのとおりです。沖野幹事が言われましたように,57条1項ルートだけでは不都合が生じる可能性があり,例えば受託者にやむを得ない事由があるのに信託関係人が同意してくれない場合には裁判所に申立てをして辞任を認めてもらうべきであるというのであれば,甲案よりも丙案を支持する方に流れていくという理解をしています。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。   ほかに辞任についてはいかがでしょうか。 ○小野委員 弁護士会の意見は別の委員又は幹事の方に任せるとして,私からはやむを得ない事由というところで発言させていただきます。やむを得ないという言葉の解釈ですが,客観的に見て合理性・正当性が認められる,だからやむを得ないというような一般的な理解よりも,ときにより強く解釈されることもあるかと思います。現行の公益信託の受託者を新公益信託法上の新たな受託者に切り換える状況は現実的にあり得ると思いますが,仮に乙案とか,今沖野幹事がおっしゃったように,丙案でも同意が得られなくて行政庁の方に辞任の許可を求めるというような状況の場合,行政庁の判断基準が何か必要と思います。ではどういう表現,どういう状況がふさわしいかという点ですが。   やむを得ない事由というのは多様な解釈がありすぎるので,分かりやすい表現に置き換える方が望ましく,後の議論にも出てきますが,正当理由とかそういうような表現,やむを得ない事由を置き換える趣旨で,実質的には同じかもしれませんけれども,がふさわしいのではないかと思います。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○深山委員 辞任については(1)のところは丙案がよろしいと思います。やはり同意を得て辞任するということもあっていいと思うのですが,ただ同意が得られないときに辞任する道がなくなってしまうというのはよろしくないので,2項のルートも必要で,そうすると丙案ということだろうと思います。   (2)なのですが,丙案の場合にも57条1項を使った場合にどうかという前提で考えると,ここは「やむを得ない事由」を必要とするという必要もないのではないかと思います。つまり,2項の裁判所なり行政庁が判断をする場合には,何らかの事由,相当かどうかを判断するメルクマールが必要だろうと思うのです。それが「やむを得ない事由」というのが言葉として適切かどうかはやや躊躇するところですが,何がしかの事由が必要だろうと思うのです。しかし,1項の信託関係人の同意を得て辞任する場合には,もう同意をするところで辞任を認めるべきかどうかという事情を信託関係人が判断しているわけですので,そこで同意をしている場合に更にやむを得ない事由があるかどうかというようなことを重ねて考慮する必要はないだろうという気がします。そういう意味で(2)のアのところは乙案を支持したいと思います。   イのところ,辞任の手続については,ここは甲案を支持したいと思います。甲案と乙案の違いは,信託管理人のほかに委託者も同意権者として入れるかどうかということで,これは先ほど指摘した委託者にどういう地位を与えるかに関する考え方に関係するところですけれども,私は委託者にもこの場面での同意権という権限を与えてしかるべきではないかという意味で甲案を支持したいと思います。   なお,(注)のところでデフォルトルールということが書かれています。デフォルトルールにすること自体には異論がないのですけれども,デフォルトルールとした上で,委託者を例えば同意権者から外すというようなことはあっていいと思うのですが,甲案,乙案共通の信託管理人の同意権を外すというのは,これはよろしくないのではないかなと思います。そういう意味ではデフォルトルールといっても全く自由な任意規定ということではなくて,信託管理人の同意というのはある意味動かしがたいものとして,その意味において強行法規的な意味合いを持たせた方がよろしいという気がいたします。   最後,(3)のところは,アはやむを得ない事由でもいいのかなと思いつつ,なお,よりふさわしい事由の表現があれば検討するということを留保した上で一応の賛成はしたいと思います。   イの辞任手続については,これは裁判所の許可が相当と思いますので,乙案を支持したいと思います。この場面は,一読のときにも申し上げたかもしれませんけれども,一般的には,仮に(1)で丙案ということになった場合には,まずは信託関係人の同意を得て辞任するという道を受託者は選ぶのではないかと思われ,同意が得られないときに,それならばということで第三者機関に許可を求めるということになるような気がします。そういう意味では受託者の意向と他の信託関係人の意向が対立している場面が想定されますので,その場合にどちらの言っていることがもっともなのかということを判断する判断機関としては,行政庁よりも裁判所の方がふさわしい,そういった一定の紛争性のある事項についての判断をする機関としては裁判所がふさわしいと考えるからであります。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉谷委員 まず,(1)のところですが,乙案,賛成です。辞任は第三者機関の許可が必要であると考えます。甲案の同意による辞任は,新受託者が任命されなければ1年で信託が終了となるということを前提と考えますと,事実上信託の関係者によって公益信託を終了できるということになってしまいます。公益信託のパブリックな性格というのを考えますと,公益目的に利用できる信託財産があるにもかかわらず,信託を終了するということは原則許されるべきではないと考えます。   (2)はそうしますと,反対なので言わなくてもいいのですけれども,仮に採られる場合であれば,アはやむを得ない事由を必要とするべきだ。なぜなら,任務終了というのは限定されるべきだという考え方です。イの辞任手続については,委託者の同意権が特に必要とされるべきではないというところを他の場面でも申し上げておりますので,乙案ということになります。   (3)のところですけれども,アの受託者の辞任は,やはりやむを得ない事由とするです。ただし,後任の受託者がもう既に就任しているというような場合にやむを得ない事由を求めるということは必要ありませんので,その場合はやむを得ない事由がなくても辞任できるべきだと考えます。   受託者の辞任手続は新任手続とセットであると,そうでないと信託終了に結び付くということですので,甲案の行政庁の許可を必要とするになります。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 まず,やむを得ない事由があるならば,信託管理人の同意によって受託者が辞任することが認められてもよさそうにも思うのですね。ただ,そういうルールは本当に可能なのだろうかというのが,私にはよく分かりません。つまり,やむを得ない事由の存在という要件を付してしまうと,信託管理人又は委託者,私は信託管理人だけでよいと思いますが,辞任について同意をしたのだけれども,やむを得ない事由がなかったということになったときには,同意による辞任の効力が発生しないということになるのだろうと思うのですね。しかし,受託者の辞任といった局面において,後発的に,実はこの人は辞任はしていなくて,ずっと受託者として行為しなければいけなかったのだということになるというのは,少しおかしいのではないかという感じがします。   そうなりますと,(2)と言いますか甲案における同意の辞任というのは結局は認めようと思っても無理なのではないかという気がするのですね。もっとも,それでは,やむを得ない事由などというのを要件にしなければいいではないかとも思われますが,しかし,公益信託の運営において,委託者又は信託管理人が口を挟めるという制度にするときは,やはりそれを正当化するための理由が必要であり,したがって,やむを得ない事由というのがどうしても必要になってくるのではないかと思われます。そのように,2のアのところの要件を緩和できないことを前提にしますと,甲案の57条第1項ルートというのはやはりうまくいかないのではないかなという気がします。   そうしますと,乙案ということになるわけですけれども,乙案においては今度は裁判所が関与してくる。裁判所とは限りませんが,私は行政庁か裁判所かと言われると裁判所だと思いますけれども。裁判所が関与してくると,そういう公的な主体が関与してくるということになります,これは別にやむを得なくなくてもいいのだろうと思うのですね。やむを得ない事由というような,小野委員がおっしゃったように場合によっては非常に限定されて解釈されるような言葉でありますと,受託者が結構かわいそうなときもあるのではないかという気がします。  そうなりますと,事由を正当な理由とすることによって,57条2項ルートを裁判所の許可にかからしめるものとしてのみ認めるという辺りが妥当なのではないか。これが結論です。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○沖野幹事 今の道垣内委員の御趣旨も含めてなのですけれども,私自身は1については丙案がよろしいのではないかと思っておりまして,そうしたときに(2),(3)についてなのですけれども。確かに現在の信託法は,要するに関係者がみんなやめることに同意をしている場合ですので,よほど濫用的でない限りは認めていいのではないかと思われる反面,一方で私益の信託の場合は信託関係者がそれでよいならよいと言えますが,公益信託では信託管理人が善管注意義務を負ってチェックするとはいえ,やはり公益の体現ということがあるときに,全く要件がなくて大丈夫なのだろうか,特に吉谷委員がおっしゃったことは今までちょっと考えてなかったのですけれども,そのように恣意的な終了をもたらされるということの問題は確かにあるのかなと思っております。   それで,今の道垣内委員のお考えを伺って,後から実は要件がなかったと判断されたときに,受託者はなお受託者として行動すべきだったということは不適切で動かないのではないかということなのですけれども。そのときに既に新受託者が選任されて,新受託者がもう引き継いで行動しているというようなときには治癒されるというか,そういうのをセットにすることができるかということが一つです。   それから,外部の第三者機関の方なのですけれども,このやむを得ない事由というのはやや強すぎるというのは現行法についても思っておりまして,仮にここが正当な理由だとか合理的な事情だとかいうことに変える場合は,公益信託だけそうなるのだろうかと,一般の信託でもいいのではないかと思うものですから,どうなのでしょうかというのをもしよろしければ道垣内委員に御趣旨を説明していただければと思います。 ○中田部会長 道垣内委員,何かございますか。 ○道垣内委員 二つの質問があって,まず後半のことからお話をいたしますと。現行信託法57条2項は,たしかに,やむを得ない事由があるときに,裁判所が辞任を許可するということになっているわけですね,そこを正当な理由に変えるというのは信託法と不整合が生じるのではないか,私は第1回以来,そういった不整合を一番嫌う立場におりましたところ,お前こそ不整合ではないかと言われますと,一瞬たじろぐわけですが,57条2項というのは1項とセットなのですよ。それは,私益信託における受託者の辞任という私益に関わる事柄に関し,当事者の合意があればやめることができるとされているころ,どうしても合意が調達できないときにあえて裁判所が関わってくるというのが2項であり,それはやむを得ない事由ではないと駄目だろうというわけです。しかるに,仮に57条1項ルートというものを公益信託について閉鎖しますと,2項が正道と言いますか2項のルートだけになるわけであって,そうなったときに要件が変わるというのは,別段不整合があることにはならないだろうと後半のものについては思います。   前半のことについては,関係者全員がオーケーと言っているのだから辞任を認めるのが原則ではないかというふうに沖野幹事はおっしゃったのですが,それらの者がなぜ関係者なのかが問題です。私益信託であるならば,受託者が委託者と受益者の同意を得れば,所詮当該信託はその人たちだけの利益に関わることなので関係者全員がオーケーを出すと,それはやめればいいでしょうという話になるわけですけれども。公益信託はそうはならないのではないかと私は思います。 ○中田部会長 沖野幹事から何か。 ○沖野幹事 そうなのでというか,ですので,一定の事由を必要とした場合に,しかしそれが事後的にその事由を満たしていなかったために,関係当事者はみんなもう辞任を前提に動いているというような場合に,既に新受託者が選任されて,新受託者の下で信託事務処理が行われているような場合には治癒されるというような措置を組み合わせることは考えられないのかということです。 ○道垣内委員 自分で違法行為をして,自分で注意しているのですよね。それは治癒にはならないだろうと思います。つまり,受託者の交代をしたいなあ,でも,別にやむを得ない事由はないなあというときに,じゃあ,やむを得ない事由があるということにして辞任を認めて,それで新受託者を選任しましょうというふうに言えばそれでいいことになりませんか。それとも,新受託者の選任手続の問題についての私の理解の不十分さが前提にありますか。 ○中田部会長 その選任についてはまた後ほど3のところで御審議いただく予定で。 ○道垣内委員 裁判所が新受託者を選任するときに,そこにおいて旧受託者の辞任が要件の具備された正当なものであり,受託者がもはや存在しないのだということを,新受託者の選任手続において裁判所なり行政庁がスクリーニングをするということが沖野幹事の前提になっているわけでしょうか。いや,逆ですか。 ○沖野幹事 ごめんなさい,私が一つ飛ばしていたことが分かりました。 ○道垣内委員 いずれにせよ新受託者の選任手続のあり方に関係しますね。 ○沖野幹事 新受託者が選任されているなら,その段階で要件を充足しているかどうかがそこで判断されているはずではないかということですね。分かりました。ありがとうございます。 ○中田部会長 ということで,沖野幹事の出されたその二つの質問に対するお答えは一応理解を。 ○道垣内委員 立場の違いは明らかになったと。 ○中田部会長 はい,ということですね。   ほかに,辞任についてございますでしょうか。 ○棚橋幹事 辞任についてということだったのですが,第6と第7をまとめて簡単に意見を述べさせていただければと思います。受託者と信託管理人の辞任許可,解任,新選任の判断主体についての意見ということなのですけれども,一読と同様に甲案,つまり認定行政庁等が行う方が適切だと考えています。   付け加えることとしては,解任の話になるのですけれども,解任については,前回の部会資料によりますと,事後的に認定基準を満たさなくなった場合には解任事由となり得るという性質の認定基準もございましたので,行政庁が認定を行うという趣旨に照らせば,認定機関でない裁判所よりも行政庁等が行う方が適切だと考えています。   新選任については,やはりこれは入口の認定手続にほかならないものであるため,資格要件を認定基準として設けた趣旨に照らせば,公益信託の枠組みどおりに認定機関である行政庁等が行う方が適切であると考えております。 ○中田部会長 ありがとうございました。辞任について1の(3)もやはりこれは行政庁という結論だと承りましたが,これについて何かコメントがございますか。 ○棚橋幹事 一読で述べた理由に特に付け加えることはございません。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○深山委員 先ほど道垣内委員の指摘のあった1項ルートについて,問題点の指摘を頂いたのですけれども,確かに同意をしてその次の新受託者がいない状態になると公益の観点からよろしくない状態になる,場合によっては,あえてそうすることにより公益信託をつぶしてしまうというような言わば濫用的な使われ方をするのではないかという吉谷委員の御指摘もありました。そのようなこと自体は確かによろしくないのですが,ただ,常識的に考えれば,信託関係人がその受託者の辞任を同意するときというのは,当然その後のことも考えて,ではその後誰がやってくれるのですかという話になって,そこは辞任だけを判断して同意するということではなくて,当然その後の新受託者のことも視野に入れるのではないかと思います。そう思いましたので,単純に1項ルートもありではないかと思ったのですが,もしそこに懸念があるのだとすれば,同意で辞任する場合にはその後任の新受託者も併せて選任をすることを法律上義務付ければその懸念は払拭されるので,そういう修正をしてもいいのかなという気がいたします。   そういう修正も含めて1項ルートというのもあってしかるべきではないかという先ほどの意見を維持したいと思いますし,もちろん2項ルートも必要ですので,結論丙案ということには変わらないのですが,ちょっとそこも御検討いただければと思います。 ○中田部会長 辞任については大体よろしいでしょうか。(1)について,甲案を支持される御意見はありませんで,乙案かあるいは丙案ということでした。丙案の場合でも同意については何らかの制限なり新受託者の選任とセットにするというような制度にすべきではないかといった御意見を頂いたかと存じます。   (2)については,そもそも1項ルートを反対するという御意見もありましたし,1項ルートについても限定的ということですので,(2)はそれを前提とした判断になると思います。   (3)については,やむを得ない事由というのをそのまま用いることが信託法の本体との関係でどうかということも含めて,更に検討するということだと思います。裁判所か行政庁かについては両論があったと承りました。   その上で,今度は2の解任と3の新受託者の選任と併せて御意見いただきたいと思います。辞任と重なるところも多いかと思いますが,御意見を頂ければと存じます。   2の(1)は従来の甲,乙と内容も少し変わっているのかもしれませんけれども,それに加えて丙というのが新たに入っているというのが辞任の方と同じ構造になっているわけですが。 ○林幹事 辞任のところと似ている議論になるかもしれませんが,弁護士会の議論では,実質的には乙案,丙案のどちらかという認識の下で,乙案の意見もあったのですが,丙案の方が多かったと思います。合意のルートを残すべきとの意見については,特に解任の場合などは緊急性を要する場合もありますし,手続とると時間もかかるかもしれませんので,関係者が,ここでは委託者及び信託関係人ですけれども,合意している場合には解任を認めてよいという意見が強かったと思います。   ただ,その合意ルートの場合に解任事由についてどう考えるかですが,これも解任事由を求めるという意見もありますし,後の解任申立ての場合と比較するとなくてもいいという意見も,それぞれにあったところです。ただ,合意による場合に何らか解任事由が必要であるとしても,この「信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるとき」というとやや厳しいのではないのかという意見もありました。(注)にもあるように,正当な理由がある場合とか,一般法人法に倣うというような意見もありました。例えば,受託者としての信用不安とういう問題もあり得るわけで,著しい損害を与えたときには限られないのではないのか思います。   それから,3の第三者機関による場合につきましては,解任事由についてはおおむね賛成ですし,申立権者については委託者の関与については,委託者について両方のスタンスがあるので甲案,乙案両方あったところです。解任権限を有する第三者機関については,解任の場面なので裁判所の意見が多かったところです。   それから,新受託者の選任につきましては,これも両意見がありました。行政庁という意見もあったのですが,裁判所の方がなお強かったところです。ただし,いずれにしても新受託者が認定要件なりを充足しないといけない面はありますから,裁判所とする場合は,そことの関連性に配慮する必要があるというところです。   なお,新受託者の選任については,前提としては,例えば,特に自然人などを想定すると,信託行為の中に第2,第3の候補者が決められているときは,もちろんそういう者が選任されるべきと思います。この論点にはそういうものが前提にあるところと思います。 ○深山委員 解任の規律については,基本的には受託者の辞任の規律とおおむね重なるのだろうとは思いますが,若干違う部分もあるのかなと思います。具体的には,58条適用の可否の(1)のところについては,結論としてはここでも58条の1項ルートと4項ルートをそれぞれ認めてよいという意味で丙案を支持したいと思います。ここは辞任と結論としては同じです。   次の(2)なのですが,先ほど辞任のところでは,本人が辞任を希望して信託関係人も同意しているのであれば,その場合に「やむを得ない事由」まで更に要件を設ける必要はないのではないかという意見を申し上げましたが,解任は辞任と違って受託者本人はやめる気はない場面ですので,ここはやはり違うのだろうなと思います。現行法の58条1項は合意で解任できるということを単純に認めていますが,公益信託においては,一定の解任事由があるかないかを問わずに解任を認めるというのはやはりふさわしくないと思います。したがって,ここでは乙案ではなく,甲案的に考えるべきであり,一定の解任事由を観念すべきだと思うのです。しかしながら,甲案の「著しい損害を与えたことその他重要な事由があるとき」というのは狭すぎるという気がいたしますので,(注)にあるような「正当な理由」等々,もう少し広がりのある,いろいろな場面をカバーし得る事由の表現にした方がよろしいと思います。   (3)のところは,基本的にはここは辞任のところと同じように考えてよいと思うのですが,アの解任事由については,今(2)のところで申し上げたように,「著しい損害を与えたことその他重大な事由があるとき」というのはやや狭すぎ,やはり「正当な理由」みたいなもう少し広がりのある解任事由の方がよろしいかなと思います。   イは,委託者を含む甲案を支持する,ウのところは裁判所とする乙案を支持するというのは先ほどの辞任と同様であります。   違うところを申し上げましたけれども,やはり解任というのは受託者の意思に反している点がやはり辞任とは違うし,解任については解任させられる受託者が最終的には裁判所に訴訟を起こしてその地位の確認を求める等の争う余地を認める必要があるような気がします。そうなりますと,裁判所がその点を判断するに当たって一定の解任事由があるかないかということを判断することになると思いますので,何らかの解任事由というのはやはり必要なのかなということを申し上げたいと思います。 ○中田部会長 新受託者の選任についてもし御意見があれば。 ○深山委員 新受託者については,これはやや悩ましいなと思いつつも,乙案を支持したいと思います。行政庁なり外部機関に選任を申し立てるケースというのは,通常は信託管理人が新たな受託者を選任すればいいわけですが,それをしない場合に利害関係人が新受託者を決めてくれと選任申立てをするという場面なので,必ずしも従来の受託者がいなくなったときに常にここの規律に関わってくることではないと理解しています。利害関係人が新受託者の選任を申し立てるような場面を想定すると,裁判所が選任をするということを基本に考えるべきではないか。というのは最初の受託者が資格を失うケースとして,解任になる場合など既に裁判所が関与している場面というのも想定されるので,その連続性から言っても裁判所が次の受託者を選任するところにも関与するのが合理的かなということが理由です。   ただ,では行政庁は全く関与しなくていいのかということについて,やや懸念もあって,そういう意味では裁判所が判断をするのだけれども,行政庁に意見を聴取するというような要件を付加するということも検討してよいかなと考えているところであります。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○林幹事 先ほどの発言に若干補足させてください。解任の合意ルートの件ですけれども,これデフォルトルールとなっていて,そのデフォルトルールの意味が若干分かりにくいと思っています。条文に書いてあってそれをデフォルトというのであれば,加重してもいいし緩めてもいいと理解するのか。合意による解任の要件を信託行為で加重するのはよいとは思いますが,緩めるのもよいというところまで含意されているのか,分かりにくいという議論がありました。デフォルトルールとして条文で合意による解任ができると書いてあって,信託行為で合意ルートを採用しない場合は十分分かるのですが,それ以外の形で定めることは可能なのかという問題意識で,解任事由なりを緩めるのはやはりよくいであろうと思います。 ○中田部会長 今おっしゃったのは,(1)の甲案,丙案についての注記の部分でございますね。 ○林幹事 はい。 ○中田部会長 しかし,弁護士会としては甲案を支持されることはなくて,乙案又は丙案であったということですね。はい,分かりました。   ほかに。 ○吉谷委員 まず,選任の方からお話しますと,これは行政庁であるべきだと考えます。認定段階で受託者が誰かというのが非常に重要な要素として審査されると思われますので,選任におきましても行政庁による選任というのがあるべき姿であろうというふうにまず考えます。   そして,2の解任に戻りまして,まず(1)のところですが,これは乙案支持です。理由としましては,繰り返しでありますが,委託者及び信託関係人によって信託の終了まで導くことができるような制度というのはよろしくないのではないか。特に委託者がここに名を連ねるということにもちょっと違和感があるというところでございます。   ということですので,(2)につきましては,言う必要も本来ないのですが,仮に採るとしたら甲案になってくると思われます。   (3)につきましては,イの解任申立権者につきましては乙案の公益信託の信託管理人のみでよいと思われます。デフォルトルールということで結構かと思います。一方で,信託管理人のこの権限というのは制限不可であると思われます。   続きまして,ウにつきましては甲案の行政庁に賛成いたします。解任を裁判所に認めさせようということになりますと非常に手間ですしコストもかかるのではないかと思います。行政庁は受託者に対する調査権限がありますので,信託管理人が申し立てることによって解任の管理をできるというのがよろしいのではないかと思います。一読でも申し上げましたけれども,やはり職権による解任にまで行政庁には権限があった方がよいのではないかと思われます。というのは,内部ガバナンスが機能せずに,信託管理人による解任申立てがなされない場合というのがあり得ますので,その対策が必要なのではないかと思います。職権解任ができないと行政庁としては認定取消ししかできないことになりますので,私どもは認定取消しや信託終了になるとも考えておりますけれども,いずれにしても措置としては過剰になってしまうのではないかと思います。認定取消しを防止するための処分としての職権解任というのがあり得べしかなと思いました。   ただ,少数意見であるということを踏まえますと,少なくとも行政庁が辞任や解任を勧告したりするなどの何らかの代替手段は用意されていてしかるべきではないかと思われます。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○棚橋幹事 3の新受託者の選任について,部会資料39の22ページの第3項の最終行の辺りにも書かれているのですけれども,裁判所が選任するとした場合に行政庁を関与させるなどの方法も採ることも考えられるという記載ですとか行政庁の意見を聴取するという御意見もありましたけれども,行政庁が関与する必要があるということなのであれば,関与ではなくて,行政庁が判断するのが一番迅速ですし直截ではないかと考えております。   信託行為に新受託者に関する定めがあるときは,認定段階で行政庁が判断しているという状況でもありますので,やはりそういったことを前提にすると,この場面でも行政庁が判断するのが適切ではないかということを付け加えさせていただきます。 ○吉谷委員 ちょっと更に補足させていただきますと,先ほど深山委員から御発言もありましたけれども,私どもは少なくとも受託者の辞任と新任というのはセットであるべきだと考えますし,解任と選任もできればセットで行うように努めた方がいいとは思います。ただ,辞任と解任というのはやはり性格がかなり違っていると考えます。その信託法59条4項のところで,括弧書きに57条1項規定によるものに限って受託者の任務が終了した場合には前受託者は新受託者が信託事務の処理をすることができるに至るまで引き続き受託者としての権利義務を有するとなっておりますので,辞任で,しかもこの57条1項の合意によるときは,新受託者が存するようになるまでは前受託者というのは引き続き任務を行う前提であると考えております。   ですので,かわいそうなのでやめさせてあげたらというのは分かるのですけれども,やはり飽くまでセットで行われるべきものであって,これが合意による辞任が単独でもしできてしまうとすると,やはりその意味というのは信託を終了させたいということぐらいしか出てこないのではないかなと思う次第です。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○沖野幹事 度々すみません,ちょっと細かな点ではあるのですが,確認を含めて申し上げたいのですけれども。(1)については,辞任と解任とは事情が違うとは思うのですが,しかし甲案のこの1項ルートのみというのが一層あり得るのだろうかという疑問は持っております。それは先ほどのお話の確認かもしれません。そのほか2点なのですけれども,(2)と(3)において,それから(2)において甲案を採る場合,特にこれは深山委員がおっしゃったように,受託者も同意していないという,そうでなければ辞任の方で対応できるはずですから,ただ,同意ルートを認めなければまた話は全然違ってくるのですけれども。そうだとすると,公益信託の場合での事由が必要なのではないのかなと考えた場合に,(2)と(3)で事由が違ってしかるべきなのかどうか,その受託者の解任を,受託者自身は自分がなお事務遂行ができると思っているにもかかわらず解任を相当とする実体要件というのが,この関係者合意ルートと第三者機関ルートとの間で,緩和されること,あるいは逆に厳しくなるなどで差があることがあり得るのだろうかというのはやや疑問に思っておりまして,ここは一致すべきではないのかと思います。公益信託に特殊なということであれば,仮に(2)で(注)のような考え方を採るならば,(3)もそれに併せることにはならないだろうかというのが一つ目の疑問です。   二つ目は,(3)のイの解任申立権者というところなのですけれども,特に甲案による場合に,及びなのか又はなのかということでして,この第三者機関による解任ルートが関係者の合意による解任ルートと並べて用意されるときには,両者が一致して委託者と信託管理人が両方ともに解任相当と考えて申立てをするならば,もう1項ルートでいけるのではないかと思われますので,両者で意見が食い違っている場合が又はルートで用意されるべきではないか。それに対して(1)で乙案を採るときには,関係者の同意ルートというのがないので,受託者の解任を要求するという場合には両者一致のときでないと駄目だという考え方があり得ると思いますし,あるいは又はということもあり得るのかもしれないのですが。ここをもう少し場合分けをする必要があるのではないかと考えます。 ○中田部会長 ありがとうございました。組合せはいろいろあるわけですけれども,今整理していただいたようなことだと思います。   ほかにありますでしょうか。事務局の方から何かございますか。 ○中辻幹事 沖野幹事におかれては,御指摘をありがとうございました。部会資料39の19ページ(3)の解任申立権者の甲案には「委託者及び信託管理人」と記載しておりますが,信託法58条4項には「委託者又は受益者」という書き方がされており,後ろの受益者は公益信託では信託管理人に変わるわけですが,部会資料でも「又は」という言葉を使った方が正確であったと思います。失礼しました。 ○中田部会長 本日予定されたところは更に2項目ございますが,既に時間がきておりますので,本日の審議はこの程度にさせていただきます。   最後に,次回の議事日程等について事務当局から説明してもらいます。 ○中辻幹事 次回は,「公益信託法の見直しに関する補充的な検討(3)」と題する資料を用意しまして,公益信託の終了等の論点について御審議いただくことを予定しております。   次回の日程は,平成29年4月11日(火曜日),午後1時半から午後5時半までを予定しております。場所は法務省ですが,会議室は未定ですので,追って御連絡いたします。 ○中田部会長 それでは,本日の審議はこれで終了といたします。   本日も熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。 -了-

法制審議会信託法部会 第38回会議 議事録




法制審議会信託法部会
第38回会議 議事録







第1 日 時  平成29年2月21日(火)   自 午後1時31分
                        至 午後5時37分

第2 場 所  東京地方検察庁会議室

第3 議 題    公益信託法の見直しに関する論点の補充的な検討

第4 議 事 (次のとおり)

議        事
○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第38回会議を開会いたします。本日は御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  本日は,能見委員,岡田幹事,渕幹事,松下幹事が御欠席です。
  本日の会議資料の確認などを事務当局からお願いいたします。
○中辻幹事 お手元の資料について確認いただければと存じます。前回,部会資料37「公益信託法の見直しに関する論点の検討(6)」を配布しております。また,今回,新たに配布する資料として部会資料38「公益信託法の見直しに関する論点の補充的な検討(1)」を事前に送付させていただきました。更に当日配布資料として参考資料5「公益信託の受託者の範囲に関する意見書」を配布しております。これは2月17日付けで中田部会長及び金田法務大臣宛てに日弁連から提出されたものです。
  以上の資料について,もしお手元にない方がいらっしゃいましたらお申し付けください。よろしいでしょうか。
  それから,前回の最後に深山委員からの御質問にお答えしましたとおり,理想的には第二読会はこの2月から4月までの3回の会議を充て,本日は公益信託の認定,3月は公益信託の監督・ガバナンス,4月は公益信託の終了などの論点を補充的に議論していただくことを予定しております。飽くまで予定ではございますが,第一読会よりも密度が濃くなるために,少しテンポを速めていくことが必要であることが予想されますので,どうぞ御協力をお願いいたします。
○中田部会長 本日は前回,積み残しになりました部会資料37の「第5 その他の論点」の残りの部分を御審議いただいた後,部会資料38について御審議いただく予定です。具体的には途中休憩の前までに部会資料38の「第3 新たな公益信託の基本的枠組み」まで御審議いただき,3時半頃をめどに休憩を入れることを予定しております。その後,第4と第5を御審議いただきたいと思っております。
  それでは,早速ですが,本日の審議に入ります。
  まず,部会資料37の「第5 その他の論点」について御審議いただきます。事務当局の説明は前回,既にされていますので,最初から意見交換に入ります。まず,「2 公益信託の名称」について御発言をお願いいたします。
○吉谷委員 提案については賛成なのですけれども,1点,気になっているところがありますので,質問と意見を申し上げたいと思います。
  (1)のところで,公益信託には,その名称中に公益信託という文字を用いなければならないという規律を設けるという記載がございます。これは信託法でいいますと,218条の限定責任信託のところで名称を使うということとよく似た条項が書いてあるんだと思いました。限定責任信託の場合は,登記制度というものがございますので,登記するためにも名称が必要だということにもなりますし,それからすると,公益信託の登記制度を設けるということが前提になっているのだろうかということも想像できるものですから,そういう趣旨なのでしょうかというのが質問でございます。もし,仮にそうであるとすると,私どもといたしましては公益信託に登記制度まで設ける必要はないのではないのかなというのが意見でございます。
○中辻幹事 御質問にお答えします。限定責任信託の名称の保護や登記の規定については,その受託者と取引関係に入る第三者の予見可能性を確保し,第三者に不測の損害を与えることを防止するためのものであり,その登記は株式会社や一般社団法人の登記と同じ性質を有すると説明されています。一方,部会資料37で提案している公益信託の名称の保護は,公益信託自体の社会的信用を保つことを目的とするもので,限定責任信託の名称の保護とはその趣旨を異にします。したがって,限定責任信託にそのまま倣い,公益信託にも登記制度を設けることが前提となるとは考えておりません。
  もっとも,部会資料37の31ページに記載したとおり,法に反して公益信託の名称を使用した者に罰金などの制裁を課す場合には,公益信託の存在を公示する登記がされていることが必要であるという考え方もあり得るように思います。この点につきましては,皆様から御意見を頂いた上で,更に検討を深めたいと考えております。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。特にございませんようでしたら,登記については更に御検討いただくということで先に進めさせていただきます。
  次に,「3 新法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い」について御意見をお願いいたします。
○吉谷委員 これにつきましては乙案に賛成でございます。既存の公益信託は特段の問題なく運営されておりまして,新法の公益信託として認定を新たに受けることによる事務負荷のために信託財産が減少するとか,公益信託の担い手である受託者のリソースが割かれるとか,あるいは公益信託の普及の妨げになるとか,信託が終了するとかいうようなことが起きるようだと益はないということになりますので,乙案でお願いしたいと考えております。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○長谷川幹事 先ほどの吉谷委員の御意見と同じでございますけれども,乙案ということでお願いできればと考えております。理由も同じでございます。
○平川委員 甲案に賛成いたします。乙案の場合には長期にわたって異種の公益信託が併存することになり,社会的,行政的にも混乱する要因になると思います。一方,公益法人の移行の場合と異なり,既存の公益信託の内容は公益法人のように多様ではなく,おおむね同一であり,しかもプロである信託銀行が受託者であることから,一斉に新制度に移行するとしても,事務負担として過大なものとはならないと思われます。新法による公益法人制度への移行時において相当の混乱を生じましたけれども,一定の猶予期間2年等をもって徐々に新法へ移行することにより,混乱を回避できること,また,現在の公益信託は受託者が全て信託銀行であり,現行法下で何の問題も生じていないこと,また,新法への移行も一定の期間内に約束されていることなどから,実務的にも可能であると考えます。
○林幹事 私も甲案に賛成です。既存の公益信託がどの程度の期間のものを想定して,あるいは存続しているのかによると思いますが,数十年先にまで,現行法と新たな公益信託法の両方の制度を併存させて,将来公益信託に関わる人たちに二重の手間を負担させるというのは,よろしくないと考えます。
  先ほどは,乙案に賛成の意見もあって,事務負担を根拠とされるところでした。それはそれとして理解はできるのですが,それは具体的にどのような事務内容になるか,それをどう見極めるかによるかと思います。また,先ほどもありましたけれども,移行期間をどのようにとるかという問題もあると思います。現行の公益信託のうち,10年以上続くものもあれば,10年未満に終わることが予想されるものもそれなりにあるはずです。移行期間は5年が適当なのか,10年が適当なのか分かりませんが,移行期間中に終了するものについては移行しなくてもいいわけですから,そうしていけば移行手続をすべきものというのも絞られてくるはずであり,事務負担というのも軽減することができる,そういった工夫は十分可能ではないのかと思います。
○中田部会長 今,それぞれお二人ずつ意見が出ましたけれども,ほかにいかがでしょうか。
○新井委員 私は甲案に賛成したいと思います。既存の公益信託を受託している信託銀行の立場から見ると,もちろん,乙案の方が望ましい案ということですけれども,既存の主務官庁の許可制を廃止して,新しい認定機関がスーパーバイズするという方式に移り,それで,乙案を採ると既存の主務官庁の許可制と,新しいスーパーバイズの制度が両方並存するということになりますが,それが,新しい公益信託の改革の趣旨に本当に沿うのかという疑念があります。公益信託の数は既存のもので500ぐらいということで,公益法人の改革のときの数と比べても少ないので,信託銀行にとっては大変だとは思いますけれども,改革するのであれば,ここで思い切って甲案でいくという方がよろしいのではないかと考えます。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
  それでは,今,頂きました御意見を基に,また,検討を進めたいと存じます。
○道垣内委員 1つ,遡って大変恐縮なんですけれども,先ほどの名称の問題につきまして,罰則と登記の関係について中辻幹事が若干触れられたんですが,(2)と(3)はかなり性格の違う話だと思います。(3)は保護対象となる他の公益信託が登記をしていなければ駄目である,という規律もあり得ますが,(2)はおよそ公益信託ではないものが公益信託という名称を使ってはいけないという話ですので,別にこれは登記とは関係ないはずです。一言,付け加えておきたいと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。
  それでは,部会資料38に入ります。ここからいわゆる第二読会に入ることになります。
  まず,「第1 公益信託の目的」について御審議いただきたいと思います。事務当局から説明してもらいます。
○舘野関係官 では,御説明いたします。
  まず,「第1 公益信託法の目的」について御説明いたします。本文では,公益信託法は,公益信託事務を適正に処理し得る公益信託を認定する制度を設けるとともに,公益信託事務の適正な処理を確保するための措置等を定めることにより,公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的とするものとすることでどうかとの提案をしております。
  今回の公益信託法の改正に際しては,公益法人,NPO法人等,公益信託と類似の法制度との比較を行った上で,各制度のメリットを活かした複数の選択肢が提供されるようにするべきと考えられます。そして,それらの法制度に目的規定が設けられているのと同様に,新たな公益信託法にも公益の増進に資することを目的とする旨の目的規定を設けることには意義があると考えられるため,このような提案をしております。
○中田部会長 それでは,ただ今説明のありました部分につきまして御審議いただきます。御自由に御発言をお願いいたします。
○深山委員 公益信託法に目的規定を設けるということには賛成いたします。その上で,どのような表現ぶりの規定が望ましいかということですが,締めくくりの言葉として公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的とするという点も異論はないんですが,民間による公益の増進,あるいは民間による公益活動の促進とか,そういうことが推奨される,望まれるという趣旨をもう少し表現すべきではないかなという気がします。
  参考にされている公益法人認定法においても,民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業の実施が公益の増進のために重要となっていることに鑑み,ということがうたわれていますし,あるいはNPO法の方でも,ボランティア活動を始めとする市民が行う重要な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し,というようなことがうたわれております。これらのような公益目的の法人とは別のメニューとして,民間による公益活動の推進を図ろうとしているんだというメッセージが伝わるような目的規定にしていただきたいと考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 私も深山委員と同じくですが,目的を法の最初に規定するということに基本的に賛成いたします。公益法人認定法や特定非営利活動促進法第1条に規定するような民間公益活動を促進するための制度を拡充することを目的として,公益信託の適正な設定と運営を確保する措置を定めることに意義があると思います。飽くまで公益活動が国家独占の事業であり,民間が行うときは認可や許可が必要という意味ではなく,主体は民間で行う公益活動の促進のためであるという目的を冒頭でうたうことに意味があると思います。
○小野委員 目的規定はもちろん賛成なんですけれども,目的規定は法律の性格を決める大事なポイントです。公益法人認定法の場合には一般社団法人法がありますが,公益信託法の場合には信託法という実定法があると言っても,公益信託法の中では一気通貫のように全てを賄えるような法律である必要があり,目的規定もそのような内容とすることが必要と思います。例としては,たまたま,すぐに思い浮かぶ例ですが,電子記録債権法があり,そこでは実定法と取締法規,認定手続が規定されており,公益信託法も同様な立て付けになると思います。実定法と取締法規その他手続等がこの法律だけで完結するような法律を目指してこれまでも議論してきたと思います。という観点からすると,信託事務の適正というあくまで事務の適正だけにポイントを置いたようなものではなく,全体像がこの法律だけで分かるようなものに目的規定をしていただければと思います。
○道垣内委員 結論から言えば,目的規定を置く必要はないと思います。私は皆さんがこれまでおっしゃったことに完全には賛成できませんし,そのような中,目的についてコンセンサスが得られるのかは疑問です。
○吉谷委員 御提案自体には賛成なんですけれども,コメントといたしましては,公益信託を認定する制度であるとか,公益信託事務の適正な処理を確保すると記載して,それはそのとおりであるのですけれども,改めて公益認定の申請者は受託者でありまして,監督を受ける主体は受託者であるということなど,受託者が公益信託の中心となるということを改めて強調しておきたいと思います。実施する主体が誰であるとかいうのは,非常に極めて重要な要素であると思います。
  加えて,改正の基本的な方向性の話としては税制の優遇措置を視野に入れつつ,公益信託の認定と税制の認定が手続として一元化されることということ,あと,簡素な仕組みにするという以前から書かれていたことについては,引き続き基本的な方向性としてあるべきだと考えております。公益法人認定法では,58条に所要の税制上の措置を講ずるというような記載もありますので,同様の規定を設けることが期待されると考えております。
○中田部会長 ただ今の御発言は目的の規定の中に,今,おっしゃったようなことを盛り込むという御趣旨でしょうか。それとも,目的は事務局の提案でよいのだけれども,方向として,今,おっしゃったようなことを十分考慮すべきであるというのと,どちらでしょうか。
○吉谷委員 目的の規定としては,このような形で結構なんですけれども,方向性としては今のような趣旨で考えるべきではないかという主張です。
○中田部会長 分かりました。
○道垣内委員 目的規定を置かないというのが私の根本的な考え方ではありますが,多分,それは大方の賛同を得られないと思いますので,目的規定を置くとしたらどうするのかということについて,一言,申し上げたいと思います。今,吉谷委員がおっしゃったことは極めて重要な話だと思います。というのは,資料では,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律と同じような言葉遣いがされているのですが,その法律では,「公益を適正に処理し得る」という言葉の後にある名詞は「公益法人」というものであり,それは法主体です。法主体だからこそ「適正に処理し得る」という連帯修飾句の意味上の主語になり得るのですね。これに対して,公益信託には法人格がありませんから,同じ構造の文にはなり得ないと思うのです。そして,そのような文法上の問題にセンシティブにならないまま,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律と同じ言葉遣いをしますと,それは,ある一定の価値判断,例えば実質的法主体を認めるとか,そういうふうなところにもつながってきかねないという気がいたします。私は吉谷委員がおっしゃったことを十分踏まえた上で,全く異なる書き方をすべきではないかと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 私どもの方で目的のところで特に考えておりましたのは,公益の増進及び活力ある社会の実現とか,そういったところに中心を置いて考えておりましたので,道垣内委員の御指摘のようなポイントにつきましては,私どもの方では検討していなかったということを申し上げておきたいと思います。
○小幡委員 目的といいますか,趣旨でもよいのかもしれないと思いますが,何らかは置くと思いますが,公益法人の方は公益法人という法人についての法律なので,確かに道垣内委員がおっしゃるように,こちらはそうではなく,正に目的とするところが公益信託というものなので,そこに違いがありますから,必ずしも引き写す必要はないと思うので,公益信託というものの健全な発展を目的とするために,この法律があるということを明確にするのでよいのではないかと思います。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
○深山委員 今,小幡委員なり,道垣内委員が指摘されたこと自体はごもっともで,私が申し上げたかったもう少しメッセージをということも,それに決して矛盾するものではなくて,確かに法主体が法人とは違いますから,それに応じた文章に改める必要はあると思います。しかし,大事なことは,表現もさることながら,その考え方だと思ったので,そこを申し上げました。表現については必ずしも法人の法律に準ずるのはかえってよろしくないということについては異論はございません。
○中田部会長 よろしいでしょうか。公益法人認定法との関係,民間ということを入れるかどうかということ,法主体という面で違うのではないかということなど御指摘いただきました。あるいは全然違うような書き方を更に考えるべきではないかということで,これもまた,事務局の方で頭をひねっていただくことになると思いますけれども,御意見を踏まえまして更に検討を続けたいと存じます。
  続きまして,「第2 公益信託の定義等」について御審議いただきたいと思います。事務当局から説明してもらいます。
○舘野関係官 では,続いて「第2 公益信託の定義等」について御説明いたします。
  まず,「1 公益信託の定義」について御説明いたします。本文では,公益信託は,信託法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託のうち,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益を目的とするものとして,新たな認定主体の認定を受けたものとすることでどうかとの提案をしております。
  まず,公益信託法における公益の例示の在り方について,現在の公益信託法における公益の例示には,祭祀,宗教が入っているのに対し,公益法人認定法では,これらが入っていないという違いがありますが,信託法の分野では宗教法人法に相当する特別法が存在しないこと等に鑑みますと,現在の公益信託法の表現を変更するまでの必要性は見当たりません。また,公益信託を受益者の定めのない信託のうちの公益を目的とするものと定義する現在の立法技術上の取扱いを変更し,公益信託の定義を変更するまでの必要性も現時点では見当たらないことから,このような提案をしております。
  次に,「2 公益信託の目的」について御説明いたします。本文では,公益信託の目的は,本部会資料第2の「1 公益信託の定義」に例示した公益に関する具体的な種類の信託事務を行うものであって,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければならないとすることでどうかとの提案をしております。
  公益の概念は,社会情勢の変化とともにその具体的内容は変化し得るものですが,公益法人認定法は,同法第2条第4号別表第1号から第22号に掲げる以外の種類の事業を政令で定めることが可能となるように,別表第23号の規定を設けています。第一読会では,公益法人認定法の形式よりもオープンな形を採るべきとの御意見もありましたが,公益法人認定法の制定からそれほど長期間が経過したわけではない現時点では,公益信託においても公益法人認定法と同様の公益性判断の仕組みを採用することが相当と考え,このような提案をしております。
  最後に,「3 公益信託法第2条第1項の削除」について御説明いたします。本文では,公益信託法第2条第1項は削除するものとすることでどうかとの提案をしております。
  第一読会において,主務官庁による許可制の廃止については異論はありませんでした。また,公益信託の認定を受けていない公益を目的とする目的信託が有効であることを示す規律を定めるべきである旨の御意見がありましたが,その意図は公益信託法第2条第1項の削除により,明確に表現できることなどから,このような提案をしております。
○中田部会長 ただ今説明のありました部分について御審議いただきたいと思います。三つ,関係はしているのですけれども,便宜,1と2を併せて御意見を頂戴したいと存じます。その後,3について伺います。いかがでしょうか。
○新井委員 公益信託と目的信託の関係について発言したいと思います。4ページに2というのがありまして,目的信託のうち公益信託の認定を受けたものを公益信託と定義すべきであるとの意見が多数を占めたが,公益信託を目的信託の一類型と位置付けるべきではないという意見もあった。全くこれは正しい客観的な表現で,これでよろしいと思います。賛成しないという意見は私の意見であり,第二読会でも一応,発言して議事録にとどめておくべきだと思いますので,中辻幹事の「テンポを速めて議事進行を」という趣旨には反するかもしれませんけれども,できるだけ簡潔に意見を述べさせていただきたいと思います。
  私は,公益信託は目的信託の一類型ではないと考えています。
  まず,1番目に構造上の差異があります。公益信託というのは委託者が財産を公益のために出捐して,以後,原則的には委託者は権限を行使しないという制度です。それに対して目的信託は,委託者が財産を私益,共益,公益のために出捐して,以後も信託法260条により,極めて強い権限を行使するようになっています。私自身は,果たして目的信託というのはこれで信託と言えるのかという疑問すら持っているわけです。
  2番目として受益者の不存在です。公益信託は不特定多数の者に経済的利益を付与する仕組みです。その者を受益者というか,受給権者というかは別にして,一旦,経済的利益を受けることが決定され,それが不履行となれば裁判所への訴えが可能です。私はこれ自体を受益債権と考えてもよいと考えています。これに対して目的信託は,証券化,流動化を促進することを主目的とした仕組みであり,意図的に受益者を否定しています。公益信託,目的信託ともに受益者は不存在といっても,その在り方は全く異なっているように思われます。
  3番目に比較法上の異質性です。公益信託は公益のみを目的としていますが,我が国の目的信託は,私益,共益,公益を目的としています。比較法的には目的信託とは私益目的信託,すなわち,プライベート・パーパス・トラストが一般的であって,我が国の目的信託のような全ての目的をカバーする極めて特異なものは比較法的には存在しません。長い歴史を有する公益信託を証券化,流動化のためにごく最近,誕生した目的信託の中に位置付けることは妥当ではないように思われます。
  もちろん,私も現行法上の目的信託を廃止せよと主張するものではありません。飽くまでも公益信託を目的信託の中に位置付けることについて反対しています。そう申し上げた上で,私もこの会議体の一員ですので,結果にはもちろん素直に従いたいと思っております。
  5ページについて質問があります。第1行目ですけれども,宗教法人法に相当する特別法が信託法の分野では存在しないということの意味が必ずしもよく理解できないのですが,これを御説明いただきたいと思います。それから,2行目の宗教学の研究者への助成金の支給,これは学術に当たるのではないでしょうか。それから,3点目ですけれども,重要文化財に指定された仏像の保存については文化財保護法の規定によるわけでして,恐らく信託設定というのはまず難しいのではないか,ですから,事例としては妥当ではないように思われるのですが,この3点について質問したいと思います。
○中田部会長 いかがでしょうか。
○中辻幹事 御質問にお答えします。部会資料5ページの1行目につきましては,信託と法人を対比した場合に,法人では,基本法である民法の特別法として公益法人認定法や宗教法人法が存在する一方,信託では,基本法である信託法の特別法として公益信託法はあるものの,「宗教信託法」は存在しません。その違いを表現したかったという趣旨でございます。
  2行目,宗教学の研究者への助成金の支給は,現在の公益信託の中に宗教史学の研究及び図書の刊行等を活動内容とし,人文科学の研究助成を目的とする実例があり,それを参考としたもので,御指摘のとおり,学術を目的とするものに当たると思います。
  3点目の重要文化財に指定された仏像の保存を目的とする公益信託の設定の可能性については貴重な御指摘をありがとうございました。再度,検討したいと思います。
○小野委員 先ほどの新井委員の御意見について逐一コメントをすると時間が掛かるので,第一読会の私のコメントを参照していただきたいと思います。私からの質問かつコメントですが,今までの部会でも目的信託を幾つか類型化すべきではないかと,新井委員の発言に関連付ければ,現行の目的信託の規定を変えるという発想もあるのではないかと議論されてきたと思います。そうすれば,新井委員も目的信託の一部ということを認めていただけるのではないかと思います。公益信託にならないときは目的信託になるということは,目的信託そのものについても,公益的または準公益的目的信託という類型を認めるという観点から見直すべきという議論につながり,これまでの部会でも議論されてきたと思います。そこで質問ですが,この点はまた違う回で議論するのか,本日の部会での議論なのでしょうか。いずれにしても是非,その辺ももう一度,検討していただきたいと思います。
  特にといいますか,ポイントの一つとしては資産5,000万円以上の法人というところと,ここの場合での議論ではないかもしれませんけれども,法人課税信託であるという辺りも,目的信託の形を変えていくことによって,課税庁の判断も変わってくる可能性もあるかと思います。
  それから,公益の内容について,従前のままの表現を用いるのでいいのではないかという議論なんですが,以前も議論したように,基本的人権のようなものをどこかで無理に読み取ることになるのかもしれませんけれども,何か一生懸命,担当官庁の方を説得して読み取っていただくというような作業をするよりも,特に公益法人認定法の方でいろいろ苦労した結果,うまく入りましたという議論がかつてありましたが,もう一回,そういう苦労を重ねる必要もなくて,この数年間の経過を踏まえて,これまでの規定ぶりを否定するのではなくて,更に発展形としてのものであってもよろしいのではないかなと思います。この他,バックアップチームでの議論では,基本的人権関連や,政治的あるいは社会的な活動についても読み取れないのではないかというような議論がありました。
  次に,不特定多数の議論もしてよろしいですか。不特定多数,これも第一読会のときにいろいろ私も含めて皆さん発言されて,解釈の柔軟性うんぬんという議論もありましたけれども,まず,実定法なものですから,不特定多数という言葉の重みというのはなかなか大きいものがあります。特に特定されないものはこの世にないと思うので,不特定という言葉をどの範囲に考えるのかというのは,かなり裁量の余地があるかと思います。そのような趣旨で樋口委員も何度か発言されたかと思います。
  地域とか,一つの集団がどこまでの集団であれば不特定になるのか。いずれにしても最後は特定がされることになります。ですから,大胆な議論をすれば多数というものを本当の意味での多数,決して二人という意味ではなくて,ある程度の多数で母体を捉えれば,不特定という概念はほとんど後退していくのではないかというような議論もございました。
  なお,後の方の議論で特別利益の供与というのがありますけれども,見方によっては不特定多数でなければいけないというのは,ある特定のグループ,特定の人に対して利益を供与するために公益信託制度を用いるのは,よろしくないという一つの常識的な発想からきているのであれば,そちらとの代替的な議論ではないかと,こういうような意見も昨日のバックアップ会議で出ました。ということで,不特定多数の論点は,さらりと今まで使われてきた用語だからということで,議論されそうな雰囲気はなきにしもあらずかと思うんですけれども,公益法人における経験等を踏まえて,その現状を反映されたような条文化を是非,目指していただければと思います。
○中田部会長 御質問が含まれておりましたので,それも含めてお答えいただけますでしょうか。
○中辻幹事 御質問にお答えします。信託法附則3項で,目的信託の受託者の資格について定めがありますが,附則3項には,公益を目的とするものを除くと書かれており,公益を目的とする信託の受託者の資格等については,信託法ではなく公益信託法に委ねられているものと私は理解しております。
  旧信託法の下では,受益者の定めのない信託については,主務官庁の許可を受けた公益信託のみが有効であるとする学説が多かったのですが,新信託法は公益信託以外の目的信託が先ほど述べた受託者の資格を満たすことなどの条件付きで有効とされています。その上で,公益信託をどのように定義付けるかということで,旧信託法の時代よりも考え込むべき要素は多くなっており,公益信託の定義を行政庁等の認定を受けた公益目的の目的信託とするならば,その認定を受けていない公益目的の目的信託や,公益目的以外の目的信託との整理についても検討する必要があると事務局としても考えております。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
○平川委員 2の1につきましては,公益信託を目的信託の一類型とすることに反対いたします。それと,公益の定義から,祭祀,宗教をあえて削除する必要はないとする考え方には賛成いたします。2については賛成いたします。
  1の理由なんですけれども,公益信託を目的信託という世の中でほとんど行われていない抽象的な類型をベースにすることは,一般の人の理解も得られないと考えます。その結果,公益信託の拡大や増大につながらない可能性が懸念されます。新しい公益信託は,法律の規定としては目的信託の一類型の例外を設ける必要が多々あると思われますが,そもそも,目的信託には一般の信託の例外規定として,信託法第261条1項に40もの読替規定が置かれています。目的信託の一類型と位置付けた場合には,立法技術的には必然的に,それをベースにすることになり,目的信託の読替規定の中から公益信託に適用があるものと,読替規定のそのまた読替規定を置くというような例外の例外という規定ぶりになることが予想されます。このような形は複雑,難解かつ煩雑であって,有識者の理解も得られないと思われます。
  公益信託を設定して,世の中の役に立とうとする人が素直に分かる形式の立法の公益信託が望ましく,旧信託法時代の公益信託の規定ぶり,すなわち,正面から公益信託について規定する立法方法を採るべきと考えます。先ほど小野委員がおっしゃいました全体像がこの法律で分かるような法律にすべきであると,その意味は違う意味でおっしゃったのかもしれませんが,同様の思想がここにも当てはまると思います。
  2につきましては賛成いたしまして,公益法人認定法別表に掲げる公益目的事業の種類と統一することで,公益事業の定義に混乱が生じませんし,また,具体的に列挙することで,公益目的の判断において認定基準が明確化されるメリットがあると思います。
○林幹事 弁護士会の議論としては,定義についてはおおむねこれで賛成ですし,祭祀,宗教を追加することや,受益者の定めのない信託の一つと位置付けることについて特に反対はなかったところです。
  2の公益信託の目的のところですが,まず,少なくとも不特定多数ということについて,表現はともかく,現行の公益信託だと公益性の認定が厳しいことから,公益法人のように柔軟にすべきだという問題意識があって,今回,それを前提に書かれているということについては,前向きに評価したいと思いますし,その点は今後も必ず維持されるべきと考えています。
  あとは,(注1)に関してですが,公益法人認定法2条第4号の別表の列挙事由に関しては,まずは1から22まであって,それ以外のものも検討してはどうかと申し上げたのですが,なかなか,これといったものが出てきにくいところもあったというのが正直なところです。弁護士会の中の議論では,少なくとも人権擁護とか,貧困対策とか,犯罪者の更生とかを加えるべきではないかという意見もありました。これらは1号から22号のうちに書かれているとの考えもあるかもしれませんが,小野委員も言ったとおり,もう少し具体的に,あるいははっきり書くというか,現代的な表現ないしはストレートな表現に,表現を変えてはどうかという意味においても,こういうものがあってもいいのではないかとの意見がありました。
  あとは,23号についてですが,前回,例示列挙かどうかというような形でも議論したかと思いますが,例示列挙というかはさておき,23号のような形式をそのまま残すのかという問題だと思います。この点,補足説明にあるような御趣旨は十分理解した上でですが,政令にてということであれば,若干,ハードルが高いと思いますので,政令がなくてもその他の新たな公益活動のためのバスケット条項的なものがある形式の方がよいと引き続き考えております。
○深山委員 公益信託と目的信託の関係について,既にいろいろ議論がなされているところですけれども,私は一読会のときも積極的には余りどちらがいいということは申し上げなかったと記憶しています。というのは,技術的にはどちらも可能なのかなと。つまり,信託法を公益信託と私益信託の全体の法律という位置付けをして,その中に私益信託の規定も公益信託も置くようなイメージで,法律として一つにするかどうかは別にして,体系として,そういう体系的な整理をして,目的信託の中に公益信託を位置付けるというのも,一つの整理の仕方ではあるかなと思っています。
  しかし,新井委員も御指摘のように,かなり公益信託というのは私益信託との違いもあるので,無理にそこに押し込めるのではなくて,むしろ,全く独立した形にするというのも体系の作り方としてはあるのかなという意味では,どちらもありかなと思っております。ただ,そういう意味では,ここは議論が今日の議論も含めて分かれているところなので,もう少し慎重に位置付けるべきかなと思います。その関係で,今は余り使われていない,ほとんど使われていない私益信託としての目的信託ですけれども,こちらの方にももう少し目を向けて,目的信託自体の規律についても見直すべきところを見直すということも含めて,この議論をしたらと思います。
  それから,2の不特定多数のところについて,既に小野委員から指摘はありましたけれども,不特定多数という言葉は,あちこちの法律でも出てきたりするわけです。受益者ないし受給者が決まっていないという意味で不特定という面があるわけですが,その限度ではもちろん不特定ということにはなるんですが,一般的にいう不特定多数というのは,もうちょっと違った意味合いで使われていると思います。果たして不特定かつ多数というものを最後に「ねばならない」というようなマストな言い方で表現してしまうと,かなり窮屈になるのではないかという気がします。
  地域であれ,何であれ,どこまで範囲を限定すると特定することになるのかどうか,例えば先ほどの例で宗教にしても,宗教全般ならいいんでしょうけれども,何々教と宗教を特定すると,それは不特定にならないのかとか,いろいろ考えると,ここで余り厳しいハードルを課すということについては,制度として使いにくくなることを懸念いたします。もちろん,解釈なり,適用のところで調整が可能だという考え方もあるのでしょうけれども,ここは特定の人なり団体に利益がいく制度として使われないというところが重要であって,その裏返しで,だから不特定多数でなければいけないかというと,それは違うのではないかなと思います。多数だけにするかとか,あるいは不特定又は多数にするかとか,表現としてはいろいろあるのでしょうけれども,不特定かつ多数というのは絞りすぎのような気がいたします。
○小幡委員 この目的のところに,法律の中で不特定かつ多数の者の利益と書くということですか。そうすると,不特定かつ多数の者の利益の意義についてですが,現実には公益認定法の方でも「不特定」は非常に広がっているというか,緩くなっています。機会として不特定の人に機会が与えられていれば,あるグループの人の塊であってもよいということに実際はなっていますので,これを余り明確に書きすぎるといかがかと思うのです。例えば,ガイドラインで明らかにするといっても,そのガイドラインを作るかというのは以前も何か議論があったような気がしますので分かりませんが,いずれにせよ,そういう公益についての一つの考え方として,不特定かつ多数というのがあるにすぎないのではないかと思いますので,余り確定的に書くと狭くなりすぎるのではないかという感じがいたします。
○佐藤関係官 目的信託と公益信託との関係について,平川委員と新井委員の御意見の趣旨を確認させていただきたいのですが,公益信託を目的信託の一類型とされるということについては反対と伺っているところではございますけれども,新たな公益信託制度において,受益者の定めのある信託を許容するという趣旨を含んでいるかどうかを念のために確認させていただきたいのですが
○平川委員 私はそれは含んでおりません。
○新井委員 私も同じ意見です。
○佐藤関係官 ありがとうございました。
○中田部会長 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 1,2につきましては,特段の異論なく提案に賛成であったということでお伝えしておきます。
○中田部会長 今まで頂いた御意見について何かございますでしょうか。
○中辻幹事 不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するという文言は,公益法人認定法で既に使われているものを参考にして,それに沿い提案しているものです。この文言については,公益法人認定法が制定されたときに,それが公益性の認定に直結するものであることから,例えば一人の人間国宝に支援をし,それが回り回って不特定かつ多数の人の利益になるのであれば,それは公益性を有すると言えるのではないかということを含めて大議論がされています。そして,現在の公益法人の認定ガイドラインでも,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するか否かの事実認定に当たっての留意点について触れられておりますが,それは公益信託でも参考になりますし,実際の公益信託の認定でも柔軟に判断されることが望ましいと考えています。
○中田部会長 1と2については大体よろしいでしょうか。
○小野委員 先ほど目的信託も含めて議論していいと言っていただいたので,発言させていただきます。第一読会でも何度も発言しているのでポイントだけ申し上げますと,先ほどの新井委員がおっしゃったこととも関連するのかもしれませんけれども,純粋私益的なよくペット信託とか言われているような目的信託は別として,公益的目的信託というんですかね,公益認定は取らない目的信託又は準公益とでもいうのでしょうか,公益とまでは言えない,その中間的なものについて,新井委員からは,委託者が監督するというところがポイントだとおっしゃっていましたけれども,純私益的なものの場合は委託者が監督しても当たり前かもしれませんけれども,それ以外のものになると,委託者は別に監督したいと思っているわけではなくて,制度の立て付けとして委託者が監督ということになっているのであって,公益信託法と同じように信託管理人を置いて委託者の監督を外すような形の目的信託というのも十分あり得ると思います。ということで,是非,目的信託を幾つかの類型に分けていただいて,目的信託に落ちる場合の目的信託は広い意味では目的信託,受益者がいないという意味ではそのとおりかもしれませんけれども,実質まで含めて目的信託の一類型といったときには,準公益的で私益ではないような目的信託に落ちていく形を制度として検討していただければと思います。
  新井委員がおっしゃったように,委託者の監督制度もないような目的信託であれば,そういう意味での目的信託の一類型として公益信託を取り上げれば,新井委員も特に反対はないかと思いますし,税法上の扱いも目的信託になった途端に法人課税信託になってしまうという扱いから開放されるのではないのかと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
  公益信託と目的信託の取扱いについては,第一読会以来,議論が重ねられてまいりまして,本日もまた,それを深めていただいたと存じます。ただ,だんだん,中間試案に向けて詰めていく必要がございますので,今日の御議論も含めて更に検討を続けていただきます。なお,目的信託の在り方についても御意見を今,頂きました。この部会でどういう形で具体化できるのかということは,また,別途,検討が必要かと存じますけれども,貴重な御意見を頂いたと存じます。それから,別表の記載の在り方あるいは不特定かつ多数という文言についてどうするかということについても,御意見を踏まえて更に検討を続けたいと存じます。
  この第2については,あと,「3 公益信託法第2条第1項の削除」という点がございますが,これはいかがでございましょうか。
○平川委員 削除することに賛成いたします。ただし,公益信託認定を受けていない信託は,たとえ目的が公益に資すると判断されるものであっても,公益という名称を用いることはできないという前回の公益信託の名称使用の話とつながるんですけれども,それについての規制が必要であると考えます。認定を受けずに公益目的信託であるとして,公益を標榜することにより,金銭を募集,査収するなどの悪用が考えられます。したがって,無効とするまでの必要はないけれども,何らかの名称使用規制に加え,公益信託の認定を受けていない信託であるということを明確にするとか,そういう積極的な誤認混同を防ぐような方策が採られるべきであると思います。
  前回の公益信託の名称のところで,戻ってしまうんですけれども,2の(3)に何人も不正の目的を持って他の公益信託であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならないとありますけれども,不正の目的を持ってという行為がなくても,うっかり使ったというものであったとしても,公益という文言を使ってはならないとすべきだと思います。
○中田部会長 ほかにこの3についていかがでしょうか。
  3については特に御異論はないと承りました。その上で,名称について先ほどの議論に付加する形で更に御意見を頂戴いたしました。
  それでは,続きまして「第3 新たな公益信託の基本的枠組み」について御審議いただきたいと思います。事務当局から説明してもらいます。
○舘野関係官 では,御説明いたします。「第3 新たな公益信託の基本的枠組み」について御説明いたします。
  まず,「1 公益信託事務の範囲」について御説明いたします。本文では,公益信託の受託者が行うことができる公益信託事務は,当該公益信託の目的の達成のために(直接又は間接的に)必要な信託事務とすることでどうかとの提案をしております。
  新たな公益信託の信託事務の範囲の検討に当たっては,従来の助成金や奨学金の支給を目的とするような公益信託,すなわち,助成型の公益信託は今後も当然に認められることを前提とした上で,美術館や学生寮の運営を目的とするような公益信託,すなわち,事業型の公益信託を可能とすることに,一定の社会的な需要が見込めることを考慮すべきであると考えられます。一方で,公益法人制度では公益法人が公益目的事業以外のいわゆる収益事業等を行うことが可能となっておりますが,収益事業等の実施が公益目的事業に悪影響を及ぼさないようにするために,公益法人の認定基準において複数の規律が設けられています。
  公益信託の受託者が公益法人における収益事業等に相当する事業を行うことを認めた場合,これらの認定基準を公益信託にも導入しなければならない可能性があり,軽量・軽装備という公益信託のメリットが大きく損なわれるおそれもあることから,公益信託事務の範囲は,その目的達成のために直接又は間接的に必要なものに限定することが相当と考え,このような提案をしております。
  その場合に,公益信託事務として具体的に許容される信託事務はどこまでかということをイメージしていただくために,具体的に許容される公益信託事務の範囲についてとして,部会資料の11ページに表を掲載しております。これと同じような表を第一読会でも提示させていただきましたが,助成型の公益信託と事業型の公益信託との違いも考慮して,再度,整理したものが今回の表でございます。
  個別に見ていきますと,左の欄,助成型の公益信託における医学研究者への助成金支給は,公益信託の目的達成のために直接必要な信託事務であり,表①に該当することは明らかです。その右の欄,事業型の公益信託に関しては,美術館の運営費用に充てるための美術品の売却を以前の部会資料では,表③当該公益信託の目的達成のための必要性を欠く信託事務に位置付けておりましたが,美術品の売却の目的が美術品の入替えのためか,運営費用の捻出のためかは受託者の主観に属し,客観的に判断することが困難であることや美術館の運営費用に充てるために,当初,信託財産であった美術品を売却することは,当該公益目的の達成に間接的に必要とされる業務であることからすると,表③よりも②に位置付ける方が適切であると考えられることから,表③から②へと位置付けを変更するなどの修正を加えております。
  本部会資料13頁のオにまとめを記載しておりますが,表①と②に位置付けた行為は,公益信託事務として許容されるべきであるもの,表③に位置付けた行為は,公益信託事務として許容されるべきでないものということになります。そして,表②と③のいずれに該当するかについては,個別具体的な事情に応じて認定行政庁等が有識者委員会の意見を踏まえて,柔軟に判断することが望ましいと考えられます。
  次に,「2 公益信託の信託財産の範囲」について御説明いたします。本文では,公益信託の信託財産は,金銭に限定しないものとすることでどうかとの提案をしております。
  公益信託の信託財産として金銭や,これまで運用対象として税法上,認められてきた国債,地方債等が拠出されることを否定する理由はないと考えられます。その上で,株式などの有価証券や不動産,知的財産権等の財産を公益信託に拠出することが認められるか否かが問題となりますが,適切な課税関係を維持し得るのであれば,それらの財産を公益信託の信託財産とすることを禁止する必要はないと考えられることから,このような提案をしております。
  次に,「3 公益信託の信託財産の運用」について御説明いたします。本文では,甲案として公益信託の信託財産の運用は,預金又は貯金,国債,地方債,特別の法律により法人の発行する債券又は貸付信託の受益権の取得,合同運用信託の信託に限られるとする,乙案として甲案のような規律は設けないものとするとの提案をしております。
  税法上,公益信託の運用方法が預貯金,国債等に限定されている趣旨は,信託財産を利用した継続的な安定収入の確保を図るものであり,公益信託の認定を受けた信託が税制優遇を受けることを可能にすることも視野に入れた場合には,運用方法を現行税法のように限定することが相当であるとの考え方があり得ることから,これを甲案として提案しております。
  一方で,仮に公益信託の信託財産がリスクの高い投資商品により運用されるとしても,受託者又は受託者からの委託を受けた第三者が運用に関する専門的な知見を有するのであれば,適正な運用により信託財産の増加を図ることが期待でき,甲案のような規律を設けることは相当でないという考え方があり得ることから,これを乙案として提案しております。乙案を採る場合であっても,委託者が甲案のような運用対象の限定を望み,それが信託契約の内容とされているのであれば,受託者は当然にそれに拘束されるものと考えられます。
  次に,「4 公益信託の受託者の資格」について御説明いたします。
  本文では,甲案として受託者の資格として,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する法人であることを必要とする,乙案として受託者の資格として,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する者(法人又は自然人)であることを必要とする,丙案として受託者の資格として,自然人が公益信託の受託者となる場合には,公益信託の信託財産の適切な管理・運用をなし得る能力を有する法人と共同で受託者となることを必要とし,上記法人と共同で公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有することを必要とするとの提案をしております。
  新たな公益信託においては,美術館や学生寮の運営のような事業型の公益信託も想定されるところ,そのような公益信託の受託者としては信託会社よりも,元々,それに類似する事業を行っている法人の方が受託者として想定しやすいため,受託者となり得る法人についてはより広がりを持って許容していくことが相当であると考えられます。他方,事業型の公益信託であれば,多くの場合は受託者がそれなりの人員や組織を有していることがその運営の前提となりますし,自然の受託者には,死亡,病気,老衰等,受託者としての能力が減退する等のリスクが存在します。そうすると,公益信託の受託者として自然人を許容することは相当でなく,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する法人であることを必要とすべきであるとの考えがあり得ることから,これを甲案として提案しております。
  甲案を採用した場合,信託会社以外に受託者となることを許容すべき法人として,営利法人を除外する必要はないと考えられます。また,乙案や丙案を採った場合であっても同様のことが言えますが,税法や信託業法との関係も視野に入れながら,引き続き受託者の資格について検討する必要があると考えられます。
  第2に,公益信託の受託者として重要なのは,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力であること,また,公益信託の受託者が固有財産を有していなくとも,委託者から信託財産の拠出を受ければ公益信託事務を遂行することは可能であり,一定の経理能力を有していれば法人でなくとも受託者として認めてよいと言えることなどからすると,法人でも自然人でも公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する者であれば,受託者として認めてよいとの考え方があり得ることから,これを乙案として提案しております。
  第3に,自然人が公益信託の受託者となる場合には,公益信託の信託財産の適切な管理・運用をなし得る能力を有する法人と共同で受託者となることを必要とし,その法人と共同で公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有することを必要とするべきであるとの考え方があり得ることから,これを丙案として提案しております。
  これらの受託者の資格を満たさない場合の効果については,本部会資料22ページから23ページに記載しております。仮に公益信託の認定時に受託者がその資格を満たしていない場合には,その信託は公益信託の認定を受けることができないようにすることが相当であると考えられます。また,公益信託の認定後に受託者がその資格を満たさなくなった場合には,受託者の任務を終了させることとし,当該公益信託の認定の取消しをしないことが相当であると考えられます。
○中田部会長 ただ今説明のありました部分につきまして御審議をお願いいたしますが,4項目がございますけれども,三つに分けてお願いいたします。1の「公益信託事務の範囲」,その次に2と3,信託財産についてのテーマ,そして4と,この三つに分けてお願いしたいと思います。まず,「1 公益信託事務の範囲」について御意見をお願いします。
○小野委員 まず,1のポイントなんですが,直接又は間接的に必要な信託事務ということで例示が書かれていますけれども,仮に美術館の事業型を考えた場合,建物として美術館がある場合と美術品だけがある場合とか,あと,今はネットの時代ですからネットでのそれの展示とか,また,一般的に美術館は美術品を貸し出すことによって収益を得るという構造もあり,物理的な形での間接の事例が書いてありますが,今の時代だと物理的というのは一つの要素であるけれども,もっと広がりがいろいろあるのではないのかと思います。受託者に対しては違反行為に対して単なる債務不履行にとどまらない非常に厳しいサンクションが予定されているようであり,一概にそのように考えること自体問題と思いますが,それ故,受託者としては恐らく行動としてはかなり保守的になってしまうのではないかと思います。という意味において,必要な信託事務という言葉が表現としても法律用語としても強い,普通だと付随,関連とか,何かもうちょっと広がりを持った形でいろいろとほかの法律でも議論されていますけれども,もうちょっと広がりを持った方がよろしいと思います。
  受託者の場合は,善管注意義務と忠実義務を負っていますから,ある意味では,その枠を超えることはできないので,それをあえて更に狭める趣旨なのか,確認する趣旨なのか,どちらとも,又は全然違った趣旨なのかともとれますけれども,ある意味では,善管注意義務と忠実義務の範囲内で行動して,自ら責任をとって行動するということぐらいでよろしいのではないかと思います。いずれにしても,間接的という表現が入っているにしても,必要な信託事務ということで例示の中で物理的な枠を決めているというのは,いろいろな意味で狭すぎると思います。
○神田委員 3点,質問させていただきたいと思います。
 1点目は,11ページの表の読み方なのですけれども,美術館の運営と学生寮の運営の欄の読み方ですけれども,例えば二つ例を挙げますと,一時的な金銭の借入れというのは美術館の運営ではできるけれども,学生寮の運営では駄目という御趣旨なのか,それから,もう一つ例は,例えばミュージアムショップ,カフェの営業と(注)が付いていますけれども,美術館の中では一定の(注)を勘案した上でいいけれども,例えば留学生向けのショップとかカフェを置くことは駄目と読むのか,あるいは例示なのかということです。私は個人的には一時的な金銭の借入れも,必要であれば,その範囲では学生寮の運営の場合でもいいように思うのですけれども,表の読み方についての質問です。
  それから,2点目は,後で申し上げることかもしれませんが,関係しますので発言させていただきますけれども,1と3の関係です。つまり,3にいう運用は1に含まれないという整理のようにも見えるのですけれども,例えば美術館を運営するのに半分以上の信託財産を国債や合同運用信託に運用しているというのはどうかと思いまして,つまり,3の方も待機資金ですとか,例えば美術品を購入するまでの資金ですとか,1の表現を使わせていただければ,当該公益信託の目的の達成のために必要あるいは有益な範囲で運用をということになるのではないかと思うものですから,1と3は関係するような気がするということです。
  3点目の御質問は,一層,3なのですが,1にも関係しますので,ここでさせていただきます。1には(注2)があるんですけれども,(注2)の「また」です。つまり,違反した場合です。今,小野委員からも若干,指摘があったところかもしれませんが,1の範囲を逸脱した行為をした場合は,その行為の効力には影響がないと読めるのですけれども,それは信託財産に有効に帰属するという御趣旨で(注2)は書かれているかと思うのですけれども,3の方の(注2)については,3の運用規制というかに違反した場合の効果とより広く言っておきますけれども,どうなるのか。1と同じ整理でいいのか,別の整理なのかというのが3点目の質問です。3点目の質問は3のところで申し上げるべきかもしれませんけれども,1とも関係するので,ここで発言させていただきました。
○中田部会長 ありがとうございました。3に関するところは,また,3のところでも御議論いただきますが,1に関連するということで3点について御説明をお願いいたします。
○中辻幹事 まず,1点目ですけれども,部会資料11ページの美術館の運営の欄で,一時的な金銭の借入れや,美術館内でのミュージアムショップ,カフェの営業を取り上げました。後者の店の営業は美術館の運営に関連するものであることから,隣の留学生向け学生寮の運営の欄には入れておりませんが,学生寮の運営でも一時的な金銭の借入れは当然想定されますし,学生寮内における売店の営業も想定されますので,それらをあえて否定しようという意図は全くございません。この2つの欄は,パラレルに捉えていただければと存じます。
  次に,2点目ですけれども,美術館の運営を目的とする公益信託であるにもかかわらず半分以上の信託財産を運用に回すようなことは神田委員の御指摘のとおり,認められるべきではないと事務局としても考えています。そのような運用は,1の表の③公益信託の目的達成のための必要性を欠く信託事務の中に位置付けられると言えるので,1と3が関係するというのも御指摘のとおりですが,今回の資料を作成した時点では,検討のための整理としては1と3で場面を分けた方が分かりやすいのではないかと考えておりました。なお,先ほど「必要な」という表現に関連して小野委員から御指摘がありましたけれども,信託法3条や26条で信託の目的の達成のために必要な行為というふうな文言が使われておりまして,1の「(直接又は間接的に)必要な信託事務」は,それを意識して提案したものです。
  最後,1の(注2)で,公益信託事務の範囲を逸脱した受託者の権限外行為は,受託者の解任事由になり得ますし,公益信託の認定の任意的取消事由に該当するほか,受託者が信託財産のためにする意思を有していた場合で相手方に悪意又は重過失があるときは信託法27条による取消しの対象になると思います。また,3の(注2)でも,信託行為に甲案の運用方法が定められていることが公益信託の認定基準になり,認定後に受託者が違反した場合には受託者の解任事由となり得ますし,公益信託の認定の任意的取消事由に該当するほか,受託者の権限外行為は相手方に悪意又は重過失があるときは信託法27条による取消しの対象となるように思います。ただし,3の「公益信託の信託財産の運用」では,受託者とその取引の相手方がともに信託財産のためにする意思を有していることが基本的に想定されるのに対し,1の公益信託事務の範囲を逸脱した場合は,法人の目的を逸脱した場合とパラレルには論じられないですし,結局は個別具体の事案によることになると思いますけれども,受託者が信託財産のためにする意思を有していないとして,3の運用の場面よりは契約の効果が信託財産に及ばないことが多くなるのではないかと考えます。
○中田部会長 神田委員,よろしいでしょうか。
○神田委員 はい。
○小幡委員 11ページの表に戻りますが,公益認定の方で収益事業か,公益目的事業かという分類をいつもやっていますと,②,③の辺りというのはミュージアムショップなどで,これを収益事業と分類してきているところも結構あります,いろいろなグッズの販売について。学生寮なども自動販売機,コインランドリーを置くというのを収益事業と分類してきたものもあります。申請主義なものですから法人の方が収益事業と言ってきている場合,それで,公益目的事業比率の問題もないのであれば,それで通るという場合が結構ございまして,そうすると,10ページのところの記述なのですが,10ページの最後から5行目ぐらい,事業型の公益信託についても公益法人の収益事業等に該当しない限度で許容することにより,一定のうんぬんとありますが,公益法人の収益事業というのは,今,申し上げましたように広めに収益と言ってきているところも多いので,余りそれと関連付ける必要はないと思っております。ここでは公益信託の目的の達成に直接又は間接的に必要ということになると,割と広くなるのかという感じが私はしております。
  そこで,理解が難しいのは,本来の例えば美術館の運営の費用に充てるために,③のようなことをするという場合はどうかということでして,美術館にショップを作り,そこに来る客が美術館を見るかどうかは分かりませんが,たくさんの人が集まってお金をそこで落としてくださって,美術館の運営費用にそれを充てるというのは,ここでいう目的の達成に必要な信託事務と見てよいのかどうかということです。公益法人の収益事業の場合は,そのような収益でもうけたお金を公益事業に使うという形になりますので,公益法人のことは余り考えなくてよいと思うので,ここで言っている公益信託の目的の達成に必要なというのは,資金的に充てるということが目的の達成に必要ということに入れてよいという理解でよいのかということです。
  もしそうであれば,かなり広くなるという感じがしますが,しかし,③のところが違うということであると,例えば美術館の建物での結婚式,ビジネス会議等への賃貸,これは公益法人でも明らかに収益事業ですが,これはできないと,この中でも仕切る考え方ですかね。本来は,目的の達成に必要なというのは,そういう意味では,結構,緩くもなり得ると思いますが,実際上は最初のところで,ここまでやるということについては,やってよいかどうかを審査し,次に出てくる認定のところでオーケーになればよいという,そういう理解ですかね。お金をその目的に回せればよいのかという話と,それから,私は学生寮の自動販売機などは②でよいと思うのですが,結構,公益認定の方では収益になっているのもあるものですから,余りそこと関連付けないほうがよいかという点です。
○中田部会長 今の点について何かございますか。
○中辻幹事 御指摘をありがとうございます。③については,考え方として二通りあり,結局,美術館の運営のために収益事業で稼いだお金が使われるのであれば,③も広く認めるべきであるという考え方は当然あり得ると思います。ただし,事務局としては②と③は差別化を図っておりまして,③まで広く認めることにすると,収益事業を公益信託の受託者が行うことが前提となり,そうすると,今まで助成型の信託事務に限定することで公益信託の認定基準や監督の仕組みもシンプルにされてきたというメリットが失われる可能性があると考え,美術館の運営のために③の収益事業で稼いだお金が使われるとしても,美術品の展示により文化芸術の普及向上に寄与するという目的から離れた行為である③は公益信託事務として受託者が行うことが許容されるものの範囲に入れない方が良いのではないかという発想で,この部会資料は作っております。
○山本委員 目的達成のために必要な信託事務というような基準でよいのかどうか,仮によいとしても,その意味はどのようなものかという点について少し発言をさせていただければと思います。
 目的に対して,手段が例えばA,B,C,Dとあるとします。Aをしないと目的は絶対に達成できない場合,あれなくば,これなしという不可欠条件にあたるとしますと,Aが目的達成のために必要な信託事務であるということは明らかでしょう。恐らく,これが①ではないかと思います。
  しかし,必要不可欠ではないけれども,AとBでも目的が達成できる。しかし,AとCでも目的が達成できるという場合のBやCも,恐らく,目的達成のために必要な信託事務に入っているのでしょう。これが間接的といわれているものと重なっているかどうか,よく分からないのですが,恐らく,これらは入っているのだろうと思います。
 Dは,してもしなくても目的達成に役に立たない,関係しないというものだとしますと,このようなものは,目的達成のために必要な信託事務に当たらないとされているのではないかと思いました。
  ただ,これは,必要という概念ではなくて,目的達成に役に立たない,関係ない,適合しないということではないかと思います。それを必要か,必要でないかという言葉で呼び表すことが適切なのかどうかは,私にはよく分かりません。必要なという表現が広い意味でも,狭い意味でも使われる場合がありますので,これでカバーしているように思いますが,この辺りに何か判断のぶれが生じる原因があるのではないかと思います。ここで考えられているのは,目的達成のためにこれは無関係である,不適合であるということであって,そのような判断が行われているのではないかと思いますが,いかがでしょうか。
○中辻幹事 御指摘をありがとうございます。ここは事務局として悩んだ点でして,必要という言葉で全てが言い尽くされるかといえば,そうではないようにも感じます。部会資料を作成している段階では,沖野幹事が以前おっしゃられていた必要性,相当性,関連性などの諸般の事情を考慮し,山本委員の言葉を借りれば公益信託としての適合性があるか否かを判断するというようなことも考えておりました。御指摘を踏まえ,信託目的の達成のために必要という言葉が適当なのかどうかも含めて,再度,検討したいと思います。
○道垣内委員 再検討されるのは結構なのですが,信託法26条も「目的の達成のために必要な行為」という言葉を用いているわけですので,再検討の結果,公益信託法は書き方を変えるということは避けていただきたいと思います。信託法26条に関しても,必要性に照らして受託者の権限範囲か否かを判断する場合には,ある種の外形的な判断をせざるを得ず,そして,それは会社法の場合もそう解されていると理解しています。したがって,ここだけ動かしますと,ほかのところへも波及度合いが強いと考えられますので,余り触らないようにしていただければと個人的には思います。
○深山委員 必要性という言葉なんですけれども,山本委員の整理の中で,私が一番微妙だと考えるのは,必要不可欠な行為ではないけれども,非常に有益,有用な行為という場合です。山本委員がいうDではなくて。Dは関係ない,余り益にならないということですから,それはむしろ外していいと思うんです。一番悩ましいのは,絶対にやらなければならないというわけではないけれども,やればそれなりに公益目的に資するというようなもの,これは結構,実はあるんだと思うわけです。そのときに,これは間接的に必要だという範疇に入るんだという解釈は十分成り立つと思います。
  ですから,言葉としては間接的に必要というところで賄われるんだというのであれば,それでもいいのかもしれませんが,しかし,読みようによっては,やらなくても目的は達成するのだから必要な行為にはならないとして,その行為をすることが否定されるとなると,これは非常に使いにくくなる。これは先ほど道垣内委員から御指摘のあった26条でも同様に問題になることで,ここでいう必要というのはどのくらいの広がりを持つかという,もうちょっと一般的な解釈論なのかもしれません。一番気になるのは,必要不可欠ではないけれども,やれば有用という部分を取り込むためにどう表現したらいいかというところだと思いますので,そこはこの辺のことを踏まえて御検討いただければと思います。
○樋口委員 今のお話と関連しないことだけを言おうと思っていましたけれども,一つだけ,関連することを申し上げます。信託法26条に受託者の,これは一般の信託ですけれども,信託目的の達成のために必要な行為をする権限,これはもちろん,日本の話としては私が口を出すことではないけれども,英米では現在のすう勢は,必要な権限というのはできるだけ広く,専門家としての判断で何でもできるというのがまず原則です。例えば,借入れなんかはしてくれるなといえば,今までは借入れなんかをするというのはリスクのあることだから,簡単にはできないという話だったのが,何も書いていなければ借入れもできるというような話になっているので,一般信託法のところで必要な権限というのは限定的な句ではないです,英米では少なくとも。日本でこれを何か限定的に解する必要があるのかどうかは,日本の問題だと思いますけれども,何だか日本にだけ特有の議論の仕方であるという感じがするということです。
  その上で3点ですけれども,一つは小幡委員から公益法人の世界とそう軌を一にして考えるとかえって誤るよと言われたのに,こういうのがまず問題点としてですが,11ページの,つまり,私は小幡委員と違って公益法人の世界をよく知らないんです。だから,思うんだと思うんですけれども,11ページにこうやって具体例,正に例なので,これに限定されるわけではないけれども,いろいろ考えていただいて,それぞれについて,①,②,③,山本委員のAだかBだかとかいうようなことまで含めて,具体的にこうやって出してくれたのはすごく有り難いんですけれども,逆に今度の公益信託というのはこのぐらいの話なのかというので,この事例の提示が,非常に限定的に物を考えるような効果もありそうな気がするんです。
  それで,公益法人と公益信託の関係というのは,なかなか,これが一番の難題だと思うんですけれども,それは,しかし,日本だけではないので,例えばアメリカだって法人組織もあれば信託組織もあって,しかし,アメリカの場合は区別を全然しないという話になっているとしたら,公益法人の世界で認められているような想定される信託事務というのは,この三つだけではなくて本当はどんどんあっていいのか,いやいや,今回は少し助成タイプだけではないので,ちょっと広げるというだけなのだから,この程度という話なのかということ,それは明らかにした方がいいと思うんです,どっちなのかという。
  だから,公益法人でやっているのが,私は公益法人の世界は知らないけれども,もっといろいろなことをやっているんだと思うんですよ。それは信託という形だってやれますよという話なのか,いやいや,助成型プラス美術館と学生寮ぐらいの話なのかという,そういうことを明らかにしないと,まず,信託事務の範囲という点では抽象的にいろいろ言っているよりは,そういうことをはっきりさせてもらいたいなという,しかし,人に要求するのは簡単でいいようなことではあるんですけれども,それが第1点です。
  二つ目は,9ページの「第3 新たな公益信託の基本的枠組み」で,公益信託事務の範囲というのが書いてあります。信託事務という,でも,これに公益を付けているから,こうやって範囲を限定しようという話になるんだと思うんですけれども,神田委員がおっしゃった後で出てくる15ページの3のところの「公益信託の信託財産の運用」も,正に信託事務なんです。それで,公益の受託者がやっている正に公益信託事務であって,こっちが公益信託事務で,こっちの運用は別ですよという,まず,そこの分け方が極めて日本的なような気がします。だって,信託事務の中に入っているに決まっている,信託財産の運用は信託法の中では。何でここだけ,こうして分けて議論しているのかなというのが二つ目。
  三つ目は10ページ目の,つまり,収益事業は公益信託の方はやらないことにしようねということで,大方の賛成は得られているというんですけれども,どうしてかというのがよく考えるとよく分からないんです。それは第1番目の問題と絡んでくるんですけれども,公益法人だったらいいよ,公益信託は軽量・軽装備のメリットを維持するためだからと言われると,何かそんな気もしないではないけれども,例えば留学生向けの学生寮というのをずっときちんと維持していくためには,一定の収益を上げる必要があるわけです。
  これは例えば示された事例でいえば,学生寮の1階部分をどうしたわけか分からないけれども,印刷会社に貸していますよね,11ページの③。私なんかは印刷会社に貸すということは考えないで,まず,コンビニを入れます。この建物にだって入っているのですもの。それで,そこからの賃貸料で2階,3階の寮の維持というのがきちんとできるのだったら,何でも構わないような気もするんですけれども,それは明らかな収益事業でしょう。でも,公益法人には認めて公益信託はそれはやらないというのは,だから,第1の信託をどこまで広げるかという,公益信託を広げるかという問題と直接の裏表の問題かもしれないんですけれども,収益事業はやらせないよということの正当化をもう少し私が分かるような形で言っていただくと有り難い。
○中田部会長 この資料の作り方と,それから,ここでの御審議の頂き方というのは便宜的なものでして,最終的にどういう規律になるかというのはまた別です。論点ができるだけ出やすいように分けているというだけのことですので,最終的な形はまた変わってくると思います。それから,11ページの表は,これも皆様,御理解いただいていますとおり,具体例を挙げてイメージを明確にするとともに,最終的には何らの基準を設定する際に,どういう基準がいいのかを考えていただくための資料だと思っております。これは飽くまでも例ということです。その上で,3点について御質問がありましたが,いかがでしょうか。
○中辻幹事 まず,1点目について,今回の公益信託法の見直しでは,主務官庁制を廃止するほかに,公益信託の認定を受けることによる税制優遇も見据えた検討が望ましいと考えており,基本的に現在税制優遇の対象となっている助成型を大事にしながら,それよりも一定の広がりを持った公益信託を,美術館の運営とか,留学生向け学生寮の運営とかというそれ自体が公益性を有する事業型の公益信託として構想しているわけです。もっとも,将来的に,樋口委員から御紹介がありました英米のように公益法人か公益信託かなどという法形式など余り意味を持たない形で同じように利用できる仕組みができるのが一つの理想像であるとは思います。
  2点目,公益信託の信託財産の運用が公益信託事務の範囲に入らないと考えているわけではありません。第一読会のときも申し上げましたが,公益信託事務の範囲と運用を截然と区別することができないことは繰り返し感じておりますので,もう少し説明を工夫していきたいと思います。
  3点目は,冒頭で答えたことと軌を一にしますが,助成型の公益信託について軽量・軽装備のメリットを維持しつつ,それと同様に,できれば一定の範囲の事業型の公益信託も公益法人ほどの認定基準を揃えることなく税制優遇を受けられるような形にまずは持って行けないかと,事務局としては考えております。ただし,そうではなく,一足飛びに理想の将来像,すなわち公益信託も公益法人と同じく収益事業をできるようにした方が良いというお考えもあろうかと思います。
○小野委員 収益事業の考え方なんですけれども,通常,収益事業,特に法人の場合には課税所得かどうかで考える先ほどの小幡委員のお話もありました。ところが,ここでの議論は収益事業をやると受託者の解任とか,公益信託の終了とか,何か違った効果を伴う議論です。軽量・軽装備のためというには余りにも厳しすぎ,また議論の方向が違うのではと思います。例示の方はお金を取ることも可能のように書いてありますけれども,税法的には恐らくお金を取れば,例えば本の出版とか,有料のセミナーをやると収益事業になってしまうし,あと,第三者から業務委託を受ける,これも収益事業になってしまいますから,そういう観点から収益事業が必要不可欠に入らないとか,必要の方に入らないと言い切るのは議論にずれがあるように思います。
  もちろん,営業的な意味での収益事業を念頭に置き今述べたような趣旨で書いたものではないようではあるので,表現ぶりと,あと,繰り返しになりますけれども,公益法人では単に課税されるだけであるところ,こちらは受託者の解任にもつながるわけで,例えば,子ども食堂でも大人から食事代を取っても別にそれは収益事業で全然構わなくて,材料費を引いて,もし,そこに収益が残れば課税されても構わないと思うんですけれども,より厳しい効果を伴う表現ぶりが,気になりましたので御検討お願いします。公益財団法人との間でできる範囲のメニューとしては同じとすべきで,その他の点において公益信託は軽量・軽装備であればいいと思います。
○中田部会長 基準としては,9ページのゴシックで書かれたのが事務局の提案される基準でありまして,公益法人との関係については説明の中で触れているということですので,この基準と収益事業というのが当然に一致するわけではないのだろうと私は理解しております。
○小幡委員 最初に認定のときに,こういう公益信託事務をやりますと言っておけばよろしいわけですね,それでオーケーであれば。つまり,例えば③の美術と無関係な書籍の出版と,無関係といっても来場者の皆さんが興味あるようなものを置くとか,そういうのはあると思うので,そういうこともやりますと。これは公益信託の目的の達成に必要な信託事務であるというオーケーがあれば,それで問題は起きないので。最初のところでどこまでこれが公益信託事務の範囲内でできるということになるかという,そういう範囲の問題ではないかと,そのような理解だったのですが。
○吉谷委員 私どもは提案に賛成でありまして,私どもの理解としてはまず10ページの3の最終パラグラフで先ほどからお話が出ていた事業型の公益信託についても,公益法人の収益事業等に該当しない限度で許容するという一つメルクマールがあって,それについては13ページのオの真ん中辺りに書かれていますように,②か③の区別というのは個別具体的な事情に応じて認定行政庁が有識者委員会の意見を踏まえて判断すると,そこで,小幡委員が言われたとおりに,どういうことをやるのかというのを確認していくのだろうと理解して,それで,賛成ということでございます。
  ただ,その上で若干のコメントを加えさせていただきますと,この事業の範囲について特に制限を課す必要は,公益の範囲においてはなかろうと考えておるわけですけれども,信託事務の裁量を大きくしすぎることによって,監督やガバナンスの強化が必要になるということは,軽量・軽装備ということの趣旨に反すると。軽量・軽装備というのは,会計面でも煩雑になったり,税制面でもそぐわなくなったり,監督面でも重装備になるということであると理解しておりますけれども,なので,信託事務の範囲が拡大されるからといって,受託者の裁量が極端に拡大することがいいのかというと,それは疑問なのです。特に事業型というのをやるということになりますと,認定段階で受託者の能力を勘案して,実現性の予測が可能な計画になるように,適切に事務の範囲であるとか,裁量の範囲であるとか,これを限定することで認定や監督のコストを下げるということ,そういうことに努めるということが必要なのではないかと思います。
  そして,事業型という類型について更にコメントさせていただきますと,事業型の信託というのは私ども信託銀行でもさほど経験があるというような分野でなくて,一体,どういう実務が発生するのかということについては,まだ,これから検討しなければならないことだと考えております。部会資料は,非常にまとまった形の例を提供していただいておるわけなんですけれども,例えばもっと簡単な例というのがあると考えていまして,美術館の運営とありますけれども,著名な絵画をお持ちの方が信託をするのだと,それは例えば公益法人の美術館が受託者となって,公益信託やりますという申請をされると。当然に信託ですから,財産の分別管理はしますということが前提ですけれども,その上で,その次に受託者である美術館が行っているどういうことが信託事務処理で,どこからが受託者の固有の行動なのかということについては,はっきりと認定段階で分かれているべきであると思います。
  もちろん,どの程度,具体的にというのはいろいろ程度もあるかもしれませんけれども,例えば美術館に美術品を提供すると。そうすると入場料がそれによって増えると。それは信託財産なんでしょうか。あるいは他の美術館へ美術品を貸し出すというときに,その賃貸料というのは信託財産となるのでしょうかとか,例えば信託財産と固有財産の間で美術品の賃借契約を結ぶのかとか,そういったことをみんな詰めて初めて事業というものが実現ができると考えております。ですので,公益事業を行うということと信託事務を行うということについて,よく自覚する必要があると。そうでないと,固有財産と信託財産が区別できなくなるというようなことも起こってくるわけですので,事業型を行う上では特にこういったことに留意する必要があると思いまして,こういう点は公益法人にない認定監督のポイントにもつながってくるだろうと考えるというわけです。
○中田部会長 ほかによろしいでしょうか。なかなか,一つの基準で過不足なく示すというのは難しいことだなと改めて思っておりますが,頂きました御意見を踏まえまして,どういう形で基準を設けたらいいのかということを更に検討していきたいと存じます。
  続きまして,公益信託の信託財産の範囲と運用について,2と3を合わせて御審議をお願いいたします。既に3についての御意見を頂いておりますが,それに加えていただくことでも結構ですし,新たなことでも結構でございます。
○林幹事 2の財産の範囲については金銭に限定しないことで,弁護士会の中でも一致して賛成でございました。
  問題は先ほど来ある運用ですが,運用というものをどう捉えて,ここの問題点をどう捉えるかについて,なかなか分かりにくいというところがあって,それは中辻幹事も先ほど言われたようなところに通じると思います。ただ,3で議論しているのは何かというと,恐らく信託行為の中で許されている運用のようなものは当然,許されるのだけれども,信託行為に明確には書かれていないけれども,それ以外の部分で運用的なことをやっていいのかというような論点のように理解したのですが,どうでしょうか。
  助成型で金銭を受託されていて,それを管理として運用しているというような場合を,典型的に想定していると思われ,もちろん,その運用の仕方について信託行為に書かれる場合もあるのと思いますが,書かれないような場合においてどうしていいのかということを議論しているように思いました。ですから,信託行為に書かれている範囲のことは,当然公益目的なりによる限定がある前提で,許されると思われます。例えば株であったり,不動産の賃料収入から助成するというのは,当然,信託行為に書かれていれば許されていると。ただ,ここの論点はそうでないところにおいて,どういう運用をしていいのかというような論点のように考えたのです。その理解の下で,弁護士会なりの議論の結果としては,この二者択一だったら,甲案でなくて乙案の方が多かったというところです。
  甲案の趣旨も,安定的にという趣旨も十分理解できたのですけれども,財産の管理というか,善管注意義務というような観点から考えたときに,甲案に限らずともよいのではないかと考えます。もちろん,リスクがある運用を無制限にやってよいということではなくて,しかるべき範囲の運用を行うのでしょうけれども,甲案のようなものに固定的ないし限定的に考えずとも,財産の管理方法として善管注意義務の範囲であればよいと考えます。例えば,全てにおいてリスクのある運用を行うのは妥当ではないのでしょうけれども,多少,それを一部には組み合わせるということもあってよいかもしれないし,むしろ,そういうことの方が現代的なようにも考えますので,乙案が妥当と議論しました。
○樋口委員 先ほど15ページの3について,信託財産の運用について言いかけたことを申し上げます。今,林幹事がおっしゃったのは,多分,そういう趣旨ではなくて,私が答えるのはおかしいけれども,公益信託の信託の運用,甲案によれば強行規定として,この範囲に限るという趣旨にしか読めませんけれども,それで,16ページの一番上にリーガル・リスト方式と堂々と明示してあって,これは私もただ英米にかぶれているだけなので,本当にええっという感じです,これは。これは現在のプルーデント・インベスタールールに明らかに反していますから,もはや,これは違法行為です,アメリカでならですよ,もちろん。ただ,それこそ,林幹事がおっしゃったように,公益信託の委託者がこの公益信託については,こういう投資だけに限ることにしてくれというのなら,それはそれでしようがない。しかし,それもずっとこれでどんどん実質的にこのような運用では結果がマイナスみたいな話になっていったときに,おかしいではないかということを言わない受託者は,責任を問われるというようなものだと思います。
  ここにGPIFの例がありますけれども,しようがないのではないんでしょうか。私はそれが本当に正しいのかどうか,よく分からないけれども,株式であれ,何であれ,結局,こういう形で,これだけが安定的な運用だよというのは幻想ですから,と言われているわけなので,プルーデント・インベスタールールがそのうち,ひっくり返る,トランプ政権でひっくり返るかもしれないので,何ごとも,そうしたら,樋口は先見の明が全くなくて,あのときの常識だけに捉われていたということになるかもしれないんですけれども,余計なことを申し上げました。そう言いながら,この21世紀に,すでに時代遅れとされているリーガル・リスト方式を堂々と採るというのは,何か本当に賛成できない。くどかったですね。すみません。
○平川委員 私も樋口委員と同じような意見なんですけれども,乙案に賛成しまして,運用の対象財産の種類については特に法規制は設けず,公益信託内部のガバナンスにより運用方法につき,自己規制することとし,開示原則も徹底させ,第三者からの批判の目にさらすことにより,自己規制を徹底させることがプルーデントルールにも沿うものだと思い,乙案に賛成します。
○道垣内委員 甲案,乙案のいずれに賛成するかという問題はおきまして,甲案について1点だけ伺いたいのです。合同運用信託の信託ということなんですが,当該合同運用信託はどのような方針で運用されていてもよろしいんですか。そうすると,合同運用信託を作れば実は自由のような感じがするのですが。これが第1点です。
 第2点として,細かなことで恐縮ですが,ここにいう信託という言葉が動詞的に使われているのが気になります。「債券又は貸付信託の受益権の取得」という言葉と並べて,「合同運用信託の信託」としますと,後者の二つめの信託は前者の「取得」と並列になっており,動詞的な意味を持っていることになります。しかし,私は,信託法全体としては,「信託」という言葉は方向性のある,動作性のある名詞としては使われていないと思うのです。信託法11条1項・4項・5項,12条2項・4項,23条2項は,「信託をした」としていますね。これに対して,信託法152条5項・156条5項・160条5項は,「信託しなければならない」としており,これは動作性の名詞として「信託」という言葉を用いているのですが,会社法799条5項・810条5項などと併せたためであり,私は信託法の中では異質の用法となっていると思います。私は日本語として間違いだろうと思いますし,所得税法施行規則に併せなければいけないというのも分かるんですが,いかがなものかと思います。後半は何らかの参考にしていただければ結構なので,前半についてお答えいただければ幸いです。
○中辻幹事 道垣内委員からの御質問ですが,税法の関係なので財務省の方に尋ねたいと思います。ただ,合同運用信託というのがこれに入っていることによって,預金又は貯金,国債とか地方債の運用という限定の意味がなくなってしまうことはないとは思います。
○沖野幹事 確認を含めて何点か,申し上げたいと思うんですけれども,まず,先ほど来,問題となっております一つに運用という概念があり,1の事務の範囲との関係なんですけれども,次のような理解でよろしいかということです。ここの3の運用というのは,いわゆる投資運用,投資権限といった問題であって,そういう投資を行うかということ自体は事務の範囲の問題だけれども,必要以上の投資,財産の大半を美術館などに投資してしまうとか,そういうのであれば,そもそも,事務範囲としてどこまでできるのかという問題が出てくると。
  投資については,次に林幹事がおっしゃったデフォルトルールなのかどうなのかということで,樋口委員が明確にされたことですけれども,16ページの解説などを見ますと,非常に限定されたリーガル・リストでいわゆるかつての安全方式を義務付けると書かれておりますので,信託行為でもっとリスキーな投資はできると書けばいいとか,そういうことではなくて,投資自体に対して公益信託であるからには,非常に安全な資産のみに運用しなければいけないと,そういう意味での中身であると。逆に,信託行為でよりもっと限るということは,目的に照らして適切かという問題はあるにせよ,そういったことはできるけれども,その意味で,信託行為に別段の定めがあれば,全く別であるということではないものだと理解しましたが,それでよろしいかということです。
  それから,そういったものと考えた場合,運用という使い方なんですけれども,元々が所得税法の話ということで,2との関係ですと元々は金銭に限られて,その運用という問題設定になっているところ,財産はもっと広げていくということになると,信託財産の運用という言葉を使ってしまうと非常に混乱するので,むしろ,投資権限とか,そういう形にした方がよろしいのではないかということです。
  投資権限と考えた場合ですけれども,樋口委員もおっしゃっていますけれども,リーガル・リスト方式でこういう中身が果たして現在,適切なのかというと合理的な投資の在り方に従ってということで十分ではないか,そういう意味では乙案でよろしいのではないかと思っておりますが,仮に甲案だと考えた場合に気になる点ですけれども,一つは貸付信託の受益権の取得とありますけれども,貸付信託は現在,募集を停止しているというものですので,かつては預金並びの安定性があり,元本補填があったということですけれども,これから書くのに貸付信託の取得でいいのだろうかというのが気になります。
  それから,もう一つ,道垣内委員から御質問のあった合同運用信託の信託ということで,私もなぜ合同運用信託なのかが分からなかったんですが,金銭信託の分類を信託協会などが発行されているものによりますと,合同運用信託については元本補填特約があると,ほかの金銭信託についてはないというような区別がされているようでして,あるいはそういうところがここに出ている理由なのかなと憶測してまいりました。ただ,いずれにせよ,このままでは余りに今から書くにはどうなのかという感じがしております。
○小野委員 今回の説明にも信託業法との関係で留意する必要があると記載されていますし,第一読会でも発言したかと思うんですが,金商法にも運用というのが出てきますので,運用という言葉そのもの,また,今まで金商法とか信託業法で議論している運用となるのではないかとの疑問が出ないように,林幹事やほかの委員の方もおっしゃったように信託契約に基づいてお金は使うのである,信託契約上ペティキャッシュはいいけれども,ある一定の金額は銀行預金にしなさいといえば,そのとおりするし,あと,次の不動産を買う場合,また,子ども食堂を運用する場合の運用資金として当面の間は銀行に置いて,そのほかはこうやって使いなさいといえば使うという,単に信託契約に従った信託目的に沿った形での資金の使用であって運用ではないことを明らかにしていただければと思います。それを人から預かったお金で運用ですといった途端に違った世界に入っていくことになります。自ら運用ですといって,これは金商法の運用ではありませんとか,業法上の運用ではありませんというわけにはいかないので,そこは概念上も截然と区別しないといけないと思います。
  とはいっても,ある一定の金額を助成型で預かるような信託の場合にどうするんだという議論はあるかもしれませんけれども,それも信託契約に書けばいいかもしれませんし,財産の管理の仕方として預金に置けというのであれば預金に置けばいいのであって,いわゆる他人財産を扱って,それを何らかの形でまた運用という言葉を使ってしまいますけれども,そんな形で資金を増やすというような観点であると,業法,金商法の議論が出てきてしまいます。繰り返しになりますけれども,信託契約に沿って資金は利用するということで完結するのではないかと。そういう意味において乙案ですけれども,甲案については,預金に置くのは構わないので,それを運用と呼ぶこと自体が極めて違った規制に,違った法律に引きずり込まれていくのではないかと思います。
○中田部会長 今の御発言の御趣旨を確認したいんですけれども,結論としては何らの規律も置くべきではないということでしょうか。
○小野委員 規律を設けないというか,信託契約の中に,公益認定するときにその資金をどうやって管理するのかというところで,恐らく多額の資金をもしある受託者が預けられることになれば,そういう形でチェックしていく,通常であれば手元に置かずに預金に置くとか,又は投資型の預金ではなくて普通預金又は定期預金にしろとか,そういう形で,その信託行為に従った形での行動をするということになるのではないかと思います。だから,規律を設けないで自由に管理していいということにはならないと思います。しっかりと信託契約に書きましょうということで,野放図にしてほしいという意味での乙ではありません。
○吉谷委員 まず,2番の「公益信託の信託財産の範囲」につきましては提案に賛成でございます。事業を公益信託でやるということを前提にしますと,金銭に限定されないのだろうということかと思います。ただ,財産の範囲を広げるということは,逆に言えば,その財産を管理する能力が必要で,財産を管理にするに当たって法定の条件とかを満たさなくてはならないということになりますので,そういうことについての認定実務についての手間も増えるということになるかと思いますので,そういうところの軽量・軽装備化というのは一つの課題かなと考えております。
  その上で,信託財産の運用の3番との関係でいきますと,趣旨としてはどちらかといえば甲案なのではないかと考えておるんですけれども,その前提として,ここで書かれている意味について確認をさせていただきながら意見を述べたいと考えております。というのは,3番の甲案というのは,書いているところを素直に読みますと記載の財産の取得であると書いておりますので,これは元々金銭であるもの,金銭を元にして何を買っていいのか,何で運用していいのかという趣旨であると思います。そういう意味での売買を含む運用であるとすると,まず,リスクのある運用資産に投資する場合には専門的な知識も必要となってきますので,リスクの限定をする趣旨からすると,甲案の方が簡便ではないかと考えます。
  先ほどの公益事業に必要かどうかというとの関連でいいますと,認定段階で金銭であるものを甲案の範囲内で運用するということは必要と認定しやすいと思われますし,それ以外のもので運用するということになりますと,その必要性についての議論が出てくるということになりますので,乙案の場合には認定実務にも影響が出てくるのではないかなと,軽量・軽装備との関係でいかがなものかというところもあるというわけです。甲案の理解としましては,記載の合同運用信託などというのは恐らく元本の補填契約のある,あるいは元本の確定した商品のことを指しているのだろうと理解した上で,甲案でしょうと考えておるところです。
  その上で疑問なところがありまして,2番の「公益信託の信託財産の範囲」との関係でいいますと,例えば従前から当初信託財産が不動産でした,あるいは有価証券でありましたというときに,それを計画的に売却して例えば助成型の奨学金などに充てていくということは,許されてしかるべきであろうと考えておりまして,そういう売却行為というのも一般用語では運用ということもあるかと思うんですけれども,3番の甲案で限定しているのは飽くまで金銭をこれらの商品にするということで,当初信託財産を売却するというものについては2番で認めるのであれば,甲案は否定しているわけではないということでよろしいでしょうかということを確認したいと思っていまして,そのとおりであれば甲案賛成でございます。
  もう一つの問題は,当初信託財産で不動産であるとか有価証券,例えば株式を受託しますと。不動産の場合ですと先ほどの留学生の寮に使うというようなものではなくて,普通に賃貸をしている投資物件であるというような場合には,これを保有し続けることは1番の収益事業の方に入ってくるのでできないので,計画的に売却しなければならないのだろうと思います。そういうふうな分類になるということでよろしいでしょうかというのが次の質問でありまして,更に株式の場合ですと株式をずっと保有し続けて配当で助成をするというようなパターンであれば,収益事業というには区分にも当たらず,3の甲案で否定されるわけでもないと考えておりますが,それでよろしいでしょうかということで,ただ,更にいろいろな財産が考えられて,2の場合ですと知的財産とかいうようなものも入ってくるので,これらのものについてもそれぞれ収益事業に該当するのかどうかというようなことで1個1個,個別に検討されていくことになるのだろうなとは思いました。
○中辻幹事 御質問を何点か頂きましたのでお答えいたします。
  まず,1点目,甲案における「運用」という言葉の意味ですけれども,事務局としましては,委託者から拠出された当初信託財産を用いて,受託者が新たに購入する信託財産の範囲を制限するものと考えておりまして,吉谷委員の御理解と共通していると感じました。
  2点目,当初信託財産を受託者が売却して金銭化することは妨げられないと考えております。「2 公益信託の信託財産の範囲」という論点で,税法上のみなし譲渡課税等の問題は別として,当初信託財産は金銭以外に不動産や株式も許容すべきであるという提案をしておりますが,そこでは,受託者がそれを委託者から受け取った段階で売却することも想定していますので,「3 公益信託の信託財産の運用」における甲案というのは,ここで列挙された以外の財産を受託者は売却できないという趣旨ではないということになります。
  3点目,当初信託財産として投資用不動産が委託者から受託者に拠出された場合に,それを保有して受託者が行う信託事務というのは,今の事務局の整理ですと,それが公益法人における収益事業等に該当するものであるならば,「3 公益信託の信託財産の運用」における甲案でも乙案でも,これは公益信託事務の範囲を逸脱するものであり許容されないということになります。吉谷委員は,仮に投資用不動産というのが当初信託財産とされた場合には,それを受託者がずっと持っていることは駄目なのだけれども,計画的に売却することは例外的に認められるべきであるという御意見であると理解しました。これについては,他の委員幹事には別のお考えがあるかもしれませんので,御意見があれば伺いたいと思います。
  それから,当初信託財産が株式である場合において,個別の事案に応じて株式を受託者が保有し続けることが認められる場合はあり得るように思います。
  最後にしますけれども,沖野幹事から先ほど御質問がございましたので,併せてお答えいたします。
  まず,例えば美術館を運営するのに多くの株式を委託者から受託者が信託財産としてもらった場合に,受託者が株式を売り買いしてお金もうけばかりやっていると,美術館の運営は全然やらないと,そんなのはとんでもない話で,公益信託事務の範囲を逸脱する行為であると考えています。
  また,甲案はデフォルトルールか,強行法規かという点については,樋口委員及び沖野幹事の御理解のように,事務局としては,甲案はこれよりも積極的な運用を禁止する強行法規として考えております。逆に乙案,これはプルーデント・インベスタールールを意識しているものですけれども,乙案を採った場合に受託者はどのような運用も許容されるのかといえば,そうではなく,部会資料の16ページにも書きましたが,信託行為に信託財産の運用方法についての定めがあれば,その範囲で受託者が運用するべきことは当然であると考えます。
○吉谷委員 理解が深まりましたので,改めまして投資用不動産については計画的に当初信託財産であったものを売却すると。売却するまでの間はどうしても賃料とかが入ってきてしまうと。そこについてまでは収益事業で必要のないものだとされるのは,よろしくないのではないかと思っているということで,従来から申し上げておるんですが,改めて申し上げたいと思います。そういうところを法律に書き込むのはなかなか難しいような気もするんですけれども,何とかお願いしたいなと思うところです。
  もう1点です。運用の乙案につきましては,私ども自身は運用を専門とする受託者でございます。ですが,受託者一般について幅広い運用ができるということ,リスク商品に対する投資を認めるということであれば,公益認定の審査において受託者又は運用委託先というものの運用能力であるとか,信託財産が運用報酬を負担してまでリスク資産で運用を行うことの妥当性であるとか,信託目的を踏まえた運用計画になっているかというようなことを個別具体的に認定あるいは事後の監督の段階で,チェックした方がよろしいのではないでしょうかと思う次第です。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
○平川委員 今の御意見とも関連するんですけれども,先ほど2について意見を申しませんでしたので付け加えさせていただきます。2につきましては賛成いたします。より多様な民間による公益実現の制度の受皿の一つとして,公益信託がこれを担うべきという考え方から,当初の信託財産を金銭に限るべき理由はないと思います。しかし,受託者責任を果たすために金銭以外の信託財産につき,第三者に信託事務の委託が必要になってくる場面が考えられ,これは今の御意見の運用についても同じだと思うんですけれども,そういう運用や受託した信託財産を第三者に委託するという場合,委託先についての資質や受託者との利益相反関係にないものというような要件を定める必要があると思います。
○神作幹事 15ページの3,信託財産の運用について申し上げます。信託財産の運用は,私の理解ではそれ自体が公益信託の目的になるということはあり得ないのではないかと思います。飽くまでも公益信託の目的というのは別にあって,運用というのは,言わばそれを実現するための手段であるという位置付けだと思います。信託事務の中にはいろいろなものが含まれており,グラデーションがあると思いますけれども,信託財産の運用は多くの公益信託においてきわめて重要であるけれども,それぞれの公益目的を実現するための手段という位置付けなのだと思います。
  信託財産の運用をそのように理解しますと,例えば甲案を採りますと,樋口委員が言われたことかと思いますけれども,どのような目的の公益信託にとっても甲案のような運用をすることが適切であるということで相当程度の蓋然性をもって言えないとリーガル・リスト方式というのは説得力をもつことはできないのではないかという気がいたします。
  もし,そうだとすると甲案は採用することはできず,恐らく信託財産の運用というのは先ほど申しましたように,結局,公益目的という目的の下にそれを達成するための手段的な位置付けになりますから,運用は飽くまでも公益目的に従って適切に行わなければならず,かつ,公益目的に従って運用方針等についても様々なバリエーションがあるという話になるのであって,むしろ,もし議論するならば,運用について何か特別のルールを設ける必要があるかが重要な論点になり得ると思います。マイナス金利のことを考えると,非常に難しいルール作りになるとは思いますけれども,分散投資等も含めて,むしろ,権限の問題というよりも,受託者が信託財産を運用する場合に,一般的にどのような義務が生じるのかというのが中心的な問題である気がいたします。したがって,私も15ページの3の乙案に賛成いたします。
○中田部会長 第一読会で運用という言葉が説明の中に出てきて,議論がいろいろ出ましたので,今回,外に出して御議論いただきました結果,問題点がよりはっきりしてきたのだと思います。1の「公益信託事務の範囲」というレベルで規律すれば足りるのか,それとも,それに加えて特有のルールを求めるべきなのかどうかというような御議論の分かれ目があったと思います。仮に何らかのルールを置くとして,それをどのようなレベルで,どのような形で置くのが必要か,あるいは不要かと,こんなところがあったかと思います。今日,頂いた御議論を踏まえて更に検討するということにしたいと存じます。よろしいでしょうか。
  それでは,時間が遅くなりましたけれども,この辺りで休憩を致します。15分後の4時10分に再開いたします。

          (休     憩)

○中田部会長 それでは,再開します。
  部会資料38の第3の「4 公益信託の受託者の資格」について御意見をお願いいたします。
○林幹事 弁護士として,弁護士会の議論でもそうですが,ここでは結論としては乙案です。この点,本日,机上配布で日弁連の意見書を配布していただきましたので,それも御紹介しつつ意見を申し上げたいと思います。
  それで,前提として意見書のポイントだけ申し上げたいのですが,意見としては,①自然人に受託者を拡大すべきである,②その中でも弁護士に拡大すべきという点と,③その際には信託業法に抵触しないように規律するべきだというのが結論です。
 その理由につきましては,自然人に拡大すべきというところについては,軽量・軽装備の公益信託で小規模な信託財産も想定すると,自然人をあえて排除する必要もないというところで,ここは補足説明にも御紹介いただいたところと同じです。
  次に,公益信託の受託者業務を考えますと,財産管理業務が含まれるところであり,その点はそれを行っている専門職があります。そういう点で弁護士を見てみますと,破産管財人や財産管理業務を行っていますし,弁護士の周辺には公益活動に関わる部分もあって公益信託にも親和性があるので,自然人に拡大するときには弁護士が受託者になるようにすべきだとしています。それから,その際の公益信託のニーズや,事業に関しましては意見書の3ページの3の辺りに書いてありまして,弁護士の中からアンケートで募ったりされたもので考えられる業務の具体例が書れています。
  最後の4は業法に関してで,いずれにせよ,自然人なり,法人においてもですが,受託者の資格を拡大していくときには,業法との抵触の問題をクリアにしないといけません。そこについては,業法と抵触しない形で,適正に報酬を得つつ,反復継続して受託者業務を行えるような手当をすべきだという意見です。ここでは,信託業法を改正するという方法もありますが,立法の仕方には他の選択肢も考えられるように思いますので,そういう意味も込めて抵触しないことを明確にすべきだというふうな意見で書かれております。
  それを踏まえまして,先ほど申し上げましたように乙案で,法人だけではなくて自然人も公益信託の受託者となれるようにすべきだという意見です。自然人につきましては,補足説明の中にも死亡等の場合の問題があるのではないかとの指摘がありましたが,この意見書にも書かれていて,また従前来申し上げているとおり,信託行為の当初から,第2,第3の受託者を想定しておく方法もありますし,もちろん信託法上は裁判所に新たな受託者を選任してもらう方法もありますので,その点は必ずしも自然人を否定すべき理由にはならないと考えます。
  それから,(注1)に書かれてある点ですが,積極的要件というのは,それはそれとして理解できるのですが,消極的要件については,これはある種の叩き台であってもっと議論すべきだと思いました。特に一定の純資産を有する,有しないということがある種の消極要件になると,自然人が受託者になることに対してはハードルになりますし,法人においても信託会社ではない公益法人等の法人を考えたとき,こういうような純資産額等の要件があるとハードルが高くなると思います。特に目的信託の受託者となる法人にかかる附則3項等による制限と同様のものをスライドして持ってくるとなると,なお,「受託者の範囲を広げ,それによって公益信託をより使いやすくする」という,ここでの議論の趣旨にも反してしまうと思いますので,適正な要件を,消極要件も含め,検討すべきだと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。弁護士の委員の方でもし補足などがございましたら,併せてお出しいただければと思いますが,今の段階ではよろしいでしょうか。それでは,平川委員。平川委員も弁護士でいらっしゃいますね。大変失礼いたしました。
○平川委員 私は,今日は公益法人協会の監事という立場で甲案に賛成しております。この場合,受託者の資格については,甲案による場合でも積極要件と消極要件を具体的に定め,要件が万人に明確になるようにすべきであると考えます。乙案ですけれども,自然人の場合には継続性において問題があると考えますが,例えば弁護士法人であれば法人であるから,甲案を採っても問題はないということになります。
  乙案で自然人を可とするという場合には,受託者が自然人である場合には法人の意思決定や執行方法のように,少なくとも3名で,複数名で構成される受託者会が組成されて,受託者会が信託事務を行わなければならないというようにすれば可能性があると思います。米国では,このような複数個人によるトラスティボードによる意思決定により,信託事務が執行されているという例が多数あると理解しておりますし,日本が公益法人とか,公益について模範としていると考えられるイギリスの制度で,政府の機関であるチャリティコミッションが出しているモデルトラストディードにおきましても,受託者は少なくとも3名要るということが推奨されておりますし,信託財産の受領については2名が必要であるというようなモデルトラスト証書,信託証書が出されて,ここが認定しているということなので,そういう実務というのは一つ考えられるかもしれません。
○島村幹事 弁護士会からの御指摘は,信託業法との関係についても御議論いただいております。また,平川委員からも甲案についての御意見を頂きまして,これを踏まえまして,御説明させていただいてよろしいでしょうか。
  事務局の方からも御丁寧に資料で御説明いただいておりますとおり,信託業法につきましては18ページにございますような様々な規制を設けさせていただいております。また,この部会は信託業法の改正を議論する場ではないということは理解しておりますので,その前提で御説明させていただきますと,信託業法は信託の委託者及び受託者の保護を図るために,様々な規制を導入しておりまして,ガバナンスについても様々な有識者の御指導も頂いて作っております。特に参入規制,正に主体がどういう人であるのか,若しくは法人規制だとか,そういったものや行為規制,信託業務の委託の在り方だとか,あとは監督規制等を講じておりまして,営業目的で事業をされるのであれば,公益信託の受託者についてもこうした信託業法の対象とするような必要性は,変わらないのではないかというのは認識しております。
  また,公益信託はそもそも営業目的の制度ではないということも,御説明いただいているとおりでございますので,営業概念を前提としたような信託業法の特例を措置する必要性はなかなか難しいのではないかというようなこともありまして,現時点では信託業法に特例を置くことは,考えていないというのが現状でございます。また,弁護士会からも御指摘いただいておりますとおり,現行の法制度でも信託法上の制約が乏しいということもあって,公益信託の引受け等を弁護士も含む個人の方々がなさることも,基本的には法制的に可能であると認識しております。また,運用上,いろいろ制約があるということも存じ上げておりますが,これはまた,別途の議論かなと認識しております。
  こうした中で,どのような受託者が適切かというのは,いろいろ,御議論があるとは思いますけれども,信託業法のガバナンスの観点からいうと,どうしても法人である方が比較的,受け入れやすいのかなというのはございますので,比較的,甲案の方が望ましいのかなとは思っておりますけれども,いずれにいたしましても信託業法のガバナンスは,引き続きある程度,維持させていただくというのは前提としてお考えいただけますよう,よろしくお願いいたします。
○小野委員 今の島村幹事の御発言を前向きに捉えますと,信託業法の守備範囲に入る信託会社,また,信託業法が多く準用されている信託銀行に関しては,引き続き信託業法,また,兼営法上のガバナンスに従うけれども,それ以外のところについて弁護士会としては自然人たる弁護士ということを申し上げましたし,場合によっては弁護士法人かもしれませんし,場合によっては社会福祉法人かもしれませんけれども,それ以外の法人に関しては,公益信託法の中でガバナンス規定をしっかり整えてもらうことによって,元々,公益目的の信託であり,営業目的はないので,本来,そういう法人にしろ,自然人にしろ,対象外になると。ただ,しっかりとしたガバナンスを持ってほしいと,こういう理解をいたしましたがよろしいでしょうか。
  ネガティブに議論すると,本来,一般財団法人,また,公益法人と少なくとも同等,より軽装備と言っているにもかかわらず,信託業法上はより重装備になるということになってしまって議論自体が逆転するということもあるので,その辺は確約していただく必要はありませんけれども,前向きに理解した方の議論だと理解させていただきたいと思います。
○島村幹事 前向きか,後ろ向きかというのはいろいろ考え方があると思いますけれども,営業目的での信託の引受けにつきましては,基本的には信託業法のガバナンスが掛かるということを引き続き申し上げたいということです。営業目的以外の信託業の射程を超えた範囲での信託の引受けというのは,当然,公益信託の中であり得るし,現在も社会福祉法人だとか個人とかでなさっていると思っております。そういったもののガバナンスの在り方というのは,別途,ここで議論していただいて,その射程で対応していただくということかなと認識しております。そこについては信託業法の射程からは外れておりますので,何らいいとか,悪いとかいうのはなかなか申し上げにくいと思います。
○小野委員 一般に営業目的を商法的な概念に置き換えて,収支相償性と反復継続性と考える議論もありますけれども,ただ,今の島村幹事のお話を前向きに考えると,そう考えるのではなくて,いわゆる信託会社とか信託銀行が営業信託として公益信託の受託者となる場合は信託業法,兼営法の当然対象となり,公益信託の受託については,必ずしも収支相償性と反復継続性では捉えていない。だから,社会福祉法人でも自然人でも可能であると,そういう理解で捉えました。
○島村幹事 個々の信託の引受けについて,そこは判断することになりますので,個別具体的に当てはめたときに,公益法人の受託者が収支相償性なり,反復継続性のあるような信託を引受けをされるということになると,当然のことながら信託業法の適用があり得るという認識です。そこの運用は個別具体的な話ですので,どれが具体的に当てはまるかというのはなかなか判断することは難しく,現在もそのための明確化を図るために,運用基準等をお作りになっていると認識しておりますので,その議論の中で具体的にどういうものが望ましいかというある程度の実務上の対応も含めて,そこは検討する余地があるのかもしれないなとは思います。
○小野委員 信託業法の質問で,事業型の信託というのは運用業でも管理業でも当てはまらないし,また,一部,重複しているところがあっても形態として違うものになるかと思うんですけれども,先ほど信託業法の改正は考えていらっしゃらないという発言がありましたが,事業型についてはどうでしょうか。
○島村幹事 事業型であっても助成型であっても,信託業法の引受けというのは,報酬と費用の収支相償性を基本的に見ておりますので,受託者の報酬がどのようなものであるのか,それが費用と照らしたときにどのような収支相償性があるのかというのを,事業型であっても報酬については信託契約なり,信託行為で規定していくことになると思うので,そこで個別具体的に判断していくことになるのかなと思います。
○道垣内委員 嫌われるために発言する必要もないのですが,どうすれば,島村幹事のおっしゃっていることを前向きに捉えられるのかというのが,私にはよく分からなかったというのが第1点と,第2点は乙案というのにすることに私はそれほど異存はないのですが,弁護士を特別扱いすることには断固反対します。
○平川委員 島村幹事に質問なんですけれども,信託業法の業に当たるかどうかというのは,公益信託が事業型だとか,営利目的が含まれているかとかということで判断されるのではなく,例えば弁護士が反復継続して報酬をもらう,それが業には当たらないという,公益信託であれば何度も例えば最近,弁護士はこういうのを募集しますみたいにして,1,000個ぐらい公益信託を受託して,報酬をどんどん取るというようなことがあっても大丈夫なんですか。
○島村幹事 大丈夫かどうかというのは,最後は個別具体的な判断ですが,発言してもよろしいですか。
○平川委員 つまり,信託の性格で判断されるのか,報酬を反復継続的に取るということが信託業法の業務に当たるのかという,どちらの性格で決まるんでしょうか。
○島村幹事 おっしゃるとおりで,事務局から頂いております資料の18ページの一番下のところに書いてありますとおり,信託業は信託の引受けを行う営業と定義されておりまして,営業には営利の目的をもって反復継続をすると。それが両方,該当してしまうと信託業になりますと。そのうちの一つが営利の目的というところであって,営利目的のところは反復継続して行われる行為の全体について存在すればよくて,個々の行為について存在することは必要ではないということで,その内容が少なくとも収支相償うことを予定されているということと考えていますので,個別の信託の引受人が受託する行為全体を捉えたときに,そこが少なくとも収支相償う目的で報酬が支払われるというようなことになっていると,信託業法の信託業の引受けに該当し得ると。その水準や内容については,個別具体的に判断することになりますので,今,一律にこれは該当します,これは該当しませんというのは,申し上げにくいと,そういったような状況でございます。
○中田部会長 島村幹事には御質問が続いておりますけれども,まず,法律を変えることは,今,当面,考えていらっしゃらないと。
○島村幹事 現時点では何も申し上げられません。
○中田部会長 その法律の解釈については18ページの下の方に出ているような一般的な解釈があって,これもこのように理解しておられ,具体的な当てはめの問題は個別的に考えていくと,こういうことでございますね。
○島村幹事 おっしゃるとおりでございます。
○中田部会長 ということですので,一応,それを前提に今の段階では御議論いただければと存じます。ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 「公益信託の受託者の資格」につきましては甲案に賛成いたします。更に資格の適切性の判断におきまして考慮すべき点としましては,先ほど美術品の信託の例を挙げさせていただいておりますけれども,一つには公益に担い手として能力というのと,もう一つには信託財産の管理を行う能力,信託事務処理として行う能力,この両面を充足するものであるべきであると考えております。
  そのような条件を満たすというものが一定の法人という形に限られることになっても,認定をある程度,形式的に行うためにはやむを得ないのではないかなとも考えているところであります。仮に例えば公益法人であることとか,信託業の免許や認可があることというような形式的な能力を判断する基準を採用しないんだということであれば,受託者を選別する基準としては(注1)に書かれております①の積極要件,これが極めて重要であると思います。そういう意味で,先ほどの二つの能力を十分に審査すべきであると思います。
  自然人につきましては,信託事務の適正な遂行につきまして,例えば自然人が一人の場合であると,受託者内部の牽制,役割分担が機能しないと思いますし,そのような体制で公益信託の受託者となれるかということについては懸念があります。一定の組織性というものがないと,適正な運営というのは担保されないのではないかなと考えます。そうすると,自然人,受託者を念頭に置いて公益信託法の中のガバナンスの規律でその懸念をカバーしようとすると,規律が重装備になって認定審査の段階,監督の段階で軽量・軽装備ということが実現できるのかという点について疑問があるところでございます。認定手続におきましても,自然人について形式的な基準を導入するということは,自然人の能力や適正が千差万別であることを考えますと疑問があると。実質的な評価をしようとすると,適切に判断できるかどうかということにも疑問があると思います。
  あと,若干,補足説明の4のところで,信託事務の委託についても言及されているんですが,これは自然人に限ったことではないのかもしれないんですけれども,公益事業や財産管理というものを委託するような場合には,そもそも,受託者としての適正があると判断できるのかは疑問ですが,仮にそれを認めるのであれば,信託事務の委託を行うことを前提に委託先を含めた信託事務の執行体制というのを審査する必要があるし,報酬についても例えば受託者の見掛けの信託報酬が低くても,実質的な信託事務をする委託先が委託報酬の形で多額の報酬を収受するということがあってはおかしいということになりますので,そういった点も含めた審査が必要になってくるのだろうと思います。
  あと,消極要件についてどのような資格を要求するかについては,別途,検討するということでなっておりますけれども,33回の資料では欠格事由の例として,その事業を行うに当たり,法令上,必要とされる行政機関の許認可等を受けることができない者が受託者であることというのが挙げられているわけです。先ほどから信託業の話が出るわけですけれども,営業として公益信託を行うことを前提として,受託者になる候補の方が申請されたということになると,信託業の免許がなければ欠格事由になるということになってしまいますので,すると,公益認定で信託業法に反していないかどうかということも事実上,審査されるということになるのかもしれないなと思っております。
  そういう意味でも,法人の範囲についてある程度,形式的な基準で限定した方が恐らく審査がやりやすいのではないかなと考えております。具体的には株式会社で信託免許のない者が受託者となる場合には,先ほどの御説明のとおり,信託業に該当するかどうかについての個別の判断というのが必要になってくるというわけでありまして,やや大変かなというところは懸念するところです。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
○新井委員 私は甲案に賛成します。私なりに信託の歴史を勉強してみると,受託者というのは当初,自然人であったのが徐々に法人に移行するという大きな流れがあったと思います。その理由は,信託事務というのが専門化し,高度化し,そして,非常に大きなリスクもはらむということだろうと思っています。それで,ここでは公益信託の受託者の議論をしているので,民事信託であれば,あるいは話は別かもしれませんけれども,公益信託というのは信託の大きな流れに沿って法人受託者でいいのではないかと思います。
  その上で,林幹事の弁護士会の説明について質問させていただきたい。発言順が決まっていますので,そこでまとめていただければ結構だと思います。
  まず,一つは能力担保というのはどうされるんでしょうか。自然人も受託者になれるということですけれども,能力担保,例えば弁護士に限定した場合,例えば認定弁護士などということを考えるのでしょうか,それとも,そういうことなしに弁護士であれば,全てこの能力は担保されていると考えるのかどうか。それと,弁護士ということだけだとすると議論はフェアではなくて,ほかにも財産管理を担っている専門職があるわけです。そういうところの関係をどう考えておられるのか。これが第1点目です。
  2点目に,ここでは公益信託の受託者の議論をしているので,おっしゃっている議論は公益信託に限定して受託者は弁護士でもいいとお考えなのか,それとも,あらゆる種類の信託に弁護士がなれるということをおっしゃっているのかというのが2番目の質問です。
  そして,3番目の質問は,丙案の可能性はないのでしょうか。丙案であれば,ある程度,弁護士会の主張も入れながら能力担保の問題とか,いろいろなリスクへの対応ということもできると思うんですが,それが3番目の質問です。
○中田部会長 林幹事が先の方がよろしいですか。
○林幹事 新井委員がおっしゃられた御質問のようなことを私も発言しようと思っていたところでもありますので,機会を頂きありがとうございます。
  先ほどの御質問のうち,例えば弁護士以外の専門職のことはどうかとの点は,私の理解でもそうですが,この意見書としては基本的には受託者を自然人に拡大すべきだとしているところです。その中で我々も弁護士なので,弁護士のことしか言えないということの範囲において,弁護士会が出す意見書なので,弁護士が受託者になれるようにすべきとなっているというところです。それ以外の専門職を否定している意見書とは私は考えていません。ですから,同じようにふさわしいほかの専門職にも道は開かれるべきだと思います。
  それから,公益信託以外の民事信託についてはどうかという御質問かと思いますが,それについては私個人としては非常に問題だと思いますが,少なくとも,今,ここでは公益信託の議論をしているので,意見書では公益信託について絞って議論されていると理解しています。個人的には更に民事信託にも広がればいいとは思いますが,今の時点では公益信託に関する意見というところです。
  丙案についてですが,一つの形として,それがあってもいいということは全く否定していませんので,そういうものも当然あっていいと思いますが,意見としてどう在るべきかとなると,自然人が単独で受託者となれるようにすべきだと考えるので,意見書においてもそうなっていると理解していますし,私個人の意見もそうです。そういう意味において,共同受託も全く否定しているつもりはありません。
○新井委員 能力担保の点はいかがですか。
○林幹事 失礼しました。能力担保につきましては,従前来から申し上げていて,弁護士であれば誰でも信託事務に精通しているというわけでもなく,誰でもいいというものでは事実上ないという点は,私の理解もそうですし,ほかの弁護士の委員の方も同じ認識だと思いますけれども,意見書の中でも研修等を通じてしかるべく能力のある弁護士を供給できるという趣旨で記載されておりますので,そういう点の問題意識ももちろんある前提での意見書となっていると理解しています。
○深山委員 多少,重複するかもしれませんが,まず,ここの議論については,私は一貫して自然人を当然に排除する必要もないし,そうすべきでもないということを申し上げてきました。この提案の中では乙案ということになります。逆に自然人を含めるべきではないという甲案の考え方が,なにゆえに自然人を排除するというか,不適切だと考えるのか,そこは私は一貫して納得がいっていません。補足説明の中にも幾つかその点について言及があって,自然人は死亡するとか,病気等で能力が減退するというようなことが書かれています。
  しかし,法人は死亡ということはないにしても,経済的に破綻することもあれば,内部的に紛争が生じることもあるし,そういう意味では,自然人と法人をそこで敢然と区別するほどの理由にはならない。極端に言えば,信託銀行はともかくとして,法人一般でいえば破産することもあるわけで,法人格を失うこともある。そういう意味では死亡に匹敵する場合だってあるわけです。あるいはこの場ではない議論ですけれども,例えば自然人の財産管理において不祥事があるということが指摘されることもありますけれども,法人だって不祥事はあるわけです。ですから,そういうことで当然に自然人を排除する理由はないだろうと思います。
  あるいは,法人と違って内部ガバナンスがないというような指摘が補足説明にもあります。確かに内部ガバナンスはないかもしれませんけれども,だからこそ,今回,信託管理人を必置の機関として信託の内部ガバナンスを作ろうとしていますし,更に外部のガバナンスも置こうとしている。そういう意味でいうと,公益信託全体の仕組みの中で,受託者を管理・監督するというガバナンスの機能を備えた制度を作ろうとしているわけですから,そこが決定的な違いになるとも思えない。
  個々の公益信託によって,いろいろな信託財産のメニューも増えますし,業務も助成だけではなくていろいろ増えるわけです。そうなったときに,つまり,いろいろな信託が想定され,それにふさわしい受託者かどうかといったときに,必ずしもそれが法人でなければならないということではなくて,法人でなければならないような信託は法人が受託者になればいいわけですが,むしろ,自然人のほうがふさわしい場合,あるいは自然人でも何ら問題のない信託というのも十分想定し得る。美術館一つをとってみても,少なくとも今の信託銀行が受託者としてふさわしいとは思えませんし,信託銀行もそう思っていないと思います。一定の知識,経験のある人が当該信託に即した受託者としてふさわしいという場面は幾らでも想定できますので,メニューとして最初から自然人を資格から外すというのは,むしろ,公益信託の利用場面を狭めるということにしかならないだろうと思います。そういう意味で,最初から自然人を排除するというのは反対です。
  あと,自然人なら誰でもいいのかというのは,これはまた別の議論で,弁護士に限る必要は全くないと思います。結局は個別に判断して,弁護士であるかどうかも一つの判断要素でしょうけれども,弁護士といってもいろいろな知識,経験は違いますから,ケース・バイ・ケースで認定段階で判断していくし,もちろん,弁護士でなくても別の資格でもいいし,あるいは別に国家資格に限らず,何らかの当該公益信託にふさわしい知見を有している人であればいいのだろうと思います。ですから,そこは個別の話として考えていくということで,少なくとも形式的に自然人を外さないということを申し上げたいと思います。
  最後に1点,業法との関係は,後の論点で,受託者の報酬について高額にならない範囲で認めてはどうかという趣旨の提案がありますけれども,どうも先ほど来の議論を聞いていると,受託者が報酬をもらった瞬間に,それは営利だと判断されそうな気がして,それは違うだろうと思います。営利を目的としている信託の引受けというのと公益信託というのは,世界が違うのだろうと思います。
  前半の議論で,一定の収益活動も視野に入れてということはありましたけれども,それはあくまで手段として収益活動をすることはあったとしても,目的は公益目的ですから,そういう公益を目的としている公益信託というのと,営利を目的としている信託業法が規制の射程にしている部分というのは場面が違うんだと私は思います。そういう意味で,私は手当をしなくても業法の適用はないと解釈すべきだと思いますけれども,そこは議論があり得るので明記した方がいいというのは,弁護士会の意見のとおりです。いずれにしろ,結果として特定の監督下にある法人だけが公益信託を担えるというような制度になるということは,非常に問題だと思います。
○中田部会長 弁護士会の御意見については,意見書を敷衍する形で,林幹事,深山委員あるいは小野委員から御発言頂いておりますけれども,できましたら,ここに書いていないようなことも出していただけると,より議論が深まるのではないかと思います。
○吉谷委員 2点だけなんですけれども,今,深山委員がおっしゃられた中で,美術館の信託はとおっしゃったんですけれども,先ほどの美術品の信託とかの例も出していまして,美術品の信託が一切できないというふうな趣旨ではないとは理解しておりますけれども,私どもは今後,新しい制度ができましたら,個別にまた検討していくことになろうかと思いますので,まず,それが1点。もう一つは,公益信託の受託者だから非営利という趣旨で,もしおっしゃられたのであるとしたら,私どもは公益信託の受託者なんですけれども,営利でさせていただいているとは理解しております。これも個別具体的に御判断される内容であるとは思いますけれども,付言させていただきます。
○神田委員 1点,細かい点と,1点,大き目な点を申し上げます。
  1点は,今,吉谷委員が最後におっしゃったことで,私も同じように理解します。私は誤解をしているかもしれませんけれども。つまり,現在,信託兼営金融機関が公益信託を取り扱っている場合にも,その引受け及びそれに関連する行為については,兼営法及び兼営法が準用する信託業法の適用はあって,それを受けて信託業務を行っているというのが私の理解です。ですから,言葉を換えて言えば,公益信託であるから業法の適用はないと,そういう話ではないということです。これは小さな点です。
  それから,もうちょっと大きな点は,甲案,乙案,丙案なのですけれども,私は第一読会のときにも申し上げたのですが,甲案は最低限の案ですので,実際問題として甲案で困らないということかとは思うのですけれども,そしてまた,新井委員が御指摘のように民事信託一般の話をするのか,公益信託の担い手の話をするのかというと,後者がここでの議論ですので,それにも留意しなければいけないと思うのですけれども,私はできればそう何度も制度を変えることはできませんので,自然人にも公益信託の受託者となる道を開くということが希望です。どういう時代をこれから迎えるか分かりませんし,どの程度,コンピュータがやってくれて,人間のやる作業が減っていくのか,分かりませんけれども,自然人であるから欠格ということにはならないと思います。
  ただ,反対が強いので,丙案的というか,第一読会で私が申し上げたことは,自然人が一人でやりますということに抵抗が強いのであれば,例えばですけれども,信託兼営金融機関と一緒にやる,金融機関が財産の管理を担当しますという形でも,自然人に受託者になる道を開いてはどうかと思います。ただ,それほどニーズが現時点でないということかもしれませんので,そういう意味では,余りこだわるわけではありません。
  1点,それに関連して複数の人が受託者になった場合に,補足説明のどこかに書いてあったんですけれども,共同受託者は相互に業務執行監視義務を負うという記述があるのですけれども,今,申し上げたような形での複数受託であって,共同受託とは違って分担複数受託なので,仮にもし受託者が複数いるときには,常に相互監視義務があるというのが原則的な考え方だとすれば,今,私が申し上げたような形で仮に制度を設計する場合には,そこは少し緩和して分担的な仕組みにしてはどうかと思います。ただ,一番基本のところは,自然人にも道を開くということを御検討いただいていいのではないかと思うものですから,あえて第一読会と重複しますけれども,発言させていただきます。
○小野委員 少し重複してしまうと思うんですけれども,弁護士会の意見書の4ページに,どういう公益信託があり得るかということを書いてあります。書いてあることを繰り返し読むことになり恐縮ですが,それを信託業法の対象になっている例えば信託銀行がそういう業務を例えば共同受託で担っていただけるのか,深山委員が言ったように,全然,フェーズが違うのではないかと思うんです。
  早口で読ませていただきますと,遺児の支援事業とか,生活保護受給世帯,子ども食堂,性犯罪の支援事業とか,DV被害者の支援事業,シングルマザー,面会交流支援,離婚支援,心理的支援,高齢者対応,災害活動,空家対策,地域共生その他,環境もあるかもしれませんし,いわゆる社会的正義,社会環境又は基本的人権に関わるような,これだからこそ公益なのであって,何か中途半端な公益を考えたときには,又は金銭を預かって,それを単純に助成金のように払うということを考えれば,信託銀行のようなところが安全,確実かもしれませんけれども,あと,事業という言葉が美術館というと,何となく少し,そこで本の出版とか,何かお金が絡みそうな感じはするかもしれませんけれども,要はもっと純粋に弁護士会としては考えているのであって,ここに書いてあることの担い手というのは誰がふさわしいか。強いモチベーションに基づいてやる行為なものですから,それに対してどういう法人がふさわしいか,自然人は駄目だとかいう入口ではなくて,ある意味では,公益認定のときに,この受託者はできるのか,この受託者は誰と一緒にやるのがふさわしいのかという観点から考えるべきであって,はじめから枠を決めるような話ではないと思うんです。
  ですから,公益認定のところで受託者としての適正性を全体の中で判断していただくということに尽きるのではないかと思いますし,そこで,報酬が欲しくてやるわけではありませんけれども,手弁当がどこまで限界があるのかという議論もあるのかもしれませんから,収支相償のような法律用語の問題ではなくて,それも全て公益の中で判断していただくということが,そういう意味で,今日の一番初めの議論で公益信託法一つを全体として完結した法律制度にした方がいいのではないですかという議論はそういう点とも絡むんです。こっちはあっちの法律で,こっちはこっちでみたいなことをいうと,何か全体が見えなくなってしまって,本来の法律の目的そのものが達成できなくなってしまうのではないかと思います。繰り返しになりましたけれども,弁護士がやりたいと思っていることは,こういうような社会正義に関連することであって,決して何か業務拡大とか金銭的に色気のある話をしたいと思っているわけではないということは理解していただきたいと思います。
○林幹事 若干補足させていただきたいのですが,1点は,補足説明にも自然人が受託者になることのニーズがあるのかというトーンで書かれていて,先ほどもそういう御説明もあったのですが,日弁連の意見書を踏まえますとそういうニーズはあると考えます。吉谷委員も信託銀行も法が変われば事業型のことも考えるとおっしゃったのと同じで,法が変わって状況が変われば,新たなニーズが出てくる可能性がそれなりにあると思っていますし,そういう前提の下で我々も考えています。ですから,自然人に受託者の資格をというときに,ニーズがないからということを前提のように議論するのではなく,法が変わればニーズが出てくる,そういう前提で議論していただきたいと思います。具体的なニーズの中身は,例えば弁護士会の意見書にあるようなものです。
  それから,本当に業法に関しては悩ましいのですけれども,島村幹事や神田委員がおっしゃったようなことは,それはそれとして理解しながらも,民事信託もそうですが,ここでいえば公益信託の受託者となることというのは,一般的にいわゆる信託業法が想定しているような業務の外なのではないのかと一弁護士としては思います。ですから,業法において懸念されていることがまた違う形でカバーされ,手当てされるのであれば,そういう形で受託業務を行うことも考えられるのではないかと思います。もちろん,その手段の一つが公益信託の今の法制審で議論している信託管理人だったり,第三者機関だったりもしますが,そうした別の方法で懸念をカバーすることができるのではないかと,あるいはそういう工夫をしていくべきではないかと思っているので,申し上げます。
○中田部会長 ありがとうございました。弁護士会の御意見についてはよく承りましたので,それ以外の論点についてございましたらお出しいただければと存じます。
○川島委員 まず,質問なんですけれども,17ページ目の(注1)のところに,①,②としてどのような資格を受託者に要求するかは,別に検討する必要があるという記述がございます。この点は後日,改めて議論するということなのか,あるいは意見があれば,今日,この場で話してもいいということなのか,まず,教えてください。
○中辻幹事 詳細については後日,改めて議論していただければと思いますけれども,本日,意見を頂ければ,それを踏まえて検討しますので,意見を頂くことに支障はございません。
○川島委員 ありがとうございます。
  第一読会の中で,信託事務に関する認定基準を検討した際に申し上げたのですが,公益信託の受託者が社会的信用を維持する上でふさわしくない,又は公の秩序や善良の風俗を害するおそれのある事業を行っていることを不適格事由とすることを検討する必要があると思います。その理由といいますのは,公益信託の社会的信用を維持する,あるいは制度全体の信用失墜を回避するためにも,このような考えが必要だと思いますので,意見として申し上げます。
○中田部会長 ほかによろしいでしょうか。大体,論点は明らかになっているかと存じますので,これを最終的にどのようにまとめていくのかということを次の段階でまた御検討いただくことになろうかと思います。
  時間が足りなくなっていますが,それでは,続きまして「第4 公益信託の認定基準」につきまして,今日,どこまで御審議いただけるか分かりませんが,とりあえず,事務局からの報告は全体についてしていただこうと思います。
○舘野関係官 それでは,「第4 公益信託の認定基準」について御説明いたします。
  本部会資料23ページに,(前注)として記載しましたとおり,公益信託の認定基準としては,本部会資料で個別の論点として取り上げたもののほか,公益信託事務を行うことのみを目的とするものであることですとか,公益信託の名称中に公益信託という文字を用いること等の認定基準を設けることを暫定的な前提としております。他方,第一読会において公益信託の認定基準として設けるべきでないとの意見が大勢であった,公益目的の信託事務以外の信託事務による公益目的の信託事務に支障がないことですとか,公益目的の信託事務の比率,不可欠特定信託財産の処分制限については,公益信託の認定基準として設けないことも前提としております。
  また,各論点に注記しておりますが,ここでは「1 公益信託事務を遂行することが可能な信託財産の保有」から「5 公益信託の受託者の報酬」と,五つの認定基準について論点を挙げておりますが,仮に公益信託がこれらの基準を満たさなくなった場合には,公益信託の任意的取消事由になることを想定しております。また,1以外の2,3,4,5の認定基準につきましては,公益信託の取消しがされる前段階として公益信託の受託者の解任事由となり得ることも想定しております。
  それでは,まず,「1 公益信託事務を遂行することが可能な信託財産の保有」について御説明いたします。本文では,公益信託設定当初の信託財産に加え,信託設定後の信託財産の運用や,委託者又は第三者からの拠出による事後的な信託財産の増加等の計画の内容に照らし,当該公益信託の存続期間を通じて,公益信託事務を遂行することができる見込みがあること(信託財産の取崩しを内容とする場合にはその存続期間を通じて当該公益信託事務を遂行することができる見込みがあること)を認定基準とすることでどうかとの提案をしております。
  今回の提案では,公益信託の認定の明確化,客観化の観点から現在の許可審査基準の表現をベースとした上で,第一読会でお示しした案に対する御指摘を踏まえまして,「公益信託の信託財産の運用」としていた表現を「公益信託設定当初の信託財産に加え,信託設定後の信託財産の運用」という表現に修正し,「追加信託及び寄附金等」という表現を「委託者又は第三者からの拠出による事後的な信託財産の増加等」という表現に修正しております。
  次に,「2 関係者等に対する特別の利益の供与禁止」について御説明いたします。本文では,甲案として当該公益信託の信託行為が,「委託者,受託者及び信託管理人並びにその関係者に対する特別の利益を供与しないものであること」及び「特定の個人又は団体に寄附その他の特別の利益を供与しないものであること」を公益信託の認定基準とする,乙案として甲案のような規律を認定基準としないとの提案をしております。
  ここでは特定の個人又は団体という簡略化した表現を用いておりますが,本部会資料25ページの(注1)に記載のとおり,これは公益法人認定法第5条第4号に規定される株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者を想定しておりますので,その点だけ御留意ください。
  関係者等に対する特別の利益供与は,公益信託の信託行為により行われるものであることからすると,部会資料33の第3の1及び2で提案した甲案における「受託者」は「信託行為」に修正し,公益信託の信託行為が特別の利益供与禁止規定に違反しないことが認定基準であることが明確になるようにすることが相当であると考えられます。また,部会資料33の第3の1で提案した甲案における「受託者等の関係者」をより具体的な表現に修正しております。一方,部会資料33の第3の1及び2で提案した乙案に変更はありません。
  次に,「3 他の団体の意思決定に関与することができる株式等の保有禁止」について御説明いたします。本文では,甲案として公益信託の受託者が保有する信託財産に,他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財産が原則として含まれないこと(例外として,当該株式等の財産の保有によって他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれがない場合は当該株式等の財産が含まれることを許容する)を認定基準とする,乙案として甲案のような規律を認定基準としないとの提案をしております。
  今回の甲案は,部会資料34の第1の3記載の甲案から実質的な変更はありません。今回は公益信託の受託者が信託財産として株式を無制限に保有することを認めた場合には,受託者が公益信託の目的達成のための必要性を欠く信託事務を行う可能性があることを甲案の理由として付加しております。また,今回の乙案も部会資料34の第1の3記載の乙案及びその理由から変更はありません。今回は委託者の関与が弱められる方向にある公益信託においては,受託者が株式を保有することによって委託者の支配権維持という不当な目的が直ちに実現されるとは言えないこと等を乙案の理由として付加しております。
  次に,「4 事業型の公益信託に関する認定基準」について御説明いたします。本文では,甲案として事業型の公益信託について,収支相償及び遊休財産額の保有制限を認定基準とする,乙案として甲案のような規律を認定基準としないとの提案をしております。
  まず,助成型の公益信託は,信託財産を取り崩しながら奨学金の支給等の公益信託事務を遂行するものであるため,収支相償や遊休財産規制が問題となることはほとんど想定できないことなどに鑑みると,これらの認定基準は美術館や学生寮の運営を目的とする事業型の公益信託について検討を要するものであると考えられます。そこで,部会資料33の第3の4の甲案及びその理由,部会資料34の第1の2の甲案及びその理由に変更はございませんが,これらを事業型の公益信託の認定基準とすることにしております。また,収支相償はフロー面から,遊休財産規制はストック面からの規制であり,これらは認定基準としてセットで考えられることから,今回は収支相償と遊休財産規制を併せて甲案として示しております。また,部会資料33の第3の4の乙案及び部会資料34の第1の2の丙案を統合したものを本部会資料の乙案としております。
  最後に,「5 公益信託の受託者の報酬」について御説明いたします。本文では,受託者の報酬が不当に高額にならない範囲の額又は算定方法が信託行為で定められていることを認定基準とすることでどうかとの提案をしております。
  現在の公益信託の許可審査基準において,公益信託の受託者の報酬を制限する旨の規定は存在するものの,採算を確保できないようなレベルの報酬を受託者に強いるのでは,公益信託の受託者の広がりにとって障害となる可能性があり得ることからすると,受託者の報酬に関する認定基準については,税法や信託業法等との関係も考慮しつつ,一定の柔軟化を図ることが考えられることから,このような提案をしております。また,「不当に高額」という用語の抽象性については,同じ用語が公益法人認定法第5条第13号でも使用されていることも踏まえ,その具体的なレベル感も踏まえて引き続き検討する予定としております。
○中田部会長 それでは,今,説明のありました部分について御審議いただきますが,時間の関係もございますので,まず,1から3までについて御審議いただきたいと存じます。
○深山委員 冒頭の(前注)のところについての質問ということなんですが,この中の前段でこれこれを認定基準として設けることを暫定的な前提としていると書かれている部分です。この中には余り異論がなかったものもあると思いますが,意見の対立があったものも含まれております。具体的には,信託行為で信託関係人による合意による終了ができないということについては異論もあったと思いますし,特にその次の信託終了時の信託財産の帰属については,元々の案も複数あって意見も分かれたと記憶しております。
  これについて暫定的に設けることを前提としているというのは,今後,別のところで議論するという意味であるのか,そもそも,議論もしないでこう決めるということを想定しているのか,後者だとしたら非常に問題だと思います。こういう前提を置かなければ,これ以下のことが議論できないという性質のものであれば,一応の前提を置いた上で議論するということも議論の仕方としてはあると思うんですが,別にそういう論理的な関係はなくて,そういう前提を置かなくても1以下の議論はできると思います。しかるに,なぜ,こういう暫定的な前提を置くのかということについては疑問がありますし,その真意をお尋ねしたいと思います。
○中田部会長 深山委員,ほかの点については大体前提としても大丈夫そうですか,今の2点以外は。
○深山委員 具体的にはそれはそう思います。
○中田部会長 では,今の2点についていかがでしょうか。
○中辻幹事 御質問にお答えします。(前注)の趣旨ですけれども,信託行為で合意による終了ができないと定めていることや,信託財産の帰属先を類似の公益信託等とすると定めていることを必要とするか否かについて,部会での議論が分かれたことは事務局としても深山委員と同じ認識でして,これらにつきましては再度部会で御議論していただくことを考えておりますし,決してこれらを確定的な前提としているわけではございません。ただし,以前,山田委員から御指摘がありましたけれども,公益信託の認定基準を検討するに当たっては,まずは全体をひととおり並べてみて,その上で,これは要る,これは要らないというふうに検討することが有益ではないかと考えまして,ある程度全体のイメージを持っていただくために記載したものです。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
  それでは,今の点でも結構ですし,それ以外でも,1から3について御意見をお願いいたします。
○吉谷委員 まず,1につきましては提案に賛成でございます。
  2の「関係者等に対する特別の利益の供与禁止」につきましては甲案に賛成いたします。関係者等に対する特別の利益の供与が禁止されるべきことは当然でありますし,認定の審査の段階におきましても,信託契約や事業計画で特別利益を行わないことを示すのみでありますので,さほど重い規律でもないと考えております。むしろ,特別利益の供与禁止をどう監督するのかということの検討の方が重要であろう。受託者の形態に応じた適切な監督が行われるべきなのであって,また,公益認定の段階で認定機関により監督でどういう手続が今後,必要になりますということまで予測させてあげるのがよろしいのではないかと思います。例えば役職員が数名の小規模な法人の受託者であれば,役員の三親等の親族に寄附されていないですねというようなことを確認しますよとか,そういうような具体的な今後の監督についても視野に入れておくべきかなと思うところです。
  続きまして,3番の「他の団体の意思決定に関与することができる株式等の保有禁止」でございますけれども,これは甲案賛成でございます。乙案は収益事業を行わないという原則に反すると理解しておりまして甲案です。他の団体の意思決定に関与できるという基準につきましては,書きぶりとしては一つの公益信託を単位で認定することを念頭に置いていると思われますけれども,より実質的な審査というのが必要ではないかと思います。
  第一読会では,受託者単位で考えるのがよいのではないかと申し上げましたけれども,例えば受託者が同じで三つの信託がありますと。三つの信託を作って,合計50%超の議決権を保有していますというような脱法的な形で会社を支配できるというようなことは,もちろん,認めるべきではないというのは明らかではないかと思います。なので,もし,これが逆読みで,そのような脱法的な株式の保有も認めるのだという趣旨なのであれば,それは反対するということになると思います。認定段階でそのようなことがないようにチェックをすべきであろうと思われます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 1につきまして御提案に賛成します。公益信託の存続期間を通じて,公益信託事務を遂行することができる見込みがあるという積極要件を認定基準とすることは,健全な公益信託を促進する上で不可欠なことであり,何ら異論はございません。
  2につきましては甲案に賛成します。また,特別利益の供与先として受託者等の関係者の定義の中に,先の論点でも申しましたけれども,信託事務の委託先や更にその再委託先も入れるべきであると考えます。また,運営委員会を設ける場合には運営委員も関係者に入るべきと思います。
  3につきましては甲案に賛成します。公益法人とのバランスからいっても,株式等の保有制限について公益法人認定法と同程度の認定基準を設けることに賛成します。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 弁護士会の議論を申し上げますと,1の財産の保有の要件については御提案に基本的に賛成であります。1点,積極要件ではなくて消極要件にした方がよいのではないかと前回の議論のときに御提案して,それについては補足説明で書いていただいているのですけれども,補足説明の記述は理解した上で,なお,立法的には可能なのだから,消極要件にしたらいいのではないかという意見もあったことを申し上げます。
  次に,2の「関係者等に対する特別の利益の供与禁止」ですが,私の感覚ですが,表現が「受託者」から「信託行為」というのに変わったことによって,甲案に賛成が増えたように思います。ですから,甲案の意見が強かったのですが,乙案もあったというところです。ただ,甲案にするとすれば,先ほど平川委員がおっしゃったように公益法人と同程度というか,公益法人以上の規制はされるべきではないというか,そういうような意見がありました。
  3の団体の意思決定に関するところにつきましては,これも両案がありましたが,前回,申し上げたように乙案の方が意見としては多かったところです。こちらも甲案の意見の単位会もありましたが,それでも公益法人以上の制約はされるべきではないという意見でした。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○深山委員 1については賛成します。
  2についても甲案で基本的にはよろしいと考えます。補足的な意見のあった点についても,私も関係者のところは御指摘のあったようなものも含めて関係者に入れるべきだろうということも同意見であります。
  意見を申し上げたかったのは3のところでして,甲案の意見が比較的目立ったような印象なんですが,一読のときも私は申し上げましたけれども,一つは形式的な理由かもしれませんが,意思決定に関与することができる株式というのが補足説明で公益法人のところでは50%超という説明がありますが,必ずしも明確ではない。括弧書きで例外のことも書かれると,なおのこと,何%だったら関与できるということになるのかということが非常に基準として不明確だろうなと感じます。もちろん,なかなか一律に何%と言えないということも一方にあるから,こういう抽象的な基準になっているのでしょうけれども,しかし,これでは抽象的にすぎて,規律としてといいますか,基準としてはふさわしくないという気がします。
  もう一つは,そのこととも関連するのでしょうけれども,実質的な規律として考えたときに,議決権行使によりその他の団体を支配するような行動をとることが問題視されるべきであり,それを事前に抑止するためには保有そのものを禁止すれば,それは抑止されるわけですけれども,しかし,抑止手段として,そもそも持たせないというのは,そこまでする必要があるのかなと思います。このような規律を認定基準として置かなくても,実際に持っている株式等を通じて意思決定をして,他の団体に支配を及ぼす不適切な場面が生ずれば,その行為を捉えて善管注意義務違反なり,あるいは認定の取消しの要否なりを検討するということはあると思うんですが,保有そのものを禁止することによって事前にそういうことが起きないようにするというのは,やや規制としても行き過ぎのような気がいたします。それと基準として不明確という二つの理由から,一読と同じ意見ですけれども,この規律はちょっと難しいので乙案がよろしいのではないかという意見です。
○山田委員 3項目が今,オンテーブルしていますが,2について申し上げます。「関係者等に対する特別の利益の供与禁止」は甲案が望ましいと思います。公益という評価を受けて,そして,最重要の効果としては税制上の優遇を受けるということをどうやって形作っていくかということをずっと議論しているわけですが,一番中核部分は委託者,受託者その他,その信託に直接関係している人たち,その人たちの利益にならないということだろうと思います。したがって,2について申し上げると申し上げましたが,例えば3というのは,そういう観点からすると少し遠いなと思うのですが,3で仮に株式保有で甲案を採ろうとすると遠いなという気がするんですが,2において甲案を採るというのは非常に中心的な要請に応えるものだろうと思います。そして,オンテーブルされていませんので,中身は挙げませんが,もう一つ,重要なのは5の受託者の報酬でないかなと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
  1から3につきまして,1についてはおおむねこれでよいということで,2についても弁護士会の中では乙案もあったということですが,ここでは甲案が全体としては一般的で多数であったと存じます。3については甲案を支持される方の意見が多かったように思いますけれども,基準の不明確性あるいは保有自体を規制対象とするのは過剰ではないかと,こんな御指摘もあったかと存じます。
  そこで,あと時間は僅かしかございませんが,この後の予定も考えますともう一つだけ申し訳ございませんけれども,お願いしたいと存じます。4の「事業型の公益信託に関する認定基準」について御審議をお願いいたします。
○吉谷委員 4番につきましては甲案の趣旨に賛成でございます。公益信託に財産が死蔵されるべきではないと,財産をため込むことが許容され続けるのであれば,その目的は公益目的とは言えないのではないかと思いました。ただし,事業型においても財産を取り崩すタイプというのが存在するのではないかとも思いました。要するに,事業資金として一定の金額が毎年必要な場合に元手を取り崩していって,お金がなくなったところで,財産がなくなったところで事業を停止するというタイプも考えられますので,そういうものは財産の死蔵ではないとも言えるように思えますので,どういうものが遊休財産,収支相償のところで規制されるのかということについては,もう少し明確にした方がいいと思います。また,事業型の公益信託というものについても明確に定義していただきまして,従来の助成型の公益信託にこのような規制が掛からないようにするということについても,明確化を図っていただければと思います。
○中田部会長 事業型と助成型は一応,10ページに定義は書いていますけれども,これだとなお不明確で,もっと明確にという御趣旨だと理解いたしましたが,そういうことでしょうか。
○吉谷委員 法律で明確にしていただきたいということで,どういう表現がいいかということについてはまだ確たるものがあるわけではありません。
○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
○深山委員 収支相償と遊休財産,従前は別の論点項目として分かれていたのを,今回はフローとストックの違いであって同じ趣旨だということでまとめられたということなんですが,まず,収支相償については第一読会の議論でも,仮にこれを1年という,年度単位で見るとしたら,非常に窮屈になって,使いにくくなるのではないかという意見が少なからずあったと記憶しています。私もそういう意味では,理念的には全く否定するものではないのですが,これを例えば1年単位でとか,短期間の単位で収支相償という物差しで計られると非常に使いにくくなるし,取り分け,事業型ということになりますと,収益が上がる年と,コストを掛けなければならない年とがいろいろあって,一定の期間を通じて収支が折り合うというようなこともあろうかと思いますので,そういう意味で,収支相償というのを基準として盛り込むことには,そういう不都合を感じるところです。
  他方で,遊休財産の方は,確かに死蔵させてはいけないと思うんですが,それが死蔵なのかどうか,あるいは将来に備える備蓄なのかというのはなかなか捉えにくいといいますか,現実的には判別しにくいんだと思います。考え方として,死蔵させないという考え方には賛成ですが,それと備蓄とをどう区別するかというのは難しいところだろうと思います。そういう意味で,認定基準としてこれが前面に出てしまうと,使い勝手が悪くなるのではないかなということを懸念します。考え方については理解しつつも,基準としては難しいという意味で乙案を支持したいと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○道垣内委員 吉谷委員がおっしゃった事業型と助成型の区別とも関係するのですが,借上げ型学生寮,借上げ社宅みたいなものです,というのを考えて,例えば金銭が信託財産なのだけれども,しかしながら,給付内容は,安い家賃で学生に対して学生寮を貸すと,学生の住むところを貸すといった例を考えますと,それは役務の給付であり,10ページの定義からいうと,給付型になりそうです。しかし,念頭に置かれているのは必ずしもそういったものではないと思います。先ほどの借上げ型学生寮の例では,借上げ原資である金銭がなくなった時点で終了するということで,別に構わないのではないかと思うのです。
  そうすると,助成型というのと事業型というのとの区分の基準がなお不明確ではないかという吉谷委員の問題にもつながりますし,仮に現在の基準で事業型と分類されても,なくなったら終わりというタイプのものはあってもよいような気がいたします。したがって,4のところで,「事業型の公益信託について」という括りにするのは,なかなか,難しく,また,妥当ではないような気がします。ただ,かといって乙案にするのかというと,それはそうではありません。信託財産が費消されていくのは構わないが,長期間にわたり蓄財をしていってはいけないという話ですよね。そうすると,蓄財をしてはならないということをもっと全面に出した形での基準というものの方が適切なのではないかという気がいたしました。
○平川委員 助成型の公益信託はもちろんのこと,事業型の公益信託に限ったとしても,収支相償及び遊休資産の保有制限を認定基準とすべきではないということで乙案に賛成します。ただし,信託財産が不当に蓄積されることを防止するために,公益目的の信託事務による収益の一定割合を信託費用として支出することなどを認定基準とする規律を設けるというようなことは考えられるかもしれませんが,この規律の策定が技術的に難しい場合には,例えば毎年の公益信託事務の信託費用の支出の3年分程度の信託財産を遊休財産と認めるという規制が考えられると思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
  ここでは事業型と助成型の区分の仕方,それから,収支相償,遊休財産額の保有制限についての規律の具体的内容も含めた上での在り方というようなことを御議論いただいたかと存じます。
○新井委員 時宜に遅れた発言で申し訳ありません。先ほどの公益信託の受託者の資格についてと認定基準の関係について,一言,意見を申し上げます。一般信託法においては,目的信託の附則を除いて自然人も受託者になれるという規定になっています。それとの平仄から考えると,公益信託についても自然人を排除するというのはなかなか難しいという考え方もあると思うのです。それで,公益信託の受託者の資格については公益信託法では触れずに認定基準に持っていき,認定基準として取り上げるという考え方もあるのではないか。そこで,能力担保をきちんと認定基準に定めておくという考え方もあるように思えますので,その点も論点として検討していただきたいと思います。
○中田部会長 今の認定基準というのは法律には書かないで,別のところで誰かが決めるということでしょうか。
○新井委員 受託者の資格要件については認定基準に任せます。
○中田部会長 認定基準を誰が作成するかについては特に今の段階では。
○新井委員 法人にするか,自然人にするかということを,公益信託法の本則の中に要件として規定するのは避けた方がいいのではないかという意見です。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ほかに補足的な御意見などはございますでしょうか。
  司会の不手際で積み残しが出てしまいましたけれども,本日の審議はこの程度にさせていただきます。
  次回の議事日程等について事務当局から説明していただきます。
○中辻幹事 次回は,本日,積み残しになりました「第4 公益信託の認定基準」のうちの「5 公益信託の受託者の報酬」以降について御審議いただいた後,「公益信託法の見直しに関する補充的な検討(2)」と題する部会資料を事務局の方で用意いたしまして,公益信託の監督及びガバナンスの論点について御審議いただくことを予定しております。次回の日程ですけれども,3月21日(火曜日)午後1時半から午後5時半まで,場所は法務省地下1階の大会議室で行います。
○中田部会長 それでは,本日の審議はこれで終了といたします。
  本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。
-了-





法制審議会信託法部会第36回会議 議事録





 
第1 日 時  平成28年12月6日(火)   自 午後1時30分
                        至 午後5時31分
 
第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室
 
第3 議 題    公益信託法の見直しに関する論点の検討
 
第4 議 事 (次のとおり)
 
議        事
○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第36回会議を開会いたします。本日は御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  本日は,小川委員,稲垣幹事,岡田幹事,渕幹事,松下幹事が御欠席です。
  本日の部会より,三菱UFJ信託銀行から法務省に調査員として出向されています舘野豪さんが関係官として参加されることになりました。舘野調査員,簡単に自己紹介をお願いいたします。
○舘野関係官 法務省民事局調査員の舘野と申します。よろしくお願いいたします。
○中田部会長 よろしくお願いします。
  それでは,本日の会議資料の確認を事務当局からお願いします。
○中辻幹事 お手元の資料について御確認いただければと存じます。部会資料36,「公益信託法の見直しに関する論点の検討(5)」を事前に送付させていただきました。
  以上の資料について,もしお手元にない方がいらっしゃいましたらお申し付けください。
○中田部会長 本日は,部会資料36について御審議いただく予定です。具体的には途中休憩の前までに部会資料36のうち,「第1 公益信託外部の第三者機関による監督」と「第2 受託者の辞任・解任,新受託者の選任」まで御審議いただきまして,午後3時半頃をめどに適宜,休憩を入れることを予定しています。その後,「第3 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任」と「第4 公益信託における情報公開」を御審議いただきたいと思います。
  それでは,本日の審議に入ります。
  まず,「第1 公益信託外部の第三者機関による監督」について御審議いただきたいと思います。事務当局から説明をしてもらいます。
○立川関係官 「第1 公益信託外部の第三者機関による監督」について御説明します。
  まず,「1 公益信託の認定を行う行政庁等の権限」について御説明します。本文では,公益信託の認定を行う行政庁等は,公益信託事務の処理についての検査,勧告・命令,公益信託の認定取消しの各権限を有するものとすることでどうかという提案をしています。
  公益信託法第3条は,公益信託は主務官庁の監督に属すと規定し,公益信託の許可を行う主務官庁に包括的な監督権限を与えています。もっとも,主務官庁制を廃止して公益信託を民間による自律的な公益活動と位置付けて,これを促進しようとする観点から,公益信託の認定を行う行政庁等の外部の第三者機関が行う監督は,公益信託の認定基準への適合性を確保するために必要な範囲で行われるべきものと言えます。そこで,同様の観点から,行政庁の権限を規定しています公益法人認定法を参考にして,公益信託の認定を行う行政庁等は公益信託事務の処理についての検査,勧告・命令,公益信託の認定取消しの各権限を有するものとすることが相当であると言えることから,このような提案をしています。また,公益信託法第4条第1項は,主務官庁が公益信託の受託者に対し,財産の供託を求める命令権限を規定していますところ,新たに公益信託の認定を行う行政庁等にもこの権限を付与すべきか否かに関しても併せて御意見を頂ければと存じます。
  次に,「2 裁判所の権限」について御説明します。本文では,裁判所は,公益信託法第8条が裁判所の権限として規定している権限を有するものとすることでどうかという提案をしています。
  公益信託法第8条は,目的信託における裁判所の権限は原則として主務官庁に属するとした上で,その例外として一定の権限に関し,裁判所に属するものとしています。公益信託法第8条が裁判所の権限として規定しているものは,本質的に司法作用に適合する事項と考えられることから,新たな公益信託においてもこの規律を維持するのが相当と言え,このような提案をしています。
  次に,「3 検査役の選任に関する権限」について御説明します。本文では,検査役の選任に関する権限につき,甲案として公益信託の認定を行う行政庁等が有するものとする,乙案として裁判所が有するものとするという提案をしています。
  主務官庁制の廃止に伴い,信託法上は裁判所の権限とされているものでありながら,公益信託においては主務官庁の権限とされていたものをどのように扱うかが問題となります。別表1は信託の監督に関する権限につき,新たな公益信託において裁判所の権限とすべきか,公益信託の認定を行う行政庁等の権限とすべきかの検討結果などを整理したものです。
  ここでは,この表に記載した権限のうち,信託法第46条及び第47条が規定する検査役の選任に関する権限について,どの機関の権限として扱うかを特出しで検討しています。この点に関しまして,主務官庁制を廃止した後も公益信託の認定を行う行政庁等に公益信託事務の処理についての検査権限を付与することに伴い,その権限に付随する性格を持つ検査役の選任に関する権限については,公益信託の認定を行う行政庁等が有するとすることが相当であるとの考え方があり得るため,このような考え方を甲案として示しています。他方,検査役の選任に関する権限は,信託法上は裁判所の権限とされていますことから,主務官庁制の廃止に伴い,これを裁判所の権限とすることが相当であるとの考え方があり得るため,このような考え方を乙案として示しています。
○中田部会長 ただいま説明のありました部分について御審議いただきたいと思います。3点ございますので,一つずつ区切ってお願いいたします。まず,「1 公益信託の認定を行う行政庁等の権限」についていかがでしょうか。
○小野委員 一般論というか,そもそも論のところで確認したいといいますか,御議論いただきたいところがありまして発言させていただきます。司法作用という観点からの裁判所と主務官庁の権限の分配についてです。既に公益信託法8条により分配がなされていますが,その根拠として,補足説明5ページによりますと信託関係人以外の利害関係人,信託債権者等の関係については司法作用であり裁判所の権限とされ,一方においてガバナンスに関してはそうではないという立て付けになっているように読めます。しかしながら,ガバナンスという言葉そのものが必ずしも法律用語ではなくて,内部関係においても,信託関係人の関係と同様,当事者間において紛争関係がある状況というのは,個々の事例によるかと思いますけれども,あるかと思います。従いまして,利便性とか効率性からどちらがいいかという議論の前の議論として,そもそも,司法作用,裁判所法3条1項ですか,憲法まで遡るのかもしれませんけれども,裁判所の本来的な権限に属するものについて裁判所の権限であり,それがどこまでかという議論もあってしかるべきかと思います。この点についてはさほど御異論はないかと思うんですけれども,それの区別の仕方がガバナンスと信託債権者ということでは必ずしもないのではないかと感じまして,発言させていただきました。
○中田部会長 今の御発言に関連いたしまして何かございますでしょうか。
  それでは,今の点でも結構ですし,ほかの点でも結構ですが。
○林幹事 この検討事項は,抽象的である部分もあるものの,それ自体に特に反対というわけではありません。ただし,大きな制度の中で特に認定の取消しを見据えたときに,監督権限なりをどう位置付けるのかによって,後の辞任なり,解任なりでどう位置付けるのかが違ってくると思っています。そのときにどうすべきかというのはまだ私も明確に持ち切れてはいないのですが,基本的には,自律的なガバナンスがあって,軽量軽装備の公益信託というところから考えて,特に第三者機関による監督は認定と取消しを中心に据えた形での監督権限ということになるのだと思います。それから,小野委員も言われたように,一面では紛争性がある場合にどう権限を振るのかという観点があると思いますので,そういう観点から検討すべきと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 この第1点につきましては法務省案に賛成いたします。公益信託制度において主務官庁による許可制を廃し,行政庁による認定制度を取り入れるということを前提にすれば,公益信託の信託関係人による自律的監督やガバナンスの仕組みを確保した上で,認定を行った行政庁が第三者機関として公益信託事務の処理については,公益信託を監督していくことがふさわしいと考えます。そのため,当該行政庁等に検査,勧告・命令,認定取消しの権限を与えられるべきと考えます。財産の供託命令の権限についての言及がございましたけれども,公益法人制度にもない権限であり,改正された信託法の規定からも消失していることから,これらのバランスからいっても不要とであると考えますし,そこまでの強大な権限を行政庁等に与える必要性も実益もないと考えます。
  頂戴した36回信託法部会資料2ページ,第3項にも記載されておりますように,行政庁等の行う監督は飽くまで信託関係人による自律的ガバナンスを補充し,認定基準が継続して充足されているかをチェックするという補充的機能と捉える観点に賛成するものですので,受託者に対する財産の供託命令権限はかかる考え方にそぐわないと考えます。
○吉谷委員 提案の公益信託の認定を行う行政庁等の権限について,提案の権限を持つということには賛成いたします。ただ,行政庁の権限の範囲については少し議論したいと考えております。
  その前に質問を3点ほどさせていただきたいと思っておりますが,まず,公益法人認定法では事業活動の報告徴求,事業活動の状況等についての質問の権限というのが挙げられておりますけれども,今回の提案には特に記載がありません。これは検査の中にこれらの権限も含めて考えているという形での御提案なのでしょうかというのが質問の一つ目です。
  二つ目ですが,勧告・命令というのは公益法人認定法28条をモデルにしていると思われますが,認定取消事由がある場合に必要な措置をとるというために,勧告・命令をするということになっているのだと理解しました。ただ,認定取消事由の中に受託者や信託管理人に問題がある場合は,受託者や信託管理人の交代ということが考えられるわけですけれども,受託者の交代あるいは信託管理人の交代というのを勧告・命令するというようなことも,その中には入っているのでしょうか。受託者の交代という場合でいいますと,受託者に対する辞任勧告であるとか,信託管理人に対する受託者選任申立ての監督というようなことも考えられると思いました。
  そうしますと,質問の3番目なんですけれども,信託管理人という者も勧告・命令の対象になるのだろうというところが疑問に思われました。現行の公益信託法の3条は,公益信託の監督となっておりますけれども,これが受託者に対する監督と変わったとも読めますので,質問をさせていただきたいと思います。
○中田部会長 ただいま,その範囲について御議論があるとおっしゃったのが今の3点ということでございますか。
○吉谷委員 質問をお聞きした後で,続けてそこの点についてもお話ししようと思っていたんですが。
○中田部会長 分かりました。それでは,先に。
○中辻幹事 まず,御質問の1点目についてお答えします。公益法人認定法では事業活動の報告徴求,事業活動の状況等についての質問の権限が挙げられているけれども,今回の部会資料には記載がないと,これらの権限も含めて公益信託の監督を行う第三者機関の検査権限に入るのか,入らないのか,趣旨を確認したいという御質問と承りましたけれども,基本的にこれらの権限は第三者機関の検査権限の中に入る前提で御提案しております。
  2点目,勧告・命令について,認定取消事由があるような場合に必要な措置をとるために勧告・命令を行うというのは吉谷委員の御理解のとおりです。それを踏まえて受託者や信託管理人に問題がある場合に,受託者や信託管理人の交代を勧告・命令することはできるのか否かにつきましては,正にこの後,御議論していただく受託者や信託管理人の辞任・解任の論点と関連するところであって,そこで仮に第三者機関の職権行使を認めるということであるならば,この論点でいう第三者機関の権限にも入ってくるのだろうと考えます。ここは区別して考えた方が良いように思います。
  3点目,勧告・命令の対象が受託者のみなのか,それとも信託管理人も対象になるのか,公益信託法3条との関係での御質問ですが,認定・監督の対象として信託事務に着目するのか,あるいは受託者に着目するのか,いずれの立場に立つにせよ,公益信託事務の業務を遂行するのは受託者ですので,勧告・命令の対象は原則として受託者になると考えます。例外的に信託管理人が勧告・命令の対象になる可能性が全くないとまでは言えませんけれども,部会資料は勧告・命令の対象が受託者である場合をイメージして作成しております。
○吉谷委員 それで,権限の範囲について議論したいと申し上げましたのは,認定取消事由がある場合で受託者の交代で解決することが望ましいような場合に,受託者あるいは信託管理人についての職権の解任というのもあった方がいいのではないかなと,今回の提案の中には入っておりませんでしたので,それを議論させていただけたらと思ったところです。これは第1で議論すべき点であれば,続けてお話ししますし,第2,第3でということでしたら,受託者の職権のところは受託者の解任のところでお話ししたいと思います。
○中田部会長 この後,受託者と信託管理人についてそれぞれ御検討いただきますので,その際にお願いできますでしょうか。
  ほかに。
○小幡委員 今の質問の第1のところに絡むのですが,検査の権限のことですが,公益法人の方をやっていますと,今,公益法人認定法27条で報告徴求と,それから,立入検査というのが書き込まれていて,現実に3年に1回,立入検査をしているという実情がございます。今までの公益信託法にも検査というのはあるのですが,実態が分からないのでどのようにされていたかということを伺いたいのと,今度,新たに第三者機関としての取消しということに絡んで,調査をするという権限を書き込むという場合に,どこまで,例えば立入検査というのをきちんと何年に1回やっていくという,そういう作り,検査という一言だけで,その中身は詰めないということもあり得るのかもしれませんが,今の公益法人法の方では,そこは報告徴求と立入検査権と明確に書いてございますので,その辺りをどうしていくのかという質問です。
  実際に3年の立入検査というのは,結構,効いているといいますか,法人にとってみれば3年に1回,立入りが来るというのはかなりの負担でもありますし,制度をきちんと担保していくという上での必要性というのは,公益法人の方があるかと思いますが,今回,公益信託の方では,そこまで必要なのかということを今までの実態もふまえて議論しておいた方がよいのかと思いまして。
○深山委員 認定を行う行政庁等の権限について,ゴシック体で示された提案自体については賛成をしております。その上で,何人かの方からも御発言があったように,権限の具体的な行使の有様といいますか,あるいは運用の問題なのかもしれませんが,認定等を行う機関の役割をどう公益信託制度全体の中で位置付けるかというイメージを少し議論しておく必要があると思うんです。
  といいますのは,主務官庁制を廃止したということがまずスタートとしてあるわけですが,しかしながら,従前の主務官庁の役割をそっくりそのまま認定機関に求めるということを,それは必ずしも意味していないということは,余り異論はないと思います。他方で,公益法人の方の認定機関と同じような機能を期待されている面ももちろんあるんでしょうが,信託と法人の違いもあり,今の小幡委員の御発言にも関連しますけれども,公益法人における認定機関とそっくり同じ権限なり,役割を担わせるべきかどうかについては,また違うのではないかなという気がいたします。
  その違いの一つのポイントはガバナンスの構造であり,これまで議論もしてきましたように,公益信託においては,まずは内部的なガバナンスということで,信託管理人という機関を必置の機関とすることについて大方の賛同は得られていると思います。それに加えて,外部の第三者機関ということで,二重の構造にしようという方向で議論されていると思いますが,私のイメージは,言わば一次的には内部的なガバナンスに期待するものとし,更にそれをフォローするという意味で,二次的な監督機関として第三者機関は位置付けられてしかるべきではないかと考えております。
  この後,各論のところでも,同じ外部機関であってある種の監督的な機能を果たす存在としての裁判所との役割分担も問題になりますが,いずれにしろ,外部的な機関というのは制度全体から見れば,二次的なものという位置付けでいいのではないかと思います。別の言い方をしますと,公益信託が生み出される入口のところで正に認定という形で言わばお墨付きを与えるわけですが,その認定機関が,公益信託が出来上がった後,その後の事情の変更により認定した事情について何か危ぶまれるような事態が生じた場合には,認定の言わば延長線上の権限行使として,最も極端な場合には認定の取消しという強い権限も行使するし,監督命令という一つ前の段階の権限行使もあり,更に勧告・命令をするための前提として調査をするというような一連の権限を,言わば最終的な押さえとして与えておく必要があろうかと思います。繰り返しになりますが,飽くまでもそれは最終的なところでの言わば伝家の宝刀的な使われ方を期待しているものであり,そこに至る前に内部的なガバナンスにまずは期待するという制度のイメージを是非,御理解いただきたいなと私自身は考えておるところであります。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
○樋口委員 基本的なことでお伺いしたいと思いますけれども,私は専門は英米法ということにしているので,そうすると,そういうバイアスが入った上での発言だと思っていただきたいんですが,どういうバイアスかというと,信託というのは公益信託を含めてですけれども,結局,英米の世界では裁判所が育ててきたものなんです。それを何らかの形で日本では国情が異なるわけですから,何でもかんでも裁判所というわけにはいかないだろう。そのときの裁判所の役割とはまさにリーガル・サービスで,例えば公益信託の受託者が今度,こういうことをやりたいけれども,これは公益信託の目的の範囲内なのだろうかということを例えば指導してもらうということだってできるんです,裁判所に。つまり,とにかく何らか困ったときには裁判所へという体制が一応整っていてずっとやってきたという国柄と,しかし,ここで,つまり,日本においてはそういう話にはならない。
  そもそも,今までの公益信託法の8条だってそうだったのだからと言われてしまうとそうなんですけれども,そこで,質問が二つです。ここに,つまり,第三者機関,行政庁等に権限が委ねられて,それは裁判所ではないんだよと,裁判所には限られた権限しかないんだよという意味なんですけれども,第1問は非常に基礎的なことで申し訳ないんだけれども,行政庁等が第三者機関であれ,何であれ,行政庁等なんですから,勧告・命令,認定取消し,これは行政処分ですから,結局のところは,勧告が処分なのかどうか,私はよく分かりませんけれども,そうすると,そもそも,行政手続法や行政不服審査法の範疇には入るんでしょうね。そうすると,行政法上の不服申立ての対象となる処分手続はあって,それは私は最終的には裁判所にいけるものではないのかと思っているんですけれども,その理解で正しいのかどうか。これが一つ。
  二つ目は,5ページ目に出てくる,2か所しかないのかもしれませんが,本質的に司法作用に適合する事項だからという表現の意味です。この本質的に司法作用というものと,本質的に司法作用でないものとはっきりどう区別しているのが実際には明確に書いていないような気がするんです,私の読み落しかもしれないんだけれども,それとも皆さんにとっては本質的に司法作用というのは自明のことなのかどうか,これが第2点で本当に教えていただければ有り難い。
○中田部会長 ありがとうございました。
  それでは,小幡委員,深山委員,樋口委員から,それぞれ,御意見,御質問がございましたので,併せてお答えいただけますでしょうか。
○中辻幹事 小幡委員から御質問がありました主務官庁による検査の現在の実態について,これまでは公益信託の受託者の範囲が基本的に信託銀行に限られていたということもあり,主務官庁による定期的な検査は行われていないと承知しております。
  次に,深山委員から御指摘いただきました点について,私どもも,公益信託の認定・監督を行う行政庁等にどこまでの権限を与えるかは,受託者の範囲,信託事務の範囲,内部のガバナンスの在り方など,公益信託制度の全体的な枠組みの中で位置付け,考えていくべき論点であるという理解でおります。
  それから,樋口委員のおっしゃったとおり,そもそも信託は英米法系の制度で,裁判所の関与が英米ではかなり強うございます。逆に,日本では,10年前の新信託法制定時に,非営業信託に関する裁判所の監督について定めた旧信託法41条1項が削除されるなど,裁判所の権限は控えめにされています。公益信託について,英米で行政庁等がどのように公益信託に関与しているかといいますと,アメリカでは州のアトニージェネラル,司法長官のような機関が公益信託の監督に関与するほか,連邦のIRS,内国歳入庁という税を所管する機関が公益信託の税制に関与し,イギリスではチャリティ・コミッションが公益活動の登録や監督に関与するという立て付けになっているということで,旧民法の公益法人と合わせるような形で主務官庁制が採られている日本とは異なった仕組みが採られています。
  このように,各国それぞれ信託が発展してきた経緯や実情には違いがあり,それに応じた制度設計をすべきことは当然ですけれども,日本の公益法人認定法は,イギリスのチャリティ・コミッションを参考にして制定されたものでありますし,海外の制度が,新たなわが国の公益信託を作っていく上でも参考になると考えていることは,以前申し上げたときと変わっておりません。
  それから,処分性の関係について,公益信託の認定の取消しは間違いなく行政処分に当たりますし,受託者に対する命令も処分性はあると考えます。受託者に対する勧告は行政指導的な面があり,平成17年の最高裁判決や,勧告後の公表が公益法人認定法に規定されていることを踏まえても,公益信託の認定の取消しや受託者に対する命令と違い直ちに処分性があると判断することはできないという感覚を持ちますけれども,勧告の後の,認定の取消しや受託者に対する命令,これらの行政処分を受託者が不服とする場合には,行政訴訟において裁判所の御判断を仰ぐことが可能であると考えます。
  もう一つ,本質的な司法作用と,それ以外との区別ですけれども,今回の部会資料では,本質的な司法作用とは,具体的な争訟性があるもの,すなわち,双方当事者が対立構造にあって,その間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否を中立的に裁判所が判断するものを想定しています。ただし,裁判所が争訟性のある事件だけしか判断しないかといえば,そうではなく,非訟事件手続法というのがあって,争訟性を前提とせずに裁判所が権限を行使することもあるわけで,一般の私益信託でも信託法262条から264条までにより裁判所が非訟事件として関与することはありますし,その前提で部会資料は作成しております。
○能見委員 現在の公益信託法3条には公益信託は主務官庁の監督に属すると書いてありますけれども,ここで言う監督は広狭二つの意味があるといいますか,いろいろな範囲を持ち得る概念であるように思います。現在の公益信託法では,3条の監督というのが基本にあり,これを受けての4条などの規定があるようで,裁判所に権限が委ねられている場合も,3条の基本原則がかぶっていて,しかし,個別的に,この権限は裁判所に与えた方がいいだろうということで例外的に裁判所の権限として規定されている方に出ているのか,その意味で主務官庁の広い監督権限という考えがあるのか。必ずしもそうではないのか,そこら辺の考え方が現在の公益信託法ではどうもはっきりしないという感じがいたします。
  私も主務官庁の権限をむやみに広げるべきではなくて,裁判所の本来,監督に服すべきものも相当あると思います。そういう考え方からすると,例えば今までの議論と少し違う観点ですけれども,今後,新しい公益信託法というのを作るときには,現行3条のような非常に包括的な権限を主務官庁ではなくて主務官庁等,第三者委員会かもしれませんが,に与えるという規定の仕方は適当ではないのではないかと思います。先ほど来議論されていますように,具体的に検査,勧告・命令,それから,認定取消しに関連する権限,これらは主務官庁等といいますか,第三者の機関等に与えるというような形で権限の範囲を限定しておいて,ここに入ってこないものについては第三者委員会に包括的な監督権限があるという考え方からではなく,個別に検討するのがよいのではないかと思います。その結果として,裁判所になる場合もあるかもしれないし,第三者委員会になるかもしれませんが,こういう形で整理していくのがいいのではないかと思いました。
○道垣内委員 主務官庁制を廃止した後の官庁の役割というのが,公益をプロモートするものだと考えられているのか,それとも,税の問題その他で公益認定をするかどうかを決めるために存在していると考えているのか。この二つのいずれと考えるかは,微妙な違いがあると思うのです。
  例えば現行の公益信託に関する法律8条に掲げられている裁判所の権限のうち,受託者がいなくなった場合に新たな受託者を選任するというのは,ある種のプロモートなのかもしれませんけれども,解任したりするというのは,このままのこの人ですと公益の認定を取り消さざるを得ないということがあって,解任するのだろうと思うんです。これに対して,4条における検査というものの性格は,今一歩よく分かりませんで,例えば,そこにおける「必要ナル処分」というものが,当該信託の定める公益目的をプロモートするためには,こういうふうにしなければ駄目ですよ,といって指図するというのが「必要ナル処分」なのか,それとも,現在行っていることをそのまま続けるのだったら,認定は取消しですねといったことをチェックするというのが,そこにいう「検査」であり,改善しなければ取消しですよ,改善しなさい,というのが「必要ナル処分」なのか,よく分からないままでいるのです。
  そして,主務官庁制を廃止するというとき,最終的な公益認定の取消しはもちろんのこと,受託者の解任などは誰かがやらなければいけないわけであって,それを行政庁がやるというのは別に構わないと思うのです。また,行政庁に検査役の選任を申し立てる,ということもありえないではありません。しかし,善管注意義務違反などがあり,目的とした公益が十分に実現されていないというときに,それを何とかよい方向に持っていこうということを,行政庁が直接行うという仕組みにするならば,それはもはや,当該行政庁が監督をすることによって公益を実現していくという仕組みであって,話の出発点に話しているような気がいたします。
  8条の問題はともかく,4条については,検査権限を認めますよといっても,その検査とは何ですかと,担保を積むということ自体は平川委員がおっしゃったように削るとしても,必要な処分とは何ですかと,何のための必要な処分ですか,ということになり,そういったことを不明確なままにして議論をすることは難しいのではないかという気がしています。
○能見委員 今,道垣内委員は私が言いたかったこととほぼ同じことを理論的におっしゃってくださったと思うのですけれども,もしかしたら私の誤解で違っているかもしれませんが,それはともかく,私も今,道垣内委員が公益をプロモートするというのですか,あるいは公益信託が日常的な信託事務遂行の状況でより適切な形で行われることをプロモートする,あるいは「監督する」権限を主務官庁等あるいは第三者機関に与えるのは適切ではないのではないかと思います。先ほど現在の3条との関係で言いましたけれども,監督する機関に与えられる権限は,公益の認定との関係で必要最小限の範囲に限られるべきで,例えば検査についても公益信託の事務遂行が公益の認定基準を害するといいますか,満たさなくなっているかもしれないような問題についての検査であり,それについてのまた必要な勧告であり,処分であると限定して考えるべきなのだろうと思います。
  それ以外の権限は,当然には第三者機関にいくものではなくて,裁判所であったり,場合によっては,やはり第三者機関の方がいいということで,そこにいくことはあるかもしれませんけれども,そういうふうに権限の範囲を少なくとも従来とは違った発想で限定する,第三者委員会などによる監督は認定の取消しに関連するものだけが原則であるというのを考え方の出発点にすべきではないか。そういうことが先ほど述べたかったことです。そういう観点からすると,先ほども言いましたけれども,現在の3条のような規定は望ましくないということになる。仮に規定を置くならば,第三者委員会などの監督機関にどういう観点からどういう権限が与えられるかというのをもっと具体的に規定すべきであると思いました。
○中田部会長 ほかに関連した御発言はございますでしょうか。
○小野委員 大きな議論とは関連しないんですが,補足説明のところで,公益信託法4条1項の財産の供託というところで,松本崇さんの信託法コンメンタールを参考として,担保提供義務と解釈しておりますが,条文上は必ずしも担保と書いてあるわけではなくて,信託財産そのものの供託ということもあり得ると思うんですけれども,新しい制度の立て付けとして,担保であれば担保供託ということを明確にする必要がありますし,もともと,信託財産そのものが危機に瀕している状況で,信託財産とは別に同価値の担保を供託するというのも実効性が考えられないと思い,論点提示として発言しました。
○道垣内委員 少し分からないのですけれども,信託財産を預かってもらう,信託財産を供託することですか。
○小野委員 要するに信託財産を手元に置いて,それと同額の担保を提供するというのは,それだけのゆとりがある受託者であればいいですけれども,恐らくそういう状況ではないと思うので,信託財産そのものということも考え方としてはあり得るのではないか。財産の分別をより明確にするということなのかもしれません。いずれにしても条文上は明確ではないというコメントでございます。
○道垣内委員 私は制度としてはあり得ないと思います。
○中田部会長 小野委員は,場合によってはこのような制度を設けた方がよいということでございましょうか。それとも,いずれにしても設けない方がよいということになるんでしょうか。
○小野委員 強い主張ではなくて,松本さんが書いた特別法コンメンタールが根拠のようですし,その辺を議論しているものというのは恐らくほとんどないのではと思われ,条文上も必ずしも明確ではないのではないかと。解釈論として道垣内委員はそういう解釈論はあり得ないということだと思うんですけれども。
○中田部会長 現行法の解釈についてはいろいろ御議論があるかもしれませんが,今度の制度において,このようなものを設けた方がよいという。
○小野委員 そういう可能性もあるかもしれません。受託者が不適切で解任する他,それ以外に信託財産を分別するという考えです。
○中田部会長 先ほど平川委員からは,その制度は要らないのではないかということがありましたが,また,小野委員の方でより具体的な御意見をお示しいただけるかもしれませんけれども。
○棚橋幹事 少し全体的な議論が出てきておりますので,今回の部会資料のうち,裁判所に関わる部分全体に対して意見を言いたいと思います。今後,個別の規律の文言や,検査権限の範囲など,全体像との関係もあるので,その点が未定という留保付きではありますけれども,公益信託は公益の実現を目的にしている点と認定を行う行政庁等が当初,認定を行うという点で信託法上のほかの類型のものとは大きく異なるように思えます。信託法を参考にできる部分ももちろんあると思いますし,違いを考慮して検討する必要ももちろんあると考えておるところでございます。
  外部の第三者機関による監督については,規律や全体像がどうなるか次第ですけれども,信託法で想定されているような監督にとどまらず,先ほど少し出てきたような公益をどうプロモートしていくかですとか,何が公益に当たるのかですとか,そういった公益性に関わるような観点についても,考慮して判断する必要が出てくる場面もあるように考えております。裁判所の作用は,規範に対して認定した事実を当てはめていくという作用ですので,そもそも規範が何であるのか分からない場合や,規範がない状態で判断することになると,そういった判断を裁判所が行うのが本当に適切なのかどうか疑問があります。むしろ,認定を行い,検査権限,認定取消権限を有する可能性がある行政庁等が判断する方が適切な場面があるのではないかと考えております。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
○吉谷委員 財産供託命令につきましては,余り明確にこうでなければというところまでは,議論は私どもでは煮詰まっておりませんが,それはあってもいいかもしれないというような意見があります。監督の勧告や命令の内容というのが余り具体的にまだ分かっていないので,その内容によっては,そういうこともあっていいのではないのかと。どちらかというと,受託者の固有財産から供託をさせるような場面というのがあるのであれば,例えば信託財産に対する補てんではなくて,供託の方が有効な場面というのがあって,それが勧告などの範囲に入るのであれば,そういう制度はあってもいいのではないかと考えました。
○新井委員 先ほどの能見委員の発言について質問があります。能見委員の発言の趣旨は,第三者機関による監督は,認定取消し辺りに限定した方がいいと理解しました。その上で,例えば公益目的というのを積極的にプロモートする必要というのは,第三者機関の任務ではないと思いますけれども,プロモートまではいかないけれども,公益目的をサボタージュすると,意図的な違反ではないけれども,サボタージュするというような場合,第三者機関としては適宜,勧告などをするということはあってもいいのではないかという気がするのです。ですから,私はこの原案のとおりでいいと思いますが,その辺りの違いというのでしょうか,その辺りのところをもう少し能見委員の説明をお聞きしたいと思うのですが,いかがでしょうか。
○能見委員 余り具体的な場面というのは考えておりませんけれども,サボタージュしているというのは公益信託の受託者が全体としてグルになってというか,受託者がサボタージュしているということですか。
○新井委員 例えば年間に行うべき公益事業というのがほとんど行われていないような場合です。
○能見委員 分かりました。恐らくそういうものは本来,公益信託のガバナンスで解決すべき問題で,信託管理人がいれば,その信託管理人が行動を起こして受託者に適切な公益の信託の運営をさせるようにする,そういう意味では,基本的にはガバナンスでまず対応するということだと思います。ガバナンスが全然効かなくなってしまうと,これはどこから公益認定の問題に移行するか,難しいところはありますけれども,この信託はガバナンスも効かない,公益信託として機能しないということになれば,恐らくそれは取消しの直前の問題なのではないかと考えます。
○新井委員 分かりました。ただ,私としては信託管理人の役割はそこにもあるのでしょうけれども,ただ,第三者機関による監督の中にそういうものも含めていいのではないか,それを一切,排斥する必要はないのではないかという意見を持っておりますので,原案のとおりで賛成したいと思います。
○中田部会長 能見委員も一切,排斥するというのではなくて具体的に示すべきであって,包括的に委ねるべきではないという御意見かと承りました。
○能見委員 具体的なという意味は,特に現在の3条のような包括的な規定というのは望ましくないので,今日も議論になっていますけれども,検査,それから,勧告,処分,認定取消しに関しては,それ自体についても広狭はいろいろありますけれども,そういうものについて,監督権限を必要な範囲で規定することは構わないという意味です。その中の具体的にどういう権限が入ってくるかというのは,例えば検査の範囲について,条文としてなかなか書きにくい場合もあると思いますけれども,その場合には解釈として限定すればよいのかもしれません。いずれにせよ,公益信託における監督機関の本来の役割との関係での監督の範囲は何かということから決まってくるのだろうと思います。これは先ほど道垣内委員が言われたのと同じです。
○中田部会長 ありがとうございました。
○神田委員 私,議論を正しく理解していないかもしれませんが,1点確認していただければと思います。監督とか検査というものが,認定基準をも満たさなくなっているのかとか,あるいは認定取消しの基準ということになると思うのですけれども,そういうことが生じていないかということを見るというのは当然のことだと思うのですけれども,他方,先ほどサボっているというお話がありましたけれども,積極的に公益目的をプロモートするということがありえて,これらは両極端であると思います。私は真ん中があると思うのです。真ん中というのは,一般にコンプライアンスと呼んでいる法令違反です。
  法令違反のようなことが行われているかどうかというのは,監督の対象になると私は思っています。資料を読むとそうでもなくて,ここではより狭く認定基準あるいは取消基準の方をメインに書いておられるかなと感じました。私は真ん中の部分というのを明確にしておく必要があるように思いました。
○中田部会長 ありがとうございました。
  皆様の御意見を伺いますと,内部的なガバナンスをまず先にして,外部的なものはそれを補充的といいますか,二次的にするという,その構成についてはおおむね御異論はないように承りました。その上,外部の第三者機関の監督の在り方が現実にどこまでなのかを考えるのかということと,それから,規定をする上でどの程度,具体的に書き込むかというのと二段階があると思うんですけれども,それは現在の実態をも踏まえた上で,更に明らかにして具体的に検討する。その中には,最後に神田委員がおっしゃってくださったような真ん中の部分を含めて,どこまでを対象とするのかということをより明確にしていくべきだというように伺ったと思います。
  それから,財産供託命令については要らないという御意見と,あってもいいかもしれないという御意見,更にはより具体的なものを検討したいという御意見も頂いたと思います。この1の論点は,既に出ておりますけれども,2の「裁判所の権限」とも関係しておりますので,引き続き「裁判所の権限」についても御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。既に1についての御意見の中で,2についても相当,お出しいただいてはおりますが,更にございましたら頂きたいと思います。
○深山委員 正に1の議論と関連するわけですが,裁判所の権限を公益信託法8条に規定しているものについて認めるという提案自体に賛成いたします。更に各論的には,この後の議論で,より具体的なことが裁判所の権限として議論されると思うので,そこに譲りたいと思いますが,元々,公益信託についても信託法がベースにあるということからすれば,主務官庁制を廃止するということの意味合いからしても,本来,信託法全体が想定している裁判所に期待している役割については,基本的には公益信託においても全て妥当すると考えますので,そういう観点から,まずは総論的に裁判所の権限を積極的に認めるということについて賛成したいと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 私も公益信託法8条の裁判所の権限については法務省案に賛成で,これを原則どおり,司法に委ねるという考え方に賛成します。そのほかの論点についてはまた後で出てくると思いますので,そのときに随時,述べさせていただきます。
○中田部会長 ほかに。
○山本委員 質問なのですけれども,先ほど裁判所の権限として認める一つの基準として,本質的に司法作用に適合する事項ということが挙げられていました。その意味を確認するためなのですが,現在の公益信託法8条の1号に挙がっているもの,つまり公益確保のための信託終了命令等,これが今の基準と結び付いているのかどうか,何となく分からないわけではないのですけれども,どう結び付いているのかということを御説明いただけるでしょうか。それで理解が深まるのではないかと思いますので,お願いいたします。
○中辻幹事 公益信託法8条は,その各号で,これらは主務官庁制の下でも裁判所の権限として全て留保していると言えると良いのですが,8条の1号,これは非常に分かりにくい規定ぶりになっていて,信託法150条1項の規定による信託の変更を命ずる裁判については,一見,この条文だけを見ると信託法上の原則に則り裁判所の権限に留保されているようにも思えます。けれども,公益信託法8条1号は,同法5条及び6条で主務官庁が職権で信託の変更権限を行使することができると規定されていることから,職権により判断するのではなく信託関係人からの申立てに基づき判断する裁判所の権限規定である信託法150条1項が公益信託には適用されないことを示すために設けられている規定であり,1号の信託の変更を命ずる裁判については結局公益信託では主務官庁の権限となっているということになります。1号と異なり,公益信託法8条の2号から5号までについては公益信託でも裁判所の権限として留保されているわけですが,これらは各号の権限が非訟的な性格を有することを前提として裁判所の権限と整理されていると私は理解しています。
○山本委員 そうすると,現在の公益信託法8条が裁判所の権限として規定している趣旨と説明の中で述べられている趣旨とは,必ずしも一致していないということなのでしょうか。
○中田部会長 本質的に司法作用に適合する事項ということの解釈の問題だと思いますけれども,実際,先ほどおっしゃったような内容で,主としては争訟性を基準としつつ,非訟的なものも含むという御説明だったと思いますけれども。
○中辻幹事 私が本質的に司法作用と申し上げたかったのは,正に詐害行為の取消しとか,部会資料のなお書きの部分に書いてある部分で,資料が誤解を招くようなものであったかもしれません。すみません。
○山本委員 ただ,4ページの太字で書かれているのは,公益信託法8条が裁判所の権限として規定している権限を裁判所は有するものとしてはどうかという提案でしたので,全てについて説明で書かれている趣旨が当てはまるのかなと思って聞いていたということでして,それが誤解であればよく分かりました。
○中田部会長 ほかによろしいでしょうか。
○小野委員 既にきちんと出来上がった法律として,公益信託法8条が法制度上も問題ないという前提での議論と思うんですけれども,具体的に公益信託の個々の場面に当てはめていくと,信託契約の変更といっても,行政作用的な変更もあり得るかもしれませんけれども,当事者の争いのある中での変更ということもあるかと思います。今まで実際に使われなかったということもありますし,裁判になっていないということもありますけれども,また,事務局も公益信託法8条にのっとって全てを整理するとは,必ずしも言っていないかと思うので,具体的に当てはめていった段階で争訟性がある場合,争訟性というのは非訟事件であっても争訟性のあるものがあり得ると思うので,紛争性があるものについては裁判所の権限とし,一方,それと決して相対立するものではない認定機関の権限というのもあるかと思うんです。受託者の変更においては,公益信託とは関係なしに,信託法にのっとって必要な場合には裁判所がするとか,そういうような立て付けもあるかと思います。
○中田部会長 ほかに。1と2について,それぞれ,出発点として事務局案のようなものは理解できるという御意見が多かったと思いますが,しかし,より具体的に明らかにすべきであると,あるいは切り分けの基準についてもっとはっきりさせるべきであると,こういった御指摘を頂いたかと思います。どこかを出発点に置いて検討していくということにならざるを得ないわけで,その出発点として,取りあえず,今回,1と2というのが出たわけですが,更にそれを具体化し,あるいはその基準を明確にするということを検討していくのが次の課題かと理解いたしました。1と2についてほかに。
○樋口委員 現行の公益信託に関する法律にこうやって,3条であれ,4条であれ,8条であれ,こういう形で書いてあるわけだから,これから申し上げるのも今更という感じなんですけれども,まず,今日の資料の4ページ目のところに,この条文の中では五つがあるんだけれども,そのうちの第1号については,1号は本当に5条との関係でいうとどうやって理解するのか,本当に理解し難い,明らかな矛盾に満ちているような感じがしますけれども,改めて私は条文で読んだことがないから本当に驚きですけれども,ともかく,それを除いた四つをこうやって書いてありますね。そもそもの疑問は,この四つを書いていないと裁判所はできないのかということなんですよ。今日の議論なんかでも,結局,主務官庁は廃止するから行政官庁等かな,何ですか,適当な言葉は,第三者委員会のほうがいいかな,行政庁等ですか,新しい行政庁等がやれることというのを書いておくのはいいんですけれども,これは条文の形で明記しておく必要がある。
  それで,質問の形にしますけれども,行政庁等ができることをとにかく明確にする,一方で,裁判所ができることも明確にして,あらかじめ全部を書き分けるなんていうことができるとお考えなんだろうかというのが一つ。それで,かつ,しかし,行政庁等に取りあえず第一次的な何らかの権限を認めても,結局のところ,最終的には先ほど言ったような通路を通って裁判所に行くことはできるはずと思っていてよろしいんでしょうか。そうではなくて,事案によっては完全に裁判所には行かないで,これだけで終わりという話にするのかどうか,基本的には立て付けの話なんです。
○中辻幹事 御質問にお答えしますと,今の公益信託法8条の書きぶりというのは,立法技術の問題だと思うんですが,公益信託法3条が主務官庁に包括的な権限を与えるような書きぶりになっている関係で,裁判所の権限について特出しして置いておけば,あとは主務官庁の権限になりますよという整理だと思います。行政庁等の権限と裁判所の権限を截然として区別をすることが可能かどうか,また,主務官庁の権限になったら裁判所は手出しできないということになるのか否かについては,新たな公益信託における権限分配の論点に関する問題として,また考え込んでいくべき性質のことだと思いますし,今のところ,私どもは公益信託において行政庁の権限とした権限について,行政庁の権限だから裁判所は踏み込めない,その当否を判断できないということを考えているわけではありません。行政庁の処分の当否は裁判所が判断すべきであるように思います。
○中田部会長 1と2についてまだおありかもしれませんが,より具体的なテーマとして3の「検査役の選任に関する権限」がございますので,これについて御意見を頂きたいと思います。
○山田委員 2の最後について伺います。公益信託法8条の1号のことが少し話題になりましたが,ここに掲げられている信託の変更を命ずることができるのは,公益信託の認定を行う行政庁とするか,あるいは裁判所とするかという話は,また,どこかでもう一度,やるということでしょうか。
○中辻幹事 そのとおりです。信託の変更に関する論点は,次回で,併合・分割の辺りの論点とまとめて取り扱う予定にしております。
○山田委員 そうすると,2の「裁判所の権限」で公益信託法8条が裁判所の権限と規定している権限というのは,具体的に何を指すのかということですが,4ページの下から6行目から上にある①から④について,ここでは裁判所の権限としてはどうかということを諮っていると理解したらよろしいですか。
○中辻幹事 それと,先ほど山本委員からも御指摘がありましたけれども,詐害行為取消し等の権限についても事務局としては本質的な司法作用であって裁判所の権限のままでよいのではないかと考えておりました。
○山田委員 分かりました。
○中田部会長 それでは,2についてでも結構ですけれども,3の検査役の選任についてはいかがでしょうか。
○深山委員 結論として私は乙案に賛成したいと思います。これまでの議論とも関連しますけれども,元々,裁判所の権限であると,信託法上は位置付けられているものであるということが,やや形式的といえば形式的な理由です。実質的な理由としては,先ほども1のところで行政庁等の役割について議論がありましたように,私も能見委員のお考えと同じで,いわゆるプロモート的な,積極的にリードするような存在にはしない方がいいと考えておりまして,先ほど言いましたようにまずは内部的なガバナンスということもありますが,この場面でいえば,ここは裁判所が本来の職務として検査役の選任をするということで足りるし,むしろ,検査役の選任についてあえて行政庁等の権限として規定する必要はないだろうと思っています。
  ただ,1のところで検査というのが公益信託の認定機関の方にも権限の一部として出てきますので,そことの関係がやや問題にはなるんですが,ここで問題にしている検査役というのは,一般の信託でいえば信託法46条が規定しているような,受託者の行為に何か不正等が疑われるような場合を想定しているのでしょうから,46条でいうところの検査役の選任については,原則どおり,裁判所とする。もっとも,受益者はいませんので申立てをするのは信託管理人なのかなとイメージしています。信託管理人が裁判所に申立てをして,裁判所が選任するというのが一番素直な条文解釈でもあるし,実質的にもそれでいいだろうと思います。
  更に言えば,ここで裁判所の権限にしたからといって,行政庁が,認定等の維持の観点から,当初認定したときに前提にしたような事実関係が変わっているかどうかといったことを検査する権限が別に否定されるわけではないので,そこはそこで不都合もないだろうと考えているということを付け加えたいと思います。
○平川委員 私も深山委員と同説で,乙案の裁判所が検査役の選任に関する権限を有するということに賛成いたします。理由は,検査役の選任は行政庁等の信託事務の処理に関する監督権限の一環ということでは必ずしもないことから,司法の原則に戻り,裁判所が有するべきとすべきと考えます。ちなみに,一般法人法では同法46条,187条で社員総会や評議員会の招集手続に関する検査役の選任は,裁判所の権限とされているということを付言させていただきます。
○中田部会長 ほかに。
○棚橋幹事 基本的には先ほど述べたのと同趣旨ですけれども,検査役に即して申し上げますと,最終的には具体的な規律次第ですけれども,乙案で裁判所が選任するということになった場合,裁判所が,選任要件や検査役の人選を判断し,検査役から報告を受けることになると思いますし,その上で更に報告が必要かどうかを判断することになるとは思いますが信託法と仮に同じ文言の規律となった場合,信託法と同じ要素だけを考慮すればよいのか,公益信託については別の要素,つまり先ほど述べたような公益性に関わる判断が必要となるのかどうかという点は疑問に思っております。そういったことも考慮する必要があるということでしたら,認定機関ではない裁判所が行うよりも,認定や,特に検査権限を持っている行政庁等が行う方がより適切ではないか考えております。信託法には検査機関はないと思いますので,その辺りは信託法との違いがあると考えております。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○新井委員 私も乙案に賛成したいと思います。ただ,問題は請求権者を誰にするかだと思います。現行信託法では受益者となっておりますが,今度の理論構成では受益者はいないということになっているので,誰にするかが問題になります。先ほど深山委員の方から信託管理人ではどうかということでしたけれども,信託管理人も本来,検査役的な機能を持っていると思うのです。それがうまくいかないから検査役が必要ということになるわけで,そのときに信託管理人が自ら請求するというのも,どう考えていいのかなということがあると思います。そこで,私は乙案に賛成ですけれども,請求権者をどう具体的に規定するかというのが一つ課題かと思っています。
○中田部会長 もし,今の時点で具体的な御提案がおありでしたらお出しいただければと思いますが,更に検討するということにとどまりますでしょうか。
○新井委員 信託管理人に限定しなくてもいいのかなと思っています。受託者でもいいでしょうし,それから,場合によっては,委託者,受託者,信託管理人とするか,あるいは第三者機関を入れるのも一つの考えかもしれません。皆さんの御意見をお伺いできれば幸いです。
○平川委員 この後の議論ともつながるんですけれども,前回,35回で申し述べましたように,信託関係人の機関設計として運営委員会というものを必置とすべきであるという意見を述べましたけれども,その流れで,それを必置として運営委員会が検査役選任の申立権者となるのが妥当だと思います。
○中田部会長 ほかに。
○深山委員 今の新井委員の御質問というか問題提起について補足します。先ほど受益者に代わる存在として信託管理人が考えられるということを申し上げましたが,それは信託管理人に限るという趣旨ではなくて,委託者にも,認めて良いと思います。更に利害関係人にまで広げていいかどうかというのは,もう少し考えたいと思うんですが,最終的に裁判所が判断する解任の問題ともやや似たようなところがありますけれども,申立てをする必要があると感じて申立てをする人を余り絞る必要もなくて,そこは裁判所の方に判断を委ねればいいので,申立権者は少し広目に考えていいと考えております。
○新井委員 平川委員がおっしゃった運営委員会を請求権者にするという案については私も賛成です。ただ,前回の議論の流れからすると,運営委員会は設置しない,必置としないということが大勢と私は理解しましたので,あえてそれは申し上げませんでした。ですから,もし,運営委員会ということを置くとすれば,それがもちろん請求権者になってしかるべきだと思います。
○中田部会長 甲案,乙案の分布について乙案の方が多く意見がございますけれども,ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 私も結論としては乙案です。甲案については行政庁なり,第三者機関の方がよく分かっていて判断できるという考えもあるかもしれないのですが,結局,そもそも,検査権限なり,そうした権限が何かによって決まってくるはずと思います。それから,現行法においても公益信託法8条によって主務官庁の権限となっていますが,信託法46条を見ますと,後半の規定には即時抗告の手続等申立てのことが書いてあるので,これが8条によって主務官庁となったときに,どういう手続で動いていくのかというのはよく分からないところです。全てにおいて行政処分だから,行政不服審査法なりの手続に乗ればよいとの考えもあるとは思いますが,分かりにくいところです。そういう不服申立てのこと等も考えたときには,信託法46条を基本的にそのまま使い,裁判所の権限になった方が分かりやすいと思います。
  先ほども言いましたけれども,第三者機関にどの程度の権限を与えるかにも関連して,ここの検査役の意味があるのは第三者機関の権限とは違うところ,第三者機関にできないところであって,それを検査役にやらせるという発想でないといけないと思います。そうなったとき,少なくとも46条があるわけですから,その範囲のことであれば要件もある程度,明確です。特に行政庁がうまく調査や処理できない場合や,行政庁において調査に積極的でない場合もあり得るかと思いますので,そういうときのために裁判所による調査という意味においての検査役という制度があってもよいと思いました。
○神田委員 検査役が何をするかということだと思います。私が先ほど発言していただいたこととも関係するのですけれども,行政庁等がどういう権限を有するかということと関係せざるを得ないと思います。現在の信託法46条は,どういう場合に検査役の選任を裁判所がするかというと,不正の行為又は法令若しくは信託行為の定めに違反する重大な事実があることを疑うに足る事由があるときと,こうなっているわけです。それから,検査役が何をするかは読み上げませんけれども,その次に書いてあるとおりです。
  それで,検査役が調査した結果はどのように先へ進んでいくかというと,47条に書いてあって,裁判所に報告するわけですけれども,仮に不正の行為があったという報告があった場合に,その後,どうするかというと,47条の範囲でいいますとその6項と,読み上げませんけれども,公益信託の場合は行政庁等があるので仮に不正の行為があるかどうかというのは先ほどの行政庁の監督権限に含まれて,かつ,それを是正させるということもある程度と申し上げますけれども,行政庁の権限だとしますと,検査役をもし裁判所が選任して信託法46条・47条の線でいくとすると,調整というか,協力をしないと複線化されてしまうと思います。
  ですから,やや抽象的に今ある制度を出発点にすれば,裁判所が自然だとは思うものの,公益信託における行政庁等の権限というものがとりわけ私の先ほどの表現を繰り返させていただくと,真ん中部分,すなわちコンプライアンス,46条の言葉でいえば不正の行為又は法令・信託行為違反,これを是正するというか,改めていくものをどう制度設計するかということで決まってくる問題だと思いますので,その辺のバランスも考慮していただけると有り難いと思います。
○道垣内委員 神田委員がおっしゃったこととほぼ同じなので繰り返さなくてもよいのですが,先ほど裁判所が選任したら裁判所が報告を受けるのかと,それで,是正をするのかと,それは裁判所には無理なのではないかという話がありましたが,それは必然的ではないと思うんです。裁判所が選任するのだけれども,その検査結果は権限がある人に対して報告されるべきであって,そうなると,誰がどの権限を持つのか,どれだけの権限を持つのかというのと切り離して,ここは論じられないのではないか。神田委員がおっしゃったことと同じことを申し上げようと思っていました。
○小野委員 皆さんとほぼ同じことを言うことになるかもしれませんけれども,恐らく行政庁等が監督しているにもかかわらず,状況からして検査役選任が必要というのが一つの典型的な事例なのかもしれません。とすると,結論としては,甲案,乙案でいえば乙案なんですけれども,権限分配の議論としても裁判所が出ていく場面かと思いますし,場合によっては行政庁としての監督権限だけではどうしても踏み込めない第三者的な立場からの検査が必要であるということで,行政庁自体も検査役の申立権限を持つということもあると思います。
  信託管理人についても,信託管理人の守備範囲でどうしても情報が入手できないということで裁判所に申し立てて,場合によっては行政庁が問題なしとしているにもかかわらず,第三者的な目からすると受託者の行為とか内容については問題があるということで検査役の選任が必要となる,こんな紛争状況とかを考えると裁判所ということになりますし,申立権者というのは受託者に問題がある場合,信託管理人に問題がある場合又は認定機関自体の問題といいますか,そういう状況を考えると,なるべく幅広く申立権者を認めるというのがよろしいかと思います。
○吉谷委員 次の議題になってしまうんですけれども,私どもは受託者の選・解任については行政庁が関与すべきであるという立場に立っておりまして,それからしますと検査役についても行政庁ということになろうかと思いましたので,甲案賛成とさせていただきます。
○中田部会長 大体,よろしいでしょうか。
○道垣内委員 制度の作り付けとして,行政庁が最終的に解任権限を持って検査権限を持つのだったら,検査役制度は要らないですよね,行政庁が行けばいいのから。だから,全部の作りとすごく密接に関係していて,この部分は行政庁が選任しますか,裁判所が選任しますかとはなかなか決まらないと問題だろうと思います。行政庁が検査権限を持つのだったらば,検査役という制度はない方がいいと思います。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。確かに第三者機関の権限を決めないと,後が決まらないという御指摘はそのとおりなんですけれども,他方で,それを抽象的に決めるというのもなかなか難しくて,具体的な問題ごとに詰めていくという,両方から検討していただいていると思います。その上で,全体としては乙案の御支持の方が多く御発言いただきましたが,甲案の方がよいという御意見も複数頂きました。さらに検査役選任の効果との関係も考えていくべきだという御指摘があり,また,それと関連しますが,申立権者をどの範囲にするかということも御指摘いただきました。結局は第三者機関の権限ということに戻ってくるわけなんですけれども,それを更に具体的に,今日,御検討いただいたかと存じます。大体,第1についてはこの程度でよろしいでしょうか。
  それでは,第2に進みます。事務当局の方から御説明をお願いします。
○立川関係官 「第2 受託者の辞任・解任,新受託者の選任」について御説明します。
  第2の論点の検討に際しましては,受託者の辞任等に関する信託法及び公益信託法の規定を一覧にしました別表2を御参照いただければと存じます。
  それでは,1の「公益信託の受託者の辞任」について御説明します。受託者の辞任については二つの論点を提示しておりますが,まず,1点目の受託者が委託者及び信託管理人の同意を得て辞任することを可能とするか否かについて御説明します。本文では,甲案として受託者が委託者及び信託管理人の同意を得て(外部の第三者機関の許可なく)辞任することを可能とする,乙案として受託者が外部の第三者機関の許可なく辞任することを可能としないという提案をしております。
  公益信託法第7条は,公益信託の受託者はやむを得ない事由がある場合に限り,主務官庁の許可を得て辞任することができる旨を規定しており,公益信託の受託者は委託者及び信託管理人の同意を得て辞任することはできないと解されます。もっとも,新たな公益信託において公益信託内部の自律的な監督,ガバナンスを確保する観点などからは,委託者及び信託管理人の同意を得て受託者が辞任することを可能とすべきとの考え方があり得るため,このような考え方を甲案として示しています。他方,公益信託が公益の実現を目的とするものであり,受託者によって公益信託事務が継続的,安定的に運用されるようにすることが望ましいことなどから,新たな公益信託においても公益信託の受託者が委託者及び信託管理人の同意を得て辞任することを可能とすべきではないとの考え方があり得るため,このような考え方を乙案として示しています。
  2点目の公益信託の受託者が外部の第三者機関の許可を得て辞任することを可能とするか否か,また,許可を行う外部の第三者機関を公益信託の認定を行う行政庁等とするか,裁判所とするかについて御説明します。本文では,公益信託の受託者はやむを得ない事由がある場合に限り,甲案として公益信託の認定を行う行政庁等の許可を得て辞任することができるものとする,乙案として裁判所の許可を得て辞任することができるものとするとの提案をしています。
  公益信託法第7条は,公益信託事務の継続性,安定性に配慮してやむを得ない事由がある場合に限り,かつ,主務官庁の許可を得た場合に公益信託の受託者が辞任することを認めています。主務官庁制を廃止した場合,主務官庁の許可を要するとしているという点については改める必要があるものの,同条の趣旨自体は新たな公益信託においても妥当すると言え,公益信託の受託者はやむを得ない事由がある場合に限り,外部の第三者機関の許可を得た上で辞任することができるとすべきと考えられます。
  その上で,検討すべきは許可の主体となる外部の第三者機関をどのように考えるかですが,公益信託の受託者の資格要件該当性の審査を行った公益信託の認定を行う行政庁等が許可主体となることが合理的であるとの考え方があり得るため,このような考え方を甲案として示しています。他方,受託者の辞任にやむを得ない事由があるか否かは裁判所が判断することも可能であることから,裁判所を許可の主体とすべきとの考え方があり得るため,このような考え方を乙案として示しています。
  次に,「公益信託の受託者の解任」について御説明します。ここでは全部で四つの論点を提示しています。
  まず,1点目の受託者を委託者及び信託管理人の合意により解任することを可能とするか否かについて御説明します。本文では,甲案として受託者を委託者及び信託管理人の合意により(外部の第三者機関の許可なく)解任することを可能とする,乙案として受託者を外部の第三者機関の許可なく解任することを可能としないという提案をしています。
  新たな公益信託において公益信託の自律的な監督,ガバナンスを確保する観点からは,不適格な受託者を公益信託内部の信託関係人の合意により解任できるようにすべきとの考え方があり得るため,これを甲案として示しています。他方,公益信託事務が継続的,安定的に運営されるようにすべきとの観点から,公益信託内部の信託関係人の合意による公益信託の受託者の解任を認めるべきではなく,解任には公益信託外部の第三者機関の許可を要するものとすべきとの考え方があり得るため,これを乙案として示しています。
  次に,2点目の「公益信託の受託者の解任申立権」について御説明します。本文では,甲案として公益信託の信託管理人及び委託者に受託者の解任申立権を付与するものとする,乙案として公益信託の信託管理人に受託者の解任申立権を付与するものとするとの提案をしています。
  公益信託の信託管理人は,公益信託の受託者の信託事務を監督する立場にあることから,一定の事由がある場合に不適格な受託者の解任を外部の第三者機関に申し立てる主体とすべきと考えられ,この点は甲案と乙案とで異なるところはありません。他方,委託者に解任申立権を与えるか否かについては検討の余地があり,信託管理人が解任申立権を適切に行使しない場合が想定されることなどから,信託財産の拠出者であり,公益信託の運営の適正性に関心を有している委託者にも受託者の解任申立権を付与すべきとの考え方があり得るため,これを甲案として示しています。これに対して公益信託の公平な運営を確保する観点から,委託者の関与はできるだけ排除することが望ましく,委託者に受託者の解任申立権を付与すべきではないとの考え方があり得るため,これを乙案として示しています。
  次に,3点目の「公益信託の受託者の解任事由」について御説明します。本文では,公益信託の受託者の解任事由は,受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときとすることでどうかとの提案をしています。
  公益信託が公益の実現を目的とするものであり,受託者による公益信託事務が継続的,安定的に運営されることが望ましいことなどから,公益信託の受託者の解任事由は,受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときとすることが相当と考えられるため,このような提案をしています。
  最後に,4点目の「公益信託の受託者の解任権」について御説明します。本文では,受託者に解任事由があるときは,甲案として公益信託の認定を行う行政庁等が解任申立てに基づき,受託者を解任することができるものとする,乙案として裁判所が解任申立てに基づき,受託者を解任することができるものとするとの提案をしています。
  新たな公益信託において,公益信託の認定を行う行政庁等が受託者の資格要件該当性を判断し,当該行政庁等が新受託者の選任にも関与するものとした場合には,選任と表裏の関係にある解任に関しましても,行政庁等において解任事由の有無を判断するのが合理的であることなどから,公益信託の認定を行う行政庁等に受託者の解任権を付与すべきとの考え方があり得るため,これを甲案として示しています。他方,公益信託の受託者の解任事由があるか否かについては,裁判所において判断することも可能であることなどから,裁判所に受託者の解任権を付与すべきとの考え方があり得るため,これを乙案として示しています。
  次に,「公益信託の新受託者の選任」について御説明します。本文では,公益信託の認定を行う行政庁等が利害関係人の申立てに基づき,新受託者を選任することができるものとすることでどうかとの提案をしています。
  新たな公益信託において,公益信託の認定を行う行政庁等が受託者の資格要件該当性を判断するものとした上で,新受託者の選任については関与しないこととした場合,認定時の判断の意義が失われることから,公益信託の新受託者の選任についても,公益信託の認定を行う行政庁等が関与することが合理的であると言えます。また,公益信託の受託者の不在により,公益信託事務の運営が中断する状況はできるだけ回避されるべきでありますから,信託法第62条第4項の規定を参考に,広く公益信託の利害関係人に新受託者選任の申立権を付与すべきと考えられます。このようなことから本文のような提案をしています。
○中田部会長 それでは,今,説明のありました部分について御審議いただきます。辞任・解任,新受託者の選任は相互に関連しておりますけれども,幾つか論点がありますので,取りあえず,1,2,3を区切って御審議いただきたいと思います。もちろん,先ほどの議論でも出てきましたように,第三者機関の権限をどうするのかという大きな見通しが必要であるということはそのとおりなんですが,先ほどもお示しがありましたが,別表1というところにリストがありまして,その具体的なものを検討していくという中で,受託者についてどうするのかということも含まれているということになろうかと思います。そこで,受託者の辞任についていかがでしょうか。
○小野委員 すみません,また,一般的な質問といいますか,確認なんですけれども,受託者の資格要件等を当初,審査した認定機関がふさわしいという議論がよく出てきますが,以前の資料を確認していないので誤解があるかもしれませんけれども,議論のすう勢として定性的なことを資格要件としないような議論が,これまで資格要件を議論する際にあったかと思います。特に信託管理人がそうだったと記憶しています。という観点からすると,私は定性的な要件は必要という立場なので,私自身においてはずれはないんですけれども,これまでの部会での議論とずれがあるように感じます。もう一点,当初,この受託者だからこの信託については公益認定するというのが実質的な判断として下される制度の立て付けかどうかについてはいかがでしょうか。
  公益認定がどういう形で出るのかということにもよりますし,そこまで詳しく議論していなかったということかもしれませんけれども,その点について考え方の整理として教えていただければと思います。
○中辻幹事 すみません。今,小野委員がおっしゃられていた定性的ということの意味が今一つよく分からなかったので,少し補充していただければと思います。
○小野委員 信託管理人の前回の議論を覚えているんですが,能力,信用性という定性的な要件を加えるかという議論があったと思います。過去に刑罰を受けていないとか,そういう最低限の要件ではなくて。ここで議論している受託者の資格と言っているのは,恐らくそういう過去の前科うんぬんの話ではなくて,当該受託者が当該公益信託を遂行するにふさわしい受託者かどうかという観点だと思うんですけれども,そういうような基準が受託者の資格要件のところであったかという確認です。信託管理人の議論からすると,両説があったと思うんですけれども,そこでは議論のすう勢としては必ずしも多数が定性的な要件を支持する議論では余りなかったかと思うんです。すみません,間違っていたら余り時間をとらせてしまうので申し訳ないんですけれども。
○中辻幹事 いいえ,とんでもないです。分かりました。欠格事由のような形式的な消極要件と対比する意味で,受託者が公益信託事務を適正に遂行する能力とか,ある程度の財産的規模を有するという積極要件を定性的要件と表現するという前提で御質問を頂いたということで理解いたしましたけれども,私どもとしては,新たな公益信託の認定を行う行政庁等が,受託者の解任等の権限を行使する場合において,認定基準のうちの受託者の資格要件該当性も含めて判断する場合があり,その資格要件該当性には,形式的な欠格事由だけではなく,公益信託の受託者として相応しい能力を備えているという実質的要件,小野委員のお言葉を借りれば定性的な要件も含まれることも有り得べしと考えて,受託者等の辞任・解任の論点についての今回の部会資料は作成しております。
○中田部会長 また,その御議論はあろうかと思いますが,辞任に絞っていかがでしょうか。
○平川委員 先ほど少し頭出しさせていただいたんですけれども,前回,運営委員会を必置にするというのは主流から外れ,ほとんどフォローされなかった案なのかもしれないんですけれども,受託者の辞任の論点,これ以降,ずっと人事権に関するものなんですけれども,全てにおきまして丙案として運営委員会というものを必置とするという案を元に考えておりますので,その点を申し上げ,この件については丙案として信託管理人及び運営委員会の同意を得て辞任することを可能という丙案を提案します。すなわち,委託者と行政庁等を,受託者の辞任を含め信託関係人の人事に関与させるということに反対し,信託関係人による自律的ガバナンスの仕組みを確保した上で,人事については自主的に決める方法を採るべきであると考えます。行政庁に対しては受託者の辞任につき,届出を行うということにすればよいと思います。
  以下の関係箇所に共通する,以上の意見についての理由なんですけれども,今回の公益信託法改正の根本思想として,公益信託内部関係者による自律的なガバナンスを確保した上で,補完的に認定を行う行政庁等の監督に付されるような機関設計を念頭に置いてきているということは部会資料でも確認され,周知のとおりだと思います。それで,基本的な考え方として,まず,第1に主務官庁に代わる行政庁等は飽くまで補完的にガバナンスの維持を確保するための役割を担うものであり,人事に関する権限を与えるべきではないということ,また,第2に公共性の観点から,財産を拠出した利害関係人である委託者に人事を含む諸権限を極力与えないこと,以上の2原則は今回の公益信託法改正の根本思想として重要であるということを再度,強調したいと思います。この両者を両立させるために,前回の部会において運営委員会を必置機関としてガバナンスの一翼を担わせることを提言いたしましたが,今回,再度,この点を本論点に関連して申し上げます。
  およそ民間非営利組織の一つである公益信託において,官が関係者の選・解任,辞任了承など人事に一定の権限を持つような制度は絶対に構築するべきではないと考えます。また,出捐者である委託者が人事を含む支配権を保持するような制度も考えるべきではないと考えております。財団法人においては旧法人制度にはなかった評議員制度を導入した際,あえて当時の有識者会議の非営利法人法制ワーキンググループが理事会の諮問機関ではなく,意思決定機関,役員等選・解任機関として必置とした経緯も想起すべきであります。このことは平成16年9月15日,第19回有識者会議非営利法人制度の創設に関する試案その3に記載されております。
  今回の第36回信託法部会資料では,運営機関を必置機関として設計しないことを前提として,人事に関する各案を作成しているため,いずれの案についても公益法人協会として反対いたしまして,運営委員会を絡ませた案を独自案として提出するものです。運営委員会を公益信託の必置の信託関係人とすることは,これまでになかった制度ですので,又は機関設計を複雑にするなどの理由で受け入れられないとの考えが主流なのであれば,代替としては,信託管理人を複数人の機関とすることによって自律的ガバナンスを強化した上で,信託管理人の同意を得て辞任をするということを可能にする方法も採り得るかもしれません。
  しかし,機関設計をより明確にし,例えば信託管理人の選・解任の担い手が必要という意味でも,前回の部会で述べたとおり,運営委員会を信託関係人として必置機関として係る機関に人事決定権の一翼を担わせることにより,自律ある内部ガバナンスを確立する方法を提案します。結局,行政庁等と委託者を排除してしまいますと,選・解任,人事権を担うどこかの必置機関が必要になるという必然的な流れが運営委員会を必置機関とするという結論になると思います。
○中田部会長 ありがとうございました。今後,ほかの論点についても同じスタンスで臨まれるということで,今,基本的なお考えを承りました。
○深山委員 提案について,甲案か乙案かについては甲案に賛成したいと思います。乙案に賛成しない理由は,これまでも述べてきたことと共通しますが,外部の第三者機関の許可がなければ辞任ができないというのは素朴に納得感がないということもありますし,そこまでの強い権限を,先ほどの議論でいえば,積極的に公益信託の有様をリードするような役割を,外部機関に持たせるということについても反対するという観点から,乙案は採り難いと考えています。
  甲案について付言しますと,委託者と信託管理人が同意の当事者として挙がっていまして,これはもちろん遺言でなされることもあるかもしれませんが,契約でなされることを想定すれば,正に契約当事者がそろって同意していれば,その契約から外れるということを認めていいだろうという観点からもこの規律でいいだろうと考えます。もちろん,委託者がいない場合には信託管理人の同意ということになると思いますし,信託管理人が複数いれば,それぞれの各信託管理人の同意ということになるんでしょうが,要は他の契約当事者の同意を得て辞任するというのは,契約の規律として素直に理解できるところではないかと考えています。
○吉谷委員 受託者の辞任につきましては,1の(1)につきましては乙案賛成,(2)につきましては甲案賛成,ただし,検討事項を一つ御提案したいと考えております。公益信託におきましては,受託者の任務終了ということで,それで新たな受託者が選任されないまま,1年間経過することによって信託が終了となってしまうと。これを考えましたら受託者の辞任と解任は慎重であるべきで,新任と併せて行政庁が判断すべきであると考えます。そのため,辞任についても行政庁の許可が必要であると考えております。ただ,1点,検討事項として挙げさせていただきましたのは,(2)の甲案の上のところに,やむを得ない事由がある場合に限り,辞任することができるとなっておるんですけれども,これは後任に具体的な受託者候補というのがいて,それが選任されることが確実であるか,選任の認可を得たということでありましたら,別にやむを得ない事由というのがなくても交代していいのではないかと思われますので,これについては不要であると考えます。
○深山委員 先ほどの発言で(2)のことについて言及し損ねたので補足させていただきます。1の(2)のところの,やむを得ない事由がある場合に限りという点について,ここについては乙案でよろしいと思います。辞任をしたいと受託者が考えた場合,もちろん,いろいろな理由があり得るでしょうが,まずは(1)のところで委託者なり,信託管理人の同意を得て辞任するということができれば,そうするのではないかなと思います。したがって,(2)が問題になる場面というのは同意が得られない場合なのだろうなと。そういう意味では,同意が得られない場合にもいろいろな場合があるんでしょうが,何かしら委託者や信託管理人との間での見解の対立,考え方の対立がある場合に,それを適正に判断する中立的な機関として,甲案,乙案のどちらがいいかと考えると,それは裁判所がふさわしいのではないかという意味で,ここは乙案に賛成したいと考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 深山委員と重なりますが,ポイントだけ簡単に申し上げますと,(1)については甲案で,要するに信託契約をベースにする場合もあるし,軽量軽装備で自律的ガバナンスをするという公益信託を考えたとき,第三者機関の関与がなくても,関係者の了解があれば辞任できるという制度を残すべきと思います。そのときに委託者の関与を認めるかということについて,それはそもそも委託者の権限についてどう考えるのか,極力,減らすという方向なのかという方向性によるところです。ここは個人的には非常に悩みもあるのですが,今のところは,公益信託について委託者も一定の関心を持っていることから,委託者による関与が何らかあってもよいという観点からは,辞任という受託者の選択場面において委託者の関与があってもよいと考えますので,甲案に賛成したいと思います。
  この論点に関しましては,甲案を採用したとき,信託行為の別段の定めを置くことも認めるかという論点が書かれています。ここも非常に個人的には悩むところですが,確かに自律的ガバナンスの観点や,契約ベースという観点からは,こういうことがあってもいいとなると思っています。
  それから,(2)につきましては辞任ということで,解任と若干ニュアンスが違うことは承知していますものの,受託者の地位がなくなるという場面であることと,要件がやむを得ない事由だということであるので,争訟性は多少低いかもしれませんが,やむを得ない事由については裁判所の判断に一応なじむのだろうと考えています。
  あとはやむを得ない事由の解釈ですが,吉谷委員も仰られたのですが,既に候補者がいる場合はやむを得ない事由を緩やかに考えてもいいのではないかと考えられることと,(1)で合意による辞任を否定すると,ここのやむを得ない事由を幾らか緩やかに解さないと,不都合が生じるのではないかと考えられる点を申し上げます。
  それから,この後の論点全般ですけれども,吉谷委員も触れられたように,受託者が1年間いないと終了するという,そういう規律があって,公益信託にもそれの適用があるのかというのがあって,当然,あるのだろうという前提で議論はしています。そこを見たときに,そういう受託者不在の状態になってはいけないから,第三者機関にコントロールさせるという考えもあれば,自律的ガバナンスによるべきであって,1年間受託者不在の状況があるかないかというのは自律的ガバナンスの範囲であるから,一定の段階で公益信託は終了する規律もあるわけで,そこに委ねるという考え方もあると思っています。そういう意味において,行政庁ではなくて自律的ガバナンスに委ね,一定の場合は裁判所の関与によってコントロールする,そういう考えでおります。
○棚橋幹事 受託者の辞任に関しての意見ですけれども,この後の受託者の解任ですとか,信託管理人の辞任,解任,新選任にも関わってくる共通の意見になりますが,基本的には,公益信託と,信託法上の信託とは違うだろうと考えています。まず,先ほど小野委員の方から受託者の認定要件のお話がありました。この点について,第32回の部会資料の16ページ,第3の受託者の範囲の部分は,認定要件の議論であるという御説明があったかと思いますけれども,この議論の際には,公益目的の信託事務を行うのに必要な経理基礎及び技術的能力を有する法人であることを要するという丙案に賛成する意見もあったかと記憶しております。こういった実質的な要件について認定を経ているという点で公益信託と信託法上の信託には違いがあります。ですので,認定機関が辞任などについて判断するのが適切であると考えております。
  また,仮に信託法と同じ文言の規律となった場合に,判断する内容が信託法と同じ内容なのかについても疑問があります。認定要件が先ほど述べたような実質的なものとなる可能性もありますが,その関係でやむを得ない事由が,信託法と同じように病気などといったことのみを意味するのか,そうではないのかという点には疑問があります。こういった点について信託法とは異なる要素,公益性などについても判断する必要があるということになるのであれば,裁判所よりは認定を行う行政庁等が判断する方が適切であると考えております。
○中田部会長 ただいまの御発言は,1の(2)については甲案がよいという御発言かと承りましたが,1の(1)についてもし御意見がございましたら。
○棚橋幹事 (1)については特段意見はございません。
○中田部会長 ほかに。
○小野委員 関連する質問なんですけれども,当初,認定のところに受託者が誰かということも特定された内容での認定となるんでしょうか。公益法人の理事の場合にはそうではないのではと思いますけれども,先ほどの回答からしても,恐らくこの受託者であるがゆえに,この公益信託は認定されるという流れなのかなと思いつつ,そうだとすると,ある特定の受託者が認定の対象であるということになれば,その受託者でなくなるということは,認定の要件自体が欠如していくような考えもあり得るのかなと。
  結論としては甲案なんですけれども,そうすると,乙案も出てきてしまうのかなと思うんですけれども,私は甲案なんですけれども,仮に乙案を支持する方もいらっしゃると思うので,甲案としたときの許可のときの要件,先ほど樋口委員も行政処分に問題があれば不服申立てはできるんですねと,行政手続法にのっとるんですねということだったと思うんですが,許可の要件というのはやむを得ない事由があることを疎明すれば,当然,許可されるということなのか,やむを得ない事由があったとしても,元々の認定上はあなただったのだから許可できませんということで終わることもあるのではないか。裁判所の許可も基準を規定していないではないかと言われてしまうと,そのとおりなんですけれども,裁判所に対する大きな信頼関係があるということで,それは一応脇に置いて,行政庁の場合,許可する,しないというのはどういう判断に基づくのか,ということも仮に乙案の場合に,疑問に思ったりしたので,その辺りについても教えていただければと思います。
○中辻幹事 1の(1)の乙案ということでお答えしますと,ここは1の(2)のやむを得ない事由がある場合に限りということとセットで考えております。このやむを得ない事由について,一般の信託では,受託者が天災とか病気によって,その職責を果たせなくなった場合ということであると解釈されていて,そのような事由があるか否かについて認定行政庁等の方で御判断いただくということを考えておりました。先ほど吉谷委員のお話に出てきた新たな後任の受託者候補が見付かっているような場合については,やむを得ない事由というのを柔軟に解釈して,その考慮要素の一つになる可能性はあるように思う一方,後任の受託者の存在は,天災や病気との事由とは質的に異なりますので,考慮要素とすべきではないという考え方もあり得るように思います。
○吉谷委員 私も1点,言い忘れておりましたので,受託者が後任を見付けて交代したいということで行政庁に対して辞任の申出をするときには,信託管理人の同意は不要なのではないかと考えております。逆にそうあるべきだと思います。受託者が誰かというのは,公益信託において重要な要件でありますので,行政庁が関与して判断して,その上で辞任と選任とセットで認めるべきであると思うのですけれども,その際に信託管理人の同意がなければならないということはないのではないかと思います。
○中田部会長 今は1の(1)の乙案を採ることを前提のお話ですね。その乙案においては,必ずしも信託管理人の同意が前提になっているかどうかは明示していないと思うんですけれども,今のお話は仮に信託管理人の同意,プラス,許可が必要だという場合にということでございますね。
○吉谷委員 そうです。
○中田部会長 そこは多分,同意がなくても許可があればという考え方もあり得るのだろうと思います。
○新井委員 先ほど平川委員から運営委員会の導入について改めて提案があって,そして,受託者の辞任について運営委員会を媒介項にするというような動議が提出されまして,私もそれをセコンドしたいと思います。その上で,もし,それが大勢にならなければ乙案を支持したいと思います。丙案というのは委託者がかむことによって,いろいろな問題が生じてくると思います。公益信託というのは委託者が公益のために財産を出捐して,委託者の支配権が及びませんという制度ではないかと考えるわけです。委託者というのは公益信託の関係者の中で非常に大きな権限を持って,事実上の影響力を行使できるわけです。ですから,そのアンデューインフルエンスということを考えると甲案には大きな懸念があります。したがって,乙案を支持しますが,これは予備的主張です。それから,(2)の方はやはり乙案,裁判所の許可を得て辞任することができるということを支持したいと思います。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。大体,よろしいでしょうか。
○山本委員 特に(2)を判断する前提として,先ほどから「やむを得ない事由」を要件とするかどうか,するとして,その内容がどのような考慮によって決まってくるのかという問題があることが指摘されていました。この点を詰めないまま,答えを出すのは難しいのではないかと思うのですけれども,どのような理解を前提にして考えていけばよいかということを確認させていただきたいのですが,その点はいかがでしょうか。先ほど中辻幹事からは,一般に言われているやむを得ない事由,特に病気その他の遂行を困難にする事由があるということがどうしても要件になってくるのではないかという御意見でしたけれども,本当にそうなのか,そうでないのかという点は,結局,どう考えればよいのかという質問です。問題提起というべきかもしれませんが。
○中田部会長 恐らく現行法の7条にやむを得ない事由というのが出てきて,それを前提としたときにどうなるのかという一つの案だと思います。その上で,やむを得ない事由という概念を明確にする,あるいはこの概念を使わないということを含めて御意見を頂ければと考えております。
○山本委員 先ほどからの議論の中で私が理解したところによりますと,(1)で乙案を採用するならば,(2)は柔軟に解する必要がどうしても出てくる。そのときに,やむを得ない事由を柔軟に解釈する,とりわけ,公益信託の維持という観点から果たしてやむを得ない事由かどうかということを考えるということが出てきやすい。そうすると,本当に「やむを得ない事由」という文言で縛るのがよいのかどうかということが,吉谷委員からも問題提起があったところではないかと思います。その点を整理しないと,(1)で乙案を採用し,(2)を考えるというのはうまく機能しないのではないかと思います。
  それに対して,(1)で甲案を採用するのであれば,そこは必然的ではなくなると思いますが,委託者を入れるかどうかは別として,信託管理人の同意が得られる場合は問題なく辞任することができる。しかし,同意が得られない場合は,やむを得ない事由があるときには(2)で許可を得て辞任することができるという流れになるのではないか。それらによって,やむを得ない事由を要件とするかどうか,するとしても,その意味をどう考えるかということがかなり大きく違ってくるのではないかという印象で,決めかねるところがあるというのが先ほどの問題提起の趣旨でした。
○中田部会長 もちろん,議論の整理をする必要がありますし,今のような御整理でよろしいと思うんですけれども,それを前提として,もし,御意見があればお出しいただければと思いますけれども。
○山本委員 意見としては,(1)においては甲案を採用すべきではないかと考えます。そうしますと,先ほどのように,やむを得ない事由を柔軟に解する必要があるかどうかという点については,少し簡単に考える可能性が出てきます。しかし,それでも,つまり,(1)で甲案を採用するとしても,(2)でなおやむを得ない事由を要件とすべきかという点は,なお,問題が残るだろうと思います。公益信託であり,その維持をはかるという観点に照らしてやむを得ないかどうか,ないしは辞任を適当とすることができるかどうかいうような判断がどうして行われていくのではないかと思います。そのときに,やむを得ない事由という文言を使うことが本当によいのかどうかは,疑問が残るように思いました。ただ,答えは簡単に出ない問題だろうとも思いました。
○中田部会長 ありがとうございました。答えを何とか取りまとめていく必要がありますので,いろいろ,御意見を頂ければと思います。
  ほかに。大体,よろしいでしょうか。
  本来,休憩を予定していた時間に来ておりますけれども,途中ですので続けさせていただきたいと思います。次に解任についていかがでしょうか。

  

  平川委員,先ほど運営委員会についての一般論は伺っていますので,それを前提とした。
○平川委員 具体的に当てはめますと,解任につきましても信託管理人及び運営委員会の合意により解任することを可能とするというのが(1),(2)につきましては,これが解任権者の合意が得られない場合を想定しているというのであれば,信託管理人及び運営委員会に受託者の解任申立権を付与するという提案になります。委託者に先ほどの辞任の同意権とか,解任申立権を与えるということは,信託財産を出捐して信託に移転して,その支配権を放棄するということになると思うので,税法上も器に対して支配があるということで問題なのではないかと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 先ほどの辞任の流れからいきますと,解任に関する2の(1)は甲案でして,委託者及び信託管理人の合意により解任を許すという意見です。自律的ガバナンスの観点からです。それから,委託者の関与も先ほどと同じで,一定,認めるという観点から,解任についても委託者の関与も認める意見になります。(2)の解任申立権においても,委託者の関与を一定,認めるということで甲案と考えています。(3)の解任事由につきましては,取りあえず,この提案には賛成です。最後の(4)の解任権というか,解任する主体,これについては先ほどと同じで辞任よりも解任の方がなお争訟性が強いと思いますので,裁判所の関与を認めるべきと考えます。その判断の対象となる事由を何と捉えるかという問題もここでも出てくるのかもしれませんが,任務違反であったりとか,信託財産に一時損害を与えたというような事情があることは,裁判所でも十分判断いただけることだと考えます。
○深山委員 結論は私も同じなんですが,やや補足的に申し上げますと,(1)のところについては甲案に賛成で,乙案のような形で第三者機関がこの場で主導的な解任権限を持つというのは妥当でない,言い方を変えれば,まずは内部的なガバナンスが正に発揮される場面ですし,信託管理人が監督権限を行使する後ろ盾として解任権を信託管理人に与えるということに意味があるのだろうと思います。ここはある意味,新しい公益信託制度の中心的な役割といいますか,重要な役割を信託管理人に与えるということを支える実質的な仕組みとして,解任権を与えるということに意味があるのだろうと思います。
  (2)のところについては,申立権については,ここは問題提起をするべき人は広目でいいと,先ほども検査役のところでも申し上げましたが,そのような観点から甲案に賛成したいと思います。これは(3)の解任事由がある場合に解任が認められるということでしょうから,そういう意味では,(4)のところで乙案に賛成して,最終的には裁判所がしかるべき解任事由の有無を判断するという仕組みを前提に,申立権は広目に認めるということを支持したいと思います。
  解任事由については,表現としてはこのような表現になるのかなと思いますが,典型的な例示として「任務に違反して信託財産に著しい損害を与えた場合」というのを挙げて,あとは「その他重要な事由」と,いきなり,ものすごく抽象的になってしまうのがやや気になっています。包括条項にするにしても,例えばですけれども,就任を認め難い重要な事由とか,もう少し何か言葉を補足してもいいような気がいたしますが,いずれにしても趣旨には賛同いたします。(4)は先ほど言いましたように,正にここは裁判所が判断すべき問題だろうと思いますので,乙案を支持したいと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 まず,(1)につきましては乙案に賛成です。理由は先ほど述べましたところと同じということになります。そして,(2)なんですけれども,信託管理人の解任申立権につきましては,制限をするべきではないと考えておりますが,委託者の申立権につきましては信託行為により付与可能という形がいいのではないのではないかと思います。そうしますと乙案で,ただし,委託者の申立権は信託行為により付与可能ということで,乙案の説明とは違う形になりますけれども。委託者の中には関与を望まれない方もいらっしゃいますので,それをあえてデフォルトで付けることはないのではないかと考えております。第35回の第4の論点で甲案として出されたものに賛成ということでございます。
  (3)の解任事由につきましては趣旨に賛成でございます。そして,(4)につきましては甲案に賛成で,更に職権による解任権を認めるべきであると考えます。元々,行政庁の職権として認定取消しがあるとしても,受託者が交代すれば認定取消しを行わなくてもよい場合にまで認定取消しということをしてしまうのは本末転倒であると思います。ですので,認定取消しよりもより手前の柔軟な対応として,職権による解任というものを認めることが適切であると思います。受託者に問題があって,解任によってしか問題が解決しないような場合があるときに,信託管理人が受託者の解任を申し立てなければ,行政庁が職権で解任するよりほかに方法がないと考えますので,公益信託が適正に運用されるためには,伝家の宝刀として行政庁による解任というものがあってしかるべきなのではないかと考えます。
○棚橋幹事 意見があるのは(4)の点のみですが,先ほどと同様に,認定要件として実質的なものを採用するということになりますと,認定機関ではない裁判所よりも行政庁の方が適切ではないかと考えます。また,解任事由のその他重要な事由というところにどういったものが入ってくるのか疑問があり,ここに何が公益なのかというような要素が入ってくるのだとすれば,認定を行う行政庁等の方が適切ではあると考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。先ほど(1)と(2)についてはお伺いしました。
○平川委員 (3)(4)を申し上げていないので申し上げますと,(3)につきましては法務省案に賛成いたします。受託者に責めに帰すべき事由がないような場合にでも,信託関係人が任意に受託者を解任することができるとすると,公益信託事務の継続性,安定性を確保するのに支障があると考えるからです。(4)につきましては乙案に賛成します。さきに述べましたとおり,行政庁の権限は特に人事権については主務官庁制度によったときよりも減縮することが望ましく,受託者の解任に行政庁等が関与することが必須でもないことから,受託者に解任事由があるかどうかについては司法の手に委ね,裁判所が判断することが公平妥当な結論であると考えます。
○能見委員 解任のところの全体の仕組みを柔軟に理解したいという立場から,少しその導入論的な話をしたいと思います。ここで問題となる解任というのは大きく分けると,(1)のところの任意の解任というんでしょうか,それから,(2)(3)(4)はセットになった,これは解任事由がある場合の解任と,そう分けて考えるべきなのだろうと思います。(1)のところは委任なんかでいうと,任意の解約権と言われているものに相当するわけですが,信託の場合にも委託者は受託者との信頼関係を基礎にしてその受託者に信託財産を頼んでいるので,その信頼関係が損なわれたというような場合には,別に解任事由がなくても自由に解任できると,そういう解任なのだろうと思います。
  そこで,(1)の結論としては甲案でいいと思っているんですが,普通の私益信託の場合には確かに委託者ないし受益者ですけれども,その者と受託者の間の信頼関係がなくなれば自由に解約できるという形を設けていいのだと思います。けれども,公益信託になると,本当にそこまで自由でいいのか,委託者と信託管理人の合意によって解約するなら,解任事由なく自由に解任できるというのでいいのかというのは気になるところであります。ただ,考え方としては,本来は解任事由があって解任されるべきですけれども,解任事由にきちんと相当するような事由があるわけではない,しかし,どうも不適切だ,そういう場合にも,(1)のところでは解任できるとしているという理解するのがいいのではないかという考え方を致しました。
  (2)(3)(4)の方は,これも皆さんが言われているとおりですけれども,ここでは解任事由があることを最終的には裁判所等に判断してもらって解任することになると思いますので,申立権者自体は,そういう意味では広くとらえて信託管理人のほかに委託者も含めて構わないだろうということで甲案がよいのかと思います。解任事由について定める(3)はこのとおりでよいと思います。そして,申し立てを受けてどこで解任事由の有無を判断するかについての(4)では,私の考えでは裁判所が判断するということでよいと思いますので,乙案ということになります。受託者の解任の仕組みについてはそういう立て付けになっているという理解の下で選択肢を選べばよい。私の意見は,先ほど申し上げましたが,(1)については甲,(4)については乙ということです。こういう理解でよいのかと思いました。
○中田部会長 ありがとうございました。(1)と(2)以下との理解について,今の能見委員の御理解でよろしいんでしょうか。
○能見委員 違うのかもしれませんが,私としてはそう理解すべきではないかと思ったのですが。
○中田部会長 一応,事務局の方から。
○中辻幹事 能見委員の御理解と私どもが今回の部会資料を作っていたときとの認識とにはそごがあるように感じておりまして,すみません。私どもとしては,部会資料第2の2(1)と,(2)から(4)までの論点,これを任意解任と強制解任のような形で分けて論じているわけではなくて,(3)の解任事由は任意解任のときにも当てはまるものであり,任意解任でも(3)のような限定的な解任事由とすることが新たな公益信託では適切なのではないかと考えておりました。ただし,能見委員の御指摘のように,信託法58条1項では受益者及び委託者の信頼が失われれば,いつでも,また事由を問わず受託者を解任できることになっていますので,(1)の任意解任の場合に解任事由を限定しないという考え方もあり得るとは思います。もっとも,能見委員も,いつでも,どのような事由でも信託関係人の合意で解任できるようにすべきであるとはおっしゃっておらず,(3)の限定的な解任事由を合意による解任の場合には多少膨らみを持たせるべきという御意見を頂いたものと理解しましたが,違いますでしょうか。
○能見委員 先ほど述べましたように,私も解任事由を全く不要とする任意の自由な解約権というのは,公益信託の場合には,私益信託と同じように全面的に認められるのは適当ではないかもしれないという疑念もありますので,少し,そこは制限しなくてはいけないのだろうという認識をもっていました。しかし,解任事由を(1)と(2)以下で同じに解すべきだというのではなく,(1)と(2)以下は別なものとして理解した方がいいという趣旨で申し上げました。部会資料を丁寧に読まないで,その趣旨を誤解した点は申し訳ありません。この資料を作られたときの趣旨は,(1)の場合にも解任事由としては(3)がそのまま当てはまるということなのですか。
○中辻幹事 部会資料を作ったときにはそのようなことで考えておりました。ただ,別の考え方があり得るとは思います。
○中田部会長 一応,事務局の方の資料を作ったときのお考えは以上のようなことでして,そうすると。
○能見委員 ごめんなさい,そうすると(1)の(2)の関係ですけれども,(2)のところは解約の申立権ということで,最終的には解任事由があって,最後の(4)のところで甲案と乙案で違いますけれども,事由があるかどうかを判断して解任が認められると,そういう構造ですね。(2)以外に積極的に(1)が意味を持つのは,ごめんなさい,どういう場合になるんですか。
○中辻幹事 (1),(2)に続いて(3),(4)とありますけれども,(3)の解任事由があると信託管理人や委託者が判断した場合に,それらの者が受託者解任の申立てを(4)の認定行政庁又は裁判所に対して行い,その申立てに基づいて,認定行政庁又は裁判所が(3)の解任事由の有無を客観的に判断して一定の結論を出すということになります。
○能見委員 ただ,裁判所が自ら動くわけではなくて,申立権者がいて申立権者の申立てがあって裁判所なり,行政機関が解任事由があるかどうか判断して,それで解任を認める。
○中辻幹事 そのとおりです。解任の申立てに当たっては,例えば信託管理人と委託者の合意があって申し立てる場合もあるでしょうし,そうではなく,信託管理人あるいは委託者が単独で解任を申し立てるということもあり得ると考えています。例えば,(2)公益信託の受託者の解任申立権の論点においては,信託管理人及び委託者のどちらにも受託者の解任申立権があるとするのが甲案で,委託者をそこから外して信託管理人だけに受託者の解任申立権があるとするのが乙案なのですが,この論点で乙案を採る場合に,信託管理人が委託者の同意を得て受託者の解任を申し立てることができないかといったら,そのようなことはないという理解で資料は作成しております。
○能見委員 例えば(1)の甲案というのは,委託者及び信託管理人の合意によって解任することを可能とするというのは,合意によって申立てをするということですか。
○中辻幹事 (1)の甲案は,別に行政庁又は裁判所への申立てをすることを前提にしているわけではなくて,委託者及び信託管理人の合意によって,認定行政庁又は裁判所の関与なく受託者を解任することを可能とするというのが(1)の甲案の趣旨です。
○能見委員 それだけの違い。
○中辻幹事 そうです。
○能見委員 解任事由はどっちにもかかると,同じ解任事由が。
○中辻幹事 私どもはそう考えて資料を作成しておりました。
○能見委員 ごめんなさい。私としては少し誤解していたのかもしれませんが,元々の信託法の作りというのが一種の任意に解約できるという解約権と,それから,裁判所が解約するタイプというのがあって,それに相応するものがここで二つ設けられているのかと思ったんですけれども,それと違うんですね,発想が。
○中辻幹事 そもそもの信託法の構造として,信託法58条1項の委託者と受益者の合意による受託者の解任があり,それとは別に信託法58条4項では受託者が任務違反をして信託財産に著しい損害を与えたときのような限定した場合に委託者又は受益者の申立てを受けた裁判所による受託者の解任が認められることになっています。そのような仕組みをそのまま公益信託に持ち込めば,信託関係人の合意による受託者の解任は,解任事由がいかなるものであるかを問わず,また,時期を問わず,信託関係人の合意により受託者を解任することができることになろうかと思いますけれども,税制優遇も視野に入れた上で,公益信託の継続性・安定性を大事にしようとする観点からは,信託法58条の規律をそのまま公益信託に持ってくるのは疑問であり,信託法上の原則とは異なる仕組みにすべきではないかというのがこの部会資料の発想です。
○能見委員 もう一回,確認です。解任事由は同じなんですか,違うんですか。
○中辻幹事 解任事由は同じです。
○中田部会長 少し資料が分かりにくくて申し訳ありませんでした。最終的は職権による解任はないということが前提になっております。能見委員,取りあえず,よろしいでしょうか。
○能見委員 (1)と(2)というのが両方あるということの意味がどうなのかなというのが気にはなりますけれども,(1)の方でいけば解任事由が必要だけれども,裁判所まではいかなくていい。そういうことですね。
○中辻幹事 はい,そういうことです。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
○能見委員 取りあえずは原案というのは分かりましたけれども,二つがうまく整合的に理解できるのかなというので,留保といいますか。
○中田部会長 合意のみで解任できるのか,合意,プラス,許可が必要なのか,合意なく許可だけでいいのかという,そういうように整理して,その上で解任事由はどれも同じだという理由で,最終的に職権解任はなし。この辺りだと思います。少し混乱してしまって申し訳ありませんでしたが,以上のような整理で,それでは,お待ちいただきましたが,道垣内委員。
○道垣内委員 待っているうちに大変なことになってしまいまして,非常に困惑しているのですが,私が言おうとしたのは,棚橋幹事の意見についてです。(3)のところの任務違反というのは,公益の許可基準とは関係ないだから,裁判所がやるべき話であって,行政庁がやるべき話ではないでしょう,ということだったのです。ところが,能見委員と事務局との会話の中で明らかになったのが原案の意味だと仮定しますと,私が分からなかったのは,委託者とか信託管理人が合意をして申し立てる場合もありますよねと中辻幹事がおっしゃったことです。つまり,合意したのであれば,申立てをしないで,合意に基づいて解任すればよいではないかという気がするのですね。そのとき,あえて申立てを認めるというのは,その申立ては,自分たちの合意はきちんとした解任事由に基づくものだということを裁判所に認めてもらうという手続になるわけですが,果たして解任の効果はいつ発生するのだろうか,とか,いろいろな悩みが発生してきて,合意して申し立てるというのがよく分からなくなってしまいました。実は,私も,合意のときには別に解任事由がなくてもよいということになっていると思っており,しかし,能見委員や中辻幹事と同じように,それは本当は問題ではないですかということも言おうとしたのですが,その前提が崩れてしまいました。もう少し考えたいと思います。
○林幹事 それにも関わりますが,私の理解を申し上げたいのですが,結局,(1)のところにも(3)の解任事由が適用されるのだと理解をしています。(3)の中には,いつでも任意に解任できるというような制度は設けない,要するに不利な時期の解任について損害賠償請求というような制度を設けないというポリシーの下に提案が書かれていると思いましたので,その点からすると(1)の方にも(3)の解任事由の適用があるのだと理解しました。そのときに(1)がどうなるかというと,結局,合意して,解任事由があって解任だといえば実体的に解任の効果がそのときに生じるという制度だと理解しています。
  それから,吉谷委員が仰られた職権による解任については,私もこの案には職権の解任はないものだと理解して,それについては賛成です。ただ,委託者,信託管理人が解任すべきときに解任しない場合,そういうワークしない場合があるかもしれないとも思われて,解任申立権者を広く認めるというのも一つの考えではないかとも思いました。その際,債権者というのも考えましたが,自律的ガバナンスという発想から債権者は外してあると思いましたので,そこは賛成です。ただ,私の,後の論点で裁判所に対して解任申立てをするという立場からすると,第三者機関に申立権を与えるというのも選択肢としてはあるかもしれないと思いました。
  それから,先ほども申し上げたのですが,解任権について行政庁がというときには,結局,行政不服審査法の問題なのか,不服申立ての手続についてきちんと検討しないといけないことだと思っていますので,申し上げます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○長谷川幹事 前段の1のところにも絡むのですが,2の解任のところの(1)の例えば乙案を支持される御意見の中で,後任の選任とセットでなければならないという御議論があり,関連して,信託の継続性という御議論があったかと思います。しかし,後任の選任とセットだからといって,必ずしも乙案というわけでもないような気がしています。例えば,会社法の規定のように,後任が選任されるまでは現任の人がそのまま継続して権利義務を負うといった立て付けもあり得るという気がしておりまして,価値観としてできるだけ行政等の第三者機関の関与を少なくし,信託の継続性も併せて考えていくという中で,そういう制度も考えられないのかなという気がいたしましたので,一言,申し上げます。
○中田部会長 ほかに。
○新井委員 まず,(1)から(4)の全体的な理解は,私がこれを読ませていただいて事務局の考えている理論構成と同じように理解しました。それで,平川委員の提案のあった運営委員会のことについては前提となりますから,ここでは繰り返しません。その上で結論だけを申し上げますと,(1)については乙案,それから,(2)についても乙案,それから,(3)についてはこの文言でよろしいと思います。そして,(4)についても乙案ということでよろしいのではないかと思います。
  そのことを申し上げた上で小さな質問ですが,気になることなので質問を致します。それは,(1)の甲案は受託者を委託者及び信託管理人の合意によりということで,委託者及び信託管理人という順番になっています。それに対して(2)の方は甲案ですけれども,公益信託の信託管理人及び委託者と順番が逆になっているのです。これは何かニュアンスが違うのでしょうか。それとも単なる技術的な問題なのでしょうか。そこのところを教えていただければ有り難いです。
○中辻幹事 御指摘をありがとうございます。(1)の方は委託者及び信託管理人となっておりますところ,こちらは,信託法58条1項の文言が委託者及び受益者となっていて,受益者については同法125条で受益者の権利に関する一切の権限を信託管理人ができるとされていますので,受益者に代えて信託管理人を入れたということになります。では,(2)の方で信託管理人と委託者を逆にしているのは何故かという御質問については,ここはそれほど強い意味を込めているわけではなく,信託管理人は甲案でも乙案でも解任申立権を有することから先に挙げただけでありまして,信託法58条4項においては,裁判所は委託者又は受益者の申立てにより受託者を解任することができるという文言が使われておりますので,条文に即するならば,委託者の方を先に書いた方がよかったと思います。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
○山本委員 (3)について確認をさせていただきたいのですが,重大な事由があるときというのは,信託法58条4項の文言をそのまま持ってくるという趣旨だと思います。ただ,一般の信託の場合は,1項があって,先ほどから出ていますように,委託者及び受益者が合意によっていつでも任意に理由なく解除できる。しかし,その合意が得られない場合の例外なのでしょうけれども,4項で重大な事由があるときは,どちらかの申立てによって裁判所は解任をすることができるという仕組みになっています。
  ということは,恐らくですけれども,解任事由としての重大な事由というのは,受託者が任務に違反していることが前提になりそうに感じられます。それと同じ解釈が,公益信託で合意による場合もそうでない場合も含めて解任事由として挙げられるときにも行われることになると理解すればよろしいのですか。つまり,重大な事由というのは,受託者の側の何らかの任務懈怠があって,それを理由としている。それ以外の考慮は入ってこないというような趣旨で理解すればよろしいのでしょうか。それが質問の趣旨です。
○中辻幹事 私どもとしては,信託法58条4項の文言を(3)の公益信託の解任事由として持ってくる場合に,私益信託と異なる解釈をする必要はないと考えておりました。特に裁判所に解任権限を与えることにする場合には,棚橋幹事からも御指摘ありましたけれども,例えば公益性の観点とか,信託法上の立て付けと違う形で58条4項の文言を規定し,それを解釈するということになると,そのような解任事由の有無について裁判所が判断することは難しいということにもなりかねませんので,基本的には信託法の文言と一致させるのが望ましいのではないかと考えます。ただし,公益信託の特殊性に鑑みて,受託者の解任事由についてもう少し考え込んでみる余地はあろうかと思います。
○山本委員 ただ,その場合,全く同じ文言でそれを示すことができるかという問題は残りそうな気がします。例えば,社会情勢の変化その他の考慮から,この受託者では適切な任務の遂行が難しくなってくるだろうと考えられる。そこで,より適切に任務遂行ができる者が現にいるときに,解任ができるのかできないのか。このような場合に,任務懈怠がないと解任はできないというような縛りがかかってくるのかこないのかという形で問題になるのではないか。それが質問の趣旨でした。
○山田委員 (1)から(4)までざっと申し上げますが,第三者機関としての関与あるいは第三者機関として裁判所であるか,認定行政庁かという筋の問題に関していいますと,(1)については第三者機関の許可なく解任の可能性ありということが私の意見でございます。そして,(4)についても,これは裁判所が解任することができるという乙案がよいと思います。
  その上で,ところどころで御発言があったのですが,少し私の意見としてまとめて申し上げさせていただきたいことがあります。それは,委託者がこの問題でどれだけ関与すべきか,すべきでないかということであります。具体的には(2)のところで解任申立権をどちらも信託管理人に与え,甲案だけが委託者にも与えるということになっています。確かに公益信託で委託者をできるだけ遠ざけるということが,公益性が社会的に承認を受けるためには必要なポイントであろうと思います。
  ただ,前回か,前々回かにもどなたかから御発言があったかもしれませんし,私もそう思うのですが,委託者が一番,この信託がうまく当初の目的のように運営され,活動していくかということについては関心を持つというのも,また,否定し難いように思います。したがって,(2)については委託者にも解任申立権を与え,委託者も少し遠くからのコントロールというんでしょうか,そういうものは残しておくべきだろうと思います。
  しかし,そのようにやや議論をきちんと丁寧にした上でですが,委託者にある程度の地位を認めるとした場合に,委託者も相続人をどうするかという問題があるのかもしれないと思います。一般的に,ここでの議論は全部,委託者と書いてあるのは委託者の相続人を除くとすることであれば,私はそれで賛成なのですが,そうでないとすると,こういう問題のところで正にコントロールというか,ガバナンスの根幹を少し遠くからですが,握っているところに委託者の相続人が出てくるのは認めるべきではないだろうと思います。
  補足説明のどこかに書いてあるかもしれませんが,もし,それに触れていないようでしたら,信託法にもそれに関わることはあるのかもしれませんが,公益信託においては特に遺言信託の場合,あるいは生前信託契約であっても比較的,高齢になって自分の死後もその信託が残るというようなことを考えると,相続人とのある種の利害の対立という事態が信託した財産が相続財産から抜けるという意味でありますので,相続人はここでの受託者の解任に関する,あるいはその前の辞任のところも同じですが,辞任,選・解任ですか,そこには委託者の相続人は除くかどうかを検討していただきたいと思いますし,私の意見は除くとするのがいいだろうと思います。
○中田部会長 ほかに。
○能見委員 もう一度,確認ですけれども,申し訳ない,別に私の意見にこだわるわけではないんだけれども,(1)でもって乙案を採った場合,第三者機関というのは公益の認定をする機関を考えるんだと思いますけれども,その場合に(4)というのは意味が何かあるんでしょうか。甲案というのはまた行政庁がやるということで余り意味がないと思いますし,乙案にするとなぜ(1)のときは第三者機関の方の許可で,例えば委託者だけが申し立てた場合は裁判所になるのかというのも余り整合的な感じがしないんですけれども,私の理解の仕方が間違っているのかもしれませんが。
○中辻幹事 (1)の乙案で,ここで外部の第三者機関と書いているのは,認定行政庁と裁判所のいずれの選択肢もあるという意味でございます。その上で,(4)の論点では,(1)の外部の第三者機関は,認定行政庁と裁判所のどちらが適切でしょうかということをお聞きしているということになります。
○能見委員 (1)で乙案というのは例えば甲案からすると,委託者及び信託管理人という,そういう意味で信託の関係者が合意しているけれども,それだけでは足りないと。それ,プラス,第三者機関の許可が必要だろうと,それが乙案ですよね,ここでは。
○中辻幹事 部会資料の作りが分かりづらくて恐縮なのですが,(1)の乙案では,委託者と信託管理人が合意している場合もあるし,合意していない場合もあります。
○能見委員 合意していないのはむしろ(2)でいくのではないですか,申立権者という。
○中田部会長 整理が分かりにくくて申し訳ないんですが,先ほど私の方で整理したのは合意だけでよいというのと,合意,プラス,許可が必要なのと,それから,許可でよいというのと三つがあるだろうということです。後二者についていうと,許可はどこの許可なのかという問題が出てくるという,そういうことになろうかと思います。後二者について(4)であるように,行政庁なのか,裁判所なのかという,こういう選択になろうかと思います。あるいは別の整理でも結構なんですけれども,それらの中でこれがいいとか,悪いとかというのがもしあれば。
○能見委員 今の整理でも,そうすると(1)と(2)の関係がよく分からなくなってくるんですが,(2)の方はそういう関係者が全員,合意しなくても申立てという形でもってできると。例えば申し立てて第三者機関である行政庁というか,例えば認定機関あるいは裁判所が判断するわけですよね。それも(1)と(2)が重なってしまうような。
○中田部会長 この資料の作り方をもう少しきちんと整理した方がよかったと思いますけれども,仮に今のように整理したとして,どれがいいかというのをもしお出しいただければと思います。資料の作り方については,また今後,改善することになると思います。
○能見委員 私の理想からすると,一つは関係者が合意しているのであれば,全く自由にとはしなくていいかもしれないけれども,解任事由はここまで厳しいものでなくても,解任ができるというようなルールができるといいのではないかと思います,理想は。ですけれども,解任事由がもし同じであれば,(3)にしか解任事由がないのだとすると(1)の要するに信託関係者が合意している必要はないと,合意していてもいいけれども,合意していなくてもいい。
○中田部会長 いろいろな選択肢があると思いますけれども,その中でどの方向がよいかということがございましたら。
○能見委員 だから,解任事由が限定されていて……。
○中田部会長 それでは,整理していただいて,その間,沖野委員から頂いてよろしいでしょうか。
○沖野幹事 ただ,関連する事項かと思うんですけれども,まず,解任事由の点なんですけれども,先ほど山本委員から,これ自体は現行法の信託法と全く同じ概念であると,事務局からもそういう説明があったかと思います。かつ,任務違背がなければおよそ該当しないという理解が示されたと思います。それが確認されたということなんですけれども,果たしてそうなのかということです。文言だけから見ると任務違背その他重要な事由ということですので,任務違背でないタイプの重要な事由というのもあり得るというものだと解釈されます。そして,実際にも任務違背の判断次第ですけれども,山本委員がおっしゃったような不適任であるという場合のほか,執務不能ではないかと考えられるにもかかわらず,しかし,辞任の申出はない場合であるとか,あるいは当該受託者というのではなくて,受託者が複数あって意見の対立が非常に激しくて,なかなか方針が決まらないため,これらの受託者には任せておけないという場合,そういうようなこともあり得るのではないかと考えられます。そういったことをおよそ現行法が排除しているのかというと,そう言い切ることはできないのではないかと思います。
  それから,その他重要な事由というのが,どういう信託のタイプであるのかということを抜きにして語れるのかというのも疑問に思います。公益信託である場合であることを勘案したときや,あるいはより具体的な信託の内容からして,この受託者には任せておけないという判断を残しているのではないかと思います。ですから,任務違反であることが多いだろうというくらいであって,およそ任務違反がないと駄目だというのは,現行法の解釈としても行き過ぎではないのかなと思います。
  それから,(3)につきまして,私も実は能見委員と同じような理解をしており,ただ,その後,改めて見ますと14ページの説明の記載などは,上の方の2の内部の合意により理由を問わず,解任できるような仕組みは不適当であると言えるということが,実は(1)にも係ってくるという含意だったのだなというのがこの場で分かったようなことなんですけれども,そうだとしますと,その他重要な事由があるときの判断要素の一つとして,他の関係者といいますか,とりわけ,重要な信託管理人や委託者が一致して,この者では駄目だと言っているというようなことも,考慮要素に入ってくるのではないだろうかと思われるんですけども,どうでしょうか。
  ですから,現行法は合意によって無理由で任意解除ができるということとは別に任意解除はできない,したがって,合意がとれないような場合の事由としてこれを置いているわけで,そうではなくて全てに係ってくるとすると,その中身も変わってこざるを得ないのではないか,あるいは判断要素として合意があることというようなものは,現行法では入ってこないわけですけれども,入ってこざるを得ないのではないかと考えられますし,明確にするならば,その点も勘案してとかいう表現を加えるなどを考えることもできますし,更には意見の聴き方とか,そういうこともあるのかもしれないと思います。
  それが一つです。あと,2点あります。既に御指摘があった点なんですけれども,行政庁等の位置付けで,行政庁等が第1の1の下で何をするのかというのがこの後,更に具体的に明らかにされていき,また,変更や終了については次回ないし次回以降であるということですので,それを見ながらということになるかと思うんですけれども,例えば検査をし,これでは適切ではないというときに信託の終了に持っていくのか,適切に受託者を代えてやっていけばいいということなのか,そういうような判断が求められるような場合において,必要な措置として何ができるのか。
  解任申立てについて事由があるかというのは,裁判所で判断するという立場を採った場合に,行政庁としては適切ではないということが判明したときも,そのときには信託管理人になるべく申立てを促すようにとか,そういうことをするのか,それとも自ら申立てができるのか,それは解任だけではなくて,ほかの事項についても出てくるかと思いますので,裁判所で判断するということになったときに,行政庁等がその場合に更にどういう役割を担うのか,特に申立てとの関係で,というのは考えておく必要があるのではないだろうかと思います。個人的には行政庁等を申立権者に加えてもいいのではないかという感覚を持っておるものですから,そういうことを申し上げました。
  それから,3点目は,先ほど来,能見委員が問題提起をされていることなんですけれども,多少なりとも,合意による場合と合意なくして申立てができる場合というのを設けることに違いがあるかもしれないと思いますのは,合意によって解任していれば実体的な事由が存在しているならば,そこで効果が発生している。これは先ほど林幹事がおっしゃったことでもあると思いますけれども,それでうまくいかないのは受託者が争っているというような場合だと思われます。
  そのときに合意があるならば,直ちに解任を前提に一定の行為を要求していくと,受託者が争っているなら,そこから訴訟なりになるという形になるのに対して,合意がないということだとすると,解任申立てを経て解任のステップをとらなければいけないと,あるいは合意による解任が認められると受託者の方が争うという場合であれば,受託者が地位確認などを請求するのでしょうか,そういう話になってくるということですので,その後の争いの仕方ですとか,そういうのは多少の違いは出てくるのではないかと考えられます。したがって,そういうルートを認めるのかということではないかと考えます。
  ただ,そうはいいましても,その場合に最後に能見委員が御指摘になった点ですが,(1)の乙案を用意するということは,甲案を否定する以上の意味があるのかどうかというと,(1)の乙案でいく場合というのは,要するに甲案を否定するという趣旨で,乙案を採って,その上で申立てによって解任という手法を別途用意するということは,余り意味がないのではないか,中辻幹事は合意によって申し立てることもできるとおっしゃいましたけれども,もちろん,連名で申し立てていいのかもしれませんけれども,それは事実上の話で,制度として並立させる必要はないのではないかと思っております。
○中田部会長 ほかによろしいでしょうか。
○林幹事 非常に細かい話で条文の確認に尽きてしまうのですが,先ほど長谷川幹事がおっしゃった解任等がされた後,どうなるのかということなんですけれども,現行の信託法だと59条の3項,4項があるので,新受託者が選任されるまで義務を負うとか,業務を継続しないといけない,引き継がないといけない規定があるのが1点と,それでも足らない場合は信託財産管理者という一時的な受託者を選任する制度がありますので,一般の信託法だと1年の間にそれによって対応するということになっているかと理解しています。特段,ここで明示的な議論をしなければ,公益信託にもその規定が適用されることになろうかと思うので,一応,その前提で理解しているということを申し上げます。
  それから,先ほど来の解任事由の件と(1)の件なのですけれども,私としては沖野幹事が指摘されたところで,要するに任意解任のときの不利な時期の損害賠償請求という制度をここに持ってこないという価値観が前提として含意されていると思っていて,その考え方自体は悪くないと思います。不利な時期に解任されると損害賠償請求ができるという信託法一般の規定をここに持ってきてしまうと,制度として重くなってしまうという配慮があるように思ったので,その点の判断次第と思います。
○中田部会長 今回の資料の作り方が分かりづらくて申し訳なかったのですが,(1)について純粋の任意解任を認めるという御意見は恐らく出ていなくて,(3)と同じにするのか,それとも,(3)ほどではないものも含めるのかという両論があったと思いますが,それも(3)の基準をどのように理解するかということにも依存しているのだと思います。それから,(4)についていえば,これも両論がございましたけれども,職権による解任というのを認めるという御意見はなかったと承りました。ということで,余り十分には確定はしていないんですけれども,大体,問題点を御指摘いただいたかと思いますが,ほかに。
○吉谷委員 (1)の甲案について問題提起をしておきたいと思うんですけれども,委託者と信託管理人の合意ですので,委託者が機能しない場合,先ほどの相続もあれば,高齢化の問題などもありますので,そのような場合には甲案が機能しないというのは弱みではないかとまず考えております。その上で信託法の原則でいうと,これは任意規定であるということになると思うんですが,仮に信託管理人が単独で解約できると信託契約に書いておけば,それはできてしまうものということに,次に甲案を更に考えていったときにはなるのだろうかというところが疑問です。あるいはそれ以外の任意のガバナンスの仕組みを設けて,そのガバナンス機関が合意した場合には,受託者が解任できるというような定めを信託行為に置くということもまた考えられるのではないかと思います。
  これは,要は受託者が公益に資さないであるとか,もっと悪いことをしているとかいう場合を想定した規定だとは思いますけれども,また,逆の場合もあって,委託者や信託管理人の方が余り公益のことを考えていないということもあるわけでありますが,そういうことも考えて乙案というのを支持していたわけなんですけれども,仮に甲案でいくとした場合には,信託の中にしっかりしたガバナンスの制度がないと成り立たないのではないかと思いますし,仮に任意規定であるとして,信託契約に受託者の解任方法について規定するのであれば,その内容についても認定段階でしっかりと審査しなければならないのではないかと思いました。
○中田部会長 大体,よろしいでしょうか。
○道垣内委員 複雑な議論を中田部会長が適切にまとめてくださってありがたく存じます。ただ,2の(1)について実体的な理由がないときは認められないという見解がほとんどであったという話ですが,そうであれば,9ページに戻ったときの受託者の方もやむを得ない事由がある場合に限りということを外す理由はないだろうと思います。そこでバランスがとれるという仕組みになるのだろうという気がするということを一言,申し上げておきます。
○中田部会長 ありがとうございました。
○山本委員 何度も(3)についてくどいのですけれども,仮に(1)について乙案を採り,これについては信託契約で別段の定めをしても,その効力は生じないと考えるとするのであればですけれども,信託契約において解任事由を明記しているような場合には,それも全く意味を持たなくなるのか,それとも,それは(3)の重大な事由を判断するときに考慮の余地があるのか。このような問題が恐らく生じてくるだろうと思うのですけれども,今,すぐ答えが出る問題ではないかもしれませんが,検討事項の一つではないかと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。甲案を採ったときに,信託行為による別段の定めを置くことの当否については11ページの下の方に指摘がありますが,乙案を採っても,今,御指摘のような問題を更に検討する必要があるということかと存じます。取りあえず,よろしいでしょうか。
  長くなっておりますので,まだ,途中ではありますけれども,新受託者の選任に入る直前ですが,ここで少しだけ休憩を入れさせていただきます。短目になりますが,50分まで。
 
          (休     憩)
 
○中田部会長 それでは,再開いたします。
  再開前の私の発言について2点,補足させていただきます。
  一つは,合意による解任と第三者機関による解任との関係について3種類あると申し上げたんですが,もう一つあるということです。つまり,合意による解任のみという制度と,第三者機関による解任のみという制度と,合意を前提とする第三者機関による解任という制度と,合意による解任又は第三者機関による解任を設けるという制度,その4種類が多分,あるのだろうと思います。その上で,解任事由を一つにするのか,一つにした上で各場合に応じて解釈の中に合意があるか,ないかを織り込んでいくというのか,それとも,解任事由を別の表現にするのかという辺りの整理になると思います。
  それから,もう一つは訂正でして,先ほど第三者機関による職権解任を支持される御意見はなかったと申し上げましたが,大変失礼しました,吉谷委員の御意見がございましたので,その点は訂正させていただきます。失礼いたしました。
  それでは,続きまして「3 公益信託の新受託者の選任」について御意見を頂きたいと思います。
○平川委員 先ほどの運営委員会を設けるという説の流れで,この場合には公益信託の新受託者は,運営委員会が信託管理人との審議を経た上で,これを選任することができるという案を提案します。前述のとおり,公益信託の自律的ガバナンス体制を人事面で徹底する趣旨です。運営委員会と信託管理人とは,新受託者の選任について合意があることが想定されますけれども,合意に至らなかった場合でも運営委員会に主導権を持たせることで,受託者の席が空席であることを回避することができますし,また,信託管理人は受託者の信託事務を監督する立場にあり,利害関係に立つことから,選任の判断について運営委員会と意見を異にする場合には,運営委員会に主導権を持たせるのが妥当であると考えます。
  行政庁等との関わりとしては,公益信託の受託者に係る欠格事由や,また,積極要件を有するか否かという判断が行政庁等で必要なため,公益法人と同様,重要な人事の変更に該当する受託者変更届は必要で,行政庁等は係る届出を通じ,要件審査を行うことができるものと考えます。行政庁等は係る要件審査において継続的な公益信託の要件の適合性をチェックすることができます。
○深山委員 今までの議論の延長という面もあるんですが,信託関係者の1人である受託者の選任をいきなり行政庁等が行うということについては,妥当ではないと思います。今までの論点では,第三者機関というときには,行政庁等と裁判所が甲案,乙案で併記されていたのに,ここでは裁判所案がないんですが,私はあえて裁判所案をここでも提案したいと思います。
  従前の受託者がその地位を失う場面というのはいろいろな場面がもちろんあるんでしょうが,新受託者の選任を利害関係人が申し立てるときに,誰かを選んでくださいということではなくて,候補者を挙げるのだろうと思いますし,それがふさわしいということの理由も添えるのだろうと思います。また,旧受託者の辞任や解任の延長線上で,新受託者というのが連続的に選任される手続に入るということもあると思います。そういう意味では,手前の手続との兼ね合いもあり,手前の手続についても裁判所の関与が望ましいという意見であるということもありますが,仮にそれをひとまず置くとしても,新受託者としてこの人がふさわしいか否かという判断は,裁判所で判断するにふさわしい事項であろうと考えます。ということで,新たな提案をしたいと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 選任につきましては提案に賛成いたします。公益認定時と同じように受託者が交代する場合であっても,資格要件については行政庁の関与が必要であると考えます。
○棚橋幹事 先ほど深山委員から裁判所が新受託者を選任するという御提案がございましたけれども,正にこの点については資格要件の認定の場面ですので,認定機関が行うべきであると思いますので,認定機関でない裁判所よりも行政庁等が適切ということかと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 深山委員と同じで,裁判所案というのを提案するのに賛成なのです。1点,先ほどから不服申立ての方法がどうなるのかにこだわっているようなところもあるのですが,行政庁が新受託者を選任した場合に,誰がどう不服申立てするのかという点があります。要するに行政処分だとしたら,本来は処分を受けて不利益を受ける者が不服申立てをするのでしょうけれども,この場面においては新受託者がやるのではなくて,それ以外の関係者が選ばれた人は不適格だという形で争うことになると思うので,私も詳しくなくて恐縮ですが,それにふさわしい不服申立ての制度を考える必要があるのではないかと思いました。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。弁護士会からは裁判所案という新しい御提案を頂いておりますが,原案でよいという複数の御意見,あるいは運営委員会を必置とすることを前提とする御意見などが出ておりますけれども,ほかにはよろしいでしょうか。
  それでは,今のような御意見の分布を伺いました上で次に進みます。次は「第3 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任」について御審議いただきます。事務当局から説明してもらいます。
○立川関係官 「第3 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任」について御説明します。第3の論点の検討に際しましては,信託管理人の辞任等に関する信託法及び公益信託法の規定を一覧にしました別表3を御参照いただければと存じます。
  まず,「1 公益信託の信託管理人の辞任」について御説明します。信託管理人の辞任については二つの論点を提示しておりますが,まず,1点目の信託管理人が委託者及び他の信託管理人の同意を得て辞任することを可能とするか否かについて御説明します。本文では,甲案として信託管理人が委託者及び他の信託管理人の同意を得て(外部の第三者機関の許可なく)辞任することを可能とする,乙案として信託管理人が外部の第三者機関の許可なく辞任することを可能としないという提案をしています。
  新たな公益信託において,公益信託内部の自律的な監督,ガバナンスを確保する観点などからは,委託者及び他の信託管理人の同意を得て信託管理人が辞任することを可能とすべきとの考え方あり得るため,このような考え方を甲案として示しています。他方,公益信託が公益の実現を目的とするものであり,信託管理人による公益信託事務の監督が継続的,安定的にされるようにすることが望ましいことなどから,新たな公益信託においても公益信託の信託管理人が委託者及び他の信託管理人の同意を得て辞任することを可能とすべきではないとの考え方があり得るため,このような考え方を乙案として示しています。
  2点目の公益信託の委託者及び他の信託管理人の同意を得て外部の第三者機関の許可を得て辞任することを可能とするか否か,また,許可を行う外部の第三者機関を公益信託の認定を行う行政庁とするか,裁判所とするかの論点ですが,本文では公益信託の信託管理人は,やむを得ない事由がある場合に限り,甲案として公益信託の認定を行う行政庁等の許可を得て辞任することができるものとする,乙案として裁判所の許可を得て辞任することができるものとするとの提案をしています。
  公益信託においては,信託管理人による公益信託事務の監督が継続的,安定的にされることが望ましいことなどから,公益信託の信託管理人の辞任を認めるとしても,やむを得ない事由があり,かつ,外部の第三者機関の許可を得た場合に限定すべきと考えられます。その上で検討すべきは,許可の主体となる外部の第三者機関をどのように考えるかですが,公益信託の信託管理人の資格要件該当性の審査を行いました公益信託の認定を行う行政庁等が許可の主体となることが合理的であるとの考え方があり得るため,このような考え方を甲案として示しています。他方,信託管理人の辞任にやむを得ない事由があるか否かは,裁判所が判断することも可能であることから,裁判所を許可の主体とすべきとの考え方があり得るため,このような考え方を乙案として示しています。
  次に,公益信託の信託管理人の解任について御説明します。
  まず,1点目の信託管理人を委託者及び他の信託管理人の合意により解任することを可能とするか否かの論点について御説明します。本文では,甲案として信託管理人を委託者及び他の信託管理人の合意により(外部の第三者機関の許可なく)解任することを可能とする,乙案として信託管理人を外部の第三者機関の許可なく解任することを可能としないという提案をしています。
  新たな公益信託において,公益信託の自律的な監督,ガバナンスを確保する観点からは,不適格な信託管理人を公益信託内部の信託関係人の合意により解任できるようにすべきとの考え方があり得るため,これを甲案として示しています。他方,信託管理人による公益信託事務の監督が継続,安定的に運営されるようにすべきとの観点から,公益信託内部の信託関係人の合意による公益信託の信託管理人の解任を認めるべきではなく,解任には公益信託外部の第三者機関の許可を要するものとすべきとの考え方があり得るため,これを乙案として示しています。
  次に,2点目の公益信託の信託管理人の解任申立権について御説明します。本文では,甲案として公益信託の他の信託管理人,委託者及び受託者に信託管理人の解任申立権を付与するものとする,乙案として公益信託の信託管理人及び委託者に信託管理人の解任申立権を付与するものとするとの提案をしています。
  公益信託の信託管理人が複数選任されている場合に,一方の信託管理人が信託財産に損害を与えた際,他の信託管理人が不適格な信託管理人の解任申立てを行うことは,他の信託管理人の監督権限として予定されたものであると考えられるため,他の信託管理人に解任申立権を与えるべきと言えます。また,他の信託管理人が解任申立権を適切に行使しない場合が想定されることなどから,信託財産の拠出者であり,公益信託の運営の適正性に関心を有しています委託者にも,信託管理人の解任申立権を付与すべきとも考えられます。さらに信託法が信託管理人の解任について,委託者が現に存在せず,かつ,信託管理人が1人である場合に,当該信託管理人の解任を申し立てる主体やその手続について規定していないことなどから,受託者にも解任申立権を認めるべきとも考えられます。そこで,以上のような考え方を甲案として示しています。これに対して他の信託管理人及び委託者には,信託管理人の解任申立権を認めるべきであるが,信託管理人の監督の対象となっている受託者に信託管理人の解任申立権を認めるのは適当でないとの考え方があり得るため,これを乙案として示しています。
  次に,3点目の公益信託の信託管理人の解任事由について御説明します。本文では,公益信託の信託管理人の解任事由は,信託管理人がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときとすることでどうかとの提案をしています。
  公益信託が公益の実現を目的とするものであり,信託管理人による公益信託事務の監督が継続的,安定的に運営されることが望ましいことから,公益信託の信託管理人の解任事由は,本文で提案したようなものとするのが相当であると考えられるところであります。
  最後に,4点目の公益信託の信託管理人の解任権について御説明します。本文では,信託管理人に解任事由があるときは,甲案として公益信託の認定を行う行政庁等が解任申立てに基づき,信託管理人を解任することができるものとする,乙案として裁判所が解任申立てに基づき,信託管理人を解任することができるものとするとの提案をしています。
  新たな公益信託において,公益信託の認定を行う行政庁等が信託管理人の資格要件該当性を判断し,当該行政庁等が信託管理人の選任にも関与するものとした場合には,選任と表裏の関係にある解任に関しても行政庁等において,解任事由の有無を判断するのが合理的であることなどから,公益信託の認定を行う行政庁等に信託管理人の解任権を付与すべきとの考え方があり得るため,これを甲案として示しています。他方,公益信託の信託管理人の解任事由があるか否かについては,裁判所において判断することも可能であることなどから,裁判所に信託管理人の解任権を付与すべきとの考え方があり得るため,これを乙案として示しています。
  次に,公益信託の新信託管理人の選任について御説明します。本文では,甲案として公益信託の認定を行う行政庁等が利害関係人の申立てに基づき,新信託管理人を選任することができるものとする,乙案として裁判所が利害関係人の申立てに基づき,新信託管理人を選任することができるものとするとの提案をしています。
  新たな公益信託において,公益信託の認定を行う行政庁等が信託管理人の資格要件該当性を判断するものとした上で,新信託管理人の選任については関与しないこととした場合,認定時の判断の意義が失われることから,公益信託の新信託管理人の選任についても公益信託の認定を行う行政庁等が関与することが合理的であると言えます。また,公益信託の信託管理人の不在により公益信託事務の運営が中断する状況は,できるだけ回避されるべきでありますから,信託法第129条第1項で準用する第62条第4項の規定を参考に,広く公益信託の利害関係人に新信託管理人選任の申立権を付与すべきと考えられ,このような考え方を甲案として示しています。他方,公益信託の受託者と信託管理人の立場の相違に加え,信託管理人の資格要件が客観的,形式的なものになるのであれば,裁判所が利害関係人の申立てに基づいて新信託管理人を選任できるものとすべきとの考え方もあり得るため,これを乙案として示しています。
○中田部会長 ただいま説明のありました部分について御審議いただきたいと思います。信託法は信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任の規律について,受託者に関する規律を準用するなど,両者をパラレルに取り扱っておりますけれども,公益信託においても同じように考えてよいかどうかいうことかと存じます。先ほど御審議いただきました受託者についての規律と重なるところも相当あろうかと思いますので,特に信託管理人に特有の御指摘を頂きつつ,御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。1から3まで一括してお伺いいたします。
○吉谷委員 信託管理人につきましては,公益信託に必置の機関であるということになるかと理解しておりますが,その位置付けについては受託者とは異なると考えております。受託者は信託財産の所有者であり,不存在となると信託事務処理は停止します。また,公益事業の実施が可能な者を選任する必要がある。その一方で,信託管理人につきましては不存在でも信託事務処理は停止しませんし,信託管理人の一時的な不存在であるとか,複数信託管理人の定員が欠けるというようなことが認められないわけではないと考えております。そのため,信託管理人の辞任,選・解任につきましては私的自治に任せ,各公益信託で定めたルールに基づいて運営すればよい。行政庁の監督は事後的なものではないかと考えまして,先ほどの受託者の場合と信託管理人は異なるという意見でございます。
  その上で,実際問題について少しお話ししますと,法改正後でも現行の信託銀行がやっているような助成型のものにつきましては,信託管理人が無報酬であったり,低報酬であったり,そういうボランティア的な方が想定されます。それにもかかわらず,辞任するということが難しいような制度になると,なり手が少し限られてくるかもしれないということを懸念しております。公益法人や会社でも辞任が制限されていないのに,公益信託だけが辞任を制限するという立て付けになることには違和感を感じております。
  そのため,1の(1)につきましては原則として辞任を制限する規定自体が不要であると考えます。辞任に関する内規や信託行為の定めを設ければ,それに従えばよいという意味で任意規定とすることを提案いたします。その上で,1の(2)につきましては外部の許可は不要であるとは考えますが,もし,許可が必要であるとしてもやむを得ない事由がある場合という要件を付けることには強く反対いたします。甲・乙のどちらかといえば甲案ということになります。
  2の(1)につきましては外部の第三者の許可なく解任することを可能とすることには賛成ですが,解任権限については内部の規定に従えばいいというところでございます。これは甲案ということになります。2の(2)につきましては,これも委託者につきましては信託行為の定めがある場合に申立権を付与するということで,デフォルトとしては委託者はなしで,受託者にも解任申立権を付与するということにつきましては,受託者1名,信託管理人1名という場合が十分に考えられますので,受託者を入れることは必要であると考えます。そうですので,甲案に変更を付けるという形になると思います。(3)につきましては趣旨に賛成でありまして,(4)につきましては甲案の行政庁に賛成した上で,これも行政庁の職権による解任を認めるべきであると思います。信託管理人に対する勧告・命令ということも考えられるということであれば,なおさら,信託管理人の職権による解任を認めるということと整合性があると考えます。
  3につきましては甲案賛成です。選任も公益信託の組織の実態に従って選任方法に関する内規や信託行為を定めて,それに従えば,行政庁による選任は不要であると。報告をすれば足りるのではないかと考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○棚橋幹事 1の(2)の辞任と2の(2)に解任については,先ほども受託者のところで述べたとおり,どういった要素を判断する必要があるのかということですので,繰り返しはしないですけれども,3の公益信託の新信託管理人の選任については,前回の部会資料の中で信託管理人の資格要件の議論があったかと思いますけれども,前回の部会資料16ページには客観的に判断可能なように思える甲案,つまり信託法124条の欠格事由に該当しない案に対する賛成意見もございましたし,乙3案,つまり欠格事由だけではなくて,公益信託の目的に照らしてこれにふさわしい学識,経験及び信用を有する者であることとするという案に対する賛成意見も複数あったように記憶しております。
  今回,3で乙案が提案されておりますが,これは信託管理人の資格要件該当性の判断が受託者の資格要件該当性の判断よりも客観的,形式的に判断されるのであれば,裁判所でもできるのではないかという御趣旨かと思います。この点については正に認定の問題ですので,資格要件がどのように定められるか次第ですが,資格要件が乙3案のようなものになった場合には,認定機関が判断するのがふさわしいと考えております。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○深山委員 先ほどの受託者に関する選・解任の規律と,信託管理人についての選・解任の規律は基本的には同じパラレルでよろしいと思います。私益信託について,条文を準用してパラレルにしているということとの平仄という形式的な理由もありますし,実質的に考えても,もちろん,細かく見ていくと少しずつやっていることは違うから,全く同じかというと違う部分はあるんですが,しかし,選・解任の規律として条文を考える上では,あえて変えるまでの必要はないのではないかと思いますので,先ほど受託者について述べた意見と同様ということでございます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 信託管理人の辞任につきましては,信託管理人が自らの意思で,他の信託管理人がいる場合にはその同意を得て,辞任することを可能とするという案,即ち,他の信託関係人や第三者機関の同意を得たり許可を得たりしないで,自由に辞任できるという案を提案します。吉谷委員と趣旨をその点では同じくいたします。また,新たな公益信託においては,信託内部の自律的な監督やガバナンスを行うことを基本とするために,信託管理人が自らの意思で辞任するということは可能であるべきだと思います。甲案については委託者の同意を要する点において,委託者の権限をできるだけ減少させるべきという観点から賛成できないと考えます。ちなみに,公益財団法人における監事は,自らの意思で自由に辞任することができるとされております。
  1の(2)につきましては同じく,公益信託の認定を行う行政庁や裁判所の許可を必要としないで,信託管理人が自らの意思で他の信託管理人がいる場合には,その同意を得て辞任することができるという案を提案いたします。その理由は,先ほどの(1)と同様です。
  2の(1)につきましては,これも運営委員会絡みなんですけれども,信託管理人を運営委員会及び他の信託管理人の合意により解任することを可能とするという案を提唱します。これは受託者の解任の項で述べたとおりと同じ理由によります。
  2の(2)につきましては,内部的に選・解任を完結させるべく考えておりますので,申立権というのは本来,あり得ないと考えているんですけれども,ただし,解任権者同士で合意が得られない場合を想定し,うち1人に申立権を付与するという事態の想定であれば,公益信託の他の信託管理人及び運営委員会に信託管理人の解任申立権を付与するという案を提案いたします。理由は,委託者に他の信託管理人の解任申立権を認めるべきではないということは前述のとおりであります。また,受託者の信託事務の監督をする立場にある信託管理人に対する解任権を認めるということは論理矛盾であり,許容されないと思います。結局,自律的ガバナンス確保の観点から,他の信託管理人及び運営委員会が申立権を持つべきであるという結論に達します。
  (3)につきましては法務省案に賛成いたします。任務懈怠等の解任事由があるときのみ,解任申立てを可能として,受託者を監督する立場にある信託管理人の地位を保全するべきであると考えます。
  (4)につきましては乙案に賛成します。これは信託受託者の解任申立てに関して述べた理由と同じ理由によります。
   3の「公益信託の新信託管理人の選任」につきましては,これも丙案として他の信託管理人及び運営委員会の合意により新信託管理人を選任することができるものとするというのを提案します。ただし,運営委員会と他の信託管理人の合意が整わないとき,又は他の信託管理人がいない場合には,運営委員会が単独で新信託管理人を選任することができるという案を提案いたします。理由は,人事面での自律的ガバナンス確立を目指すべきということは前述のとおりです。ただし,行政庁等は新信託管理人に係る欠格事由に該当するかどうかの判断をする必要がありますので,行政庁等は信託管理人変更届を受け,要件適合性のチェックを行うものとする,係る要件審査を通じて公益信託の継続的なガバナンスの保持を補完的立場で補充することができると考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○能見委員 今までの意見と大分重なるんですけれども,辞任のところは自由に辞任を認めていいと思います。
  2の(1)のルールなんですが,ここは受託者の場合と微妙に考え方を,こういうルールがなぜ正当化されるかという考え方が受託者の場合と違うのではないかと思うんですが,先ほどの受託者の場合には委託者と信託管理人が合意してということだと思いますけれども,信託管理人は受託者を監督する立場にありますので,特に信託管理人の合意が,委託者も加わっていますけれども,信託管理人のそういう意向がはっきりしているということが受託者を解任する正当化の根拠になるんだろうと思います。
  ところが,信託管理人を解任するということになると,私の最終的な結論はまだないんですけれども,委託者の合意というのが果たして正当化の理由になるんだろうかというのが気になるのと,それから,他の信託管理人というのも,これもどういう場合に機能するのかよく分からないんですが,信託管理人が1人しかいない場合には,そもそも,これは機能しないと考えるんだと思いますけれども,仮に2人いたとして,1人の信託管理人を解任しようというので委託者ともう1人の信託管理人が合意すれば,それで解任ができるのかというと,信託管理人自体は1対1で対立しているし,そういう場合にまで使えるのかというのが気になります。
  財団法人の場合には,これもいろいろなルールがあるのかもしれませんけれども,評議委員会という委員会があるので,そこで解任するという形になるんだと思いますけれども,信託管理人はそういう委員会があるわけではなくて,本当に1対1で対立する場合にももし適用されるとすると,信託管理人が2人しかいないという場合に適用されると,それはまずいので,このルールがどういう場合に適用可能なのか,あるいはそれを正当化できるのかというのはもうちょっと詰めた方がいいだろうという感じがいたしました。
  あと,申立権の方は,これもまだ今の問題と関係して今一つどうしたらいいか,分からないところはあるんですが,受託者から申し立てるというのも嫌な感じがするので,申し訳ありません,これは決めかねています。ということで,(3)(4)も申し訳ない,まだ,十分に意見がまとまっていませんので,取りあえず,私が言いたかったのは2の(1)のところについてということです。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 この点,日弁連での議論を踏まえた意見は深山委員が述べたところですが,解任の申立権者については,委託者についてはあえて必要はないという考えもあるし,そこはいろいろな意見もあったというところです。それから,受託者についても,認める考えと,それに対して躊躇のある考えもありましたが,日弁連の結論としては受託者にも認めるという結論でした。
  それから,新信託管理人の選任については裁判所ということで乙案です。信託管理人と受託者の違いもあるのでしょうけれども,弁護士会としては両方がそろった方がいいということが1点と,先ほど申し上げた不服申立てのことを考えると裁判所の方がやりやすいのではないかと思っています。
○中田部会長 ほかに。
○山田委員 新信託管理人の選任についてのみ申し上げます。甲案か,乙案かについては裁判所が利害関係人の申立てに基づき,信託管理人を選任することができるものとするという乙案がよいと思います。その点で,深山委員,林幹事と意見を同じくします。その理由は,信託管理人は,当初は委託者が受託者との信託契約で決めるものであり,しかし,受託者を牽制する機能を持つ者と位置付けられるのだと思います。委託者と受託者の信託契約の中で決められ,受託者を牽制する機能を持つ者と思います。
  途中で交代することによって新信託管理人をどういう手続で選ぶかということですが,公益を目的とする信託で牽制機能を持つ相手方というのでしょうか,牽制の対象の受託者がそこに関わるのはおかしいだろうと思いますし,それから,委託者に自由に認めるのもおかしいだろうと考えられ,そういった考え方から裁判所が関わるべきであると思います。認定行政庁は,当初の公益信託の設定のとき,設定に伴う認定のときですか,そのときも私人が作った信託の仕組み,それが公益性にかなうかどうかという観点から認定をし,あるいは認定をしないということが認定行政庁の立場ですので,ここで新信託管理人の選任というところでは,自ら選任をするという立場に出てくるのは,過剰な役割をそこに期待することになるのではないかと思います。
  しかし,その上で乙案を採った上で,もしかすると平川委員がおっしゃったのかもしれませんが,当初の公益認定のときには受託者もそうですが,信託管理人についても適格要件というのを定め,それも認定をするための作業の中で判断をしていることであれば,中途で代わる場合に認定行政庁が何もそこについて意見を言うことができず,自由に誰でもが新信託管理人になれるというのはおかしいだろうと思いますので,補充的なというのですか,あるいは二次的なというか,裁判所の選任によって認められた新信託管理人が要件を満たしているか,あるいは欠格事由に当たらないかということは認定行政庁が判断する,そのプロセスは付随させるべきなのだろうと思います。そうすると,甲案であれば,それを一つでできるからいいではないかということなのかなと思うのですが,しかし,誰が決めるべきかというところの位置付けからすると,甲案というのは当初のときの役割分担と違った形の役割を,認定行政庁に求めるということになるのではないかなと思います。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
  論点は大体お示しいただけたかと思いますので,受託者についてのものと併せて本日の御審議の結果を事務当局の方で整理いたしまして,次の第二読会のところで,また,御検討いただきたいと思います。
  司会の不手際で,本日,更にもう1項目があるんですけれども,時間が来ておりますので,「第4 公益信託における情報公開」については,次回に御審議いただくということでお願いいたします。
  それでは,次回の議事,日程等について事務当局から説明してもらいます
○中辻幹事 次回は,本日,積み残しになりました「公益信託における情報公開」を御審議いただいた後,公益信託の終了,変更,名称,その他の論点について御審議いただくことを予定しております。次回に予定している論点の最後まで御審議いただければ,第一読会は終了ということになります。
  次回の日程は,平成29年1月17日(火曜日),午後1時半から午後5時半までです。場所は,法務省20階第1会議室で開催します。
○中田部会長 それでは,本日の審議はこれで終了といたします。
  本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。
-了-

法制審議会信託法部会第35回会議 議事録





 
 
第1 日 時  平成28年11月1日(火)   自 午後1時30分
                        至 午後5時08分
 
第2 場 所  法務省第1会議室
 
第3 議 題    公益信託法の見直しに関する論点の検討
 
第4 議 事 (次のとおり)
 
議        事
○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第35回会議を開会いたします。本日は御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  本日は,小川委員,稲垣幹事,岡田幹事,渕幹事,松下幹事が御欠席でいらっしゃいます。
  まず,本日の会議資料の確認を事務当局からお願いします。
○中辻幹事 お手元の資料について御確認いただければと存じます。前回,部会資料34「公益信託法の見直しに関する論点の検討(3)」を配布しておりますが,本日はそれを用いて,前回積み残しとなった部会資料34の21ページ「公益信託の設定前に目的信託の設定の前置を必要とするか否か」の項目以降について御審議いただくことを予定しております。
  それから,今回新たに配布する資料として,部会資料35「公益信託法の見直しに関する論点の検討(4)」を事前に送付させていただきました。
  また,本日は,内閣府の明渡関係官から,公益法人制度における不可欠特定財産の認定基準の認定基準の運用状況について御説明を頂けるということで,そのための資料を机上配布しております。
  以上の資料について,もしお手元にない方がいらっしゃいましたらお申し付けください。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
  本日は,前回積み残しになりました部会資料34の第4の3及び4,並びに部会資料35について御審議いただく予定です。まず,部会資料34のうちの第4の3と4を御審議いただき,続いて部会資料35の第1から順に御審議いただきまして,午後3時頃をめどに,適宜休憩をとることを予定しています。その後,部会資料35の残りの部分を御審議いただきたいと思います。
  そこで,本日の審議に入りますが,前回御審議いただきました部会資料34の第1の4の「不可欠特定信託財産の処分制限等」に関しまして,ただいま御紹介のありましたように,明渡関係官から公益法人制度における不可欠特定財産の認定基準の運用状況について御説明していただけると伺っています。明渡関係官,お願いいたします。
○明渡関係官 お手元にお配りしております横紙,青が入っている紙でございます。「公益法人制度における不可欠特定財産について」というペーパーに基づきまして簡潔に説明いたします。
  改めてでございますけれども,上段の青枠に公益法人制度における不可欠特定財産について記載しております。認定基準の一つとして掲載しておりまして,具体的な例としては,美術品,文化的価値がある建造物等がこれに当たるという形になっております。
  中段の左側でございますけれども,目的といたしまして,設立者・寄附者の意思を尊重する観点から,公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産の安易な処分を防止するためのものになっております。下に字の大きさを変えて書いておりますけれども,目的は安易な処分の防止というようなことでありますので,必要な手続を踏めば,不可欠特定財産の方から外すことは可能という形になっております。
  1ページおめくりいただきますと,「定款における不可欠特定財産の定め(例)」という資料を付けております。こちらの方は典型的な例として,定款を挙げているものでありますけれども,2項の一番最後の部分,「基本財産から除外しようとする時は,あらかじめ理事会及び評議員会の承認を要する。」と,こういうふうな規定が設けられているというのが一般的なものかと考えております。
  お戻りいたしまして,1ページ目の中段の右側,効果というところでございます。不可欠特定財産の効果の大きなものとしては,公益認定が取り消された場合に影響してくるものでございます。公益認定が取り消された場合には,公益目的取得財産残額に相当する財産を他の公益法人等に贈与する必要があるというような規定になっております。しかしながら,この財産残額を計算する際には公益認定前に取得した不可欠特定財産については除外するという形になっておりますので,例えば一般財団法人○○美術館という時代に取得した財産については,その後,公益認定を受けて,しばらくたってから取り消されるというようなことがあっても,当該財産を残せる可能性は高いというような形になるのだろうと思っております。
  一番最後,下のところですけれども,認定審査時の現状ということでありますけれども,一般に審査するのは,本当に不可欠特定財産に当たるのか,そちらの方に記載されているものが不可欠特定財産に当たるのかというのを確認するというのが基本となっているかと思います。時たま,ただのという言い方は変ですけれども,通常の土地等がこちらの方に掲載されていたりすると,これが本当に不可欠特定財産に当たるのかというのを見ていくというふうなことが中心になっていると認識しております。この問題につきまして,内閣府の公益認定等委員会における審査であったり,各都道府県の審議会がございますけれども,そういった中での議論においても,大きな問題となっているというようなことはあまり耳にしてはおりません。
  実際に書類上どうなっているのかというのが3枚目でございます。こちらの方は財産目録というような書類がありまして,そちらの方に載ってくるというふうなことになっています。不可欠特定財産という場合は,固定資産の基本財産というところに掲載されるのが通常であります。美術品だからといって,全てをこちらの方に計上しなくてはいけないというようにはなっておりません。それ以外の美術品については下の特定資産というところにもありまして,こちらの方に分類されているというようなものも多数ございます。
  実際の法人の方を見てみますと,よく名前を聞く有名な法人ですけれども,美術品の点数でいいますと,基本財産として挙げているものよりも特定資産の方に挙げているものが圧倒的に多いというような形で,二,三,例を見ますとなっておりました。ある法人においては基本財産になっているものが200点程度,特定資産になっているものは7,000点程度ございました。もう一つ見ますと,基本財産は80点程度,特定資産の方は1,200点程度というような形でなっておりまして,美術品だからといって全てを基本財産,不可欠特定財産の方に入れるというような運用にもなっていないというような現状でございます。
  私からの報告は以上でございます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  引き続いての御審議の参考にしていただければと存じます。今の時点で御質問などはございますでしょうか。
○沖野幹事 御説明をありがとうございます。
  十分な基礎知識がないものですから教えていただきたいということがあります。審査時の現状として不可欠特定財産として記載されたものが本当にそれに当たるのかの確認が基本的に問題になるということなんですけれども,逆のことはないのでしょうか。ここに記載されていない,例えば特定資産の方に分類されているんだけれども,これは不可欠特定財産の方に入るべきではないのかというような形で問題になることはないのかというのが一つ目です。
  二つ目ですけれども,効果のところで公益認定前に取得した,ですので,一般法人の段階で取得したような不可欠特定財産は,他の公益法人等に贈与する算定額から外すことができると理解したのですけれども,としますと,特定資産の方はこの残額に入ってき,それに相当するものは他の公益法人に贈与等をする必要があるということになるのでしょうか。そうだとしますと,考え方ですけれども,不可欠特定財産というイメージからは公益目的事業を行うために不可欠な財産であると考え,認定が取り消された場合に公益事業のためにはそれが不可欠な財産であると考えられるものは手元に置いておけて,そうでない財産は他の法人への贈与の額に入ってくるという扱いになりそうなんですけれども,そういうことなのでしょうか。以上です。
○明渡関係官 まず,1点目でございますけれども,逆の方はないのか,こちらの方の特定資産に入っているものを不可欠特定財産の方に入れるべきではないかというふうな議論がないのかといいますと,それは聞いたことがないというのが正確なところです。全国47都道府県に審議会がありますので,こういった観点について押しなべて調べているというふうなデータがありませんので,そういった意味では正確なものではないんですけれども,特定資産の方に変えるというふうなことで問題になったり,困っているというような話を聞いたことはないというのが現状でございます。
  後者ですが,残りの二つの点につきましては,特定資産というような形の方に計上されますと,計算上は公益目的財産残額から除外することにはならないということですので,そこの部分というのは金額としては残るといいますか,移さなければいけない金額の方に計算されるというような形になります。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
○道垣内委員 同じ質問なのですが,公益法人のときの『一問一答』とかを見ますと,そこには不可欠特定財産がある場合に,その安易な処分を認めると当該事業の実施に支障が生じるおそれがある,だから,不可欠特定財産という制度を制定するのだと説明されているわけですが,運用の方としては,どちらかというと,当該公益目的の実施に不可欠であるというよりも,終了時の処理等の観点から考えるという運用がされているということでしょうか。
○明渡関係官 どちらかというと,その財産を不可欠特定財産に含めるのかどうかというのはむしろ法人側がどうしたいのかというのが実態だろうと思います。どこまでが本当に当該法人の事業の運営に不可欠かというふうなものを,なかなか,行政の方で,こうしろ,ああしろというふうな形にはなっていないだろうと思います。ただ,元々の趣旨からいうと,いかにもこれを不可欠特定財産として入れておくのはいかがかというふうなものが見受けられた場合に,それはどうなのでしょうかと審査しているというようなことになっているのだろうと考えております。
○中田部会長 まだ,御質問等があるかもしれませんけれども,今日の審議がたくさんありますので,この程度で先に進めさせていただいてよろしいでしょうか。
  それでは,部会資料34の「第4 公益信託と目的信託との関係」の3と4につきまして御審議をお願いいたします。前回,事務当局からの御説明を伺っていますので,直接御意見を頂くことにしたいと思います。まず,「3 公益信託の設定前に目的信託の設定の前置を必要とするか否か」について御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
○平川委員 前回申し上げましたとおり,公益信託は目的信託の一類型ではないという整理の論理的帰結としても,目的信託の前置は不必要であると考えます。
○道垣内委員 私は,公益信託は目的信託の一類型であるという理解の下で,前置は不要だと思います。
○林幹事 弁護士会の議論では,理解の仕方はさておき,前置を不要というのに賛成でした。専ら一類型だという前提の下に議論したとは思いますけれども,いずれにせよということです。
○中田部会長 ありがとうございました。
  いずれも前置は不要だという御意見が続きましたが,前置が必要だという方はいらっしゃいますでしょうか。
  それでは,この点につきましては前置不要ということで取りまとめさせていただきます。
  続きまして,「4 既存の他の信託が公益信託の認定を受けることを許容するかどうか」についてはいかがでしょうか。
○沖野幹事 質問ですけれども,この問題なんですけれども,既存の他の信託が公益信託の認定を受けることを許容するかどうかというのは,仮に新しい立法になったときのその後の問題として,まず,公益信託以外で作っておいて,それを更に公益信託にする,あるいは最初は別のもので作っておいて,ある段階から認定を受けるようにすることを最初から組み込んでおくという,新しい規律の中で切り替えを可能にするというもの,最初は目的信託でその後に公益信託にするとか,最初は私益で後に公益にするとか,そういう一種,ハイブリッド的なものを認めるかどうかが問われているのか,それとも,経過措置的に,今いろいろあるものがあって,それについて認定を受けることを認めるかということが問われているのかというのが気になりまして,これは前者なのでしょうか。
○中辻幹事 事務局としては前者で考えておりました。現在は,公益信託法2条1項が存在することにより,公益を目的とする信託は,主務官庁の許可を受けなければ無効であるという解釈があり得るのですが,部会資料34のこの部分では,仮に公益信託法2条1項を廃止した場合において,新たな制度の下で設定された,公益信託の認定を受けていない公益を目的とする他の信託が公益信託成りすることを可能とするか否かという観点から主に検討しております。もっとも,後者のように,現在ある既存の信託について経過措置的に公益信託の認定を受けられるようにすることも検討していく必要はあると思います。
○能見委員 今の沖野幹事の御意見を誤解しているかもしれませんけれども,私も二つの場合があると思うのですが,一つは最初から計画的に当初は私益信託を設定して,一定の段階から公益信託に変えるというもので,そういう計画の下で私益信託が公益信託に変わるというタイプと,それから,もう一つは,そういう計画的なものではなくて,ずっと私益信託で実質的に公益的な活動をすることをしてきたけれども,今度,公益信託に変えたいと考えるようになって,いわば偶発的な契機で公益信託に変更したいというタイプです。この二つは大分違う問題なんだと思うのです。この部分に関する部会資料の説明を前回は読んできたんですが,今回は読んでこなかったので,内容を詳しく覚えていませんけれども,最初から計画的に私益信託から公益信託に変更するという問題は,逆のパターン,公益信託から私益信託へ変更するというパターンもあるでしょうし,これらはもう1つのタイプとは区別して別の問題として考えるのがよいと思います。
  そこで,ここでは,そういう計画的な変更で公益信託に変える場合ではなくて,偶発的な事情で公益信託に変えたいという場合に,このような変更を認めることができるかという場合を考えるべきかと思います。このような問題として考えたときにどうするかということですけれども,私としてはいろいろ手当は必要なんでしょうけれども,甲・乙いずれも認めるということになると,丙になるのでしょうか,この立場がよろしいのではないかと思います。
  それから,どんな手当を設ける必要があるかという点については,これを認めるという方針が決まってからいろいろ考えればよいと思います。それから,公益信託への移行という点についてもう一つ述べておきたいことがあります。話がいろいろとごちゃごちゃしますけれども,現在,ここで議論しているのは,既存の私益信託あるいは目的信託が,ある意味で同一の信託であることを継続しながら,公益信託の認定を受けて公益信託に変わるというタイプを考えていると思いますが,これと異なり,現在ある私益信託などが公益信託に変わろうと考えた段階で,この私益信託を残したままで,別に公益信託を作ってしまい,今までの私益信託から別に設立された公益信託に,信託財産を移転し,その上で私益信託は終了させるという方法が考えられます。アメリカで検討されているデカンタと言う方法です。これを私益信託から公益信託への移行にも応用するわけです。このように既存の信託からの公益信託への移行にはいろいろなタイプのものがあるので,どういうタイプをここで検討するのかということを整理した方がいいだろうと思います。その上で,私としてはできれば移行は認めるという方針でいくのがいいのではないかと思います。
○深山委員 私も,移行については柔軟に可能性を認める,ゴシックの提案の中でいえば丙案を支持したいと思います。既に能見委員あるいは沖野幹事が御指摘のように,いろいろな場面があって,確かに多少,考慮すべきことが違う要素もあるような気は私もするんですが,しかし,途中から公益信託への移行の可能性を認めるという立場を採るのであれば,結論としては同じような一つの規律で整理できるのではないかと基本的には考えています。能見委員が御指摘のように,最初から計画的なものと後にその気になった場合があり得るというのはそのとおりだと思うんですが,しかし,その限界というのは非常に微妙でして,当初から可能性としてはあり得るけれども,当面は考えていないというような,その中間的なものもあろうかと思いますので,最初から計画していたかどうかによってまるっきり区別する必要はないのではないか,あるいはそれは難しいのではないかと思います。
  途中から変えることを制限的に考えるのであれば,最初から計画していたときだけは切り替えを認めるというようなルールもあるのでしょうけれども,私はそこまで厳しくする必要はなくて,計画的な場合であれ,その後その気になった場合であれ,今回,ここで議論している公益認定の要件ないし認定基準を満たすのであれば,いずれにしても移行を認めていいだろうと考えます。沖野幹事が御指摘の,現行法の信託からの移行はどうかという点は,これも,要は新しい公益信託の規律における公益認定の要件を満たすのであれば,それは認められるということだろうと思います。
  更に残る問題を考えるとしたら,既存の公益信託と新しいルールの下での公益信託とが,認定要件がずれてきたときに,既存の公益信託はどうなるのかという問題は残るような気がいたします。これを同じように新しいルールができたのだから,新しいルールで認定を受けなければいけないとすると厳しいところが出てくるのかもしれない。そこは経過措置的に何か手当をする必要があるのかもしれないなと思っております。
○樋口委員 今の議論を聞いていて,アメリカで認められている信託について考えました。私益と公益をミックスしたタイプの信託のことですが,こういうものはアメリカでは認められていても,日本ではそもそも議論になることはないんだなと勝手に思っていたのがそうでないのかもしれない。それは私の誤解かもしれないということなんですけれども,アメリカではチャリタブル・リード・トラストというのとチャリタブル・リメインダー・トラストというのがあるわけです。
  チャリタブル・リード・トラストというのはチャリタブルの方が先にくるというわけなので,例えば私が大きい空地を持っていて,私自身はその空地を今のところ,使う予定もないから,それを公園で,あるいは遊び場で誰にでもとにかく使ってもらいたいという形で,しかし,ずっとというわけにはいかない。だから,10年とか20年はそういう形で公益的に使ってもらいたいけれども,20年がたったらまた元へ戻って私の子どもか孫か何かがそれを使って何とかというようなこと,これは一番初めから計画してやるタイプのチャリタブル・リード・トラストというものなんですけれども,逆にチャリタブル・リメインダー・トラストというのは,初めに私益信託で10年間だけはここから自分の子どものために実益を上げておきたい,しかし,子どもも10年たてば大きくなるので,その後はこの財産を公益のために使うというようなものが認められているわけです。
  それで,税法上は公益に充てられた部分だけ税法上の効果を付けてあげようということになります。それによって,そういうインセンティブを,つまり,そんな中途半端なことはやるなよと言われそうなんですけれども,私的な利益というのと公的な利益と両方をとにかく実現したいという人もいるという話で,今日の今の話はどうも何かそういうことが日本でももしかしたら可能性があるのかなという感じがしたんですけれども,誤解でなければいいと思っているんです。
○新井委員 結論的には丙案を支持したいと思います。公益を目的とする目的信託というのは,今回は無効にはしない,有効という扱いになりますので,そういう公益を目的とする目的信託が公益信託の要件を満たすのであれば,それは公益信託として承認していいだろうと思います。それで,私益信託であっても公益の要件を満たした場合には公益と認定するというのは私益信託から公益信託の転換が非常に重要であろうという意味もありますので,これもいいだろうということで丙案を支持したいと思います。
  それで,一度,公益信託になったものが再び目的信託なり,私益信託に転換できるか。今,正に樋口委員の御指摘になった点ですが,私はこれは認めない方がいいと思います。なぜかというと,一度,公益信託になった以上は社会全体に出えんしたと考えた方がいいでしょうし,更に公益信託がまた目的信託になったり,公益信託が私益信託になったときの法律関係が非常に複雑になるということで,目的信託から公益信託への転換,それから,私益信託から目的信託への転換は可能ですけれども,一度,公益信託になったものは更なる転換は認めないと私は考えたいと思います。
○中田部会長 ほかに。
○林幹事 弁護士会の意見としては,深山委員が述べたように丙案ですが,参考までに,弁護士会の議論で出た具体例として,特定の病気に罹患しているAさんのために私益信託を設定していたけれども,一定の時期以後には,Aさんだけではなくて,ほかの同じ病気の人たちに対する信託としたいので,公益信託に移行するというものがありました。こうした事例はこの論点に適した事案だと思います。
  それから,ここでは私益信託から公益信託への場合を専ら議論していますけれども,その逆はどうなるのかという議論が弁護士会でもありました。それで質問ですが,その論点は,後に別のところで議論するという前提なのか,確認させていただければと思います。
○中辻幹事 公益から私益への転換というのは,別にまた議論させていただければと思っております。
○中田部会長 24ページの下の方にあるのがそれですかね。
○中辻幹事 そうです。
○吉谷委員 私益信託や目的信託から公益信託に転換するということに異議を唱えるつもりはないのですけれども,結論としては丁案であるということです。今,お話を聞いておりましても,どうして信託を終了して再度,公益信託を設定しないといけないのかという理由が私には全く分からなかったんです。実務的な考え方からいうと,変更手続というものをするよりも終了して新規のものを作ることに,何かプラスアルファの手間があるとは余り思えなく,制度にいろいろな道を設けるということが利便性を向上させるかというと,必ずしもそんなことはなくて,逆に使う側はどれを使うんだろうと迷ってしまうと思うんです。ですので,終了して新規という方法を採ることができないような類型があるのであれば,それのためにこのような制度を認めてあげてもいいのかも知れないんですけれども,そのような例を思い付きませんでしたので,丁案賛成とさせていただきます。
○道垣内委員 どれに賛成というわけではありませんが,乙案について一言だけ申し上げたいと思います。信託目的の変更というものは,委託者,受託者,受益者の合意があればできるわけですよね。そうすると,それが「実質的に公益」というのは本当はよく分かりませんで,特定の受益者がいるのに,なぜ,実質的に公益になり得るのかというのがよく分からないんですけれども,技術的には,どんな私益信託であっても公益に目的を変更するとともに,信託法258条3項に関わらず,受益者の定めというものを廃止でき,かつ公益認定の申請ができるという制度を考えることになるのかなという気がしております。したがって,乙案が実質的に公益を目的とするということの意味もよく分かりませんし,また,公益信託の認定を受けることと同時に,受益者の定めを廃止するということが258条3項の例外として認められると,技術的には整理されるのではないかと思います。乙案だけですと具体的にどういう手続なのかが分かりにくいかなと思いました。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 私も深山委員とほぼ同じで丙案に賛成します。公益信託法は多様な公益への取組を許容して柔軟に対応することにより,公益活動の促進を図ることが望ましいと考えますので,入口は自由で,甲案のような公益を目的として設定された認定を受けていない公益信託や,乙案のような実質的公益目的の私益信託も,信託行為の変更と公益認定基準を満たす信託とした上で公益信託認定を受けることを許容するのが,柔軟な公益活動の促進につながると考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○小野委員 先ほどの吉谷委員の終了すればよいという点ですが,終了することがふさわしい場合もあるかもしれませんが,また敢えて私が申し上げる必要もないのかもしれませんけれども,当初信託設定の目的が,先ほど幾つか林幹事が挙げた事例の中には,当初私益といいますか,ある特定のがん患者のためで,その後,公益という事例がありましたが,それは気持ちが変ったというよりも,当初から信託設定の目的だったと思います。またその後,委託者たるその方が亡くなっているということも考えられ,そのときは再度信託を設定することは難しく,さらに委託者が存命しているか,していないかということにかかわらず,そういう信託というのはあり得ると思います。
○神田委員 確認的というか,今の点とも関連するのですが,先ほど樋口委員がおっしゃった例というか,能見委員が最初におっしゃった言葉でいうと偶発的でないというか,当初,委託者が10年間私益で,あと,10年たったら公益,あるいは逆に先に10年間公益で,あと,私益というものは,一番最初に設定するときに認定してもらわないと困るのではないでしょうか。10年たってから認定を求めなさいと言われたって生きている保証はありませんし,逆に公益から入った場合も10年たってやめればいいでしょうといっても,やめるときに自分はいないかもしれないわけですから。そういうことでいうと,入口で全部一括して一部公益というのですかね,何というのかよく分かりませんけれども,設定する時点で認定をしてもらわないと困ると思います。そういうものも認めないということなのか,何らかの条件の下で認めるのかということは,はっきりさせた方がいいと思います。
○樋口委員 吉谷委員の言う実務的な観点というのは,私も理解できるところなんですけれども,2点あって,一番初めに,結局,決めておくということが,ある場合に重要なことがあるわけです。変更あるいは終了で対処すればいいではないかといったって,10年先には先ほど小野委員も言っておられたように,自分は生きているかどうかも分からないわけです。この時点でこういう仕組みを作っておきたい。これは現時点で確定するわけです,その意味では。10年間の公益とか,あるいは10年間の私益とか,その後はという形で,そういうものを認めるかどうかというのは一つの考え,どういう態度をとるのかということで,そういうのはアメリカでは認められているという紹介を申し上げただけです。
  それから,終了すればいいかというのは,つまり,10年後に生きているかどうかは分からないというのと,もう一つ,終了するというのはすごく私はコストが掛かると思うんです。信託財産をその段階で何らかの形で処分せざるを得ないかもしれないし,今まで運用していたものを何かでやめないといけないのかもしれないから,実務的に考えても,そうではなくて運用はそのまま流しておいて,目的が今度は変わったんですよという形のものにするという実務的利益はあるんじゃないかなと,終了すればいいではないかということではないのではないかと,実務家でない私が言うのも説得力がないんですけれども,そう感じました。
○能見委員 今,樋口委員が言われたことを私も言いたかったのですが,私の言葉で言い換えますと,既存の信託がそのまま公益信託に変わる場合と,一旦,終了させて新たに公益信託を立ち上げる場合とで一番違うのは信託を清算するかどうかというところだと思います。今までの信託,助成型の公益信託の場合には債務を負っているということは余りないでしょうけれども,事業型の公益信託というのが出てくるとなると,英米などで現実にどの程度,そういうものがあるか分かりませんけれども,事業を行う上でいろいろ債務を負担している場合もあるのではないかという気がいたします。行政機関等による監督がある公益信託の場合には債務超過になることはあまりなく,債務はあっても積極財産の方も多いのでしょうけれども,他のタイプの信託に変更するためには,一旦,これを清算しろということになると,今,樋口委員が言われたように積極財産を処分しなければいけないことになる。これをしなくても既存の信託を公益信託に,あるいはその逆に変えられるという方法があるということは非常に重要なメリットではないかと思います。
○吉谷委員 樋口委員がおっしゃった事例というのは,そういうこともあるのかなとは思ったんですけれども,そうすると,逆に10年先の公益認定を今のうちにできるのかというような問題が出てくるのではないかなと,まず,思いました。ですので,そういう問題をクリアする必要があるということかと思いました。あと,清算の手続のところなんですけれども,必ずしも資産とか債務とかを処分したりする必要もないのではないかなとは思っております。そういうものは私どもの経験では,それほどにはないのではないかと思っておりますので,実際に事業型でどういう場合にはそういうことが必要なんだということをもうちょっと突き詰めて検討した方がいいのではないかなと思います。ですので,私どもの考え方は余り必要でない制度を作ってしまうことは無駄なので,法的に同じ信託でないとできないということなのであれば許容すべきかもしれないけれども,そういうニーズが本当にあるんだろうかということをお聞きしているということでございます。
○中田部会長 関連する御意見がもしないようでしたら,山本委員,お願いしたいと思います。
○山本委員 少し戻って,道垣内委員がおっしゃられたことでおそらく示されているのだろうと思うのですが,乙案の内容について確認させていただければと思います。この考え方に従って規定を設ける場合に,実質的に公益を目的とする私益信託であることが,信託の変更を経て公益信託の認定を受けることの要件になるように見えるわけなのですけれども,そのような意図でこれは書かれているのか。それとも,信託の変更を経て公益信託の認定を受けることができるようなものは,元々,実質的に公益を目的とする私益信託だったのだろうということを表現しているだけなのか。この点が少し分からなかったものですので,確認をさせていただければと思います。
○中田部会長 先ほど道垣内委員から御指摘いただいた点,信託法258条3項の例外規定を設けることになるのかどうかという点も併せて御説明いただけますでしょうか。
○中辻幹事 事務局としましては,乙案を採る場合には信託法258条3項の例外規定を公益信託について設けた上で,受益者の定めはあるが実質的に公益を目的とする私益信託を受益者の定めのない信託に変更すると同時に,その時点で公益信託の認定を受けることを可能にするということを考えておりました。実質的に公益を目的とするという言葉の外縁は不明確で認定時における判断が難しいかもしれませんので,道垣内委員と山本委員の御指摘を踏まえて,引き続き検討したいと思います。なお,私どもとしては,全ての私益信託が公益信託成りできるようにすることまでは想定しておりませんでした。先ほど林幹事が例として挙げられた一人の患者の方のために私益信託を設定したような場合は,公益に近いケースもあるのでしょうけれども,純粋私益の信託が公益信託の認定を受けることを可能とすることまでは想定していなかったということです。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○深山委員 今の山本委員の質問と中辻幹事の最後の説明は,何となくずれを生じたような気がするんですが。結局,実際問題としては全ての私益信託が公益信託になり得るわけではないということを言っているだけで,最初から実質的な公益信託であることを言わば要件として,そのようなものについての転換のことだけを想定しているわけではないということでいいのだろうと私は思っているんです。お答えの趣旨なんですけれども,結果としてそうなるということであって,元々,実質的に公益を目的としたということを要件にはしていないということでよろしいんですよね。多分,そういう御質問だったと思うんですけれども。
○中辻幹事 そのような理解もありうるとは思いますけれども,私どもが事前に検討している段階では純粋私益の信託が公益信託成りすることまでを認めるニーズというのはないが,実質的に公益を目的とする私益信託が公益信託成りするニーズはあるかもしれないと,そうであるならば,実質的に公益を目的とするか否かまでを含めて,公益信託の認定の段階で認定機関が判断して公益信託成りを許容することもあり得るのかなと考えておりました。ただし,なかなか,そこまで含めて公益信託の認定機関が判断を行うのは現実的には難しいということであれば,信託の変更を経て公益信託の認定を受けられた信託が,結果的に見れば,後戻りしてもともと実質的に公益を目的とする私益信託だったということになり,実質的に公益を目的としていたか否かは転換の要件としては不要になるという理解もあり得るということなのだろうかと思います。
○深山委員 しつこくてすみません。例えば先ほど林幹事が言ったように,最初は自分の息子,がんにかかった息子のために使うために財産を拠出し,それを例えば亡くなった後はがん患者一般のために使うというのは,元々は確かに純粋に私益といえば私益なんだと思います。そういう純粋私益のものであっても,今までは私益でしたけれども,明日からは純粋公益にしますというような,そういう移行を考えたときには,元々が私益であったとしても,明日から純粋公益になるということでその要件を満たすのであれば,狭き門かどうかはともかくとして,理論的には純粋私益から純粋公益への転換もあり得るという制度でいいのではないかなと私は思っていますので,要件ではないですよねという確認をしたかったんです。
○中辻幹事 深山委員の御意見はよく分かりました。ただ,事務局で乙案を事前に検討していた段階では,部会資料34の24ページの中ほどにも例として挙げておりますけれども,委託者が受益者を兼ねている歴史的建造物の保存を目的とする私益信託,例えば京町屋の保存を目的とする私益信託が公益信託成りすることを想定しており,林幹事が例として挙げられた一人の患者の方のための私益信託が公益信託成りすることまでは考えていなかったということです。ですから,林幹事と深山委員の御意見を否定しようとは全く思っておりませんけれども,実質的に公益を目的としていた私益信託であることを公益信託への転換の要件とするかも含めて引き続き検討させていただければと思います。
○中田部会長 大体,よろしいでしょうか。では,この点につきましては様々な御意見を頂きました。また,乙案の言う公益的私益信託よりももっと広げるという案も出たところですけれども,それらも含めて更に検討を進めたいと思います。
  それでは,部会資料35に進みます。第1の「公益信託の監督・ガバナンスの全体像」と「第2 公益信託の受託者」について御審議いただきたいと思います。事務当局から説明してもらいます。
○佐藤関係官 私の方から御説明いたします。
  まず,「第1 公益信託の監督・ガバナンスの全体像」について御説明いたします。本文では,「公益信託の信託関係人による自立的な監督・ガバナンスの仕組みを確保した上で,それを公益信託の認定を行う行政庁等の外部の第三者機関が監督するものとすることでどうか。」という提案をしております。
  公益信託の監督について,公益法人制度改革の趣旨を踏まえて公益信託を民間による自律的な公益活動と位置付けてこれを促進しようとするのであれば,まずは公益信託内部の信託関係人による自律的な監督・ガバナンスの仕組みを確保することになると考えられます。他方で,公益信託の認定の実効性を確保するためには,公益信託の認定を行う外部の第三者機関が認定後引き続き公益信託の監督を行う必要性が認められることから,現在の公益法人の仕組みも参考として,公益信託の監督に関する権限を公益信託の認定を行う行政庁等の外部の第三者機関に持たせることを提案しております。
  続いて,「第2 公益信託の受託者」について御説明いたします。本文では,「公益信託の受託者の権限・義務・責任は,目的信託の受託者の権限・義務・責任と同一とすることでどうか。」という提案をしております。
  受託者は,信託の定義上必須の信託関係人に位置付けられるところ,その位置付けは受益者の定めの有無により異なるものではございませんので,受益者の定めのある信託に関する信託法の規律は,基本的には公益信託の受託者にも適用されるべきであると考えられます。また,信託法第260条第1項は,目的信託の受託者の義務を受益者の定めのある信託よりも加重しておりますが,公益信託を目的信託の一類型として位置付けるか否かにかかわらず,受益者が存在しないために受託者に対する監督が十分に機能しないおそれがあるという点では,公益信託と目的信託とで共通するところがございますので,目的信託の受託者に関する信託法第260条第1項の特例も,公益信託の受託者に適用すべきであると考えまして,このような提案をしております。
○中田部会長 ただいま説明のありました部分につきまして御審議いただきたいと思います。まず,第1,これは概要のようなものですけれども,これについていかがでしょうか。
○平川委員 基本的に賛成いたします。すなわち,民間による公益活動の受け皿とするために公益信託制度を活用するという観点から,信託関係人による自律的な監督やガバナンスの仕組みを構築しつつ,公益信託の立上げにおいて認定を行う外部の第三者機関が補足的に公益信託の監督の一部を担うということにより,公益信託のガバナンスを揺るぎないものにするという考え方に賛成するものです。特に公益法人同様の税制整備を目指す観点から,税制に耐えられるような自律的な規律を念頭に置くべきであると考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 公益信託の関係による内部的,自律的なガバナンスの仕組みを確保するという提案に賛成いたします。更に今回の全体の議論にも係るところかとは思っておるんですけれども,資料でいいますと3ページの(注)のところに,助成型と事業型の区別あるいは受託者の属性によって認定や監督の取扱いが区別される可能性があると書かれているところについて,まず,コメントしたいと思います。現状の公益信託では信託銀行が受託者となることによりまして,主務官庁の強い監督権限が現実には行使されていなくても成り立っているということがございますので,それをまず改めて御認識いただければと思います。
  その上で,信託兼営法という金融規制の枠組みにより活動している信託銀行が受託者であると,信託目的に沿った運営であることが受託者の内部で重層的にチェックをされている。それによって運営委員会の助言によって助成を実施し,信託管理人が事後的な検証をするということで十分であると主務官庁からも考えられているんだと理解しております。ですので,今後も助成型の公益信託を信託銀行が行う場合には,同様の体制で十分であると考えております。これがいたずらに重装備になることは望ましくないと考えておりますので,(注)の考え方というのはあり得るものだと考えております。
  この後の議論で,信託協会としては,信託管理人が監督を行い,委託者の監督は任意のものであって,運営委員会は助言機関として任意に設置するということを主張していくつもりでありますけれども,気になっておりますのは,本日議論されていることがガバナンスとして最低限の必要な枠組みでありまして,受託者の属性や公益事業の内容によっては信託管理人などが財産の使用や管理の状況を厳しくチェックするということが必要な場合もあるだろうと考えます。そのような場合には,例えば現状のようにボランティア的な信託管理人が一人というようなもので足りるのかどうかということも問題になってくると思います。ですので,それぞれの公益信託の受託者が自律的なガバナンス体制というのを構築して,それが機能するということを証明して,第三者機関が納得できるようにしていくという必要があるのではないかと考える次第です。
○中田部会長 個別的な論点についてはまた御検討いただくことにしまして,第1につきましてはこの程度でよろしいでしょうか。
  それでは,第2に進ませていただきます。「第2 公益信託の受託者」について御意見を頂きたいと思います。
○小野委員 細かい各論の前の議論として,専門家たる個人が受託者になるという場合を考えてのことでありますが,限定責任信託の場合ということも考慮してよろしいのかと思います。とはいっても,信託法上,限定責任信託における受託者の義務はそうでない一般の信託と異なる義務になっているという趣旨ではありませんけれども,今までの論点にはなかったような気がしましたので,一言,添えたということです。
  また,専門家が受託者になるうんぬんという議論から離れますけれども,今の目的信託は自己信託の目的信託というのは制度上,法律上できませんけれども,公益信託の場合ですと自己信託の目的信託を排除する理由はないと思います。これも立法論ですけれども,その場合の受託者の義務,自己信託だからといって受託者の義務は違うところがないと理解しておりますけれども,そういう意味においても,論点としてそういう観点もあるということを申し添えたいと思います。あと,前も発言したことですけれども,受託者の義務は任意法規化されておりますけれども,ここでいう受託者の義務が同じということは,そこも含めてなのか,そういうような議論はまた別途するという趣旨なのかというような制度の立て付けの議論もあるかとも思います。
○平川委員 公益信託の受託者の権限・義務・責任については,目的信託の受託者の権限・義務・責任と同一とするという考え方に対しては,結果的に公益信託の受託者の権限・義務・責任が目的信託の受託者のそれと信託法に定められているものと同様,類似のものになるという意味においては賛成しますけれども,しかし,目的信託の信託法261条1項の読み替えを経て公益信託の受託者にも適用されるとした上で,それゆえ,信託法260条1項の特例も公益信託の受託者に適用されるという考え方には反対します。目的信託からスタートして公益信託の受託者の権限・義務・責任を考えるべきではなく,信託法の一般規定における受託者の権限・義務・責任をそれぞれ検討して,公益信託における受託者の権限・義務・責任を検討し,適宜,必要な読み替えをすべきであると考えます。
  その理由は,そもそも,第34回会議で述べましたとおり,公益信託は目的信託の一類型であると位置付けることに反対であり,目的信託において定められた受託者の権限・義務・責任を出発点として,公益信託の受託者の権限・義務・責任を議論するといたずらに議論を複雑にします。なぜなら,さきの項目でも論じられましたとおり,公益信託には公益信託内部の受託者を含めた信託関係人による自律的な監督やガバナンスの仕組みが欠かせないのに対して,必ずしも公益を目的としない目的信託,例えば永代供養とか,ペットや植物の世話などの信託においては,受託者に対する他の信託関係人の監督の在り方や関わり方も異なってきますので,目的信託に適用のある条文からスタートして,公益信託への適用や読み替えを考える必要も実益もなく,かえって事を複雑にすると思います。
  一例を挙げますと,信託法260条の目的信託においては,委託者に受託者に対する一定の監督機能を与えて一般規定を強化していますけれども,公益信託では委託者の権能は極力制限すべきであると考えます。委託者の権利を公益信託において強化することは,公益法人制度において,財団法人において,出えん者の権利がほとんどないことに比較しますと,その均衡を失します。また,公益信託の期間は永久であることもある一方,自然人である委託者については永久存続はあり得ませんし,また,その相続人に権限が相続されたりすることを考えますと,委託者を前提とした制度は実務的に実行が不可能であると考えます。
  具体的には,4ページの1の(2)の直前にあります委託者と信託管理人の合意による信託終了のうち,例えば委託者を外すべきで,特に相続人に承継されると解する場合には問題が多いと思います。また,1の(2),同じ4ページですけれども,委託者に対する通知・報告義務等,これも一般規定の信託法145条4項各号を読み替えるものですけれども,これも相続人にまで適用されると解する場合には,事実上,非常に実務的に不可能であると考えます。そういうふうなものですから,目的信託の規定の読み替えをもって受託者の権限・義務・責任を考えるという考え方には反対いたします。
○中田部会長 ありがとうございました。
  必ずしもここでの提案は読み替えをしようということではなくて,最初に平川委員がおっしゃったように結果として同様のものになるということが今回の太字で書いていることだと思います。それから,委託者の権限や義務につきましてはまた後ほど別途,項目がございますので,そこで議論いただければと存じます。
  ほかにいかがでしょうか。
○新井委員 7ページに公平義務についての言及があります。それで,ここではそこのパラグラフの一番最後,公平義務と類似の義務を観念すべきかどうかが問題となるのですが,利益を受ける人を受給権者というかどうかは別にして,同時に複数の受給権者がいる場合は,当然,公平義務が働くわけです。目的信託と同一の義務と考えるから,こういう問題が出てくるので,実質的なアプローチをすべきだと思いますので,今,中田部会長がおっしゃいましたけれども,目的信託の受託者の権限・義務・責任と同一とするということよりも,公益信託の実質を捉えて受託者のいろいろな権限を規定していくというアプローチの方がいいと思います。その一つの例として公平義務の問題を捉えたらどうかなと思います。
○道垣内委員 ゴシックのところを主に議論するんでしょうから,別に解説のところにいろいろ言及する必要はないのかもしれませんが,先ほどの公平義務なんですけれども,なぜ,わざわざ,公平義務は忠実義務違反ではないとこの部分に書かなければいけないのかがよく分かりません。こういう解釈論にわたる問題に言及すべきではないと思います。
○中田部会長 公平義務を忠実義務と関連付けるのか,善管注意義務とするのか,これは一つの解釈論にすぎないではないか,一つの立場を前提とすべきではないのではないかという御指摘だったと思います。
○道垣内委員 前提にもなっていないような気がするんですよね。新井委員がおっしゃるような問題が実質論としてはあるわけであって,それが何義務の範囲なのかということは,余りここでは関係ない話ではないかという気がします。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
○樋口委員 先ほど小野委員がおっしゃった最後の点だと思うんですが,一番気になるのは公益信託の受託者で権限・義務・責任の話,特に義務のところなんですけれども,今,ここで言っているのは,その義務について信託法は一般に任意規定だという話にしているのが公益信託ではどうなのかというのは,ここで正に議論すべきことなのではないかなと思うんですが,いかがなものなんでしょうか。
○中田部会長 それについて更にもし御意見があれば。今の点を含めて御議論いただければと思いますけれども。
○小野委員 法律論としてお伺いしたいんですけれども,目的信託において既に存在している問題ですが,受益者がいない場合に受託者の義務,すなわち債務の相手方たる債権者というものをどう観念するか,いずれ,信託管理人の議論が出てきて,これが必置になれば信託管理人と考えることが可能で,その点,後の議論かもしれません。しかし,現在の目的信託ですと必置ではないので,多分,委託者に対する債務として認識して,とは言っても,履行対象は信託財産ということになるのではないかと思います。この点について,公益信託において,果たして目的信託とパラレルに考えることができるのか。理屈っぽい議論で申し訳ないんですけれども,債権者は誰なのかという辺りも,せっかく研究者の方が多くいる場なので議論の対象としていただければと思います。
○中田部会長 今の点について。
○道垣内委員 今の点ではなくて,1個戻って樋口委員のおっしゃったことに関係するんですが,非常に重要な御指摘だろうと思います。つまり,例えば受託者の利益相反行為というものがあって,そして,それは信託行為の定めで許容されていればよい。受託者だって受益者の一人になれるわけだし,そういうふうなスキームとして出来上がって,受託者の関係会社を使ってもよいとなっているのならば,それはそういうふうな信託として存在し得るというのはわかります。
  しかし,受託者が現実に一定の利益を得られるような仕組みが,利益相反行為の例えば信託行為における定めという中で出来上がってしまっていれば,それは公益認定できないのだろうと思うんです。そうなると,もし,認定基準と同時に規定するという前提を採りますと,かなり丁寧に一つ一つを検討していかなければ,やっていかなければならないと思いますし,善管注意義務の話だってそうかもしれません。受託者が大変だから下げてもいいよという場合も一般にはあるでしょうけれども,公益信託はそれでいいんですかという問題はあります。原則形態として目的信託の受託者と大体一緒だよねというのは分からないではないんですけれども,1個1個についてはかなり丁寧な検討が必要だろうと思います。
○能見委員 小野委員が前から言われていた,公益信託におけるいろいろな受託者の義務の強行規定化は考えられないのかという問題については,私も前からその問題提起を受けて気にはなっていたところなんですけれども,ただ,非常に簡単に割り切って,公益信託では受託者の善管注意義務と忠実義務を強行規定にするということは考えられるかもしれませんけれども,公益目的の信託だからという理由だけでこれら義務の強行規定化を正当化することが私の内部ではしっくりきません。公益信託だからという点を強調すればするほど,道垣内委員の観点に近くなるかもしれませんけれども,何か公法的な規制が加わってくることはわかりますが,それを信託の,ここは公益信託といっても恐らく信託の私法的な仕組みのところを問題にしていると思いますので,そこに持ち込むのがなかなか難しいかなと思っています。そういうことでどう考えるべきか悩んでいるのですが,公益認定の際に,今の点も含めて,つまり,信託法上は任意規定であるということで善管注意義務や忠実義務を信託行為で変えてしまった場合には,変えられた状態を対象として公益認定の判断をするという形で対処するのが一番落ち付き所としてはいいのかなという感じを持っております。
○小野委員 強行法規化すべきという意見を持っているわけではありません。イメージとしては恐らく信託法と信託業法の関係に近いものがあって,信託法上,任意法規化されていても,信託業法上は強行法規化されています。信託業法上の規定が私法的効果のあるものが中にはあるのかどうかというと,その辺は解釈論に委ねられているかと思います。ですから,今,能見委員がおっしゃられたように認定基準の方で幾つかきちんと義務を立てていくということで,私法的な規律は本来の信託法の姿で考える。ということで,強行法規化が必要という議論ではなくて,論点として必要な議論かなと思って申し上げたわけでございます。
○小幡委員 議論の順番がよく分からないのですが,今の強行法規化の議論は,違反した場合の私法上の効力がどうなるかといった話の文脈ですよね。
○小野委員 そうでございます。
○小幡委員 ここにいろいろ書いてあるのですが,7ページの(7)の仮に公益信託の認定基準というところですが,ここも私法上の効力がどうなるかという話があって,これについてもおっしゃるように丁寧に見ていく必要があると思いますので,直ちにそれが強行法規化という話ではないと思うのですが,第1のところで「公益信託の監督・ガバナンスの全体像」というところについては,後でまたゆっくり議論しますからという話でしたが,そこでは,公益信託の制度の中での自律的なガバナンスをまずしっかりと仕組んで,更に,それでも必要であれば,第三者機関が監督するというのはよろしいですねという話なのかと思っていたのですが,そのときに第三者の監督というのは,一体,どのぐらいのイメージなのかということです。この点については,これから更に議論すればよいのかなと思っていたのですが,今の(7)のところでもある程度出てきています。ここで認定基準だけなのか,はっきりしませんが,監督権限についても,もしその機関が認定権限を持っていれば取り消すということになるのですが,例えば7ページのところに検査,勧告,命令等の措置を採り,そのような措置で足りない場合は,最終的に取り消すことができるという監督の内容が書かれていますが,これはまた後で議論するという理解ですね。
  というのは,どの程度のことを監督としてやるか。最終的には認定の取消しというのはあり得ると思うのですが,それ以外に,どのぐらい第三者機関が監督としての措置をとることを考えるのかというのが,例えば差止めのようなこと,あるいは立入検査をどのぐらいするかとか,その辺りは制度設計でとして,結構大変かと思います。後での議論ですねという確認ですが。
○中辻幹事 今回の部会資料では,公益信託内部の信託関係人の権限や義務について取り上げておりますが,次回の部会資料では,公益信託外部の第三者機関の監督権限,すなわち,新たな公益信託の認定を行う行政庁等や,裁判所の監督権限を具体的な権限の内容を含めて取り上げる予定です。なお,受託者と信託管理人の辞任・解任・新選任や情報公開についても次回の部会資料の項目として取り上げようと思っています。
○小幡委員 分かりました。
○平川委員 受託者の義務についての各論的な質問というか,確認なんですけれども,忠実義務について6ページの(4)にあるんですが,自己取引又は信託財産間取引をした場合に無効という信託法31条4項については,信託法31条2項2号に,受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たときは,自己取引や信託財産間取引ができるとしていることから,公益信託においても受益者の承認を信託管理人の承認などと読み替えるなどして,可能とすべきなのではないか,無効とまでしないで信託管理人の承認があったときには可能とすべきではないかと思いました。公益法人の場合は理事会承認で可能としていることの均衡からもそのように考えます。
  また,7ページの(6)で信託事務の処理を第三者に委託した受託者の責任についての確認なんですけれども,第三者への委託に当たり,選任,監督につき,善管注意義務違反や忠実義務違反があり,信託財産が損失が生じた場合には,受託者に信託法40条で損失填補義務や原状回復義務があると理解しますけれども,それで正しいでしょうか。例えば美術展示を目的とする公益信託で,受託者が展示等,事務委託された美術館が第三者の管理の失当により,美術品に損害を与えたような場合で,監督責任を問われるような場合です。それからまた,委託先の支出とか,受託者と特定関係のある者ではないとか,そういうような委託先の要件等については,別途,今後,検討する機会があると考えてよろしいでしょうか。
○中辻幹事 道垣内委員からも御指摘がありましたが,部会資料34で記載しました,公益信託の受託者の具体的な義務についての解釈論をこの場で議論していただくことは考えておりませんでした。ゴシックの部分で公益信託の受託者の権限・義務・責任を目的信託の受託者のそれと同一とすることを提案した上で,敢えて5頁以降に個別の権限・義務等の具体的な内容まで記載した趣旨は,これから受託者以外の信託関係人の権限・義務等を議論していただく前に,まずは実際に公益信託事務を行う主体である受託者がどのような権限・義務等を有しているかのイメージを共有していただいた方が良いと考えたことによるものですので,条文の解釈論に深入りしていただく必要はないのかなと考えています。そういうことでよろしいでしょうか。
○平川委員 了解しました。委託先の資格とか,そういうのはまた今後の項目に出てくるということでよろしいですか。
○中辻幹事 受託者から第三者への信託事務の委託について,委託先の資格などを今後の項目として取り上げるべきであるという御指摘として承りました。事務局としては受託者から第三者への委託について,一般の私益信託と公益信託とで異なる規律を設ける必要性があるとまでは考えておりませんが,御指摘は引き取って検討させていただければと存じます。
○平川委員 分かりました。
○中田部会長 目的信託との関係をどうするかということですが,最終的にどういう義務を設定するのが適当かを考える際には,どうしても既にある規律を参考にして検討するのが効率的だということで,ここに検討の結果が出ていると思います。これらの義務について個別に今,御指摘いただいたようなことも含めまして,こういう点にもっと注意すべきだということがもしあればお出しいただいて,更に検討を進めることにしたいと思います。今までも幾つか出していただいておりますけれども,ほかにございますでしょうか。
  それでは,もし更にお気付きの点があったら御指摘いただくことにいたしまして,今日,お出しいただきましたような指摘を踏まえて,一つ一つの義務について更に詰めて検討するということを進めたいと思います。
  ほかに,「第2 受託者」についてはございませんでしょうか。
  それでは,予定よりも早いですけれども,次の信託管理人についてはかなりボリュームがありますので,ここで一旦,休憩にさせていただきます。3時5分まで休憩にいたします。
          (休     憩)
 
○中田部会長 それでは,再開します。
  部会資料35の「第3 公益信託の信託管理人」と「第4 公益信託の委託者」について御審議いただきます。事務当局から説明してもらいます。
○佐藤関係官 私の方から御説明いたします。
  第3の「1 公益信託における信託管理人の必置」について御説明いたします。本文では,「公益信託をするときは,信託管理人を指定する定めを設けなければならないとすることでどうか。」という提案をしております。現行法では,遺言による目的信託の場合には信託管理人が必置とされている一方,信託契約による目的信託の設定時には信託管理人は必置とされておりません。しかし,公益信託については,許可審査基準において,いずれの方法による場合でも信託管理人が必置とされています。新たな公益信託制度においては,目的信託よりも委託者の監督権限が狭められ,かつ,従前の主務官庁による監督権限よりも外部の第三者機関による監督権限が縮小される可能性があり,その場合,公益信託の受託者の監督機能を期待される信託管理人の重要性は現在よりも高くなると考えられます。そうすると,信託契約による場合と遺言による場合とを区別せずに信託管理人を必置とすべきであると考えまして,このような提案をしております。
  第3の「2 公益信託の信託管理人の権限」について御説明いたします。本文では,「公益信託の信託管理人は,目的信託の信託管理人が有している権限と同等の権限を有するとすることでどうか。」という提案をしております。まず,公益信託を目的信託の一類型と位置付け,公益信託において受益者及び受益権は存在しないとの前提を採用する場合において,信託法第125条第1項に基づく信託管理人の権限のうち,受益者又は受益権の存在を前提とする権限については,目的信託の信託管理人と同じく,公益信託の信託管理人の権限とする必要はないと考えられます。
  ただし,そのような受益者の定めのない信託の性質上除外される権限を除いては,信託法第125条第1項に基づく信託管理人の権限は,裁判所に対する申立権限を含め,原則として公益信託の信託管理人にも与えることが相当であると考えられます。もっとも,公益信託の受託者の辞任の同意権や受託者の解任の合意,信託の変更,信託の終了などについては,外部の第三者機関の関与の方法を含めて,目的信託とは異なった仕組みとする可能性もあり得ると考えております。
  第3の「3 信託行為の定めによる権限の制限の可否」について御説明いたします。本文では,甲案として,「信託行為の定めによって公益信託の信託管理人の権限のうち信託法第145条第2項各号の権限を制限することはできないものとする。」,乙案として,「信託行為の定めによって公益信託の信託管理人の権限を制限することは全てできないものとする。」という提案をしております。
  信託法第125条第1項ただし書は,信託管理人の権限を信託行為の定めによって制限することを認めております。しかし,新たな公益信託の監督・ガバナンスにおいては,先ほど述べたとおり,信託管理人の果たす役割が重要であることに鑑みると,遺言による目的信託の信託管理人の権限について,同法第258条第4項が同法第145条第2項各号(第6号を除く。)に掲げられた権限の制限を認めないことを参考として,これらの権限を信託行為で制限することはできないものとすべきであるとの考え方があり得ることから,これを甲案として示しております。他方,新たな公益信託の監督・ガバナンスにおいて,公益信託の信託管理人が果たす役割を更に重視する観点から,信託行為の定めによって信託管理人の権限を制限することは全て禁止すべきであるとの考え方があり得ることから,これを乙案として提示しております。
  第3の「4 公益信託の信託管理人の義務」について御説明いたします。本文では,「公益信託の信託管理人の義務は,目的信託の信託管理人の義務と同一のものとすることでどうか。」という提案をしております。公益信託の信託管理人は,信託目的の達成のためにその役割を果たすことが期待されているという点では,目的信託の信託管理人と共通します。そして,公益信託の監督・ガバナンスにおける信託管理人の役割の重要性に鑑みますと,公益信託の信託管理人も信託法第126条第1項の善管注意義務及び第2項の誠実・公平義務を負うものとすべきと考えられることから,このような提案をしております。なお,公益信託の信託管理人について,信託法第59条第4項のような規定を設けるべきか否か,また,信託法第40条第1項の損失填補責任を負うものとすべきか否かについては,これらを否定する提案をしておりますが,これらの点についても併せて御意見を頂ければと存じます。
  第3の「5 公益信託の信託管理人の資格要件」について御説明いたします。本文では,甲案として,「信託法第124条の信託管理人の欠格事由に該当しないこととする。」,乙1案として,「【甲案】の欠格事由に加え,公益法人認定法第6条第1号と同様の欠格事由に該当しないこととする。」,乙2案として,「【甲案】の欠格事由に加え,委託者又は受託者及びこれらの者の親族,使用人等の委託者又は受託者と特別の関係を有する者に該当しないこととする。」,乙3案として,「【甲案】の欠格事由に加え,当該公益信託の目的に照らして,これにふさわしい学識,経験及び信用を有する者であることとする。」という提案をしております。
  まず,公益信託の信託管理人も信託行為で適切な者を選任することで足り,公益信託の信託管理人について信託法第124条の信託管理人の欠格事由のほかに資格要件を法律上加重することは不要であるとの考え方があり得ることから,これを甲案として示しております。
  他方,公益性の確保の観点から,公益信託の信託管理人については信託法第124条の欠格事由よりも資格要件を加重すべきであるとの考え方があり得ることから,これを乙案として示しています。
  乙案としましては,乙1案から乙3案まで三つの案を御提案させていただいております。具体的には,公益法人認定法第6条第1号と同様の欠格事由に該当しないことを公益信託の信託管理人の資格要件とします乙1案,現行の許可審査基準6(2)イ②と同様に,委託者又は受託者及びこれらの者の親族,使用人等の特別の関係を有する者に該当しないことを信託管理人の資格要件とします乙2案,許可審査基準6(2)イ①と同様に,公益信託の目的に照らして,これにふさわしい学識,経験及び信用を有することを信託管理人の資格要件とします乙3案の3案を提案しております。
  なお,部会資料16ページの(注1)に記載しておりますが,これらのうちの複数を資格要件とすることもあり得ると考えております。また,(注2)に記載しておりますとおり,これらは公益信託の認定基準とすることも含めて検討する可能性があるものです。他方で,現行の許可審査基準6(2)イ③には,「公益信託の信託管理人が原則として個人であること」という資格要件がございますけれども,信託管理人に法人が就任すること自体は信託法上許容されておりますし,公益信託の信託管理人に法人が就任することにより効果的な監督が期待できる場合もあり得ると考えられますことから,信託管理人が原則として個人であることを資格要件とすることは,提案からは外しております。
  なお,公益信託の信託管理人が事後的に資格要件を喪失した場合には,当該信託が無効となるのではなく信託管理人の任務終了事由とすること,また,公益信託の信託管理人について任期制を法律上義務付けることはしないことも提案しておりますので,併せて御意見を頂ければと存じます。
  第3の「6 公益信託の信託管理人の報酬」について御説明いたします。本文では,「公益信託の信託管理人の報酬について,当該信託管理事務の内容,当該信託の経理の状況等を考慮して,不当に高額とならない範囲の額又は算定方法が信託行為で明確に定められていることを必要とするものとすることでどうか。」という提案をしております。公益信託の信託管理人の報酬は,公益信託の信託財産から支出されますから,その報酬が不当に高額になることは適切ではない一方,信託管理人が実効的にその監督権限を行使することを確保するためには,報酬面でのインセンティブを与えることも必要であると考えられますことから,このような提案をしている次第でございます。
  第4の「公益信託の委託者」について御説明いたします。本文では,甲案として,「信託の利害関係人が有する権限のみを行使できるものとする。」,乙案として,「【甲案】の権限に加えて,受益者の定めのある信託の委託者が有する権限を行使できるものとする。」,丙案として,「【甲案】及び【乙案】の権限に加えて,目的信託の委託者が有する権限を行使できるものとする。」という提案をしております。
  まず,公益信託の公平な運営を確保する見地から,委託者の関与によって公益信託の運営が左右される状況はできるだけ排除することが望ましいことに加え,現行信託法は原則として委託者が信託に関する各種の権利義務を有しないとの前提を採っていることを理由として,公益信託の委託者には,原則として信託の利害関係人が有する権限の行使を認めれば足りるとの考え方があり得ることから,これを甲案として示しております。他方,公益信託の委託者が一定の監督権限を行使することはむしろ望ましいという観点に立った上で,信託管理人との重複を避ける観点から,原則として受益者の定めのある信託の委託者が有する権限の行使を認めれば足りるとの考え方もあり得ることから,これを乙案として示しております。さらに,乙案の基本的な考え方を採用しつつ,公益信託の信託管理人に契約による目的信託の委託者が有している監督権限を持たせるとしても,それと重複する形で公益信託の委託者が契約による目的信託の委託者が有する権限を行使することを認めるべきであるとの考え方もあり得ることから,これを丙案として示しております。
  以上の点について御審議いただければと思います。
○中田部会長 ただいま説明のありました部分について御審議いただきます。
  まず,「第3 公益信託の信託管理人」ですが,これは大部のものですので幾つかに分けて御審議いただければと思います。まず,1,信託管理人の必置について御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
○林幹事 弁護士会の議論は異論なく賛成でございました。自律的なガバナンスという観点からも,信託管理人を設置して,それにしかるべき権限を与えガバナンスを行っていくということについて異論はありませんでした。
○中田部会長 ほかに。
○平川委員 私も賛成します。公益信託の自律的ガバナンスを確立する上で,受託者に対する監督の担い手として欠かせない信託関係人であると思います。資産の拠出者である委託者は,信託が設定された後の関与は極力避けるべきと考えておりますので,この意味でも受託者の監督者として信託管理人の存在は欠かせないものと思います。
○中田部会長 今,お二人から必置に賛成という御意見を頂きましたが。
○山田委員 必置に私も賛成ですが,発言したい点はその点ではなくて,ゴシックでないところについて発言したいんですが,9ページの第3の1の補足説明の中の下から二つ目の段落ですが,ここに書いてあるのは信託法258条4項前段の規定の仕方を拡張して,認定基準とはしないという考え方を示されていると思います。ゴシックではないので,事務当局としては,今,こういうことで準備していますという性格のものかと思いますが,なぜ,認定基準にしないのかなというところがよく分からないというのが発言の趣旨です。
  少し敷衍します。遺言信託で受益者の定めのない信託をした場合には,信託管理人を置かなければならないと。確かに258条4項はそう定めているのですが,これは認定という手続がその後にないので,そこで止まってしまっていて,そして,もし遺言の中に信託管理人の定めがなかった場合にはどうしたらいいかということが5項と6項で補足的なというか,補充的な手続が定められているものと思います。それに対して,ここで考えている公益信託は遺言の場合もあるでしょうが,契約の場合もあって,そうすると,信託管理人を指定する定めを設けなければならないというのを契約に基づいて成立する公益信託について考えると,もし信託管理人について定めがなかったらどうなるのかということを考えました。
  しかし,それだけでその信託契約を無効にするというのはやや効果が大きすぎるなと思います。認定基準のところでそれを備えていなければ,あるいは信託管理人を置くための信託契約の中に定めを置いていなければ,認定するための要件を満たさないと,そういう仕組みにしてよいのではないかなと思うのですが,積極的に認定基準にはしないという理由があるようであれば教えていただきたいと思います。今,御説明いただいた後ろの方には,ゴシックのところの(注)として認定基準に含めることも可能性として考えるというのが複数ありまして,それと同じような性格のものではないかなと考えたところであります。
○中田部会長 関連する御意見はございますでしょうか。
○中辻幹事 山田委員におかれては,御指摘をありがとうございました。私どもとしては,部会資料35の9ページに書いてあるとおり,信託法258条4項には遺言による目的信託における実体法上の規律として信託管理人の必置が定められていることからすると,信託法の方から実体法的に規律するというのが素直な選択肢ではないかと考えておりました。ただ,遺言による目的信託ではその後の5項とか6項の手続があるのと異なり,公益信託は契約により設定されるものもあるので,少し異なる観点からこの問題を見た場合には,信託管理人の必置を公益信託の認定基準とする選択肢もあり得るのではないかという御指摘であると受けとめましたので,引き取って検討させていただきます。
○山田委員 信託法に書く方がより大きい,強いという,そういうイメージがあるのでしょうか,あるいは必ずしもそうではないんでしょうかね。
○中辻幹事 恐らく受託者が欠格事由に該当した場合と似ている話なのかもしれませんけれども,信託管理人が存在しない場合に実体法上公益信託が直ちに無効になるとするまでの必要はなくて,信託管理人が辞任などで存在しなくなったときには,新たな信託管理人を選任するなどの方法により対処し,公益信託自体は存続させるという考え方が十分あり得ると思います。それが信託管理人の必置を実体法上の規律とするか,認定基準とするかにより変わるものかどうかというのはまた考え込む必要があるように感じております。
○山田委員 分かりました。ありがとうございます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
  それでは,1につきましては必置とするということについては御異論がございませんので,その方向で取りまとめさせていただき,それを信託法の中で書くのか,それとも認定基準とするのかについては御指摘を踏まえて,更に検討するということにしたいと存じます。
  続きまして,第3の2から4,これは信託管理人の権限と義務に関するもので相互に関連いたしますので,この三つについて併せて御意見を頂きたいと思います。
○能見委員 権限と義務と両方に関係する問題なんですが,基本的にはここに書いてありますように,権限に関しては目的信託の信託管理人が有している権限と同等ということでよろしいと思いますけれども,先ほど平川委員から言及がありましたけれども,例えば利益相反行為があるときに,受益者がそれを承諾すれば,受益者は信託の利益を受ける人間ですから,それ以上の問題は生じないと思いますけれども,信託管理人がそれをする場合は少し異なるように思います。信託管理人も信託法125条によってですかね,受益者に代わって利益相反行為を同意するということができるのだと思いますが,信託管理人の同意は,私益信託において受益者自身が同意したときとは違う点があるように思います。
  公益信託の財産の管理は受託者が基本的にやっていますけれども,信託管理人は,その受託者を更に監督するという立場から,いろいろの権限が与えられていますので,利益相反行為への同意について言えば,その同意が不適切であったというときには,信託管理人の責任が生じる。恐らく善管注意義務違反ということになるのだと思います。先ほど言いましたように,それが受益者自身の同意であれば,それが不適当であったとしても,受益者自身の利益に影響するだけで,それ以上の問題は生じない。このように信託管理人の権限は,受益者の権限と同じもののように見えますが,それが持つ意味などは全く同じではないということをきちっと押さえておくことが必要であろうと思います。
  このように考えますと,信託管理人の行為が責任につながってきたときに,その責任というものもそれなりにきちんとした責任でなくてはいけない。例えば,善管注意義務違反の責任,その効果は何なのかが,一般の信託の信託管理人のところの規定でも余りはっきりしていません。恐らく信託財産に対する損害賠償義務は,最低限,認められるでしょう。それが更に信託法40条の責任に結び付くのかどうかというところは,難しい問題があると思いますけれども,私としては,信託管理人というものが公益信託の健全さを担保する上で重要な役割を果たすことを考えると,他方において委託者の権限が比較的制限されている,そういう中で,信託管理人の重要性というものが大きいことを考えますと,信託管理人の義務違反による責任については,むしろ40条の責任につなげた方がいいのではないかという感じを持っております。
 ○平川委員 これもまた,目的信託との関係の話が関連するんですけれども,目的信託との関連を断ち,公益信託における信託管理人の在り方から議論をすべきであると考えます。そして,結論的には配っていただきました別表に,信託管理人の権限として丸で示された権限のみならず,三角で示された権限についても信託管理人に認めるべきであると考えます。
  具体的には別表に丸で示されたものは,検査役の選任申立権,受託者の解任申立権,新受託者の選任申立権,信託財産管理命令の申立権,信託財産管理者の選任申立権については,公益信託の信託管理人の権限とすべきであることに異論はありません。別表に三角で示されました受託者の辞任の同意権,受託者の解任の合意,新受託者の選任の合意についても,公益信託の信託管理人の権限とすべきであると考えます。信託管理人は信託財産のガバナンスの重要な担い手と位置付けるからであります。また,信託の変更,合併,分割についてですけれども,これは受託者と信託管理人の合意によるとすべきであり,目的信託の場合のように合意の当事者に委託者を入れるべきではないと思います。
  これは各論の話になって,ここで議論すべきではないと言われるのかもしれないんですけれども,述べさせていただきますと,信託財産の拠出者である委託者は,一旦,財産を託した後は私益的利害をもって関与し得る利害関係人とも言えますので,委託者としての権限は極力制限されるべきで,委託者及び受託者の合意とすることには反対です。また,永久的であり得る公益信託の場合は,委託者が自然人である場合,委託者死亡で不存在とするか,又は相続するとして関係が複雑になるか,いずれにしても不都合が生じ,妥当ではないと考えます。そして,その上で信託の変更,合併,分割のように公益信託の認定条件に該当すると思料される事項についての変更は,外部の第三者機関の許可や承認が必要とすべきであると考えます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  三角についても含めるべきだという御意見をいただきましたが,最後の信託の終了の合意については言及がありませんでしたが,それも含めるということでよろしいでしょうか。
○平川委員 はい。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 弁護士会の議論を踏まえて申し上げますと,信託管理人の権限については目的信託の管理人と同様にということで賛成です。補足説明の中に書かれているとおりでして,受益者又は受益権の存在を前提とするものは除外し,検査役等の,丸の部分は認め,三角の部分についても平川委員と同様で,これも信託管理人の権限とした方がいいという意見が占めていたと思います。ただ,三角の論点につきましては,どちらかというと第三者機関であったり,委託者あるいは裁判所の関わり方の方に論点として目がいっているところでしたので,後に議論させていただけたらと思います。
  それから,信託行為の定める権限の制限につきましては乙案が賛成です。信託法145条2項以外の権限でも重要なものはそれなりに多いと思っていますので,乙案のとおり,信託行為の定めによっては制限できないとする意見が大半でありました。
  それから,信託管理人の義務につきましても,目的信託と同一ということには賛成で,補足説明の中にあった論点につきましては,信託管理人の任務が終了した場合には,前信託管理人には,新信託管理人が選任されるまでの間には権利義務を有するとする必要はないとの点も賛成ですし,信託法40条の関係の損失填補責任については,弁護士会の議論としては,それを必ずしも負わせる必要はなく,善管注意義務違反による損害賠償で足りるのではないかという議論でした。
○中田部会長 ありがとうございました。
○深山委員 これまでの御発言と基本的には同じ立場ですが,信託管理人の権限も,それから義務も,基本的には目的信託の信託管理人と同一とするものでどうかというゴシックの提案に賛成いたします。基本的に公益信託の内部的なガバナンスの中心的な機関といいますか存在として,信託管理人の立場を位置付け,これに重要な権限と義務を与えるということが,制度全体の設計の基本的な考え方として,それがよろしいと思うところです。そういう観点からしますと,3の信託行為の定めによる権限の制限について,甲案,乙案と二つが提案されていますが,乙案を支持したいと思います。基本的には十分な権限を信託管理人に与えることによって,ガバナンスの中心的役割を果たしてもらうという仕組みがよろしいという趣旨です。
  その上でということなんですが,先ほど能見委員の御発言の中で信託法40条の責任,すなわち,損失填補責任まで結び付けてもいいのではないかという御趣旨の発言をされました。私は,ここについてだけは40条の責任をストレートに当てはめるのは行きすぎなのかなと思います。つまり,受託者は正に直接,事務を行う言わばプレーヤーですから,そこに何か問題があれば損失を填補させるという責任が付いて回るわけですが,信託管理人は重要なガバナンスの役割を負っているとはいえ,あくまで監督責任ですから,プレーヤーと同じ責任をストレートに当てはめるのは行きすぎのような気がして,40条の責任については及ぼさないという方がよろしいと思います。もちろん,著しい判断の誤りとか,監督の懈怠とかがあって損害が発生したということになれば,善管注意義務違反という規律を通じて損害賠償という問題にはなるので,それで,そういう例外的な場合には対応できるので,40条の責任は外してもいいだろうということでございます。
○平川委員 先ほど3と4について意見を述べなかったので,それについて述べたいと思います。
  3については乙案に賛成します。その理由は,ガバナンスにおいては私的自治の観点もさることながら,制度的な担保が必要であり,公益信託においては信託管理人がその中心の一つを占めるべきと考えるため,信託管理人の権限を制限するべきではないと思います。甲案では別表左欄に記載されているもの以外の丸印,三角印のものは信託行為により制限可能となってしまいます。これらの権利のない信託管理人は,受託者を監督する機能が著しく減殺されてしまうことになると思います。したがって,乙案に賛成します。
  4番の「公益信託の信託管理人の義務」についてですが,基本的は賛成しますけれども,再び目的信託の信託管理人の義務と同一とするものとするという必要はなく,公益信託の独自性を検討した結果,信託管理人の義務を検討していただきたいと思います。15ページの3にある信託管理人の任務終了の事態となった場合,旧信託管理人は新信託管理人就任のときまで事務を遂行すべき権利義務があるとすべきであると考えます。その理由は,信託管理人を必ず置くべき信託関係人とし,受託者監督の重要な担い手であると位置付ける以上,係る任務を遂行する者が不存在となる期間があることは不適当であるからです。
  16ページ,4の信託管理人に財産補填義務を負わせるかについてですけれども,私も深山委員と同意見で,信託管理人に損害補填義務まで負わせる必要はないと考えます。善管注意義務違反に基づき信託財産に損害が生じた場合には,義務違反と損害に因果関係があるのであれば,その範囲で信託管理人に債務不履行責任に基づく損害賠償責任が生じますので,信託財産を受託し,信託事務を遂行すべき受託者の場合には,別途,補償義務を負うことは妥当性があると考えますけれども,監督責任にとどまる信託管理人にまで補償責任まで負わせる必要はなく,引き受け手確保の意味からも一般的な義務違反に基づく損害賠償責任で十分であると考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 まず,2番につきましては総論賛成です。3番につきましては条件付きで乙案に賛成,4番につきましては賛成です。
  話すことが多くて一遍にしゃべれるかどうか分からないんですけれども,まず,委託者との関係については平川委員と近い立場であると考えました。委託者は財産を出えんする方ですので,興味を持たれるというのはある程度,あってしかるべきかなとは思いますが,過度の介入があると公益性について疑義を持たれる場合があると思いますので,余り過度な権限を持たせるべきではないのではないかと考えております。そうしますと,信託管理人が乙案のような全面的な権限を持つべきであろうと考えます。
  ただ,例えば11ページ辺りから始まる辞任,解任,変更,終了等のところ,後ろの別表でいいますと三角が付いている項目については,全て信託管理人の同意を要件とすると,実務の障害になる可能性があると思われますので,ここについてはまた次回以降に検討されるとは思いますけれども,信託管理人の権限を弱めることがあってもいいのではないかと考えております。例えば変更につきましては,元々,一般的な信託あるいは目的信託におきましても,信託管理人の同意がなくても受託者の意思表示によって変更できる場合というのがございます。目的信託では信託管理人の権限が狭まっておるんですけれども,軽微な事務手続などの変更に係るようなものについては,受託者単独でできるような仕組みを残しておいた方が事務的な手間という点でも軽減できるのではないかと考えております。重要なものについては主務官庁の許可,最も軽微なものについては受託者の意思表示という三つの段階があっていいのではないかと思います。
  それ以外のところで,まず,信託管理人の信託財産のてん補の義務でございますけれども,これは損害賠償請求で足りるのではないかと考えております。受託者,同じ受託者ではなく,資料にありますとおり,後任の受託者ということになると思いますが,後任の受託者が請求するとしたら,別に信託財産へのてん補請求でなくて,損害賠償請求で足りると思いますので,損失てん補をするような場合としては,仮に考えるとしたら後任の信託管理人による請求ぐらいしかないのではないかと思うんですが,そのような場合まで考えて重たい責任にする必要はないのではないかと考えております。
  あと,任務の終了のときに継続すべきかどうかという点につきましては,すべきではないと考えております。そこまでやると,信託管理人にとっては重すぎるのではないかと。なり手の問題もあると思います。ですので,不存在にならないような体制を整備していただく方がむしろいいのではないかと思うところです。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。大体,よろしいでしょうか。
  2については三角も含めるという御意見が多かったように思いますが,今,吉谷委員から全てをそうするのではなくて,主務官庁の許可などとの関係で検討すべきだという御指摘を頂きました。それから,3については乙案が多数であったと思います。吉谷委員は条件付きで乙案とおっしゃいましたでしょうか。
○吉谷委員 変更などの場合には弱められるということも定めることはできると。
○中田部会長 分かりました。
  それから,4については任務終了後の継続は不要とされる方が多数でいらっしゃいましたが,必要という平川委員の御意見もありました。それから,信託法40条1項の損失填補責任については,加重はしないという御意見が多くありましたが,能見委員から,これは考えてもいいのではないかという御指摘を頂いたかと存じます。ほかによろしいでしょうか。
  それでは,次に進んでよろしいでしょうか。続きまして,第3の5,信託管理人の資格要件について御意見をお願いいたします。
○平川委員 私は乙1案に乙2案を足したものを信託管理人の資格要件とすべきと考えます。すなわち,信託法124条の信託管理人の欠格事由に該当しないこと及び公益法人認定法第6条第1号と同様の欠格事由に該当しないこと並びに委託者,受託者,これには受託者から信託事務の委任を受けた第三者を含みますけれども,又はその他の信託関係人,後に議論されます運営委員を置く場合など,これらの信託関係人及びこれらの者の関連会社,親族,使用人等の特定関係者に該当しないことを複合的に要件にするという趣旨です。
  理由は,公益法人認定法6条1号の要件をいれることについては,公益法人制度との均衡を図る意味で同様の資格要件を置くことが妥当であると考えますし,また,公益信託のガバナンス確保の観点から,委託者や受託者等の信託関係人及びその特定関係者から独立的地位を確保した者が信託管理人であるべきと考えるからです。
  また,法人が信託管理人になり得るかについては,法人であることも妨げないと考えますが,この場合は特に乙3案に記載されるような役員,重要な使用人に信託事務の管理監督をするにふさわしい経験と信用を有するものを要しているか否かについて,許可又は認定審査基準の一要件として定めるべきであると考えます。信託管理人は受託者の監督,公益性の担保のためのガバナンスの保持という重要な役割を担う者ですが,当該法人が信任を置くにふさわしい法人であるか否かは,結局,その法人内部に信任に置くにふさわしい人物がいるか否かに掛かってきますので,法人が信託管理人となった場合には継続性がある点は利点であるとしても,継続的に経験値,能力,信用が保たれているかは外からは計り知れず,このような実質要件を審査基準に置き,役員や重要な使用人について係る要件が継続的に保たれることを担保することが望ましいと考えます。
  一方,信託管理人が個人である場合については,さきに述べた資格要件が備わってさえいれば,個人という個性に着目して個人的信任により選ばれるものですから,特に審査要件として経験値や能力,信用といった判断に難しい要件を付加する必要はないと考えます。
  次に,公益信託の信託管理人が事後的に資格要件を喪失した場合ですけれども,信託を無効とするのではなく,信託管理人の任務終了事由が生じたとすることに賛成します。また,信託管理人の任期については,任期を4年ないし6年で定めるべきであると考えます。現状ですけれども,本人から辞任を申し出ない限り,言わば永代任期となっています。実際,ほとんど判断能力がなくなっている人に対して辞任を要請したり,又は資格要件を失っているということを告げることが事実上できないため,そのまま職にあるという事例が散見されます。これまでの実務の現状を検討に置きますと,4年から6年程度の任期があった方がよいと思います。
○新井委員 私も平川委員と同じに乙1案と乙2案を合体したような案に賛成します。乙3案ですけれども,学識,経験及び信用を有するものというのは,これは後で議論する運営委員会の任務ではないかと私は考えますので,こちらの機能は運営委員会に譲ったらよろしいのではないでしょうか。乙2案のここに掲げられているものについては,最近,ライフ協会の問題があって,公益認定されていても一定の親族の関与が非常に問題になったということもありますので,ここのところは欠かせないという気がします。
  それと,法人が信託管理人になれるかということですけれども,法人が信託管理人になった場合の意思決定がスムーズにできるのかというところが少し心配です。緊急に対応しなければならないいろいろなことがあったときに,法人の内部で意思決定するというようなことを考えると,その辺りをどう考えたらいいかというのが一つポイントで,質問ですけれども,現行の公益信託の運用の中で法人が信託管理人になっているという例はあるのでしょうか。
○中田部会長 吉谷委員,御存じでしたら。
○吉谷委員 私どもではそういう例は捉えておりません。
○能見委員 信託管理人の資格要件のところですけれども,委託者の問題とも関連するんですが,結論としては私は乙2案でいいと思いますけれども,私自身は委託者についてそれほど否定的なイメージを持っているわけではありませんで,むしろ,委託者は信託管理人以上に信託の目的に関しては,それが遂行されることについて一番利害関係を持っていて,いろいろ,公益信託のガバナンスにおいて役割を果たすことができるのだろうと思うのです。そういう意味で,否定的なイメージを持っているわけではありませんけれども,信託管理人を何人置くかという問題とも関係がありますけれども,場合によっては一人ということもあるかもしれません。そういうときに,委託者が一人の信託管理人になるというのは余り適当ではないとも言えますので,結論としては乙2案でいいのだろうと思います。
  ただ,今も言いましたように委託者についてそれほど否定的なイメージを持つべきでないと思います。公益財団法人では財産を拠出した者が理事になるのは構わないとされていると思うんです。理事の一人として,理事会を構成するメンバーの一人として,公益財団法人が設立目的どおり運営されることについて,意見を述べたり,決議に関わることはむしろ望ましいと思っています,けれども,先ほど言いましたように,信託の場合には信託管理人が一人という場合があるかもしれませんので,人数をどうするかの問題はありますけれども,そういう意味で,結論としては乙2というのでいいのではないかということでございます。
○中田部会長 乙2というのは,委託者,受託者等は除くという案ですね。
○能見委員 そういうことです。
○中田部会長 乙1はいかがですか。有罪判決を受けた人ですとか。
○能見委員 これも同じ並びで。
○中田部会長 そうしますと,今まで出た乙1プラス乙2案というのと大体同じ。
○能見委員 結論は同じなんだと思いますけれども,今,言いましたように委託者が除かれるということの意味について,ほかの方とは違いますということを強調したいと思います。
○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 弁護士会での議論としては,乙1,2,3といずれも資格要件としてよいという結論であったと思います。乙1については当然ですし,2については委託者は信託管理人には含めるべきではないということでした。乙3に関しては曖昧さという点もあるのでしょうけれども,この理念というか,内容としては当然のことだとは思いますので,そういう認識においては賛成をします。信託管理人に法人がなれるかというのについても賛成ですし,事後的に資格を失ったときは任務終了事由とする点にも賛成でした。補足説明にもある任期制については,不要という意見でした。
○深山委員 今の意見とほぼ重なってしまいますけれども,資格要件としては乙1案プラス乙2案という何人かの方が発言された消極要件といいますか,欠格事由としてこれを定めることに賛成します。乙3のところも結論としてはあっていいだろうと思いますが,ここは言わば積極要件ですので,性質が違うといえば違う問題だと思います。積極要件として,学識,経験,信用というものを掲げても,どれほど実質的に機能するかと考えると,あるいはどう判断するのかということになると問題なしとはしないんですけれども,考え方,理念としては,そういう学識,経験,信用のある人に資格を与えるという考え方は当然といえば当然ですが,要件として課してよいと思います。
  法人であっても実質的には役員を見ながら,こういうことを判断するということもできますし,法人が信託管理人になることも排除する必要は全くないとは考えていますので,その場合も含めて乙3の要件も積極要件としてあっていいだろうと思います。先ほど新井委員は,そこは運営委員会等の役割ではないかという御意見でしたが,私は運営委員会自体の存在に消極だということもあり,学識,経験,信用というものも信託管理人に期待すべきだと考えております。
○道垣内委員 私は先ほどの深山委員の意見とは違って,新井委員の見解の方が妥当なのではないかと乙3に関して思います。
○中田部会長 運営委員会に委ねる方がよいということで。
○道垣内委員 だから,信託管理人の役目をどう考えるかという話として,こちらよりもこちらに助成すべきだったよねという判断について,信託管理人が受託者を監督すべき立場にはいないのだろうと思います。そこで,乙3は除いた方がいいのではないかと思います。
○中田部会長 乙1と2はあった方がよいという御意見ですか。
○道垣内委員 はい。それは言ってなかっただけです。乙3についてだけ申し上げたわけで,あえて言えとおっしゃられれば,乙1プラス乙2でよろしいのではないでしょうか。
○中田部会長 ありがとうございました。
○小野委員 私は皆さんが乙3を強く支持されるのかなと思って発言しなかったんですけれども,必ずしもそうではないようなので,発言致します。ただいま道垣内委員が信託管理人の役割という話をされていましたけれども,既に本日の議論のところで必置ということになり,受益者はいませんから,立て付けにおいて信託管理人というのは非常に重要なガバナンスの役割を果たすわけです。その中で犯罪を犯していないとか,ある意味では,それ以外はその辺の人を連れてくればいいという議論で制度を立て付けるよりも,学識,経験,信用というような定性的な要件を加えて,それぞれの信託の公益目的に沿って判断していくと考えるのがふさわしいのではないかと思います。
  立法例でも既に同じような基準として,こういう定性的な要件が入っていると補足説明で書かれておりますし,サービサー法上,同じ文言が扱われております。決してこの表現があるからといって,またこうした規定があるからといって判断が難しいというようなことはないはずです。
  それともう1点,委託者が信託管理人になれるか,なれないか。これも一概にノーというわけではなくて,乙3の要件が入って,委託者が学識,経験,信用においてふさわしいということであれば,委託者はいつまでも口を挟む良からぬ人と性悪説に立つ必要はなくて,この定性的要件に沿って委託者が信託管理人になれるかどうかを判断すればよいわけでして,その意味において乙2が委託者を初めから排除しているというのは必ずしもそうではないのではと。要するに乙3が最も重要な要件であって,それに付随して乙1の部分が加わっていくのではないのかなと考えております。
○山田委員 乙2について発言させてください。能見委員がおっしゃった前半まで私は同意見であります。委託者というのは,その財産がどう公益のために使われるかということについて,ある意味では最も関心のあるものだと思います。ただ,ここで委託者を信託管理人から外すという考え方の背後にあるだろうと私が考えるのは,委託者は外形上,形式的には自分の財産から外に出したけれども,実質的に委託者あるいはその家族の利益のために,信託管理人を通してコントロールしているのではないかという疑いがあるということかなと思います。ただ,そこは受託者がそうしない義務を負っているのかなと思います。
  そうしますと,能見委員がおっしゃった一人しか信託管理人がいないときに,委託者とか,委託者の親族が信託管理人をしていると,受託者も重要なことについては,信託管理人の承諾とか承認とかを経なくてはいけないというところで問題がありそうだというようにも思います。そうすると,制度が細かくなって恐縮なんですが,信託管理人を複数置くときには,そのうちの一部は委託者又は委託者の親族,使用人等,委託者と特別の関係を有する者であっても構わないと,そういうルールがあるといいなと思いました。ただ,信託管理人を複数置いたときに,その意思決定方法をどうするのかという問題が出てきて,まだ,準備をしていないところであるとすると,作業を増やしてしまって申し訳なく,それほど大きな問題ではないかなと思うのですが,一番のスタートライン,ここが能見委員がおっしゃったところですが,委託者が一番,その財産がどう使われるかということについては関心があるだろうなというところは少し重く見たいと思います。
○新井委員 今,山田委員がおっしゃったことを私も言いたかったのです。つまり,信託管理人は複数でも可能なのかということです。実務では私の知っている限り,これは単数だと思います。しかし,ここの議論で複数が可能だとするということになったときに,正に意思決定の問題をどうするのかということがあります。更に法人も可能だとすると,複数の法人になったときの意思決定はもっと複雑になるということで,法律に書く必要はないかもしれませんけれども,何となくある程度の合意みたいなものがこの解釈の背後にはあった方がよろしいのではないかと思います。私は信託管理人は単数でいくべきだと思います。
○中田部会長 ほかに。
○吉谷委員 乙1,2,3に賛成でございます。根拠は余り付け加えるところはないように思われました。法人を信託管理人にすることについては,認める方が実務上の利益が大きいのではないかと考えました。信託管理人の交代という問題が起きにくいので,能力が維持されるかどうかというような議論はあるのかもしれないですけれども,利益の方が大きいように思われます。あと,資料の中で乙1案,乙3案を信託管理人の任務終了事由とする,信託の終了事由にはしないというようなことが書かれていたと思いますが,その考え方には賛成いたします。
  あと,任期を設けるべきかとどうかというところですが,これもむしろ信託管理人が不適格になったら,今でも解任できるとは思っているんですけれども,それを明確にさえしておけば,任期は設けなくてもよいのではないかと思います。むしろ,ボランティア的な方なのか,職業的な方なのかというところでインセンティブの違いはあるのかもしれないんですけれども,ボランティア的な方に引き続き信託管理人の任務をお願いするという点においては,任期は特に設けない方が引き続きやっていただけるのではないかと考えております。
○中田部会長 ほかにありますでしょうか。大体,よろしいでしょうか。
○小野委員 単なる質問なんですけれども,イメージとしては当初の信託契約の中で信託管理人の恐らく特定の名前が挙がって,認定のときにこの特定された方が信託管理人としてふわしいかという辺りを審査するのかなと思うんですけれども,いかがでしょうか。その場合,公益信託がどの程度,継続するものかという議論にもよりますし,千差万別かもしれませんけれども,恐らく一つのイメージとしては軽装備のものということで,比較的,数年で終了するというようなものが多いということであれば,それ以上に信託管理人を交代し新たな信託管理人を選任する手続等まで考える必要までないのではないかと思います。何人かの委員の方の御意見で任期を設けるとか,そういう議論もございましたが,その場合に,どういう形で新たな信託管理人を,信託行為から離れて,選任していくのか,どんなイメージでいらっしゃるのか。そこも含めて信託行為の中で,任期満了においてはどうこうするところまで書くというようなイメージなんでしょうか。その辺を教えていただきたいと思います。
○中辻幹事 新たな信託管理人の選任につきまして,現在の主務官庁制のもとでは,継続中の公益信託で信託管理人が欠ける場合には,新たな信託管理人の候補者を,利害関係人,実際には公益信託を運営する受託者の側で探してきて,その新たな信託管理人の選任を主務官庁に請求するという立て付けになっていますが,それが新たな公益信託制度でどのようになるべきであるのかは,次回の部会で本格的に御審議いただくことを予定しております。
○中田部会長 大体,よろしいでしょうか。
  乙1案はこれでいいだろうという御意見が多かったように思います。乙2案についても結論としてはこれでいいだろうけれども,しかし,委託者の位置付けについて両様の御意見を頂きました。更に委託者については,乙2から排除すべきであるという御意見も頂きました。乙3については御意見が分かれたと存じます。それから,法人については法人もなり得るという御意見が多くありましたが,法人の場合には意思決定に時間が掛かるという御指摘も頂きました。それから,信託管理人の資格要件の喪失が任務終了事由になるということについては,御意見を頂いた方全て,それに賛成だということでございました。信託管理人の任期制については,平川委員から任期制を設けるべきであるという御意見を頂きましたが,それに対し,不要であるという御意見を複数頂いたと存じます。なお,新しい信託管理人の選任については,次回にまた御審議いただくということでございます。
  それでは,続きまして第3の6,信託管理人の報酬について御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
○小野委員 この規定の趣旨で賛成なんですけれども,確認をしたい点としまして信託法は費用と報酬ということを明確に分けております。ただ,一般的な言葉の使い方として費用といったときに報酬も入っていることがありますけれども,飽くまで信託法の議論ですから,ここで言っている報酬というものは報酬であって,費用は別途という理解でよろしいかと思うんですけれども,その辺の確認をさせていただきたいと思います。
○中辻幹事 この部会資料では,費用と報酬の概念について信託法上の概念をそのまま用いております。
○中田部会長 信託法127条に費用と報酬と書いていて,それの使い分けが前提となっているということですね。
○中辻幹事 そのとおりです。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
  ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 基本的に賛成します。公益信託の透明性あるガバナンスを確保するという観点から,信託管理人に報酬を支払う場合には,信託行為に報酬の額又は報酬額を算定し得る算定方法を明示すべきであると考えます。認定基準としては,係る報酬の基準が信託行為に定められていることを要件とすればよく,これが不当に高額かどうかの判断を行政庁に委ねる必要はないものと考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。大体,基本的にはこういうことでよいと承ってよろしいでしょうか。それでは,そのようにさせていただきます。
  続きまして,「第4 公益信託の委託者」について御意見を頂きたいと思います。既に何人かの方から御発言いただいておりますけれども,ここでまとめて御議論いただければと存じます。
○平川委員 甲案に賛成します。その理由は,公益財団法人における出えん者との均衡等から考えて,委託者に特別の権限を与えるべきではないと考えるからです。委託者の出えんした信託金は,税法上,寄附金として公益法人への寄附金同様の取扱いをするよう要望するものです。かかる観点からすれば,信託設定後,委託者が信託運営への発言権を保有することは認められないと考えます。公益信託の公平かつ公益的運営を確保する観点から,委託者の関与によって公益信託の運営が左右される事態はできるだけ排除すべきであると考えます。したがって,別表3の利害関係人としての権利のうち,丸印にとどめるべきです。三角印の権利は付与しないという立場を採ります。この点,公益信託は委託者の権利権能を信託法260条1項でむしろ強化している目的信託とは根本的に軸を異にするものであり,この点からも公益信託が目的信託の一類型であるという考え方から決別すべきであると考えます。
○中田部会長 別表3につきまして,甲案のところで三角が付いている部分もありますけれども,先ほど甲案を御支持とおっしゃいましたが,その甲案の中の三角については外すという御意見でございましょうか。
○平川委員 利害関係人としての権利だけ持っているということにするんだけれども,その利害関係人としての権利のうち,三角印の付いているものも与えないという考え方です。
○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
○深山委員 委託者の権限については基本的に乙案がよろしいと思います。公益信託における委託者の立場をどのように捉えるかというのは,既にいろいろ議論が出ておるところで,一方では財産拠出者でもあり,そもそも,公益信託を作る言わば創設者でもある人に,創設後も一定の権限を認めるべきだという考えにも理解ができます。ただ,他方で,目的信託においては,受益者がいないということで,それを補充する意味もあって委託者の権限を強めていますが,普通の目的信託とは違って公益信託の場合に委託者の権限を通常よりも強めるのはふさわしくないだろうと思います。その結果,消去法というわけではないんですが,通常の受益者の定めのある信託の委託者と同様という乙案をベースに考えたらよろしいのではないかなと思います。
  なお,乙案を採った場合でも三角のところが幾つかありますが,ここは一つ一つ個別に考えていく必要があると思います。基本的に裁判所に対する申立権については認めてもいいのかなと思います。それ以外のことについてはなお慎重に考えたらいいかなと考えます。どちらかといえばやや消極に考えてもいいのかなと思っております。
○能見委員 基本的な考え方は先ほど申し上げたとおり,信託財産を拠出した者として,その信託が信託目的どおり,公益の目的ですが,信託が行われることについて一番の利害関係を持っているだろう委託者に,それなりに役割を与えるべきだという考え方に基づいて,こういう問題も考えるべきだと思います。そういう観点からは,甲案のところの利害関係人としてのいろいろな権限,これは最低限,認められるということのようで,それはあえて反対いたしません。
  乙案のところが争点になっているようですけれども,私もここに書いてある乙案で基本的にいいと思いますが,ただ,私の考え方からすると委託者が信託の運営について,それほど細かいことについていろいろな権限を持っている必要は本来ないのだろうと思います。大きなところといいますか,信託の目的のところに関連する,目的が遂行されると全てが関係するのかもしれませんが,目的が遂行される大きなところについての権限があればいいということになるのだろうと思うのです。そういう観点から乙案のところを見ますと,十分,検討していませんけれども,三角のところの信託の併合とか終了とか,そういうところについてはそれなりに財産を拠出した出えんしたものとしての利害関係が大きいだろうと思いますので,こういうところの権限というのは認められるべきかなと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 弁護士会の議論としては,要するに委託者は財産を拠出したのだから,それ以上は関与すべきではないというような観点から,甲案に賛成する意見もあったのですが,一方で,公益信託においては,公益信託に最も関心を有する委託者の考え方や意思も一定,反映してさせたほうがよいという観点から,乙案に親和性のある意見もありました。ただ,結局,乙案的に考えるとしても,深山委員も述べたように,結局,個々の条文ごとに一つ一つ検討してどうなるかによるところと思います。辞任とか解任についてはこの後でも議論されるようですので,ここの論点の在り方に従って辞任解任を議論していくのかと思いました。
○中田部会長 ほかに。
○道垣内委員 私は信託管理人の適格性に関しましては,能見委員の意見に同調しないのですが,この委託者の権利ということに関しては,私は乙案でも丙案でもいいのではないかという気がいたします。と申しますのは,私が前半部分で能見委員の意見に同調しないのは,委託者が,個々の受託者の行為とか,そういうものに対して目を光らせる権限を有しているということにしますと,逆に受託者の権限行使に対して委託者の意向が個々的に反映してしまう可能性があって,それはよくないと思うからです。
  それに対して,今回,問題となっている委託者の権限という問題は,例えば委託者がこのような目的で公益信託を設定したいと考えたときに,その目的を変えてほかのものと併合してしまうのかとか,あるいは分割してしまうのかといった,そういうふうな話であって,委託者がどのような内容の信託を作るかという,その実現に掛かっている問題だろうと思うからです。したがって,能見委員の意見は一体化しているんですが,こっちは分割可能であると考えておりまして,この問題につきましては能見委員がおっしゃったところに賛成いたします。
○中田部会長 ほかに。
○吉谷委員 委託者の役割として,余り大きなものを期待するべきではないとまず考えます。個人の委託者の方であったりすると限界があると思いますので,そういう意味では,受託者と信託管理人による内部ガバナンスというものを重視すべきであって,委託者の権限は重視すべきではないと考えます。その上で,甲,乙,丙案につきましては甲案に賛成です。ただ,これは任意規定であると書いてありますので,任意規定であるということについて賛成いたします。ただ,委託者の意向が個々に反映されるようなことは望ましくないと思いますので,任意規定であるとしても過度に強い権限を与えることはよくないと思います。
  甲案と乙案の違いの中で,甲案の方が新任のほうの申立てがあって,乙案の方には解任の方の申立ての権限があるということになっておりますので,甲案だけだと新任はできるけれども,解任はできないということになりますので,解任と新任の申立てはセットになっていてもおかしくはないのかなと思いましたので,そこら辺は甲案と乙案のどちらがいいのかというところの考慮材料になるのではないかと考えました。ただ,一方で様々な合意をするというところの権限を与えるということには疑問を持っておりまして,委託者の合意がないと何らかの変更の認可申請ができないというような事態は避けるべきであると考えております。
○小野委員 先ほど信託管理人の議論がございましたけれども,そのときに次回の審議の課題ということではありますが,関連するので一言述べたいと思います。任期制のときにですが,信託管理人は受託者を監督する立場ですから,先ほど深山委員もおっしゃられたように,裁判所が介在する,裁判所を通して信託管理人の新たな選任とか,そういうことをするときの大事なステークホルダーとして,委託者というものは必要ではないかと思います。結論としては乙案ということになるかと思うんですけれども,ステークホルダーが非常に限られている中で,特に受託者と信託管理人というところで,一応,ガバナンスが成り立つ。その二者が機能しないときに,又はその交代が必要なときに,もう一人,ステークホルダーが必要かと思いますし,そこで委託者が自分が出したお金だからといって何か必要以上に介入するという意味ではなくて,裁判所の発動を促すという意味においては,委託者がいて何ら問題はないのではないかと思います。
○神田委員 何人かの先生方がおっしゃったことと同じ趣旨だとは思うのですけれども,委託者の権利という場合に,機能に応じて考えるべきだと思います。すなわち,信託の運営に参加,参与する権利なのか,それとも受託者を監督する権利なのかで全然違うので。確かに出えんをして財産を拠出したわけですから,前者の運営に参与,参加していくという権利はなくていいと思うのですけれども,受託者を監督する権利というのは専ら信託管理人だけが有するということでいいのかということになれば,委託者も一緒に監督しますということはあっていいように思います。そういうことからいうと,表をきちんと見ていませんけれども,別表1にある信託管理人に与えられる受託者の監督に係る権利というものは,委託者にも付与されてもいいのではないかと思います。
○新井委員 私は甲案を支持します。公益信託というのは委託者が財産を公益目的のために出えんして,自分のコントロールから離れるということがポイントだと思いますので,利害関係人が有する権限を持っていれば,それで十分だと思います。公益信託の場合にも場合によっては税法上の優遇もあるということも考えると,委託者に余り強い権限が与えられるというのは少し問題ではないかと思います。それで,乙案は,公益信託が目的信託だということを非常に強調していながら,ここで受益者の定めのある信託を持ってくるのは私には非常に違和感があるので,これは甲案でいったらいいと私は考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
  甲案と乙案とそれぞれ支持される御意見がありました。特に委託者の位置付けについて両様の御意見を頂いたと思いますが,更に一般的に決めるよりも,幾つかの切り口をお示しいただきましたけれども,どういう権能あるいは機能に即して考えるのかという分析がより必要ではないかというご指摘も頂きました。これらを踏まえて更に検討を続けたいと思います。
  ほかに。
○山田委員 甲,乙,丙の具体的にどれを指し示すという意見にならないのですが,第4で委託者の権利を認めますと,相続をするのではないかと思います。公益信託においては公益目的と委託者の相続人というのは,利害が反する場合が想定できるかなと思います。遺産の中から出ていってしまうということです。そうしますと,公益信託の委託者に与えた権限,権利が相続されるということを,すみません,私の理解が十分ではないんですが,仮に前提にすると,余り委託者に与える権利,権限は大きくすべきではないのではないかと思います。そうすると,先ほどの私の信託管理人についての発言とどういう関係になるのかということになりますが,仮に委託者を信託管理人にできるとした場合にも,それは一身専属であって相続はしないだろうと思いますので,今の問題は生じないかと考えるところであります。第4にまた戻りますが,22ページで,そうすると,私が今,考えていることは甲案に近いのかなと思うのですが,そこを十分には点検せずに,今,発言させていただいております。
○中田部会長 ほかに第4,委託者についてありますでしょうか。大体,よろしいでしょうか。
○能見委員 今の山田委員のご指摘の点が,私も同じことが気にはなっているのですけれども,委託者に与えられる権限の意味,なぜ,委託者に一定の権限が与えられるかという理由から考えると,それは公益信託のための財産を出えんした者として最も利害関係があるということですから,相続人は委託者と必ずしも同じ立場ではないことになります。そこで,私はむしろ委託者にいろいろな権限を認めても,相続人まではいかないように考えるべきだと思います。委託者限りで,そこで切れてしまうというのも一つの考え方かと思います。乙案をとった上で,以上のように考えたいと思います。
○山田委員 実質的には私も同じになります。どう仕組むかというところはよく分かっておりません。
○中田部会長 ありがとうございました。それでは,先に進んでよろしいでしょうか。
  では,続きまして部会資料35の第5と第6について御審議いただきます。事務当局から説明してもらいます。
○佐藤関係官 私の方から御説明いたします。
  「第5 受給権者」について御説明いたします。本文では,「受給権者による監督・ガバナンスに関する規律は設けないものとすることでどうか。」という提案をしております。受益者の定めのある信託における受益者は,当該信託の設定当初から受益権を有することが予定されているのに対し,公益信託の受給権者は,現在の助成型を前提としても,当該信託の設定段階では助成金を支給する権利を有することは確定していないこと,公益信託には様々な類型があり得るのであって,例えば助成型における受託者から一定の期間,奨学金の支給を受けることが確定した学生と事業型における美術館の利用者とでは,その信託への利害の強弱,関心の程度には大きな違いがあると言えますので,これらを受給権者として一律に扱うことは困難ではないかということで,そういった理由から,このような提案をしている次第でございます。
  最後に,「第6 運営委員会等」について御説明いたします。本文では,甲案として,「公益信託をするときは,受託者に対する助言的な役割を果たす運営委員会を設けることを信託行為で定めなければならないとする規律を設ける。」,乙案として,「公益信託をするときは,受託者に対する監督の役割を果たす信託管理人以外の主体を設けることを信託行為で定めなければならないとする規律を設ける。」,丙案として,「上記の各規律を設けない。」との提案をしております。
  現行の許可審査基準と同様に,新たな公益信託においても,公益信託の受託者に対する助言的な役割を果たす諮問機関として運営委員会を必置とすべきであるという考え方があり得ることから,これを甲案として示しております。また,新たな公益信託において公益信託内部の監督・ガバナンスを強化するためには,信託管理人以外の新たな監督の主体の設置を義務付けるべきであるとの考え方もあり得ることから,これを乙案として示しております。他方,公益信託において一般の信託と異なる機関の設置を一律に義務付けることは柔軟性を欠き,利用者にとって使いづらい制度となる可能性があること,公益法人制度に比べ,軽量・軽装備であるという公益信託のメリットを生かすのであれば,複数の構成員の選任に伴う時間,費用等のコストを要する会議体の信託管理人を新たに諮問機関又は監督機関として設けることは避けるべきであるという理由から,甲案や乙案のような規律を設けるべきではないという考え方があり得ますので,これを丙案として示しております。これらの点について御審議いただければと存じます。
○中田部会長 ただいま御説明のありました部分について御審議いただきます。まず,第5,公益信託の受給権者について御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
○小野委員 意見を申し上げる前に確認なんですけれども,第4のところで脚注のところで信託法上の利害関係人ということで,典型的には信託債権者であるという記載がございましたけれども,ということは,受給権者という概念からのガバナンス規律は設けないけれども,第4のところでいう信託の利害関係人には含まれるということになるのかなと思います。その場合,先ほどの第4の補足説明を見ますと閲覧謄写権とか,信託財産管理命令申立権とか,結構,強い権限を持っているようにも思うんですけれども,ということで確認ですが,受給権者は信託債権者ではあるけれども,第4で議論したような権限を持つようなものではないという理解なんでしょうか。飽くまで債権者になる前の受給権者は何も権限を持っていない。とはいっても,恐らく将来債権の債権者であるような気もするんですけれども,何か権限はないと言いながらも,結構,第4のところの甲案ではそれなりの権限があるのがバランスを欠いているのかなと感じたものですから,それについて確認させていただければと思います。
○中辻幹事 私どもとしては,受給権者が全て信託法上の利害関係人に当たるとは考えておりません。受給権者の中にも具体的な受給権が発生している信託債権者のような方と,まだ,研究助成費とか奨学金の支給の対象となっていない不特定多数の段階にある方々も含めて,ここでは受給権者と表現しておりまして,いわゆる事業型における美術館の利用者のような方も受給権者と捉えているわけですけれども,それらが全て公益信託の利害関係人になるというわけではなくて,飽くまで受給権者が信託債権者の地位を取得したような場合に利害関係人に該当するということを考えております。
○小野委員 説明としては理解しましたけれども,受給権者という言葉そのものからして恐らく将来債権的な権利は持っている特定又は場合によっては不特定,不特定だと本人は行使できませんけれども,今の将来債権の非常に幅広い理解からすると該当してしまうのは,それはそれで,整理としてはそういうものだという理解ですか。債権者になれば民法的に,私法的に債権者として観念できれば,それは利害関係者としての権利を持ち得るという理解でよろしいんでしょうか。
○中辻幹事 将来債権を有する者が公益信託の利害関係人としての権利を持ち得るとは余り考えておりませんでした。部会資料では受給権者と表現しておりますが,物の本では「権」を抜かして受給者と表現しているものもございます。後者の表現を採ることも考えたのですが,研究会段階からの継続性ということで受給権者という表現を部会資料で使っているだけで,事務局としては,受託者に対する債権が現実に発生した受給権者が信託債権者になり,その結果公益信託の利害関係人に入ってくるという理解でおります。
○新井委員 今の小野委員の発言と関連します。26ページの説明の中に私としては気になる点があります。下から大体10行目ぐらいでしょうか。「そもそも,助成金の支給先に選定されたことが通知された受給権者と受託者との間の法律関係が贈与契約であるか否かは措くとしても」と書いてあるのですけれども,私としてはこの点は曖昧にしておくことはできません。ここははっきりしてもらわないと困ると思っておりまして,私の見るところ,文献上,贈与契約以外の説明はありません。そうだとすれば,これは受給権者ではなくて受贈者と明確にすべきではないかと思います。
  それで,私の問題意識としては,これからの信託というのは福祉型の公益信託というのが増えてくると思うのです。そうすると,受給者でも受益権者でも意思能力のない方が受益権といいますか,受給するということがあるわけです。何が問題かというと,88条で一般の他益信託であれば受益者と指定されると,当然に受益権が発生するわけです。しかし,こういう構成を採ると,それが全くできなくなるという大きなデメリットを負うわけです。そうすると障害者の権利条約とか,差別解消法の合理的配慮ということを考えると,立法上,合理的配慮を欠いたことになるのではないかという気がします。
  ですから,私は今まですごく精緻な議論をしながら,ここはぽかっと何か理論的な空白状態みたいになっている気がします。もう少しここのところは詰めてきっちりした理論構築をされた方がいいのではないかと私は思います。それで,私は受益債権と考えたらどうかと提案します。共益権的なものがなくても信託法上の受益債権と考えたらどうかと思っていますけれども,それはいろいろな御意見があるので,私の問題意識からすると,ここのところの説明は何か非常に偏っているような感じがします。
○中田部会長 法律関係の契約の性質決定という問題と,それから,更に債権者になるという問題があり,債権者となった場合にどのような監督・ガバナンスに関する規律を与えるのかというのは,最終的な論点であるわけですけれども,最終的な論点について一般に利害関係人に認められているような権能に加えて,更に何かを設けるべきだということも含むのでしょうか。
○新井委員 私は特に規律は必要ないと思います。それ以前のまず性質決定の問題と理論的な中身,そこのところをきっちりしていただきたい。だから,前提の議論かもしれませんけれども。
○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 受給権者による監督・ガバナンスに関する規律というのは,特に設ける必要はないと思います。公益信託の受給権者は,受給権があると確定して初めて受給を受ける権利を有することとなり,公益信託に対して受給請求債権を行使することができると理解しますが,特に監督・ガバナンスに関する規律は設けなくても,受給権を得た時点以降,信託法上は利害関係として権利,民法上は債権者としての権利を認められれば,それでよいと考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。大体,よろしいでしょうか。
○道垣内委員 結論として全く異存はないのですけれども,中辻幹事がおっしゃったことで若干,気になっていることがございまして,つまり,受給権者という言葉は広い意味で使っているとおっしゃったような気がしまして,つまり,ポテンシャルに受給権を取得する可能性がある人と,確定的に選任されて受給権を債権として取得した人の両方を含んでいるとおっしゃったんですが,私が資料を読んだときにはポテンシャルな人を含んでいるとは読めませんでしたし,それはかなり性質の違う者ですので,もし仮に両方を含んでいるということで書いていらっしゃるのならば,それは言葉を変えられた方がいいのではないかという気がいたします。
○中辻幹事 御指摘ありがとうございます。
○中田部会長 
  それでは,今の御指摘も踏まえまして,更にその概念を明確にしていくということを検討したいと思います。結論的には特別の監督やガバナンスに関する規律は設けないという御意見を頂いたと理解いたしました。
  それでは,最後になりますが,「第6 運営委員会等」についてはいかがでしょうか。
○深山委員 先ほども少し触れましたけれども,甲案は助言的な役割を果たす運営委員会というものを提案し,乙案は監督の役割を果たす主体ということなので,その意味するところは違うんだろうと思いますが,いずれにしろ,いずれも,つまり助言的な役割を果たす主体にしろ,監督の役割を果たす主体にしろ,必置の機関として置く必要はないし,むしろ置くべきではないだろうと考えています。そういう意味で丙案に賛成いたします。
  もちろん,言わずもがなですけれども,必置の機関であることに反対しているのであって,個々の公益信託において必要なときに助言的な役割を果たす機関,それを運営委員会と呼ぶかどうかはともかくとして,そういう主体を設けることや,あるいは監督の役割を果たす信託管理人以外の主体を設けることを否定するつもりは全くございません。それは必要に応じて定めればいいことであって,あくまで必置の機関としては必要ないということです。新しい公益信託制度を,いわゆる軽量・軽装備で,ローコストで可能にするという趣旨からも,最低限必要な機関ではないだろうと考えております。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 私は運営委員会は,委託者の関与を排除して,そこで信託関係人が一人いなくて,受託者と信託管理人しかいない状態では,受託者,信託管理人の選・解任の場面で最低,第三者の信託関係者が必要になるという意味で,運営委員会を,甲案と乙案の複合型として必須の機関とすべきであると考えます。つまり,運営委員会の役割としては受託者に対する助言的な役割を果たすとともに,委託者の関与を排除した結果,権限を行使するものが漏れた権限について,最低,運営委員会に委ねるべきであると考えますので,便宜的に運営委員会と呼びますけれども,名称は実態に合わせて別の名称も考えられると思います。
  運営委員会に与える権能としては,具体的に別表3に記載の利害関係人としての委託者の権能として列記された権能のうち,先ほど三角で記載されたものについて委託者の利害関係人としての関与を排除すべきであると申しましたけれども,その権限については運営委員会に係る権能を与えるということが妥当であると考えます。また,別表3に記載される委託者としての権利の中で,このうち,最低,受託者,信託管理人の選任・解任の合意や同意権が与えられないと,係る事項について公益信託の自律的ガバナンスが保てないことになってしまいます。
  具体的には別表3に挙げる事項のうち,受託者の辞任に対する同意権,受託者の解任の合意,新受託者の選任の合意,信託管理人の辞任に対する同意権,信託管理人の解任,別表3では信託管理人の解任の合意とありますけれども,信託管理人に監督される受託者が信託管理人の解任を申し出ることはできないと考えますので,ここは信託管理人の解任と読み替えます,新受託者の選任の合意,新信託管理人の選任,これらが該当すると考えます。
  また,これらの権利の前提として,運営委員会は信託法36条の信託事務の処理の状況等に関する報告請求権,38条1項の信託財産に係る帳簿等及び信託事務の処理に関する書類等の閲覧謄写請求権,38条6項の財産目録の閲覧等請求権,172条の信託財産の保全処分に関する資料の閲覧等請求権を有するとすることも必要であると考えます。これらの権利は,運営委員会が有する権能の最低ラインとして必要であると考えますが,それ以外にも運営委員会に税制優遇を受けるにふさわしい自律的ガバナンスの確保の観点から,定款変更,信託終了,財産帰属など信託事務の根幹に関わる事項についても,運営委員会の関与が必要と考えますので,何らかの関与を考えていただきたいと考えます。
○能見委員 結論としては深山委員が言われた案に賛成ですが,まず,甲案というのは内容的に矛盾とまでは言いませんけれども,運営委員会が助言的な役割を担うのだとすると,そういう役割の機関を必置とするというのは,十分な説明ができないだろうと思います。そういう揚げ足取りはともかく,助言的な機関というものを必須にするということは,実質的に考えても適当ではないと思います。乙案は,ガバナンスの観点から考えると,この案の前提には,受託者を監督するものとしては信託管理人というものを設けるが,それだけでは不十分であるということを言っていることになると思います。しかし,それならば,信託管理人の制度のところで,ガバナンスの観点から十分となるように,その形を変えるべきなのだろうと思います。
  それは,具体的には先ほどから議論にも出ていますけれども,信託管理人というのは一人ではなくて,複数,設けるという形でガバナンスを強化するというのが一つであります。そうすれば,複数の信託管理人の間で相互の監督ということが生じます。これに対して,信託管理人とは別の機関を設けて,受託者,信託管理人及び第三の機関の間の,ある意味で三つどもえの形にするというのは適当ではないだろうと思います。ガバナンスに関しては,委託者ということも考えられますけれども,私は,財産を拠出した委託者がいるときには,それなりに役割をある程度,求めてもいいと思いますけれども,先ほど言いましたように,委託者が死亡した後に相続人が監督に関わるというのは適当ではないと思いますので,委託者では十分なガバナンスという意味では限度があります。そこで,信託管理人を複数化する形で対応するのがいいのではないかと思います。
○新井委員 深山委員,能見委員のおっしゃったことは,公益信託は軽装備の方が望ましいだろうという観点からはよく分かります。ただ,現実の公益信託の実務を見ていると,信託銀行がいろいろな種類の公益信託を受託しているわけです。公益信託としては信託目的に沿った受給権者を選定しなければいけない。信託銀行は財産管理のプロですけれども,ある特定の公益信託の目的に沿った受給権者を選ぶということのプロではないのです。例えばある特殊な医学研究という目的を達成するための受給権者を選ぶということになったら,信託銀行にノウハウはないと思います。今後,受託者の担い手を拡大して,信託銀行以外の担い手が反復継続して公益信託を行うということを考えても同じだと思います。
  それで,今までの実務の中で運営委員会というのがあって,受給権者を選定するという役割を果たしてきたというのも事実ですので,これをどう位置付けるかは別にして,能見委員の案のように信託管理人という形で機能を与えるというのも一つの案かとは思いますけれども,私としては運営委員会的なものがないと多分,現実の公益信託は機能しないのではないかと思っておりますので,甲案を主体に少し内容を精査していただく辺りが実務的な対応としても妥当ではないかなと考えます。
○能見委員 新井委員のおっしゃることはよく分かるんですが,私の考え方が必ずしも正確に伝わっていなかったので,その点だけ補足したいと思います。甲案というのは,正に新井委員が言われたように,誰に受給するかと,そういうようなところで助言をするために運営委員会が役割を担うということですが,これはガバナンスという意味で関わるというのとは違うのだと思うのです。乙案は正にガバナンスを問題にしていまして,甲と乙というのは全然違う観点に基づく案ということになります。私が複数化など信託管理人の制度自体を強化すべきだというのは,ガバナンスの観点からの話でして,乙案における具体的な対応として,そういう形で対応すべきだと思います。そして,以上は,運営委員会という制度にガバナンスを期待するのは適当ではないだろうという考えに基づいています。助言的な役割についての運営委員会であっても,実際上いろいろ付加的な機能を果たしているし,そういうことがあっていいとは思います。ただ,やはり運営委員会は監督機関としては向いていないし,助言的な機関である運営委員会を必置にすべきかというと,それは適当でない。この点が新井委員と違うんだと思います。
○吉谷委員 結論としては丙案賛成です。運営委員会の位置付けとして,まず,助言をする機関であると考えております。その上で,甲案か,丙案かというところでいいますと,信託銀行が従来,同様の助成を行う場合においては,間違いなく運営委員会というものを設置するということになると思います。しかしながら,信託銀行以外の主体がされる場合,あるいは信託銀行が助成でないことをする場合におきまして,運営委員会が必要でない場合というのも想定できるのではないかなと考えております。そのために丙案がいいと思っております。ただ,本日の冒頭に申し上げましたように,受託者がどのように公益事務というのを運営できるのかと,そして監督してもらえるのかという,このガバナンスの問題については受託者が申請をするときに証明をしなければならないと思いますので,運営委員会というものがないのであれば,運営委員会がなくてもできる能力があるということを証明するべきであると考えます。
○林幹事 先生方と同じになりますが,基本的には丙案です。甲案につきましては,助言的な役割については,確かに実務的にはそういうこともあるのでしょうけれども,これは必ずしもパラレルの論点ではないかもしれませんが,私益信託で指図権者を法に取り込むかという論点があり,今のところは別に必ずしも法に取り込む必要はないという前提だと思いますので,公益信託において,誰にどう助成するのか決められないという場面はありえても,それにおいては必ずしも法に取り込む必要はないと考えます。乙案に関しては,結局,屋上屋のようになって,また,その次の人を誰が監督するのかのような議論をしても意味がないように思いますし,能見委員がおっしゃったように,信託管理人についてしっかり権限を与えてガバナンスできればいいのではないかと考えますので,丙案が妥当と考えます。
○沖野幹事 運営委員会については私も丙案が妥当ではないかと思っております。信託の類型によって例えば環境保全のために土地を保有するとか,そういうようなタイプなども考えられ,助言のための運営委員会を必ずしも必要としないものもあるのではないかと思っています。それはそれとして,むしろ確認させていただきたいんですけれども,ここでの「運営委員会等」というタイトルは,飽くまでガバナンスの問題として,受託者に対して助言をする機関を設けることもある意味,受託者がきちんとやるかということを間接的に適正化するという意味もあるのかと思われますが,そのような観点から,これを取り上げるということなのでしょうか。
  考えておりますのは,必置にする必要はないと思うんですけれども,任意的に置くことができるときのモデルとして用意するということは考えられないのかということです。信託法ですと例えば受益者集会などの規律は,用意はしてあるけれども,使うかどうかはそれぞれ次第というものであり,そのようなものもあり得るかと思います。そういうような規律を置くことは,別途,考えられるのでしょうか。それとも,ここで置かないというのは,およそ何ら規定もどの観点からも置かないということなのでしょうか。
○中辻幹事 事務局の方で部会資料を作っていたときには,受益者集会みたいな制度を作ることまでは考えておりませんで,丙案を採るのであれば,モデルとしても法律には規定を設けないとことになるのかなと考えておりました。もっとも,公益信託の個別の必要に応じて信託行為の中で運営委員会を任意で設置することまで不可能にすべきであるとは全く考えておりません。そして,受益者集会のようにモデル的なものを法律で定めるのか,ガイドラインのような形で定めるのか,いろいろやりようはあると思いますので,御指摘も踏まえて検討させていただきます。
○沖野幹事 ご検討いただければと思います。
○中田部会長 よろしいでしょうか。沖野幹事は法律の中で定めるというところまでおっしゃっているわけではない。
○沖野幹事 ガイドラインということは余り念頭には置いていませんでした。選択できるモデルとしてあった方がいいのではないかという感覚を持っていたものですから,申し上げました。更に言えば,甲案で設けることを信託行為で定めなければならないという場合の法律の規定の内容について,設けることだけを定めるのか,それとも法律に運営委員会とはこういうものだというより詳細が示されて,それを定めなければいけないのかという点も甲案については検討課題としてあると思うのですが,任意の機関として設けるというようなときに,法律にある程度,モデルとなる制度の中身を書くのか,それともガイドラインで書くのかというのは,可能性としてはいろいろあるのだろうと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○小野委員 先ほども議論しました信託法上の利害関係人,私は丙案に賛成なんですが,運営委員会を設けること自体は反対しません。そこでいずれにしても設けた場合には利害関係人に該当するというような立て付けまで考えていらっしゃるのかどうか。そこまでガバナンスに運営委員会が踏み込む必要はないのではないかというのが私の考えなんですけれども,事務局としてはその辺の,甲案,乙案を採れば利害関係人なんでしょうけれども,という点を確認できればと思います。
○中辻幹事 乙案を採るのであれば,運営委員会の委員は公益信託内部の監督・ガバナンスに直接権利義務を有するという意味で,公益信託の利害関係人に入ってくると思います。甲案を採る場合には,運営委員会の委員は受託者に対し奨学金の支給等について助言的な役割を果たすことになりますが,それを前提として委員が利害関係人に当たる場合もあるかもしれませんし,信託事務の内容に応じて異なってくる場合もあるように思います。
○中田部会長 御質問は,丙案を採ったとして,それで任意に設けた場合に運営委員会に利害関係人としての役割も付与することを考えているかということも含んでいたかと。
○中辻幹事 丙案を採った場合について,任意に設けた場合の運営委員会の委員であれば,基本的には公益信託事務について直接に利害関係を有する利害関係人には入ってこないように思いますが,ガイドラインのように公的な立て付けのもとで運営委員会が設定されるのであれば,それぞれの信託における運営委員会の役割にもよりますが,甲案と同様に運営委員会の委員が公益信託の利害関係人に入ってくる可能性はあり得るように思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
  丙案を支持される方がかなり多くいらっしゃいまして,あとは甲案あるいは甲プラス乙案という方がお一人ずついらしたと思います。ただ,丙案にしたとしても任意的な機関である運営委員会というものを何らかの形で位置付けることはできないだろうかという御指摘を頂いたと理解いたしました。
  ほかに第6について。
○平川委員 能見委員のように信託管理人を複数置くという案であれば,例えば信託管理人の選・解任を自薦でやるということが考えられるんですけれども,単独である場合で運営委員会を設けないで選・解任の権限を与えないとすると,誰が信託管理人の選・解任をするということになるのか,何かお考えをお持ちの方がおられたら教えていただきたい。
○中辻幹事 信託管理人の辞任,解任,新選任につきましては,受託者のそれと合わせて次回に御審議いただく予定にしております。
○平川委員 分かりました。了解しました。
○中田部会長 ほかにございませんでしょうか。
  ございませんようでしたら,本日の審議はこの程度にさせていただきます。
  最後に,次回の議事,日程等について事務当局から説明してもらいます。
○中辻幹事 次回は公益信託の監督・ガバナンスの残りの部分,公益信託外部の第三者機関として公益信託の認定を行う行政庁や裁判所による監督について御審議いただくほか,受託者及び信託管理人の辞任・解任・新選任,情報公開を御審議いただく予定です。
  次回の日程は,12月6日(火曜日)午後1時半から午後5時半までを予定しております。場所は現時点では未定ですので,後日,開催通知と共にお知らせいたします。
○中田部会長 それでは,本日の審議はこれで終了いたします。
  本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。
-了-

法制審議会信託法部会第34回会議 議事録





 
第1 日 時  平成28年10月4日(火)   自 午後1時30分
                        至 午後5時27分
 
第2 場 所  法務省第1会議室
 
第3 議 題    公益信託法の見直しに関する論点の検討
 
第4 議 事 (次のとおり)
 
議        事
○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第34回会議を開催いたします。本日は御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  本日は,小川委員,小幡委員,松下幹事,岡田幹事,明渡関係官,藤谷関係官が御欠席です。また,多少遅参される方がおられるようです。
  では,本日の会議資料の確認を事務当局からお願いします。
○中辻幹事 お手元の資料について御確認いただければと存じます。事前に,部会資料34「公益信託法の見直しに関する論点の検討(3)」を送付させていただきました。また,当日配布資料として,参考人としての御説明を本日予定しております財務省主税局の田原税制第三課長から,本日の説明に用いられる資料をいただきましたので机上配布しております。
  これらの資料がお手元にない方がいらっしゃいましたらお申し付けください。
○中田部会長 ただいま,お話がありましたように,本日は参考人として財務省主税局税制第三課の田原芳幸課長にお越しいただいています。第31回会議の際に事務当局から触れられていたところですが,公益信託制度の見直しに当たっては税法の知見を踏まえた上で,検討することが有益であると考えられますことからお越しいただきました。公益信託税制の基礎的な概要について御教示いただけると承っています。
  事務当局から何か補足はありますでしょうか。
○中辻幹事 主税局は現在,大変お忙しい状況にあると聞いており,臨時国会も既に始まっているにもかかわらず,田原課長に本日御説明をいただくことがかないまして,誠に幸いに思っております。田原課長の税制に関する御説明に要する時間は,大体15分程度を目安とされている旨お聞きしておりますが,田原課長には次の所用があることから,今回,質疑応答の時間は特段設けないということになっております。更に税法に関して御関心があるという委員・幹事の方がいらっしゃる場合には,後日,私ども事務当局の方にお伝えいただければ,税法の専門家である渕幹事や藤谷関係官,また,主税局のお力も借りて調査するなどの対応をとらせていただきます。
○中田部会長 ただいまのような事情ですので,本日は御説明を伺うということにさせていただきたいと思います。
  それでは,田原参考人,お願いします。
○田原参考人 ただいま御紹介にあずかりました主税局税制第三課長をしております田原と申します。よろしくお願いいたします。
  本日はお手元の資料に沿って御説明させていただきますが,内容の説明に入る前に税制改正について一言,申し上げたいと思います。毎年の税制改正でございますが,皆さん,御案内かと思いますが,税制改正のプロセスで決定されていくということでございます。新しい制度を税制上,どのように取り扱っていくかということに関しましては,現行税制の考え方を踏まえつつ,政府全体の政策の優先順位でありますとか,あるいは財源でありますとか,そうしたものを総合勘案しつつ,与党等における御議論なども踏まえた上で決定されていくものでございます。そうした意味におきまして,今回の御説明は,今後の税制改正におきます公益信託の税制上の取扱いに何らかの予断を与えるというものではございませんで,あくまで現行の信託税制の解説をさせていただくというものでありますことを御理解いただければと思います。
  早速でございますが,資料の表紙をおめくりいただきまして1ページ目,信託税制の全体像から御説明させていただきます。現行の信託税制でございますが,平成19年度の税制改正におきまして整備されたものでございます。平成18年の新信託法の制定によりまして信託制度が見直されまして,多様な信託の類型を設定することが可能となりました。信託の利用機会が大幅に拡大されることになることを契機といたしまして,平成19年度の税制改正におきまして,一つ目は課税の公平・中立の確保,二つ目は多様な信託の類型への課税上の対応,三つ目は法人税・相続税等の租税回避の防止,こうした観点から信託税制につきまして既存制度の取扱いも含めて見直しを行いまして,信託の性質に応じた課税方法が定められたところでございます。
  現行の信託の課税方法でございますが,こちらの1ページ目にございますように,一つ目は受益者段階で信託収益の発生時に受益者等に課税されるもの,発生時課税をするものでございます。二つ目の類型が受益者段階課税で,受益者が信託収益を現実に受領した段階で課税される受領時課税のもの,三つ目が信託段階法人課税で,信託段階におきまして受託者を納税義務者として法人税が課税されるもの,こうした三つに分類されるわけでございます。
  現行の信託税制におきましては,平成19年度税制改正前の受益者が不特定又は不存在の信託に採られておりました委託者に対する課税につきましては,原則として行われておりません。こうした受益者が不特定又は不存在の信託の取扱いにつきましては,基本的に二つに分かれてございます。
  まず,一つは受益者等に対して課税されるものであります。受益者等課税信託におきます受益者等とは,受益者としての権利を現に有する受益者のみならず,税制上のみなし受益者を含むものでございます。みなし受益者とは,実質的に受益者と同等の地位を有する者をいい,具体的には信託の変更権限を現に有し,かつ,信託財産の給付を受けることとされている者をいうとしております。
  次に,そうしたみなし受益者も存在しないものにつきましては,受益者等が存しない信託といたしまして法人課税信託となります。これには遺言により設定された目的信託などが該当するわけでございます。この類型を法人課税信託として位置付けまして受託者に課税することとしておりますのは,信託の収益の帰属者たる受益者が存在しないため受益者段階で課税できないものの,信託から所得は生じておりますので,これに課税しないことは適当ではないため,一義的な所得の帰属主体であります受託者に課税することとされているものでございます。
  しかしながら,平成19年度税制改正におきましては,一般の公益信託につきましては法人課税信託に該当せず,従前の委託者課税の取扱いを維持することとされてございます。これは新信託法の法案の附帯決議におきまして,公益信託制度については公益法人と社会的に同様の機能を営むものであることに鑑み,先行して行われた公益法人制度改革の趣旨を踏まえつつ,公益法人制度と整合性のとれた制度とする観点から,遅滞なく所要の見直しを行うこととされたことから,当分の間の措置といたしまして法人税法の附則において手当てされたものでございます。
  資料の2ページ目を御覧ください。こちらは(認定)特定公益信託制度の概要でございます。現状の公益信託につきましては,税制上,一般の公益信託,特定公益信託,そして,認定特定公益信託の三つに分類されております。一般の公益信託につきましては,公益信託法に基づきまして主務官庁の許可を受けて設定するものであります。
  一般の公益信託のうち,信託終了時に信託財産が国又は地方公共団体に帰属すること,又は同種の公益信託として継続すること,受託者が信託会社等であること,受託者が受け入れる信託財産が金銭に限られることなどが信託行為において定められていることといった税制上の要件を満たすことにつきまして,主務大臣の証明を受けたものが特定公益信託とされるわけでございます。
  さらに,特定公益信託のうち,公益の増進に著しく寄与するものとして,こちらの資料の右の下に①から⑫までございますが,このように列挙されております事務をその目的とする特定公益信託で,相当と認められる業績が持続できることにつきまして,主務大臣の認定を受けたもの,こちらが認定特定公益信託とされるわけでございます。こうした証明あるいは認定の際には,主務大臣は財務大臣と協議することが必要となってございます。
  以降,公益信託の今申し上げました三つの分類ごとに,それぞれ,信託財産の委託時に委託者の所得の計算上どのように取り扱われるか,信託財産の運用により所得が生じた場合に誰にどのように課税されるのかについて御説明させていただきまして,その後に公益信託から給付を受けた場合についての受給者の課税関係,最後に委託者の死亡時に公益信託に関する権利が相続税法上どのように取り扱われるかについて,順次御説明させていただければと思います。
  3ページ目を御覧ください。まず,委託時の取扱いについて御説明する前に,関連する制度といたしまして寄附金税制につきまして簡単に御説明させていただきます。寄附金につきましては,この表は複雑な表ですが,ざっくりと申し上げますと,一つ目は国や地方公共団体などに対する寄附,二つ目が特定公益増進法人などに対する寄附,三つ目が一般の寄附と,このように分類できるわけでございます。原則論で申しますと,法人の支出した寄附金につきましては,事業に関連するものと,要は費用性のあるものとそうでないものがあるわけでございますけれども,そうしたことから一定の基準を定めまして,それによって限度額を定めた上で,その限度額の範囲内の支出額に限り,損金算入を認めるというのが原則論になってございます。
  その上で,一つは国や地方公共団体等,更には特定公益増進法人等に対して寄附金を支出した場合につきましては,法人税法上も所得税法上も公共性などに鑑みまして,一定の税制優遇が行われておると,法人税のところで申しますと,国や地方公共団体についていえば,全額損金算入と,特定公益増進法人につきましては一般の寄附金の損金算入の枠とは別枠で損金算入を認めておると,そういった優遇措置が与えられているところでございます。
  その上で,公益信託に関しまして御説明させていただきます。4ページ目を御覧ください。公益信託に係る税制の概要でございます。まず,①は委託者が個人の場合,②は委託者が法人の場合でそれぞれ表を分けさせていただいた上で,その表の中で横軸が拠出段階と運用段階の2ディメンションになっていて,縦軸が,公益信託,特定公益信託,認定特定公益信託と三つの信託ごとに分けておるわけでございます。
  まず,委託段階,拠出の段階の課税関係について申し上げますと,①と②の表の左側でございますけれども,まず,一般の公益信託について申し上げます。一般の公益信託の委託段階,これにつきましては委託者が個人の場合も法人の場合も寄附金扱いはされないと,すなわち,所得税におきましては寄附金控除の対象とはなりません。また,法人税におきましても損金不算入の扱いとなってございます。
  次に,同じく一般の公益信託の運用段階でございますが,まず,下の②の方でございますけれども,法人税の取扱いにおきましては現行法上,信託財産に属する資産負債を委託者が保有するものとみなしまして,その信託財産に帰せられる収益費用は委託者に帰属するものとして,課税することとしてございます。なお,所得税法上は上の表でございますが,一般の公益信託についても信託財産につき,生ずる所得については所得税を課さないこととされてございます。
  次に,特定公益信託の取扱いでございます。①,②の表の縦軸の真ん中でございますけれども,特定公益信託につきましては,公益信託の信託財産が実質的には委託者の手を離れたものであること,その運営が公正に行われること及び運営の確実性を担保することなどの観点から,税制上の各要件が定められてございます。こうした要件をクリアする公益信託に限りまして,法人税法上は信託財産として拠出された金銭を寄附金とみなすこと,②の表でございますけれども,これは一般寄附金と同じ扱いをすると,かつ委託者課税を運用段階でもしないこととされております。これらの要件を備えました特定公益信託につきましては,委託者が利益を享受することは実際上余り考えられないことなどに鑑みまして,実態に合った取扱いをすることが適当と判断することとされたものでございます。
  また,公益信託の運用時におきます課税に関して御説明することとの関係で,公益法人等の課税対象事業について簡単に御説明させていただきます。5ページ目を御覧ください。法人税法上の公益法人の取扱いでございますが,その行います事業を収益事業とそれ以外に分類いたしまして,営利法人の営む事業と競合関係にある事業であります収益事業を行う場合におきましては,課税の公平性,中立性の確保の観点から,収益事業から生じます所得に対してのみ法人税を課税すると,これを収益事業課税方式と申しておりますが,そうした方式が採られておるところでございます。
  また,4ページに戻っていただきますと,特定公益信託におきましては,そもそも,公益信託は許可審査基準におきまして,その内容は原則として助成金,奨学金,奨励金,寄附金等の支給又は物品の配布であることとされてございます。更に税制上の要件におきまして,受入れ財産が金銭のみであること,更には運用方法も預貯金,公社債などに限定されておりますということでありますことから,収益事業に該当するような信託財産の運用は行われないと,こういう整理になっておるということでございまして,こうしたことを踏まえまして,収益事業課税方式は採られておりませんで,運用時の課税は生じないと,こういう扱いになっておるわけでございます。
  最後に,4ページ目の資料の中で認定特定公益信託の課税関係でございますが,認定特定公益信託につきましては,運用時の課税につきましては特定公益信託と同じ扱いになってございます。他方,委託時につきましては特定公益信託よりも上乗せの優遇措置が講じられております。信託財産として拠出された金銭をまず寄附金とみなした上で,①の表ですが,所得税につきましては寄附金控除の対象となってございます。②の表ですが,法人税につきましては別枠の損金算入の優遇が与えられておるわけでございます。なお,認定特定公益信託の要件は,寄附優遇を認めるには公益目的を限定するとともに,継続性等を担保することが必要となるという考え方から定められているものでございます。
  次に,4ページの2.でございます。受給者の課税関係でございます。公益信託は当初,信託された財産やその運用益などから給付を行うこととなりますが,給付の対象となった者が受けた金銭等につきまして,その者が個人か,法人かによって課税方法が分かれるわけでございます。受給者が個人の場合でございますが,一般の公益信託からの金銭等の受給時に,委託者が個人の場合は贈与税の課税対象となります。委託者が法人の場合,こちらにつきましては一時所得として所得税が課税されることになります。なお,所得税法,相続税法ともに例えば学資に充てるための給付でありますとか,そういった一定の場合には非課税の規定があるわけでございます。
  受給者が法人の場合でございますが,法人の場合は受け取る金額が確定した事業年度の所得として,法人税が課税されることとなると,これが原則でございます。ただ,アスタリスクに書いてございますが,公益信託の給付先につきましては,公益法人等がなることが多いということも考えられるわけでございますが,公益法人等が受給者である場合は,給付された金銭等は通常は公益法人等の課税の対象となります,先ほど申し上げました収益事業から生じた所得には該当しないということでございますので,その場合は非課税となるわけでございます。
  最後になりますが,公益信託につきまして,委託者が死亡した場合の相続税の課税関係について御説明いたします。相続税法におきましても,一般の公益信託につきましては従前の委託者課税の取扱いを維持することとされているところでございます。委託者が死亡した場合には,その相続人等が公益信託に関する権利を委託者から遺贈により取得したものとみなされまして,その権利は相続税の課税対象となるわけでございます。ただしでございますが,公益信託が特定公益信託の要件を満たすものである場合,4ページの表上,①の下の二つ目のアスタリスクに書いてございますが,特定公益信託の要件を満たす公益信託につきましては,その信託に関する権利の価額はゼロとして取り扱うと,このように定められておるわけでございます。
  簡単でございますが,私からの説明は以上でございます。
○中田部会長 田原参考人,どうもありがとうございました。
  頂戴しました御説明をそしゃくして今後の審議の参考にさせていただきます。
  それでは,本日の審議に入ります。本日は部会資料34について御審議いただく予定です。具体的には途中休憩の前までに部会資料34のうち,「第3 公益信託の認定の主体」まで御審議いただき,午後3時半頃をめどに適宜,休憩を入れることを予定しています。休憩後,「第4 公益信託と目的信託の関係」について御審議いただきたいと思います。
  部会資料34の第1と第2は,前回の審議で受託者に関する認定基準と信託事務に関する認定基準について御審議いただいたのに続くものです。まず,「第1 信託財産に関する認定基準」について御審議いただきます。事務当局から説明してもらいます。
○佐藤関係官 私から御説明させていただきます。
  まず,「第1 信託財産に関する認定基準」のうち,1の「公益目的の信託事務の遂行見込み」について御説明します。本文では「公益信託の信託財産の運用,追加信託及び寄附金等の計画の内容に照らし,その公益目的の達成に必要な信託事務を遂行できることが見込みがあること(信託財産の取崩しを内容とする場合にはその存続期間を通して信託事務を遂行することができる見込みであること)を認定基準とする規律を設けることでどうか。」という提案をしています。
  公益目的の信託事務を遂行できる見込みがないような信託を公益信託として認定する必要性は認め難いことから,信託財産に関する認定基準として,このような認定基準を設けることを提案しています。なお,信託事務の遂行可能性を検討するに当たっては,設定当初の信託財産に限定することは相当ではないことから,このような限定は付さず,信託財産の運用のほか,追加信託や寄附金等の計画の内容も考慮して判断することとしています。もっとも,信託財産の運用の概念及びその許容される範囲については,特段異論のないものと思われる預貯金や国債などの安定的な運用を超えて,どこまで許容されるか否かなどの論点があります。公益目的の信託事務の範囲の論点とも関連しますが,本論点においても御意見等を頂ければと存じます。
  続いて,第1の「2 遊休財産の保有制限」について御説明いたします。本文では,甲案として,「公益目的の信託事務のために現に使用されておらず,かつ,引き続きそのために使用される見込みのない遊休財産の額が一定の額を上回るものでないことを認定基準とする規律を設ける。」,乙案として,「公益目的の信託事務のために使用しない財産を受託者が当該公益信託の信託財産として保有することを禁止する規律を設ける。」,丙案として,「受託者の遊休財産の保有制限に関する規律は設けない。」という提案としております。
  公益信託の受託者が,委託者から受領した信託財産等を自らの下で蓄積し,長期にわたり公益目的の信託事務の遂行に使用しないと,本来公益目的に使用されるべき財産の死蔵につながり,資金拠出者の意思にも反するため,公益法人認定法の規律を参考に,甲案のような提案をしております。
  これに対し,公益信託の受託者が,公益目的の信託事務のみを行い,それ以外の信託事務を行わないとした場合には,そもそも公益目的の信託事務のために現に使用しない財産を保有する必要はないことから,そのような信託財産の保有を禁止するとの考え方があり得るため,このような考え方を乙案として示しています。もっとも,乙案に対しては,公益信託の事務の円滑な運営・遂行を阻害するとの批判があり得ます。
  以上に対し,そもそも受託者の遊休財産の保有制限に関する認定基準を設けることは不要であるとの考え方があり得るため,丙案を示しております。もっとも,丙案に対しては,収支相償又はペイアウトルールなどのこれに代わる認定基準についての規律や,監督機関等による事後チェックが適切に機能しない限り,信託財産が公益のために使用されず,死蔵されるおそれが残るとの批判があり得るところです。
  なお,公益法人制度における収支相償と遊休財産規制の相違点について補足いたします。部会資料5ページの(注)に記載しておりますが,収支相償はフローの面からの規制であり,遊休財産規制はストックの面からの規制となっているといった違いがあるほか,収支相償については公益目的事業のみが対象となりますが,遊休財産規制については法人全体を対象とするなどの違いがございます。
  また,前回の部会において議論させていただきましたペイアウトルールにつきまして,部会資料7ページ以下にアメリカにおけるペイアウトルールの説明を補足いたしましたので,参考にしていただければと存じます。
  第1の「3 他の団体の意思決定に関与することができる株式等の保有禁止」について御説明いたします。本文では,甲案として,「公益信託の信託財産に他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財産が原則として含まれないこと(例外として,当該株式等の財産の保有によって他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれがない場合は当該株式等の財産が含まれることを許容する)を認定基準とする規律を設ける。」,乙案として,このような規律は設けないという提案をしております。
  まず,公益信託の受託者が,信託財産に含まれる株式等を用いて実質的に営利事業を行うことを防止する必要がある一方,公益信託の信託財産として株式を全く保有できなくなることは相当ではないことから,公益法人認定法の規律を参考にして甲案を提案しております。もっとも,甲案を採用する場合には,公益法人制度とは異なり,受託者は複数の信託を受託できる上,受託者自らの固有財産も保有していることから,例外要件の「実質的に支配するおそれ」の有無の判断に当たり,当該公益信託の信託財産に着目すべきか,あるいは受託者に着目すべきかについて検討する必要があります。この点についても併せて御審議いただければと存じます。
  これに対し,公益信託の信託事務を公益目的の信託事務に限定し,それ以外の信託事務は行わないとする場合には,収益事業等を行うことが可能な公益法人に比べて,公益信託の受託者が信託財産である株式の議決権を行使するなどして営利法人等を実質的に支配するような事態が生じる可能性は相対的に低くなると考えられることから,甲案のような認定基準は不要であるとの考え方があり得ますので,それを乙案として示しております。
  第1の「4 不可欠特定信託財産の処分制限等」について御説明いたします。本文では,甲案として,「公益信託の受託者が公益目的の信託事務を行うために不可欠な特定の信託財産があるときはその旨並びにその維持及び処分の制限について必要な事項を信託行為で定めているものであることを認定基準とする規律を設ける。」,乙案として,このような規律は設けないという提案をしております。
  公益目的の信託事務を行うために不可欠な特定の信託財産がある場合,その信託財産を受託者が処分してしまうと,公益信託の信託事務の遂行に支障が生じるおそれがある一方,処分を一切禁止するなどの必要以上の規制を及ぼすことは,受託者の行う信託事務を過度に制約することになる懸念もあることから,公益法人認定法の規律を参考に不可欠特定信託財産がある場合には,信託行為にその旨並びにその維持及び処分について必要な事項を定めておくことを認定基準とする規律を設けることを甲案として示しております。
  これに対し,信託法の解釈として公益目的の信託事務の遂行に必要な不可欠特定信託財産を受託者が処分できないことは当然である上,公益信託の認定基準が煩雑になるという懸念から,甲案のような認定基準は不要であるという考え方があり得ますので,乙案のような考え方を示しております。
○中田部会長 ただいま説明のありました部分につきまして御審議いただきたいと思います。4点ありますので順にお願いいたします。まず,「1 公益目的の信託事務の遂行見込み」,これについていかがでしょうか。
○道垣内委員 重要な議論がなされる前に形式的な話をしておきたいのですが,これから申し上げること自体は,実は公益信託法改正研究会報告書の中でも同じ言葉が使われており,かつ私もメンバーでありましたので,本当は若干申し上げにくいのですが,追加信託という言葉を用いるとき,その意味について信託法の中で定義されていないことが気になります。恐らくここで書いていらっしゃるのは,信託の設定当時から例えば1年後,半年後にはこういうお金が入ってくるとか,更にこういうふうなことをするとかといった計画がされているという場合を念頭に置かれているのではないかと思うのですが,信託法の実務において追加信託という言葉が用いられるときは,予定されていなくても信託財産を追加的に支出するということを広く含めていますよね。
  そのような財産の追加的支出がどのような法的性質を有しているのかは,実はよく分からないところであり,いろいろ,議論もあり得るところだと思います。したがって,要綱において,財産の追加を意味する言葉を用いなければならないときは,例えば信託設定後における信託財産たる財産の追加予定とか,まあ,この例も「追加」と言ってしまっているので問題があるかもしれませんけれども,少なくとも「追加信託」という言葉を使うことは避けた方がよいのではないかと思います。細かい点なので最初に発言させていただきました。
○中田部会長 ありがとうございました。
  表現については最終的にまた御検討いただくことにいたしまして,今日,この場では取りあえず,追加信託という言葉もお使いいただいても,最終的にまた調整させていただくということになろうかと存じます。いかがでしょうか。
○小野委員 先ほど運用の話がございましたけれども,前も同じような発言をしましたが,運用という言葉自体が信託業法の適用とか,金商法上も使われている用語でもありますから,後半の金銭を特定の信託財産に変更する場合も,運用という広いくくりの中で議論しない方が,言葉だけの問題ですみませんけれども,よろしいかと思います。業法規制等をかけない場合の弊害等を懸念する議論があるのかも知れませんが,信託行為の中で金銭の使途等明示しておくということで対応できると思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 1の提案には賛成でございますが,ここで公益目的の達成に必要な信託事務を遂行することができる見込みがあると書いてある部分の解釈について,少し確認的に議論させていただきたいんですけれども,従来の助成型の公益信託は当初信託財産がほとんど金銭であったというところ,今回の改正で当初の信託財産を株式とするような助成型の公益信託ができるようにしたいと考えていることを従来から申し上げておりました。
  その株式などを当初の信託財産にした場合には,恐らく二つぐらいパターンがあって,株式を売却して助成資金にするという場合と,配当を助成に使うという場合があると考えています。後者の配当を使う場合なんですけれども,株式の配当ですので,当然,0%ということもあると思います。そうすると,その場合には事務遂行の見込みがあると言えるためには,配当のみを原資にするというような形で最初に決めてしまう,事業計画をそういうふうに作ってしまうと,助成できないということが考えられるわけですので,配当が0なのであれば,株式を売却して助成を行うというような事業計画である必要があるのではないかなと考えております。そうでなくて,0のときは助成しなくていいですよとしてしまうと,株式の内容によりましては全く助成をしないままに期間が経過してしまうということもあり得るわけでして,そうしますと,次の遊休財産との関係でも財産が死蔵されてしまうのを認めるようなことにもなりかねないと思いますので,そのように考えた方がいいのではないかと思っております。
  あと,資料の3ページ目の下から3行目辺りのところで,存続期間について記載されております。ここで書いていますように10年未満を予定している公益信託であっても,これを排除する必要はないという点には賛成でございます。その次の「もっとも」以下に書いている部分ですけれども,ここも重要ではないかと考えておりまして,余りその期間が短かすぎるであるとか,財産の金額なのか,あるいは配当が小さすぎるのかですが,公益のために供される信託財産の規模が余りにも小さいというようなものを認めるというようなことがありますと,公益認定自体に社会的なコストが相当掛かるということを考えますと,余り小さなものまで認めてしまうのはいかがなものかとも考えているところです。金額の規模が幾らだったら適切なのかというのは,なかなか,この場で申し上げにくいのですけれども,そういうことも配慮が必要ではないかと考えております。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○能見委員 これから事業型の信託も認められていくということで,例えば美術館だとか,博物館みたいなのを念頭に置いたときに,こういう基準の下でどう判断するのかという点について述べたいと思います。結論を申し上げますと,そういう事業型の場合には恐らく永久に続くといいますか,特に年限を決めないで博物館なんかでしたら続くということを予定するのが一般的だと思いますので,そういう下で信託事務が遂行できることの見込みというのを余り厳格に判断すると,なかなか,クリアするのが厳しいのだろうという観点からの発言です。
  事業型の博物館,美術館なんかを考えますと,恐らく建物であるとか,あるいは絵であるとか,それから,一番問題はそれを運営していく資金というのをどうやって調達するかというところの計画なのだと思います。当初に相当まとまった金額が信託財産として確保できればいいわけですけれども,そう簡単ではないでしょう。博物館とか美術館が年間どのくらいの経費が掛かるのか分かりませんけれども,1億円だとか,そのぐらい掛かるとすると,それを確保していく,そういう仕組みを作れということを要求するのだと思いますけれども,基本財産の運用利益だけでやっていくというのはなかなか難しいでしょう。寄附とかも当てにしなくてはいけない。美術館に関連するものを売ってもその収入はたかが知れている。そういう下で「公益目的の信託事務の遂行見込み」というのをどう判断するのかということが問題です。恐らく寄附というのは相当多く見積もらないとうまくいかないのではないか。
  寄附は,それほど確実に入るものではないわけですけれども,そういうものを当てにして大体年間の運用経費はこんな方法でもって調達することを予定していますというような計画でいいというのであれば,事業型は成り立つと思いますけれども,そうではないと,なかなか,厳しい。従って,事業型も可能なように,そこら辺の運用をそれほど厳しくしないようにするのがいいのではないかと考えます。
○林幹事 日弁連の議論では,この要件については見込みがあることではなくて,消極的要件にして,見込みがない場合に認定から排除すべきというのが一致した意見でした。先ほどの御説明では,見込みがないものは排除すべきであるという趣旨であったと思いますが,端的にその旨を規定した方がいいのではないかと思います。見込みがあることを要件としてしまうと,運用や扱いによっては見込みの精度が相当高くないと,認めない方向に働いてしまうのではないのかと考えられます。先ほどの先生方からの厳格にすぎるとうまくいかないのではないかとの御指摘と問題意識は同じで,排除したいのは明らかに見込みがない場合と考えますので,端的にその旨を規定すべきと考えます。
  この点,民事再生法第25条3号は,民事再生手続の開始申立に対する棄却の要件として,再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるときを棄却事由としていますので,そのような規定の仕方がベターであると思います。この規定は明らかなときという消極的要件としており,弁護士会では,見込みがないことが明らかなときに排除したらよいとの議論でした。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○小野委員 先ほど吉谷委員が発言された信託財産の規模と期間ですけれども,公益信託の目的によって判断すべき事柄であって,一概に小さいからいけないとか,短いから問題だという話では,もちろん,信託銀行が受託者となるときには,営業信託として小さい金額を受託することはできないかもしれませんけれども,それは担い手とかにもよると思います。例えばということで例を挙げると,何か災害だったりすると当初の半年,1年という期間が一番重要で,それが数年たってくると,だんだん,違ってくる状況になりますから,その間に集中して公益信託的な目的で何かをするというのは,誰もが想像し得ることと思います。
○平川委員 御提案の公益信託目的の達成に必要な信託事務を遂行することができる見込みがあることを要件にすることには,基本的には賛成なんですけれども,林委員と軸を同じにするところがあるんですけれども,当初信託財産や信託財産の運用については,基本的には受託者の責任として,受託者の自由な判断に委ねられるべき問題ではないかと思いますので,規律は必要最低限にするというスタンスで臨むべきだと思います。ですから,信託事務を遂行することができないということが,余りにも明らかなものを排除するという程度の規制であるべきだと考えます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 存続期間ということにつきましては,現行の公益信託でも向こう3年とか5年とかの計画をお示ししているとは思うんですけれども,必ずしも何年とか,永久に続くとか,初めから決めているわけではないので,事業型だから永久に続かなければならないということもないと思いますので,ここの期間を通してというところが何か厳密に読まれるので,今のような御議論になっているのではないかなと思いました。当初,数年分の計画を出して,それはまずできるんだというようなことが確認できれば,それでよろしいのではないかなと思います。
○中田部会長 最初の方に道垣内委員から追加信託という用語について,そして,小野委員から運用という概念について,それぞれ,御指摘いただいたわけでございますが,これらについてもしお考えがございましたら,お示しいただければと存じますけれども,いかがでしょうか。
○吉谷委員 運用の考え方については,以前も申し上げたのと同じ内容ではございますが,当初の信託財産を別のものにどんどん変更していくというようなものにつきましては,株式のような投資商品であっても,あるいは不動産のようなものであっても,かなりリスクを伴うことになると思いますので,そのようなリスク判断の難しさというものがあるということを認定においてどう考えるのかということがあるかと思います。専門家の関与というものも必要になってくるかと思いますし,そのような専門家が関与することによって,報酬もかなり上がってくるということもあるかと思いますので,信託協会の議論では余りこのような財産の変更をどんどん行っていくというような運用については,慎重に考えた方がいいのではないかなというような議論が出ておりました。信託銀行自身は運用の専門家ではあるわけですけれども,一方で,業として行う場合には一定程度の財産がなければできないというような問題もあると考えております。
○能見委員 中田部会長の言われた用語についてですが,まず,「追加信託」という用語に関しては道垣内委員のおっしゃるとおりだと思いますけれども,ここで問題となっているのは公益信託における追加信託で,新たに信託財産が追加されても受益者が出てくるわけではないので,問題は比較的単純なのだと思います。要するに信託財産として増えるということなので,したがって追加信託が定義されておらず問題であるというならば,この表現を避けて,信託財産の増加というような言葉に変えればいいのではないかと思います。これが受益者がいるような信託ですと,単に財産が増えるのか,追加信託ということで委託者がいて,また,受益者がいるとかいうことになると,信託の関係当事者が影響を受けますので,追加信託の意味を厳密にしなくてはいけないと思いますけれども,公益信託の場合には,そのような問題がないので,先ほど言いましたようにちょっと言葉を直すことでいいと思います。
  それから,「運用」に関してですが,今議論しているのは,認定の際の基準として考えていると思いますので,その意味では,先ほど吉谷委員が言われたように,公益認定を申請する際には,計画を作るだけなので,公益信託が成立した後に次から次へと財産が変わっていくという意味での運用,そしてどのような運用が許容されるかといったことは,少なくとも最初の段階では問題にする必要がない。ただ,認定の基準だといっても,その後に監督するときの基準でもあるというお話でしたので,ただ,両者は本来,分けて考えるべきだと思いますが,そういう運用の段階での基準として考えたときには,運用という概念についてもう少し厳密に議論し,規制するのかしないのか,そこら辺を検討する必要があるのではないかと考えます。
○小野委員 私の先ほどの発言に関連して,先ほど吉谷委員がおっしゃられた金銭を株式に変えることはいわゆる運用であって,あと,金銭の運用として,例えば,あり得るかどうか分かりませんけれども,不動産投資として,アパートを建てるとか,不動産の賃貸業をする,それも一つの運用だと思いますけれども,私が申し上げた趣旨での信託財産を別のものに変更するというのは,例えば福祉絡みといいますか,社会的な弱者絡みでいえば,子ども食堂とか,例えば運転資金として給与を払うとか,また,場合によっては新たな備品を買う,場合によっては子ども食堂のため新たに不動産を買うとか,いずれにしても当初の公益信託の目的の範囲内において,資金使途がある程度,明確になっているような形での,だから,運用ではないはずですけれども,資金の利用を指しています。ただ,多分,ここでのくくりとしては,そういうのも含めて当初金銭が他の財産に変更することを変更と呼んで運用に含めており,金銭運用業みたいな運用と,資金使途を明確にした形での資金の利用をどちらも変更という形で記述されているのかと私なりに理解して先ほど発言しました。ですから,吉谷委員のおっしゃっていることはちょっとずれがあるかと思います。
○中田部会長 ほかに。
○吉谷委員 私の発言も誤解を招くかもしれないと思いましたので,私の方はむしろ計画を立てる段階で株式であるとか,不動産とかに変えることによって,そこから収益を大きく得ることを前提としたような計画を立てることには,慎重であるべきではないかというふうな趣旨で申し上げたところです。
○新井委員 追加信託及び寄附金等という用語ですけれども,まず,追加信託という言葉については道垣内委員の指摘があったとおり,私もこれは避けた方がいいのではないかと思います。というのは,追加信託ということになると,特に委託者の地位をどう扱うのか,当初の委託者と追加信託の委託者の地位をどう扱うのかという,また,難しい問題も出てきてしまうからです。両者とも信託目的を設定したものですが,そこに微妙な差異があったらどうするかというようなこともあると思います。寄附というのは,実際の公益信託でも使われて,結構,たくさん例もありますので,せいぜい,寄附金という用語にしておくのが妥当ではないかと考えます。
○中田部会長 この1については様々な御意見を頂きましたが,大体の方向はこういうもので良かろう,しかし,認定基準の設定に当たって過度に厳格なものにならないようにという御意見を何人かの委員・幹事から頂戴しました。また,用語については追加信託という言葉は適切ではないだろうという御指摘,それから,運用という言葉は概念が幾つかあるようですので,今回の部会資料でもかなり整理されてはおりますけれども,更にそれを詰めていく。それから,寄附という言葉についても今,新井委員から御指摘いただいたようなことがあろうかと存じます。1については,大体,この辺りでよろしいでしょうか。
○道垣内委員 運用について概念を詰めるということでおまとめいただいたので,それで結構なのですが,ここの第1の1で出てきているこの文は,公益目的の信託事務を遂行するために必要な資金をどうやって得るか,それが十分にあるかという視点から書かれているわけですよね。そうすると,ここでの運用というのは,恐らくは吉谷委員がおっしゃったように,必要な信託事務を遂行するための原資が十分にありますかという話なのだろうと思います。運用という言葉を詰めるということも必要ですが,第1回目からの審議との関係で申しますと,運用という概念が多義的になる可能性があるのだろう,規律の目的との関係で,活動を制限する,あるいは認めるという意味で運用という言葉を用いることもあるわけで,その規律における意義との関係と意識しながら,概念を整理していただければと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
○小野委員 手短に言います。追加信託に関して法律上の概念の問題とか,委託者の地位の扱いとか問題点の指摘があり,とすると,信託は1回限りであとは信託財産で取引すればよいという議論かもしれませんけれども,そうすると課税関係も異なる可能性もあるかと思いますし,あと,当初の信託設定行為で足りないものがある,また,委託者が何か当初信託財産である不動産のほかにもう一つ追加するとか,そのときに追加信託が認められたら,メニューとしてはふさわしいように思うので,そういう趣旨で部会長は発言されたと思います。追加信託そのものを法律上の不明確性から排除するということにはならないように,多彩なメニューで対応できるように,なおかつ,税法上もそれで対応できるようにというのが,より公益信託を活性化するために必要ではないかと思います。
○道垣内委員 例えば私が公益信託を設定するが,私の余剰資金は1年間に1億円あるので,10年間,1億円ずつ拠出しますと最初に定まっているということになりますと,10億円の拠出義務を設定したところの信託契約というのが最初から存在していて,それが分割給付になっているわけですよね。追加信託というのが,そのことを指しているのか,それとも,小野委員がおっしゃったような,その後にどうも足りないねとか,あるいはもっとこの公益信託を大きくしたいよねといって追加するというふうな場合を含んでいるのか。後者を含むと,実は公益認定の段階で判断できるような事柄ではないだろうと思います。
  したがって,ここを読んだときには,それは前者の分割給付のようなものだけを含んでいるのだろうと理解した上で,そうならば,それを追加信託と本当に呼ぶことがこれまでの用語法に合っているのでしょうかという問題を立てたわけです。どういったものまで認めるか,そして,認めることと,それを公益認定において考慮するというのはまた別問題です。仮に,今議論している規律において,考慮されないということになったときには,およそ,この公益信託をより大きくしようとするための追加拠出が認められないことになるのか,というと,そうではない。そういったことを踏まえて概念整理をしていただければと思います。
○中田部会長 それでは,今,頂いた御注意を参考にしながら更に詰めていきたいと思います。
 では,続きまして「2 遊休財産の保有制限」について御審議をお願いいたします。
○渕幹事 ここで「使用」ということはどう定義されているのでしょうか。例えば不動産があって,その不動産を学生寮として使うというようなことで,例えば普通に借りたら,毎月10万円ぐらいの学生寮に,学生をただで住まわせるというようなことをした場合,多分,それは不動産自体を「使用」しているということになるというような気がします。他方,10億円ぐらいを普通預金に預けていて,その利子を奨学金にするというような場合,それは10億円を「使用」しているということになるのかというと何か違うような気もいたします。この辺りについて御説明いただければと思います。
○中辻幹事 渕幹事が例として挙げられた信託財産である不動産を学生寮としてそこに学生を無料で住まわせている場合には,信託財産を公益のために使用していますので,遊休財産規制には該当しないことになります。また,奨学金給付のために信託財産として預けた金銭が1億円あって,それが信託設定の段階で手つかずに残っていたからといって直ちに遊休財産の保有制限に違反するということはなく,事業計画に沿って奨学金が配られるのであれば,その信託財産は公益のために使用される見込みがあることから,遊休財産規制には該当しないことになります。
○渕幹事 分かりました。1億円が減っていって,最終的にゼロになるということであれば,もちろん,使用されるということなのかなと思いますが,例えば,1億円の元本が減らないで利子だけをひたすら使っていくというようなことでも,使用されているということになるという理解ですね。
○中辻幹事 1億円の利子を使って公益目的が実現できるのであれば,その1億円は遊んでいるわけではありませんから,遊休財産規制には該当しないということになります。
○渕幹事 どうもありがとうございました。
○深山委員 甲案,乙案,丙案とありますので,まず,結論から申し上げると,乙案の言葉の使い方はともかくとして,考え方としては乙案のような考え方をベースにしてよろしいのではないかと思います。前回の議論で収支相償の基準を設けるかどうかという議論の際に,その必要はないということを申し上げ,なおかつ,公益のために提供された財産がいわゆる死蔵されたような状態になることは避けるということについては,別途,遊休財産の保有制限のような規律でということを申し上げました。そういう意味では,前回の発言の延長として,およそ公益目的に使われないような財産を公益信託財産として存在させ続けるのは,考え方としてよろしくないだろうという意味で,乙案のような考え方は一つの認定基準になり得るのかなと思っております。
  ただ,使用という言葉の議論などにも関連するかと思うんですが,何をもって使用している,していないを判断するのか,あるいは遊休財産という評価を与えるのかどうかという,そこが正に重要でありまして,現に使っている場合は問題ないわけですが,現に積極的に使われていないように見えるものであっても,将来,使うことが予定されているとか,そういうものであれば,ここでいう遊休という評価には当たらないのだろうと思います。
  先ほど出た例でいえば,1億の財産のうち,年に1,000万円ずつ使うのだとしたら,残りの9,000万は最初の1年目は使われていない財産ですということは誰も言わないと思うんですが,そういうことから始まって,例えば積極的に今,使っていない不動産があると,土地があるというときに,それはいずれ何らかの目的で使う予定があるとか,あるいはそれを換価して金銭にした上で使う予定があるとか,いろいろな計画がそこに存在すれば,よほど荒唐無稽なものでなければ,直ちに使っていなくても,それは使う予定の財産という意味で遊休財産という評価は与えられないと,こういうような運用といいますか,実務になるのであれば,さほど,規制を設けたからといって不都合はないのではないか。むしろ,公益信託という制度の趣旨,理念からすれば,一つの考え方としてあっていい基準ではないかなと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 本件の遊休資産の保有制限等のいわゆる財務基準につきましては,基準の全体並びに基準間の相互の関係が問題となり得ることから,その是非の判断をいずれかの段階でトータルに検討すべき問題ではないかと思いますが,本件の遊休財産の保有制限については,公益信託であれば,まずは自由で在るべき丙案に賛成します。また,公益信託につきましては,受託者は公益信託事務のみを行い,他の信託事務は行わない構成とすべきと考えておりますので,他の信託事務からは遊休財産の発生が想定されないため,この点からも遊休財産の保有制限に関する規制は必要がないと考えています。
  ただし,先ほどトータルに検討すべきと最初に申し上げましたけれども,収支相償について第33回検討案中,第3の「信託事務に関する認定基準」の「4 収支相償」についての規制は入れないという場合を採用する場合には,内部留保を不当に積み立てる弊害を排除するために,収支相償に代わって遊休財産の上限を,例えば年間の公益信託事務の費用の3年分程度を上限とするという規制を設けるということが考えられると思います。公益法人制度の場合には1年分となっておりますが,もう少し融通性を持たせて3年分程度が考えられるのではないかと思います。
  収支相償規制は事業を行っていれば,収支がとんとんでいくということを維持するということは,非常に実務的に難しいところ,これを要求している点で実務的対応がなかなか苦慮しているところなんですけれども,その縛りをなくして内部留保をどの程度規制していくかということについて,その限度は一定程度設けるということは考えられると思います。遊休財産をいたずらに内部留保してはいけないということ自体は分かるんですけれども,公益法人の場合のように遊休財産の1年分というのは余りにも少ないですし,アメリカなんかでは内部留保がある方が信用力のある公益団体であるとも認められているわけですので,そういう点を考慮しても内部留保は全然駄目だとかいうことではなく,収支相償との関係で一定限度の上限を設けるということも考えられるけれども,基本は丙案で自由で在るべきというスタンスをキープするような規制にしていただきたいと思います。
○中田部会長 ほかに。
○能見委員 収支相償の話が出たので,前回,一応議論したわけですが,もう1度確認しておきたいと思います。収支相償は,今回の部会資料の説明の中にも出てきますけれども,公益法人の場合には公益目的事業の会計のところでの収支相償であって,収益事業の方については要求されません。収益事業の方については,その50%以上は公益目的事業の方に使わなくてはいけないけれども,その残りは使わなくて良くて,ただ,そこは法人課税が適用される,というものです。
  ただ,この収益事業会計の部分には収支相償原則が掛かりませんので,公益法人の場合には,理論的には財産が増えていく可能性がある。そういう構造に公益法人の場合はなっているわけです。したがって,公益目的事業についての費用が足りないときには,収益事業の方でたまっているものを使えばいいわけですが,公益信託の場合には収益事業は行わない,公益目的事業しかやらない,そういう構図の下で収支相償というルールをかけると,継続的な公益信託を行っていく上でこのルールは,非常に大きな制約となります。非常に公益目的の事務を遂行することを困難にするだろうと思います。そういうことになるということを前回,申し上げました。
  そういう考え方から,収支相償の原則は採用しないのが望ましいと思います。そのうえで,今,平川委員が言われたように,収支相償原則がないことで公益信託の財産が内部留保という形で増えていくことを認めるのも適当でないので,それについては別途何らかの規制が必要なのではないかということであります。私も何か規制があった方がいいと思いますけれども,これも余り厳しい規制ではないのが望ましい。アメリカのペイアウトルールを見ますと,これも厳しいかなという感じがしますので,日本の公益信託にふさわしい何かルールを考えればいいのかと思いました。以上が収支相償との関係での発言です。
  次に,遊休財産の保有制限についての甲,乙,丙案ですが,今の考え方からすると,甲案に類するもので何か緩いものを考えるということなのかもしれません。乙案は,確かに公益目的事業に関係ない財産を保有するということは望ましくないということは一般的には言えます。例えば助成型の公益信託で絵を保有するとか,そんなようなことなんだと思いますけれども,しかし,これも認定基準のところで規制する必要は必ずしもないと思います。不要な財産を保有しているということ自体が恐らく公益信託の受託者にとっての善管注意義務なのか,何かの義務違反になる可能性もありますし,内部的なガバナンスで対応すればいいのであろうと思います。これは駄目で,これはいい財産だということを認定の段階で区分けをすること自体もなかなか難しいと思いますので,内部的なガバナンスで対応すべきなのではないかという感じがいたしました。
  それから,もう1点は,これで最後にしますけれども,ここでの規制といいますか,基準を認定段階での基準として考えるべきなのか,あるいは運用段階の基準にすべきなのかという点を検討した方がいいだろうと思います。遊休財産の保有規制はむしろ公益信託成立後の運営段階の問題ではないかという感じがいたします。そして,公益信託成立後の問題であるとして,そこで仮に何らかの基準を設けて監督するとしても,それに違反した場合に認定取消しになるような問題ではないのではないか。基準を超える財産については,それを使わせればいいことなので,そういう緩い効果を持った基準として考えるべきではないかと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○林幹事 弁護士会の議論では,単位会レベルでは丙案の意見がそれなりに多かったかと思いますが,資産を無用にため込んだり,死蔵させることは避けるべきであるので,そのためにはどういうルールがいいのかということと,収支相償については余りよろしくないと考えるので,それに代わるルールは何かとの観点からを考えることになると思います。また,設定当初に,この資産は信託目的に使わないというものを明らかに持っているようなものは認める必要はないので,そうしたものは当然排除するのでしょうけれども,この乙案でも,信託設定後に信託を動かしているときにどう規制するというのも含めたものになると,やや厳しいという気もします。
  それから,一番問題と考えるのは遊休財産というのの概念がそれなりに曖昧である点です。不動産を事実上持っているとか,預金を置いているという,それだけで遊休とされてはならないところであり,そうした認識は一致しているようですが,それを適切に規定することができるかという問題点はあります。
  この論点では,本質的には公益信託の活動をいかに活発にするかというところにもあると考えられるので,その点何らか工夫できないのかということはあります。そう考えたときに,緩やかなペイアウトルール的なものというのは,個人的には考えられるかと思いました。ただ,まだ,具体的な規定のイメージは持てておりません。いずれにしても,これに違反したから取消しではなくて,そこを是正すれば公益信託を続けられるものにすべきだという,能見委員もおっしゃった点は,私も同じ意見です。
  部会資料の7ページ等にアメリカの例とかも頂いていますけれども,ため込みすぎるとペナルティがかかるとかいうようなこともあるかもしれません。場合によっては,そこは課税するというペナルティもあるかもしれません。
○吉谷委員 甲,乙,丙でいいますと甲案には反対です。その趣旨としましては,甲案というのは公益目的の信託事務に使用しない財産を持つということを認めるルールであると理解しました。全ての信託財産を公益目的の信託事務を行うために,使用するのであるということを前提にすべきではないかと考えました。使用するの定義はまた難しいのですが,計画の中で何らかの使用をするということが分かっているかどうかということではないかと理解しております。恐らく助成型と事業型に分けて考えた方が分かりやすいのではないかと思いました。
  まず,助成型は,元々,一時的に金銭が増えることは,それほど問題視されないのではないかとは思うのですが,信託契約や事業計画で計画外に試算の増加が生じた場合には,速やかに換金をして年間の助成額を増加するであるとか,あるいは,元々,10年ぐらいで財産がなくなる予定であったところを信託期間の延長をするとか定めておいて,資産の増加への対応方法をあらかじめ決めておくということとしておけば,資産が増加しても,それは一時的なものにとどまるわけでありまして,余り問題にならないだろうと考えました。
  一方で,事業型につきましては,計画外の資産の増加が生じた場合には,その資産をどのように使うかというのは明らかではないわけですので,その解消のためには事業計画の変更をしなければならないのだということだと思います。そのため,一定の期間内に事業計画を変更して,増加した資産の処分方法を決定するというプロセスが必要なのではないかと。そのような計画が立てられないのであれば,同様の目的の公益法人や国であるとか地方公共団体に寄附をしても,別に構わないのではないかなと思います。
  乙案というのがそのような計画の変更等で対応する,あるいは当初に決めておくことで対応するというような趣旨であるとしましたら,乙案に賛成であるということです。ただ,乙案の場合は計画外の資産の増加があり得るということを認めてないかのようにも読めなくはないので,そこは明確にした方がいいのではないかと。
  それで,丙案につきましては,趣旨としては同じなのですけれども,例えば信託財産の範囲の規律の中で,信託財産は公益目的の信託事務に全て使用するというような趣旨の規律が設けられて対応できるとか,あるいは事後的な監督段階での規律が設けられるということであれば,乙案でなくても丙案でもいいのではないかと考えております。
○小野委員 控除対象財産というものがどういうものかということの質問なんですけれども,財団であれば基本財産が当然ありますし,また,それ自体,存在すること自体に意義があると思います。最終的には公益目的のために利用することになるでしょうが,財団継続中には実質的な意味においての会社における資本金みたいなものであって,取引の安全性とか,また,例えば,そこで働く方々,給与債権とかの引当てに最終的になるわけで,そういう意味において遊休資産がそもそも駄目というのは適切ではないと思います。恐らく私の勝手な想像ですけれども,この規定が入ったのは既存の財団法人の中で,そういう遊休財産を非常にため込んでいるものがあったりして,それが公益認定を受ける際に吐き出すような仕組みを採りましょうという観点から,ある意味では特定の一般法人の公益認定の移行における特殊性から出てきた議論のように感じます。そういう観点も控除対象財産の中に,そういう広い意味での公益目的というんですか,信託自体がよって立つ財産という意味において,そういうのもあってしかるべきではないかと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○樋口委員 先ほど平川委員がおっしゃったことと関連して,3年ぐらいの遊休資産というものがいいのではないだろうかというので,いろいろな例を考えていたんですけれども,例えば私が,パラリンピックで頑張った人にとにかく報奨金を出すというようなものを公益信託で作りたい,きっと誰も反対はしないと思うんですけれども,パラリンピックは4年に1度なんだから,3年の間はきっとそのための資産を積み上げということになりますよね,何らかの形で。それを運用というのか,何だか分からないけれども,とにかく,その間は支出しないということになると思うんですけれども,そういう例を考えてもいいかどうかということを思い付いたものだから確かめたいと思いますが。
○中辻幹事 樋口委員御指摘のように,パラリンピックの報奨金の積み上げを3年単位とするということは考え方としてあり得ると思います。公益法人では遊休財産と比較する公益目的事業の費用額を1年分と少な目にしているが,柔軟性を持って3年分程度とすべきではないかという平川委員の意見を,樋口委員も支持されるということで理解しましたけれども,よろしいでしょうか。
○樋口委員 そういうことです。ありがとうございます。
○中田部会長 これは遊休財産あるいは控除対象財産をどのように定義するのかということと,その結果として出た遊休財産を1年分までとするのか,3年分までなのかということの両方の問題があるのだろうと思います。その概念整理が5ページの表で一応されていると思いますけれども,この点も含めて更に検討するということになろうかと存じます。
○新井委員 甲案には認定基準とする規律という文言がありますが,乙案と丙案には認定基準とする規律という文言はないわけですけれども,乙案,丙案もともに認定基準の問題として理解しました。その上で申し上げると,甲案,乙案は事前の認定基準としては厳しすぎるのではないか,結論としては丙案を支持したいと思います。吉谷委員の言葉ですと,計画外の支出ということもあるし,公益信託の内容としては例えば災害に関するような公益信託の場合には,災害が起きたときに突発的な支出,そのためにある程度の蓄えを持っておくということもあるでしょうから,事前の認定のところで,甲案,乙案のように縛るのではなくて,むしろ,これは事後的な監督のレベルで縛ればいいのではないかということで,認定基準としては丙案に賛成したいと思います。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
  様々な御意見を頂戴しました。甲案,乙案,丙案,それぞれ支持される御意見がありました。いずれにしても収支相償との関係をどうするのかということ,当初の認定基準の問題と事後的な監督の問題と2段階あるのではないかということ,そして,遊休財産あるいは控除対象財産というものの概念について検討する必要があること,という辺りかと存じます。ということでよろしければ先に進ませて……。
○道垣内委員 いつも,議論が終わってから発言して申し訳ないんですが,平川委員がおっしゃったことと樋口委員がおっしゃったことは,結局,同じですねというまとめがされたことが気になっております。樋口委員がおっしゃったのは,1年間ということに着目しない方がよい場合があるということなんだろうと思うんです。例えば4年間が1事業単位みたいになっているときには,4年ということだってあり得るということですね。それに対して,平川委員がおっしゃったのは,1年間という単位は仕方がないよねと前提の下で,それを3年ぐらい認めてもよいではないかという話であり,かなり性格の違う話です。両方とも非常に私は重要な発言だろうと思いますので,気になりましたので一言だけ。
○中田部会長 ありがとうございます。先ほど申し上げた遊休財産あるいは控除対象財産をどのように理解するのかという問題と,それから,結果的に遊休財産とされたものについて,どのくらいを認めるのかという2種類の問題があると申し上げたのはそういうつもりでしたが,今の御指摘も踏まえて更に検討していきたいと存じます。
○能見委員 遊休財産という概念が本当にどういう場面で問題となるか,そこら辺の認識が私自身も曖昧なんですが,1年分,3年分という点も関係しますけれども,仮に1年分の遊休財産を保有するところまで許すという場合に,そもそも,公益信託なので余り収入が予定されていなくて,今,たまっているものを来年とかあるいは2年後とか3年後に使うというのは,そもそも,使用計画の中での使い方の問題であって,そういう場合には貯まっている財産は遊休財産にはならないと考えるべきではないかと思います。したがって,遊休財産になるのは,公益信託でいえば,例えば,普通の事業運営によって来年分も一応,収入がそれなりにあってやっていける,だけれども,それ以外に当面,使う必要はないけれども,事業費1年分に相当するような財産が余っている,こういうときに,初めてこれを遊休財産というのだと思いますが,そういう理解でよろしいのでしょうね。
○中田部会長 恐らくそうだと思います。例えば寄附についても特定の目的を定めた場合と,一般的な場合とで,現行法の基準は違ってきている。その適否ということは,当然,議論の対象になると思うんですけれども,将来の公益目的事業のための基金というのは控除される側に入りますから,そこは遊休財産の方には入らないという整理だと思います。よろしいでしょうか。
  それでは,続きまして「3 他の団体の意思決定に関与することができる株式等の保有禁止」についていかがでしょうか。
○深山委員 ここの規律については,規律を設けないという乙案の方が妥当だろうと考えます。甲案が意図する,その趣旨について全く理解できなくはないんですが,一つは,ここは一応,認定の段階での基準ということですので,なおかつ,信託財産についての認定基準ということですので,およそ株式のようなものが信託財産になること,そのものから直ちにこれを排除しなければならないということにはならないのではないかと思います。要は他の団体の支配権を持つことによって,正に株式であれば株主権を行使して,他の団体を支配するという行為というか,活動が公益信託として望ましくないということであって,そういう使われ方をする可能性はもちろんあり得るので,およそ持たせないことによってそれを封ずるというのは,一つの手段ではあるんでしょうけれども,必ずしもそういう使い方,要するに懸念される使い方がなされるとは限らない。したがって,株式等を保有した瞬間にもうアウトという評価を下すのは,いささか過剰にすぎるだろうと思うのが一つの理由です。
  もう一つは,括弧書きで例外として実質的に支配するおそれがない場合は除くというようなことも書いてありますが,果たしてどの程度の数量といいますか,シェアを保有したら実質的な支配に当たるのか,当たらないのかというのは極めて決め難い問題だろうと思います。団体の性質にもよるでしょう,会社でいえば上場企業なのか,そうでないのかとか,その他,ケース・バイ・ケースであって,過半数を持つ場合であれば比較的明確ですけれども,そこに至らなくても重要な支配を及ぼす場合というのも容易に想定できるということを考えると,この基準は基準として抽象的には立てることはできても,当てはめるところで非常に苦労するような基準にならざるを得ない。そういうやや技術的な観点からも賛成し難いと考える次第であります。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○能見委員 今,深山委員が言われたことと同じなんですが,仮に設けるとしたら原則と例外が逆になっていた方がいいのだろうと思います。ですから,株式等を持っていても一応,構わないけれども,実質的な支配を及ぼすような場合であれば駄目だとなる。それを証明するのは恐らく受託者の方ではない。また,実質的な支配というのがどのような場合をいうのか,過半数を持っていなければ実質的な支配はないというようなことが,部会資料の中に説明としてありますけれども,それでいいのかどうかも深山委員が言われるように明解でない。そういう概念の曖昧さということもありまして,仮にルールを設けるのであれば,原則と例外を逆にするのがよいと思います。
○小野委員 バックアップチームでの議論を追加しますと,中小企業等の事業承継のときに,こういう公益信託を利用するということは十分考えられます。実質的に過半数を持つこと,それを行使することは性悪的な議論になっていますが,そうではないという考え方もあるのではないかと思います。信託の受託者として善管注意義務を尽くして株主権を行使すればよくて,それは過半数であろうが,少数株式であろうが当然であるというような議論をしました。特に中小企業の事業承継という観点から,公益信託を利用するということもありますね,みたいな議論が結構盛り上がったりしたということがあります。
  それと,金融という観点から参考になるかどうか分かりませんけれども,海外のチャリタブル・トラストの例ですと,株主権を行使するときには,どういう観点で,どういうふうに行使するというようなことを信託契約が規定しております。ですから,それも受託者の義務,責任の範囲内において行使すれば良いのであって,一概に株主権を持つことがどうのという問題ではなく,財産の運用の話なので,適正に行使するということで尽きるのではないかと思います。
○道垣内委員 小野委員にお伺いしたいのですが,中小企業の事業承継のために公益信託を用いるということは,どういうふうなスキームを想定されていらっしゃるのですか。
○小野委員 そこで議論になったのは,余り詰めた議論ではありませんけれども,例えば配当等については公益目的に使ってもよいと,ただし,事業承継に関しては,代々,引き継いでいくというような状況をあえて排斥する必要はないのではないかみたいな議論でした。
○道垣内委員 あえて振興する必要もないのではないかという気が伺っていてするんですが。
○小野委員 事業承継で株がばらばらになったりとか,そういう状況があり得ると思うんです。昨今の議論として中小企業の事業承継の問題としてそういう観点からの議論もあったように思います。詰めた議論ではないので,事業承継にどういう形で使われるかということをもっと検討すべきということであれば,また,持ち帰って検討したいと思います。
○道垣内委員 誤解のないように申し上げておきますと,中小企業の事業承継をスムーズに行うということ自体に私は反対しているわけではもちろんありません。公益信託を使って,その間の配当を公益目的に使うというだけで,いろいろな形の便宜を与える必要があるのかということが私には理解できなかったものですから伺った次第で,中小企業の事業承継自体のスキームの必要性について反対しているわけではございません。
○小野委員 配当が公益目的に利用できる程度あれば,それはそれであり得ると思うんです。中小企業の配当がどの程度かという現実的な議論はあるかもしれませんけれども。
○能見委員 すみません,今の議論に割り込む形になりますが,私も小野委員が想定されているような場面というのは考えていたことがあるのですけれども,中小企業の創業者などが持っている株を公益信託にしたいという話を実際に聞いたことがあります。ただ,そのときに聞いた話では配当は確かに公益に使うとしても,株式がそこで安定的に公益信託によって保有されることで,会社としても安定的に事業を行えると,そういう狙いがあったように感じました。しかし,これは公益目的と言えるか問題です。同様に,公益信託が会社の事業承継に使われている場合には,果たして本当に公益と言えるのか吟味する必要があるというような問題もありそうです。それから,そういう公益信託の使い方の場合には,信託契約の中で基本財産的な株式は売却しないとか,そんな条項が入っていたりします。話がずれてきますけれども,とにかく事業承継の場面での公益信託の利用が適当かどうかは,公益目的といえるかどうか疑問があり,どうも適当ではないのではないかという感じがしました。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 甲案か,乙案かという点につきましては甲案に賛成いたします。更に他の団体の意思決定に関与することができるかどうかということの判断につきましては,一つの公益信託で考えるのではなくて,受託者単位で考えるというのがよいのではないかと思われます。受託者が複数の信託であったり,固有財産で株式を持つことも想定されると思いますので,そのように考えます。事例で書いてあるような場合は,該当するのではないかと思います。信託銀行で株式の信託をオーナー企業からお預かりすることが多いのですけれども,それは会社の支配権の安定的な確保目的で使われることが一般的なんです。なので,公益信託で支配的な株を持ったときに,それが公益が目的なのか,株式の支配権の確保が目的なのかというのが疑われるようでは,公益と言っていいのだろうかというところは疑問がありますので,ここの甲案の括弧書きにあるように,例外として当該株式等の財産の保有によって,他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれがない場合はいいと思うんですけれども,そうでなければいかがなものかと考える次第です。
○林幹事 私は乙案に賛成です。甲案については,その趣旨は一応理解でき,隠れ蓑的に公益信託を使うということは排除されるべきではありますが,結局,甲案であっても実質的な抽象的な基準しか残せないということがあります。確かに,これは絶対に駄目だというような場合を規則か何かに設けるという方法も考えてはみたのですが,パーセンテージを具体的に設定したときに何%がいいのかというのは決められないところです。上場,非上場でも違うし,会社の規模でも違うので,こういうことを考えると,規定するのは難しいと考えます。
  逆に言えば,一定の規模だったら別に議決権を行使するのも問題ないというところでもあるとは思います。ですから,深山委員の意見と同じですが,結局,それは持っていることが問題なのではなくて,どう行動すべきかが問題だと思うので,それは公益目的とか信託目的から自然と限定されていって,それに反すると善管注意義務違反になる,そういう形で規律できるのではないか,というのが弁護士会でも出たところだったと思います。
○中田部会長 ほかに商法の先生はよろしいでしょうか。
○神作幹事 期待されていることとは違う発言かもしれませんけれども,前提として私的団体を支配することを目的とすることは,そもそも,公益目的ではないから,当然,そのようなことは公益信託の目的を超えており,行うことができないという前提でよろしいでしょうか。そのような前提であるとしますと,その上で,ここの規律で問題となっているのは,実質的に私的団体を支配することは不可であるけれども,実質的に支配するおそれがある場合も認めることは適切でなく,おそれがある場合をどのように画するかという議論が現在なされているという理解でよろしいでしょうか。初めに御質問をさせていただきます。
○中辻幹事 神作幹事の御理解のとおり,まず,公益信託の受託者が株式を過半数以上保有して私的団体を支配する目的を有しているのであれば,その場合には信託の公益性が失われると考えています。そして,そのように公益信託の受託者が私的団体を実質的に支配するおそれが生じることを防ぐために,どのような認定基準が適切かということで,取りあえずここでは公益法人認定法の認定基準を参考として挙げています。
○神作幹事 ありがとうございました。もしそのような前提から出発すると,すなわち公益信託が私的団体を現実に実質的に支配することになったら,これは公益目的を外れてしまうと思いますので,そのような制約は当然かかってくるという前提の下だとすると,私は実質的に支配するおそれというのは,これまでに多くの委員が御指摘されたように,形式的に切るのはなかなか難しい点がありますので,それが反対に過剰な規制となって,むしろ,運用目的で株式を保有することが妨げられたり,株式で運用してその価値を上げるために議決権を行使することが妨げられるというのは,適切ではなく,また,そのような考え方は日本がここ数年,政策として打ち出しているところであると思います。したがって,支配権を行使して実質的に私的法人を支配するという目的ではなくて,正に投資した財産の価値を増やすという目的のために議決権を行使するというのは,むしろ望ましいということのように思われますので,それと実質的支配のおそれがある場合とをどう線引きするのは大変難問だとは思いますけれども,議決権の行使を一律に悪物視しない,そのような基本的な考え方で,しかしながら実際に支配することになったら公益目的からは離れるということを確認した上で,ではどのような規律の在り方が望ましいかを議論していくのがよろしいのではないかと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
○平川委員 甲案の方に賛成します。それは公益法人が他の団体の意思決定に関与することができる株式その他の内閣府令で定める財産を保有していないことを,公益法人の認定基準と定めていることとのバランスからも言えることですし,あと,潜脱的に公益信託事務以外の事務を間接的に当該株式保有による実質的支配によって,間接的に行うということを防ぐためには,必要な規制なのではないかと思うんですけれども,今,おっしゃったように株式支配を通じて,その株式を発行している会社の事業を運営するということが公益信託の財産の運用に資するものであるから,それは公益なのであるという議論は,公益信託事務以外の事務を間接的に行っているということになってしまうのではないかと思い,疑問に思いました。
○中田部会長 ほかによろしいでしょうか。
○小野委員 他のところで海外の事例が先ほどの論点でも議論されていたと思うんですけれども,ここでは特に米国の事例が紹介されていなくて,米国でも私の認識だと株式を所有するというのはチャリタブル・トラストの一つの社会的機能として存在しているような気がします。論点によって,時に海外の事例を参考にし,時に公益法人の移行のときの議論を参考にするというのはしようがないと思いますが,この議論は議決権行使は公益ではないという一つの価値判断に基づくもので,そうでない考え方もあり得るので,なかなか,理屈では割り切れず,そういう意味において,もし事務局又は専門家であられる樋口委員とか,米国の事例とかを紹介していただければ参考になるかと思います。
○中田部会長 今後,御指摘を踏まえまして,また,小野委員からももし情報提供を頂ければと思います。
○神田委員 私,全然,貢献するような発言ができないのですけれども,何か話が難しくなっているのではないかと思いまして,一言,感想を申し上げたいです。他の団体の意思決定に関与することができるとか,できないというのがなぜいけないというか,公益信託の認定基準に入ってくるべきかという話だと思います。ほかの先生方の御発言はそのとおりだと思うのですけれども,ただ,これがこういう基準で切れるかということがあると思うのです。つまり,例を挙げますと,不動産を信託財産で保有していますと,それを賃貸に出して入ってくる収入で助成事業をしますとかというのは当然ありだと思います。そうだとしますと,例えば株式会社の株式を保有していますと,入ってくる配当金で助成事業をしますというときに,配当を決めるのは株主総会決議ですので,その意思決定に参加できないと配当が決まらないかもしれないわけですよね。
  そういう場合には,画一的に他の意思決定に関与することができるから駄目とはなかなか言いにくい場合が少なくともあり得ると,抽象的には思うわけです。それで,もうちょっと違う言い方をすれば,また,違った局面では団体というのが何をしているかということでして,先ほど御指摘がありましたけれども,その団体が非常に公益的でないことをしているような場合には,先ほど潜脱という言葉がありましたが,そういうことが生じるようなパターンもあるでしょう。
  逆にその団体が非常に公益に近いというか,公益信託との関係でいえば,公益信託と相乗効果が上げられるような,公益信託にとってプラスになるような活動をしている場合には,その団体がしている活動自体は仮に営利活動だとしても,そこの意思決定に参加したとしても,それによって公益信託が公益活動を進めていくことにプラスになる場合もあると思うのです。ですから,物事は実質的に見なければいけないということなのですけれども,他方,認定基準はある程度,形式的に作らないといけないでしょうから,ある程度,形式的に作って外すものを例外とするのかという辺りが悩ましい問題であると思います。多少,先ほどからの御議論とは違う側面で気を付けた方がいいかなと思いましたので発言させていただきました。
○中田部会長 ありがとうございました。
○新井委員 先ほど吉谷委員の発言がありまして,甲案を支持したいと述べられました。それは信託銀行の立場としては極めてよく分かります。そういう利益状況だろうということは理解できますが,ここでは今後,公益信託の担い手を拡大していこうということも非常に重要な論点だと思います。そうした場合に,ある委託者がいて,株式を公益信託に拠出して公益活動をやろうというようなときに,信託銀行とまた違った利益状況がありますので,私は乙案の方に少し傾いています。その上で,議決権の行使は受託者が善管注意義務を持って行い,そして,信託管理もチェックするということで,甲案で懸念しているような問題点がクリアできるのではないかと考えています。ですから,委託者が中小企業のオーナーであるかどうかは別にして,もう少し,そこは幅広く,かつ新しい担い手のことも少し考えていいのではないかという感想を持ちました。
○吉谷委員 私どもは信託銀行ですので,銀行法上の株式の保有制限もありますので,支配権うんぬんというようなことに関与できるかどうかというと,そこはむしろ関与できない立場でありまして,新しい担い手の方がこういう信託を受託されることを想定するんだと思うんですけれども,平川委員が先ほどおっしゃったように,潜脱的な使われ方はされるべきではなかろうと思いますので,何らかの形で,そういうような基準というものがあった方がいいのではないかなと考えております。
○中辻幹事 小野委員が先ほど取り上げられた海外のチャリタブル・トラストについて,私どもも,海外の事例は参考になると考えております。チャリタブル・トラストを日本語に訳すと,慈善信託あるいは公益信託になるのかもしれませんが,チャリタブル・トラストと言ってもいろいろな形態の信託があって,その中には資産流動化のためのスキームとして株式を信託財産として目的信託を設定するという私益のスキームに近いものもあると理解しておりまして,そのような違いも含めて,今後も引き続き検討していきたいと思います。
○中田部会長 様々な御意見を頂きました。結局は他の団体の意思決定に関与することがなぜいけないのかという,その本質の問題であり,意思決定に関与することがいけないのか,実質的支配がいけないのかということを突き止めて,その上で,いけないことを防ぐためにはどうするのか,何らかの基準あるいは証明責任というんでしょうか,どちらが証明するか,原則と例外はどうするかという設定,あるいは内部ガバナンスに委ねることで足りるのかどうか,そういった段階に分けて検討すべきだという御指摘を頂いたのではないかと存じます。
  次に進んでよろしいでしょうか。それでは,「4 不可欠特定信託財産の処分制限等」についていかがでしょうか。
○山本委員 議論の前提として教えていただきたいことがあるのですが,甲案は公益法人認定法第5条第16号を参考にした提案になっていると思います。そこでは,「不可欠な特定の信託財産があるときに,その旨並びにその維持及び処分の制限について必要な事項を信託行為で定めているものである」こととされていますが,このうちの「処分の制限について必要な事項を定める」というのは,一体,何を想定しているのか,どのような場合を考えているのか,そして,特に公益法人の認定において,この規定の内容についてどのような運用がされているのかということを,議論の前提としてお教えいただければと思います。
○中辻幹事 公益法人の認定における運用については後で内閣府に確認してお答えしたいと思いますけれども,私どもが甲案で想定している必要な事項の定めといいますのは,例えば芸術文化の振興を目的とし,美術品や美術館の建物を信託財産とする公益信託であれば,再収集が困難な貴重な美術品や文化財的美術館の建物が処分されるとその美術館の運営が不可能になってしまいますので,それらの信託財産は処分してはいけませんよという条項を信託行為の中に入れておくことを意図しているものです。
○山本委員 例えば運用ということでお聞きしたのは,どのような形で内容について介入が行われているかということを確認したかったということですが,それ以外にも,例えば原則として処分をしてはいけないとしても,ただし,やむを得ない事由があるときはこの限りでないとか,あるいは公益目的を達成する上でもはや必要でないと判断されたときにはこの限りでないというような包括的な定め方を許容し,そして,その種の定めを入れるような指導等がされているのかどうかということをお聞きしたかったという趣旨です。
○中辻幹事 わかりました。では,その点を後日内閣府に確認いたします。
○能見委員 結論的には,この規制は設けない方がいいのではないかと思っています。私も余りいろいろな知見があるわけではないのですが,アメリカの美術館の例なのですけれども,美術館として絵を集めてきているわけですが,今,山本委員が言われたのと関係しますけれども,その美術館にとってかなり貴重な絵なのですけれども,もう1ランク上げるというんでしょうか,もう少し別のいい絵が売りに出ていて,それを買いたいので今まで持っていた絵を美術館としては売りたいと考えた,それは適当なのか,法律的に可能なのかが議論されていました。これをどう考えるべきかですが,当初,公益信託を設定した際には,その美術館にとってその絵は必要であると判断されていたとしても,後で売りたいという場合が出てくる可能性があるし,そういうことを許容して柔軟な運営ができるようにしておいた方がいいだろうと思います。そういうことで,それぞれの信託の判断に委ねるのがよく,甲案でない乙案の方がよろしいのではないかということでございます。
○林幹事 弁護士会の議論でも乙案に賛成というのが大半だったと思います。不可欠なものと思っても,状況によっては売却することも選択しないといけない場合があり得るというのは,先ほど能見委員が御指摘されたのと同じです。また,そういう場面ではなくても,処分してしまったら,それこそ信託目的自体が達成できなくなって,信託自体が終了するから,規律としてはそちらに委ねるので足り,あえてこういう硬直的になる可能性のあるルールは設けなくていいという議論でした。
○沖野幹事 重なる点ではあるのですけれども,今,既に御指摘にありましたように,不可欠な財産ですと,そもそも,信託行為に明示しなくても当然処分制限がかかる,あるいは黙示の信託行為の定めというようなことも考えられます。ここでは恐らく定めるというのは明示するということだと思いますけれども,確かに明確にするという意味はありますが,補足説明で書かれておりますように,不可欠の財産を処分してしまえば,目的不達成で信託自体が終わってしまうということにもなります。ですから,それと別に定める必要がどのくらいあるかです。明確にするとか,監督のときのチェックポイントとして,明示するということになりますが,そのことにどのくらいの意義を認めるかということではないのかなと思います。
  それから,最初に現在の運用でしょうか,運営状況についてお尋ねがありましたけれども,例えば例に出ました美術館の絵のような場合,当初は絵が1枚もないと美術館運営はなかなかできませから,建物だけではなくて絵自体も必要であり,例えばこの絵があるということがいわば目玉商品となっているような場合は,当初は不可欠であるけれども,その後の変更によって入れ替えたいというときには,この下で信託行為を変更して不可欠財産の特定のところの記載を変えて,そして別のものにしてやっていくというようなことがこの規律の下で想定されるのでしょうか。民事実体法としての信託法としては,信託行為に明示で書くと,そういうことになるんだと思います。処分できないというような規定になっているところを処分できるようにした上で,運営を続けていくというようなことをすると思うのです。認可の基準においても,そういう対応が可能というか,されているのかどうか,そういうことも運営というか,運用として明らかにしていただければと思いますが。
○中辻幹事 内閣府に確認した上でお答えした方がいいのかもしれませんけれども,今の私どもの理解ですと,公益法人では,定款で法人のこの財産は不可欠特定財産ですよという目録を作ります。美術館を運営する公益法人の所有する美術品であれば,不可欠特定財産が何十点にも及ぶのかもしれませんけれども,それらの目録を定款に定める。その後,状況が変化して不可欠特定財産とする必要がない美術品が出てきた場合には,定款の変更手続によって,その美術品を不可欠特定財産の目録から除外するということになりますので,沖野幹事がおっしゃったとおり,これを公益信託法に持ち込むのであれば,信託行為で不可欠特定財産を定め,その後は,信託の変更手続により増やしたり,減らしたりしていくことになるものと考えておりました。
○沖野幹事 分かりました。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
○吉谷委員 どちらかといえば乙案というふうな意見になっております。その理由は何をしなければならないのかがよく分からないというところにあるように思われました。信託目的との関係がよく分からないところもありまして,例えば特定の財産を保存することを信託目的とした場合は,不可欠特定資産として何かをまた定めなければならないのだろうかと,具体的に信託行為に売却してはならないと,仮に債務超過になるような場合には,それよりも前に信託を終了して特定資産は寄附するとか,そういうようなことをしないと信託目的が達成できないのではないかと,売却してしまったのでは信託目的が達成できないのではないかというようなことで,信託行為に何を更に定めるということなんだろうというような疑問が湧いてくるというようなことでした。それと,事後的に計画が変更可能なのかというところもよく分からなかったという意見がありました。
○樋口委員 時間が来ているのでできるだけ短く申し上げます。先ほど来の御意見と重複するんですけれども,これは認定基準であるということです。だから,こういうものを定めておいて,これがなくなったら終了だという話なんですけれども,先回も重ねて申し上げているんですが,とにかく公益信託にするかどうかという話は,結局,公益信託にどういう効果が与えられるかという話で,その効果を悪用することがあるから,認定基準のところを考えているんだと思うんですけれども,とにかく通常の信託と違う効果が与えられるものとして,日本でも多分,そういうのは認められていると思いますが,いわゆるシープレットか,サイプレットというものがあって,初めにこういうような公益目的を設定して,あるいはこの美術品を守るであるとかなんとかというんですけれども,それが達成不可能になったとして,台風で壊れるなり,何でもいいんですけれども,それで終了するかというと,そうではなくて,それと類似の目的で存続させる,公益目的の信託というのは,結局,設定したらできるだけ長く維持するという話に持っていかないといけないので,その話との関係がここでは重要なのかなと感じました。
○小野委員 信託法との関連で,48条の受託者の費用弁済で信託財産を処分して費用を捻出する可能になっていますが,その辺はこの規定を変更するというようなことも含んでいるんでしょうか。終了するにしても費用は受託者持ち切りなのかというと,それはちょっと気の毒のような気もしますし,もちろん,それを悪用するのであれば,それは別の議論ですけれども,この点について信託法との整理も教えていただければと思います。
○中辻幹事 信託法48条については検討をしていませんでしたが,公益信託も受益者の定めのない信託として信託法の規定が原則適用されますので,その例外に当たらないのであれば,48条も適用されるのではないかと思います。
○平川委員 基本的に乙案に賛成で,上記の規律は設けないと。この問題は,基本的に信託行為をする委託者と受託者の間で自由に定めることができる事項であると考えますので,規律は不要と考えます。
○新井委員 なぜ,これが問題になるかというと,従来,助成型が中心であったものを事業型に変えていこうということで,特に事業型の場合には不可欠特定信託財産の処分を認めないようにする必要があると思います。新しい公益信託法において,事業型が全面的に拡大するかというと,私の予想としては拡大してほしいですけれども,基本は助成型にとどまると思います。そうすると,甲案の規定は少し規制が過剰ではないかということで,基本的には乙案でいいのではないか,そして,ここでの論点については事後的な監督の中でチェックしていけば足りるのではないかということで,結論としては乙案を支持したいと思います。
○道垣内委員 先ほど小野委員から御発言があり,中辻幹事がお答えになった点について一言だけ申し上げたいのですが,信託法48条が適用されましても,受託者がその権利を行使するために信託財産を売却するときには49条2項の制限がかかってきて,そこに括弧書きで当該財産を処分することにより,信託の目的を達成することができないこととなるものを除くとなっていますので,48条の権利の行使のために,そういう不可欠特定財産を処分することはできないのだろうと思います。そして,不可欠特定財産しかないがゆえに,48条の権利が実現できないというときには,52条に入って信託を終了させるしかないというのが現在の信託法の立て付けであろうと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
○能見委員 いろいろな御意見が出て,私もほぼ同感なのですけれども,ここでの問題は当該公益信託を設定するときに,受託者,委託者等が任意にこの財産は必要不可欠だから処分しないようにしようというので,信託行為に書けば,あとは信託法の解釈といいますか,今,道垣内委員が言われたのもそうですけれども,それに従っていくわけですよね。ところが,ここで要求しているのは,そういうものを必ず書かなくてはいけない,それが認定基準だという考え方で,それは行きすぎだと考えるかどうかです。私は行きすぎだと思いますけれども,以上の点がポイントなんだということだけ確認でございます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  よろしいでしょうか。
○長谷川幹事 確認ですけれども,2ページにございます1の「信託事務の遂行見込み」の話と,今,御議論されている11ページの「不可欠特定信託財産の処分制限等」との関係というのは,どう理解すればよろしいのでしょうか。
○中辻幹事 私どもとしては,これらは両立し得る認定基準であると考えておりますが,認定基準としてだぶってくる可能性があるのではないかという御指摘でしょうか。
○長谷川幹事 2ページの1だけあればいいのではないかという考え方が一つと,もう一つは,両者は両立し得ると考えて,1は財産の規模に着目した規制で,4は財産の質及び信託事務の中身に着目した規制と考えるかということではないかと思います。
○中辻幹事 そのような理解は十分あり得るように思います。第1の1の「信託事務の遂行見込み」は,現在の公益信託の許可審査基準から取ってきたもの,第1の4の「不可欠特定信託財産の処分制限等」は,公益法人認定法から取ってきたものですので,少し整合性がとれていないのかもしれません。
○長谷川幹事 いずれにしても,規制の趣旨等も含めて整理が必要かどうかも含めて整理しておいた方がいいような気がいたします。
○中辻幹事 承知いたしました。
○中田部会長 ほかによろしいでしょうか。
  当初,第3まで休憩の前にという予定でいましたが,熱心な御議論を頂きましたので遅れてしまいました。ここで15分間の休憩を挟みたいと思います。再開はあの時計で3時59分ということでお願いします。
          (休     憩)
 
○中田部会長 それでは,再開します。
  部会資料34の「第2 受託者の信託報酬に関する認定基準」について御審議いただきます。事務当局から説明してもらいます。
○佐藤関係官 それでは,私から第2の「受託者の信託報酬に関する認定基準」について御説明させていただきます。
  本文では,「公益信託の受託者に対する信託報酬について,当該信託事務の内容,当該信託の経理の状況等を考慮して,不当に高額なものとならない範囲の額又は算定方法が信託行為で明確に定められていることを認定基準とすることでどうか。」との提案をしております。
  現在の許可審査基準では,公益信託の受託者の信託報酬を制限する規定が置かれていますが,これに対しては,①主務官庁及びその担当者によって適用の基準が異なる,②信託事務の難易度や事務負荷等が勘案されない,③人件費以外の物件費等が認められず,採算確保が極めて困難であるなどの問題点が指摘されております。公益信託の受託者に対して正当な報酬額を支給することは,公益信託の担い手となる受託者にインセンティブを与えることとなり,受託者の確保,ひいては民間による公益活動の促進につながるものと考えられます。他方で,公益信託の受託者に対する信託報酬の適正な水準を確保することも必要であると考えられることから,このような提案をしている次第でございます。
○中田部会長 ただいま説明のありました部分について御審議いただきたいと思います。御自由に御発言ください。
○小野委員 まず,不当という実定法上,よく使われる表現ですけれども,信託法の前回の改正のときも不当な利益という議論をしたときに,それは公序良俗で賄えるという議論だったと思います。そうすると,ここでの議論も本来,既に実定法上,組み込まれている概念であるとも言えますが,ただ,部会資料を読むと,そこまでの不当ではなくて少し多いぐらいの議論でもあるようにも思います。不当という言葉が本来の意味ではない議論をするとしたら,受託者にとって持ち出しで何かをするというわけにもいかないところもあるので,その使われ方が気になったという点と,もう1点,受託者の信託報酬の額の制限規定はないと,補足説明の最初のパラグラフで説明されていますけれども,もちろん,不当が元々組み込まれている趣旨であれば,不当ではいけないというのが入っていると思いますし,なおかつ,善管注意義務もありますし,忠実義務的な観点もありますから,ある意味では,元々,信託法には組み込まれていると思うので,直接的に明文の規定はないかもしれませんけれども,これもやや言いすぎかと思いました。
  あと,もう一つ,表現の中で一定のパーセントならよく,100万が逓減していったら信託報酬も逓減化しなければいけないというような説明もありますが,信託財産が最終的にどんどん減っていった段階で,それが適切かということもあります。いずれにしても結論としては本来の不当という意味において不当が使われているのであれば,それは当然だと思いますけれども,そうではないとすると,人によって判断する基準が違ってくるところがあり,ただ,繰り返しになって申し訳ありませんけれども,受託者が持ち出して何かをしなければいけないというような制度というのは,制度の普及という意味において適切ではないと思います。正当な報酬は本来あってしかるべきだと思います。
○中田部会長 不当という言葉の中身が多義的である,曖昧であるので,基準としては適当ではないという御指摘かと存じますが,そうしますと,実質的な基準を示すという方向なのか,あるいは最後におっしゃった正当なというような概念を使うことを御推奨なのか,どっちなんでしょうか。
○小野委員 認定のところで当然,報酬規定も出てくるかと思うので,そういう全体の中で判断すればよろしいのかなと思います。少なくとも実定法上,やや混乱するような表現ぶりは,留意した方がよろしいかなということで,それ以上に規定が不要とまで断言するほどではないんですけれども。
○中田部会長 適切な言葉が見つかるかどうか分かりませんけれども,更に検討するということになろうかと存じます。
  ほかにいかがでしょうか。
○平川委員 信託報酬は受託者のガバナンス確保及び開示の観点から,信託行為に明示すべきであると考えます。必ずしもただ額や料率についての規制は必要ないと考えておりまして,不当に高額かどうかの判断ができるような算定基準が信託行為に定められているということで足ると思います。
○林幹事 弁護士会の議論では賛成という単位会が多かったと思います。現在の実務における認識では,信託報酬が実費ベースで,かなり低いというようであり,そうすると受託者が安心して受託できないというようなことにもなるかもしれないところです。先ほど御説明があったように公益信託促進,あるいは受託者の担い手も広げるというところであれば,きちんとしたインセンティブが働くような形で規定すべきだというのは,そうだと思います。そういう前提においては賛成です。「不当」という言葉がいいのかどうかも微妙なところでもありますし,問題点としてはあるのでしょうけれども,適正な額を確保されるべきだというところはそのとおりです。適正と条文に書くかどうかもまた問題ですが,取りあえず,そのような議論でした。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○樋口委員 2点,申し上げますけれども,私は前に法曹倫理というアメリカのケースブックを学生と一緒に読んでいたことがあって,弁護士報酬の定め方というところでびっくりしたことがあります。報酬の定め方として,普通は係争額というんですかね,係争額に対して何%という話はアメリカでは駄目なんです。どれだけの,つまり,仕事をしたかで報酬が定まってくるのが当たり前で,係争額が高ければ2日間で和解にいったら,それでも何%か取るなんていうのは法曹倫理に反しているわけです。
  それで,法曹というのはフィデュシャリーであって,本当は受託者もそういう同じような考え方,でも,ただ,日本的なやり方の方が結局,信託財産額の何%かというような話の方が分かりやすくて,しかも,すぐ決まるんです。実際にどれだけの仕事をしたかというのをはかるのは大変なので,だから,正論に持っていくのは大変かもしれませんけれども,そういうことで驚いたことがあるというか,驚いたというか,本当はこっちの方が本筋なんだなと私は感じたというのが一つ。
  二つ目ですけれども,先回もそうなんですけれども,ずっと認定基準でこれだけのことをやっていますね。それで,第2のところも「公益」という言葉を外して,「信託の受託者に対する信託報酬について当該信託事務の内容,当該信託の経理の状況等を考慮して,不当に高額のものとならない範囲の額又は算定方法が信託行為で明確に定められている必要がある」というように述べても間違いない。つまり,通常の信託だったとしてもこれは当たり前のことなんです,別に公益信託でなくたって。
  ただ,認定基準にしているところに意味があって,逆に言うと,我々がこういう議論を重ねているというのは,規制当局としては,結局,入口のところでしか規制ができなくて,いったん認定された後からは実際上できない,つまり,入口だけ厳しくてあとはざると言ってはいかんのですけれども,そういうことなのかと感じたりします。今後の議論のところで出てくる公益信託の中身の条項について一定のマニュアルというか,スタンダードが決められるんだと私は思っていますけれども,こういう義務を負うとか,しかし,認定のところでここまでというのは,逆に認定のところしか実は規制しないんだという,憶測で申し上げたので,いやいや,そうではないんですよとおっしゃっていただければ,それはそれで有り難いという2点です。
○中辻幹事 樋口委員が御指摘された,入り口の認定基準だけを規制するのでは不十分というのは,私どももそのとおりと考えておりまして,その後の監督や信託内部のガバナンスの場面でも手当ては必要であると思っています。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○吉谷委員 現在の許可基準が信託報酬を信託銀行にとって利益の出ない水準とすることを求めておりますが,この改正によって受託者が適正な報酬を受けることも可能になるということはいいことだと考えておりますので,提案に賛成でございます。そして,長期の信託がありますので,今,信託期間中で高すぎるのではないかという話もありましたけれども,逆に受託者側から報酬の水準の変更を求めるようなことも,可能な仕組みにしていただきたいと考えております。ほかにも今回,有価証券であるとか,不動産の管理,売却といったものを行うことを想定しているのであれば,それについては一般の信託と同水準であれば,不当に高額ではないということではないかなと,私どもとしては理解しているところです。
  少し分かりにくいところは,経理の状況等というのが書いてあるところなんですけれども,ここは御説明の中では定率を求める趣旨ではないということであると理解しておりますけれども,逆に言うと,信託報酬の金額が信託財産に対して余りにも大きなものになるような場合は,経理の状況からすると認められないということはあっていいのかなと思います。これは信託財産がすごく小さい場合には,信託報酬の割合が大きくなりすぎてしまうことは余りよろしくないのではないかなという趣旨です。
○深山委員 信託報酬に関する定めを設けることについて,私は結論としては認定基準とすることに一定の意味があるのかなと肯定的に考えております。もちろん,本来はある程度,私的自治というか,委託者の意思に委ねて,あるいは受託者との協議に委ねて決められるべきものだという側面はありますけれども,そこは公益信託という制度の趣旨に照らしてある程度,透明性というか,公正性を表に出して認定を受けると,そこも含めて公益性を判断してもらうという意味合いはあるのかなと。そういう意味で,あってもいい基準だと思います。
  問題は不当に高額なという辺りをどう理解するか。その表現の問題もそうで,恐らく,もちろん,公序良俗に反するようなものは当然に認められないということはありますが,公序良俗と同じようなレベルまで求めないんだとすると,どの辺までが正当で,それを超えると不当なのかというのは確かに難しい。といいますのも,正に当該信託の中身といいますか,あるいは受託者の役割,業務によって,高いか,安いかということを考えなければならないので,それは必ずしも信託財産の規模と,業務の業務量や困難性が正比例するわけでもないので,直ちに信託財産に連動するのがいいということでもないといえます。
  先ほどは樋口委員から弁護士報酬のことについて御指摘を受けましたが,我々の弁護士業務もやってみないとどのぐらい手間が掛かるか分からなかったりして,何が適正な報酬かというのは常に日常的に悩んでいるところですけれども,正に信託業務もそれと比べればまだ定型性があるのかなと,予測可能性が高いかなと思いますが,やってみると想定した以上に手間が掛かるというようなこととかもあるでしょうし,そう簡単に決められないので,認定の基準として考えるのだったら,明らかに公序良俗違反とまでは言えないまでも,明らかに公益性の名にふさわしくないと評価されるほど,高すぎるというようなものだけを排除するという規律として置いておくということで,これが過度の規制になってしまったら,公益の増進に逆行することになって元も子もないので,その定め方は神経を使う必要があると思いますが,基準として設けること自体はあっていいのではないかと思います。
○道垣内委員 ゴシックで書かれた内容自体には,それほどには異論はないのですけれども,何のための認定基準なのかということをもう少し突き詰めて,本来は考えるべきではないかという気がします。と申しますのは,仮に受託者が非常に高額な報酬を受けるということになりましても,高額な報酬を受けるということに対しては課税がされるわけであり,そして,その残りの部分が公益に用いられるのならば,別段,差し支えはないだろうという考え方は十分に可能だろうと思うのです。
  しかし,そうではなくて例えば先ほど税制について御説明いただきましたが,委託者の側が損金算入できるとか,寄附金控除ができるというふうなことを前提とすると,例えば私が10億円の収入を得ているというときに,それをある人に実質的にはあげたいというときに,私のところで10億円の課税がなされた上で,そこからまた取得をした人が収入として課税をされるというのではなくて,私が10億を全部,公益信託の信託財産に属する財産とすることによって,私の方は損金ないしは寄附金として控除を受け,他方,受け取った側にだけ課税がなされるということになると,本来は2回,課税がされるはずだったのに,1回になるのはおかしいではないかというふうな見方というのができるのかもしれません。私はそこら辺がよく分からなくて,何のためにこの規制はあるのだろうかということについて,もう少し突き詰めて考える必要があるのではないかなという気が先ほどからしているのですが。
○新井委員 公益信託の受託件数というのは減ってきています。その理由の一つは,ほとんどの受託例を担っている信託銀行が受託者として適正な報酬を得ることができない,つまり,受託者にインセンティブがないということがあると思います。ですから,現在のようにほとんど利益が上がらないという状況を改善して,ある程度の利益を上げることができるようにすべきだと思います。そして,非常に難易度の高い公益信託については,他の公益信託よりも報酬を取っていいのではないかと考えていますので,そういう形の文言にしていただければと思います。
  それと,もう一つ非常に大きいと思うのは,13ページの補足説明の2に現行の許可審査基準が出ておりまして,その問題点として三つ挙げられています。この3番目です。人件費以外の物件費等が認められず,採算確保が極めて困難であるということですけれども,信託事務に要した費用というのは信託財産から取れるわけです。しかし,なかなか,どこまで取れるかというところが非常に難しくて,実際には信託銀行のインフラの持ち出しになっているという面もあるので,ここのところも報酬の問題と一体としてきちんと解決するということが必要ではないかなと考えています。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
○渕幹事 道垣内委員が税法について適確な説明をしてくださったので,付け加えることはないのですけれども,もう少し敷衍して申し上げます。恐らく,例えば委託者